(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
インク組成物中に含有する色素の総質量において、前記色素(I)の比率が10〜80質量%であり、前記色素(II)の比率が10〜80質量%であり、前記色素(III)の比率が10〜40質量%である請求項1乃至4のいずれか一項に記載のインク組成物。
請求項1乃至5のいずれか一項に記載のインク組成物をインクとして用い、該インクの液滴を記録信号に応じて吐出させて被記録材に付着させることにより、記録を行うインクジェット記録方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、以下の本明細書においては煩雑さを避けるため、「化合物」、「その互変異性体」、「それらの塩」の全てを含めて、「化合物」と簡略化して記載する。また、本発明において特に断りが無い限り、スルホ基、カルボキシ基等の酸性官能基は遊離酸の形で表す。
【0015】
本発明のインク組成物は、特定の式で表される色素(I)、色素(II)、及び色素(III)を含有するインク組成物である。
【0016】
本発明のインク組成物に含有される色素(I)について記載する。
本発明のインク組成物に含有される色素(I)は、上記式(1)で表される化合物である。色素(I)は少なくとも1種類の式(1)で表される化合物からなり、式(1)で表される単一の化合物からなる色素であってもよく、複数の化合物からなる色素の混合物であってもよい。なお、式(1)で表される化合物は、水溶性の染料である。
【0017】
上記式(1)中、R
1及びR
2におけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、フッ素原子、塩素原子、臭素原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。
【0018】
上記式(1)中、R
1及びR
2におけるN−アルキルアミノスルホニル基としては、直鎖又は分岐鎖のものが挙げられ、直鎖のものが好ましい。具体例としては、N−メチルアミノスルホニル基、N−エチルアミノスルホニル基、N−(n−ブチル)アミノスルホニル基等のN−C1−C4アルキルアミノスルホニル基が挙げられる。
また、N,N−ジアルキルアミノスルホニル基としては、N,N−ジメチルアミノスルホニル基、N,N−ジ(n−プロピル)アミノスルホニル基等のN,N−ジC1−C4アルキルアミノスルホニル基;等が挙げられる。
【0019】
上記式(1)中、R
1及びR
2におけるアシル基としては、アルキルカルボニル基又はアリールカルボニル基が挙げられる。
アルキルカルボニル基としては、アルキル部分が直鎖又は分岐鎖の、通常C1−C6アルキルカルボニル基、好ましくはC1−C4アルキルカルボニル基が挙げられ、直鎖のものが好ましい。具体例としては、アセチル(メチルカルボニル)、プロピオニル(エチルカルボニル)、ブチリル(プロピルカルボニル)等の直鎖のもの;イソブチリル(イソプロピルカルボニル)等の分岐鎖のもの;等が挙げられる。
アリールカルボニル基としては、アリール部分の炭素数がC6−C10のものが挙げられ、具体例としてはベンゾイル、ナフトイル等が挙げられる。
【0020】
上記式(1)中、R
1及びR
2におけるC1−C4アルキル基としては、直鎖又は分岐鎖のものが挙げられ、直鎖のものが好ましい。具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル等の直鎖のもの;イソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル等の分岐鎖のもの;等が挙げられる。これらの中ではメチルが特に好ましい。
【0021】
上記式(1)中、R
1及びR
2における、ヒドロキシ基又はC1−C4アルコキシ基で置換されたC1−C4アルキル基としては、R
1及びR
2におけるC1−C4アルキル基の任意の炭素原子に、ヒドロキシ基又はC1−C4アルコキシ基が置換したものが挙げられる。該アルキル部分については直鎖又は分岐鎖のものが挙げられ、直鎖のものが好ましい。具体例としては、2−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル、3−ヒドロキシプロピル等のヒドロキシC1−C4アルキル基;メトキシエチル、2−エトキシエチル、n−プロポキシエチル、イソプロポキシエチル、n−ブトキシエチル、メトキシプロピル、エトキシプロピル、n−プロポキシプロピル、イソプロポキシブチル、n−プロポキシブチル等のC1−C4アルコキシC1−C4アルキル基;等が挙げられる。
【0022】
上記式(1)中、R
1及びR
2におけるC1−C4アルコキシ基としては、直鎖又は分岐鎖のものが挙げられ、直鎖のものが好ましい。具体例としては、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、n−ブトキシ等の直鎖のもの;イソプロポキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、t−ブトキシ等の分岐鎖のもの;等が挙げられる。これらの中ではメトキシが特に好ましい。
【0023】
上記式(1)中、R
1及びR
2における、ヒドロキシ基、C1−C4アルコキシ基、スルホ基、及びカルボキシ基よりなる群から選択される少なくとも1種類の基で置換されたC1−C4アルコキシ基としては、R
1及びR
2におけるC1−C4アルコキシ基の任意の炭素原子に、これらの基が置換したものが挙げられる。置換基の位置は特に制限されないが、同一の炭素原子に2つ以上の酸素原子が置換しないものが好ましい。具体例としては、2−ヒドロキシエトキシ、2−ヒドロキシプロポキシ、3−ヒドロキシプロポキシ等の、ヒドロキシ基が置換したもの;メトキシエトキシ、エトキシエトキシ、n−プロポキシエトキシ、イソプロポキシエトキシ、n−ブトキシエトキシ、メトキシプロポキシ、エトキシプロポキシ、n−プロポキシプロポキシ、イソプロポキシブトキシ、n−プロポキシブトキシ等の、C1−C4アルコキシ基が置換したもの;2−スルホエトキシ、3−スルホプロポキシ、4−スルホブトキシ等の、スルホ基が置換したもの;カルボキシメトキシ、2−カルボキシエトキシ、3−カルボキシプロポキシ等の、カルボキシ基が置換したもの;等が挙げられる。
これらの中ではスルホ基で置換されたC1−C4アルコキシ基が好ましい。
【0024】
上記式(1)中、R
1及びR
2におけるアシルアミノ基としては、アルキルカルボニルアミノ基又はアリールカルボニルアミノ基が挙げられる。
アルキルカルボニルアミノ基としては、アルキル部分が直鎖又は分岐鎖の、通常C1−C6アルキルカルボニルアミノ基、好ましくはC1−C4アルキルカルボニルアミノ基が挙げられ、直鎖のものが好ましい。具体例としては、アセチルアミノ(メチルカルボニルアミノ)、プロピオニルアミノ(エチルカルボニルアミノ)、ブチリルアミノ(プロピルカルボニルアミノ)等のアルキル部分が直鎖のもの;イソブチリルアミノ(イソプロピルカルボニルアミノ)等のアルキル部分が分岐鎖のもの;等が挙げられる。
アリールカルボニルアミノ基としては、アリール部分の炭素数がC6−C10のものが挙げられ、具体例としてはベンゾイルアミノ、ナフトイルアミノ等が挙げられる。
【0025】
上記式(1)におけるR
1及びR
2としては、水素原子、カルボキシ基、スルホ基、C1−C4アルコキシ基、スルホ基で置換されたC1−C4アルコキシ基が好ましい。より好ましくは、いずれか一方が水素原子、他方が水素原子以外の基;又は、いずれか一方がスルホ基、他方がスルホ基で置換されたC1−C4アルコキシ基;であり、前者がさらに好ましい。
【0026】
式(1)における、同一のベンゼン環に置換したニトロ基、R
1及びR
2の置換位置は特に制限されない。
好ましくは、該ベンゼン環に置換するアゾ基の置換位置を1位として、下記(a)乃至(d)の組み合わせが挙げられ、(a)の組み合わせが特に好ましい。
(a)ニトロ基が4位、R
1が2位、R
2が6位。
(b)ニトロ基が4位、R
1が2位、R
2が5位。
(c)ニトロ基が2位、R
1が4位、R
2が6位。
(d)ニトロ基が3位、R
1が2位、R
2が5位。
【0027】
上記式(1)中、R
3及びR
4におけるハロゲン原子としては、上記「R
1及びR
2におけるハロゲン原子」に記載のものと、好ましいもの等を含めて同じものが挙げられる。
【0028】
上記式(1)中、R
3及びR
4におけるC1−C4アルキル基としては、上記「R
1及びR
2におけるC1−C4アルキル基」に記載のものと、好ましいもの等を含めて同じものが挙げられる。
【0029】
上記式(1)中、R
3及びR
4におけるC1−C4アルコキシ基としては、上記「R
1及びR
2におけるC1−C4アルコキシ基」に記載のものと、好ましいもの等を含めて同じものが挙げられる。
【0030】
上記式(1)中、R
3及びR
4における、ヒドロキシ基、C1−C4アルコキシ基、スルホ基、及びカルボキシ基よりなる群から選択される少なくとも1種類の基で置換されたC1−C4アルコキシ基としては、上記「R
1及びR
2における、ヒドロキシ基、C1−C4アルコキシ基、スルホ基、及びカルボキシ基よりなる群から選択される少なくとも1種類の基で置換されたC1−C4アルコキシ基」に記載のものと、好ましいもの等を含めて同じものが挙げられる。
【0031】
上記式(1)におけるR
3及びR
