特許第5663698号(P5663698)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5663698
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年2月4日
(54)【発明の名称】車両シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/42 20060101AFI20150115BHJP
   B60N 2/225 20060101ALI20150115BHJP
【FI】
   B60N2/42
   B60N2/225
【請求項の数】10
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-500427(P2014-500427)
(86)(22)【出願日】2012年4月26日
(65)【公表番号】特表2014-508682(P2014-508682A)
(43)【公表日】2014年4月10日
(86)【国際出願番号】EP2012057633
(87)【国際公開番号】WO2012159846
(87)【国際公開日】20121129
【審査請求日】2013年9月19日
(31)【優先権主張番号】102011102420.8
(32)【優先日】2011年5月24日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】511007886
【氏名又は名称】ジョンソン コントロールズ コンポーネンツ ゲーエムベーハー ウント コンパニー カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(72)【発明者】
【氏名】マーケル、 クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ディル、 トーマス
(72)【発明者】
【氏名】プルタ、 ウォルフガング
(72)【発明者】
【氏名】エンス、 ヴィクトル
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー、 ゲルハルト
【審査官】 宮下 浩次
(56)【参考文献】
【文献】 独国特許出願公開第19807581(DE,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第02123506(EP,A1)
【文献】 国際公開第2007/026571(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00 −2/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両シートであって、
a)シート部材(3)と、
b)バックレスト(4)と、
c)前記バックレスト(4)が枢動可能に前記シート部材(3)に嵌合するための少なくとも一つの継手(10)であって、前記継手(10)は、前記バックレスト(4)に接続される第1継手部材(11)と、前記シート部材(3)に接続される第2継手部材(12)とを有し、通常の状況下で前記継手(10)は前記バックレスト(4)と前記シート部材(3)との間の、前記バックレスト(4)に適用される力が前記シート部材(3)に伝えられる力経路に配置される継手(10)と、
d)前記シート部材(3)に設けられた、衝突事象において変形する少なくとも一つの変形領域(D)と
を有し、
e)前記バックレスト(4)は前記バックレスト(4)に固定され支持要素(8a)を有し、
前記シート部材(3)は前記シート部材(3)に固定され支持要素(7a)を有し、
前記シート部材(3)に固定された支持要素(7a)及び前記バックレスト(4)に固定された支持要素(8a)は通常は互いに離間し、衝突事象においては、前記変形領域(D)が変形する結果互いに当接するように動くことにより、前記バックレスト(4)に適用される力が、前記力経路のほかに、前記継手(10)と並列される付加的な経路によっても前記シート部材(3)に伝えられる車両シート。
【請求項2】
前記バックレスト(4)はその支承構造物の一部として、少なくとも一つのバックレスト支柱(8)を有し、
記バックレスト(4)に固定され支持要素(8a)は、前記バックレスト支柱(8)に設けられる、請求項1に記載の車両シート。
【請求項3】
前記バックレスト(4)に固定され支持要素(8a)は、前記バックレスト支柱(8)に形成される、請求項2に記載の車両シート。
【請求項4】
前記シート部材(3)はその支承構造物の一部として、少なくとも一つのシートフレーム側方部材(7)を有し、
記シート部材(3)に固定され支持要素(7a)は、前記シートフレーム側方部材(7)に設けられる、請求項1から3のいずれか一項に記載の車両シート。
【請求項5】
前記シート部材(3)に固定され支持要素(7a)は、前記シートフレーム側方部材(7)に形成される、請求項4に記載の車両シート。
【請求項6】
前記変形領域(D)は、前記第2継手部材(12)と、前記シート部材(3)に固定され支持要素(7a)との間に形成される、請求項1から5のいずれか一項に記載の車両シート。
【請求項7】
