(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の実施形態を、添付する図面に基づいて詳細に述べる。尚、この説明に際し、全図にわたり、特に言及がない限り、共通する部分には共通する参照符号が付されている。また、図中、本実施形態の要素は必ずしもスケール通りに示されていない。また、各図面を見やすくするために、一部の符号が省略され得る。
【0022】
<第1の実施形態>
本実施形態では、1つの複合材料及びその製造方法を示す。
図1は、本実施形態における母材であるシリコン基板100の表面上への第1金属の分散配置装置10の説明図である。
図2は、そのシリコン基板100の表面から非貫通孔を形成する非貫通孔形成装置20の説明図である。また、
図3は、その非貫通孔への第2金属又は第2金属合金を充填するとともに、シリコン基板100の表面上に第2金属又は第2金属合金の膜又は層(以下、便宜上、「層」に表現を統一する)を形成するめっき装置30の説明図である。なお、本実施形態の第1金属は、銀(Ag)であり、その第2金属又は第2金属合金は、コバルト(Co)である。
【0023】
本実施形態では、まず、
図1に示すように、シリコン基板100が、予め5℃に調整された、モル濃度が1mmol(ミリモル)/L(リットル)の硝酸銀(AgNO
3)とモル濃度が150mmol/Lのフッ化水素酸(HF)を含有する水溶液(以下、第1溶液ともいう)14を収めた容器12の中に30秒間浸漬される。その結果、粒径が7nm乃至30nmの粒子状の第1金属102である銀(Ag)が、シリコン基板100の表面上に約1.8×10
11個/cm
2の数密度で略均一に析出していることが確認された。
図4は、このときのシリコン基板100の表面の走査電子顕微鏡(以下、SEMという)写真である。なお、本実施形態のシリコン基板100は、p型シリコン基板であった。なお、シリコン基板100は、その浸漬中、シリコン基板100の一部を覆う公知のフルオロカーボン系樹脂製保持具によって保持されているが、図を見やすくするために省略されている。シリコン基板100の保持具の省略は、以下の
図2及び
図3においても同様である。また、本実施形態における第1金属102は、第1溶液14中への浸漬によって粒子状又はアイランド状に分散配置されるが、本実施形態では、便宜上、「粒子状」に表現を統一して説明する。
【0024】
次に、
図2に示すように、前述の粒子状の第1金属102である銀を担持したシリコン基板100が、暗室26内でモル濃度が7.3mol(モル)/L(リットル)のフッ化水素酸(以下、第2溶液ともいう)24を収めた容器22の中に10分間浸漬される。その結果、シリコン基板100の表面から形成された多数の微細孔である非貫通孔104が確認された。また、大変興味深いことに、それらの非貫通孔104の底部には微粒子Xが存在していることが分かった。
図5は、非貫通孔104とその底部にある微粒子Xを示す断面SEM写真である。なお、このSEM写真から、非貫通孔104の孔径は数nm乃至数十nmであることが確認される。すなわち、非貫通孔104の孔径がシリコン基板100の表面上に分散配置された粒子状の第1金属102である銀の粒径と良く符合していることが分かる。
【0025】
上述のとおり、第2溶液24はフッ化水素酸であって、その溶液中には銀と異なる微粒子が存在しない。従って、微粒子Xは、本実施形態では、第1溶液14によって形成されたシリコン表面上の粒子状の第1金属102である銀であると結論付けられる。他方、
図5のSEM写真から、非貫通孔104の深さが平均的に約50nmであることが分かった。
【0026】
その後、
図3に示すように、金属塩である硫酸コバルト(CoSO
4)及び還元剤であるジメチルアミンボラン(DMAB)を含有する水溶液(以下、第3溶液ともいう)34をめっき溶液として、上述の非貫通孔104が形成されたシリコン基板100が浸漬される。本実施形態では、シリコン基板100が第3溶液34中に無電解の環境下で120秒間浸漬された。
図6は、第3溶液34中に120秒間浸漬した後のシリコン基板100の表面近傍の断面SEM写真である。第2溶液24によって形成された非貫通孔104が、実質的に、第2金属106aであるコバルト(Co)(以下、単にコバルトともいう)によって空隙が形成されずに充填されていることが確認される。