4としては、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシ基、スルホ基、ニトロ基、C1−C4アルキル基、C1−C4アルコキシ基が好ましい。より好ましくは、いずれか一方が水素原子、ハロゲン原子、カルボキシ基、スルホ基、ニトロ基、C1−C4アルキル基、又はC1−C4アルコキシ基であり、他方がカルボキシ基又はスルホ基であるものが挙げられる。さらに好ましくは、いずれか一方が水素原子、ハロゲン原子、カルボキシ基、スルホ基、ニトロ基、C1−C4アルキル基、又はC1−C4アルコキシ基であり、他方がスルホ基であるものが挙げられる。
特に好ましくは、いずれか一方が塩素原子であり、他方がスルホ基であるものが挙げられる。
【0032】
式(1)における、同一のベンゼン環に置換したR
3、R
4、及び基Aの置換位置は特に制限されない。
好ましくは、該ベンゼン環に置換するアゾ基の置換位置を1位として、下記(e)乃至(h)の組み合わせが挙げられ、(e)の組み合わせが特に好ましい。
(e)R
3及びR
4の一方が3位、他方が5位、基Aが4位。
(f)R
3及びR
4の一方が2位、他方が5位、基Aが4位。
(g)R
3及びR
4の一方が2位、他方が4位、基Aが5位。
(h)R
3及びR
4の一方が3位、他方が4位、基Aが5位。
【0033】
上記式(1)中、基Aは上記式(2)で表される基である。
【0034】
上記式(2)中、R
5におけるC1−C4アルキル基としては、上記「R
1及びR
2におけるC1−C4アルキル基」に記載のものと、好ましいもの等を含めて同じものが挙げられる。
【0035】
上記式(2)中、R
5におけるC1−C4アルコキシカルボニル基としては、直鎖又は分岐鎖のものが挙げられ、直鎖のものが好ましい。具体例としては、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、n−プロポキシカルボニル、n−ブトキシカルボニル等の直鎖のもの;イソプロポキシカルボニル、イソブトキシカルボニル、sec−ブトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル等の分岐鎖のもの;等が挙げられる。
【0036】
式(2)におけるR
5としては、シアノ基、カルボキシ基、C1−C4アルキル基、又はフェニル基が好ましく、シアノ基又はカルボキシ基がより好ましく、カルボキシ基がさらに好ましい。
【0037】
上記式(2)中、R
6、R
7、及びR
8におけるハロゲン原子としては、上記「R
1及びR
2におけるハロゲン原子」に記載のものと、好ましいもの等を含めて同じものが挙げられる。
【0038】
上記式(2)中、R
6、R
7、及びR
8におけるC1−C4アルキル基としては、上記「R
1及びR
2におけるC1−C4アルキル基」に記載のものと、好ましいもの等を含めて同じものが挙げられる。
【0039】
上記式(2)中、R
6、R
7、及びR
8におけるC1−C4アルコキシ基としては、上記「R
1及びR
2におけるC1−C4アルコキシ基」に記載のものと、好ましいもの等を含めて同じものが挙げられる。
【0040】
上記式(2)中、R
6、R
7、及びR
8における、ヒドロキシ基、C1−C4アルコキシ基、及びスルホ基よりなる群から選択される少なくとも1種類の基で置換されたC1−C4アルコキシ基としては、上記R
6、R
7、及びR
8におけるC1−C4アルコキシ基の任意の炭素原子に、これらの基が置換したものが挙げられる。置換基の位置は特に制限されないが、同一の炭素原子に2つ以上の酸素原子が置換しないものが好ましい。
具体例としては、2−ヒドロキシエトキシ、2−ヒドロキシプロポキシ、3−ヒドロキシプロポキシ等の、ヒドロキシC1−C4アルコキシ基;メトキシエトキシ、エトキシエトキシ、n−プロポキシエトキシ、イソプロポキシエトキシ、n−ブトキシエトキシ、メトキシプロポキシ、エトキシプロポキシ、n−プロポキシプロポキシ、イソプロポキシブトキシ、n−プロポキシブトキシ等の、C1−C4アルコキシC1−C4アルコキシ基;3−スルホプロポキシ、4−スルホブトキシ等の、スルホC1−C4アルコキシ基;等が挙げられる。
【0041】
上記式(2)中、R
6、R
7、及びR
8におけるアシルアミノ基としては、上記「R
1及びR
2におけるアシルアミノ基」に記載のものと、好ましいもの等を含めて同じものが挙げられる。
【0042】
上記式(2)におけるR
6、R
7、及びR
8としては、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシ基、スルホ基、C1−C4アルキル基、又はC1−C4アルコキシ基が好ましい。より好ましくは、いずれか1つが水素原子であり、残りがハロゲン原子、カルボキシ基、及びスルホ基から選択されるいずれか2つのもの;又は、いずれか2つが水素原子であり、残りの1つがスルホ基であるもの;が挙げられ、いずれか2つが水素原子であり、残りの1つがスルホ基であるものが特に好ましい。
【0043】
式(2)における、同一のベンゼン環に置換したR
6、R
7、及びR
8の置換位置は特に制限されない。
好ましくは、該ベンゼン環に置換する(ピラゾロン環の)窒素原子の置換位置を1位として、下記(i)乃至(k)の組み合わせが挙げられる。
(i)3つがいずれも水素原子以外のとき、2位、4位、及び5位;又は、2位、4位、及び6位。
(j)2つが水素原子以外の基、1つが水素原子のとき、水素原子以外の基が2位及び4位;2位及び5位;又は、3位及び5位。
(k)1つが水素原子以外の基、2つが水素原子のとき、水素原子以外の基が4位。
【0044】
上記式(1)、式(2)の置換基、その置換位置等について記載した好ましいもの同士を組み合わせた化合物はより好ましく、より好ましいもの同士を組み合わせた化合物はさらに好ましい。さらに好ましいもの同士、好ましいものとより好ましいものとの組み合わせ等についても同様である。
【0045】
好ましい具体例としては、式(1)において、ニトロ基の置換位置が、該ニトロ基が置換するベンゼン環上のアゾ基の置換位置を1位として4位であり、基Aの置換位置が、該基Aが置換するベンゼン環上のアゾ基の置換位置を1位として4位であり、nが1であり、R
1、R
3、及びR
7がスルホ基であり、R
2が水素原子であり、R
4が水素原子、塩素原子、又はスルホ基であり、R
5がカルボキシ基であるものが挙げられる。
【0046】
上記式(1)で表される化合物の好ましい具体例を、下記表1乃至表4に挙げるが、式(1)で表される化合物はこれらの具体例に限定されるものではない。
【0051】
本発明のインク組成物に含有される色素(II)について記載する。
【0052】
本発明のインク組成物に含有される色素(II)は、上記式(3)で表される化合物である。色素(II)は少なくとも1種類の式(3)で表される化合物からなり、式(3)で表される単一の化合物からなる色素であってもよく、複数の化合物からなる色素の混合物であってもよい。なお、式(3)で表される化合物は、水溶性の染料である。
【0053】
ここで、上記式(3)で表される化合物について記載する。
【0054】
上記式(3)で表される化合物は互変異性体を有し、式(3)以外に下記式(5)乃至(7)等で表される異性体等が考えられる。これらの互変異性体も本発明に含まれる。
なお、下記式(5)乃至(7)中、R
101からR
103は、いずれも上記式(3)におけるのと同じ意味を表す。
【0058】
上記式(3)中、mは0又は1であり、R
101からR
103はそれぞれ独立に、水素原子;スルホ基;又は、C1−C4アルコキシ基;を表す。
【0059】
上記式(3)におけるR
101からR
103の好ましい組み合わせとしては、R
101がスルホ基、R
102がC1−C4アルコキシ基、R
103が水素原子である組み合わせ;又は、R
101が水素原子、R
102がC1−C4アルコキシ基、R
103がスルホ基である組み合わせである。
【0061】
上記式(3)中、基Dは1つ乃至3つのスルホ基で置換された、フェニル基又はナフチル基である
【0062】
上記式(3)中、基Dがフェニル基のとき、スルホ基の数は1つ乃至3つ、好ましくは1つ又は2つである。複数の基が置換するとき、その置換基の位置については特に制限されないが、ピラゾロン環の窒素原子との結合位置を1位として、置換基の数が3つのとき2位、3位、及び5位;置換基の数が2つのとき2位及び4位、又は3位及び5位;置換基の数が1つのとき4位;に、それぞれ置換するのが好ましい。具体例としては、2−スルホフェニル、4−スルホフェニル、2,4−ジスルホフェニル、3,5−ジスルホフェニル等が挙げられる。特に好ましいものは、4−スルホフェニル、3,5−ジスルホフェニルである。
【0063】
上記式(3)中、基Dがナフチル基のとき、スルホ基の数は1つ乃至3つである。ピラゾロン環の窒素原子と基Dとの結合位置は1位又は2位のもの、すなわち、1−ナフチル又は2−ナフチルが好ましい。
ナフチル基上のスルホ基の位置については特に制限されないが、以下のものが好ましい。
すなわち、
[基Dが1−ナフチル基のとき]
(l)スルホ基の数が1つのとき、3、4、5、6、7位。
(m)スルホ基の数が2つのとき、3位と4位、3位と5位、3位と6位、3位と7位、4位と6位、4位と7位、5位と7位の組み合わせ。
(n)スルホ基の数が3つのとき、3位と4位と6位、3位と4位と7位、3位と5位と6位、3位と5位と7位、3位と6位と7位の組み合わせ。
[基Dが2−ナフチル基のとき]
(o)スルホ基の数が1つのとき、4、5、6、7、8位。
(p)スルホ基の数が2つのとき、4位と6位、4位と7位、4位と8位、5位と6位、5位と7位、5位と8位、6位と8位の組み合わせ。
(q)スルホ基の数が3つのとき、4位と6位と7位、4位と6位と8位、4位と7位と8位の組み合わせ。
