(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記一方のクランプ部は、前記光ファイバを把持する前に、前記第1の付勢部材によって前記ヒータから離間して後退ストッパに当接し、前進方向にのみ可動範囲を確保した状態において、
前記一対のクランプ部で前記光ファイバを把持し、前記光ファイバへは前記引張力が付加されていない状態において、前記光ファイバを把持した直後、あるいは、前記ヒータの前記スリーブに対する押圧駆動開始時又は押圧駆動開始前後に、前記後退ストッパを退避させることにより、前記光ファイバに前記引張力を付加した状態で、前記一方のクランプ部の後退可動範囲に加えて前進可動範囲を確保した後、前記ヒータで前記スリーブを押圧することを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ接続部補強加熱装置。
前記一方のクランプ部は、前記光ファイバを把持する前に、前記第1の付勢部材によって前記ヒータから離間して後退ストッパに当接した状態から、前進ストッパに当接するまで前進移動させて保持された状態において、
前記一対のクランプ部で前記光ファイバを把持し、前記光ファイバへは前記引張力が付加されていない状態において、前記光ファイバを把持した直後、あるいは、前記ヒータの前記スリーブに対する押圧駆動開始時又は押圧駆動開始前後に、前記一方のクランプ部を前記前進ストッパに対する当接状態から開放し、さらに前記前進ストッパを退避させることにより、前記光ファイバに前記引張力を付加した状態で、前記一方のクランプ部の後退可動範囲に加えて前進可動範囲を確保した後、前記ヒータで前記スリーブを押圧することを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ接続部補強加熱装置。
前記一方のクランプ部は、前記光ファイバを把持する前に、前記第1の付勢部材によって前記ヒータから離間する後退方向の付勢力が付加された状態で、かつ、前記一方のクランプ部を前進方向に移動させるための弾性部材または磁力部材からなる第3の付勢部材によって、前記一方のクランプ部の可動範囲における端部から離れた位置で停止した状態において、
前記一対のクランプ部で前記光ファイバを把持し、前記光ファイバへは前記引張力が付加されていない状態において、前記光ファイバを把持した直後、あるいは、前記ヒータの前記スリーブに対する押圧駆動開始時又は押圧駆動開始前後に、第3の付勢部材による前記一方のクランプ部の前進方向の付勢力を弱めるか、あるいは、前記第1の付勢部材による後退方向の付勢力を強めるか、あるいは、前記第3の付勢部材を退避させることにより、前記一対のクランプ部が前記光ファイバに対して引張力を付加した状態で、前記一方のクランプ部の後退可動範囲に加えて前進可動範囲を確保した後、前記ヒータで前記スリーブを押圧することを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ接続部補強加熱装置。
前記スリーブを挟んで対向する前記ヒータの押圧面が略垂直方向に配置され、前記スリーブ中に挿通された抗張力体の重量を利用して常に前記抗張力体を略下方向に配置することで、前記スリーブの向きを一定化させることを特徴とする請求項1〜請求項9の何れか一項に記載の光ファイバ接続部補強加熱装置。
前記スリーブの加熱が終了した後、前記ヒータを直ちに前記スリーブから離間させて該スリーブへの熱伝導を遮断し、前記スリーブの周囲に外気を導入して該スリーブを急冷することを特徴とする請求項1〜請求項10の何れか一項に記載の光ファイバ接続部補強加熱装置。
【背景技術】
【0002】
光ファイバの融着接続を行う際には、一般に、下記のような作業手順で行われる。
(1)光ファイバケーブルから光ファイバ心線を取り出す。
(2)取り出された光ファイバ心線を覆う樹脂被覆(先端部)を光ファイバ被覆除去工具によって除去する。
(3)先端部の被覆が除去された光ファイバ心線のガラス(裸光ファイバ)表面に残る樹脂被覆屑をアルコールで湿らせた布や紙で除去する。
(4)清掃された光ファイバ心線を光ファイバ切断機によって切断する。
(5)切断された光ファイバ心線を光ファイバ融着接続機によって融着接続する。
(6)融着接続された光ファイバ心線に熱収縮性の補強スリーブを被せ、融着接続機の加熱器によって加熱補強する。
(7)加熱補強された光ファイバ心線を接続部収納ケースの収納トレイに収納する。
【0003】
上記(6)工程において、光ファイバの接続部の補強に用いられるスリーブは、外側が熱収縮チューブからなり、内側に配置されたホットメルトで光ファイバ周囲を成型することで接続点を保護するものである。外側の熱収縮チューブと内側のホットメルトからなるスリーブは、様々な光ファイバの被覆径に応じて加熱収縮が可能である。また、スリーブ長さ方向略中央から加熱収縮させることで、スリーブ内の空気を、スリーブ中央から外側へ押し出しながら成形される。このようなスリーブで補強された光ファイバの接続部は、光ファイバにとって有害な水分等、外部からの物質を遮断する役割も果たす。外側の熱収縮チューブと内側のホットメルトの間には、単心光ファイバの場合にはステンレス抗張力体が、多心テープの場合にはガラス抗張力体が、予めスリーブ内に挿通されていて、曲げや張力に耐える構造が実現される。また、従来から光ファイバ融着接続機に搭載されている光ファイバ接続部補強加熱装置を使用することで、概ね30秒前後で高速収縮させることが可能である。
【0004】
スリーブを加熱収縮するために、光ファイバ接続部補強加熱装置(以下、補強加熱装置と略称することがある)に備えられるヒータとしては、近年、金属板にポリイミドフィルムヒータが接着されてなるものが用いられるようになっており、例えば、1枚の平板型ヒータに、2つ以上の加熱回路パターンが埋め込まれてなるものが提案されている(例えば、特許文献1、2を参照)。このように、平板型のヒータに、複数の加熱回路パターンを埋め込むことが一般的となっている。また、平板型のヒータをU字型に加工して加熱する技術も提案されている(例えば、特許文献3を参照)。
【0005】
また、一般に、補強加熱装置には、スリーブの加熱収縮前に光ファイバに外部から張力がかかった際に、スリーブと光ファイバ接続部との位置がずれてしまうのを防止するためにクランプ部が設けられている。このようなクランプ部としては、張力付加機構を搭載しているものがあり、これにより、スリーブ中で光ファイバが弛むことを防止している。光ファイバが弛んだ状態でスリーブが収縮すると、スリーブ中の光ファイバに応力が残留し、光ファイバの長期信頼性を低下させてしまうおそれがあり、特にテープ心線を加熱補強する補強加熱装置においては、配列された裸光ファイバ同士の接触を防ぐためにもクランプ部は重要で必須の構成である。ファイバに張力を与えないと、隣接する光ファイバ同士が接触した状態で収縮し、双方の光ファイバに傷を付け合うため、光ファイバの長期信頼性を低下させてしまう。
【0006】
上記の問題を解決するため、多心テープファイバ用の補強加熱装置においては、光ファイバの長さ方向でヒータの両側にクランプ部が配置され、これらの内の片側のクランプ部が光ファイバの長さ方向でスライド移動可能とされ、圧縮コイルばねを備えた構成のものが提案されている(例えば、特許文献4を参照)。特許文献4では、以下に示す手順で、クランプ部を用いて光ファイバに引張力を印加する構成とされている。
まず、一つ目の方法として、左右のクランプ部が開いた状態で光ファイバをセットし、可動とされた左側のクランプ部のみを閉じ、次いで、光ファイバを右方向に引っ張ることで、圧縮コイルばねを縮めた状態で右側のクランプ部を閉じる。この際、可動の左側クランプ部が可動範囲の右端に突き当たった位置において、圧縮コイルばねの収縮量は、光ファイバに最適な引張力を発生させるよう設計され、光ファイバには、圧縮コイルばねの最適張力が常に印加されるようになる。
また、二つ目の方法として、左右のクランプ部が開いた状態で可動側のクランプ部の左側面を指で右方向に押し付け、この左側クランプ部が右方向へ突き当たった位置において、圧縮コイルばねの収縮量は、光ファイバに最適な引張力を発生させるよう設計されている。その後、指で押し付けた状態で光ファイバをクランプ部にセットし、可動の左側クランプ部と固定の右側クランプ部を閉じる。そして、可動の左側クランプ部から指を離せば、光ファイバには、圧縮コイルばねの最適な引張力が常に印加されるようになる。
【0007】
しかしながら、上述したような特許文献4に記載の方法では、光ファイバを弛みなく指で引っ張ってクランプ部にセットし、左右のクランプ部を閉じた後の状態では、可動の左側クランプ部にはヒータ側へさらに移動するための前進可動範囲は殆ど残されておらず、後退可動範囲のみが確保されている状態となる。このような状態で、光ファイバに過大な側圧をかけた場合には、光ファイバの長期信頼性を著しく損なう残留引張力が光ファイバに付加されてしまうか、あるいは、直ちに光ファイバが断線するという問題がある。
【0008】
また、上記のような圧縮コイルばねに代えて、磁力を利用して引張力を光ファイバに付加することも提案されている(例えば、特許文献5を参照)。特許文献5の
図1等においては、右側のクランプ部が可動とされ、左側のクランプ部が固定とされている。可動側のクランプ部は、通常は引張コイルばねによって、ヒータ側へ押し付けられている。そして、光ファイバが把持(クランプ)され、ヒータの蓋部が閉まると、磁石間に反発力が発生して光ファイバに引張力を与える。これにより、上述した特許文献4に記載の2つの方法のような煩雑な手順が不要となり、クランプ部や蓋部を閉めるだけで、光ファイバに対して自動的に引張力を発生させるものである。
【0009】
しかしながら、特許文献5に記載の技術では、やはり、光ファイバを弛みなく指で引っ張ってクランプ部にセットし、左右のクランプ部を閉じた後の状態では、可動側のクランプ部には、ヒータ側へさらに移動するための可動域は殆ど残っておらず、後退可動範囲のみが確保された状態となる。このような状態で光ファイバに過大な側圧をかけた場合には、光ファイバの長期信頼性を著しく損なう残留引張力が光ファイバに付加されてしまうか、あるいは、直ちに光ファイバが断線するという問題がある。