【0027】
図6に示すとおり、シリコン基板100に形成された非貫通孔104内以外の表面上にも、第2金属106bであるコバルト(Co)が形成されている。従って、シリコン基板100は、上述のめっき法を採用することにより、第2金属106bであるコバルト(Co)層によって覆われる。尚、本実施形態における非貫通孔104の充填物質は、実質的にはコバルトであるといえるが、極めて正確に表現すれば、ホウ素が原子百分率(atom%)において略0%乃至0.2%であるコバルト−ホウ素合金(Co−B)であるともいえる。
【0028】
本実施形態では、非貫通孔104の底部に位置する粒子状の第1金属102である銀が起点となって、自己触媒型無電解めっき法によって、第2金属106aであるコバルト(Co)がその非貫通孔104を、空隙を形成することなく充填している。すなわち、当初の触媒である粒子状の銀が、めっき材としてのコバルト(Co)によって覆われてしまったとしても、そのコバルト(Co)自身が触媒の機能を発揮するために、その後も継続的にコバルト(Co)を析出させることが可能となる。さらに、非貫通孔104が充填された後も継続してその自己触媒性が維持されることから、その非貫通孔104内以外のシリコン基板100の表面は、第2金属106bであるコバルト(Co)によって覆われる。また、自己触媒型の無電解めっき法により、第2金属(又は第2金属の合金)によるめっき処理の際に、非貫通孔104の底部に位置する粒子状の第1金属102が起点となるため、多数の非貫通孔が形成された場合であっても、確度が高く、且つ空隙が形成されにくい孔の充填が可能となる。その結果、精密に充填された非貫通孔104内の第2金属106aであるコバルト(Co)がアンカーとなるため、シリコン基板100の表面との密着性の高い第2金属106a,106bであるコバルト(Co)の層が形成される。なお、この複合材料の第2金属106bの層の厚みは約250nmであった。この層の厚みは重量法によって求められている。以下の各実施形態に記載されている全ての第2金属の層又は第2金属の合金の層の厚みも同様である。
【0029】
ここで、JIS H8504めっきの密着性試験方法に準拠した方法により、本実施形態の複合材料について定性的な密着性が調べられた。但し、複合材料上には、JIS Z1522セロハン粘着テープ(ニチバン株式会社製テープ(型式CT−18)に相当)の代わりに、非常に粘着力が高いテープ(住友スリーエム株式会社製,型式859T)が採用された。なお、この粘着力が高いテープの密着力は、実験上、1317J/m
2以上であることが確認されている。
【0030】
上述の密着性の試験の結果、本実施形態の複合材料の剥離が確認されなかった。従って、本実施形態のコバルト(Co)層(又は、コバルト−ホウ素合金(Co−B)の層)の密着力は、1317J/m
2よりも高いことが分かった。すなわち、本実施形態の複合材料の密着力が非常に高いことが確認された。
【0031】
次に、本実施形態と一部の工程が異なる方法で形成されたシリコン基板100の表面と第2金属106bの層であるコバルト(Co)層との密着力を測定した。具体的には、第3溶液34中への浸漬時間を600秒とした以外は本実施形態と同じ工程を経た測定サンプルについて、
図13に示す密着力測定装置40を用いて行われた。なお、この測定サンプルの第2金属の層の厚みは約730nmであった。
【0032】
この測定の手順は、まず、測定サンプルにテープ(ニチバン株式会社製,型式CT−18)42の一部を貼り付ける。次に、
図13に示すように、押さえ部44を用いて押さえられたテープ42の一端を密着力測定装置40によって掴んだ後、第2金属106bの層の表面に対して垂直に当該テープ42が一定速度で引き上げられる。密着力の測定は、その引き上げの際に、当該テープ42に加わる力をデジタルフォースゲージ(株式会社イマダ製、DPS−5R)で読み取ることによって行われた。
【0033】
その結果、密着力は、426J/m
2よりも高いことが分かった。比較例として、上述の非貫通孔形成工程及びコバルト(Co)の充填工程がされていない、前述の測定サンプルと同等の膜厚を有するシリコン基板100上のコバルト(Co)層の密着力は、203J/m
2であった。従って、本実施形態の複合材料の密着力が、比較例に対して2倍以上強いことが確認された。
