(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
センサノード、無線防災ノード及び受信機で構成され、前記センサノードから送信された電文信号を前記無線防災ノードで受信して処理し、処理結果を信号線により接続された前記受信機に送信する無線防災システムに於いて、
前記センサノードは、
イベント発生時に、所定の電文送信時間に亘り同一の電文信号を連続送信する電文送信と、所定時間に亘り電文送信を休止する電文休止とを2回以上繰り返す送信処理部と、
火災発報を判断する所定の火災閾値と前記火災閾値より低い所定のプリアラーム閾値を設定し、火災に伴う物理量又は前記物理量の変化と前記プリアラーム閾値及び火災閾値とを比較してプリアラームイベント又は火災発報イベントを判別する火災判別部と、
前記プリアラームイベントを判別した後のプリアラーム状態で、急いで送る必要のない火災発報以外の不急イベントを検出した場合、前記不急イベントを保持し、前記火災発報イベントを判別して火災発報に基づく電文送信を行ったときに前記不急イベントを保持している場合、前記不急イベントに基づく電文を送信する電文送信制御部と、
を備えたことを特徴とする無線防災システム。
請求項1記載の無線防災システムに於いて、前記センサノードの電文送信制御部は、前記プリアラーム状態で前記不急イベントを検出した場合、前記不急イベントを保持し、前記プリアラーム状態の復旧を判別したときに前記不急イベントを保持している場合、前記不急イベントに基づく電文を送信することを特徴とする無線防災システム。
請求項1記載の無線防災システムに於いて、前記センサノードの送信処理部は、イベント発生時に、電文送信と電文休止とを3回繰り返した後に、ノード毎にランダムに設定した所定のランダム休止時間を配置し、前記ランダム休止時間後に、電文送信と電文休止とを3回繰り返すことを特徴とする無線防災システム。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は本発明による無線防災システムの実施形態を示した説明図である。
図1において、監視対象となる建物11の1F〜3Fの各階には無線防災ノードとして機能する無線受信用中継器12−1〜12−3が設置され、火災受信機であるP型受信機10から階別に引き出された感知器回線18−1〜18−3に接続されている。
【0021】
1F〜3Fの各階には、センサノードとして機能する無線式感知器16−11〜16−14、16−21〜16−24、及び16−31〜16−34が設置されている。また本実施形態にあっては、無線受信用中継器12−1〜12−3に対し、距離が離れている無線式感知器からの電波の減衰による信号の不到達を防ぐために電波中継器14−1〜14−3を設置している。
【0022】
無線式感知器16−11〜16−34及び電波中継器14−1〜14−3のそれぞれには、機器IDを使用した固有のノードIDが予め登録されている。
【0023】
無線式感知器16−11〜16−14は火災による煙濃度または温度が所定の閾値を超えたときに火災イベントの発生と判断し、火災を示す電文信号(以下、単に「電文」という)を間欠的に無線送信する。
【0024】
この間欠送信は、同一の電文データを例えば18回連続して所定の送信時間T1に亘り送信する送信動作を、所定の送信休止時間T2を挟んで3回繰り返し、続いて無線式感知器に固有なランダム休止時間T6を空け、同様に同一の電文データを18回連続して所定の送信時間T1に亘り送信する送信動作を、所定の送信休止時間T2を挟んで3回繰り返し、これを1セットの電文送信としている。
【0025】
無線式感知器16−11〜16−14は、火災発報イベントや火災復旧イベントといった早く送りたい所謂至急イベントの発生を検出した時、あるいは、スイッチ操作による試験イベント、センサ障害などの障害イベントといった処理を急がない所謂不急イベントのいずれについても、1セットの電文送信を行うことを基本とする。
【0026】
また本実施形態にあっては、無線式感知器16−11〜16−14において、火災発報を判断する所定の火災閾値と、火災レベルより低い所定プリアラーム閾値を設定し、火災に伴う物理量又は物理量の変化とプリアラーム閾値及び火災閾値とを比較してプリアラームイベント又は火災発報イベントを判別する機能を設けている。
【0027】
更に、プリアラームイベントの判別中に、急いで送る必要のない不急イベントを検出した時に、不急イベントを保持し、続いて火災発報イベントを判別した時に火災発報に基づく電文送信を行った後に、不急イベントに基づく電文を送信する機能を設けている。この詳細は後の説明で明らかにする。
【0028】
