(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施例について説明する。また、以下の各実施例において、同じ部材は同じ符号で標示する。
【0011】
(実施例1)
図1を参照すると、本実施例の反応器10は、反応室13と、成長基板14と、支持体16と、を含む。支持体16によって、成長基板14は反応室13の内に固定される。
【0012】
反応室13は、入口11及び出口12を有する。入口11及び出口12は間隔をあけて設置される。好ましくは、入口11及び出口12は反応室13の長手方向の相対する両端に設置される。反応室13は耐高温性で且つ化学的に安定な材料からなり、反応室13の材料は石英、セラミック、ステンレススチールの何れか一種である。反応室13は管状構造体であり、管状構造体の長手方向と垂直な方向における該管状構造体の横断面の形状は、円形、楕円形、三角形、矩形、或いは他の規則的図形及び不規則な図形である。反応室13の横断面の幅の最大の長さは1cm〜20cmであり、好ましくは、2.5cm〜10cmである。反応室13の長さは2cm〜50cmである。本実施例において、反応室13は、横断面が円形である管状構造体であり、入口11及び出口12は反応室13の長手方向の相対する両端に設置され、反応室13の直径は2.5cmであり、反応室13の長さは20cmである。
【0013】
図2を併せて参照すると、成長基板14は反応室13の内に設置され、入口11及び出口12の間に設置され、且つ入口11及び出口12とそれぞれ間隔をあけて設置される。成長基板14の形状及び面積は、反応室13の横断面によって選択できる。これにより、成長基板14は反応室13の内のスペースを十分に利用できる。成長基板14は平面構造体、曲面構造体の何れかの一種である。平面構造体とは、成長基板14が平らな構造体であることを指す。曲面構造体とは、成長基板14の少なくとも一部は平らな構造体ではないことを指す。成長基板14の表面は入口11に相対して設置され、且つ反応室13の内に流れる気流の方向と角αを成す。該角αは0°〜90°(0°を含まず)である。該角αが大きくなると、反応室13の内に流れる気流は
成長基板14を貫通しやすく、多くの触媒粒15が反応され、カーボンナノチューブを成長させることに有利である。更に、好ましくは、角αは90°である。即ち、成長基板14の表面は反応室13の内に流れる気流の方向と垂直である。これにより、反応室13の内に流れる反応気体は、成長基板14における触媒粒15と十分に反応でき、カーボンナノチューブを成長させる効果を向上させることができる。成長基板14の形状は、円形、矩形、菱形、或いは他の幾何図形の何れかの一種である。成長基板14の面積は0.5cm
2〜100cm
2である。本実施例において、成長基板14は平面構造体であり、成長基板14の形状は矩形であり、成長基板14の面積は1cm
2である。
【0014】
成長基板14は反応室13の内に懸架して設置される。ここで、成長基板14が反応室13の内に懸架して設置されるとは、反応室13の内において、成長基板14が反応室13の内壁と接触しないことを指す。成長基板14は支持体16によって反応室13の内に懸架して設置されることができる。成長基板14が固定され、且つ成長基板14の一部が懸架して設置されることができれば、支持体16の形状は制限されない。支持体16の材料は特定の幾何形状を形成でき、且つ加熱工程において自体の形状を保持できる金属材料或いは絶縁材料である。金属材料は、例えば、金、銀、アルミニウムなどの一種である。絶縁材料は、例えば、セラミックなどである。本実施例において、支持体16は反応室13の内壁に固定される環状構造体であり、その材料はセラミックである。支持体16はグリッド構造体でもいい。その際、グリッド構造体の辺縁は反応室13の内壁に固定されることによって、グリッド構造体の中間部分は反応室13の内に懸架される。更に、支持体16が設置されなくてもいい、成長基板14は他の方式によって、例えば、溶接によって、反応室13の内壁に直接に固定され、反応室13の内に懸架して設置されてもよい。
【0015】
入口11に近い方の成長基板14の表面は、入口11に相対して設置される。成長基板14が平面構造体である場合、入口11に近い方の成長基板14の表面は、入口11から反応室13の内に流れる気流の方向と基本的に垂直である。対流の現象などの原因により、入口11から反応室13の内に流れる気流の方向は絶対に同じではないが、その現象は気流の流れる方向に影響しない。成長基板14が曲面構造体である場合、成長基板14が平面構造体である場合より、反応室13の内に設置される成長基板14の面積は大きい。
