【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による一括練り混ぜ方法は、骨材
(木片を除く)とセメント等の水硬性物質粉体
(急硬性セメントを除く)と必要な配合水とをそれぞれ加えて練り混ぜてモルタルまたはコンクリートを
固定式のミキサーを用いて製造する一括練り混ぜ方法において、骨材に配合水を加えて練り混ぜする第一練り混ぜ工程と、その後、水硬性物質粉体を加えて練り混ぜする第二練り混ぜ工程とを備え、前記第二練り混ぜによって骨材表面の均一な水と前記水硬性物質粉体とが次第に練り混ぜられ、水セメント比がフェニキュラー状態から
増大してブリーディング率が極小値となるキャピラリー状態に移行
し、その後、更に水セメント比を大きくすることでブリーディング率を低減させるようにしたことを特徴とする。
本発明による一括練り混ぜ方法によれば、予め骨材に配合水を加えて第一練り混ぜすることで、骨材の表面全体を水で均等に且つ万遍なく分布させて濡らすことができ、その後にセメント等の水硬性物質粉体を供給して第二練り混ぜすると、骨材表面の均一な水とセメント粉体の塊とが混ざることで、水セメント比がキャピラリー状態より小さいフェニキュラー状態の部分が多く発生
でき、更にこれらを練り混ぜすることでセメント混練物がセメントのない骨材表面と接触して水セメント比を次第に大きくしながらセメント粉体が広がってゆき、水セメント比が均一化していく(
図1参照)。そして、この過程でセメント混練物がフェニキュラー状態からキャピラリー状態になる練り混ぜが行われる部分が増加することで、ブリーディング率を改善することができる。
【0011】
ここで、本発明による練り混ぜ方法において、コンクリートやモルタルのブリーディング発生の主要因となるセメントペーストがフェニキュラー状態からキャピラリー状態になる練り混ぜ方法がブリーディング率を減少させることについて説明する。
セメントと水のペーストにおいて、配合水の一部(初期水)を供給して練り混ぜた混練物に残りの配合水を加えて練り混ぜた練り混ぜ方法における、ブリーディング率と一部の配合水(初期水)との関係を
図2に示す。
図2に示すグラフにおいて、一部の配合水(初期水)とセメントとの比W1/Cが約25%付近でブリーディング率が極小値をとる。この約25%の水セメント比(W1/C)で練られた混練物をキャピラリー状態という。
このことから、一度、キャピラリー状態の練り混ぜを経たスラリー状のペーストはブリーディング率が極小値をとることが分かる。
【0012】
そして、最初にペーストの水セメント比W/Cが25%未満のフェニキュラー状態で練り混ぜを行い、さらに練り混ぜながら水を加えていくことで水セメント比W/Cが増大し、W/C=25%でのキャピラリー練り混ぜを行うと例えばW/C=50%としたスラリー状のペーストのブリーディング率は極小値を維持し、最初の配合水(初期水)が水セメント比W/Cが25%を超えたキャピラリー状態でないスラリー状態に設定して練り混ぜを行ったペーストよりブリーディング率が小さい、という現象を呈する。
【0013】
このことを確認するために試験を行った結果を示す
図3に基づいて説明する。
図3には配合水の一部を加えて練り混ぜを行い、さらに何度かに分けて水を追加して練り混ぜた混練物の累積した配合水セメント比(Wn/C)と水とセメントの比がW/C=50%となるよう最後に水を加え練り混ぜたペーストのブリーディング率を示している。
例えば、
図3の凡例で示すように、初めに加えた一部の配合水(初期水)とセメントの比W/Cを10%、30%、35%の3種に設定した場合について説明する。この場合、
図3において、W/C=10%の場合では、最初に配合水の一部(Wnとする)をセメントに対して水セメント比がWn/C =10%となるよう加えて一次練り混ぜを行った。そして、このWn/C =10%の混練り物の一部を取り出して、これに残りの水(W−Wn)を何度かに分けてまたは連続して加えて二次練り混ぜを行い、得られたW/C=50%のセメントペーストのブリーディング率は7.1%であった。
【0014】
次に、残余の水セメント比Wn/C =10%のセメントペーストに、さらにセメント量の5%の配合水を追加して練り混ぜを行った。そして、このWn/C=15%の混練り物の一部を取り出して、これに残りの配合水(W−Wn)を加えて練り混ぜを行い、得られたW/C=50%のセメントペーストのブリーディング率は3.5%であった。