【0010】
なお、一般に、単心の光ファイバ用の補強加熱装置では、引張力の付加機構を備える装置は殆ど無い。これは、単心の光ファイバの場合には、隣接する光ファイバ同士が接触することが無いことから、装置コスト削減のために搭載されない場合が多い。すなわち、これらの光ファイバの引張の付加機構は、主として多心の光ファイバ用の補強加熱装置に搭載されている。
【0011】
ここで、光ファイバに引張力を付加した状態でスリーブを収縮させた場合、光ファイバに残留張力が残る。表面に傷などが無い通常の光ファイバの場合、100gf以下の残留張力では長期信頼性が下がることはなく、従来においても、光ファイバの残留張力を100gf以下とすることが推奨されている(例えば、特許文献6を参照)。但し、融着接続した光ファイバには、その作業などによる傷が付いている場合もあるため、例えば、光ファイバ融着後の破断確認試験の張力が200gfの場合において、略30gf以下であることが推奨される。
【0012】
一般に、光ファイバを接続する場合、融着接続時間は10秒以内であるが、加熱収縮には25秒以上の時間を要する。例えば、補強加熱装置への光ファイバのセット時間や取り出し時間を含めて40秒が必要と仮定する。一般に、1本の光ファイバケーブルには数十本の光ファイバが入っているため、例えば、96本の光ファイバを接続する場合には、96本×40秒=3840秒≒1時間となり、1本のケーブルを接続するためには、スリーブの加熱補強作業だけで1時間を要することからも、加熱収縮時間の短縮は重要である。
【0013】
一般に、光ファイバの接続部の補強加熱装置では、ヒータをスリーブに押圧してスリーブを変形させることで、ヒータとスリーブの接触面積を広げ、熱が伝達しやすい状態で加熱することで、加熱時間を短縮することが可能である。これまでに、ヒータとスリーブとを積極的に接触させることで、加熱時間の短縮を図る技術が多数提案されている。
【0014】
ここで、上記の特許文献6では、圧縮コイルばねを用いてヒータをスリーブに押し当てて、常に接触を得る方法が記載されている。特許文献6では、ヒータで押圧することで光ファイバに張力を印加した際に、圧縮コイルばねによって張力を緩和する機構が備えられている。また、光ファイバには、左側のスライドクランプ部と圧縮コイルばねによって、通常の加熱装置と同様に弛み防止の張力が付加される構成とされている。しかしながら、特許文献6では、左側のスライドクランプ部には、先に説明した後退可動範囲は確保されているものの、前進可動範囲が無い。光ファイバの許容残留張力を10〜100gfとした場合、ヒータによる押圧力の合計は10〜100gf以下である必要がある。例えば光ファイバ融着後の破断確認試験の張力が200gfの場合においては、許容引張力は略30gf以下であり、ヒータによる押圧力は30gf以下である必要がある。後述する通り、30gfではスリーブを十分に変形させることではできないという問題がある。仮に、ヒータに数百gfの押圧力を側面から付加した場合、30gfの引張力を付加する圧縮コイルばねは瞬時に縮みきり、光ファイバに数百gfの強力な張力が付加され、補強後の光ファイバの長期信頼性が損なわれてしまうという問題がある。このため、特許文献6においては、ヒータの押圧力を、光ファイバの許容残留張力よりも大きくすることは不可能である。
【0015】
ここで、スリーブ内の硬心を磁石で密着させることで、常にヒータとスリーブとの接触を得る方法が提案されている(例えば、特許文献7を参照)。しかしながら、特許文献7に記載の方法では、スリーブ内部の硬心とヒータが磁石あるいは磁力で引き合うものの、スリーブ全体を潰して変形させるような押圧力はスリーブの構造上付加できないという問題がある。このため、ヒータとスリーブとの接触は保てるものの、接触面積を増加させる効果は殆ど無い。また硬心がガラスの場合は機能しない。さらに、永久磁石を使用する場合には、この磁石がヒータの傍に配置されるため、高温に起因する磁力劣化が問題となる。
【0016】
また、光ファイバ接続部の補強加熱装置として、ヒータをモータなどで駆動する手段と、ヒータが所定位置、すなわちスリーブが収縮した位置に前進したことを検知する手段とを備え、ヒータがスリーブ位置まで前進し、ヒータが所定位置に到達したら後退する構成とされたものが提案されている(例えば、特許文献8を参照)。特許文献8によれば、2枚のヒータでスリーブを押圧し、スリーブとヒータとの接触面積を広げて、スリーブの加熱収縮を高速化できる。すなわち、ヒータからの熱伝導効率が高く、スリーブの熱収縮時間を短縮することが可能となる。この方式であれば、スリーブを十分に変形させることが可能である。
【0017】
スリーブをどの程度の押圧力で変形させれば熱収縮時間が最短になるか、本発明者が鋭意検討したところ、スリーブを加熱収縮させる際、ヒータによるスリーブへの押圧力を略500gfとする必要があることが明らかとなっている。
図30のグラフに示すように、ヒータによるスリーブの押圧力が高いほど、ヒータとスリーブとの接触面積が増加しスリーブの収縮時間は短くなる。
図30は、一般的な単心用60mmスリーブを2枚のヒータで挟み、両側2枚のヒータの温度を230℃として加熱した場合のグラフであり、一方のヒータは固定とし、他方のヒータは可動とした場合である。このグラフからは、押圧力が500gfを超えると、押圧の効果は減少し、スリーブの収縮時間はあまり短縮しないことがわかる。なお、上記の押圧力略500gfという変化点は、スリーブの構造によって変化するものであり、押圧力が略500gfを超えると収縮時間の変化が小さくなるのは、あくまで一般的な単心用60mmスリーブの場合である。
【0018】
しかしながら、特許文献8に記載の技術では、以下に説明するような問題がある。まず第1の問題となるのが、ヒータの移動制御によるスリーブの押圧である。ヒータはマイクロメータを介したモータによって前進されるが、この前進量と前進速度は、スリーブの収縮状況に応じて制御される必要がある。しかしながら、スリーブには様様な種類があり、例えば、直径や材質の違いによって前進量と前進速度は異なる。また、スリーブの収縮速度は、外気温や内蔵バッテリの電圧によっても変化する。さらに、スリーブは、一般的に、その長手方向において、中央部と外縁部では収縮速度が異なる。このため、もし、ヒータが過剰に前進した場合には、過大な押圧が内部の光ファイバに達して光ファイバを損傷させてしまう。あるいは、ヒータの前進が遅ければ、ヒータとスリーブの間に隙間ができて、スリーブが短時間で収縮しないという問題も発生する。
【0019】
ヒータを一定の押圧力とするためには、弾性部材を用いてヒータをスリーブに押し付けることが必要となるが、特許文献8においては、弾性部材とカムを用いてヒータをスリーブに押し付けることが記載されている。すなわち、特許文献8では、左右に配置したヒータの間にカムを配置し、それぞれのヒータをばねなどの弾性部材で押圧し、モータによってカムを回転させることで、ヒータを熱収縮スリーブに押圧する構成も記載されている。
【0020】
以下に、
図32(a)〜(c)を参照しながら、上述のような、2枚のヒータをばねで押圧しながら、その間に挿入したカムでヒータを駆動する方式について説明する。
図32(a)は、スリーブ312を、2つのヒータ321、322間にセットした直後であって加熱開始前の状態である。図中において、スリーブ312内にある光ファイバ311は、一点鎖線で示される中心線Sの上に位置している。また、この光ファイバ311の位置は、ヒータ321、322の手前と奥側に配置される、図示略のクランプ部によって把持固定されている。
【0021】
そして、
図32(b)に示すように、カム323を回転させて2つのヒータ321、322を圧縮コイルばね324、325の力でスリーブ312に押し付け、ヒータ321、322で加熱を開始する。図中において、カム323とヒータ可動台321A、322Aとは接触せず、圧縮コイルばね324、325の力でスリーブ312に押圧されている。
この際、光ファイバ311の位置が、一点鎖線で示される中心線Sの上に位置していれば、光ファイバ311に過大な張力が付加されることはない。
そして、このままスリーブ312が収縮してゆき、完全に収縮した後、加熱補強が終了するが、この際、上記のように、光ファイバ311の位置が中心線Sからずれることがなければ、光ファイバ311に過大な張力がかかることはない。
【0022】
しかしながら、実際には、図中左右に配置された圧縮コイルばね324、325の押圧力が同じで、かつ、スリーブ312が中心線Sにとどまるということはなく、長期にわたって、2つの圧縮コイルばね324、325が常に同じ位置で均衡を続けることは難しい。例えば、
図32(c)に示すように、圧縮コイルばね324、325の力の差により、何れか一方の側に寄った状態となるのが通常である。
図32(c)においては、図中左側に配置されたヒータ可動台321Aが、左側の筐体に突き当たって停止した状態となっている。このため、
図32(c)では、光ファイバ311の位置が中心線Sよりもずれているが、光ファイバ311は図示略のクランプ部によって固定されていることから、上述のようなズレが僅かでも発生すると、圧縮コイルばね324、325の過大な張力が光ファイバ311に付加されることになる。
【0023】
特許文献8に記載の技術で第2の問題となるのが、光ファイバに付加される過大な押圧力である。スリーブを押圧する略500gfという力は、上述した融着接続後の光ファイバに対して付加することが可能な略30gfの張力よりも非常に大きく、破断確認試験の張力200gfの2倍以上の力であることから、押圧力が付加された瞬間に光ファイバが破断するおそれがある。仮に破断しなかったとしても、補強後の光ファイバの長期信頼性は損なわれている。
【0024】
特許文献8に記載の技術で第3の問題となるのが、光ファイバに張力を付加する機構が必要ということである。
