(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5663675
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年2月4日
(54)【発明の名称】世界時時計
(51)【国際特許分類】
G04B 19/22 20060101AFI20150115BHJP
【FI】
G04B19/22 E
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-558444(P2013-558444)
(86)(22)【出願日】2012年3月15日
(65)【公表番号】特表2014-508304(P2014-508304A)
(43)【公表日】2014年4月3日
(86)【国際出願番号】EP2012054590
(87)【国際公開番号】WO2012123550
(87)【国際公開日】20120920
【審査請求日】2013年9月11日
(31)【優先権主張番号】11158321.7
(32)【優先日】2011年3月15日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】506425538
【氏名又は名称】ザ・スウォッチ・グループ・リサーチ・アンド・ディベロップメント・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ヴュイユミエ,アラン
(72)【発明者】
【氏名】ボルン,ジャン−ジャック
(72)【発明者】
【氏名】ルショー,ドミニク
【審査官】
藤田 憲二
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2008/125535(WO,A1)
【文献】
特開平06−207989(JP,A)
【文献】
特開平07−174872(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 19/22
G04G 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
様々なタイムゾーンに対応し、かつ24時間の周期を画定する地名標識(5)を有する第1の文字盤(3)と、24時間の時間表示を有する第2の文字盤(7)とを備えた世界時時計であって、
前記第2の文字盤は、前記第1の文字盤と同心で可動であり、前記世界時時計のムーブメントによって回転駆動されるように構成されており、
前記第2の文字盤は、局所的な時刻を表示するために、前記第1の文字盤の前記地名標識に対応して配置された時刻標識を有する世界時時計において、
前記時計は、前記地名標識のいくつかを1回転の1/24ずつ選択的にシフトさせて、冬時間から夏時間へ、又は夏時間から冬時間への変更中に、これら前記地名標識と関連する前記局所的な時刻を、1時間区切りで変更することができるようにするために設けられた手動手段(27、29、31、25、19、19H、19E、20、20H、20E、21、21E、21H、22、22E、22H、23、23E、23H、11、11A、12、12A、13、13A、14、14A、15、15A、17)を備えていることを特徴とし、
前記手動手段は、前記時計の外側から起動することができる手動制御部材(27、31)と、前記第1の文字盤(3)が有し、前記第1の文字盤に対して1回転の1/24ずつ角度的にシフトするように前記制御部材が制御する可動文字盤セクタ(11、12、13、14、15)とを備え、
前記可動文字盤セクタは、日中節約時間の設定が実施されている場所に対応する前記地名標識(5)を有し、
前記手動手段は、一方で、前記第1の文字盤(3)に回転可能に固定された複数のピニオン(19、20、21、22、23)を備え、前記ピニオンはそれぞれ前記可動文字盤セクタ(11、12、13、14、15)のうちの1つと動力学的に接続され、
他方で、前記制御部材(27、29)によって回転起動されるプログラミングディスク(25)を備え、前記プログラミングディスクは、このプログラミングディスクが回転されているときに、それぞれが前記ピニオンのうちの1つと協働してこれを回転させる複数のピン(19H、19E、20H、20E、21E、21H、22E、22H、23E、23H)を有する世界時時計。