【0034】
加えて、本実施形態では、上述の
図1乃至
図3に示す工程の全てが無電解工程で行われている。従って、本実施形態は、汎用性の高い母材を用いた上で量産性の高いめっき法を適用していることに加え、電解めっき法で要求される電極や電源等の設備も不要となるためコスト面でも非常に有利である。
【0035】
<第2の実施形態>
本実施形態では、他の複合材料及びその製造方法を示す。但し、本実施形態の複合材料の製造方法は、一部の条件を除いて第1の実施形態のそれと同じである。従って、第1の実施形態と重複する説明は省略され得る。なお、本実施形態における第1金属102は、第1溶液14中への浸漬によって粒子状又はアイランド状に分散配置されるが、本実施形態では、便宜上、「粒子状」に表現を統一して説明する。
【0036】
本実施形態では、
図1に示す分散配置装置10の装置構成を用いて、母材であるシリコン基板100の表面上への粒子状の第1金属102である銀(Ag)の分散配置を行った。具体的には、予め5℃に調整された、モル濃度が1mmol(ミリモル)/L(リットル)の硝酸銀(AgNO
3)とモル濃度が150mmol/Lのフッ化水素酸(HF)を含有する水溶液が本実施形態の第1溶液14として採用される。
【0037】
次に、前述の粒子状の銀(Ag)を担持したシリコン基板100が、第1の実施形態と同じ第2溶液24中に浸漬される。但し、本実施形態の浸漬時間は15分であった。その結果、シリコン基板100の表面から形成された多数の微細孔である非貫通孔が確認された。また、本実施形態においても、それらの非貫通孔の底部には前述の銀(Ag)と考えられる微粒子が存在していることが分かった。なお、本実施形態の非貫通孔の深さは、最大で約180nmであり、平均的に約100nmであった。
【0038】
その後、金属塩である硫酸コバルト(CoSO
4)及び硫酸ニッケル(NiSO
4)と、還元剤であるジメチルアミンボラン(DMAB)を含有し、70℃に温められた第3溶液34をめっき溶液として、上述の非貫通孔が形成されたシリコン基板100が浸漬される。本実施形態では、シリコン基板100が第3溶液中34に無電解の環境下で120秒間浸漬された。その結果、第2溶液24によって形成された非貫通孔が、コバルト−ニッケル−ホウ素合金(Co−Ni−B)によって空隙が形成されずに充填されるとともに、シリコン基板100に形成された非貫通孔内以外の表面上にも、コバルト−ニッケル−ホウ素合金(Co−Ni−B)が形成されていることが確認された。なお、本実施形態において、コバルトは、百分率(重量%)において約90%含まれ、ニッケルは、百分率(重量%)において約6%含まれ、ホウ素は、百分率(重量%)において約4%含まれていた。
【0039】
上述のとおり、本実施形態においても、非貫通孔の底部に位置する第1金属102である銀(Ag)の微粒子が起点となり、自己触媒型無電解めっき法によって、第2金属の合金206aであるコバルト−ニッケル−ホウ素合金(Co−Ni−B)が空隙を形成することなくその非貫通孔を充填する。さらに、非貫通孔が充填された後も継続してその自己触媒性が維持されることから、その非貫通孔内以外のシリコン基板100の表面は、コバルト−ニッケル−ホウ素合金(Co−Ni−B)の層によって覆われる。その結果、精密に充填された非貫通孔104内のコバルト−ニッケル−ホウ素合金(Co−Ni−B)がアンカーとなるため、シリコン基板100の表面との密着性の高い第2金属の合金206a,206bであるコバルト−ニッケル−ホウ素合金(Co−Ni−B)の層が形成される。
図7は、第2金属の合金206a,206bであるコバルト−ニッケル−ホウ素合金(Co−Ni−B)が前述の非貫通孔を充填するとともに、シリコン表面を覆っている状況を示す複合材料の断面SEM写真である。
【0040】
ここで、本実施形態と一部の工程が異なる方法で形成されたシリコン基板100の表面とコバルト−ニッケル−ホウ素合金(Co−Ni−B)の層との密着力を測定した。具体的には、第3溶液34中への浸漬時間を180秒とした以外は本実施形態と同じ工程を経た測定サンプルについて、JIS H8504めっきの密着性試験方法に従った方法で定性的な密着性が調べられた。すなわち、使用されたテープの種類は、JIS Z1522セロハン粘着テープ(ニチバン株式会社製テープ(型式CT−18)に相当)であった。