上述のようなスリーブ312を両側から押圧する方法では、ヒータ321、322によって押圧する前に、引張力を付加した光ファイバ311によってスリーブ312が懸吊された状態としておく必要がある。しかしながら、
図33(a)、(b)に示すように、光ファイバ311に引張力を付加しない状態でクランプ部326、327による把持(クランプ)を行った場合には、クランプ直後に光ファイバ311に弛みが生じ、スリーブ312が下方の位置にずれてしまう。このような場合、
図33(a)、(b)に示すように、スリーブ312がヒータ321、322の適切な位置で押圧されず、収縮未完了の状態で作業が終了となるおそれがある。
この場合、スリーブ312が下方の位置にずれてしまう場合を考慮し、ヒータ321、322を上下方向に長く構成するという対策も考えられるが、ヒータ321、322が大型化することで熱容量が増加し、昇温スピードが遅くなるという問題がある。
【0025】
上述したような光ファイバの弛みを除去する方法としては、例えば、ばねなどの弾性部材あるいは磁石などの磁力部材により、光ファイバを把持したクランプ部に一定の張力を付加することが求められる。すなわち、上述した特許文献4の説明で記載した2つの方法や、特許文献5に記載の磁力を用いた方法、特許文献6の方法で、光ファイバに引張力を付加する必要がある。
【0026】
特許文献8に記載の技術で第4の問題となるのが、装置の大きさである。ヒータの駆動方式として、マイクロメータやネジ機構を用いれば、500gfを超える押圧力を発揮することが可能である。しかしながら、光ファイバを接続する融着接続機は、電柱の上や狭いマンホールの中などの狭い空間で使用されるため、また、短い余長の光ファイバであっても接続する必要があるため、装置の小型化が要求されている。このため、融着接続機の中に、モータ2個とマイクロメータ2個あるいはネジ機構2個を搭載した場合には、装置が大型化し、作業環境に適さないか、あるいは、短余長光ファイバを接続できないという問題が生じる。この結果、上記押圧力が得られる駆動機構を搭載した融着接続機は実用化されていない。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、本発明に係る光ファイバ接続部補強加熱装置の好適な実施形態を挙げ、各構成について図面を参照しながら詳述する。
【0047】
<光ファイバの融着接続機>
図1に、本発明に係る光ファイバ接続部補強加熱装置1を備える融着接続機の一例を示す。
図1に示す融着接続機Aは、光ファイバの融着接続を行う融着接続部110と、融着接続後の光ファイバに被覆させた補強用のスリーブを加熱収縮させるための光ファイバ接続部補強加熱装置(補強加熱装置)1(
図2も参照)とを備える。また、この融着接続機Aは、上記の補強加熱装置1および融着接続部110に加え、作業者向けに種々の情報等を表示する表示器120、条件設定等に用いる操作部130などを備える。さらに、図示例の融着接続機Aは、略立方体状の本体部101に、補強加熱装置1や融着接続部110に加え、これらを総合的に駆動するための手段や制御部等の内蔵装置(図示せず)が配されている。また、本体部101の下部に複数(図示例では4箇所)の脚部102(一部、図示略)を有する。表示器120には、液晶、有機EL、電光式等、各種の表示方式を採用可能である。
【0048】
また、融着接続機Aは、本体部101の前側に可動式のパネル部103を備え、パネル部103上に表示器120や操作部130が配されている。このパネル部103は、本体部101の上部に設けられた水平方向の回動軸101aを介して本体部101に連結されており、詳細な図示を省略するが、パネル部103を移動して所定の角度範囲内で任意の向きに表示器120を向けることが可能である。作業者は、表示器120が見やすい向きにパネル部103を移動させることができる。
【0049】
図1の斜視図および
図3の側面図に示す例では、補強加熱装置1は、融着接続機Aにおいて後ろ側の位置に配置され、融着接続部110が補強加熱装置1よりも前側に配置されている。ここで、本実施形態で説明する前後左右とは、上記の補強加熱装置1を備える融着接続機Aを作業者が使用するにあたり、該作業者が対面する側(
図3中における左側)を前側とし、作業者から見て融着接続機Aの後ろ側(
図3中における右側)を後ろ側とし、作業者の左右を左右とする。
【0050】
<光ファイバの接続部補強用のスリーブ>
図5(a)、(b)に示すように、本発明に係る補強加熱装置1において加熱収縮され、光ファイバの接続部を補強するスリーブ12は、光ファイバ11の心線同士を融着接続した接続部11Aの位置において、抗張力体13A、13Bと光ファイバ11(接続部11A)を被覆するように設けられる。このようなスリーブ12は、一般に、光ファイバ補強部材、熱収縮チューブ、熱収縮スリーブ、補強スリーブなど、様々な名称で呼ばれているが、いずれも共通の機能を有したものである。なお、
図5(a)、(b)においては、便宜上、いずれのスリーブにも同じ符号を付与している。
【0051】
図5(a)に示す例のように、スリーブ12は、単心の光ファイバの接続部に用いる場合には、熱収縮チューブからなる外側チューブ12aの中に、円筒形のホットメルトチューブからなって光ファイバ11の接続部11Aを被覆した状態の内側チューブ12bと、SUSなどの円柱状硬心からなる抗張力体13Aとが配置された状態とされる。
また、
図5(b)に示すように、スリーブ12を、多心の光ファイバ(多心テープ)の接続部に用いる場合には、熱収縮チューブからなる外側チューブ12aの中に、光ファイバ11の接続部11Aを被覆した状態の楕円筒形のホットメルトチューブからなる内側チューブ12bと、ガラスなどの半円柱状硬心からなる抗張力体13Bとが配置された状態とされる。
【0052】
ここで、
図5(b)に示すように、多心の光ファイバの接続部の補強において、スリーブ12の中に挿通させる抗張力体13Bとしてガラス硬心が用いられる理由としては、以下のような理由が挙げられる。一般に、融着接続機においては、光ファイバの接続後に該光ファイバの引張試験を行い、信頼性(例えば、ガラスの傷の有無)を確認している。単心の光ファイバでは、この引張試験によって信頼性が確認されるので、伸び縮みが大きく、かつ、安価なSUSを抗張力体に用いた場合であっても問題無いと判断することができる。しかしながら、多心テープの光ファイバでは、これら多心の光ファイバの中で最も短い1本にしか張力が付加されないため、信頼性が確保されたと見なすことはできない。このため、多心の光ファイバの接続部の補強においては、多少高価であるものの、抗張力体として伸縮が光ファイバと同様に小さなガラス材料を使用する。
【0053】
なお、以下においては、説明を分かりやすくするため、外側チューブと内側チューブとを区別せず、単にスリーブ12と呼んで説明し、また、図示においても同様とする。
【0054】
<光ファイバ接続部補強加熱装置>[第1の実施形態]
以下、本発明の第1の実施形態の光ファイバ接続部補強加熱装置について、主に
図5〜
図17の模式図を用いて詳しく説明する。なお、
図5〜
図17の模式図において示されていない構成については、本発明に係る第2の実施形態で説明する
図4の破断図などを用いて説明する。また、本実施形態では、詳細を後述する第2の実施形態の補強加熱装置と共通の構成については、適宜、
図4などを参照しながら説明し、また、各実施形態において構成の配置位置などが異なっている場合であっても、機能が同じものについては同一の符号を付して説明することがある。
また、以下の説明で参照する各図面は、補強加熱装置を模式的に説明するものであることから、図中における左右方向あるいは上下方向の位置関係が、それぞれの図面間で異なる場合がある。
【0055】
本実施形態の補強加熱装置1は、
図6などに示すように(一部、
図4も参照)、被覆部が除去された光ファイバ11同士が融着接続され、かつ、該融着させた接続部11Aの被覆除去部分および被覆部がスリーブ12で覆われた光ファイバ11の、スリーブ12から露出した被覆部の一方および他方を把持する左右一対のクランプ部2(2A、2B)と、光ファイバ11またはスリーブ12を挟んで対向配置された2つのヒータ3(3A、3B)と、クランプ部2の少なくとも一方、図示例ではクランプ部2Aを、光ファイバ11に対して弾性部材あるいは磁力部材によって引張力を付加するように付勢する第1の付勢部材41と、スリーブ12を挟んで対向配置された一対のヒータ3A、3Bの少なくとも1以上に、駆動源であるモータ6による制御に従って、スリーブ12を挟んで弾性部材あるいは磁力部材によって押圧力を付加する第2の付勢部材42と、を備えている。
また、補強加熱装置1は、第2の付勢部材42によるスリーブ12への押圧力が、第1の付勢部材41による光ファイバへ11の引張力よりも大きく設定され、第1の付勢部材41によって光ファイバ11に引張力を加えた状態において、引張力を付加する一方のクランプ部2Aが、光ファイバ11の長さ方向においてヒータ3から離間する方向の後退可動範囲Kが確保されているとともに、ヒータ3側に移動できる前進可動範囲Zが確保されている。
そして、補強加熱装置1においては、第2の付勢部材42によってヒータ3でスリーブ12を押圧することで付加される光ファイバ11への引張力を減殺する方向へクランプ部2Aが移動するように構成されている。
【0056】
さらに、補強加熱装置1には、この補強加熱装置に光ファイバ11をセットする際に装置内部の開閉を行う蓋部10が備えられている。
また、上記各構成は、筐体5に取り付けられるか、あるいは筐体5の内部に収容されている。
なお、スリーブ12は、光ファイバ11の被覆除去部分および被覆部を覆っていてもよいし、被覆除去部分のみを覆っていてもよい。
【0057】
クランプ部2(2A、2B)は、
図6などに示すように、光ファイバ11の一方を把持するクランプ部2Aと、光ファイバ11の他方を把持するクランプ部2Bとからなる、左右一対のクランプ部である。クランプ部2は、例えば、ねじりコイルばねやダブルトーションばねなどの付勢部材(例えば
