(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
粘着層が、エラストマー成分と粘着付与成分とを含むゴム系粘着剤であり、当該エラストマー成分が、スチレン系熱可塑性エラストマーである、請求項1〜5のいずれか一項記載の打ち抜き・絞り加工用表面保護粘着シート又はテープ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、表面保護粘着シート又はテープが貼付された金属板などを打ち抜き、絞り加工等を行う際に、当該シートの浮きやシワの発生が防止可能な打ち抜き、絞り加工用表面保護粘着シート又はテープを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
第一の無延伸フィルムと第二の無延伸フィルムとの積層体からなる支持層と、
第二の無延伸フィルム側に配された粘着層と
を有する粘着シートであって、第二の無延伸フィルムを構成する樹脂がブロックポリプロピレンであり、第二の無延伸フィルムの結晶化度が30%以下である
ことを特徴とする、打ち抜き・絞り加工用表面保護粘着シート又はテープである。
【0008】
ここで、本発明は、第二の無延伸フィルムの結晶化度が25%以下であってもよい。
【0009】
また、本発明は、
第一の無延伸フィルムと第二の無延伸フィルムとの積層体からなる支持層と、
第二の無延伸フィルム側に配された粘着層と
を有する粘着シートであって、第二の無延伸フィルムを構成する樹脂がブロックポリプロピレンであり、
支持層は着色顔料を実質的に含有せず、粘着層は着色顔料を含有する
ことを特徴とする、打ち抜き・絞り加工用表面保護粘着シート又はテープである。ここで、「実質的に含有せず」とは、着色顔料を含有しないか、含有するとしてもわずか(例えば、全支持層の重量を基準として0.1重量%未満)か痕跡程度である状態をいう。
【0010】
また、本発明は、
第一の無延伸フィルムと第二の無延伸フィルムとの積層体からなる支持層と、
支持層の一方の面側に粘着層と
を有する粘着シートであって、粘着層における、周波数0.016Hzで測定される23℃における1%歪γでの貯蔵弾性率G’が3.0×10
5Pa以上であり、1%歪γ時を基準とした際の20%歪γ時での貯蔵弾性率G’の低下量が30%以下である
ことを特徴とする、打ち抜き・絞り加工用表面保護粘着シート又はテープであってもよい。
【0011】
また、本発明は、深絞り用であってもよい。
【0012】
また、本発明は、粘着層が、エラストマー成分と粘着付与成分とを含むゴム系粘着剤であり、当該エラストマー成分が、スチレン系熱可塑性エラストマーであってもよい。
【0013】
また、本発明は、第一の無延伸フィルムが、無延伸のポリエチレン樹脂系フィルムであってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る表面保護粘着シート又はテープは、表面保護粘着シート又はテープが貼付された金属板などを打ち抜き、絞り加工等を行う際に、当該シートの浮きやシワの発生が防止可能である。加えて、本発明に係る表面保護粘着シート又はテープは、特に深絞りに対して有効である。
【0015】
加えて、打ち抜き・絞り加工用表面保護粘着シート又はテープは視認性を有することが好適であるところ、これまでのように支持層に着色顔料を添加するのではなく、非晶成分である粘着層に着色顔料を添加するよう構成することにより、視認性を担保しつつ、支持層の結晶化度の上昇を防止でき、結果、深絞り性を大幅に改善できる。
【0016】
更に、本発明に係る表面保護粘着シート又はテープの粘着層が特定の粘着層(即ち、粘着層における、周波数0.016Hzで測定される23℃における1%歪γでの貯蔵弾性率G’が3.0×10
5Pa以上であり、1%歪γ時を基準とした際の20%歪γ時での貯蔵弾性率G’の低下量が30%以下である態様)である場合、本発明に係る表面保護粘着シートは、前記効果に加え、当該粘着シートが貼付された金属板などを打ち抜き、絞り加工等を行う際に、表面保護粘着シートの裂け及びしごき破れの発生を著しく改善することができる。また、これらの裂け及びしごき破れの発生の防止により、シートカスの発生を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