電波中継器14−1と無線受信用中継器12−1のそれぞれには、親子関係に基づいて電文を受信する子ノードとしての送信元を特定するノードIDが予め登録されている。即ち、無線受信用中継器12−1には子ノードとなる無線式感知器16−13,16−14及び電波中継器14−1のノードIDが予め登録されている。また電波中継器14−1には、子ノードとなる無線式感知器16−11,16−12のノードIDが予め登録されている。
【0029】
なお、2F及び3Fの無線受信用中継器12−2,12−3及び電波中継器14−2,14−3についても同様であり、無線受信用中継器12−2は無線式感知器16−23,16−24及び電波中継器14−2のノードIDを予め登録し、電波中継器14−2は無線式感知器16−21,16−22のノードIDを登録し、無線受信用中継器12−3は無線式感知器16−33,16−34及び電波中継器14−3のノードIDを登録し、電波中継器14−3は無線式感知器16−31,16−32のノードIDを登録している。
【0030】
このような無線受信用中継器12−1及び電波中継器14−1に対するノードIDの登録により、電文を受信した際には、電文に含まれる送信元IDと予め登録したノードIDとを比較し、例えば両者が一致したときに有効な電文として処理することになる。
【0031】
更に本実施形態にあっては、無線受信用中継器12−1において、親子関係にない無線式感知器16−11,16−12から電波中継器14−1を経由せずに直接受信される電文について、有効な電文としての処理を可能とするため、電波中継器14−1から無線受信用中継器12−1に、登録したノードIDを転送して追加登録し、これによって、受信用中継器12−1で子ノードとして割り当てられていない無線式感知器16−11,16−12からの電文を直接受信した場合にも、追加登録したノードIDとの一致を判別して、有効な電文として処理できるようにしている。
【0032】
電波中継器14−1は、間欠受信を行っている。この間欠受信は、所定のキャリアセンス周期Tcs毎に無線式感知器16−11,16−12から送信される電文キャリアの有無を検出しており、キャリアを検出すると受信動作を行う。キャリアセンス周期Tcsは、無線式感知器16−11,16−12から送信される送信休止時間T2を間に挟んだ例えば2回の送信時間T1のいずれかで電文が有効に受信できるように決めている。このキャリアセンス周期Tcsの詳細は後の説明で明らかにする。
【0033】
電波中継器14−1は間欠受信により無線式感知器16−11,16−12からの電文を受信した際には、電文の送信元IDと登録しているノードIDとを比較し、両者が一致したときに有効な電文として無線受信用中継器12−1に対し中継送信する。電波中継器14−1からの中継電文の送信は、同一の電文データを例えば4回連続して所定の送信時間に亘り送信する送信動作を、所定の送信休止時間を挟んで例えば3回繰り返す。
【0034】
無線受信用中継器12−1は、常時受信状態となっており、子ノードとして割り当てられた無線式感知器16−13,16−14からの電文を受信した際に、電文の送信元IDと登録しているノードIDとを比較し、両者が一致したときに有効な電文として受信処理し、処理結果をP型受信機10に送信する。
【0035】
無線受信用中継器12−1は、受信した電文が無線式感知器からの火災を示す電文であった場合、P型受信機10に対し感知器回線18−1に対する接点出力として発報電流を流すことで火災発報信号を送信する。
【0036】
また無線受信用中継器12−1は電波中継器14−1を経由して無線式感知器16−11,16−12から電文を受信した場合にも、電文に含まれる送信元IDと予め登録したノードIDとの一致により有効な電文として受信し、受信結果をP型受信機10に送信する。
【0037】
更に無線受信用中継器12−1は、割り当て対象となっていない無線式感知器16−11,16−12より直接、電文を受信した場合についても、受信した電文の送信元IDと追加登録されたノードIDと比較し、両者が一致したときに有効な電文として処理し、処理結果をP型受信機10に送信することになる。
【0038】
また本実施形態にあっては、電波中継器14−1及び無線式感知器16−11〜16−14が正常に動作していること、即ち持ち去りや電池切れが発生していないことを監視するため、当該各ノードは定期通報電文を定期的に送信する。
【0039】
無線式感知器16−11〜16−14及び電波中継器14−1からの定期通報電文の送信に対し、無線受信用中継器12−1は、電文の送信元IDと登録したノードIDの一致により有効な電文として受信したとき、登録したノードIDごとに設けている定期通報タイマをリセットスタートしている。しかしながら、定期的に定期通報電文が受信されずに定期通報タイマが所定時間を超えてタイムアップした場合には、そのノードが正常に動作していない定期通報異常であることを判断し、P型受信機10に対し障害発生を通知する。
【0040】
この障害発生通知は、例えばP型受信機10からの感知器回線18−1に接続している終端抵抗を切り離して擬似的に断線状態を作り出すことで、定期通報異常による障害発生を通知する。