図34の付勢部材2a)により、光ファイバ11を挟み込んで把持(クランプ)できる構成とされ、図示例のように、光ファイバ11の長さ方向でヒータ3の両側に配置される。
また、
図6などに示すように、クランプ部2は、左右一対で配置された一方のクランプ部2Aのうちの一方が開閉可動に構成されており、他方のクランプ部2Bについても同様に構成されている。
また、クランプ部2は、一方のクランプ部2Aが、光ファイバ11の長さ方向でスライド移動可能とされ、
図6などに示す例では、永久磁石からなる第1の付勢部材41により、光ファイバ11に引張力を付加できる構成とされている。
【0058】
クランプ部2は、加熱収縮前に光ファイバ11に張力が付加された場合に、スリーブ12の位置と、光ファイバ11の接続部11Aの位置とがずれてしまうのを防止するために設けられ、通常、ヒータ3の両側の2箇所に配置される。
【0059】
また、左右一対のクランプ部2A、2Bの各々には、
図6などにおいては図示を省略するが、その表面に、光ファイバ11を直接把持するための把持用ゴムが設けられている。
(
図29参照)。
【0060】
ヒータ3(3A、3B)は、スリーブ12を押圧して加熱収縮させるものであり、一般に、加熱ヒータや発熱部、発熱源、発熱体、熱源、加熱部、加熱源、加熱体などの各名称で呼ばれる。
ヒータ3は、光ファイバ11またはスリーブ12を挟んで対向するように、2つのヒータ3A、3Bとして配置され、一方のヒータ3Aが開閉可動とされるとともに、他方のヒータ3Bが固定とされることで、スリーブ12を挟み込んで押圧できる構成とされている。また、開閉可動とされた一方のヒータ3Aは、
図4中に示すようなダブルトーションばねからなる第2の付勢部材42により、スリーブ12を挟んで押圧する方向に付勢する構成とされている。また、
図6などに示す例のように、2つのヒータ3A、3Bは、それぞれ、ヒータ取付台31A、31Bの表面に取り付けられている。
【0061】
ヒータ3は、詳細な図示を省略するが、一般的に複数のヒータ回路パターンを有するものを用いることが好ましい。また、ヒータ3は、例えば、金属板にセラミックヒータを接着したものの他、金属板にポリイミドフィルムヒータが接着されてなるものが、全面の折曲げ加工が可能であることから好適に用いられる。この場合、例えば、平板状の金属板に、ポリイミドフィルムヒータの回路パターンを2または3以上で埋め込んだ構成とすることができる。
【0062】
本実施形態では、一方のヒータ3Aのみを駆動してスリーブ12を挟む構成とされているが、これには限定されず、例えば、2つのヒータの両方を駆動することで、さらに強力な押圧力を発生させることもできる。しかしながら、2つのヒータの両方を駆動した場合には、機構的に複雑となってコストアップとなるおそれもあるので、決して好ましいわけではない。また、本実施形態のような、一方のヒータ3Aのみを駆動する構成であってもスリーブ12に対して十分な押圧力が得られ、さらに、以下のようなメリットもあることから、このような構成を採用することが好ましい。
【0063】
まず、一方のヒータ3Aのみを開閉可動とした場合には、他方のヒータ3B用の駆動機構が不要となることから、この位置において、詳細を後述するヒータ取付台や、スリーブ12を付勢するためのダブルトーションばねなどの弾性部材が不要となるので、部品点数の削減・コストダウンが可能となる。
また、ヒータ3でスリーブ12を押圧した際の、光ファイバ11の中心線Sからの移動量を低減することができる。これは、他方のヒータ3Bが固定であり、両側のヒータを開閉可動とした場合に較べて、弾性部材の付勢力を均衡させる必要が無く、特に、スリーブ12を固定側である他方のヒータ3Bに寄せてセットすれば、光ファイバ11の移動量を最小限に抑制することが可能になるためである。
【0064】
より詳しくは、
図6中に示すような光ファイバ11及びスリーブ12を、例えば、スリーブ12が固定側のヒータ3Bに触れる程度に寄せ、この状態で光ファイバ11をクランプ部3で把持すれば、ヒータ3による押圧時の光ファイバ11の移動量を最小限に抑制できる。
この際、スリーブ12の熱収縮が始まると、光ファイバ11およびスリーブ12の位置は徐々に固定側のヒータ3B側へ移動する。そして、スリーブ12が完全に熱収縮すると、光ファイバ11の位置は中心線Sよりも他方のヒータ3B側にずれることは回避できない。しかしながら、この場合の光ファイバ11の移動量は、概ね、スリーブ12の直径が熱収縮で減少した分の、約半分程度である。
【0065】
また、本実施形態では、
図4に例示する補強加熱装置の場合と同様、上記の一対のヒータ3および左右一対のクランプ部2を、同一の駆動源であるモータ6により、同一(同軸)のカムシャフト7を用いて、一方のヒータ3Aの駆動による開閉と、一方のクランプ部2Aの駆動による開閉を行うことができる。このような構成とした場合には、左右一対のクランプ3の開閉による光ファイバ11の把持および取り外しや、光ファイバ11に付加する引張力の制御、一対のヒータ3の押圧によるスリーブ12の加熱収縮といった一連の制御が容易になるという効果が得られる。
【0066】
また、本実施形態では、
図6〜
図11に示すように、カムシャフト7に備えられる第1のカム機構71によって左右一対のクランプ部2A、2Bの開閉動作の駆動制御を行うとともに、第3のカム機構73によって開閉可動とされた一方のヒータ3Aの駆動制御を行う。さらに、本実施形態では、カムシャフト7に備えられた第2のカム機構72が、光ファイバ11の長さ方向でスライド移動可能とされた一方のクランプ部2Aの、後退方向への移動を規制する後退ストッパとして機能する構成とされている。
本発明において、カム機構は、単に「カム」または「カム部材」ということもできる。
【0067】
また、上述したように、一方のクランプ部2Aは、例えば、ばねやゴム、スポンジなどの弾性部材、あるいは、永久磁石や電磁石などの磁力部材からなる第1の付勢部材41により、光ファイバ11の長さ方向で後退方向に付勢されており、光ファイバ11に引張力を付加できる構成とされている。これにより、本実施形態では、光ファイバ11の弛みを除去する後退可動範囲Kを有するとともに、一方のヒータ3Aに押圧されることで光ファイバ11に過大な張力が付加された場合でも、その張力を吸収できる前進可動範囲Zを有する。
【0068】
また、補強加熱装置1においては、上記のモータ6や各カム機構から直接伝わる駆動力により、左右一対のクランプ部2A、2Bや一方のヒータ3Aが把持開閉動作や押圧動作を行うのではなく、例えば、ばねやゴム、スポンジなどの弾性部材、あるいは、永久磁石や電磁石などの磁力部材からなる各付勢部材により、光ファイバ11やスリーブ12を押圧する。
なお、
図4に示す例においては、一方のヒータ3Aを付勢する第2の付勢部材42としてダブルトーションばねを用いており、また、
図29に示す例においては、左右一対のクランプ部2A、2Bの開閉可動側を付勢する第5の付勢部材45としてねじりコイルばねを用いている。
【0069】
(補強加熱装置の動作の一例)
上述したように、本実施形態で説明する補強加熱装置1は、一方のヒータ3Aを付勢する第2の付勢部材42の付勢力が、この第2の付勢部材42およびヒータ3Aによってスリーブ12を押圧した時に、第1の付勢部材41によって引張された光ファイバ11の中心軸線S(
図12等参照)から、該光ファイバ11を変位させるような、大きな押圧力に設定されている。また、第1の付勢部材41によって光ファイバ11に引張力を加えた状態において、引張力を付加する一方のクランプ部2Aが、光ファイバ11の長さ方向においてヒータ3から離間する方向の後退可動範囲Kが確保されているとともに、ヒータ3側に移動できる前進可動範囲Zが確保されている。そして、第2の付勢部材42によってヒータ3でスリーブ12を押圧することで付加される光ファイバ11への引張力を減殺する方向へクランプ部2Aが移動するように構成されている。
【0070】
上述のような構成の補強加熱装置1を用いて、光ファイバ11の接続部11Aを被覆した状態のスリーブ12を加熱収縮させる場合の手順、および、引張力を減殺・解放できる作用について、主に、
図4、および、
図6〜
図11を参照して以下に説明する。
図6〜
図11は、補強加熱装置1を上方から見た状態を示す模式図である。なお、
図6〜
図11においては、説明を分かりやすくするために、
図4に示す破断図に対して、一部の構成を省略して記載しており、以下の説明においても同様とする。
【0071】
図6に示すように、スリーブ12の中に光ファイバ11が挿通され、光ファイバ11の下側(図中において奥行き方向)にカムシャフト7が配置されている。
図6中の略中央には、スリーブ12を押圧するための2つのヒータ3A、3Bが配置されており、後ろ側(
図6中の上側)が開閉可動側のヒータ3Aとして駆動され、前側(
図6中の下側)が固定側のヒータ3Bである。
【0072】
左右一対のクランプ部2A、2Bは、後ろ側(
図6中の上側)が開閉可動側のクランプ部として駆動され、前側(
図6中の下側)が固定側のクランプ部である。一方のクランプ部2Aは、例えばベアリングなどからなるスライド機構21により、光ファイバ11の長さ方向でのスライド移動が可能とされている。図示例においては、クランプ部2Aの手前側のクランプ部にスライド機構21が設けられており、これら前後の側が連動しながらスライド移動が可能に構成されている。
【0073】
なお、図示例においては、一方のクランプ部2Aに設けられるスライド機構21の近傍に、合計4つの磁石(磁力部材)が配置されることで、第1の付勢部材41が設けられており、図中の左方向、すなわち、光ファイバ11に引張力を付加できる後退方向に、クランプ部2Aは引っ張られた状態とされている。この引張力は、上述したように、数十gf程度の弱い力である。一方、左右一対のクランプ部2A、2Bの開閉可動側と、一方のヒータ3Aは、それぞれ、第5の付勢部材45(
