(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5663650
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年2月4日
(54)【発明の名称】バキュームブレーカ、腰掛便器自動吐水システムおよび電子腰掛便器
(51)【国際特許分類】
F16K 24/06 20060101AFI20150115BHJP
E03D 5/00 20060101ALI20150115BHJP
【FI】
F16K24/06 A
E03D5/00
【請求項の数】8
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-247233(P2013-247233)
(22)【出願日】2013年11月29日
(65)【公開番号】特開2014-169784(P2014-169784A)
(43)【公開日】2014年9月18日
【審査請求日】2013年11月29日
(31)【優先権主張番号】201320093841.2
(32)【優先日】2013年3月1日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】513302204
【氏名又は名称】ドゥラヴィ アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Duravit Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】特許業務法人あーく特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イン・ウェイミン
(72)【発明者】
【氏名】ピン・ジュシオン
【審査官】
北村 一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−052671(JP,A)
【文献】
特開2000−034762(JP,A)
【文献】
実開昭63−023379(JP,U)
【文献】
特開2001−329592(JP,A)
【文献】
特表2012−522154(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 21/00−24/06
E03D 1/00− 7/00;11/00−13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部と、蓋部とを含み、前記本体部および前記蓋部は、キャビティを共同で画定し、前記本体部は、注水口が画定された注水管部および出水口が画定された出水管部を一体に形成し、前記蓋部に空気口が形成されたバキュームブレーカであって、前記注水管部の末端部が前記空気口の方向に前記キャビティ内で延伸し、
前記注水口を封止するための第1の位置と前記空気口を封止するための第2の位置との間を移動可能なガスケットと、前記ガスケットを固定するためのガスケット固定軸とを含み、前記ガスケット固定軸は前記注水管部の中に下向きに伸びることを特徴とするバキュームブレーカ。
【請求項2】
前記注水管部の末端部が前記キャビティ内で延伸する長さが前記キャビティの高さの半分よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載のバキュームブレーカ。
【請求項3】
前記注水管部の末端部が前記キャビティ内で前記空気口に近接するまで延伸することを特徴とする請求項2に記載のバキュームブレーカ。
【請求項4】
前記空気口上方に位置する止水キャップが前記蓋部に一体に形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のバキュームブレーカ。
【請求項5】
前記空気口に連通するオーバーフロー穴がさらに設けられ、前記オーバーフロー穴上方に位置する止水シートが前記蓋部に一体に形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のバキュームブレーカ。
【請求項6】
前記空気口に連通するオーバーフロー穴がさらに設けられ、前記空気口上方に位置する止水キャップと、前記オーバーフロー穴上方に位置する止水シートとが前記蓋部に一体に形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のバキュームブレーカ。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のバキュームブレーカを含むことを特徴とする腰掛便器自動吐水システム。
【請求項8】
請求項7に記載の腰掛便器自動吐水システムを有することを特徴とする電子腰掛便器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子腰掛便器に関し、特に電子腰掛便器の自動吐水システムに設けられたバキュームブレーカに関する。
【背景技術】
【0002】
電子腰掛便器の自動吐水システムでは、管で負圧が生じたときに汚水の逆流が発生することを防止するため、注水管にバキュームブレーカが設けられている。
図1に、腰掛便器自動吐水システムにおいて用いるバキュームブレーカ100を示す。バキュームブレーカ100は、本体部101と、蓋部102とを含む。本体部101および蓋部102は、キャビティ103を共同で画定する。本体部101には、注水口104と、出水口105とが形成されている。蓋部102には、空気口106と、前記空気口106に連通したオーバーフロー穴107とが形成されている。キャビティ103内には、ガスケット108と、ガスケット固定軸109とが設けられている。注水管に負圧が生じたときに、外部の空気が空気口106からキャビティ103内に入り、ガスケット108が注水口104を封止することにより、汚水の注水管への逆流を防止する。蓋部102の上方には、水が空気口106およびオーバーフロー穴107から飛び散ることを防止するため、止水キャップ110を設けてもよい。