【0041】
その結果、前述の測定サンプルは、剥離が確認されなかった。比較例として、上述の非貫通孔形成工程及びコバルト−ニッケル−ホウ素合金(Co−Ni−B)の充填工程がされていないシリコン基板上のコバルト−ニッケル−ホウ素合金(Co−Ni−B)の層については、120秒間の第3溶液中への浸漬により、自然にその層が剥がれていった。従って、そもそもコバルト−ニッケル−ホウ素合金(Co−Ni−B)の層自身が形成されなかったものが、本実施形態によってその層が密着性よく形成されるようになることが明らかとなった。
【0042】
さらに、前述のJIS Z1522セロハン粘着テープの代わりに、非常に粘着力が高いテープ(住友スリーエム株式会社製,型式859T)を用いることにより、JIS H8504めっきの密着性試験方法に準拠した密着性が調べられた。その結果、本実施形態の複合材料の剥離が確認されなかった。従って、本実施形態の複合材料のコバルト−ニッケル−ホウ素合金(Co−Ni−B)の層の密着力は、1317J/m
2よりも高いことが分かった。従って、本実施形態の複合材料の密着性も、極めて高いことが実験により確認された。
【0043】
また、これまでの実施形態と同様、本実施形態も上述の全ての工程が無電解工程で行われるため、電解めっき法で要求される電極や電源等の設備も不要となる。また、自己触媒型の無電解めっき法により、第2金属によるめっき処理の際に、非貫通孔の底部に位置する第1金属の微粒子が起点となるため、多数の非貫通孔が形成された場合であっても、確度が高く、且つ空隙が形成されにくい孔の充填が可能となる。
【0044】
<第3の実施形態>
本実施形態では、もう1つの複合材料及びその製造方法を示す。但し、本実施形態の複合材料の製造方法は、母材を除いて第1の実施形態のそれと同じである。従って、第1の実施形態と重複する説明は省略され得る。なお、本実施形態における第1金属302は、第1溶液14中への浸漬によって粒子状又はアイランド状に分散配置されるが、本実施形態では、便宜上、「粒子状」に表現を統一して説明する。
【0045】
本実施形態の母材は、多結晶シリコン基板300である。本実施形態でも、
図1に示す分散配置装置10の装置構成を用いて、母材である多結晶シリコン基板の表面への第1金属302である銀(Ag)の分散配置を行った。具体的には、第1の実施形態と同様に、予め5℃に調整された、モル濃度が1mmol(ミリモル)/L(リットル)の硝酸銀(AgNO
3)とモル濃度が150mmol/Lのフッ化水素酸(HF)を含有する第1溶液14を収めた容器12の中に30秒間浸漬される。なお、本実施形態の多結晶シリコン基板300は、n型であった。
【0046】
次に、
図2に示す非貫通孔形成装置20の装置構成を用いて、前述の粒子状の銀(Ag)を担持した多結晶シリコン基板300が、第1の実施形態と同じ第2溶液24中に浸漬される。なお、本実施形態の浸漬時間は10分間である。その結果、
図8に示すように、多結晶シリコン基板300の表面から形成された多数の微細孔である非貫通孔304が確認された。また、本実施形態においても、それらの非貫通孔304の底部には前述の銀(Ag)と考えられる微粒子(第1金属302)が存在していることが分かった。なお、本実施形態の非貫通孔304の深さは、最大で約120nmであり、平均的に約40nmであった。
【0047】
その後、
図3に示すめっき装置30により、第2金属の合金が多結晶シリコン基板300上に形成される。具体的には、金属塩である硫酸ニッケル(NiSO
4)と、還元剤であるジメチルアミンボラン(DMAB)を含有する第3溶液34をめっき溶液として、上述の非貫通孔304が形成された多結晶シリコン基板300が浸漬される。なお、本実施形態では、多結晶シリコン基板300が第3溶液中34に無電解の環境下で300秒間浸漬される。その結果、第2溶液24によって形成された非貫通孔304が、第2金属の合金306aであるニッケル−ホウ素合金(Ni−B)によって空隙が形成されずに充填されるとともに、多結晶シリコン基板300に形成された非貫通孔304内以外の表面上にも、ニッケル−ホウ素合金(Ni−B)の層306bが形成されていることが確認された。
【0048】