【0016】
成長基板14はカーボンナノチューブ構造体及び触媒粒15を含む。好ましくは、成長基板14はカーボンナノチューブ構造体及び触媒粒15からなる。触媒粒15はカーボンナノチューブ構造体の表面に均一に分散される。該カーボンナノチューブ構造体は均一に分布した複数のカーボンナノチューブを含み、該複数のカーボンナノチューブはカーボンナノチューブ構造体の表面に基本的に平行な方向に沿って延伸する。更に、成長基板14は複数のカーボンナノチューブのみからなることができる。カーボンナノチューブ構造体の厚さは、10nm〜100μmであり、例えば、15nm、200nm、1μmである。本実施例において、カーボンナノチューブ構造体の厚さは100nmである。カーボンナノチューブ構造体におけるカーボンナノチューブは単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブの一種または多種であり、その長さ及び直径は必要に応じて選択できる。
【0017】
図2を参照すると、成長基板14はパターン化構造体である。パターン化構造体とは、成長基板14において、複数の空隙142が形成されている構造のことである。該複数の空隙142は成長基板14の厚さ方向に、成長基板14を貫通する。空隙142は触媒粒で被覆された複数のカーボンナノチューブが囲んで形成する微孔であり、或いはカーボンナノチューブの軸方向に沿って延伸して、隣接する触媒粒で被覆されたカーボンナノチューブ間のスリップ状の間隙である。空隙142が微孔状である場合、空隙142の平均孔径は、5nm〜100μmであり、例えば、10nm、1μm、10μm、50μm、或いは90μmなどである。空隙142がストリップ状である場合、空隙142の平均幅は、5nm〜100μmである。“空隙142のサイズ”とは、孔径の直径又はストリップ状の幅を指す。好ましくは、空隙142のサイズは、5nm〜10μmである。成長基板14において、微孔及びストリップ状の間隙共に存在でき、且つ両者のサイズは異なってもよい。更に、カーボンナノチューブ構造体のデューティファクタ(dutyfactor)は、1:100〜100:1、1:10〜10:1、1:4〜4:1或いは1:2〜2:1である。好ましくは、成長基板14のデューティファクタは、1:4〜4:1である。ここで“デューティファクタ”とは、成長基板14における、触媒粒15で被覆されたカーボンナノチューブにより遮られた領域と、成長基板14の空隙142から露出された領域との面積比を示す。好ましくは、空隙142は成長基板14に均一に分布する。
【0018】
電子ビーム蒸着法、熱CVD法、或いはスパッタリング法によって、カーボンナノチューブ構造体の表面に触媒粒15を形成できる。触媒粒15は鉄、コバルト、ニッケル或いはそれらの合金からなる。触媒粒15のサイズは5nm〜10nmである。成長基板14がカーボンナノチューブ構造体を含むので、触媒粒15はカーボンナノチューブの吸着作用によって、カーボンナノチューブの表面に吸着されて固定される。これにより、触媒粒15はカーボンナノチューブ構造体の表面に均一に分散される。
図2を参照すると、触媒粒15はカーボンナノチューブ構造体におけるカーボンナノチューブの表面に被覆され、或いはカーボンナノチューブ構造体におけるカーボンナノチューブの表面と接触せずに設置される。カーボンナノチューブの表面に被覆されない触媒粒15が有るにしても、大部分の触媒粒15はカーボンナノチューブ構造体の表面に均一に分散される。巨視的には、触媒粒15がカーボンナノチューブ構造体の表面に均一に分散されることが保証される。具体的には、触媒粒のサイズが大きい場合、形成された空隙142のサイズは小さい。触媒粒のサイズが小さい場合、形成された空隙142のサイズは大きい。空隙142を形成できることを保証すれば、触媒粒のサイズは必要に応じて選択できる。本実施例において、触媒粒15は鉄ナノ粒からなり、その厚さは5nmである。触媒粒のサイズは8nmである。
【0019】
成長基板14が均一に分布した前記パターンを有することを保証すれば、カーボンナノチューブ構造体における複数のカーボンナノチューブは、配向し又は配向せずに配置されていてもよい。複数のカーボンナノチューブの配列方式により、カーボンナノチューブ構造体は非配向型のカーボンナノチューブ構造体及び配向型のカーボンナノチューブ構造体の二種に分類される。非配向型のカーボンナノチューブ構造体では、カーボンナノチューブが異なる方向に沿って配置され、又は絡み合っている。配向型のカーボンナノチューブ構造体では、複数のカーボンナノチューブが同じ方向に沿って配列している。又は、配向型のカーボンナノチューブ構造体において、配向型のカーボンナノチューブ構造体が二つ以上の領域に分割される場合、各々の領域における複数のカーボンナノチューブが同じ方向に沿って配列されている。この場合、異なる領域におけるカーボンナノチューブの配列方向は異なる。本実施例において、好ましくは、複数のカーボンナノチューブは同じ方向に沿って、カーボンナノチューブ構造体の表面と平行に配列される。