具体例としては、7−スルホナフト−1−イル、5,7−ジスルホナフト−2−イル、6,8−ジスルホナフト−2−イル、4,8−ジスルホナフト−2−イル、4,6,8−トリスルホナフト−2−イル、4,7,8−トリスルホナフト−2−イル等が挙げられる。
このうち特に好ましいものは、4,6,8−トリスルホナフト−2−イルである。
【0064】
上記式(3)の置換基について記載した好ましいもの同士を組み合わせた化合物はより好ましく、より好ましいもの同士を組み合わせた化合物はさらに好ましい。さらに好ましいもの同士、好ましいものとより好ましいものとの組み合わせ等についても同様である。
【0065】
好ましい具体例としては、式(3)において、mが1であり、R
101が水素原子又はスルホ基であり、R
102がC1−C4アルコキシ基であり、R
103が水素原子又はスルホ基であり、基Dが、1つ又は2つのスルホ基で置換されたフェニル基、及び、3つのスルホ基で置換されたナフチル基のいずれかであるものが挙げられる。
【0066】
上記式(3)で表される化合物の好適な具体例としては、特に限定されるものではないが、下記表5乃至表7に示す化合物等が挙げられる。
各表においてスルホ基、カルボキシ基等の官能基は、便宜上、遊離酸の形で記載する。
【0070】
本発明のインク組成物に含有される色素(III)について記載する。
【0071】
本発明のインク組成物に含有される色素(III)は、上記式(4)で表される化合物である。色素(III)は少なくとも1種類の式(4)で表される化合物からなり、式(4)で表される単一の化合物からなる色素であってもよく、複数の化合物からなる色素の混合物であってもよい。なお、式(4)で表される化合物は、水溶性の染料である。
【0072】
ここで、上記式(4)で表される化合物について記載する。
【0073】
上記式(4)中、R
201からR
204はそれぞれ独立に、水素原子;又はスルホ基で置換されたC1−C4アルコキシ基を表す。
【0074】
スルホ基で置換されたC1−C4アルコキシ基としては、C1−C4アルコキシ基における任意の炭素原子に、スルホ基を有するものが挙げられる。該置換基の数は、通常1つ又は2つ、好ましくは1つである。置換基の位置は特に制限されないが、同一の炭素原子に2つ以上の酸素原子が置換しないものが好ましい。
具体例としては、2−スルホエトキシ、3−スルホプロポキシ、4−スルホブトキシ等のスルホC1−C4アルコキシ基;等が挙げられる。3−スルホプロポキシが特に好ましい。
【0075】
好ましい具体例としては、式(4)において、R
201及びR
202の少なくとも一方がスルホプロポキシ基であり、R
203及びR
204の少なくとも一方がスルホプロポキシ基であるものが挙げられる。
【0076】
上記式(4)で表される化合物の好適な具体例としては、特に限定されるものではないが、下記表8乃至表9に示す化合物等が挙げられる。
各表においてスルホ基、カルボキシ基等の官能基は、便宜上、遊離酸の形で記載する。
【0079】
本発明のインク組成物中に含有される色素の総質量において、色素(I)の比率が10〜80質量%、色素(II)の比率が10〜80質量%、色素(III)の比率が10〜40質量%となるような配合比率で混合することが好ましい。さらに好ましくは、色素(I)の比率が20〜70質量%、色素(II)の比率が20〜70質量%、色素(III)の比率が10〜40質量%となるような配合比率である。
【0080】
上記式(1)、式(3)、式(4)で表される化合物又はその互変異性体の塩は、無機又は有機陽イオンとの塩である。そのうち無機塩の具体例としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、及びアンモニウム塩が挙げられ、好ましい無機塩としては、リチウム、ナトリウム、カリウムの各塩及びアンモニウム塩が挙げられる。一方、有機陽イオンの塩としては、例えば下記式(8)で表される4級アンモニウムとの塩が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、遊離酸、その互変異性体、及びそれらの各種の塩が混合物であってもよい。例えば、ナトリウム塩とアンモニウム塩との混合物、遊離酸とナトリウム塩との混合物、リチウム塩、ナトリウム塩、及びアンモニウム塩の混合物等、いずれの組み合わせを用いてもよい。塩の種類によって各化合物における溶解性等の物性値が異なる場合もあり、必要に応じて適宜塩の種類を選択すること、又は、複数の塩等を含む場合にはその比率を変化させること等により目的に適う物性を有する混合物を得ることもできる。
【0082】
式(8)において、Z
1、Z
2、Z
3、Z
4は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、及びヒドロキシアルコキシアルキル基よりなる群から選択される基を表し、少なくともいずれか1つは水素原子以外の基を表す。
式(8)におけるZ
1、Z
2、Z
3、Z
4のアルキル基の具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル等が挙げられる。ヒドロキシアルキル基の具体例としては、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、3−ヒドロキシプロピル、2−ヒドロキシプロピル、4−ヒドロキシブチル、3−ヒドロキシブチル、2−ヒドロキシブチル等のヒドロキシC1−C4アルキル基が挙げられる。ヒドロキシアルコキシアルキル基の例としては、ヒドロキシエトキシメチル、2−ヒドロキシエトキシエチル、3−ヒドロキシエトキシプロピル、2−ヒドロキシエトキシプロピル、4−ヒドロキシエトキシブチル、3−ヒドロキシエトキシブチル、2−ヒドロキシエトキシブチル等のヒドロキシC1−C4アルコキシC1−C4アルキル基が挙げられ、これらのうちヒドロキシエトキシC1−C4アルキルが好ましい。特に好ましいものとしては、水素原子;メチル;ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、3−ヒドロキシプロピル、2−ヒドロキシプロピル、4−ヒドロキシブチル、3−ヒドロキシブチル、2−ヒドロキシブチル等のヒドロキシC1−C4アルキル基;ヒドロキシエトキシメチル、2−ヒドロキシエトキシエチル、3−ヒドロキシエトキシプロピル、2−ヒドロキシエトキシプロピル、4−ヒドロキシエトキシブチル、3−ヒドロキシエトキシブチル、2−ヒドロキシエトキシブチル等のヒドロキシエトキシC1−C4アルキル基が挙げられる。
【0083】
式(8)として好ましい化合物のZ
1、Z
2、Z
3、及びZ
4の組み合わせの具体例を下記表10に示す。
【0085】
上記式(1)、式(3)、式(4)で表される各化合物の合成方法について記載する。
【0086】
上記式(1)で表される化合物は、国際公開第2005/097912号に記載の方法、又は、該公報に記載の方法に準じて合成原料を適切に選択することにより、当業者であれば容易に合成することができる。
【0087】
上記式(3)で表される化合物は、特開2009−84346号公報に記載の方法、又は、該公報に記載の方法に準じて合成原料を適切に選択することにより、当業者であれば容易に合成することができる。
【0088】
上記式(4)で表される化合物は、例えば次の方法で合成することができる。
なお、各工程における化合物の構造式は遊離酸の形で表すものとし、また下記式(9)乃至(25)において適宜使用されるR
201からR
204は、それぞれ式(4)におけるのと同じ意味を表す。
【0089】
まず、下記式(9)で表される化合物を常法によりジアゾ化し、これと下記式(10)で表される化合物とを常法によりカップリング反応させ、下記式(11)で表される化合物を得る。
式(11)で表される化合物の別合成方法としては、以下の方法が挙げられる。すなわち、下記式(9)で表される化合物を常法によりジアゾ化し、これとアニリンのメチル−ω−スルホン酸誘導体とを常法によりカップリング反応させた後、アルカリ条件下で加水分解して下記式(12)で表される化合物を得る。得られた式(12)で表される化合物を発煙硫酸等で処理してスルホ化することにより、式(11)で表される化合物を得ることができる。また、式(11)で表される化合物の中には、市販品として購入できるもの(例えばC.I.アシッドイエロー9)もある。
【0094】
次いで、得られた式(11)で表される化合物を常法によりジアゾ化した後、これと下記式(13)で表される化合物とを常法によりカップリング反応させ、下記式(14)で表される化合物を得る。
【0097】
一方、上記式(11)で表される化合物を常法によりジアゾ化した後、これと下記式(15)で表される化合物とを常法によりカップリング反応させ、下記式(16)で表される化合物を得る。
【0100】
同様にして、上記式(11)で表される化合物を常法によりジアゾ化した後、これと下記式(17)で表される化合物とを常法によりカップリング反応させ、下記式(18)で表される化合物を得る。
【0103】
同様にして、上記式(11)で表される化合物を常法によりジアゾ化した後、これと下記式(19)で表される化合物とを常法によりカップリング反応させ、下記式(20)で表される化合物を得る。
【0106】
次いで、得られた上記式(14)で表される化合物とハロゲン化シアヌル、例えば塩化シアヌルとを、常法により縮合反応させ、下記式(21)で表される化合物を得る。
【0108】
次いで、得られた上記式(21)で表される化合物と式(16)で表される化合物とを、常法により縮合反応させ、下記式(22)で表される化合物を得る。