上述のとおり、本実施形態においても、非貫通孔304の底部に位置する第1金属302である銀(Ag)の微粒子が起点となり、自己触媒型無電解めっき法によって、第2金属の合金306aであるニッケル−ホウ素合金(Ni−B)が空隙を形成することなくその非貫通孔304を充填する。さらに、非貫通孔304が充填された後も継続してその自己触媒性が維持されることから、その非貫通孔304内以外の多結晶シリコン基板300の表面は、第2金属の合金306bであるニッケル−ホウ素合金(Ni−B)の層によって覆われる。その結果、精密に充填された非貫通孔304内のニッケル−ホウ素合金(Ni−B)がアンカーとなるため、多結晶シリコン基板300の表面との密着性の高い第2金属の合金306a,306bであるニッケル−ホウ素合金(Ni−B)の層が形成される。
図9は、第2金属の合金306a,306bであるニッケル−ホウ素合金(Ni−B)が前述の非貫通孔304を充填するとともに、多結晶シリコンの表面を覆っている状況を示す複合材料の断面SEM写真である。
【0049】
また、自己触媒型の無電解めっき法が採用されることにより、非貫通孔の底部に位置する第1金属が起点となって第2金属又はその合金によるめっき処理が進行する。そのため、母材表面上に多結晶シリコンのような比較的大きい凹凸が存在している場合であっても、空隙が生じにくい第2金属又は第2金属の合金の層が形成された複合材料が得られる。
【0050】
次に、本実施形態の製造方法によって形成された複合材料の、母材である多結晶シリコン基板300の表面と第2金属の合金306a,306bであるニッケル−ホウ素合金(Ni−B)の層との密着力が測定された。具体的には、JIS Z1522セロハン粘着テープの代わりに、非常に粘着力が高いテープ(住友スリーエム株式会社製,型式859T)を用いることにより、JIS H8504めっきの密着性試験方法に準拠した密着性が調べられた。
【0051】
その結果、本実施形態の複合材料の剥離が確認されなかった。従って、本実施形態の複合材料のニッケル−ホウ素合金(Ni−B)の層の密着力は、1317J/m
2よりも高いことが分かった。従って、本実施形態の複合材料の密着性も、極めて高いことが実験により確認された。なお、この複合材料のニッケル−ホウ素合金(Ni−B)の層の厚さは約250nmであった。
【0052】
ところで、本実施形態では、多結晶シリコン基板が採用されているが、これに限定されない。例えば、例えば、下地にシリコン酸化物を備えた基板を採用し、その表面上に、公知のCVD法によって形成された多結晶シリコン層を有している母材が採用されても、多結晶シリコン層と第2金属層又は第2金属の合金の層との間の高い密着力が得られる。また、多結晶シリコン層がp型であっても、実質的に本実施形態の効果と同様の効果が奏される。
【0053】
本実施形態においても、上述の
図1及び
図3に示す工程の全てが無電解工程で行われている。従って、本実施形態は、汎用性の高い多結晶シリコンを備えた母材を用いた上で量産性の高いめっき法を適用していることに加え、電解めっき法で要求される電極や電源等の設備も不要となるためコスト面でも非常に有利である。
【0054】
<第4の実施形態>
本実施形態では、もう1つの複合材料及びその製造方法を示す。但し、本実施形態の複合材料の製造方法は、母材を除いて第1の実施形態のそれと同じである。従って、第1の実施形態と重複する説明は省略され得る。なお、本実施形態における第1金属402は、第1溶液14中への浸漬によって粒子状又はアイランド状に分散配置されるが、本実施形態では、便宜上、「粒子状」に表現を統一して説明する。
【0055】
本実施形態の母材400は、下地にグラッシーカーボンを採用し、その表面上に、水素化微結晶シリコン層(n型微結晶炭化シリコン(SiC)層25nmとi型微結晶シリコン層2〜3μmとの積層構造)を有している。本実施形態でも、
図1に示す分散配置装置10の装置構成を用いて、母材400の表面への第1金属402である銀(Ag)の分散配置を行った。具体的には、第1の実施形態と同様に、予め5℃に調整された、モル濃度が1mmol(ミリモル)/L(リットル)の硝酸銀(AgNO
3)とモル濃度が150mmol/Lのフッ化水素酸(HF)を含有する第1溶液14を収めた容器12の中に30秒間浸漬される。
【0056】
次に、