このような手順で混練り物に順次配合水を追加して練り混ぜ、その都度、混練り物の一部を取り出して残りの配合水を加えて練り混ぜを行い、最終的に得られた各W/C=50%のセメントペーストのブリーディング率を求めてそれぞれを
図3に示すグラフにプロットした。なお、図の横軸は5%ずつ加水した累積の一次水量(Wn)とセメント(C)の比(Wn/C)であり、縦軸は配合水を全て加えて得られたセメントペーストのブリーディング率である。
【0015】
また、
図3において、同様の手順で最初に加えた配合水の水セメント比Wn/C=30%と35%の場合におけるセメントペーストのブリーディング率との関係を示す。
最初に加えた配合水の量がWn/C=25%の場合(キャピラリー状態)より小さいと、徐々に配合水を加えて練り混ぜることによりブリーディング率は低減し、Wn/C=25%のキャピラリー状態を過ぎて増大してもブリーディング率は極小値より増加しないで極小値を維持する。
一方、最初の水の量がWn/C=30%や35%のようにW/C=25%(キャピラリー状態)より大きいと、ブリーディング率はW/C=25%の極小値より大きくなるという現象を呈する。
【0016】
そのため、セメント等の水硬性物質粉体は水と練り混ぜられてペーストになるとき、水硬性物質粉体と最初に供給される配合水との割合W/Cの値が25%以下か、25%を超えているかによって、その後さらに水を加えて得られたセメントペーストのブリーディング率(量)が決定されるといえる。
即ち、W/C=25%(キャピラリー状態)かこれより少ない配合水を加えたフェニキュラー状態から、これらの骨材と配合水を練り混ぜながら徐々に残りの配合水を加えると、W/C=25%(キャピラリー状態)より累積の配合水の量が多くなっても(この状態をスラリー状態という)ブリーディング率はキャピラリー状態より増加しない。
【0017】
図2および
図3に示す結果から、従来の一括練り混ぜ方法のように、全量の配合水とセメントを同時にミキサーに投入すると水塊とセメントが遭遇して、スラリー状態で練り混ぜられる部分が多くなり、この部分のブリーディングは減少できない。
一方、配合水を骨材の表面に均等に分布させて、その骨材の一部にセメントを団塊状で遭遇させると、水セメント比W/Cが25%より小さいフェニキュラー状態の部分が多くできる。さらに練り混ぜて残りの配合水を加えることにより、配合水が均一に分散する過程でブリーディング率の小さいモルタルやコンクリートを製造できる。
【0018】
そのため、セメント等の水硬性物質粉体は水と練り混ぜられてペーストになるとき、水硬性物質粉体と最初に供給される配合水との割合W/Cの値が25%以下か、25%を超えているかによって、その後さらに練り混ぜながら残りの配合水を加えて得られたセメントペーストのブリーディング率(量)が決定されるといえる。
【0019】
また、本発明による一括練り混ぜ装置は、骨材
(木片を除く)とセメント等の水硬性物質粉体
(急硬性セメントを除く)と必要な配合水とをそれぞれミキサーに加えて練り混ぜてモルタルまたはコンクリートを
固定式のミキサーを用いて製造する一括練り混ぜ装置において、骨材と配合水をミキサーに加える第一供給手段と、水硬性物質粉体をミキサーに加える第二供給手段とを備え、第一供給手段で骨材と配合水をミキサーに加えて練り混ぜた後、第二供給手段で骨材表面の均一な水と水硬性物質粉体とを次第に練り混ぜ、水セメント比がフェニキュラー状態から
増大してブリーディング率が極小値となるキャピラリー状態に移行
し、その後、更に水セメント比を大きくすることでブリーディング率を低減させるようにしたことを特徴とする。
本発明によれば、第一供給手段によってミキサー内に骨材と配合水を加えて第一練り混ぜすることで、骨材の表面全体に水を均等に分布させることができ、その後にセメントを含む水硬性物質粉体を第二供給手段によってミキサーに加えて、第二練り混ぜすることで、骨材表面の均一な水とセメント粉体の塊とが混ざり水セメント比がキャピラリー状態より小さいフェニキュラー状態の部分が多く発生し、更にセメント混練物がセメントのない水に濡れた骨材表面と接触して水セメント比を次第に大きくしながらセメント粉体が広がってゆき、水セメント比が均一化していくためにブリーディング率を改善することができる。
【0020】
なお、本発明による練り混ぜ方法と練り混ぜ装置において、第一練り混ぜと第二練り混ぜは連続して行ってもよく、その練り混ぜ工程の途中で水硬性物質粉体を供給してもよい。或いは、第一練り混ぜと第二練り混ぜとの間で練り混ぜ処理を中断させ、その間で水硬性物質粉体をミキサーに投入するようにしてもよい。