【0020】
カーボンナノチューブ構造体は自立構造体であり、その表面に形成される触媒粒15を支持できる。カーボンナノチューブ構造体がカーボンナノチューブフィルムを含む場合、自立構造体とは、支持体材を利用せず、カーボンナノチューブフィルムを独立して利用することができる形態のことである。すなわち、カーボンナノチューブフィルムを対向する両側から支持して、カーボンナノチューブフィルムの構造を変化させずに、カーボンナノチューブフィルムを懸架させることができることを意味する。カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブは、分子間力で接続されているので、自立構造体を実現する。カーボンナノチューブ構造体が一本のカーボンナノチューブワイヤである場合、自立構造体とは、支持体材を利用せず、カーボンナノチューブワイヤを独立して利用することができる形態のことである。すなわち、カーボンナノチューブワイヤを対向する両側から支持して、カーボンナノチューブワイヤの構造を変化させずに、カーボンナノチューブワイヤを懸架させることができることを意味する。以上のように、カーボンナノチューブ構造体は自立構造体であるので、支持体16に直接に設置できる。カーボンナノチューブ構造体が複数のカーボンナノチューブワイヤを含む場合、カーボンナノチューブ構造体は、複数のカーボンナノチューブワイヤが平行に配列される単層構造体である。この際、複数のカーボンナノチューブワイヤが平行に配列される方向と垂直な方向に、支持力を提供して、該単層構造体は、懸架されることができる。更に、単層構造体におけるカーボンナノチューブが延伸する方向に沿って、分子間力で端と端で接続される。隣接するカーボンナノチューブが分子間力で接続される場合、単層構造体は容易に懸架される。
【0021】
カーボンナノチューブ構造体は複数のカーボンナノチューブからなる純カーボンナノチューブ構造体でもよいし、或いは複数のカーボンナノチューブを含む複合構造体でもよい。カーボンナノチューブ構造体が複数のカーボンナノチューブからなる純カーボンナノチューブ構造体である場合、カーボンナノチューブ構造体を形成する過程において、カーボンナノチューブを化学修飾及び酸化処理しない。カーボンナノチューブ構造体が複数のカーボンナノチューブを含む複合構造体である場合、複合構造体は複数のカーボンナノチューブ及び添加材料を含む。複合構造体において、複数のカーボンナノチューブが主な成分であり、且つフレームとして用いられる。添加材料は石墨、グラファイト、炭化ケイ素、窒化ホウ素、窒化ケイ素、シリカ、無定形炭素の何れかの一種或いは多種である。化学気相蒸着法(CVD)或いは物理気相成長法(PVD)によって、添加材料はカーボンナノチューブ構造体における複数のカーボンナノチューブの少なくとも一部の表面に被覆され、或いは空隙142の内に設置される。好ましくは、添加材料はカーボンナノチューブ構造体における複数のカーボンナノチューブの表面に被覆される。これにより、カーボンナノチューブの直径が大きくなり、空隙142が小さくなる。
【0022】
カーボンナノチューブ構造体は少なくとも一つのカーボンナノチューブフィルム、複数のカーボンナノチューブワイヤ、或いは少なくとも一つのカーボンナノチューブフィルムとカーボンナノチューブワイヤとの組み合わせである。カーボンナノチューブ構造体は単層カーボンナノチューブフィルム或いは積層された多層カーボンナノチューブフィルムでもよい。カーボンナノチューブ構造体が積層された多層カーボンナノチューブフィルムである場合、カーボンナノチューブフィルムの層数は2〜100である。カーボンナノチューブ構造体が複数のカーボンナノチューブワイヤからなる場合、複数のカーボンナノチューブワイヤは相互に間隔をあけて平行に設置され、或いは複数のカーボンナノチューブワイヤは交差され、ネット構造体が形成される。カーボンナノチューブ構造体は平行に設置された複数のカーボンナノチューブワイヤからなる場合、隣接する二つのカーボンナノチューブワイヤの距離は10nm〜100μmであり、好ましくは、10nm〜10μmである。隣接する二つのカーボンナノチューブワイヤの間隙は空隙142であり、該間隙の長さはカーボンナノチューブワイヤの長さと同じである。カーボンナノチューブフィルムの層数及び隣接する二つのカーボンナノチューブワイヤの距離を制御することによって、カーボンナノチューブ構造体の空隙142のサイズを制御できる。