図2に示す非貫通孔形成装置20の装置構成を用いて、前述の粒子状の銀(Ag)を担持した母材400が、第1の実施形態と同じ第2溶液24中に浸漬される。なお、本実施形態の浸漬時間は10分である。その結果、
図10に示すように、母材400の表面から形成された多数の微細孔である非貫通孔404が確認された。また、本実施形態においても、それらの非貫通孔404の底部には前述の銀(Ag)と考えられる微粒子(第1金属402)が存在していることが分かった。なお、本実施形態の非貫通孔の深さは、最大で約170nmであり、平均的に約40nmであった。
【0057】
その後、
図3に示すめっき装置30により、第2金属の合金が母材400上に形成される。具体的には、金属塩である硫酸ニッケル(NiSO
4)と、還元剤であるジメチルアミンボラン(DMAB)を含有する第3溶液34をめっき溶液として、上述の非貫通孔404が形成された母材400が浸漬される。本実施形態では、母材400が第3溶液中34に無電解の環境下で300秒間浸漬される。その結果、第2溶液24によって形成された非貫通孔404が、第2金属の合金406aであるニッケル−ホウ素合金(Ni−B)によって空隙が形成されずに充填されるとともに、母材400に形成された非貫通孔404内以外の表面上にも、ニッケル−ホウ素合金(Ni−B)の層406bが形成される。
【0058】
上述のとおり、本実施形態においても、非貫通孔404の底部に位置する第1金属102である銀(Ag)の微粒子が起点となり、自己触媒型無電解めっき法によって、第2金属の合金406aであるニッケル−ホウ素合金(Ni−B)が空隙を形成することなくその非貫通孔404を充填する。さらに、非貫通孔404が充填された後も継続してその自己触媒性が維持されることから、その非貫通孔404内以外のシリコン基板100の表面は、第2金属の合金406bであるニッケル−ホウ素合金(Ni−B)の層によって覆われる。その結果、精密に充填された非貫通孔404内のニッケル−リン合金(Ni−P)がアンカーとなるため、母材400の表面との密着性の高い第2金属の合金406a,406bであるニッケル−ホウ素合金(Ni−B)の層が形成される。
図11は、第2金属の合金406a,406bであるニッケル−ホウ素合金(Ni−B)が前述の非貫通孔404を充填するとともに、微結晶シリコン表面を覆っている状況を示す複合材料の断面SEM写真である。
【0059】
また、自己触媒型の無電解めっき法が採用されることにより、非貫通孔の底部に位置する第1金属が起点となって第2金属又はその合金によるめっき処理が進行する。そのため、母材表面上に微結晶シリコンのような比較的大きい凹凸が存在している場合であっても、空隙が生じにくい第2金属又は第2金属の合金の層が形成された複合材料が得られる。
【0060】
次に、本実施形態の製造方法によって形成された複合材料の、母材400の表面の微結晶シリコン層と第2金属の合金406a,406bであるニッケル−ホウ素合金(Ni−B)の層との密着力が測定された。具体的には、JIS Z1522セロハン粘着テープの代わりに、非常に粘着力が高いテープ(住友スリーエム株式会社製,型式859T)を用いることにより、JIS H8504めっきの密着性試験方法に準拠した密着性が調べられた。なお、この複合材料のニッケル−ホウ素合金(Ni−B)の層の厚さは約310nmであった。
【0061】
その結果、本実施形態の複合材料の剥離が確認されなかった。従って、本実施形態の複合材料のニッケル−ホウ素合金(Ni−B)の層の密着力は、1317J/m
2よりも高いことが分かった。従って、本実施形態の複合材料の密着性も、極めて高いことが実験により確認された。
【0062】
本実施形態においても、上述の
図1及び
図3に示す工程の全てが無電解工程で行われている。従って、本実施形態は、汎用性の高い微結晶シリコンを備えた母材を用いた上で量産性の高いめっき法を適用していることに加え、電解めっき法で要求される電極や電源等の設備も不要となるためコスト面でも非常に有利である。
【0063】