【0003】
図1に示すバキュームブレーカ100において、注水口104を画定する注水管部の末端(上端)は、キャビティ103の底壁と基本的に面一であり、さらにキャビティ103内に延伸しておらず、ガスケット固定軸109の大部分は、ガスケット108の上方に位置する。こうした構造によって、腰掛便器のCL線(臨界水位線)が比較的低くなり、cUPC認証などの認証の要件を満たすことが難しくなり、バキュームブレーカの体積が比較的大きくなる。また、止水キャップ110は単独で成形され、蓋部102に組み立てられるため、製造および組立のコストが増加する。
【発明の概要】
【0004】
本発明の1つの目的は、認証の要件を満たすために、逆流時のCL線の高さを高めた、腰掛便器自動吐水システムに用いられるバキュームブレーカを提供することである。本発明のもう1つの目的は、バキュームブレーカの寸法を小さくすることである。本発明のさらにもう1つの目的は、バキュームブレーカのコストを下げることである。
【0005】
本発明は第1の態様として、本体部と、蓋部とを含み、前記本体部および前記蓋部は、キャビティを共同で画定し、前記本体部は、注水口が画定された注水管部および出水口が画定された出水管部を一体に形成し、前記蓋部に空気口が形成され、前記注水管部の末端部が前記空気口の方向に前記キャビティ内で延伸するバキュームブレーカを提供する。
【0006】
好ましくは、前記注水管部の末端部が前記キャビティ内で延伸する長さは、前記キャビティの高さの半分よりも大きい。さらに好ましくは、前記注水管部の末端部は、前記キャビティ内で前記空気口に近接するまで延伸する。
【0007】
好ましくは、前記バキュームブレーカは、前記注水口を封止するための第1の位置と前記空気口を封止するための第2の位置との間を移動可能なガスケットと、前記ガスケットを固定するためのガスケット固定軸とを含み、前記ガスケット固定軸は前記注水管部に下向きに伸びる。
【0008】
1つの有利な実施例において、前記空気口上方に位置する止水キャップは、前記蓋部に一体に形成されている。
【0009】
もう1つの有利な実施例において、前記空気口に連通するオーバーフロー穴がバキュームブレーカにさらに設けられ、前記オーバーフロー穴上方に位置する止水シートが前記蓋部に一体に形成されている。
【0010】
さらにもう1つの有利な実施例において、前記空気口に連通するオーバーフロー穴がバキュームブレーカにさらに設けられ、前記空気口上方に位置する止水キャップと、前記オーバーフロー穴上方に位置する止水シートとが前記蓋部に一体に形成されている。
【0011】
本発明は第2の態様として、上述したいずれかのバキュームブレーカを含む腰掛便器自動吐水システムを提供する。
【0012】
本発明は第3の態様として、前記腰掛便器自動吐水システムを有する電子腰掛便器を提供する。
【0013】
本発明に基づき、注水管の末端がバキュームブレーカのキャビティの底壁と基本的に面一である従来技術に比べ、注水管部の末端部が前記空気口の方向に前記キャビティ内で延伸しているため、注水口の高さを高めることにより、逆流時のCL線の高さが高まる。注水管部の末端部がキャビティ内で延伸する長さが大きいほど、逆流時のCL線が高くなり、認証の要件を満たしやすくなる。
【0014】
また、注水管部の中に下向きに伸びるようにガスケット固定軸を設けることによって、バキュームブレーカの寸法を小さくする。
【0015】
また、空気口上方に位置する止水キャップおよび/またはオーバーフロー穴上方に位置する止水シートをバキュームブレーカの蓋部と一体に形成することにより、製造コストを下げ、組立プロセスを簡略化する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】従来技術におけるバキュームブレーカの概略的断面図である。
【
図2】本発明の実施例の腰掛便器自動吐水システムの概略図である。
【
図3】本発明の実施例のバキュームブレーカの概略的断面図である。
【
図4】本発明のもう1つの実施例のバキュームブレーカの概略的断面図である。
【
図5】
図4に示すバキュームブレーカの立体図である
【発明を実施するための形態】
【0017】
図2は、本発明の実施例の腰掛便器自動吐水システムを概略的に示す。本発明の腰掛便器自動吐水システムは、使用者が腰掛便器を使用した後に自動的に吐水可能な電子腰掛便器に用いることができる。例えば、赤外線検知プローブを腰掛便器タンクの前側壁に設け、使用者が腰掛便器を使用した後に起立したことを検知プローブが検出したときに、吐水処理を起動することができる。もう1つの選択として、腰掛便器の便座下側に圧力センサを設け、前記圧力センサによって、使用者が腰掛便器に着座し起立したことを検出し、それに応じて吐水処理を起動することもできる。
【0018】
腰掛便器自動吐水システムは、タンク1を含む。
図2に示すように、タンク1にはフロートスイッチ2が付設され、前記フロートスイッチはタンク1内部のフロートに接続されている。吐水後に、タンク1内部の水位が降下し、フロートが自重作用によって対応して降下する。このとき、フロートスイッチ2が開き、電磁注水弁3が対応して開き、給水管からの水道水が注水管4を介してタンク1に入る。タンク1内の水量が増加するのに伴い、フロートが水の浮力作用により、その重力を克服して上昇する。フロートが所定の水位まで上昇したときに、フロートスイッチ2が閉じ、電磁注水弁3がそれに応じて閉じ、タンク1の注水が停止する。