【0023】
前記カーボンナノチューブフィルムは、複数のカーボンナノチューブからなる自立構造体であり、複数のカーボンナノチューブが同じ方向に沿って配列されている。複数のカーボンナノチューブの延伸する方向はカーボンナノチューブフィルムの表面と基本的に平行である。また、複数のカーボンナノチューブは分子間力で接続されている。具体的には、複数のカーボンナノチューブにおける各カーボンナノチューブは、延伸する方向における隣接するカーボンナノチューブと、分子間力で端と端とが接続されている。また、カーボンナノチューブフィルムは、少数のランダムなカーボンナノチューブを含む。しかし、大部分のカーボンナノチューブは同じ方向に沿って配列されているので、このランダムなカーボンナノチューブの延伸方向は、大部分のカーボンナノチューブの延伸方向には影響しない。具体的に、カーボンナノチューブフィルムにおける多数のカーボンナノチューブは、絶対的に直線状ではなくやや湾曲している。または、延伸する方向に完全に配列せず、少しずれている場合もある。従って、同じ方向に沿って配列されている多数のカーボンナノチューブの中において、隣同士のカーボンナノチューブが部分的に接触する可能性がある。
【0024】
図3及び
図4を参照すると、カーボンナノチューブ構造体は少なくとも一つのカーボンナノチューブフィルムを含み、前記カーボンナノチューブフィルムは基本的に同じ方向に沿って配列される複数のカーボンナノチューブを含む。具体的には、カーボンナノチューブフィルムは、複数のカーボンナノチューブセグメント143を含む。複数のカーボンナノチューブセグメント143は、長さ方向に沿って分子間力で端と端が接続されている。それぞれのカーボンナノチューブセグメント143は、相互に平行に、分子間力で結合された複数のカーボンナノチューブ145を含む。カーボンナノチューブセグメント143の長さ、厚さ、形状及び均一性は制限されない。カーボンナノチューブフィルムはカーボンナノチューブアレイの選択された一部を引出すことによって、形成される。形成されたカーボンナノチューブフィルムの厚さは1nm〜100μmであり、形成されたカーボンナノチューブフィルムの幅は選択されたカーボンナノチューブアレイの幅に関し、形成されたカーボンナノチューブフィルムの長さは制限されない。好ましくは、カーボンナノチューブフィルムの厚さは100nm〜10μmである。カーボンナノチューブフィルムにおいて、隣接するカーボンナノチューブは間隙或いは微孔を有し、空隙142が形成される。カーボンナノチューブフィルムにおける複数のカーボンナノチューブ145は、同じ方向に沿って配列される。カーボンナノチューブフィルムの構造及び製造方法は、特許文献1に掲載されている。
【0025】
図5を参照すると、カーボンナノチューブ構造体が積層された複数のカーボンナノチューブフィルムを含む場合、隣接するカーボンナノチューブフィルムは、分子間力で結合されている。隣接するカーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブはそれぞれ0°〜90°の角度で交差している。積層された複数のカーボンナノチューブフィルムはカーボンナノチューブ構造体の自立性を向上させ、カーボンナノチューブ構造体を使用する過程において、変形することを防止し、更に、カーボンナノチューブの凝集を防止する。本実施例において、カーボンナノチューブ構造体は積層された二つのカーボンナノチューブフィルムからなり、二つのカーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブは90°の角度で交差している。
【0026】
カーボンナノチューブ構造体が複数のカーボンナノチューブワイヤを含む場合、カーボンナノチューブワイヤは、非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤ又はねじれ状カーボンナノチューブワイヤであることができる。非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤもねじれ状カーボンナノチューブワイヤも自立構造である。