図29参照)と第2の付勢部材42によって数百gf程度の強い力が付加されているが、
図6においては、カムシャフト7に備えられる第1のカム機構71と第3のカム機構73により、それぞれ、押し開けられた状態とされている。また、第1のカム機構71や第3のカム機構73などの、それぞれのカム機構の形状は異なっている。
【0074】
次に、
図7に示すように、カムシャフト7の回転が開始されると、まず、左右一対のクランプ部2A、2Bの開閉可動側のクランプ部が閉じ、第1のカム機構71と左右一対のクランプ部2A、2Bとが非接触の状態となる。このように、第1のカム機構71と、左右一対のクランプ部2A、2Bの開閉可動側とが非接触の状態となることで、左右一対のクランプ部2A、2Bは、第5の付勢部材45によって数百gf程度の押圧で光ファイバ11を把持する。
【0075】
次に、
図8に示すように、カムシャフト7がさらに回転すると、一方のクランプ部2A寄りに配置された第2のカム機構72が、一方のクランプ部2Aの固定側および開閉可動側のいずれとも非接触の状態となり、一方のクランプ部2A全体が後退方向(図中の左側)へ移動可能となることで、第1の付勢部材41による引張力が光ファイバ11に付加される。この際、光ファイバ11の弛み、すなわちスリーブ12の位置の鉛直方向への下降については、一方のクランプ部2Aが後退方向にスライド移動することで除去できる。
【0076】
ここで、一方のクランプ部2Aには、前進可動範囲Zに加えて後退可動範囲Kが発生して確保される。これにより、一方のクランプ部2Aは光ファイバ11の長さ方向において前後に移動可能な状態になる。従って、光ファイバ11に弛みが無い状態で引張力を一定に制御することが可能となる。
【0077】
次に、
図9に示すように、カムシャフト7がさらに回転すると、第3のカム機構73とヒータ取付台31Aとの間が非接触となり、ヒータ取付台31A、31Bの表面に配置された2つのヒータ3A、3Bによってスリーブ12が挟まれ、第2の付勢部材42によって数百gfの押圧力で押し付けられた状態となる。この状態で、カムシャフト7は回転を停止する。
【0078】
このような状態において、2つのヒータ3A、3Bによってスリーブ12の加熱収縮動作が始まる。やがて、
図10に示すように、スリーブ12の収縮が完了する。この際、スリーブ12が収縮するのとともに、スリーブ12と光ファイバ11は、他方のヒータ3B側の方向に数百gfの力で押し付けられながら移動するが、一方のクランプ部2Aが前進方向(図中の右方向)へスライド移動することで、光ファイバ11に付加される引張力を数十gf程度で一定に保つことが可能となる。
【0079】
図10に示すような押圧状態でスリーブ12を加熱する時間は、スリーブ12の種類毎に異なる。このため、作業者は、予め、図示略の加熱制御装置にスリーブの種類を指定しておく。加熱制御装置は、指定されているスリーブ種類情報に基づき、外気温やバッテリ電圧による加熱時間の延長/短縮の制御を行うことで、最適な温度(通常は200〜240℃)および加熱時間でスリーブ12の収縮を行う。これは、加熱制御の典型的な一例である。2つのヒータ3による加熱を最適時間で行った後、ヒータ3は加熱を停止する。
【0080】
そして、
図11に示すように、カムシャフト7がさらに回転することで、左右一対のクランプ部2A、2Bの開閉可動側が第1のカム機構71によって開かれ、光ファイバ11が把持状態から解放される。また、第3のカム機構73により、一方のヒータ3Aが取り付けられたヒータ取付台31Aが押し開かれることで、スリーブ12が2つのヒータ3A、3Bから離間し、押圧から解放された状態となる。
【0081】
なお、補強加熱装置によるスリーブの加熱時間を短縮するためには、冷却時間を短縮することも重要である。スリーブ12とヒータ3が離間されることにより、ヒータ3の余熱のスリーブ12への熱伝導が遮断され、さらに補強加熱装置1の内部に冷たい冷気が流れ込むことで、加熱されて高温になったスリーブ12を急速に冷却することが可能である。
さらに、小型のファン等を備えた構成を採用することで、外部から冷気を効率的に導入することで、冷却時間のさらなる短縮も可能である。
【0082】
本実施形態では、上述のように、スライド可動側である一方のクランプ部2Aの後退可動範囲Kを確保することにより、光ファイバ11が弛んでセット(把持)された場合であっても、光ファイバ11に引張力を付加して弛みを無くすことができる。これにより、例えば、スリーブ12が鉛直下方にずれたりすることなく、スリーブ12をヒータ3Aの略中央付近で挟んで効率良く加熱することが可能となる。
また、一方のクランプ部2Aの前進可動範囲Zを確保することにより、光ファイバ11がヒータ3から大きな押圧を受けたとしても、一方のクランプ部2Aが前進方向に移動するので、過大な引張力を付加することなく、光ファイバ11を保護することが可能となる。
【0083】
なお、本発明は上記の例に限定されるものではない。
例えば、2つのヒータ3A、3Bとしては、セラミックヒータからなる複数のヒータ回路が埋め込まれたものでもよいし、あるいは、フィルムヒータでもよく、さらに、それらのヒータ回路が貼り付けられた金属の熱伝導板を用いた構成であっても良い。
また、2つのヒータ3A、3Bの両方に複数のヒータ回路が設けられた構成であってもよいし、あるいは、片側のみに設けられた構成であってもよい。
また、本実施形態では、一方のヒータ3Aのみが駆動される構成とされているが、2つのヒータ3A、3Bの両方が駆動される構成であってもよい。
また、ヒータ駆動方法としても特に限定されず、例えば、スライド式の駆動部としてもよいし、
図4などに示す例のような、ヒータ部分から遠い位置に支点を配置した回動スライド方式であってもよい。
また、一方のヒータ3Aを付勢する第2の付勢部材42としては、磁石(磁力部材)による反発力などを用いたものであってもよいし、
図4などに示す例のようなねじりコイルばねなどを用いたものであってもよい。また、第2の付勢部材42として電磁石を用いた場合には、その電磁コイルに印加する電流が駆動源となり、この印加電流に従って電磁石による付勢力を制御して、一方のヒータ3Aを付勢する構成を採用しても良い。
【0084】
また、スライド可動クランプ部のスライド部としても特に限定されず、
図6などに示すように左側のクランプ部2Aのみがスライド可動に構成されていてもよいし、左右一対のクランプ部2A、2Bの両方がスライド可動に構成されていてもよい。
また、スライド可動クランプ部のスライド機構としても特に限定されず、例えば、
図6などに示すような高価なベアリングを用いたスライド式駆動部としてもよいし、
図4などに示す例のような、クランプ部から遠い位置に支点を配置した回動スライド方式であってもよい。
またさらに、スライド可動クランプ部に、光ファイバ11に引張力を付加するための力を付勢する第1の付勢部材41としても特に限定されず、
図6等に示すような磁石(磁力部材)を用いたものであってもよいし、圧縮コイルばねなどの弾性部材を用いたものであってもよい。
【0085】
また、左右一対のクランプ部2A、2Bの開閉可動部としても特に限定されず、前側あるいは後ろ側の片側のみが開閉してもよいし、前後両側がそれぞれ開閉可動してもよい。
また、左右一対のクランプ部2A、2Bの開閉可動側に光ファイバ11を把持する力を付勢する第5の付勢部材45(
図29参照)としても特に限定されず、磁石(磁力部材)による反発力などを用いたものであってもよいし、
図4などに示す例のようなねじりコイルばねなどを用いたものであってもよい。
【0086】
また、各々のカム機構についても特に限定されず、上述のような同一のカムシャフト7上に同軸で複数のカム機構が設けられた構成としてもよいし、あるいは、複数のカムシャフトを用いた複数軸の構成であっても構わない。
また、上述のようなカム機構の代わりに、例えば、ねじ機構(マイクロメータ含む)による前後駆動機構や、電磁石のON/OFFによる磁力駆動機構、レバーとソレノイドによる駆動機構などを用いることも可能である。
【0087】
(補強加熱装置の動作の他の例)
次に、本実施形態の一変形例について説明する。
本実施形態においては、
図12および
図13に示す例のように、光ファイバ11の弛みによるスリーブ12の鉛直下方への下降を防止するため、2つのヒータのうちの少なくとも一方の形状を、図示例のような断面L字形に構成することも可能である。図示例では、2つのヒータ93A、93Bのうち、固定側のヒータ93BがL字形とされており、
図12は径の大きなスリーブ12を配置した場合、
図13は径の小さなスリーブ12を配置した場合を示している。このような構成とした場合、ヒータが大型化するために熱容量が増加し、昇温速度が遅くなる、あるいは、
図13に例示するように、径の小さなスリーブ12を配置した場合には、スリーブ12の位置が下がり、ヒータ中央で加熱できないというデメリットもある。しかしながら、
図12および
図13に例示するヒータ構造を採用することで、
図4および
図6〜
図11で説明したような補強加熱装置の構成において、第1のカム機構71を省略することも可能となり、構造の簡略化が実現できる。
【0088】
なお、スリーブ12の下降を防止するための構造としては、上記のようなヒータをL字形形状にすることのみならず、例えば、L字形の金属板を設置した構成でも良い。このように、L字形に構成するのはヒータの一部である必要はなく、ヒータとは独立した部材であってもよい。
【0089】
上述のような、光ファイバ11の下降防止構造を採用した場合の手順、および、ヒータによる強い押圧力を減殺・解放できる作用について、主に、
図14〜
図17の模式図を用いて説明する(
図4も参照)。
図14〜
図17に示す補強加熱装置は、上記の
図6〜
図11に示す補強加熱装置に対し、一方のクランプ部2Aが後退方向へ移動するのを規制するカム機構(第2のカム機構72)が存在しない点と、このカム機構が無いため、初期状態においては一方のクランプ部2Aが後退方向のストッパ51に接触し、後退可動範囲が無い点で異なるものである。また、図示例においては、説明の都合上、ヒータのL字形状の図示を省略している(