≪全体構成≫
本発明に係る打ち抜き・絞り加工用表面保護粘着シート又はテープは、第一の無延伸フィルムと第二の無延伸フィルムとの積層体からなる支持層と、第二の無延伸フィルム側に配された粘着層から構成される。ここで、第一の無延伸フィルムと第二の無延伸フィルムは積層体であり、両者は直接接合していても、接着層を介して接合していてもよい。更に、当該粘着シートは、第一のフィルム及び第二のフィルムと粘着層とのみから構成されていなくてもよい。例えば、支持層は、強度、伸びなどの物性を調整するために、その他無延伸プラスチックフィルムを複数層積層することもできる。加えて、支持層と粘着層の間に投錨力を改善する目的で、プライマー層を設けることもできる。
【0019】
支持層の各層の厚さは任意に設定できるが、支持層及び粘着層まで含めた総厚はなるべく薄く設定することが好ましい。特に、剥離層の厚さは基材層より厚くすると基材が剥離層側にカールを起こしたり、絞り加工で浮きやシワやしごき破れが発生したりする傾向があるため、剥離層と基材層の層比は、(剥離層:基材層=0.1:1〜剥離層:基材層=1:1)であることが好適である。当該粘着層の厚みとしては、特に制限はないが、好ましくは1〜15μmの範囲で使用できる。また支持層と粘着層との総厚は、30μm〜130μmであることが好ましく、31μm〜70μmであることがより好ましい。
【0020】
≪各層≫
<1.支持層>
(成分)
本発明の支持層(剥離層/基材層)は少なくとも2層の無延伸フィルムで構成される。このような構成にすることで、同じ厚みであっても1層の場合に比較して、打ち抜き加工及び絞り加工の際の破れを著しく改善できる。また、一方の層の欠点を他の層が補い、全体として良好な物性とすることも可能となる。加えて、支持層の各層は無延伸のプラスチックフィルムから構成される。各層のプラスチックフィルムは、絞り加工の際に金属板と共に粘着テープも一体で伸ばされるので、支持層は伸張性がよく、塑性変形する無延伸のものが好ましく使用される。
【0021】
(成分:剥離層)
まず、剥離層(第一の無延伸フィルム)は、特に限定されないが、結晶性が深絞り性に影響を与えることから、好適には、ポリオレフィン系樹脂フィルムである。ここで、ポリオレフィン系樹脂としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン等炭素数2〜12のα−オレフィンの単独重合体又はビニル化合物との共重合体を挙げることができるが、上記化合物に限定されるものではない。更に詳しく例示すると、高圧法低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状短鎖分岐ポリエチレン(LLDPE)、中低圧法高密度ポリエチレン(HDPE)、メタロセン触媒直鎖状短鎖分岐ポリエチレン(LLDPE)等が挙げられ、これらのポリオレフィン系樹脂を、1種単独又は2種以上の組み合わせで用いてもよい。これらの内、特に好適な剥離層は、自背面剥離時に粘着層との接着性が低く、支持層が伸張せずに剥離することができる特性を持つ観点から、無延伸のポリエチレン樹脂系フィルムである。特に、無延伸のポリエチレン樹脂系フィルムの中では、低密度ポリエチレンが好適である。ここで、低密度ポリエチレンは、JIS K7112 に従って測定した密度が0.91〜0.93g/cm
3で、JIS K6922−1 に従って190℃で測定したメルトフローレイト(MFR)が通常0.2〜10.0g/10分、好ましくは2〜8g/10分であり、示差走査熱量計により測定した融点が通常100〜130℃、好ましくは110〜120℃である。
【0022】
ここで、剥離層(第一の無延伸フィルム)は、剥離剤を含有していてもよい。例えば、シリコーン系剥離剤、フッ素含有ポリマー系剥離剤、長鎖アルキル系剥離剤等を挙げることができる。また、本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、帯電防止剤、滑剤を含有していてもよい。
【0023】
(成分:基材層)