記バックレスト(4)に固定され支持要素(8a)は環状に形成され、かつ、前記第1継手部材(11)に固定される、請求項1から6のいずれか一項に記載の車両シート。
【請求項8】
第1継手部材(11)及び前記第2継手部材(12)は、互いに対して軸(A)まわりに回転することができる、請求項1から7のいずれか一項に記載の車両シート。
【請求項9】
前記シート部材(3)に固定された支持要素(7a)及び前記バックレスト(4)に固定された支持要素(8a)の少なくとも一方前記軸(A)まわりに湾曲される、請求項8に記載の車両シート。
【請求項10】
前記シート部材(3)に固定された支持要素(7a)及び前記バックレスト(4)に固定された支持要素(8a)の少なくとも一方は斜面として形成される、請求項1から9のいずれか一項に記載の車両シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプリアンブルの特徴を有する車両シート特に自動車シートに関する。
【背景技術】
【0002】
導入部で述べたタイプの車両シートは、特許文献1によって知られている。継手は、第1継手部材がバックレストに固定され、かつ、第2継手部材が二重に、すなわち一方では回転軸受により、他方では変形領域を画定する変形要素により、シート部材に接続される。変形要素は、バックレストとシート部材との間の力経路に対して回転軸受と並列されるが、継手と直列に配置される。衝突事象において、バックレストに適用されたトルクにより、エネルギー散逸を目的として変形要素が変形するのと同時に、第2継手部材が回転軸受まわりに回転する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】独国特許出願公開第19807581(A1)号明細書
【発明の概要】
【0004】
本発明の目的は、導入部で述べたタイプの車両シートの代替を与えることにある。本目的は、本発明によれば、請求項1の特徴を有する車両シートによって達成される。従属項は有利な実施例に関連する。
【0005】
支持要素を使用することにより、衝突事象において、継手と並列される経路が、当該継手の負荷を取り除く力経路として設けられる。同じ継手が使用される場合、負荷のしきい値を増加させることができる。すなわち、支承構造物が高負荷を吸収することができる。同じ負荷しきい値すなわち同じレベルの安全性を有する異なる負荷クラスの継手が利用可能な場合、下の方の負荷クラスの継手を代替的に使用することができる。支持要素は、例えば有利にはベルト統合シートを備える車両シート側部に設けられ、又は、好ましくは鏡像対称構成にある両方の車両シートに設けられる。ベルトのロックを目的とした多くの周知の衝突時ロック部材とは対照的に、安全ベルトにおける力経路に対して並列する経路の形成が、衝突力によって開始されることはないが、その代わりに変形領域の変形によって開始される。
【0006】
図面に例示される実施例を参照して、本発明が以下に詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施例の一部を通る断面である。
図2図1に対応する斜視分解図である。
図3】鏡像対称に構成された他の車両シート側部における、図2に対応する分解図である。
図4】本実施例の概略図である。
図5図1に対応する分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
自動車用車両シート1は、シート部材3及びバックレスト4を有する。自動車内の車両シート1配列及び自動車の通常の移動方向が以下の方向的指標を画定する。双方の車両シート側部において、車両シート1は、シート部材3の支承構造物の一部としてのシートフレーム側方部材7と、バックレスト4の支承構造物の一部としてのバックレスト支柱8とを有する。これらはそれぞれが、対向する車両シート側部における対応部材に、付加的な構造コンポーネントによって接続される。車両シート1はまた、両側部に継手10を有する。継手10によってバックレスト4はシート部材3に嵌合され、相対的に枢動することができる。本例では、各車両シート側部において継手10は、一方で、関連付けられたシートフレーム部分7に、他方でバックレスト支柱8に固定される。
【0009】
継手10は、互いに対して回転可能な第1継手部材11及び第2継手部材12を有する。本例では、継手10はラッチ継手として構成される。これは例えば、独国実用新案第202009016989(U1)号明細書に記載されている。その開示は、この点についてここに参照として明示的に組み入れられる。かかる継手10により、2つの継手部材11及び12を一緒にロックすることができる。しかしながら、継手10として歯車継手を使用することもできる。これは例えば、独国実用新案第202009017811(U1)号明細書に(自己制限偏心遊星歯車とともに)記載されている。その開示は、この点についてここに参照として明示的に組み入れられる。かかる継手10は、継手部材11及び12を互いに対して回転させるべく駆動され、駆動されない場合はこれらの回転を阻止する。
【0010】