【0041】
図2は
図1の無線防災システムで送受信する電文を示した説明図である。
図2において、電文フォーマット90は、位相修正信号92、連番94、送信元ID96、電文内容98及びエラーチェックコード100で構成される。受信側では、送信元ID96を見て登録されているノードかどうか判断してから、電文内容98を見て電文の意味を判断して処理する。
【0042】
位相修正信号92は所定ビット長の「101010・・・・10」で繰り返すプリアンブル信号であり、これにより無線通信部に設けた受信用PLLの位相同期による受信準備を行うことが出来る。
【0043】
連番94は電文の送信ごとに0〜255の範囲で順番に変化する値を格納し、受信側で電文送信の順序を知ることができる。送信元ID96には送信元となる機器のノードIDが設定され、本実施形態では例えば32バイトのデータとなる。
【0044】
電文内容98は火災情報や障害情報などが設定される。電文内容98に火災発報、火災復旧を設定した電文は、早く送って迅速な処理を必要とする至急イベントに基づく電文となる。これに対し、電文内容98に障害、試験を設定した電文は、急な処理を必要としない不急イベントに基づく電文ということができる。
【0045】
図3は
図1の実施形態に設けた1Fの無線式感知器16−11、電波中継器14−1を取り出して、その詳細を示したブロック図である。
【0046】
図3において、センサノードとしての無線式感知器16−11は、プロセッサ20、無線通信部22、アンテナ24、センサ部26、ディップスイッチなどを用いた操作部28及びバッテリー30で構成される。センサ部26は例えば光電式の煙感知部やサーミスタなどを用いた温度検出部である。
【0047】
プロセッサ20にはプログラムの実行により実現する機能として火災判別部74、送信処理部76及び電文送信制御部78が設けられている。
【0048】
火災判別部74は、火災発報を判断する所定の火災閾値と、火災閾値より低い所定プリアラーム閾値を設定し、センサ部26から出力される例えば煙濃度検出信号と比較する。火災判別部74は、センサ部26から出力される煙濃度検出信号がプリアラーム閾値を超えたときにプリアラームイベントの発生と判別する。また火災判別部74は、センサ部26から出力される煙濃度検出信号が火災閾値を超えたときに火災発報イベントの発生と判別する。
【0049】
また火災判別部74は電源投入直後に行う操作部28のディップスイッチなどにより登録モードをセットすると、機器IDとして知られたノードIDを送信元IDにセットした起動電文を送信し、電波中継器14−1にノードIDを登録させる。
【0050】
更に、火災判別部74は火災イベント以外に、復旧、電池切れ、障害、手動試験、自動試験、定期通報を含むイベント発生を検出し、送信処理部76による送信処理を行わせる。
【0051】
送信処理部76は、イベント発生時に、所定の電文送信時間に亘り同一の電文信号を連続送信する電文送信と、所定時間に亘り電文送信を休止する電文休止とを2回以上繰り返す。
【0052】
即ち、送信処理部76は、
図5に示すように、例えば18個の同一電文データ112−1〜112−18を含む送信電文110−1〜110−3を所定の送信時間T1に亘り送信する電文送信を、所定の送信休止時間T2に亘り送信休止する送信休止を挟んで3回繰り返し、続いて無線式感知器に固有なランダム休止時間T6を空け、同様に18個の同一電文データを含む送信電文110−4〜110−6を送信時間T1に亘り送信する電文送信と、送信休止時間T2の送信休止を挟んで3回繰り返し、これを1セットの電文送信としている。ランダム休止時間T6は送信元IDなどに基づき例えば3〜7secの範囲で異なる時間がランダムに決められる。
【0053】
再び
図3を参照するに、電文送信制御部78は、火災判別部74によるプリアラームイベントの判別中に、急いで送る必要のない火災発報以外の障害や試験といった不急イベントを検出した時に、検出した不急イベントを保持し、続いてプリアラーム中に火災発報イベントを判別した時に、送信処理部76により火災発報に基づく1セットの電文送信を行った後に、不急イベントに基づく1セットの電文送信を行うように制御する。
【0054】
また電文送信制御部78は、火災判別部74によるプリアラームイベントの判別中に、急いで送る必要のない不急イベントを検出した時に、この不急イベントを保持するが、その後、火災判別部74において煙濃度検出信号がプリアラーム閾値より低いレベルに戻るプリアラームイベントの復旧を判別した時に、送信処理部76により不急イベントに基づく1セットの電文送信を行うように制御する。
【0055】
無線通信部22には送信回路22aが設けられており、日本国内の場合には例えば400MHz帯の特定小電力無線局の標準規格に従った無線通信を行う。なお無線式感知器16−11にあっては、受信機側に電文を送信するだけであることから、本実施例では受信回路を設けていない。