【請求項2】
前記可動文字盤セクタのうちの少なくとも1つ(11、12)は、異なるタイムゾーンに対応する複数の前記地名標識(5)を有し、
前記地名標識は、夏時間から冬時間へ、及び冬時間から夏時間への変更が同じ日に行われる場所を示す同一の前記可動文字盤セクタが有する請求項1に記載の世界時時計。
【請求項3】
前記ピニオン(19、20、21、22、23)は、それぞれ前記ピン(19H、19E、20H、20E、21E、21H、22E、22H、23E、23H)のうちの2つと関連し、前記2つのピンのうちの一方は、前記ピニオンをある方向に回転させ、前記2つのピンのうちの他方は、前記ピニオンを逆方向に回転させる請求項1または2に記載の世界時時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、世界時時計と呼ばれる時計に関し、その文字盤は、様々なタイムゾーンにおける時刻を迅速に読み取ることができるようになっている。より詳細には、本発明は、様々なタイムゾーンに対応しかつ24時間の周期を画定する地名標識を有する第1の文字盤と、24時間の時間表示を有する第2の文字盤とを備えた時計に関し、第2の文字盤は、第1の文字盤と同心上で可動であり、時計のムーブメントにより、24時間毎に1回転のペースで回転駆動されるように構成されており、時刻表示は、局所的な時刻を表示するために、第1の文字盤の地名標識に対応して配設されている。
【背景技術】
【0002】
上記の定義に対応する世界時時計は公知である。特に特許文献1には、中央に固定された12時間文字盤を備え、その上で時針、分針及び秒針が従来通りの様式で回転する世界時時計が記載されている。第1の24時間環状文字盤は、中央文字盤の周りで回転可能に設けられる。この環状文字盤は、ムーブメントによって、24時間毎に1回転の速さで腕時計の針と反対方向に駆動する。また、この環状文字盤は、針と同期しており、これにより、針が12時位置で重なった丁度その瞬間に、12及び24時間表示が、腕時計の「12時」位置を通過する。タイムゾーンと対応する地名標識を有する第2の環状文字盤は、第1の環状文字盤の周りで回転可能に設けられている。第2の環状文字盤は、制御クラウンを用いて手動で変位されるように構成されており、この制御クラウンのステムは、第2の環状文字盤の周縁歯部と噛合する円錐形のピニオンで終端する。
【0003】
所定の場所の時刻を見るために、この先行技術の腕時計のユーザは、クラウンを用いて、第2の環状文字盤を回転させ、ユーザがいる場所に対応する標識を腕時計の「12時」位置へと動かさなければならない。こうして、2つの文字盤により、地球上の各タイムゾーンに対応する時刻を読みとることができる。つまりこの先行技術文献に説明されている通り、ニューヨークが午後8時の時、パリは午前1時、東京は午前10時、及びメキシコは午後6時である。
【0004】
このタイプの世界時腕時計がもつ問題は、冬時間から夏時間、及びその逆の変更に関わる。実際、この半年毎の変更のために、2つの場所の間の時刻の違いは常に一定ではない。対照的に、問題となる2つの場所において、時間の変更が同時には起こらない場合、季節による時間の変更は、時差の変動によって達成される。これは通常、2つの場所の一方が北半球にあり、他方が南半球にある場合に当てはまる。更にこれは、当然のことであるが、一方の場所を有する国には日中節約時間(サマータイム)がなく、他方の場所を有する国にはこれがある場合には常に当てはまる。
【0005】
上述の問題により、最もよく知られた世界時腕時計がもたらす表示は、特定の標準的な状況においてのみ正確であり、典型的でない特定のいくつかの状況では不正確である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】スイス特許第270085号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の1つの目的は、上述の先行技術に関連する問題を改善することである。本発明は、添付の請求項1による世界時時計を提供することにより、この目的を達成する。