次に、基材層(第二の無延伸フィルム)は、結晶化度が30%以下(好適には25%以下)であるブロックポリプロピレンである。尚、ブロックポリプロピレン(以下、ブロックPPと記載することがある)は、ホモポリプロピレンの中にポリエチレンが分散している状態であり、PEの周りにはエチレンプロピレン相(以下、EPR)が存在している。このようなブロックPPとしては、例えばサンアロマー(株)製のPM761A、PM854X、日本ポリプロ(株)製のBC3HF、BC4FCが挙げられる。ここで、ブロックポリプロピレンを主成分(好適には、基材層の全重量を基準として95%以上)として添加する限り、他の樹脂を添加してもよい。
【0024】
ここで、第二の無延伸フィルムの結晶化度は、広角X線回折法により測定された値である。具体的には、広角X線回折法による結晶化度の測定方法としては、測定条件として管電圧=40(kv)、管電流=30(mA)、測角範囲=5〜30(deg)、検出器走査速度=4(deg/min)として、基材層表面へX線照射をCD方向から行い、得られた回折角対回折強度曲線の結晶質ピークの面積積分強度(A)及び非晶質ハローの面積積分強度(B)を用いて次式から結晶化度を算出する。結晶化度(%)={A/(A+B)}×100。測定で実際に得られる回折角対回折強度のピークは、(A+B)の混合ピークであるが、プロファイルフィッティングの手法で、(B)を推定し、分離することで、(A)のピークのみを分離することができる。尚、測定の際には、粘着層は溶剤にて完全に除去する。
【0025】
特に、無延伸のブロックポリプロピレンの好適な特性としては、JIS K7112 に従って測定した密度が0.85〜0.95g/cm
3で、JIS K6922−1 に従って190℃で測定したメルトフローレイト(MFR)が好ましくは2.0〜12.0g/10分、より好ましくは2.0〜8.0g/10分であり、示差走査熱量計により測定した融点が好ましくは150〜170℃、より好ましくは160〜165℃である。尚、ブロックポリプロピレンは、EPR(非晶部ゴム)を含むので、明確な融点を持たず、幅を持った融点となる。
【0026】
(物性)
・残留応力(支持層全体、MD方向)
支持層のMD方向(ロール状としたときの引き出し方向)に発生する残留応力は、変形量が50%の場合に7.0N/20mm以下であることが好適であり、変形量が50%の場合に6.5N/20mm以下であることがより好適である。ここで、残留応力の測定は、所定サイズの支持層(試験片:幅20mm、長さ100mm)をチャック間50mmで設置し、該試験片の変形量が50%となるまで速度300mm/minで延伸し、その後10分間放置して試験片に発生している応力を測定することにより行う。
【0027】
・動摩擦係数(少なくとも剥離層)
無延伸フィルムの摩擦係数は所定値未満であることが好適である。具体的には、支持層の粘着層とは反対側の面における無延伸フィルムは、JIS P8147の規格に準じて移動速度10mm/分の条件で測定した動摩擦係数が0.4未満であることが好適であり、0.3未満であることがより好適であり、0.2未満であることが特に好適である。例えば、対SUSの動摩擦係数の一例として、ポリアミド(ナイロン66)=0.34、LDPE=0.26、HDPE=0.1、PP=0.35程度、である。
【0028】
・強度(支持層全体、MD方向)
支持層全体のMD方向の破断強度は、20〜80N/20mmが好適であり、30〜60N/20mmが更に好適である。支持層全体の伸びは、300〜1000%が好適であり700〜900%が更に好適である。使用する各フィルムのMD方向の弾性率は、100〜1000MPaが好適であり、300〜700MPaが更に好適である。上記の各物性はJIS K7127規定の測定法による。
【0029】
当該範囲の弾性率とすることによって、裂け及びしごき破れをより好ましく防止することができる。特に支持層の弾性率が小さくなることによって、深絞り時の加工時の金属に追従し易くなる。一方、弾性率が高い支持層は、深絞りへの追従性が乏しく、当該範囲の破断強度とすることによって、シート又はテープのしごき破れをより好ましく防止することができる。
【0030】
<2.粘着層>
(成分)