【0110】
同様にして、得られた上記式(18)で表される化合物とハロゲン化シアヌル、例えば塩化シアヌルとを、常法により縮合反応させ、下記式(23)で表される化合物を得る。
【0112】
次いで、得られた上記式(23)で表される化合物と式(20)で表される化合物とを、常法により縮合反応させ、下記式(24)で表される化合物を得る。
【0114】
得られた上記式(22)で表される化合物と上記式(24)で表される化合物と下記式(25)で表される架橋基Xに対応する化合物とを、常法により縮合反応させることにより、上記式(4)で表されるアゾ化合物を得ることができる。
【0116】
上記式(9)で表される化合物のジアゾ化は、それ自体公知の方法で実施される。例えば、無機酸媒質中、例えば−5〜30℃、好ましくは0〜20℃の温度で亜硝酸塩、例えば亜硝酸ナトリウム等の亜硝酸アルカリ金属塩を使用して実施される。
式(9)で表される化合物のジアゾ化物と式(10)で表される化合物とのカップリング反応も、それ自体公知の反応条件で実施される。例えば、水又は水性有機媒体中、0〜30℃、好ましくは5〜25℃の温度、且つ、酸性から弱酸性のpH値、例えばpH1〜6で反応を行うことが有利である。ジアゾ化反応液は酸性であり、また、カップリング反応の進行により反応系内はさらに酸性化してしまうため、塩基の添加によって反応液を上記のpH値へ調整するのが好ましい。塩基としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物;炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩;酢酸ナトリウム等の酢酸塩;アンモニア又は有機アミン;等が使用できる。式(9)で表される化合物と式(10)で表される化合物とは、ほぼ化学量論量で用いる。
【0117】
上記式(11)で表される化合物のジアゾ化は、それ自体公知の方法で実施される。例えば、無機酸媒質中、例えば−5〜30℃、好ましくは0〜25℃の温度で亜硝酸塩、例えば亜硝酸ナトリウム等の亜硝酸アルカリ金属塩を使用して実施される。
式(11)で表される化合物のジアゾ化物と、式(13)、式(15)、式(17)、又は式(19)で表される化合物とのカップリング反応も、それ自体公知の反応条件で実施される。例えば、水又は水性有機媒体中、0〜30℃、好ましくは5〜25℃の温度、且つ、酸性から弱酸性のpH値、例えばpH1〜6で反応を行うことが有利である。ジアゾ化反応液は酸性であり、また、カップリング反応の進行により反応系内はさらに酸性化してしまうため、塩基の添加によって反応液を上記のpH値へ調整するのが好ましい。塩基としては上記と同じものが使用できる。式(11)の化合物と、式(13)、式(15)、式(17)、又は式(19)の化合物とは、ほぼ化学量論量で用いる。
【0118】
上記式(14)又は上記式(18)で表される化合物と、ハロゲン化シアヌル、例えば塩化シアヌルとの縮合反応は、それ自体公知の方法で実施される。例えば、水又は水性有機媒体中、0〜30℃、好ましくは5〜25℃の温度、且つ、弱酸性から中性のpH値、例えばpH3〜8で反応を行うことが有利である。反応の進行により反応系内は酸性化してしまうため、塩基の添加によって上記のpH値へ調整するのが好ましい。塩基としては上記と同じものが使用できる。上記式(14)又は上記式(18)で表される化合物とハロゲン化シアヌルとは、ほぼ化学量論量で用いる。
【0119】
上記式(16)で表される化合物と上記式(21)で表される化合物との縮合反応、又は上記式(20)で表される化合物と上記式(23)で表される化合物との縮合反応は、それ自体公知の方法で実施される。例えば、水又は水性有機媒体中、10〜80℃、好ましくは25〜70℃の温度、且つ、弱酸性から弱アルカリ性のpH値、例えばpH5〜9で反応を行うことが有利である。pH値の調整は塩基の添加によって実施される。塩基としては上記と同じものが使用できる。上記式(16)で表される化合物と上記式(21)で表される化合物、又は上記式(20)で表される化合物と上記式(23)で表される化合物とは、ほぼ化学量論量で用いる。
【0120】
上記式(22)で表される化合物と上記式(24)で表される化合物と上記式(25)で表される化合物との縮合反応は、それ自体公知の方法で実施される。例えば、水又は水性有機媒体中、50〜100℃、好ましくは60〜95℃の温度、且つ、中性から弱アルカリ性のpH値、例えばpH7〜10で行うことが有利である。pH値の調整は塩基の添加によって実施される。塩基としては上記と同じものが使用できる。上記式(22)で表される化合物1当量と上記式(24)で表される化合物1当量とに対し、上記式(25)で表される化合物は0.4〜0.6当量、好ましくは0.5当量を用いる。
【0121】
上記式(1)、式(3)、式(4)で表される化合物を所望の塩とするには、各化合物の合成反応の最終工程が終了した後、所望の無機塩又は有機陽イオンの塩を反応液に添加することにより塩析する方法;又は、塩酸等の鉱酸の添加により遊離酸の形で単離し、これを水、酸性の水又は水性有機媒体等を必要に応じ用いて洗浄することにより無機塩を除去後、水性の媒体中で所望の無機又は有機塩基により中和する方法;等により、対応する塩の固体、又は溶液を得ることができる。ここで、酸性の水とは、例えば硫酸、塩酸等の鉱酸や酢酸等の有機酸を水に溶解し、酸性にしたものをいう。また、水性有機媒体とは、水と混和可能な有機物質、又は水と混和可能ないわゆる有機溶剤等(具体例としては後述する水溶性有機溶剤等)と水との混和物が挙げられる。無機塩の例としては、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム等アルカリ金属塩;塩化アンモニウム、臭化アンモニウム等のアンモニウム塩;等が挙げられる。有機の陽イオンの塩の例としては、上記した式(8)で表される4級アンモニウムのハロゲン塩等が挙げられる。無機塩基の例としては、例えば水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;水酸化アンモニウム(アンモニア水);炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩;等が挙げられる。有機塩基の例としては、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機アミン;上記式(8)で表される4級アンモニウムの水酸化物やハロゲン化物;等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0122】
本発明のインク組成物について記載する。
【0123】
上記式(1)、式(3)、又は(4)で表される化合物のそれぞれの合成反応において、最終工程終了後のそれぞれの反応液は、本発明のインク組成物の製造に直接使用することができる。また、まず各色素を含む反応液を個別に乾燥、例えばスプレー乾燥させる方法;塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、硫酸ナトリウム等の無機塩類を添加することによって塩析する方法;塩酸、硫酸、硝酸等の鉱酸を添加することによって酸析する方法;塩析と酸析とを組み合わせて酸塩析する方法;等によって各化合物を単離し、これを混合してインク組成物を調製することもできる。
【0124】
本発明のインク組成物に含有される色素(I)として好ましい色素は、上記式(1)で表される各化合物において、好ましいものとして挙げた化合物であり、より好ましい色素等についても同様である。また、色素(II)として好ましい色素も、同様に上記式(3)で表される化合物において、好ましいものとして挙げた化合物であり、より好ましい色素等についても同様である。また、色素(III)として好ましい色素も、同様に上記式(4)で表される化合物において、好ましいものとして挙げた化合物であり、より好ましい色素等についても同様である。
【0125】
色素(I)、(II)、及び(III)の好ましい組み合わせの1つとしては、色素(I)として表4に記載のNo.25で表される化合物、色素(II)として表5に記載のNo.28又はNo.29で表される化合物、表5に記載のNo.32又は表6に記載のNo.33で表される化合物、表7に記載のNo.38又はNo.40で表される化合物、色素(III)として表8に記載のNo.43又はNo.45で表される化合物の組み合わせが挙げられる。この組み合わせの色素を含有する本発明のインク組成物は、本発明のインク組成物として好ましいものの1つである。
【0126】
本発明のインク組成物は、色素として、色素(I)、色素(II)、及び色素(III)を含有する。色素(I)、(II)、及び(III)のそれぞれは、上記した特定の条件を満たす範囲でそれぞれ単独の色素でもよいし、それぞれが複数の色素の混合物であってもよい。したがって、本発明のインク組成物は、少なくとも3種類以上の色素が配合されたものである。
本発明のインク組成物中に含有する色素の総質量中、色素(I)の比率は10〜80質量%、好ましくは20〜70質量%、より好ましくは20〜65質量%、色素(II)の比率は10〜80質量%、好ましくは20〜70質量%、より好ましくは20〜65質量%、色素(III)の比率は10〜40質量%である。
また、本発明のインク組成物の総質量における色素(I)、色素(II)、及び色素(III)の総含有量は、インク組成物の総質量に対して、通常0.1〜20質量%、好ましくは1〜10質量%、より好ましくは2〜8質量%である。