第1継手部材11は、バックレスト支柱8に固定的に接続される。すなわち、バックレストに固定される。バックレスト支柱8は、第1継手部材11が固定されている領域に支持要素8aを有する。支持要素8aはバックレストに固定される。支持要素8aは、本例では、バックレスト支柱8とは別個に構成され、かつ、バックレスト支柱8に固定される部材である。ただし、代替的に、バックレスト8に形成され得る。すなわち、バックレスト8と一体的に構成され得る。バックレストに固定される支持要素8aは、本例では、第1継手部材11の環状肩部11aに(好ましくは形状嵌めの態様で)載置されるリングとして構成される。当該リングは、その周縁の位置に、径方向に突出する第1支持輪郭8bを、カムの形態で有する。バックレストに固定される支持要素8aは、本例では、第1継手部材11とともにバックレスト支柱8に溶接される。しかしながら、他の固定方法及び/又は2つの部材8a、11のバックレスト支柱8への別個の固定も可能である。支持要素8a上でバックレストに固定され、かつ、バックレスト支柱8にある対応する開口と形状嵌めの態様で協働する軸方向の突起により、溶接前の事前位置決めが可能となる。
【0011】
第2継手部材12は、シートフレーム側方部材7に固定的に接続される。すなわち、シート部材に固定される。本例では、第2継手部材12はこの目的のために、星形肩部12aを有する。星形肩部12aは、対応するシートフレーム側方部材7の開口に形状嵌めの態様で係合してこれに溶接される。シートフレーム側方部材7は、第2継手部材12が固定されている領域に支持要素7aを有する。支持要素7aはシート部材に固定される。支持要素7aは、本例では、(シートフレーム側方部材7とは)別個に構成され、かつ、シートフレーム側方部材7に固定される部材である。ただし、代替的に、シートフレーム側方部材7に形成され得る。すなわち、シートフレーム側方部材7と一体的に構成され得る。シート部材に固定される支持要素7aは、本例では、シートフレーム側方部材に溶接された傾斜側面として構成される。下方を向いた部材が水平方向に対して近似的に23°の角度にあり、上方にある他方の部材は、斜面の形態の第2支持輪郭7bである。しかしながら、他の固定方法も可能である。シート部材に固定される支持要素7aと星形肩部12a(ひいては第2継手部材12)のための開口との間に、シートフレーム側方部材7は変形領域Dを有する。変形領域Dは、衝突事象において変形可能であることが意図される。かかる変形は、変形領域Dにおける材料の抜き部又は材料の弱体化によって選択的に実行することができる。
【0012】
通常の状況下では、継手10がロックされているか(すなわち駆動されていないか)否か又は継手10がアンロックされているか(すなわち駆動されているか)否かにかかわらず、2つの支持輪郭7b及び8bは、バックレスト4の傾斜を調整するべく互いから離間されている。バックレスト4は、シート部材3に対して軸Aまわりの枢動を実行する。継手10が偏心遊星歯車を有する場合、軸Aは間隙において揺れるが、それ以外は所定位置に固定される。したがって、2つの支持輪郭7b及び8bを、その間隙がバックレスト4の傾斜から独立するように、固定された軸Aまわりに湾曲させることが有利である。ロック(すなわち非駆動)状態では、継手10は、バックレスト4とシート部材3との間の力経路に独占的に配置される。すなわち、バックレスト4に適用されるすべての力(例えば重力)が、継手10によって独占的にシート部材3に向けられる。
【0013】
衝突事象においてバックレスト4は、前端衝突事象では前方向の及び後端衝突事象では後方向の負荷、特にシート部材3に対するトルクを受ける。継手10の負荷を低減するべく、本発明によれば、当該力経路に対して橋をかける継手10によって当該力経路の分割が得られる。これを目的として、シートフレーム側方部材7(及び/又はバックレスト支柱8)の所望の変形、特に継手10の近傍に配置された変形領域Dが使用される。変形領域Dの変形によりエネルギーの散逸がもたらされる。変形領域Dの変形に起因して、2つの支持要素7a及び8aも互いに、その支持輪郭7b及び8bとともに当接するように動くので、当該力経路に対し、継手10と並列(技術的接続性の意味において)配置され、ひいては継手10に橋をかけるもう一つの経路が設けられる。したがって、継手10に対する3つの空間方向すべてのまわりのトルクを低減することができる。本例では、近似的に10から20%の継手10の負荷低減が達成される。変形領域Dと支持輪郭7b及び8bを備える2つの支持要素7a及び8aとの配列は、変形領域Dの最も蓋然性が高い変形に適合される。前端衝突及び後端衝突をカバーすることが意図される場合、2つの第1支持輪郭8b及び2つの第2支持輪郭7bが、共通の支持要素8a若しくは7aそれぞれに、又はこれら自身の支持要素8a若しくは7aそれぞれに設けられる。シートフレーム側方部材7及び/又はバックレスト支柱8の領域に複数の変形領域Dを設けることもできる。
【符号の説明】
【0014】
1 車両シート
3 シート部材
4 バックレスト
7 シートフレーム側方部材
7a シート部材に固定される支持要素
7b 第2支持輪郭
8 バックレスト支柱
8a バックレストに固定される支持要素
8b 第1支持輪郭
10 継手
11 第1継手部材
11a 環状肩部
12 第2継手部材
12a 星形肩部
A 軸
D 変形領域
図1
図2
図3
図4
図5