【0008】
本発明の他の特徴及び利点は、添付した図面を参照して、単なる非限定的な例としてのみ挙げる以下の詳細な説明を読むことにより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の特定の実施形態による世界時腕時計の、文字盤側から見た平面図である。
【
図2】
図2は、第1及び第2の文字盤を示す
図1の一部拡大図である。
【
図3】
図3は、
図1の腕時計の裏側から見た平面図であり、プログラミングディスクが見えるようにするために腕時計を部分的に分解して示している。
【
図5】
図5は、
図3と同様の図であり、第1の文字盤の支持体が見えるようにするために、プログラミングディスク、歯付きセクタ及びスプリングキャッチが削除されている。
【
図6】
図6は、
図5と同様の図であり、同様に歯付きセクタ及びキャッチを示す。
【
図7】
図7は、
図1の腕時計の主要な構成要素を示す概略展開図である。
【
図8】
図8は、
図1の腕時計の主要な構成要素を示す概略展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は本発明による世界時腕時計を文字盤側から見た平面図である。
図7及び
図8は、この同一の腕時計の主要な構成要素を示す2つの概略展開図である。
図1並びに
図7及び
図8を同時に参照すると、図示した腕時計は、その表面が3つの文字盤で閉塞された胴39を備えることがわかる。まず、12時間の時間表示リングを有し、かつそれぞれ参照符号41、42で表される時針及び分針と協働するようになっている固定された環状文字盤44を見ることができる。環状文字盤44は、第1の文字盤3を取り囲んでおり、この第1の文字盤3は、この場合ではディスク形状を有しかつ文字盤の可動文字盤セクタ(11〜15)を備えた文字盤支持体(又はプレート)9で形成される。第1の文字盤3は、文字盤の周囲を巡りかつ地球の24のタイムゾーンに対応する地名標識5を備えている。更に、第1の文字盤3は、第1の文字盤に対して同心上に配置された第2の中央文字盤(参照符号7)を備えている。第2の文字盤7は、局所的な時刻を表示するために第1の文字盤3の地名標識と協働する24時間の時間表示を有する。第2の文字盤7は、腕時計のムーブメント46により、針と反対方向に回転駆動されるように構成されている。他の実施形態によると、第2の文字盤は、針と同一方向に回転することもできるように構成されていることを理解されたい。この場合、文字盤7の時間表示上の時間の順序は同様に逆方向になる。第1の文字盤3は、胴の外側から駆動することができる手動制御部材によって、手動で回転制御されるように構成されている。この手動制御部材は、ピニオン55と一体のクラウン53を備えている。ピニオン55は、文字盤支持体9の周縁歯部57と噛合する。このような配置により、腕時計の装着者が、第1の文字盤3、及びそれに伴って第1の文字盤3が有する地名標識5を、クラウン53を起動させることにより回転させることができるようになることがわかるであろう。
【0011】
図8はまた、第1の文字盤3の文字盤支持体9の下側に配置され、第1の文字盤3と同軸であるプログラミングディスク25を示す。以下により詳細に示すように、プログラミングディスク25は、本発明により、上記地名標識のいくつかを1回転の1/24ずつ選択的にシフトさせるために設けられた手動手段の一部である。この目的のために、図示した実施例の腕時計では、腕時計の胴の4時の位置に配置された回転可能なクラウン27の形状をもつ専用の制御部材を備えている。同様に
図3を参照すると、クラウン27は、腕時計ケースの内側に配置されたピニオン29と一体であることがわかる。ピニオン29は、プログラミングディスク25の周縁歯部31と噛合する。更に、プログラミングディスク25と第1の文字盤3とを相互にロックするために、スプリングキャッチ51(
図6)を設けている。具体的には、クラウン27が起動されたときに、これと共に第1の文字盤3が駆動されることなく、プログラミングディスク25のみが回転することができるようにスプリングキャッチ51の弾性は強過ぎてはならない。