図12および
図13を参照)。
【0090】
まず、
図14に示すように、接続部がスリーブ12で覆われた光ファイバ11を、左右一対のクランプ部2A、2B間に挿通させる。
次いで、
図15に示すように、カムシャフト7の回転が開始されると、左右一対のクランプ部2A、2Bの開閉可動側のクランプ部が閉じ、第1のカム機構71と左右一対のクランプ部2A、2Bとが非接触の状態となり、これらクランプ部2A、2Bは、数百gf程度の押圧で光ファイバ11を把持する。この際、詳細な図示を省略するが、スリーブ12はL字形に構成された固定側のヒータ93Bによって支えられ、ヒータ表面において概ね加熱に適正な位置に保持されている。一方、この状態においては、光ファイバ11には弛みが残っている。
【0091】
次いで、
図16に示すように、さらにカムシャフト7が回転すると、スリーブ12は、加熱前に開閉可動側のヒータ93Aによって押圧され、固定側ヒータ93B側に移動し、これに伴って光ファイバ11も移動する。あるいは、ヒータ93A、93Bによる加熱開始後にスリーブ12が変形し、これに伴って光ファイバ11も移動する。
上記動作により、光ファイバ11の弛みが除去され、光ファイバ11が引っ張られる形で一方のクランプ部2Aが前進方向へスライド移動する。すると、一方のクランプ部2Aには、図中に示すような前進可動範囲Zに加えて後退可動範囲Kが確保される。これにより、一方のクランプ部2Aは、光ファイバ11の長さ方向において前後に移動可能な状態となるので、光ファイバ11に弛みが無い状態で、引張力を一定に制御することが可能となる。
この後の手順については、上記の
図6〜
図11を用いた説明の場合同様であり、ヒータ93A、93Bの加熱によってスリーブ12の収縮動作が行われる。
【0092】
そして、
図17に示すように、スリーブ12の収縮が完了し、光ファイバ11は、スリーブ12の収縮とともに、固定側のヒータ93B側に数百gfの力で押し付けられて移動するが、一方のクランプ部2Aが前進方向にスライド移動することで、光ファイバ11に付加される引張力を数十gfに一定に保つことが可能となる。
なお、本変形例においては、左右一対のクランプ部2A、2Bのうちの開閉可動側のクランプと、開閉可動側であるヒータ93Aの駆動、解放手順や、加熱後の冷却手順などについては、上記同様であり、省略する。
【0093】
(その他の変形例)
以下、本実施形態のその他の変形例について説明する。なお、以下の説明においては、上記した
図4〜
図17を参照して説明するものとする。
【0094】
本実施形態においては、上述した
図6などに示す構成において、2つのヒータ3A、3Bによるスリーブ12への押圧力は、光ファイバ11を融着した接続部11Aの破断確認試験の張力を上回る押圧力とすることができる。ここで、光ファイバの融着接続機部の破断確認試験の強度は、通常、略200gfであり、一方、第2の付勢部材の押圧力は略500gfである。本実施形態では、上述のような引張力を制御できる構成を有しているので、スリーブ12への押圧力を、光ファイバ11の接続部11Aの破断張力を上回る押圧力に設定することが可能である。
これにより、スリーブ12を十分な力で押圧できる。
【0095】
なお、本発明で説明する光ファイバの融着した接続部の破断確認試験とは、光ファイバ接続部の破断張力を測定する方法であり、通常、プルーフ試験力として表され、光ファイバの融着接続機の接続性能を表す一般的な指標として用いられるものである。例えば、プルーフ試験力の範囲が広い融着接続機においても、張力は200〜250gfの範囲である(インターネットホームページ;http://www.fujikura.co.jp/products/tele/o_f_splicers/td70005.html、あるいは、http://www.fujikura.co.jp/products/data/FSM−100−J.pdf、などを参照)。
【0096】
また、本実施形態では、上述したような構成において、2つのヒータ3A、3Bが、スリーブ12を挟んで対向する押圧面が略垂直方向に配置され、スリーブ12中に挿通された抗張力体13の重量を利用して常に抗張力体13を略下方向に配置することが、スリーブ12の向きを、例えば、
図5(a)、(b)に図示するような姿勢で一定化させることができる点から、より好ましい。
なお、略垂直とは水平面に対して略垂直であることをいう。前記略垂直方向に配置された前記押圧面は、例えば水平面に対して90°±10°の角度で交差する面であってよい。前記押圧面は、例えば水平面に対して90°±30°の角度で交差する面とすることもできる。
【0097】
本実施形態では、クランプ部の後退方向への移動を規制する後退ストッパを設け、この後退ストッパを退避可能に構成することができる。後退ストッパとしては、
図14〜
図17に示すような、後退ストッパ51を用いることができる。
図14(a)、(b)に示すヒータ取付台31Bは、クランプ部2A(固定側)の後面に対面する後壁部31Bbを有する。後壁部31Bbは、ヒータ取付台31Bの他の部分に対して前後方向に移動可能である。後退ストッパ51は後壁部31Bbの前面に設けられている。
図14(a)に示すように、まず、一方のクランプ部2Aは、光ファイバ11を把持する前に、第1の付勢部材41によってヒータ3から離間して後退ストッパ51に当接し、前進方向にのみ可動範囲を確保する。
左右一対のクランプ部2A、2Bで光ファイバ11を把持し、光ファイバ11へは引張力が付加されていない状態において、光ファイバ11を把持した直後、あるいは、ヒータ3のスリーブ12に対する押圧駆動開始時又は押圧駆動開始前後に、後退ストッパ51を退避させる。後退ストッパ51を退避させるには、後壁部31Bbを後退方向(クランプ部2Aから離間する方向)に移動させればよい。
これにより、光ファイバ11に前記引張力を付加した状態で、一方のクランプ部2Aの前進可動範囲に加えて後退可動範囲を確保した後、ヒータ3でスリーブ12を押圧することができる。
なお、後退ストッパを退避可能とする構造は図示例に限らない。例えば、後退ストッパ51をヒータ取付台31Bの他の部分から取り外し可能な構造を採用してもよい。この場合には、後退ストッパ51を取り外すことによって前記退避が可能となる。
【0098】
本実施形態では、クランプ部2Aの前進方向への移動を規制する前進ストッパを設け、この前進ストッパを退避可能に構成してもよい。
図14(a)では、符号52が前進ストッパである。
図14(a)、(c)に示すヒータ取付台31Bは、クランプ部2A(固定側)の前面に対面する取付台部31Baに、前壁部31Bcを有する。前壁部31Bcは、ヒータ取付台31Bの他の部分に対して前後方向に移動可能である。前進ストッパ52は前壁部31Bcの後面に設けられている。
まず、一方のクランプ部2Aは、光ファイバ11を把持する前に、第1の付勢部材41によってヒータ3から離間して後退ストッパに当接した状態から、前進ストッパに当接するまで前進移動させて保持された状態において、左右一対のクランプ部2A、2Bで光ファイバ11を把持し、光ファイバ11へは引張力が付加されていない状態において、光ファイバ11を把持した直後、あるいは、ヒータ3のスリーブ12に対する押圧駆動開始時又は押圧駆動開始前後に、一方のクランプ部2Aを前進ストッパに対する当接状態から開放し、さらに前進ストッパを退避させる。
図示例において、前進ストッパ52を退避させるには、前壁部31Bcを前進方向(クランプ部2Aから離間する方向)に移動させればよい。
これにより、光ファイバ11に前記引張力を付加した状態で、一方のクランプ部2Aの後退可動範囲に加えて前進可動範囲を確保した後、ヒータ3でスリーブ12を押圧する構成とすることができる。
なお、前進ストッパとしては、上記同様の第2のカム機構72を用いることができ、また、後退ストッパとしては、
図14〜
図17に示すような、筐体5に形成された後退ストッパ51を用いた構成とすることが可能である。符号52は前進ストッパである。
前進ストッパとしてカム機構を用いる場合には、カム機構を回転駆動させることにより前記前進ストッパを退避させることができる。また、前進ストッパ52は、ヒータ取付台31Bの他の部分から取り外し可能な構造とすることもできる。この場合には、前進ストッパ52を取り外すことによって、前記退避が可能である。
【0099】
あるいは、本実施形態では、以下のような構成とすることも可能である。
まず、一方のクランプ部2Aが、光ファイバ11を把持する前に、第1の付勢部材41によってヒータ3から離間する後退方向の付勢力が付加された状態において、一方のクランプ部2Aを前進方向に移動させるための弾性部材または磁力部材からなる第3の付勢部材(図示略)か、あるいは、一方のクランプ部2Aを前進方向に移動させる第3の付勢部材によって、一方のクランプ部2Aの可動範囲における端部から離れた位置で停止した状態において、左右一対のクランプ部2A、2Bで光ファイバ11を把持し、光ファイバ11へは引張力が付加されていない状態において、光ファイバ11を把持した直後、あるいは、ヒータ3のスリーブ12に対する押圧駆動開始時又は押圧駆動開始前後に、第3の付勢部材による前記一方のクランプ部の前進方向の付勢力を弱めるか、あるいは、前記第1の付勢部材による後退方向の付勢力を強めるか、あるいは、前記第3の付勢部材を退避させる。これにより、左右一対のクランプ部2A、2Bが光ファイバ11に対して引張力を付加した状態で、一方のクランプ部2Aの後退可動範囲Kに加えて前進可動範囲Zを確保した後、ヒータ3でスリーブ12を押圧する構成とすることもできる。
【0100】
ここで、第1の付勢部材41や、図示略の第3の付勢部材による付勢力の強弱を制御する方法としては、各付勢部材に磁力部材を用いた場合には、例えば、電磁石に印加する電流値を調整するか、あるいは、永久磁石の位置を移動する方法が挙げられる。