本発明のインク組成物には、さらに水溶性有機溶剤を例えば0〜30質量%、インク調製剤を例えば0〜20質量%含有してもよく、残部は水である。
【0127】
本発明のインク組成物は水を媒体として調製され、必要に応じて水溶性有機溶剤を、本発明の効果を害しない範囲内において含有していてもよい。水溶性有機溶剤は、本発明のインク組成物における染料の溶解、乾燥の防止(湿潤状態の保持)、粘度の調整、浸透の促進、表面張力の調整、消泡等の効果を目的として使用され、本発明のインク組成物中には含有する方が好ましい。
インク調製剤としては、例えば、防黴防腐剤、pH調整剤、キレート試薬、防錆剤、紫外線吸収剤、水溶性高分子化合物、色素溶解剤、界面活性剤、酸化防止剤(退色防止剤)等の公知の添加剤が挙げられる。
水溶性有機溶剤の含有量は、本発明のインク組成物の総質量に対して0〜60質量%、好ましくは10〜50質量%であり、インク調製剤は同様に0〜20質量%、好ましくは0〜15質量%用いるのがよい。上記以外の残部は水である。
【0128】
本発明のインク組成物のpHとしては、保存安定性を向上させる目的で、pH5〜11が好ましく、pH7〜10がより好ましい。また、インク組成物の表面張力としては、25〜70mN/mが好ましく、25〜60mN/mがより好ましい。さらに、インク組成物の粘度としては、30mPa・s以下が好ましく、20mPa・s以下がより好ましい。本発明のインク組成物のpH、表面張力は、後記するようなpH調整剤、界面活性剤で適宜調整することが可能である。
【0129】
本発明のインク組成物をインクジェット記録用のインクとして使用する場合、本発明のインク組成物が含有する各色素[すなわち、上記式(1)、式(3)、式(4)表される各化合物]中における金属陽イオンの塩化物(例えば塩化ナトリウム)、硫酸塩(例えば硫酸ナトリウム)等の無機不純物の含有量は、少ないものを用いるのが好ましい。その無機不純物含有量の目安は、おおよそ色素の総質量に対して1質量%以下程度であり、下限は分析機器の検出限界以下、すなわち0%でよい。無機不純物の少ない化合物を製造するには、例えば逆浸透膜による通常の方法;色素の乾燥品あるいはウェットケーキをメタノール等のC1−C4アルコール及び水の混合溶媒中で撹拌し、析出物を濾過分離して、乾燥する等の方法;イオン交換樹脂を用いた方法;等で脱塩処理すればよい。
【0130】
上記水溶性有機溶剤の具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、第二ブタノール、第三ブタノール等のC1−C4アルカノール;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のカルボン酸アミド;2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチルピロリジン−2−オン等のラクタム;1,3−ジメチルイミダゾリジン−2−オン、1,3−ジメチルヘキサヒドロピリミド−2−オン等の環式尿素類;アセトン、メチルエチルケトン、2−メチル−2−ヒドロキシペンタン−4−オン等のケトン又はケトアルコール;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル;エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、チオジグリコール、ジチオジグリコール等のC2−C6アルキレン単位を有するモノ、オリゴ、若しくはポリアルキレングリコール又はチオグリコール;トリメチロールプロパン、グリセリン、ヘキサン−1,2,6−トリオール等のポリオール(トリオール);エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールのC1−C4アルキルエーテル;γ−ブチロラクトン等のラクトン類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;等が挙げられる。これらの水溶性有機溶剤は単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
これらの中でも、イソプロパノール、N−メチル−2−ピロリドン、グリセリン、ブチルカルビトール等が好ましい。
【0131】
なお、上記の水溶性有機溶剤には、例えばトリメチロールプロパン等のように、常温で固体の物質も含まれている。しかし、該物質等は固体であっても水溶性を示し、さらに該物質等を含有する水溶液は水溶性有機溶剤と同様の性質を示し、同じ目的で使用することができる。このため本明細書においては、便宜上、このような固体の物質であっても上記と同じ目的で使用できる限り、水溶性有機溶剤の範疇に含むものとする。
【0132】
防黴剤の具体例としては、デヒドロ酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ナトリウムピリジンチオン−1−オキシド、p−ヒドロキシ安息香酸エチルエステル、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン及びその塩等が挙げられる。
【0133】
防腐剤の具体例としては、有機硫黄系、有機窒素硫黄系、有機ハロゲン系、ハロアリールスルホン系、ヨードプロパギル系、ハロアルキルチオ系、ニトリル系、ピリジン系、8−オキシキノリン系、ベンゾチアゾール系、イソチアゾリン系、ジチオール系、ピリジンオキシド系、ニトロプロパン系、有機スズ系、フェノール系、第4アンモニウム塩系、トリアジン系、チアジン系、アニリド系、アダマンタン系、ジチオカーバメイト系、ブロム化インダノン系、ベンジルブロムアセテート系、無機塩系等の化合物が挙げられる。
有機ハロゲン系化合物の具体例としては、例えばペンタクロロフェノールナトリウムが挙げられる。ピリジンオキシド系化合物の具体例としては、例えば2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウムが挙げられる。イソチアゾリン系化合物の具体例としては、例えば、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンマグネシウムクロライド、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンカルシウムクロライド、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンカルシウムクロライド等が挙げられる。その他の防腐防黴剤の具体例としては、無水酢酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、あるいはアーチケミカル社製、商品名プロクセル
RTMGXL(S)やプロクセル
RTMXL−2(S)等が挙げられる。
なお、本明細書において、上付きの「RTM」は、登録商標を意味する。
【0134】
pH調整剤としては、調製されるインクに悪影響を及ぼさずに、インクのpHを例えば5〜11の範囲に制御できるものであれば任意の物質を使用することができる。その具体例としては、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン等のアルカノールアミン;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;水酸化アンモニウム(アンモニア水);炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩;ケイ酸ナトリウム、酢酸カリウム等の有機酸のアルカリ金属塩;リン酸二ナトリウム等の無機塩基;タウリン等のアミノスルホン酸類;等が挙げられる。
【0135】
キレート試薬の具体例としては、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、ウラシル二酢酸ナトリウム等が挙げられる。
【0136】
防錆剤の具体例としては、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオグリコール酸アンモニウム、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト等が挙げられる。
【0137】
紫外線吸収剤の具体例としては、スルホ化した、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾ−ル系化合物、サリチル酸系化合物、桂皮酸系化合物、トリアジン系化合物等の水溶性のものが挙げられる。
【0138】
水溶性高分子化合物の具体例としては、ポリビニルアルコール、セルロース誘導体、ポリアミン、ポリイミン等が挙げられる。
【0139】
色素溶解剤の具体例としては、ε−カプロラクタム、エチレンカーボネート、尿素等が挙げられる。
【0140】
酸化防止剤としては、各種の有機系及び金属錯体系の褪色防止剤を使用することができる。この褪色防止剤の具体例としては、ハイドロキノン類、アルコキシフェノール類、ジアルコキシフェノール類、フェノール類、アニリン類、アミン類、インダン類、クロマン類、アルコキシアニリン類、複素環類等が挙げられる。
【0141】
界面活性剤の具体例としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系等の公知の界面活性剤が挙げられる。
【0142】