【0012】
更に、胴39は、腕時計のムーブメント46を受承するように構成されている。標準的な様式では、腕時計のムーブメントは、筒カナ及び同心の筒車(図示せず)を備え、これらはそれぞれ、分針42及び時針41を備えている。ムーブメント46はまた、針の軸と同心であり、24時間毎に1回転の速さで第2の文字盤7を駆動するように構成されている24時間ホイールを備えている。また、ムーブメントの巻き上げ及び時刻設定ステム47を貫通させることができるように胴39には開口48が設けられている。このステム47は、セレーションを有するクラウン50で終端する(
図1)。
【0013】
図2は、特に第1及び第2の文字盤(それぞれ参照符号3及び7)を示す
図1の一部の拡大図である。この拡大図では、可動文字盤セクタ11、12、13、14、15は、地名標識5のいくつかを表示し、その一方で、他の地名標識は、文字盤支持体9に直接表示されていることがわかる。更に、文字盤支持体9を、特定の数の円弧状の開口部17(
図5により明確に示す)が開口しており、これら円弧状の開口部17は、文字盤と同心の弧を画定する。以下により詳細に示すように、様々なセクタ11〜15は、それぞれ第1の文字盤3のプレートに対して1回転の1/24ずつ角度的にシフトすることができるように、円弧状の開口部の1つの内で摺動するように構成されている。
【0014】
同一の可動文字盤セクタが表示する地名標識5は、夏時間から冬時間へ、及び冬時間から夏時間への時間変更が同じ日に起こる異なる地名位置に対応している。例えば、
図2からは、参照符号12の文字盤セクタは、左から右へ、「アゾレス(ACORES)」、「ロンドン(LONDRES)」、「ジュネーブ(GENEVE)」及び「ヘルシンキ(HELINSKI)」の地名標識を表示していることがわかる。実際、時間変更がこれらの4つの場所で同じ日に起こることは確認されている。実際、地球上のこの地域においては、3月の最後に日曜日に夏時間に変更し、10月の最後の日曜日に冬時間に戻すことが決まっている。また、
図2からは、参照符号11の文字盤セクタは、左から右へ、「アンカレッジ(ANCHORAGE)」、「ロサンゼルス(L.A.)」、「カルガリー(CALGARY)」、「シカゴ(CHICAGO)」、「ニューヨーク(N.Y.)」、及び「ハリファックス(HALIFAX)」という地名または符号を表示していることがわかる。これら6つの都市は全て米国又はカナダに位置しているが、これらの地域では現在、3月の第2日曜日に夏時間に変更し、その一方で、11月の第1日曜日に冬時間に戻している。
【0015】
図示した実施形態では、3つの他の摺動セクタ(それぞれ参照符号13、14、15)は、それぞれ単一の地名標識を表示している。これら3つの地名標識は、それぞれ南半球にある場所に対応しており、南半球では知られているように、季節は北半球に対して逆転している。例えば、シドニー(SYDNEY: 文字盤セクタ13)及びオーストラリアの南部では、10月の第1日曜日に夏時間に変更し、次の年の4月の第1日曜日に冬時間に戻す。オークランド(AUCKLAND: 文字盤セクタ14)及びニュージーランドのその他の場所では、9月の第1日曜日に夏時間に変更し、次の年の4月の第1日曜日に冬時間に戻す。最後に、リオデジャネイロ(RIO: 文字盤15)では、10月の第3日曜日に夏時間に変更し、次の年の2月の第3日曜日又は第4日曜日に冬時間に戻す。
【0016】
図2からは、第1の環状文字盤3は、左から右へ、地名標識「アビジャン(ABIDJAN)」、「トリポリ(TRIPOLI)」、「プレトリア(PRETORIA)」、「ジブチ(DJIBOUTI)」、「モスクワ(MOSCOU)」、「カラチ(KARACHI)」、「ダッカ(DACCA)」、「バンコク(BANGKOK)」、「香港(HONGKONG)」、「東京(TOKYO)」、「ブリスベン(BRISBANE)」、「ヌーメア(NOUMEA)」、「ミッドウェー(MIDWAY)」、「サモア(SAMOA)」、「ハワイ(HAWAI)」、「ガンビア諸島(ILES GAMBIER)」、「ヘンダーソン諸島(ILES HENDERSON)」、「クリアカン(CULIACAN)」、「ガラパゴス(GALAPAGOS)」、「リマ(LIMA)」、「カラカス(CARACAS)」、及び「ブエノスアイレス(BUENOS AIRES)」を表示していることがわかる。上記の地名標識は、日中節約時間(サマータイム)が存在していない場所が対応している。これらの場所では季節による時間変更がないため、対応する地名標識は、可動文字盤セクタによって表示する必要がなく、したがって、第1の文字盤支持体9に直接表示することができる。