また、各付勢部材に弾性部材を用いた場合には、例えば、弾性部材であるばねの一端側を移動する方法が挙げられる。例えば、ばねの一端を固定端とし、他端を前記クランプ部に当接させて、圧縮されたばねの弾性力によりクランプ部を付勢する場合に、前記ばねの一端を他端に近づく方向に移動させて前記ばねを圧縮すれば、前記付勢力を強めることができる。また、前記ばねの一端を他端から離れる方向に移動させて圧縮を緩和すれば、付勢力を弱めることができる。
【0101】
あるいは、本実施形態では、以下のような構成とすることも可能である。
詳細な図示を省略するが、まず、左右一対のクランプ2A、2B部の何れもが、光ファイバ11の長さ方向において前後に可動とされており、一方のクランプ部2Aが、光ファイバ11を把持する前に、第1の付勢部材41によってヒータ3から離間して後退ストッパ(
図14などの符号51を参照)に当接し、前進方向にのみ可動範囲を確保した状態において、かつ、他方のクランプ部2Bが、光ファイバ11を把持する前に、ヒータ3側へ前進して停止させた状態において、左右一対のクランプ部2A、2Bで光ファイバ11を把持し、光ファイバ11へは引張力が付加されていない状態とする。その後、他方のクランプ部2Bがヒータ3側から離間する後退方向に移動を開始し、光ファイバ11を介した引張力によって一方のクランプ部2Aが前進方向に移動し、一方のクランプ部2Aの可動範囲における端部から離れた位置で他方のクランプ部2Bの移動が停止されることにより、光ファイバ11に引張力を付加した状態で、一方のクランプ部2Aの後退可動範囲Kに加えて前進可動範囲Zを確保した後、ヒータ3でスリーブ12を押圧する構成とすることができる。
【0102】
あるいは、本実施形態では、以下のような構成とすることも可能である。
まず、一方のクランプ部2Aが、光ファイバ11を把持する前に、第1の付勢部材41によってヒータ3から離間して後退ストッパ(
図14などの符号51を参照)に当接し、前進方向にのみ可動範囲を確保した状態において、左右一対のクランプ2A、2B部で光ファイバ11を把持し、光ファイバ11へは引張力が付加されていない状態において、第1の付勢部材41による光ファイバ11への引張力よりも大きな第2の付勢部材42による押圧力によって、ヒータ3がスリーブ12の押圧を開始する。そして、押圧開始後のスリーブ12の移動あるいはスリーブ12の形状変形によって、光ファイバ11が押圧方向に移動されることにより、一方のクランプ2Aが光ファイバ11の移動による引張力によって前進方向に引き寄せられ、一方のクランプ部2Aは可動範囲における端部から離れた位置で停止するよう構成されることで、光ファイバ11に第1の付勢部材41による引張力が付加された状態で、一方のクランプ部2Aの後退可動範囲Kに加えて前進可動範囲Zを確保した後に、ヒータ3でスリーブ12を加熱する構成とすることもできる。
【0103】
本実施形態では、以下のような構成とすることも可能である。なお、既出の構成については同じ符号を付し、詳細な説明を省略することがある。
図34に示す補強加熱装置は、クランプ部2Aが後退方向へ移動するのを規制するカム機構(第2のカム機構72)がない点と、クランプ部2Aの開閉可動側2Abに突出部150が形成されている点と、ヒータ取付台31Bに制御壁部151が設けられている点とで、
図6〜
図11に示す補強加熱装置と異なる。
【0104】
開閉可動側2Abの突出部150は、開閉可動側2Abの後端部からヒータ取付台31B側に延出する延出部152と、延出部152の先端部の後面から後方に突出する嵌入凸部153と、を有する。
嵌入凸部153の外面の上面153aは、後方(図中の左側)に行くほど下降する傾斜面である。
【0105】
制御壁部151は、ヒータ取付台31Bの後端部に立設され、その前面151aには嵌入凸部153を受け入れ可能な受け凹部155が形成されている。受け凹部155の内面の上面155aは、後方(図中の左側)に行くほど下降する傾斜面である。
制御壁部151は、初期状態(
図34参照)においては、前面151aが嵌入凸部153に当接し、クランプ部2Aの後退を規制している。
【0106】
この例の補強加熱装置は、光ファイバ11に引張力を付与する付勢機構41(第1の付勢部材)を備えている。付勢機構41は、前側付勢機構41Aおよび後側付勢機構41Bを有する。
前側付勢機構41Aは、クランプ部2Aの固定側2Aaの前端面、およびヒータ取付台31Bの取付台部31Baにそれぞれ設けられた付勢部材41a、41bを有する。
付勢部材41a、41bは、永久磁石や電磁石などの磁力部材であって、互いに同じ磁極をもつ。図示例では、付勢部材41a、41bはいずれもN極である。
後側付勢機構41Bは、クランプ部2Aの固定側2Aaの後端面およびヒータ取付台31Bの後壁部31Bbに、それぞれ設けられた付勢部材41c、41dを有する。
付勢部材41c、41dは、互いに異なる磁極をもつ磁力部材である。図示例では、付勢部材41cはN極であり、付勢部材41dはS極である。
付勢部材41a、41b間の斥力と付勢部材41c、41d間の引力により、クランプ部2Aには後方への力が加えられ、光ファイバ11には引張力が付与される。
【0107】
受け凹部155および前面151aを有する制御壁部151と、突出部150とは、クランプ部2Aによる光ファイバ11の把持動作に基づいて、付勢機構41による光ファイバ11の引張り(およびその停止)を制御する機構(引張機構、または引張制御機構)を構成する。
この例の補強加熱装置は、モータ6が、第1のカム機構71により、クランプ部2Aを第5の付勢部材45の力で制御し、クランプ部2Aの動作により、前記引張機構が制御される。
【0108】
図35に示すように、カムシャフト7が回転すると、クランプ部2Aの開閉可動側2Abが固定側2Aaに近づく方向に移動し、クランプ体2b、2bが光ファイバ11を把持する。
図36に示すように、開閉可動側2Abの移動に伴い、突出部150が下降し、嵌入凸部153が受け凹部155に進入可能な位置に至ることによって、クランプ部2Aは、前進可動範囲Zだけでなく後退可動範囲Kが確保されて前後に移動可能な状態になり、付勢機構41による引張力が光ファイバ11に付加される。
【0109】
図37に示すように、第3のカム機構73の変位に伴って、ヒータ取付台31Aがヒータ取付台31Bに近づき、ヒータ3A、3Bによってスリーブ12が挟まれ、スリーブ12が加熱収縮する。
図38に示すように、スリーブ12の収縮とともに、スリーブ12と光ファイバ11はヒータ3Bに向けて移動するが、クランプ部2Aが前進方向(図中の右方向)へスライド移動するため、光ファイバ11に付加される引張力が過大になることはない。
【0110】
図39に示すように、また、第3のカム機構73によりヒータ取付台31Aがヒータ取付台31Bから離れる方向に移動すると、スリーブ12が解放されるとともに、第1のカム機構71によって、クランプ部2Aの開閉可動側2Abが固定側2Aaから離れる方向に移動し、光ファイバ11の把持が解除される。
開閉可動側2Abの移動に伴って突出部150が上昇し、嵌入凸部153は制御壁部151によって後退が規制された位置に戻る。
この際、嵌入凸部153は、上面153aが受け凹部155の上面155aの傾斜に沿って上昇するため、スムーズに受け凹部155から外れる。
【0111】
なお、
図6〜
図11等には図示されていないが、
図34等に示すように、開閉可動側2Abは、光ファイバ11を挟み込むクランプ体2bを固定側2Aaのクランプ体2bに向けて付勢する付勢部材2aを備えている。
【0112】
本実施形態では、以下のような構成とすることも可能である。
図40に示す補強加熱装置は、第2のカム機構72がない点と、付勢機構141(第1の付勢部材)が設けられている点と、ヒータ取付台31Aに、ヒータ取付台31Bに近づく方向に突出する突出部160が形成されている点で、
図6〜
図11に示す補強加熱装置と異なる。
【0113】
付勢機構141は、光ファイバ11に引張力を付与するものであって、前側付勢機構141Aおよび後側付勢機構141Bを有する。
前側付勢機構141Aは、クランプ部2Aの固定側2Aaの前端面、およびヒータ取付台31Bの取付台部31Baにそれぞれ設けられた付勢部材141a、141bを有する。
付勢部材141a、141bは、永久磁石や電磁石などの磁力部材であって、互いに同じ磁極をもつ。図示例では、付勢部材141a、141bはN極である。
後側付勢機構141Bは、クランプ部2Aの固定側2Aaの後端面およびヒータ取付台31Bの後壁部31Bbに、それぞれ設けられた付勢部材141c、141dを有する。
付勢部材141c、141dは、互いに同じ磁極をもつ磁力部材である。図示例では、付勢部材141c、141dはN極である。
図40に示す初期状態では、クランプ部2Aは、前進可動範囲Zおよび後退可動範囲Kが確保されて前後に移動可能な状態であるが、付勢部材141a、141b間の斥力と付勢部材141c、141d間の斥力により、クランプ部2Aはその位置に留まる。
突出部160の先端部には付勢部材161が設けられている。付勢部材161は、付勢部材141aと互いに同じ磁極をもつ磁力部材である。図示例では、付勢部材161は、付勢部材141aと同じくN極である。
【0114】
突出部160は、ヒータ3Aによる光ファイバ11の押圧動作に基づいて、付勢機構41による光ファイバ11の引張りの増減を制御する機構(引張機構、または引張制御機構)を構成する。
この例の補強加熱装置は、モータ6が、第3のカム機構73により、ヒータ3Aを第2の付勢部材42の力で制御し、ヒータ3Aの動作により、前記引張機構が制御される。
【0115】
図41に示すように、カムシャフト7が回転するのに伴って、クランプ部2Aの開閉可動側2Abが固定側2Aaに近づく方向に移動すると、開閉可動側2Abと固定側2Aaとが光ファイバ11を把持する。
この図に示す状態では、ヒータ取付台31Aはヒータ取付台31Bから離れているため、突出部160の付勢部材161はクランプ部2Aの付勢部材141aから離れた位置にある。この状態では、光ファイバ11に加えられる引張力は小さい。