【0056】
また、無線通信部22のチャンネル周波数は400MHz帯の特定小電力無線局標準規格で使用可能な4つのチャンネル周波数f1〜f4のいずれか1つを使用する。チャンネル周波数は
図1の各階で同じにしても良いし、混信を避けるために例えば隣接する階では異なるチャンネル周波数を使用しても良い。
【0057】
次に電波中継器14−1を説明する。電波中継器14−1は、プロセッサ32、受信回路34aと送信回路34bを備えた無線通信部34、アンテナ35、操作部36、表示部37、メモリ38及び電源部40で構成される。プロセッサ32にはプログラムの実行により実現される機能として、キャリアセンス周期設定部80、間欠受信処理部82及び中継処理部84が設けられている。
【0058】
中継処理部84は、操作部36に設けている登録スイッチの操作により、電波中継器14−1の使用を開始する際に、メモリ38の中継制御テーブル85に、自己に割り当てられた
図1に示した無線式感知器16−11,16−12のノードIDを登録する。
【0059】
また中継処理部84は、割り当てられた
図1の無線式感知器16−11,16−12のノードIDを中継制御テーブル85に登録する毎に、登録したノードIDを読み出して、無線受信用中継器12−1に登録電文により転送し、無線受信用中継器12−1側での追加登録を行わせる。
【0060】
更に中継処理部84は中継制御テーブル85に対するノードIDの登録が終了した後の監視状態では、無線通信部34で無線式感知器から送信された火災電文、定期通報電文などを間欠受信処理部82により受信した際に、各電文に含まれる送信元IDを取得し、中継制御テーブル85に登録しているノードIDと比較し、両者が一致したときに、受信した電文を中継送信し、不一致の場合には中継送信を行わない。
【0061】
キャリアセンス周期設定部80は、無線式感知器16−11から
図5に示した送信電文110−1〜110−6が送信されたときに、例えば電文休止時間T2を挟んで連続する2回の送信電文110−1,110−2の電文送信時間T1の少なくともいずれかに、受信動作に最低限必要なキャリアセンス必須時間T5が重なるようにキャリアセンス周期Tcsを設定する。
【0062】
間欠受信処理部82は、キャリアセンス周期Tcs毎に送信電文によるキャリアの有無を検出し、キャリア検出状態がキャリアセンス必須時間T5以上継続することで受信された電文を処理する。即ち、キャリアセンス必須時間T5は、送信電文のキャリアを検出して送信準備動作を開始し、送信電文に含まれる電文データを例えば2つ受信して一致を判別することで有効な受信データを取得する時間ということができる。
【0063】
電源部40はバッテリー電源であるのが最適である。バッテリー電源であると電源線の配線が不要で設置が容易になるので、無線防災システムのメリットが十分に生かせる。
【0064】
図6は
図3の無線式感知器16−11における2回の送信電文に対し有効に受信する
図3の電波中継器による間欠受信処理を示したタイムチャートである。
【0065】
図6(A)は送信電文であり、1セットの送信電文の先頭部分の送信電文110−1,110−2を示しており、送信電文110−1,110−2は送信時間T1であり、休止時間T2を間に挟んでいる。
【0066】
本実施形態にあっては、N=2回の送信電文110−1,110−2に対しN=2回のキャリアセンスにより電文を必ず1回有効に受信できるようにキャリアセンス周期Tcsを設定している。
【0067】
このようなキャリアセンス周期の算出方法は次のようになる。まず、キャリアセンスを開始してから電文を有効に受信完了できるまでに最低限必要な時間をキャリアセンス必須時間T5とする。キャリアセンス必須時間T5はキャリアセンスして電波があると解ってから行う受信ICの設定時間や、無線電文の受信に掛かる時間が含まれており、使用する受信ICの仕様や電文長に依存する値であり、例えばT5=0.5secとなる。
【0068】
ここで、送信電文110−1,110−2の送信時間T1からキャリアセンス必須時間T5を引いた時間(T1−T5)内にキャリアセンスを開始しなければ、受信を行うことは出来ず、この時間を受信可能時間T3とする。即ち受信可能時間T3は、
T1−T5 = T3
となる。
【0069】
一方、キャリアセンス必須時間T5に送信休止時間T2を加えた時間帯では、電文を受信できないことから、これを受信不可能時間T4とする。受信不可能時間T4は、
T2+T5 = T4
となる。
【0070】
図6(B)は、
図6(A)の送信信号110−1,110−2に対する受信可能時間T3で決まる受信可能状態114−1,114−2と受信不可能時間T4で決まる受信不可能状態116−1,116−2を受信可否状態として示している。