アニオン界面活性剤の例としては、アルキルスルホン酸塩、アルキルカルボン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、N−アシルアミノ酸及びその塩、N−アシルメチルタウリン塩、アルキル硫酸塩ポリオキシアルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩、ロジン酸石鹸、ヒマシ油硫酸エステル塩、ラウリルアルコール硫酸エステル塩、アルキルフェノール型燐酸エステル、アルキル型燐酸エステル、アルキルアリールスルホン酸塩、ジエチルスルホ琥珀酸塩、ジエチルヘキルシルスルホ琥珀酸塩、ジオクチルスルホ琥珀酸塩等が挙げられる。
【0143】
カチオン界面活性剤の例としては、2−ビニルピリジン誘導体、ポリ4−ビニルピリジン誘導体等が挙げられる。
【0144】
両性界面活性剤の例としては、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ポリオクチルポリアミノエチルグリシン、イミダゾリン誘導体等が挙げられる。
【0145】
ノニオン界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等のエーテル系;ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンステアレート等のエステル系;2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール等のアセチレンアルコール系;等が挙げられる。その他の具体例としては、例えば、日信化学社製、商品名サーフィノール
RTM104、105、82、465、オルフィン
RTMSTG等が挙げられる。
これらのインク調製剤は、単独又は混合して用いられる。
【0146】
本発明のインク組成物の製造において、添加剤等の各薬剤を溶解させる順序には特に制限はない。インク組成物の調製に用いる水は、イオン交換水、蒸留水等の不純物が少ない物が好ましい。また、必要に応じインク組成物の調製後に、メンブランフィルタ等を用いて精密濾過を行い、インク組成物中の夾雑物を除いてもよい。特に、本発明のインク組成物をインクジェット記録用のインクとして使用する場合には、精密濾過を行うことが好ましい。精密濾過に使用するフィルタの孔径は通常1〜0.1μm、好ましくは、0.8〜0.1μmである。
【0147】
本発明のインク組成物は、印捺、複写、マーキング、筆記、製図、スタンピング、又は記録(印刷)、特にインクジェット記録における使用に適する。また、本発明のインク組成物は、インクジェットプリンタの記録ヘッドのノズル付近における乾燥に対しても固体の析出は起こりにくく、この理由により該記録ヘッドの閉塞もまた起こしにくい。
【0148】
本発明のインクジェット記録方法について説明する。本発明のインクジェット記録方法は、本発明のインク組成物をインクとして用い、該インクのインク滴を記録信号に応じて吐出させて、被記録材に付着させることにより記録を行うものである。記録の際に使用するインクノズル等については特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
該記録方法は、公知の各方式、例えば、静電誘引力を利用してインクを吐出させる電荷制御方式;ピエゾ素子の振動圧力を利用するドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式);電気信号を音響ビームに変えインクに照射し、その放射圧を利用してインクを吐出させる音響インクジェット方式;インクを加熱して気泡を形成し、生じた圧力を利用するサーマルインクジェット、すなわちバブルジェット(登録商標)方式;等を採用することができる。
なお、インクジェット記録方法には、フォトインクと称する、インク中の色素濃度(色素含有量)の低いインクを、小さい体積で多数射出する方式;実質的に同じ色相でインク中の色素濃度の異なる複数のインクを用いて画質を改良する方式;及び無色透明のインクを用いる方式;等も含まれる。
【0149】
本発明の着色体は、
a)上記1)乃至5)に記載の本発明のインク組成物、又は、
b)上記6)乃至8)に記載の本発明のインクジェット記録方法、により着色された物質であり、好ましくは本発明のインク組成物を用いて、本発明のインクジェット記録方法により着色された物質である。
【0150】
該物質としては下記する被記録材が好ましい。
着色されうる被記録材としては特に制限はないが、例えば、紙、フィルム等の情報伝達用シート、繊維や布(セルロース、ナイロン、羊毛等)、皮革、カラーフィルタ用基材等が挙げられ、中でも情報伝達用シートが好ましい。
情報伝達用シートとしては、表面処理されたもの、具体的には紙、合成紙、フィルム等の基材にインク受容層を設けたものが好ましい。インク受容層は、例えば上記基材にカチオン系ポリマーを含浸又は塗工する方法;多孔質シリカ、アルミナゾル、特殊セラミックス等のインク中の色素を吸収し得る無機微粒子をポリビニルアルコールやポリビニルピロリドン等の親水性ポリマーと共に上記基材表面に塗工する方法;等により設けられる。このようなインク受容層を設けたものは、通常インクジェット専用紙、インクジェット専用フィルム、光沢紙、光沢フィルム等と呼ばれる。
【0151】
上記の情報伝達用シートのうち、特に多孔性白色無機物を表面に塗工したシートは表面光沢度が高く、また耐水性も優れているため、写真画質の記録に特に適している。しかし、これらに記録した画像は、オゾンガスによって変退色が大きくなることが知られている。しかし、本発明のインク組成物は耐オゾンガス性が優れているため、このような被記録材へインクジェット記録した際にも大きな効果を発揮する。
上記のような多孔性白色無機物を表面に塗工したシートとして代表的な市販品の一例を挙げると、キヤノン(株)製、商品名:写真用紙・光沢プロ「プラチナグレード」、写真用紙・光沢ゴールド;セイコーエプソン(株)製、商品名:写真用紙クリスピア(高光沢)、写真用紙(光沢)、フォトマット紙;日本ヒューレット・パッカード(株)製、商品名:アドバンスフォト用紙(光沢);富士フィルム(株)製、商品名:画彩写真仕上げPro;等があるが、本発明のインク組成物の用途としては、これらの専用紙等に限られるものではない。
【0152】
上記の専用紙以外の被記録材としては普通紙が挙げられる。普通紙とは、上記のインク受容層が設けられていないものであり、市販品の例としては、キヤノン(株)製、商品名:GF−500、キヤノン普通紙・ホワイト;セイコーエプソン(株)製、商品名:両面上質普通紙;等のインクジェット専用の普通紙が挙げられる。また、インクジェット専用ではないものの例としては、PPC(プレインペーパーコピー)用紙等も使用できる。
【0153】
本発明のインクジェット記録方法で情報伝達用シート等の被記録材に記録するには、例えば上記のインク組成物を含有する容器をインクジェットプリンタの所定の位置に装填し、前記の通常の記録方法で被記録材に記録すればよい。
本発明のインクジェット記録方法は、本発明のインク組成物と、例えば公知のマゼンタ、シアン、イエロー、及び必要に応じて、グリーン、ブルー(又はバイオレット)、レッド(又はオレンジ)等の各色のインク組成物とを併用することもできる。
各色のインク組成物は、それぞれの容器に注入され、その各容器を本発明のインク組成物を含有する容器と同様にインクジェットプリンタの所定の位置に装填してインクジェット記録に使用される。
【0154】
本発明のインク組成物に色素(I)、(II)、(III)として含有される各化合物は、合成が容易且つ安価である。また、該各化合物は、水性媒体に対する溶解性が高く、且つ水溶解性にも優れるので、インク組成物を製造する過程でのメンブランフィルタによる濾過性が良好である。
本発明のインク組成物又は該インク組成物から調製されるインクは、保存時の安定性や吐出安定性にも優れている。すなわち、本発明のインク組成物は、長期間保存後の固体析出、物性変化、色相の変化等もなく、貯蔵安定性が良好である。
また、本発明のインク組成物は、インクジェット記録用、筆記用具用等として好適に用いられ、特にインクジェット専用紙に記録した際には、濃色及び淡色印刷時のいずれにおいても色味のないニュートラルな黒〜グレー色を呈し、異なるメディアに記録した場合であっても、色相の変化が少ない。また、記録画像の印字(印刷)濃度が非常に高く、高濃度溶液を印字した場合でもその画像にブロンジングを起こさず、さらに、耐湿性、耐水性等の各種堅牢性、特に耐光性及び耐オゾンガス性が共に優れている。
また、マゼンタ、シアン、及びイエロー色素を含有する他のインク組成物と併用することで、各種堅牢性に優れ、保存性の優れたフルカラーのインクジェット記録が可能であり、普通紙にも当然使用できる。
このように本発明のインク組成物は、インクジェット記録用の黒色インクとして極めて有用である。
【実施例】
【0155】
以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって限定されるものではない。
実施例中、特に断りのない限り、「部」及び「%」とあるのは、質量基準である。また、合成反応や晶析等の各操作については撹拌下に行った。1回の合成反応において目的とする化合物の必要量が得られなかった場合には、必要量が得られるまで該反応を繰り返し行った。
また、下記の各式において、スルホ、カルボキシ等の官能基は、便宜上、遊離酸の形で記載する。
また、実施例中に記載したpH値及び反応温度は、いずれも反応系内における測定値を示す。
また、合成した化合物の最大吸収波長(λmax)は、pH5〜8の水溶液中で測定し、測定した化合物については実施例中に測定値を記載した。
【0156】
また、下記式(26)の化合物は、国際公開第2005/097912号の実施例8に記載の方法により合成した。
【0157】
【化26】
【0158】
[合成例1]
(工程1)