図6を参照すると、カーボンナノチューブワイヤが、非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤである場合、分子間力で端と端とが接続された複数のカーボンナノチューブセグメント(図示せず)を含む。さらに、各カーボンナノチューブセグメントに、同じ長さの複数のカーボンナノチューブが平行に配列されている。複数のカーボンナノチューブは、カーボンナノチューブワイヤの中心軸に平行に配列されている。カーボンナノチューブセグメントの長さ、厚さ、均一性及び形状は制限されない。一本の非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤの長さは制限されず、その直径は、0.5nm〜100μmである。有機溶剤によって、カーボンナノチューブフィルムを処理して、非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤを得る。具体的には、有機溶剤によって、カーボンナノチューブフィルムの全ての表面を浸す。揮発性の有機溶剤が揮発すると、表面張力の作用によって、カーボンナノチューブフィルムにおける相互に平行する複数のカーボンナノチューブが分子間力によって互いに緊密に結合して、カーボンナノチューブフィルムが収縮して非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤを得る。前記有機溶剤はエタノール、メタノール、アセトン、塩化エチレン或いはクロロホルムである。本実施例において、有機溶剤はエタノールである。この有機溶剤によって処理されないカーボンナノチューブフィルムと比較して、有機溶剤によって処理された非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤの比表面積は減少し、且つ接着性も弱い。また、カーボンナノチューブワイヤの機械強度及び強靭さを増強させ、外力によってカーボンナノチューブワイヤが破壊される可能性を低くする。
【0027】
図7を参照すると、カーボンナノチューブフィルムの長手方向に沿う対向する両端に相反する力を印加することにより、ねじれ状カーボンナノチューブワイヤを形成することができる。好ましくは、ねじれ状カーボンナノチューブワイヤは、分子間力で端と端とが接続された複数のカーボンナノチューブセグメント(図示せず)を含む。さらに、各カーボンナノチューブセグメントには、同じ長さの複数のカーボンナノチューブが平行に配列されている。カーボンナノチューブセグメントの長さ、厚さ、均一性及び形状は制限されない。一本のねじれ状カーボンナノチューブワイヤの長さは制限されず、その直径は、0.5nm〜100μmである。更に、有機溶剤によって、ねじれ状カーボンナノチューブワイヤを処理する。有機溶剤によって処理されたねじれ状カーボンナノチューブワイヤは表面張力の作用によって、ねじれ状カーボンナノチューブワイヤにおける相互に平行する複数のカーボンナノチューブが分子間力によって互いに緊密に結合して、ねじれ状カーボンナノチューブワイヤの比表面積が減少し、接着性が小さい一方、カーボンナノチューブワイヤの機械強度及び強靭が増強する。カーボンナノチューブワイヤの製造方法は、特許文献2及び特許文献3に掲載されている。
【0028】
本発明はカーボンナノチューブの成長装置としての反応器10の応用を提供する。反応器10の応用は、反応器10を提供するステップ(S11)と、反応室13に炭素源ガスとキャリアガスからなる混合気体を導入するステップ(S12)と、成長基板14を加熱し、カーボンナノチューブを成長するステップ(S13)と、を含む。
【0029】
ステップ(S12)において、混合気体は反応室13の入口11から反応室13の内に導入する。混合気体の流れる方向は、成長基板14の表面と角αを成す。該角αは0°〜90°であり、好ましくは、混合気体の流れる方向は、成長基板14の表面と垂直である。これにより、混合気体は成長基板14の表面と垂直な方向に沿って、空隙142を通じて、成長基板14を貫通して、反応室13の外に流れる。混合気体は特定の速度で入口11から反応室13の内に導入され、また、前記反応室13の内に導入された速度で、出口12から流出する。これにより、反応室13内で炭素源ガスが流れる状態を保持し、反応室13内の炭素源ガスを更新し続けることができ、その濃度が基本的に変化しない。且つ炭素源ガスは触媒粒15及びカーボンナノチューブ構造体を貫通して流れるので、炭素源ガスは触媒粒15と十分に接触でき、高品質のカーボンナノチューブを成長させることができる。また、触媒粒15はカーボンナノチューブ構造体の表面に固定されるので、反応室13内に混合気体を導入する工程において、混合気体の流れは触媒粒15の分布に影響しなく、触媒粒の凝集を効果的に防止し、触媒粒の活性化を保持する。カーボンナノチューブの成長速度は、触媒粒15と反応室13との温度差に正比例する。炭素源ガスの流れる速度を調整することによって、触媒粒15の温度を制御できる。従って、気圧でカーボンナノチューブ構造体が破壊されないことを保証すれば、カーボンナノチューブの成長速度によって、反応室13内の気圧及び混合気体の流れる速度を制御できる。