【0071】
まずキャリアセンス動作による消費電力を低減するため、キャリアセンス周期Tcsを送信電文の送信時間T1より長くしており、
Tcs>T1 (1)
となるように決める必要がある。
【0072】
次に、キャリアセンス周期Tcsは、受信不可能時間T4以上でないと、少なくとも2回のキャリアセンスで受信できないため、
Tcs≧T4 (2)
となる。
【0073】
これは、Tcs<T4 だと、受信不可能時間T4の中にキャリアセンスタイミングが2回以上入ってしまうため、キャリアセンス2回で受信することが出来ないからである。
【0074】
続いて、2回の受信可能時間T3までの間に、少なくとも2回のキャリアセンスタイミングが来るようにするため、
Tcs≦(T3×2+T4)/2 (3)
とする必要がある。
【0075】
ただし、キャリアセンス2回で受信する場合は、
{T3×2/(T3×2+T4)}≧(1/2) (4)
でなくてはならない。この(4)式の条件は、キャリアセンス2回のうち1回は受信可能時間T3に行わなくてはならないので、2回の受信可能時間T3を含む送信不可能時間T4を挟んだ2回の通信電文110−1,110−2に亘る時間(T3×2+T4) のうち、1/2以上は受信可能時間でなくてはならないからである。
【0076】
即ち、式(2)(3)をまとめるとキャリアセンス周期Tcsは、
T4≦Tcs≦(T3×2+T4)/2 (5)
となる。
【0077】
以上の式(1)〜(5)に基づきキャリアセンス周期Tcsを決定できる。
【0078】
具体的な例として
送信時間T1=2sec
送信休止時間T2=2sec
キャリアセンス必須時間T5=0.5sec
受信可能時間T3=T1−T5=1.5sec
受信不可能時間T4=T2+T5=2.5sec
とした場合、次のように算出される。
式(1)より Tcs>2 sec
式(2)より Tcs≧2.5sec
式(3)より Tcs≧(1.5×2 +2.5)/2
Tcs≦2.75sec
式(4)より、0.55≧0.5となり、これも満たす。
【0079】
式(1)(2)(3)を満たすキャリアセンス周期Tcsは
2.5sec≦Tcs≦2.75sec
となる。ここで、キャリアセンス周期Tcsは長い方が消費電力を低減できるため、長めに取るのが好ましい。例えばTcs=2.7secとする。
【0080】
図6(C)は前述のようにして決定したキャリアセンス周期Tcs=2.7secのキャリアセンスタイミング118−1〜118−4を示しており、キャリアセンスタイミング118−1が送信電文110−1の開始タイミングに一致した場合を例にとっている。
【0081】
この場合には、
図6(D)の電文受信に示すように、キャリアセンスタイミング118−1によるキャリアセンスによりキャリアセンス必須時間T5の時間以上、電文が受信できるので受信を完了することができる。
【0082】
図7は
図6と同じキャリアセンス周期Tcs=2.7secに設定した場合であるが、
図7(C)に示すように、1回目の送信電文110−1に対してはキャリアセンスタイミング118−1がずれて受信できず、2回目の送信電文110−2に対しキャリアセンスタイミング118−2が適切となって電文受信が行われた状態を示している。
【0083】
この場合、最初の送信電文110−1に対するキャリアセンスタイミング118−1で受信準備動作を開始しているが、キャリアセンス必須時間T5の時間分の受信が出来ないので、受信動作が有効に行われない。しかし、次のキャリアセンスタイミング118−2では、キャリアセンス必須時間T5の時間以上、電文が受信できるので受信を完了することができる。
【0084】
このようなキャリアセンス周期Tcsの決定は、N回の送信電文110−1,110−2に対しN回のキャリアセンスにより電文を必ず1回以上有効に受信できるようにキャリアセンス周期Tcsを決定する方法として、一般化することができる。
【0085】
式(1)〜(5)を一般化すると次のようになる。
【0086】
式(1)はそのまま
Tcs>T1 (6)
式(2)は
Tcs×(N−1)≧T4 (7)
となる。
【0087】
式(3)は
Tcs≦{T3×N+T4×(N−1)}/N (8)
となる。
【0088】
更に条件式(4)は、
(T3×N)/{T3×N+T4×(N−1)}≧1/N (9)
となる。
【0089】
そして式(7)(8)をまとめた式(5)は、
{T3×N+T4×(N−1)}/N≧Tcs≧T4/(N−1) (10)
となる。
【0090】
更に、N=3とした場合のキャリアセンス周期Tcsは、一般式(6)〜(10)にN=3を代入することにより式次にようなる。
Tcs>T1 (11)
Tcs×2≧T4 (12)
Tcs≦(T3×3+T4×2)/3 (13)
T3×3/(T3×3+T4×2)≧1/3 (14)
(T3×3+T4×2)/3≧Tcs≧T4/2 (15)