粘着層を構成する成分は、特に限定されないが、好適には、エラストマー成分と粘着付与成分を含む。その他、軟化剤、酸化防止剤、充填剤等を含有していてもよい。ここで、当該エラストマー成分はスチレン系熱可塑性エラストマーであることが好適である。以下、好適なこれら成分について詳述する。
【0031】
・スチレン系熱可塑性エラストマー
スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、特に限定されず、例えば、スチレン−エチレン−ブチレン共重合体(SEB)等のスチレン系AB型ジブロック共重合体;スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS)、SBSの水素添加物{スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体(SEBS)}、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SIS)、SISの水素添加物{スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン共重合体(SEPS)}、スチレン−イソブチレン−スチレン共重合体(SIBS)、スチレン−ビニルイソプレン−スチレン共重合体(SVPIS)等のスチレン系ABA型トリブロック共重合体;スチレン−ブタジエン−スチレン−ブタジエン(SBSB)等のスチレン系ABAB型テトラブロック共重合体;スチレン−ブタジエン−スチレン−ブタジエン−スチレン(SBSBS)等のスチレン系ABABA型ペンタブロック共重合体;これら以上のAB繰り返し単位を有するスチレン系マルチブロック共重合体;スチレン−ブタジエンラバー(SBR)等のスチレン系ランダム共重合体のエチレン性二重結合を水素添加した水素添加物;等が挙げられる。尚、これらは1種又は2種以上の混合物として用いてもよい。また、エラストマーは、スチレン系熱可塑性エラストマーに限られず、他のゴムとのブレンドゴムでもよい。
【0032】
・粘着付与成分
粘着付与成分としては、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂などの天然物及びその誘導体、脂肪族系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、クマロンインデン樹脂、スチレン系樹脂、フェノール系樹脂、キシレン樹脂等の合成樹脂を挙げることができる。ここで、粘着層の全重量を基準として、粘着付与成分の含有量は、10~40重量%であることが好適であり、20~30重量%であることがより好適である。
【0033】
・その他の添加成分
その他の粘着層への添加成分としては、上記で示した通り、軟化剤、酸化防止剤、充填剤等を含んでもよい。それらの添加量は、配合する添加成分にもよるが、通常、粘着剤重量に対して0.001〜30%、好ましくは0.1〜10%の量が、適宜配合される。
【0034】
また、粘着テープ又はシートの視認性を向上させるために、着色顔料を粘着層に添加することができる。支持体へ着色顔料を添加すると、多くの場合、支持体材料の結晶核剤となって支持体の結晶化度を上昇させ深絞り性に悪い影響を与えることが判明したが、一方、粘着層に着色顔料を添加しても、粘着層材料は非少晶成分のため、粘着テープ又はシート全体として結晶化度が上がらず、物性に影響与えないことが分かった。着色顔料としては、有機顔料、無機顔料いずれでも使用可能である。
【0035】
粘着層への着色方法は、着色顔料を直接粘着層材料へ添加する方法以外にも、着色顔料のマスターバッチを添加してもよい。マスターバッチ化の成型樹脂としては、粘着層材料と相溶性の良い樹脂が好ましい。ここで、相溶性の良い樹脂としては、特に限定はされないが、ポリオレフィン系樹脂やスチレン系熱可塑性エラストマーが挙げられる。ポリオレフィン系樹脂としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン等炭素数2〜12のα−オレフィンの単独重合体又はビニル化合物との共重合体を挙げることができる。スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、スチレン−エチレン−ブチレン共重合体(SEB)等のスチレン系AB型ジブロック共重合体;スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS)、SBSの水素添加物{スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体(SEBS)}、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SIS)、SISの水素添加物{スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン共重合体(SEPS)}、スチレン−イソブチレン−スチレン共重合体(SIBS)、スチレン−ビニルイソプレン−スチレン共重合体(SVPIS)等のスチレン系ABA型トリブロック共重合体;スチレン−ブタジエン−スチレン−ブタジエン(SBSB)等のスチレン系ABAB型テトラブロック共重合体;スチレン−ブタジエン−スチレン−ブタジエン−スチレン(SBSBS)等のスチレン系ABABA型ペンタブロック共重合体;これら以上のAB繰り返し単位を有するスチレン系マルチブロック共重合体;スチレン−ブタジエンラバー(SBR)等のスチレン系ランダム共重合体のエチレン性二重結合を水素添加した水素添加物;等が挙げられる。これらのポリオレフィン系樹脂もしくはスチレン系熱可塑性エラストマーは、1種単独又は2種以上の組み合わせで用いてもよい。ここで、着色顔料のマスターバッチの全重量を基準として、着色顔料の含有量は、特に限定されることはないが、20~60重量%であることが好適である。その他の着色顔料のマスターバッチへの添加成分としては、ワックス、酸化防止剤、耐候剤、充填剤等を含んでもよい。
【0036】
有機顔料としては、例えば、ベンジシンエロー、ハンザエロー、リソールレッド、アリザリンレーキ、ピグメントスカーレット3B、ブリリアントカーミン6B、パーマネントレッドF−5R、パーマネントレッド4R、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、レーキレッドC、パラレッド、ピーコックブルーレーキ、フタロシアニンブルー、アニリンブラック、パーマネントエローHR、PVバイオレットBL、キナクリドン、ペリノン、アンスラキノン、クロモフタールエロー6G、クロモフタールエロー3G、クロモフタールエローGR等がある。
【0037】
また、無機顔料としては、例えば、酸化チタン、亜鉛華、リトボン、鉛白、カドミエロー、黄鉛、チタンエロー、ジンククロメート、黄土、クロムバーミリオン、赤口顔料、アンバー、黄色酸化鉄、赤色酸化鉄、カドミウムレッド、鉛丹、紺青、群青、コバルトブルー、酸化クロームグリーン、ミネラルバイオレット、カーボンブラック、鉄黒等がある。
【0038】
これらの着色顔料のうち、粘着層の着色のために、耐候性、耐熱性に優れ鮮明な青色を呈するフタロシアニンブルーを好適に用いることができる。当該着色顔料は、粘着剤全量の0.01〜3重量%、特に0.5〜1.0重量%の範囲が好ましい。
【0039】
本発明では、支持層には結晶核剤が配合されず、粘着層のみに結晶核剤を配合することにより、支持体の結晶化を防いで深絞り性に悪い影響を与えることを防ぐことができ、一方、粘着層に結晶核剤を配合することで、粘着剤が半透明状に着色され(例えば、フタロシアニンブルーの場合にはブルー)、支持層と粘着層の両方が透明である粘着テープと比較して視認性が格段に良くなる。
【0040】
(物性)
・貯蔵弾性率
粘着層に関しては、周波数0.016Hzで測定される23℃における1%歪γ(せん断ひずみ)での貯蔵弾性率G’が、3.0×10
5Pa以上であり、4.0×10
5Pa以上であることが好適であり、6.0×10
5Pa以上であることが更に好適である(上限値は特に限定されないが、例えば1.0×10
7Pa)。また、1%歪γ時を基準とした際の20%歪γ時での貯蔵弾性率G’の低下量が30%以下であり、20%以下であることが好適であり、10%以下であることが更に好適である。
【0041】
≪打ち抜き・絞り加工用表面保護粘着シート又はテープの製造方法≫