【0017】
図5は、腕時計の裏側から見た図であり、第1の文字盤3の文字盤支持体9を示すために、裏蓋及びムーブメントを除去している。
図1及び2に関して前述したように、文字盤支持体9を特定の数の円弧状の開口部17が開口しており、これら開口部17は、文字盤と同心の弧を画定している。本実施例では、これら様々な弧は全てが同一の円上に位置しているわけではない。これらのうち4つは第1の円上に位置し、第5の弧は、より大きな直径の円上に位置する。また、
図5からは、文字盤支持体9には同様に、5つの小さな可動ピニオン(それぞれ参照符号19、20、21、22、23)が設けられ、これらは、それぞれ4つのアームを有する星形の小さなピニオンであることがわかる。5つの小さな可動ピニオンは、文字盤支持体9上に回転可能に設けられ、
図5に示すように、本実施例では、これらを腕時計の軸から離間させる距離は全て異なる。
【0018】
後述するように、可動文字盤セクタ11、12、13、14、15は、円弧状の開口部17内で摺動するように構成されている。この目的のために、可動文字盤セクタは脚(図示せず)を備え、脚の端部が第1の文字盤3の文字盤支持体9の下に現れるように、この脚を前記開口部17に挿入する。
図6は
図5と同様の図であり、更に5つの歯付きセクタ(それぞれ参照符号11A、12A、13A、14A、15A)を示す。
図6に示すように、可動文字盤セクタは、それぞれ前記開口部17を貫通する脚を用いて歯付きセクタのうちの1つと一体となっていることが明らかである(時計の組立て時、例えば、まずこの脚を文字盤支持体の開口部に挿入し、続いて各脚の遠位端を、歯付きセクタのうちの1つにこのために設けられた孔に挿入することにより、組立て作業を進めることができる)。これもまた
図6からわかるように、歯付きセクタ11A、12A、13A、14A、15Aは、それぞれ小さな可動ピニオン19、20、21、22、23と噛合する。よって、小さな可動ピニオンのうちの1つの回転は、第1の文字盤3の文字盤支持体9に設けた開口部のうちの1つの内側で、対応する文字盤セクタを摺動させることになる。また、
図6は、5つの可動文字盤セクタと協働するように構成されている5つのスプリングキャッチ49を示す。一方では、前記開口部17の長さが限定されているため、他方ではキャッチ49が存在するため、可動文字盤セクタ11〜18は、それぞれ互いから1回転の1/24だけ離間した2つの定位置にしかとることができない。
【0019】
図3は、
図5及び6と同様の図であるが、プログラミングディスク25を示しており、このプログラミングディスク25の機能は、様々な可動文字盤セクタ11、12、13、14、15が起動される順番を決定することである。腕時計の裏側からのこの図では、プログラミングディスクは第1の文字盤の文字盤支持体9でほぼ完全に隠れているが、周縁歯部57のみが例外として見ることができる。プログラミングディスク25と文字盤支持体9との間に配設されている歯付きセクタ11A、12A、13A、14A、15A並びに可動ピニオン19、20、21、22、23は、
図3では見ることができないことがわかるであろう。しかしながら、プログラミングディスクは、参照符号19H、19E、20H、20E、21E、21H、22E、22H、23E、23Hの、10個のピンを備えていることがわかる。実際、これらのピンは、文字盤支持体9の方を向いており、
図3では見ることができないプログラミングディスク25の表面上に配設されている。しかしながら、本実施例では、ピンをプログラミングディスクの小さな孔に打ち込んでいる。実際、ピンを打ち込む小さな孔を
図3で見ることができる。
【0020】