図4は
図1の無線受信用中継器12−1及びP型受信機10を取り出して、その詳細を示したブロック図である。
【0091】
図4において、無線受信用中継器12−1は、プロセッサ42、受信回路を備えた無線通信部44、アンテナ46、有線通信部48、操作部50、表示部52、メモリ54及び電源部56で構成される。
【0092】
プロセッサ42にはプログラムの実行により実現される機能として、受信処理部86が設けられている。またメモリ54には中継制御テーブル87が設けられ、
図1に示すように、無線受信用中継器12−1に子ノードとして予め割り当てられた無線式感知器16−13,16−14及び電波中継器14−1のノードIDが登録されている。
【0093】
受信処理部86は中継制御テーブル87に対するノードIDの登録を行う。無線式感知器16−13,16−14及び電波中継器14−1のノードIDを登録する際には、表示部52の例えば7セグメント表示器を使用して感知器又は電波中継器の登録アドレスを指定し、続いて操作部50のディップスイッチなどで登録待ち状態を設定し、この状態で無線式感知器16−13,16−14または電波中継器14−1から送信されてくる起動電文又は試験電文を受信し、電文に含まれる送信元IDを取得して中継制御テーブル87に登録する。
【0094】
また受信処理部86は、子ノードとして割り当てられた無線式感知器16−13,16−14及び電波中継器14−1のノードIDの登録を完了した後、電波中継器14−1より送信されてくる中継制御テーブル85に登録しているノードIDを含む登録要求電文を受信した際に、登録要求電文から取得した無線式感知器16−11,16−12のノードIDを中継制御テーブル87に追加登録する。この場合、同時に親ノードとなる電波中継器14−1のアドレスも送ってくることから、これも登録する。
【0095】
また受信処理部86で定期通報電文が受信されずに定期通報異常となる無線式感知器又は電波中継器を判別した場合、感知器回線18の終端に接続している断線検出抵抗を切り離し、擬似的に断線状態を作り出すことで、P型受信機10に定期通報異常による障害発生を通知するようにしている。
【0096】
更に電源部56としては、
図1に示したように、受信機10からの電源線15による直流電力の供給を受けている。
【0097】
次に
図4のP型受信機10を説明する。
図4において、P型受信機10は、制御部として機能するプロセッサ58、回線受信部60−1〜60−3、電源部62、表示部64、音響警報部66、操作部68、移報部70及び不揮発メモリ72を備えている。なお自身の動作電源は、適切にバックアップされた商用電源を使用している(図示せず)。
【0098】
回線受信部60−1〜60−3からは感知器回線18−1〜18−3が
図1に示したようにそれぞれ引き出され、感知器回線18−1には無線受信用中継器12−1が接続されている。
【0099】
回線受信部60−1は、無線受信用中継器12−1に設けた有線通信部48による接点動作で流れる発報電流を検知し、プロセッサ58に対し火災検出信号を出力する。また無線受信用中継器12−1の有線通信部48における終端抵抗の切り離しは、実際の感知器回線の断線の際の監視電流の遮断として検出し、障害検出信号をプロセッサ58に出力する。
【0100】
プロセッサ58はCPU、ROM、RAM、AD変換ポート及び各種の入出力ポートを備え、CPUによるプログラムの実行で火災監視部88の機能を実現している。
【0101】
火災監視部88は回線受信部60−1〜60−3のいずれかによる発報電流の検出で火災発報信号の受信出力が得られると、対応する感知器回線の火災発報と判断し、表示部64に代表火災表示を行うと共に、回線単位の地区表示を行う。また音響警報部66より音響火災警報を出力する。
【0102】
また火災監視部88は蓄積受信を行うこともできる。蓄積受信は予め所定の蓄積時間を設定し、火災発報の受信により蓄積タイマをスタートし、火災復旧が受信されず蓄積タイマが蓄積時間に到達した時に火災と断定して警報を行う。このため非火災と思われる要因により火災発報から蓄積時間以内に火災復旧が受信されると蓄積タイマの動作を停止し、蓄積解除とし、火災警報は行わない。
【0103】
また火災監視部88は、回線受信部60−1〜60−3により感知器回線18−1〜18−3の断線を検出した場合、表示部64に代表障害表示を行うと共に、障害を発生した地区を回線単位に表示し、更に音響警報部66から音響障害警報を出力する。
【0104】
図8は
図3の無線式感知器16−11に設けた電文送信制御部78による送信制御処理の詳細を示したタイムチャートであり、障害や試験などの不急イベントのみが検出された場合の基本的な送信動作を示している。なお、
図8(A)はプリアラーム、
図8(B)は火災発報、
図8(C)は発生イベント、
図8(D)は電文送信を示している。
【0105】