本発明に係る打ち抜き・絞り加工用表面保護粘着シート又はテープの製造方法は、何ら限定されず、積層体を形成させるに際しての周知の方法、例えば、支持層を製膜した後、必要に応じてプライマー塗工等の表面処理をした後に溶展塗工して粘着層を形成させる方法;支持層を製膜した後、溶融押し出し塗工により粘着層を形成させる方法;剥離層、基材層及び粘着層のいずれかの組み合わせ又は全てを共押出で形成させる方法;等で製造可能である。ここで、
図1は、本発明に係る打ち抜き・絞り加工用表面保護粘着シート又はテープの製造装置の概略図である(詳細は実施例を参照)。
【0042】
ここで、基材層(第二の無延伸フィルム)の形成に際しては、結晶化度を30%以下にするため、冷却ロール温度を下げて急冷条件にすること、着色顔料等の結晶核剤となる成分を原料に添加しないこと、が好適である。前者の具体例としては、Tダイで押し出した直後のブロックPPの融点〜250℃に溶融した状態となっている積層体(フィルム)に、一定温度(0〜60℃、好ましくは10〜30℃)に制御可能な冷却ロールを密着させながら、積層体(フィルム)を引き取ることで、積層体を冷却、固化する手法である。積層体の冷却条件が急であるほど、積層体の結晶化度が低くなるため、冷却ロールの温度により、積層体の結晶化度をコントロールすることができる。また、後者(結晶核剤となる成分)の具体例としては、有機顔料、無機顔料、有機系のフィラー、無機系のフィラー(ガラス繊維、タルク、炭酸カルシウム)を挙げることができる。
【0043】
≪打ち抜き・絞り加工用表面保護粘着シート又はテープの用途(使用方法)≫
本発明に係る打ち抜き・絞り加工用表面保護粘着シート又はテープは、特に深絞り用として有効である。ここで、本発明にいう「深絞り」とは、加工前の金属と加工後の金属との絞り比が1.3以上となること、より好適には1.5以上となることを意味する(上限値は、例えば2)。ここで、「絞り比」とは、成型前のブランク直径をD、成型後の円筒の直径dとするときの、D/dで表される値を指す。
【0044】
本発明の打ち抜き・絞り加工用表面保護粘着シート又はテープは、特定の大きさのシートに切り分けた状態とする他、特定の幅、長さで紙菅等に巻いたテープの状態などにすることができ、必要であれば特定の包装を行い供給される。
【実施例】
【0045】
≪使用材料≫
表1〜表3に記載の材料を使用した。尚、表3中に記載した原料(エラストマー)の貯蔵弾性率は、本発明での粘着層の貯蔵弾性率とは異なり、γ=0.05%、周波数=1Hz、温度=23℃の条件で測定された値である。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
【表3】
【0049】
≪実施例1≫
低密度ポリエチレンからなる剥離層形成材料とブロックポリプロピレンからなる基材層形成材料とをT−ダイ押出し機を用いて、剥離層シリンジ温度190℃、基材層シリンジ温度210℃、ダイ温度210℃、冷却ロール温度25℃、引取り速度50m/minの急冷条件で製膜し、40μmの支持層を得た。その後、2種類の熱可塑性スチレン系エラストマー80重量部に対して、粘着付与成分を30重量部と着色顔料を0.9重量部添加したゴム系粘着層形成材料(測定条件:周波数0.016Hz、23℃、1%歪γG’=4.4×10
5Pa)を、プライマー処理を行った基材層側にダイ温度210℃、フィルム引取り速度10m/minで溶融押し出し塗工を行い、粘着剤厚7μmの打ち抜き・絞り加工用表面保護粘着テープを作製した。尚、プライマー処理は、トルエンに溶解した酸変性ポリプロピレン{三菱化学(株)サーフレン(固形分5%)}を薄膜塗工することにより行った。ここで、
図6は、実施例1に係る打ち抜き・絞り加工用表面保護粘着シートの基材層のX線解析チャートである。ここで、実線は、結晶+非晶の混合ピークである(A+Bに相当)。また、点線は、非晶由来のハローピークである(Bに相当)。(A+B)−BでAを求め、結晶化度を算出する。
【0050】
≪実施例2〜4及び比較例1〜4≫
表4に示した処方及び製造条件であることを除き、実施例1と同様に実施例2〜4及び比較例1〜4に係る打ち抜き・絞り加工用表面保護粘着テープを作製した。なお、実施例3及び実施例4は、実施例1の経時変化サンプルの評価結果である。