2−アミノ−6−メトキシベンゾチアゾール5.0部を15%発煙硫酸16部中に15〜25℃でゆっくり添加した。添加後、同温度で2時間撹拌した後、60部の氷水中に約10分間かけて滴下した。析出した結晶を濾取し、乾燥して、下記式(27)で表される化合物6.4部を得た。
【0159】
【化27】
【0160】
(工程2)
50%硫酸20部に上記工程(1)で得られた式(27)で表される化合物3.2部を50%硫酸20部に懸濁し、撹拌下、5〜10℃で40%ニトロシル硫酸4.7部を約10分間かけて滴下することによりジアゾ懸濁液を得た。
一方、水30部に上記式(28)で表される化合物2.9部、スルファミン酸0.4部、次いで水酸化ナトリウムを加えてpH5.0〜5.5とすることにより水溶液を得た。
得られた水溶液に上記のジアゾ懸濁液を反応温度20〜30℃で、約10分間かけて滴下した。
滴下終了後、同温度で2時間撹拌し、水酸化ナトリウムを加えてpH0.7〜1.2にした後に析出固体を濾取することにより、下記式(29)で表される化合物を含むウェットケーキ11.8部を得た。
なお、下記式(28)の化合物は、特開2004−083492号公報に記載の方法で得た。
【0161】
【化28】
【0162】
【化29】
【0163】
(工程3)
水30部に下記式(30)で表される化合物2.7部、次いで水酸化ナトリウムを加えてpH7.5〜8.0とすることにより水溶液を得た。
一方、撹拌下、上記(工程2)で得られた式(29)で表される化合物を含むウェットケーキを水110部に懸濁し、水酸化ナトリウムを加えてpH6.0〜6.5とすることにより水溶液を得た。
得られた水溶液に35%塩酸2.6部、次いで反応温度15〜20℃で40%亜硝酸ナトリウム水溶液2.0部を約5分間かけて滴下することにより、ジアゾ懸濁液を得た。
得られたジアゾ懸濁液を、先に得られた式(30)で表される化合物を含む水溶液に、反応温度20〜30℃で、20分間かけて滴下した。この間、反応系内に炭酸ナトリウムを加えてpH値を7.0〜8.0に保持した。
滴下終了後、同温度で2時間撹拌し、塩化ナトリウムの添加により塩析し、析出した固体を濾取することにより、下記式(31)で表される化合物を含むウェットケーキ16.9部を得た。
【0164】
【化30】
【0165】
【化31】
【0166】
(工程4)
水30部に3,5−ジスルホアニリン12.7部、35%塩酸18.3部、次いで反応温度0〜5℃で40%亜硝酸ナトリウム水溶液9.1部を約5分間かけて滴下することにより、ジアゾ液を得た。
一方、撹拌下、アセチルこはく酸ジメチルに水9部、次いでエタノール2部を加え懸濁させた後、先に得られたジアゾ液を反応温度10〜20℃で、15分間かけて滴下した。
滴下後、反応系内に酢酸ナトリウムを加えてpH値を7.0〜8.0に保持した。滴下終了後、同温度で2時間撹拌し、反応系内に水酸化ナトリウムを加えてpH13.0〜13.5、15〜20℃で2時間撹拌後、35%塩酸を加えpH0〜0.5、5〜10℃で2時間撹拌し、析出した結晶を濾取し、下記式(32)で表される化合物10.9部を得た。
【0167】
【化32】
【0168】
(工程5)
水30部に上記(工程4)で得られた式(32)で表される化合物2.5部、次いで水酸化ナトリウムを加えてpH7.5〜8.0とすることにより水溶液を得た。
一方、撹拌下、上記(工程3)で得られた式(31)で表される化合物を含むウェットケーキ全量を水150部に溶解し、35%塩酸3.5部、次いで反応温度20〜25℃で40%亜硝酸ナトリウム水溶液1.5部を約5分間かけて滴下することにより、ジアゾ液を得た。
得られたジアゾ液を、先に得られた式(32)で表される化合物を含む水溶液に、反応温度20〜30℃で、30分間かけて滴下した。この間、反応系内に炭酸ナトリウムを加えてpH値を7.0〜8.0に保持した。
滴下終了後、同温度で2時間撹拌し、塩化ナトリウムを添加して塩析し、析出した固体を濾取することにより、ウェットケーキ40.8部を得た。得られたウェットケーキを水180部に溶解し、メタノール250部を添加して晶析し、析出した固体を濾取することによりウェットケーキを得た。さらに、得られたウェットケーキを水180部に溶解し、塩化リチウム22部を添加し、メタノール200部を添加して晶析し、析出した固体を濾取することによりウェットケーキを得た。得られたウェットケーキを再度、水80部に溶解し、メタノール200部を添加して晶析し、析出した固体を濾取し、乾燥することにより、下記式(33)で表される化合物(λmax:606.5nm)7.0部をリチウム塩として得た。なお、この化合物は、表7に記載のNo.38で表される化合物と、表7に記載のNo.40で表される化合物との混合物である。
【0169】
【化33】
【0170】
[合成例2]
上記式(32)の合成において、原料として、3,5−ジスルホアニリン12.7部に代えて、2−アミノナフタレン−4,6,8−トリスルホン酸19.2部を用いることによって、下記式(34)で表される化合物を得、これを原料として、合成例1の(工程5)を行うことにより、下記式(35)で表される化合物(λmax:607.0nm)を得た。なお、この化合物は、表5に記載のNo.32で表される化合物と、表6に記載のNo.33で表される化合物との混合物である。
【0171】
【化34】
【0172】
【化35】
【0173】
[合成例3]
下式(36)で表される化合物(λmax:604.0nm)を、特開2009−84346号公報の実施例2に記載の方法により合成した。この化合物は、表5に記載のNo.28で表される化合物と、表5に記載のNo.29で表される化合物との混合物である。
【0174】
【化36】
【0175】
[合成例4]
(工程1)
水200部に下記式(37)で表されるモノアゾ化合物(C.I.アシッドイエロー9)35.7部を加え、水酸化ナトリウムでpH6に調整しながら溶解し、次いで亜硝酸ナトリウム7.2部を加えた。この溶液を、0〜10℃に保った5%塩酸300部中に30分間かけて滴下した後、20℃以下で1時間撹拌してジアゾ化反応を行い、ジアゾ反応液を調製した。
【0176】
【化37】
【0177】
一方、260部の水中に、3−メチルアニリン10.7部、重亜硫酸水素ナトリウム10.4部、及び35%ホルマリン水溶液8.6部を加え、常法によりメチル−ω−スルホン酸誘導体とした。
得られたメチル−ω−スルホン酸誘導体水溶液を、先に調製したジアゾ反応液中に加え、0〜15℃、炭酸水素ナトリウムの添加によりpH4〜5に調整しながら5時間反応させた。反応液に35%塩酸100部を添加した後、70〜80℃でさらに5時間反応させた。反応液に塩化ナトリウムを加えて塩析し、析出固体を濾過分取することにより、下記式(38)で表される化合物120部をウェットケーキとして得た。
【0178】
【化38】
【0179】
(工程2)
水200部に上記式(37)で表されるモノアゾ化合物(C.I.アシッドイエロー9)35.7部を加え、水酸化ナトリウムでpH6に調整しながら溶解し、次いで亜硝酸ナトリウム7.2部を加えた。この溶液を、35%塩酸31.3部を水200部で希釈した水溶液中に、0〜10℃を保ちながら30分間かけて滴下した後、20℃以下で1時間撹拌してジアゾ化反応を行った。得られた反応液にスルファミン酸0.4部を添加し5分間撹拌してジアゾ反応液を調製した。
一方、40〜50℃の温水300部に、特開2004−083492号公報に記載の方法で得た下記式(39)で表される化合物24.0部及び25%水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH5〜6に調整し、水溶液を得た。この水溶液に上記で得られたジアゾ反応液を15〜25℃で、30分間かけて滴下した。滴下中は炭酸ナトリウム水溶液の添加によりpH5〜6に保持した。滴下後、同温度、同pHで2時間撹拌した後、35%塩酸の添加によりpH0〜1に調整した。得られた液を65℃に加熱し、同温度で2時間撹拌した後、室温まで冷却し、析出した固体を濾過分取することにより、下記式(40)で表される化合物を含むウェットケーキ130部を得た。
【0180】
【化39】
【0181】
【化40】
【0182】
(工程3)
水300部に上記(工程1)で得られた式(38)で表される化合物を含むウェットケーキ50部を25%水酸化ナトリウム水溶液の添加によりpH8〜9として溶解した。この溶液にライオン(株)社製、商品名:レオコール
RTMTD90(界面活性剤、以下「レオコール
RTMTD90」と省略)0.48部を加えた後、5〜10℃で塩化シアヌル7.3部を添加した。添加後、炭酸ナトリウム水溶液の添加によりpH値を6〜7に保持しながら5〜10℃で6時間撹拌した。
一方、水150部に上記(工程2)で得られた式(40)で表される化合物を含むウェットケーキ51部を25%水酸化ナトリウム水溶液の添加によりpH7〜8として溶解し、溶液を得た。この溶液を上記反応液に添加した後、65〜70℃に加熱し、炭酸ナトリウム水溶液の添加によりpH値を6〜7に保持しながら7時間撹拌した。次にピペラジン1.7部を添加した後、90〜95℃に加熱し、炭酸ナトリウム水溶液の添加によりpH値を7〜8に保持しながら18時間撹拌した。
得られた反応液を20〜30℃まで冷却後、塩化ナトリウムの添加により塩析し、析出した固体を濾過分取してウェットケーキを得た。
このウェットケーキを水600部に溶解した。この溶液にメタノール50部、次いで2−プロパノール800部を加え、30分間撹拌した。析出した固体を濾過分取することによりウェットケーキを得た。得られたウェットケーキを再度水400部に溶解し、2−プロパノール1000部を添加し、析出した固体を濾過分取し、乾燥することにより、下記式(41)で表されるアゾ化合物(λmax:435nm)25.3部をナトリウム塩として得た。