いま
図8(C)に示すように、時刻t1で不急イベントAが発生したとすると、不急イベントAに基づく
図2に示したフォーマットの電文データが作成され、
図8(D)の電文送信に示すように、不急イベントAに基づく1セットの電文送信A1〜A6が行われる。
【0106】
図9は、プリアラーム中に不急イベントが発生し、その後に火災発報が判別されたときの本実施形態の無線式感知器16−11に設けた電文送信制御部78による電文送信制御を示したタイムチャートである。
【0107】
まず
図9(A)の時刻t1に示すように、センサ部26からの例えば煙濃度検出信号がプリアラーム閾値を超えることでプリアラームが判別され、このプリアラーム判別中の時刻t2で
図9(C)に示すように不急イベントAが発生している。
【0108】
このときプリアラームの判別中にあることから、近いうちに火災が発報する可能性が高く、検出された不急イベントAは保持され、これに基づく電文送信は行わず、火災発報の判別を待つ待機状態を維持する。
【0109】
続いて時刻t3で
図9(B)に示すように火災発報イベントBが判別されると、火災発報Bに基づく1セットの電文送信B1〜B6を
図9(D)に示すように行わせる。これによってプリアラーム判別中に発生した不急イベントAの電文送信に影響されることなく、火災発報イベントBに基づく電文送信を迅速に行うことができる。
【0110】
火災発報に基づく電文送信B1〜B6が終了したならば、次の送信開始タイミングとなる時刻T4から、時刻t2で保持した不急イベントAに基づく1セットの電文送信A1〜A6を行わせる。
【0111】
図10は、プリアラーム中に不急イベントが発生し、その後にプリアラームの復旧が判別されたときの本実施形態の無線式感知器16−11に設けた電文送信制御部78による電文送信制御を示したタイムチャートである。
【0112】
まず
図10(A)の時刻t1に示すように、センサ部26からの例えば煙濃度検出信号がプリアラーム閾値を超えることでプリアラームが判別され、このプリアラーム判別中の時刻t2で
図10(C)に示すように不急イベントAが発生している。
【0113】
このときプリアラームの判別中にあることから、近いうちに火災が発報する可能性が高く、検出された不急イベントAは保持され、これに基づく電文送信は行わず、火災発報の判別を待つ待機状態を維持する。
【0114】
しかしながら、時刻t3で
図9(B)に示すようにプリアラームの復旧が判別されており、もはや火災発報になる可能性はなくなったことから、時刻t2で保持した不急イベントAに基づく1セットの電文送信A1〜A6を行わせる。
【0115】
図11は本実施形態による電文送信を行わなかった場合の問題点を示したタイムチャートである。
【0116】
まず
図11(A)の時刻t1に示すように、センサ部26からの例えば煙濃度検出信号がプリアラーム閾値を超えることでプリアラームが判別され、このプリアラーム判別中の時刻t2で
図11(C)に示すように不急イベントAが発生したため、不急イベントAに基づく1セットの電文送信A1〜A6を行わせる。
【0117】
その後、時刻t3で
図11(B)に示すように火災発報イベントBが判別されると、このとき不急イベントAに基づく電文送信A1〜A6は終了していないことから、電文送信A6の終了後の送信開始タイミングとなる時刻T4で火災発報イベントBに基づく1セットの電文送信B1〜B6を行わせることになる。
【0118】
このため火災発報イベントBに基づく電文送信は時刻t3〜t4のあいだ待たされることとなり、迅速な至急イベントに基づく電文送信ができない。
【0119】
図12は
図2の無線式感知器16−11によるセンサ処理を示したフローチャートであり、プロセッサ20によるプログラムの実行により実現される。
図12において、センサ処理は、ステップS1で初期化及び自己診断を行った後、正常であればステップS2に進み、登録処理を実行する。
【0120】
ステップS2の登録処理は、無線式感知器16−11の操作部28に設けたディップスイッチなどにより登録モードをセットすると、ID登録用の試験電文が送信され、このとき、対応する電波中継器14−1の操作部36の登録スイッチにより登録アドレスを指定して登録待ち状態をセットしていると、受信した試験電文に含まれる送信元IDを取り出して、中継制御テーブル85にノードIDとして登録する自動登録が行われる。
【0121】
続いてステップS3でイベント検出の有無を判別している。ステップS3でイベント検出が判別されるとステップS4に進み、障害や試験などの火災発報や火災復旧以外の不急イベントか否か判別する。ステップS4で不急イベントであることが判別されるとステップS5に進み、プリアラーム中か否か判別する。ステップS5でプリアラーム中を判別した場合にはステップS6に進み不急イベントを保持し、不急イベントに基づく電文送信は行わない。
【0122】