【0051】
≪試験方法≫
(粘着層の貯蔵弾性率の測定方法)
各実施例及び比較例に係る粘着層形成材料を、200℃で熱プレスして、厚さ約1.5mmの粘着層を作製した。この各粘着層(厚さ:約1.5mm)について、アントンパール社製の動的粘弾性測定装置:商品名「MCR301」を用いて、直径20mmのパラレルプレート治具を用い、周波数0.016Hz、温度23℃の条件にて貯蔵弾性率の歪み依存性を測定した。せん断歪み(γ)は0.1%〜20%までの範囲を測定し、1%歪み時を基準とした際の20%歪み時での貯蔵弾性率の低下量を求めた。
【0052】
(深絞り試験方法)
実施例1〜実施例4及び比較例1〜比較例4を用いて深絞り加工を行った。加工材は厚さ1.0mmの金属板で、金属板の材質はBA−SUS304(ブライトアニールステンレス)である。BA−SUS304表面に表面保護粘着シートを貼付し、表面保護粘着シートをダイ側になるように設置した後に、深絞り加工を行った。深絞り条件は、パンチ内径60mm R2mmの円筒と、ダイ内径62.5mm R5mmの金型を用いて、直径110mm円のBA−SUS304を金型で深絞りし、深さ24mm、フランジ部10mmのカップを得た。
【0053】
≪評価方法≫
打ち抜き・絞り加工用表面保護粘着シートの破れは、深絞り加工によって破れたシートの面積を算出して評価した(○:5%未満、△:5%以上30%未満、×:30%以上)。このとき、同時に、カップのフランジ部のシートの浮き・シワ具合をチェックし、浮き・シワ面積率を求めた(◎:0%以上5%未満、○:5%以上20%未満、△:20%以上40%未満、×:40%以上)。深絞り加工後に粘着シートを再剥離して、粘着シートの剥がし易さをチェックした(○:問題無く剥離可能、△:抵抗はあるが剥離可能、×:抵抗があり剥離が困難)結果を表4に示す。ここで、表中の総合評価は、結果が良好なものからA→B→C、とした。また、深絞り加工後の写真を
図2及び
図3(実施例1)及び
図4及び
図5(比較例1)に示す。
【0054】
(粘着力の試験方法)
打ち抜き・絞り加工用表面保護粘着シートの粘着力は、JIS Z0237に準拠する対BA−SUS304板(ブライトアニールステンレス)の180度剥離試験において評価した。具体的には、対BA−SUS304板の180度剥離試験は、幅20mmに切り出した粘着シートの試験片をBA−SUS304板に貼り付け、2kgのゴムロールを300mm/分の速度で2往復させて、20〜40分間以内にインストロン型引張試験機で180度方向に剥離速度300mm/分の条件で引き剥がすときの粘着力を測定し、n=3の平均値を求めた。
【0055】
表4から、実施例1〜4の打ち抜き・絞り加工用表面保護粘着シートは、深絞りのテスト結果で示されている通り、フランジ部のシートの浮き・シワが最小限に抑えられていることがわかった。また、実施例3、4は実施例1の経時変化サンプルであるが、基材層の結晶化度が何れも30%以下であり、深絞りテストの結果が良好であった。これにより、実施例1は経時安定性も良好であることが示された。
【0056】
これに対し、基材層に10%ホモPPを配合した結晶化度が41%である比較例1は深絞り性が悪い結果となった。製造条件が徐冷である比較例2及び3も、結晶化度が40%を超えているため深絞り性が悪い結果であった。また、基材に着色顔料を配合した比較例4も、結晶化度が高くなり、深絞りテストの結果が悪かった。これらの結果より、深絞り性が悪くなる原因としては、基材の組成、製造方法、顔料の影響により、結晶化度が高くなるためであることが示された。
【0057】
【表4】
【課題】 表面保護粘着シート又はテープが貼付された金属板などを打ち抜き、絞り加工等を行う際における、当該シートの浮きやシワの発生が防止可能な打ち抜き、絞り加工用表面保護粘着シート又はテープの提供。
【解決手段】 第一の無延伸フィルムと第二の無延伸フィルムとの積層体からなる支持層と、第二の無延伸フィルム側に配された粘着層と、を有する粘着シートであって、第二の無延伸フィルムを構成する樹脂がブロックポリプロピレンであり、第二の無延伸フィルムの結晶化度が30%以下であることを特徴とする、打ち抜き・絞り加工用表面保護粘着シート又はテープ。