図3からは、クラウン27が腕時計ケースの内側に配置されたピニオン29と一体であることがわかる。ピニオン29は、プログラミングディスク25の周縁歯部31と噛合している。本実施例では、プログラミングディスク25は、起動された時に、腕時計の針と同じ方向に回転するように構成されている。また、好ましくは、プログラミングディスク25が腕時計の針と反対方向に回転するのを防止するために一般に知られている反転防止手段(図示せず)を設ける。しかしながら、本発明は、プログラミングディスク25を腕時計の針の方向に起動しなければならない場合に限定されるものではない。反対に、他の実施形態によると、プログラミングディスク25は、起動された時に、腕時計の針と反対の方向に回転するようにすることもできる。この場合、ピンはディスク上に、異なる構成で配置されることになる。
【0021】
図3からわかるように、図示した実施例では、腕時計の軸から10個のピンを離間させるそれぞれの距離は全て異なる。すなわち、これらの距離は、ピン19H、19E、20H、20E、21E、21H、22E、22H、23E及び最後に23Hの順番に長くなっている。腕時計の装着者が制御部材27を起動してプログラミングディスク25を回転させると、プログラミングディスク25がもつ各ピンは、円形の軌道に沿って変位し、この軌道の半径は、腕時計の針の軸からこのピンを離間させた距離に等しい。腕時計の軸から5つの可動ピニオンを離間させる距離も同様に全て異なることは既に説明した。実際、各可動ピニオンは、丁度2つのピンの軌道を遮断するように配置されている。したがって、可動ピニオン19は、ピン19H、19Eの円形軌道を遮断するように配置されており、可動ピニオン20は、ピン20H、20Eの円形軌道を遮断するように配置され、これ以降のピニオンの配置も同様である。
【0022】
ピン19Hは、可動ピニオン19の軸よりも、腕時計の針の軸に僅かに近く位置している。したがって、ピン19Hが回転して可動ピニオン19に出会うと、ピン19Hは可動ピニオン19を、プログラミングディスク25の回転方向とは反対の方向に、1/4回転だけ回転させることになる。反対に、ピン19Eは、可動ピニオン19よりも、腕時計の針の軸から僅かに遠くに位置している。したがって、ピン19Eが可動ピニオン19に出会うと、ピン19Eは可動ピニオン19を、プログラミングディスク25と同じ方向に回転させる。更に、
図6からもわかるように、歯付きセクタ11Aの歯は内向き歯である(すなわち、針の軸の方向を向いている)。このような条件下においては、可動ピニオン19が歯付きセクタ11Aを駆動すると、歯付きセクタ11Aは可動ピニオンと同じ方向に回転する。このような条件下においては、ピン19Eが可動ピニオン19に出会い、可動ピニオン19が腕時計の針の方向へ1/4回転すると、この回転の結果、腕時計の針の方向に可動文字盤セクタ11も摺動することになる。これは、ピン19Eが可動文字盤セクタ11を夏時間へ移動させるということである。ピン19Hに関してはこれと逆のことが起こる。実際、既に見てきたように、ピン19Hにより、可動ピニオン19は逆方向に回転する。したがって、ピン19Hは、可動ピニオンに出会うと、可動文字盤セクタ11を冬時間に戻すことが理解されるであろう。
【0023】
再び
図3〜5を参照すると、ピンは、ピンのうちの1つが可動ピニオンに出会うことがそれぞれ、プログラミングディスク25の異なる角度位置に対応するように、プログラミングディスク25上に配置されることがわかる。また、ピンの位置と可動ピニオンの位置との間の関係は、プログラミングディスク25が腕時計の針の方向に回転する際に、ピンが、23H、19E、20E、21H、22H、22E、21E、23E、20H及び最後に19Hという順番で動作するようになっている。具体的には、腕時計に表示されている様々な場所における時間変更の連続が常に同じ順序を保っているため、これらの変更の日が年によって異なっている場合でさえ、上述した手動手段により、冬時間と夏時間との間の双方向の変更を正確に制御することができる。しかしながら、仮に政治的な決定によって時間変更の順序が変更された場合でも、腕時計を新たな状況に適合させるには、プログラミングディスク25を交換するだけで十分であることは明らかであろう。