一方、ステップS4で不急イベントの判別でなかった場合はステップS7に進み、火災発報または復旧などの至急イベントに基づく1セットの電文送信を行う。続いてステップS8で不急イベントを保持中か否か判別し、ステップS6でプリアラーム中に不急イベントを保持していた場合は、ステップS9で不急イベントに基づく1セットの電文送信を行う。
【0123】
続いてステップS10では定期通報タイマがタイムアップしたか否か判別しており、定期通報タイマのタイムアップを判別すると、ステップS11で定期通報電文を間欠送信した後、ステップS12で定期通報タイマをリセットスタートする。
【0124】
図13は
図3の電波中継器14−1による電波中継処理を示したフローチャートであり、プロセッサ32によるプログラムの実行により実現される処理となる。
【0125】
図13において、電波中継処理は、ステップS21で電源投入に伴う初期化及び自己診断を行った後、異常がなければ、ステップS22で中継制御テーブル85の登録処理を実行する。
【0126】
ステップS22の登録処理が済むと監視状態に入り、ステップS23で設定したキャリアセンス周期Tcsに基づく間欠受信処理を行っている。続いてステップ24で電文を有効に受信したか否か判別する。この有効性の判別は、キャリアセンスにより受信を開始して得られた2つの電文データが一致した時に、有効と判断して電文データとして保持する。
【0127】
ステップ24で電文の有効受信を判別した場合はステップS25に進んで受信した電文を解析し、ステップS26で電文から得られた送信元IDと中継制御テーブル85に登録しているテーブル登録のノードIDとを比較して一致を判別した場合には、有効な受信電文としてステップS27に進み、受信した電文を中継送信する。
【0128】
続いてステップS28で定期通報タイマがタイムアップしたか否か判別しており、タイムアップを判別すると、ステップS29で定期通報電文を送信した後、ステップS30で定期通報タイマをリセットスタートし、ステップS23に戻る。
【0129】
図14は
図4の無線受信用中継器12−1による無線受信用中継処理を示したフローチャートである。
図14において、無線受信用中継器12−1の電源が投入されると、ステップS31で初期化及び自己診断が実行され、異常がなければ、ステップS32で中継制御テーブル87の登録処理を実行する。
【0130】
登録処理が終了すると監視状態となり、ステップS33で受信電文の送信元IDとテーブル登録のノードIDが一致する有効な電文受信の有無を判別している。ステップS33で有効な電文受信を判別するとステップS34で電文を解析し、ステップS35で火災発報を判別すると、ステップS36で感知器回線18に対する接点出力で発報電流を流すことで、P型受信機10に対し火災発報信号を送信し、火災警報を出力させる。
【0131】
ここで、P型受信機10が蓄積受信を行っている場合には、無線受信用中継器12−1から火災発報信号を送信した時にP型受信機10の蓄積タイマをスタートし、蓄積時間内に火災復旧の電文を受信した時に火災発報信号の送信を停止することで、火災復旧を知らせて蓄積タイマをリセットする。勿論、蓄積時間に達しても復旧が行われない場合、P型受信機10は蓄積タイマのタイムアップにより火災と断定して火災警報を出すことになる。
【0132】
またステップS37で定期通報電文であることを判別すると、ステップS38に進み、送信元IDで特定される該当ノードの定期通報タイマをリセットスタートする。
【0133】
続いてステップS39でタイムアップした定期通報タイマの有無をチェックし、もしタイムアップした定期通報タイマがあれば、ステップS40で定期通報異常と判断し、感知器回線18を擬似的な断線状態とすることで、P型受信機10に対し障害信号を送って障害警報を出力させる。
【0134】
なお、本発明は無線防災システムを例にとるものであったが、これに限定されず、適宜の無線システムにおける間欠受信に対応した送信処理に適用することができる。
【0135】
また、上記の実施形態は火災受信機としてP型受信機からの感知器回線に無線受信用中継器を接続しているが、データ伝送機能を持つR型受信機に無線受信用中継器を接続するようにしてもよい。
【0136】
また、プリアラームイベント後の至急イベントを送った後に待たされていた不急イベントを送る際、間欠受信できる最低2回の至急イベント電文送信後に、送信電文を切り替えて不急イベントによる電文を送信することもできる。
【0137】
また上記の実施形態におけるフローチャートは処理の概略例を説明したもので、処理の順番等はこれに限定されない。また各処理や処理と処理の間に必要に応じて遅延時間を設けたり、他の判定を挿入する等が出来る。
【0138】
また本発明はその目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。