ところで、上述の各実施形態では、充填されるめっき材が、コバルト(Co)、コバルト−ホウ素合金(Co−B)、コバルト−ニッケル−ホウ素合金(Co−Ni−B)、及びニッケル−リン合金(Ni−P)であったが、これに限定されない。例えば、コバルト−リン合金(Co−P)、ニッケル−ホウ素合金(Ni−B)、銅(Cu)をめっき材として、上述の各実施形態と同様、自己触媒型めっき法により多数の微細な非貫通孔を充填することが可能である。また、上述の各非貫通孔が形成されるに十分な厚みの単結晶シリコン層、多結晶シリコン層、微結晶シリコン層を最上層に備えた母材であれば、上述の各実施形態の効果とほぼ同様の効果が得られる。加えて、単結晶シリコン層、多結晶シリコン層、及び微結晶シリコン層の群から選ばれる少なくとも1つの材料を最上層に備えた母材であっても、上述の各実施形態の効果とほぼ同様の効果が得られる。
【0064】
<その他の実施形態1>
具体的には、例えば、ニッケル−ホウ素合金(Ni−B)をめっき材として充填するためには、まず、モル濃度が1mmol(ミリモル)/L(リットル)の硝酸銀(AgNo
3)と、モル濃度が150mmol/Lのフッ化水素酸(HF)を含有する水溶液が本実施形態の第1溶液として採用される。次に、第1金属である銀(Ag)が分散配置されたシリコン基板100が第1の実施形態と同じ第2溶液中に浸漬される。その後、金属塩である硫酸ニッケル及び還元剤であるジメチルアミンボラン(DMAB)を含有する水溶液が第3溶液として採用されることにより、シリコン基板100の非貫通孔内がニッケル−ホウ素合金(Ni−B)で充填されるとともに、その非貫通孔内以外のシリコン基板100の表面は、ニッケル−ホウ素合金(Ni−B)の層によって覆われる。
図12は、非貫通孔及び非貫通孔内以外のシリコン表面が、180秒間の第3溶液中の浸漬により、第2金属の合金506a,506bであるニッケル−ホウ素合金(Ni−B)でめっきされたときのSEM写真である。
【0065】
ここで、第3溶液中への浸漬時間を360秒とした以外は前述のニッケル−ホウ素合金(Ni−B)の層の形成工程と同じ工程を経た測定サンプルについて、第1の実施形態と同じテープ(ニチバン株式会社製,型式CT−18)を用いた密着性試験を行った。
【0066】
その結果、前述の測定サンプルは、剥離が確認されなかった。比較例として、上述の非貫通孔形成工程及びニッケル−ホウ素合金(Ni−B)の充填工程がされていないシリコン基板100上のニッケル−ホウ素合金(Ni−B)の層については、120秒間の第3溶液34中への浸漬により、自然にその層が剥がれていった。従って、そもそもニッケル−ホウ素合金(Ni−B)の層自身が形成されなかったものが、本実施形態によってその層が密着性よく形成されるようになることが明らかとなった。
【0067】
さらに、JIS Z1522セロハン粘着テープの代わりに、非常に粘着力が高いテープ(住友スリーエム株式会社製,型式859T)を用いることにより、JIS H8504めっきの密着性試験方法に準拠した本実施形態の複合材料の密着性が調べられた。
【0068】
その結果、本実施形態の複合材料の剥離が確認されなかった。従って、本実施形態の複合材料のニッケル−ホウ素合金(Ni−B)の層の密着力は、1317J/m
2よりも高いことが分かった。従って、本実施形態の複合材料の密着性も、極めて高いことが実験により確認された。
【0069】
ところで、上述の各実施形態では、第1溶液にフッ化水素酸が含有されていたが、これに限定されない。例えば、フッ化水素の代わりにフッ化アンモニウム(NH
4F)が用いられても本発明の効果と略同様の効果が奏される。
【0070】
また、上述の各実施形態では、第1金属として銀(Ag)が用いられていたが、これにも限定されない。例えば、パラジウム(Pd)、金(Au)、白金(Pt)、又はロジウム(Rhであっても良い。すなわち、第1金属が、第2金属又は第2金属の合金を自己触媒型のめっき材にするための起点となる触媒であれば、本発明の効果と略同様の効果が奏される。
【0071】
<その他の実施形態2>
例えば、第1金属として、金(Au)を用いた場合について説明する。まず、シリコン基板100が、予め5℃に調整され、モル濃度が1mmol(ミリモル)/L(リットル)のテトラクロロ金酸(HAuCl
4)とモル濃度が150mmol/Lのフッ化水素酸(HF)を含有する水溶液(第1溶液)に10秒間浸漬された。次に、金の微粒子を担持したシリコン基板100が、第1の実施形態と同じ第2溶液中に15分間浸漬された。その後、金属塩である硫酸ニッケル(NiSO