【0019】
給水管と電磁注水弁3との間に、主閉止弁5、フィルタ6および逆止式流量弁7がさらに設けられている。タンク1の吐水口は、加圧ポンプ8を介して分配弁9に接続されており、前記分配弁9は、ステッピングモータMの制御によってタンク1からの水流を切り替え、前記水流が腰掛便器の内縁吐水口または噴射吐水口に選択的に流れるようにする。上述した各部材の構造および作用は、いずれも当業者が熟知しているものであり、ここではそれらの詳細な説明は省略する。
【0020】
注水管4において各種原因により負圧が生じたときにもたらされる汚水の逆流を防止するため、注水管4にバキュームブレーカ10がさらに設けられている。次に、
図3、
図4および
図5と合わせ、本発明のバキュームブレーカの2つの例示的実施例について詳細に説明する。
【0021】
図3に示す実施例において、バキュームブレーカ10’は、本体部11と、蓋部12とを含む。本体部11および蓋部12は、キャビティ13を共同で画定する。本体部11には、注水管部14と、出水管部15とが形成されている。注水管部14は、注水口を画定し、電磁注水弁3下流の注水ホースと接続することができる。出水管部15は、出水口を画定し、タンク1注水口に通じるホースと接続することができる。蓋部12には、空気口16と、前記空気口16に連通したオーバーフロー穴17とが形成されている。バキュームブレーカ10’の中の余分な水は、オーバーフロー口17およびそれに接続されたオーバーフロー管を介して腰掛便器の噴射吐水口または内縁吐水口に流れることができる。注水口を封止するための第1の位置と空気口16を封止するための第2の位置との間を移動可能なガスケット18と、ガスケット18を固定するためのガスケット固定軸19とがキャビティ13内に設けられている。
【0022】
バキュームブレーカ10’の動作方式は、従来技術におけるバキュームブレーカと同じである。通常の状况で、ガスケット18は、自重およびガスケット固定軸19の重力の作用によって、注水管部14の上端部に当接する。タンク1に注水が必要な場合、電磁注水弁3が開き、水道水の圧力によって、ガスケット18およびガスケット固定軸19が上向きに移動することにより、注水口を開き、空気口16を閉じる。注水口からキャビティ13内に流入した水道水は、出水口を介して流出し、さらにタンク1の中に流れる。注水管に負圧が生じた場合、外部の空気が空気口16からキャビティ13内に入り、サイフォン現象の発生を防止し、空気圧力によってガスケット18が注水管部の上端部に当接され、注水口を封止する。これによって、汚水の注水管への逆流を有効に防止することができる。
【0023】
図3に示すように、バキュームブレーカ10’の注水管部14の末端部(すなわち上端部)は、キャビティ13をほぼ貫通して、空気口16に近接するまで延伸する。
図1に示すバキュームブレーカ100に比べ、これによって注水口の高さが高くなることにより、逆流時のCL線の高さが高くなる。
【0024】
また、その大部分が注水管部14の中に下向きに伸びるようにガスケット固定軸19を設けることによって、バキュームブレーカ10’の寸法を小さくする。さらに、
図1に示すバキュームブレーカ100に比べ、ガスケット固定軸19を案内し支持する構造、例えば周方向に間隔をあけて設けられた複数のリブを容易に注水管部14の内壁に形成することができる。
【0025】
図4に示すバキュームブレーカ10”と
図3に示すバキュームブレーカ10’の主な違いは、空気口16の上方に止水キャップ20が設けられ、オーバーフロー穴17の上方に止水シート21が設けられていることにより、水が空気口16またはオーバーフロー穴17から飛び散ることをしっかりと防止することができることである。
図1に示すバキュームブレーカ100における蓋部102に独立して単独で成形した止水キャップ110と異なり、本実施例における止水キャップ20および止水シート21は、いずれもバキュームブレーカ10”の蓋部12と一体成形されている。これによって、製造コストを下げ、止水キャップまたは止水シートをバキュームブレーカ蓋部に組立てるステップがなくなる。
【0026】
図5は、
図4に示すバキュームブレーカ10”の立体図であり、バキュームブレーカの全体構造を示す。
図5は、
図3に示すバキュームブレーカ10’(止水キャップ20および止水シート21を有さない)の立体図を容易に知ることができる。
【0027】
図4および
図5に示す実施例には、止水キャップ20および止水シート21が同時に設けられているが、止水キャップ20および止水シート21のいずれかを蓋部12に一体に形成してもよい。
【0028】
上述した各実施例において、バキュームブレーカの注水管部14の末端部(すなわち上端部)は、キャビティ13をほぼ貫通して、空気口16に近接するまで延伸する。しかしながら、本発明はこれに限られるものではない。注水管部14の末端部が空気口16の方向にキャビティ13内で一定距離延伸していれば、従来技術に比べ逆流時のCL線が高くする技術的効果を実現することができる。例えば、注水管部の末端部がキャビティ内で延伸する長さは、キャビティの高さの半分より大きくてもよい。
【0029】
以上の内容は、本発明の好ましい実施例でしかなく、本発明を制限するためのものではない。当業者は、本発明の範囲を逸脱せずに、本発明の装置に対して多種の改良および変更を行うことができる。当業者は、本明細書において公開した内容を考慮することにより、その他の実施例を得ることもできる。本明細書および実施例は、例示的なものとしてみなされるべきであり、本発明の真の範囲は、請求の範囲および同等の手法により限定される。