【0030】
混合気体は炭素源ガス及びキャリアガスからなる。キャリアガスはアルゴン、窒素或いは炭素源ガスと反応しないガスの何れか一種である。炭素源ガスは、エチレン、メタン、エタン、アセチレン或いは他の気体の炭化水素の何れか一種である。本実施例において、炭素源ガスは、エチレンである。且つ1000sccmの流速で、エチレンを反応室13に導入する。
【0031】
ステップ(S13)において、反応室13の温度がカーボンナノチューブの成長温度に達すると、加熱装置(図示せず)によって、反応室13を加熱できる。本実施例において、カーボンナノチューブ構造体に電流を流すことによって、反応室13を加熱する。具体的に、反応器10は第一電極
144及び第二電極146を含み、該第一電極144及び第二電極146は間隔をあけて、カーボンナノチューブ構造体の表面に設置され、且つカーボンナノチューブ構造体と電気的に接続される。第一電極144及び第二電極146が電源140に接続されることによって、カーボンナノチューブ構造体に電流が流れる。
【0032】
図8、
図9を参照すると、第一電極144と第二電極146の間に電圧を印加することによって、カーボンナノチューブ構造体に電流を流し、カーボンナノチューブ構造体を加熱し、カーボンナノチューブ構造体の温度をカーボンナノチューブの成長温度に到達させる。第一電極144と第二電極146の間に印加する電圧は、第一電極144と第二電極146の距離、及びカーボンナノチューブ構造体におけるカーボンナノチューブの直径に関係している。本実施例において、第一電極144と第二電極146の間に印加する電圧は40ボルトであり、カーボンナノチューブ構造体におけるカーボンナノチューブの直径は5μmである。カーボンナノチューブ構造体の表面にカーボンナノチューブを成長させる工程において、ジュール熱によって、カーボンナノチューブ構造体の温度は500〜900℃に達し、反応時間は30〜60分間である。その際、反応室13内における、カーボンナノチューブ構造体以外の温度は30℃〜50℃である。これにより、触媒粒15と反応室13の温度差を大きくして、カーボンナノチューブの成長速度を高める。
【0033】
更に、カーボンナノチューブ構造体に電流を流して加熱するのと同時に、加熱装置(図示せず)によって、反応室13を加熱できる。これにより、カーボンナノチューブの成長速度を高める。カーボンナノチューブ構造体に電流を流して、特定の時間が経った後、カーボンナノチューブ構造体を加熱することを停止し、気体を導入することを停止する。
【0034】
反応器10には以下の優れた点がある。第一に、反応器10がカーボンナノチューブ構造体を含み、カーボンナノチューブ構造体におけるカーボンナノチューブの性質が安定していて、触媒と反応しない。第二に、カーボンナノチューブ構造体におけるカーボンナノチューブが均一に分布し、且つ非常に大きい比表面面積を有するので、カーボンナノチューブ構造体が優れた吸着力を有する。これにより、接着剤を利用しなくても、触媒粒がカーボンナノチューブ構造体の表面に固定される。第三に、カーボンナノチューブ構造体が複数の空隙142を含むので、触媒粒が空隙142の内に嵌められて、固く固定され、触媒粒の凝集を効果的に防止し、触媒粒の活性化を保持する。第四に、カーボンナノチューブが優れた電気‐熱変換特性を有するので、カーボンナノチューブ構造体に電流を流すことによって、カーボンナノチューブ構造体を加熱できる。これにより、加熱装置を別途設置する必要がなく、反応器の構造が簡単になり、コストが低くなる。
【0035】
(実施例2)
図10を参照すると、本実施例の反応器20は、反応室13と、複数の成長基板14と、複数の支持体16と、を含む。支持体16によって、成長基板14は反応室13の内に固定される。複数の成長基板14は複数の支持体16と一対一に対応する。反応室13は、入口11及び出口12を有する。入口11及び出口12は反応室13の長手方向の相対する両端に設置される。反応室13において、反応室13の長手方向に沿って、複数の成長基板14は間隔をあけて設置される。
【0036】
本実施例の反応器20の構造は、実施例1における反応器10の構造と基本的に同じであるが、以下の点が異なる。反応器20が、間隔をあけて設置される複数の成長基板14を含む。