4)と、還元剤であるジメチルアミンボラン(DMAB)を含有する水溶液をめっき溶液としてめっき工程が行われた。このようにして、金(Au)を第1金属とするニッケル−ホウ素合金(Ni−B)層を備えたシリコン基板100の測定サンプルが作製された。
【0072】
この金(Au)を第1金属とする測定サンプルについて第2の実施形態と同じ密着性試験を行った結果、めっき層は、剥離が確認されなかった。従って、金(Au)を第1金属とした場合であっても、本発明の効果が奏されることが確認された。
【0073】
<その他の実施形態3>
また、第1金属として、白金(Pt)を用いた場合について説明する。まず、シリコン基板100が、予め40℃に調整され、モル濃度が1mmol(ミリモル)/L(リットル)のヘキサクロロ白金(IV)酸とモル濃度が150mmol/Lのフッ化水素酸(HF)を含有する水溶液(第1溶液)に60秒間浸漬された。次に、金の微粒子を担持したシリコン基板100が、第1の実施形態と同じ第2溶液中に60分間浸漬された。その後、金属塩である硫酸ニッケル(NiSO
4)と、還元剤であるジメチルアミンボラン(DMAB)を含有する水溶液をめっき溶液としてめっき工程を行われた。このようにして、白金(Pt)を第1金属とするニッケル−ホウ素合金(Ni−B)の層を備えたシリコン基板100の測定サンプルが作製された。
【0074】
この白金(Pt)を第1金属とする測定サンプルのめっき層の形成状況について目視観察を行った。その結果、前述の測定サンプルは、シリコン基板100上に均一にめっき層が形成されることが確認された。一方、比較例として、上述の非貫通孔形成工程及びニッケル−ホウ素合金(Ni−B)の充填工程がされていないシリコン基板100上のニッケル−ホウ素合金(Ni−B)の層については、第3溶液34中への浸漬により、その層の一部が自然に剥がれていった。従って、そもそもニッケル−ホウ素合金(Ni−B)の層自身が形成されなかったものが、本実施形態によってその層が形成されるようになることが明らかとなった。従って、白金(Pt)を第1金属とした場合であっても、本発明の効果が奏されることが確認された。
【0075】
ところで、第1金属として、上述の各金属の内の複数種の金属がシリコン上に分散配置されていても本発明の効果と同様の効果が奏される。また、上述の各実施形態の説明の中では述べていないが、いずれの実施形態においても、第1金属が、不純物が全く含まれていない純金属である必要はない。通常含まれうる不純物であれば、本発明の実質的な効果は奏される。さらに、上述の各実施形態では、シリコン基板を第1溶液中に浸漬することによって、シリコン基板が第1金属の微粒子を担持したが、これに限定されない。例えば、第1金属の微粒子の懸濁液をシリコン上に、例えば、公知のスピンコート法によって塗布した後、乾燥させることによっても、その第1金属が、上述の各実施形態の第1金属と実質的に同等に作用することが確認されている。
【0076】
また、既に述べたとおり、上述の各実施形態の非貫通孔が形成されるに十分な厚みの単結晶シリコン層、多結晶シリコン層、又は微結晶シリコン層を最上層に備えた母材であれば、上述の各実施形態の効果とほぼ同様の効果が得られる。加えて、単結晶シリコン層、多結晶シリコン層、及び微結晶シリコン層の群から選ばれる少なくとも1つの材料を最上層に備えた母材、換言すれば、複合する材料を最上層に有する母材であっても、上述の各実施形態の効果とほぼ同様の効果が得られる。さらに、上述の各非貫通孔が形成されるに十分な厚みのアモルファスシリコン層が単独で形成された、あるいは前述の各種のシリコン材とアモルファスシリコンとを複合した層が最上層に形成された母材であっても、本発明の効果が適用され得る。
【0077】
加えて、上述の各実施形態の説明の中では述べていないが、非貫通孔内に充填される物質の中には、第2金属又は第2金属の合金の他に、ごく微量ではあるが、炭素(C)、酸素(O)、水素(H)、若しくは、例えば、めっき浴に含有されるホルマリンやサッカリン等の添加物、又は前述の各物質の分解生成物が不純物として含まれ得る。
【0078】
さらに、上述の各実施形態では、シリコン基板表面上に多数の第1金属の粒子を分散配置させているため、シリコン表面から形成される非貫通孔が多孔質状となっていたが、これに限定されない。以上、述べたとおり、以上、述べたとおり、各実施形態の他の組合せを含む本発明の範囲内に存在する変形例もまた、請求の範囲に含まれるものである。