【0183】
【化41】
【0184】
[合成例5]
水250部に上記合成例4の(工程2)で得られた式(40)で表される化合物を含むウェットケーキ65部を25%水酸化ナトリウム水溶液の添加によりpH7〜8として溶解した。この溶液にレオコール
RTMTD90(0.10部)を加えた後、15〜25℃で塩化シアヌル3.8部を添加した。添加後、炭酸ナトリウム水溶液の添加によりpH値を5〜6に保持しながら15〜25℃で2時間撹拌した。次にこの反応液を60〜65℃に加熱し、炭酸ナトリウム水溶液の添加によりpH値を6〜7に保持しながら5時間撹拌した。
次にピペラジン0.89部を添加した後、90〜95℃に加熱し、炭酸ナトリウム水溶液の添加によりpH値を8〜9に保持しながら16時間撹拌した。
得られた反応液を20〜30℃まで冷却後、塩化ナトリウムの添加により塩析し、析出した固体を濾過分取してウェットケーキを得た。このウェットケーキを水400部に溶解した。この溶液にメタノール50部、次いで2−プロパノール800部を加え、30分間撹拌した。析出した固体を濾過分取することによりウェットケーキを得た。得られたウェットケーキを再度水200部に溶解し、2−プロパノール800部を添加し、析出した固体を濾過分取し、乾燥することにより、下記式(42)で表されるアゾ化合物(λmax:436nm)13.5部をナトリウム塩として得た。
【0185】
【化42】
【0186】
[実施例1乃至4、及び比較例1]
[(A)インクの調製]
下記表11に記載した各成分を混合することにより、本発明及び比較用のインク組成物をそれぞれ得た後、0.45μmのメンブランフィルタで夾雑物を濾別することにより、試験用のインクを得た。このインクの調製をそれぞれ実施例1乃至4、及び比較例1とする。得られた本発明のインクは、貯蔵中、沈殿分離を生じることなく、また長期間の保存後においても物性の変化は生じなかった。
また、以下の各実施例及び比較例において、インクの調製にはイオン交換水を使用した。インクの調製時においては、各インクのpHを8〜10に調整する目的で、適宜水酸化リチウムを用い、イオン交換水を加えることにより総量100部とした。
【0187】
【表11】
【0188】
上記表11について記載する。
表中、色素(I)、(II)、(III)は、本発明のインク組成物中に含有される、色素(I)、色素(II)、及び色素(III)にそれぞれ対応する。各色素の欄は破線により上下に2分割されており、上欄に記載の括弧付きの番号は、本実施例中に記載の化合物の式番号に対応しており、下欄には用いた部数を記載した。また、色素欄以外の、水溶性有機溶剤、各添加剤等の欄中に記載の数字は、いずれも組成物中における部数を記載した。
なお、表中の略号は以下の意味を表す。
GLY:グリセリン
NMP:N−メチル−2−ピロリドン
IPA:イソプロパノール
BCTL:ブチルカルビトール
EDTA・2Na:エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム
SURF:商品名サーフィノール
RTM 日信化学社製
【0189】
上記表11中、比較例に用いた色素(43)、(44)、及び(45)について記載する。
これらの化合物は国際公開第2007/077931号に開示された方法を追試することで、下記式(43)乃至(45)で表される化合物のナトリウム塩をそれぞれ得た。これらの色素を用いて表11に記載のインクを調製することで得たインクを比較例1とした。
【0190】
【化43】
【0191】
【化44】
【0192】
【化45】
【0193】
[(B)インクジェット記録]
上記の各実施例及び各比較例で得たそれぞれのインクを使用し、Canon社製インクジェットプリンタ、商品名「PIXUS
RTM iP4500」により、光沢紙であるヒューレットパッカート社製、商品名「写真用紙アドバンストフォトペーパー
RTM<高光沢>」にインクジェット記録を行った。インクジェット記録の際は、100%、80%、60%、40%、20%、10%濃度の6段階の階調が得られるように画像パターンを作り、濃黒色〜淡黒色のグラデーションの記録物を得た。得られた記録物は印刷後24時間以上室温で乾燥させ、これを試験片として各種評価に用いた。
【0194】
[(C)記録画像の評価]
上記のようにして得た各試験片を2種類の耐オゾンガス性試験に用いた。
記録画像の測色は、いずれもGRETAG−MACBETH社製の測色機、商品名「SpectroEye」を用いて行った。測色する際は、いずれも濃度基準にDIN NB、視野角2°、光源D65の条件で行った。
耐オゾンガス性試験では、試験前の記録画像のブラック反射濃度Dk値が1.2〜1.5の範囲にある階調部分を測色することにより測定した。具体的な試験方法は下記の通りである。
【0195】
1)耐オゾンガス性試験−1
スガ試験機社製、商品名「オゾンウェザオメーター」に試験片を設置し、オゾン濃度10pm、湿度50%RH、温度23℃の条件下で24時間放置した。オゾン暴露前及び暴露後の各試験片の記録画像について、CIEのL
*、a
*、b
*を測定し、下記式により色差ΔEを算出した。なお、下記計算式中、ΔL
*、Δa
*、及びΔb
*は、それぞれ暴露前後のL
*、a
*、及びb
*の差をそれぞれ意味する。
ΔE=(ΔL
*2+Δa
*2+Δb
*2)
1/2
試験結果は、以下の基準で評価を行った。オゾン暴露前後でのΔEが小さいものが試験前後の色変化が少なく優れた結果を表す。
評価結果を表12に示す。
A:ΔEが7.0未満
B:ΔEが7.0以上8.0未満
C:ΔEが8.0以上10.0未満
D:ΔEが10.0以上
【0196】
2)耐オゾンガス性試験−2
スガ試験機社製、商品名「オゾンウェザオメーター」に試験片を設置し、オゾン濃度10pm、湿度50%RH、温度23℃の条件下で48時間放置した。オゾン暴露前及び暴露後の各試験片の記録画像について、CIEのL
*、a
*、b
*を測定し、下記式により色差ΔEを算出した。なお、下記計算式中、ΔL
*、Δa
*、及びΔb
*は、それぞれ暴露前後のL
*、a
*、及びb
*の差をそれぞれ意味する。
評価結果を表12に示す。
A:ΔEが12.0未満
B:ΔEが12.0以上15.0未満
C:ΔEが15.0以上18.0未満
D:ΔEが18.0以上
【0197】
【表12】
【0198】
表12の結果より明らかなように、各実施例のインクは、全ての試験項目において非常に優れた結果を示した。
具体的には、各実施例のインクは、比較例1のインクと比較してオゾンガスの暴露に対する色変化がいずれも少なく、耐オゾンガス性に優れる印刷画像を与えることが明らかである。
【0199】
上記「(A)インクの調製」と同様にして下記表13に記載した各成分を混合することにより、本発明及び比較用のインク組成物をそれぞれ得た後、0.45μmのメンブランフィルタで夾雑物を濾別することにより、試験用のインクを得た。このインクの調製をそれぞれ実施例1乃至4、及び比較例2乃至5とする。なお、表13中の略号は、表11と同じものを示す。
【0200】
【表13】
【0201】
上記「(B)インクジェット記録」と同様にして、各実施例及び比較例2乃至4で得たそれぞれのインクを使用し、Canon社製インクジェットプリンタ、商品名「PIXUS
RTM iP4500」により、光沢紙である富士フィルム社製、商品名「画彩写真仕上げPro
RTM<高光沢>」にインクジェット記録を行った。インクジェット記録の際は、最も濃く印刷される100%濃度階調が得られるように画像パターンを作り、黒色の記録物を得た。得られた記録物は印刷後24時間以上室温で乾燥させ、これを試験片として各種評価に用いた。
【0202】
上記「(C)記録画像の評価」と同様に、GRETAG−MACBETH社製の測色機、商品名「SpectroEye」を用いて彩度試験を行った。測色する際は、いずれも濃度基準にDIN NB、視野角2°、光源D65の条件で行った。
【0203】
4)彩度試験
黒色の色相の品質を評価するため、印刷した各試験片の、彩度C
*値を評価した。評価する際は上記測色システムを用いて、CILのL
*、a
*、b
*を測色し、下記式を用いて算出した。
C
*=(a
*2+b
*2)
1/2
試験結果は、以下の基準で評価を行った。評価結果を表14に示す。C
*値は小さい方(0に近い方)が無彩色で色味の無い高品質の黒色に近づくため優れる。
A:C
*値が5未満
B:C
*値が5以上8未満
C:C
*値が8以上10未満
D:C
*値が10以上
【0204】
【表14】
【0205】
表14の結果より明らかなように、各実施例のインクは各比較例のインクと比べ、優れた結果を示した。
具体的には、比較例2乃至4のように、色素(I)、色素(II)のどちらか一方からなるインクや、比較例5のように、色素(I)と色素(II)との両者からなるインクでは、ニュートラルで且つ無彩な黒色の色相を与えず、黒色の品質としては不適切であることが明らかである。
一方、本発明の色素(I)、色素(II)、及び色素(III)を含有する各実施例のインクは、得られた彩度がいずれも5以下であり、より無彩色なブラックで高品位な黒色色相の記録画像を与えることが明らかである。
【0206】
以上の結果から、いずれも特定の色素(I)乃至(III)の3種類の色素を含有する本発明のインク組成物は、従来の黒色インク組成物と比較して、インクジェット記録画像に要求される各種の堅牢性、特に耐オゾンガス性に極めて優れ、また印字濃度も十分に高く、また彩度が低く色味のないニュートラルな高品質の、黒色の記録画像を与えることが判明した。