【0037】
反応室13において、反応室13の長手方向に沿って、複数の成長基板14は間隔をあけて設置される。隣接する二つの成長基板14の距離は同じでもよいし、同じでなくてもよい。本実施例において、隣接する二つの成長基板14の距離は同じであり、その隣接する二つの成長基板14の距離は2cm〜50cmである。各成長基板14の表面に触媒層が形成される。
【0038】
図11を参照すると、本発明の実施例2は、カーボンナノチューブの成長装置としての反応器20の応用を提供する。この反応器20の応用は、反応器20を提供するステップ(S21)と、反応室13に炭素源ガスとキャリアガスからなる混合気体を導入するステップ(S22)と、成長基板14を加熱し、カーボンナノチューブを成長させるステップ(S23)と、を含む。
【0039】
カーボンナノチューブの成長装置としての反応器20の応用は、カーボンナノチューブの成長装置としての反応器10の応用と基本的に同じであるが、以下の点が異なる。反応器20では、反応室13の内において、反応室13の長手方向に沿って、複数の成長基板14が間隔をあけて設置される。
【0040】
ステップ(S22)において、混合気体を入口11から反応室13に導入し、導入された混合気体は、複数の成長基板14を一つずつ通り抜けて、出口12から流出する。反応室13の内において、反応室13の長手方向に沿って、複数の成長基板14が間隔をあけて設置されるので、炭素源ガスを十分に利用でき、炭素源ガスを十分に分解して、カーボンナノチューブの成長率を高めることができ、コストが低くなる。
【0041】
ステップ(S23)において、カーボンナノチューブを成長させる工程では、複数の成長基板14を同時に加熱してもよいし、選択された成長基板14だけを加熱してもよい。本実施例において、反応器20は第一電極144及び第二電極146を含み、該第一電極144及び第二電極146は間隔をあけて設置される。複数の成長基板14は第一電極144と第二電極146との間に、並列に接続される。各成長基板14は第一電極14及び第二電極146とそれぞれ接続されることによって、各成長基板14に電流を流す。第一電極144と第二電極146の間に電圧を印加する際、複数の成長基板14に電流を流すことができ、成長基板14を加熱し、成長基板14の温度をカーボンナノチューブの成長温度に到達させる。更に、各成長基板14には、第一電極144及び第二電極146との間に、それぞれ独立してスイッチを設置することができる。これは、異なる成長基板14を選択して、カーボンナノチューブを成長させるのに便利である。
【0042】
カーボンナノチューブの成長装置としての反応器20の応用には、以下の優れた点がある。第一に、反応室の内に、複数の成長基板14が間隔をあけて設置されることによって、触媒層が形成された複数の成長基板14の表面に、同時にカーボンナノチューブを成長させることができる。第二に、炭素源ガスが複数の成長基板14を一つずつ通り抜けるので、炭素源ガスを十分に利用することができる。例えば、第一の成長基板14の触媒粒と反応しない炭素源ガスは、第二成長基板14の触媒粒と反応できる。これにより、カーボンナノチューブの成長率を高めることができ、コストが低くなる。第三に、複数の成長基板14にそれぞれ独立して電流を流すことができる。これにより、選択された成長基板14にカーボンナノチューブを成長させることができる。例えば、一つの成長基板14が用いられない場合、この用いられない成長基板14を利用しないのと同時に、他の成長基板14を利用でき、カーボンナノチューブを成長させ続けることができる。
【0043】
(実施例3)
図12を参照すると、本実施例の反応器30は、反応室13と、複数の成長基板14と、支持体16と、を含む。支持体16によって、成長基板14は反応室13の内に固定される。反応室13は、入口11及び出口12を有する。入口11及び出口12は反応室13の相対する両端に設置される。反応室13において、複数の成長基板14は間隔をあけて設置される。
【0044】
本実施例の反応器30の構造は、実施例2における反応器10の構造と基本的に同じであるが、以下の点が異なる。反応器30において、反応室13は少なくとも二つの湾曲構造を含む。反応器30は入口11から出口12までの貫通する管状構造体である。混合気体を入口11から導入し、出口12から流出させることができる。湾曲構造はZ字形、S字形、凹形、弓形、或いは他の湾曲形状の何れか一種である。湾曲構造を有している反応器30は、反応室13の空間を十分に利用でき、一度に多数のカーボンナノチューブを成長させることができる。