【0116】
図42に示すように、カムシャフト7の回転によって第3のカム機構73が変位するのに伴って、ヒータ取付台31Aがヒータ取付台31Bに近づくと、突出部160の付勢部材161がクランプ部2Aの付勢部材141aに近づく。
付勢部材161は付勢部材141aと同じ磁極をもつため、付勢部材141aには後方(図中の左側)への斥力が作用する。これによって、光ファイバ11に付与される引張力が増大する。
図43に示すように、ヒータ3A、3Bによってスリーブ12が挟まれ、スリーブ12が加熱収縮する。
スリーブ12の収縮とともに、スリーブ12と光ファイバ11はヒータ3Bに向けて移動するが、クランプ部2Aが前進方向(図中の右方向)へスライド移動するため、光ファイバ11に付加される引張力が過大になることはない。
【0117】
図44に示すように、また、第3のカム機構73によりヒータ取付台31Aがヒータ取付台31Bから離れる方向に移動し、スリーブ12が解放されるとともに、第1のカム機構71によって、クランプ部2Aの開閉可動側2Abが固定側2Aaから離れる方向に移動し、光ファイバ11の把持が解除される。
【0118】
(作用効果)
以上説明したような本発明の第1の実施形態の光ファイバ接続部補強加熱装置1によれば、スリーブ12を2つのヒータ3A、3Bで挟んで加熱収縮させる際に、光ファイバ11に付加される過剰な張力を解放することで光ファイバ11の破断や長期信頼性の低下が生じるのを防止し、また、装置が大型化することを防止できる。これにより、信頼性が高く、短時間でスリーブ12を加熱収縮させることができるとともに、操作性に優れた光ファイバ接続部補強加熱装置1が実現できる。
【0119】
[第2の実施形態]
以下、本発明の第2の実施形態について、各図面で示した一例を挙げて説明する。なお、本実施形態においては、一部、上記の第1実施形態と同じ図面を参照しながら説明するとともに、既出である共通の構成、例えば、左右一対のクランプ部2A、2B、2つのヒータ3A、3Bなどについては同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0120】
本実施形態では、
図4に示すように(
図6も参照)、第1の実施形態の場合と同様、光ファイバ11を把持する左右一対のクランプ部2(2A、2B)と、光ファイバ11の被覆除去部分を覆うスリーブ12を押圧して加熱する2つのヒータ3(3A、3B)と、スリーブ12を挟んで対向配置された2つのヒータ3A、3Bの少なくとも1以上に、モータ6による制御に従って、スリーブ12を挟んで弾性部材あるいは磁力部材によって押圧力を付加する第2の付勢部材42と、を備えている。
【0121】
そして、本実施形態の補強加熱装置1では、上記に加え、モータ6によって回転駆動される第1のカム機構71を、該第1のカム機構71に従動して変位し、該変位によって、弾性部材あるいは磁力部材からなる第5の付勢部材45(
図29参照)が、左右一対のクランプ部2A、2Bが光ファイバ11を挟んで把持する方向で付勢するように動作させる第1の作動部材(光ファイバを挟むように作用する機構)81と、第1のカム機構71と同軸のカムシャフト7上に設けられ、同一のモータ6の制御によって回転駆動される第3のカム機構73を、該第3のカム機構73に従動して変位し、該変位によって、第2の付勢部材42を、2つのヒータ3A、3Bがスリーブ12を挟んで押圧する方向に付勢するように動作させる第3の作動部材(スリーブを挟むように作用する機構)83と、を備えることを特徴としている。
【0122】
なお、第2の実施形態においては、上記の第1の実施形態と同様に、さらに、クランプ部2の少なくとも一方を光ファイバ11に対して引張力を付加する方向に付勢する第1の付勢部材41と、第1のカム機構71と同軸のカムシャフト7上に設けられ、モータ6によって回転駆動される第2のカム機構72を、該第2のカム機構72に従動して変位し、該変位によって、第1の付勢部材71を、光ファイバ11に対して引張力を付加するように動作させる第2の作動部材82と、を備えた例を挙げている。そして、第2の実施形態では、第1の実施形態と同様、第2の付勢部材42によるスリーブ12への押圧力が、第1の付勢部材41による光ファイバへ11の引張力よりも大きく設定され、第1の付勢部材41によって光ファイバ11に引張力を加えた状態において、引張力を付加する一方のクランプ部2Aが、光ファイバ11の長さ方向においてヒータ3から離間する方向の後退可動範囲Kが確保されているとともに、ヒータ3側に移動できる前進可動範囲Zが確保されており、第2の付勢部材42によってヒータ3でスリーブ12を押圧することで付加される光ファイバ11への引張力を減殺する方向へクランプ部2Aが移動するように構成された例を挙げて説明する。
【0123】
さらに、本実施形態では、上記した第1の作動部材81や第3の作動部材83の他、後述する各作動部材(各作用する機構)について、レバー状部材として構成した例を挙げて説明する。
また、以下の説明においては、第2の実施形態の補強加熱装置に関して、主に、上述した第1の実施形態の場合と異なる点を中心に説明するものとする。
【0124】
(カムシャフトおよび各カム機構)
本実施形態の補強加熱装置1は、モータ6によって回転駆動されるカムシャフト7に、各々詳細を後述する各カム機構が設けられ、これら各カム機構に従動して変位する各作動部材により、左右一対のクランプ部2A、2Bの開閉可動側の開閉動作、一方のヒータ3Aの開閉動作、一方のクランプ部2Aの光ファイバ11の長さ方向(引張力を調整する方向)でのスライド移動、蓋部10の開閉動作の各動作が、各付勢部材によって行われるように駆動する点で、上記第1の実施形態とは異なる。
【0125】
以下に、
図4の破断図、および、
図23の正面図ならびに
図24(a)、(b)〜
図28(a)、(b)を参照しながら、本実施形態の補強加熱装置が採用する各カム機構について説明する。
図4に示すように、1本のカムシャフト7には4種類7箇所のカム機構が搭載されており、図中左側から以下のように配置されている。なお、図示例においては、後述する補助移動レバーを有しておらず、駆動トルクの反転機構は備えられていない構成とされている。
(1)第4のカム機構74(蓋部10の開閉)(2)第1のカム機構71(一方のクランプ部2Aの開閉)(3)第2のカム機構72(一方のクランプ部2Aの引張力の付加用の後退ストッパ)(4)第3のカム機構73(一方のヒータ3Aの開閉)(5)第3のカム機構73(一方のヒータ3Aの開閉)(6)第1のカム機構71(他方のクランプ部2Bの開閉)(7)第4のカム機構74(蓋部10の開閉)
【0126】
ここで、本実施形態で説明する補強加熱装置1のカムシャフト7に設けられる各カム機構は、図示例のような回転カム状のものには限定されず、例えば、カムシャフトの長手方向において接触面が変化する、いわゆる螺旋形状のものも含まれる。また、本発明において説明するカム機構は、図示例のようなものには限定されず、例えば、カムシャフト上に回転レバー状部材が設けられた構成のものも含まれる。
【0127】
また、本実施形態では、カムシャフト7および各カム機構が、駆動源であるモータ6からの回転が歯車機構61を介して伝達される構成とされている。
【0128】
(2つのヒータ)
本実施形態においては、2つのヒータ3A、3Bに関し、第1の実施形態と同様、片側のみを開閉可動としてモータ6で駆動する構成とすればよい。これら2つのヒータ3A、3Bのうち、いずれか一方を可動として駆動し、他方を固定として構成すれば、ヒータの可動機構や、ヒータを押圧する弾性部材あるいは磁力部材を、いずれか一方のヒータ側にのみ設けることで済むため、装置の小型化が可能となる。
なお、
図4は破断図であるため、
図6などに示す他方のヒータ3B(固定側)は示されておらず、開閉可動側である一方のヒータ3Aのみを示しているが、2つのヒータ3A、3Bの位置関係は、
図4中における奥側と手前側で、適宜選択して採用すればよい。
【0129】
(左右一対のクランプ部)
図29および
図30は、
図4に示す補強加熱装置1の一方のクランプ部2Aと、その周辺機構を詳細に示す部分破断図である。
図29に示すように、一方のクランプ部2Aは、開閉可動側が第1の作動部材81に取り付けられ、また、開閉固定側がクランプ取付台として機能する第2の作動部材82に取り付けられている。
また、第1の作動部材81は、回動支点81aを中心として一方のクランプ部2Aの開閉動作を行う。第1の作動部材81は、第1のカム機構71によって駆動されるとともに、ねじりコイルばねからなる第5の付勢部材45によって付勢されることで、一方のクランプ部2Aの開閉動作を行う。
また、一方のクランプ部2Aには、光ファイバ11を直接把持するための把持用ゴム2bが設けられており、
図29においては図示を省略しているが、他方のクランプ部2Bにおいても同様とされている。
【0130】
また、
図29および
図30に示すように、左右一対のクランプ部2A、2Bは、スライド支点82aを中心として光ファイバ11の長さ方向でスライド移動可能に構成されている。また、左右一対のクランプ部2A、2Bを、光ファイバ11に対して引張力を付加するように後退方向で移動させるための、圧縮コイルばね(弾性部材)からなる第1の付勢部材41が、第2の作動部材82(および第1の作動部材81)を付勢するように設けられている。
また、第1の作動部材81には、左右一対のクランプ部2A、2Bによって光ファイバ11を把持する際に、左右一対のクランプ部2A、2Bの後退方向への移動を規制する後退ストッパ51が設けられている。この後退ストッパ51は、左右一対のクランプ部2A、2Bの開閉動作によって光ファイバ11を把持する際には、カムシャフト7に設けられた第2のカム機構72と当接することで、左右一対のクランプ部2A、2Bの後退方向への移動を規制する。そして、光ファイバ11を把持した後、第2のカム機構72と後退ストッパ51との当接状態が解かれ、左右一対のクランプ部2A、2Bを、後退方向へ移動可能に解放することで、光ファイバ11に対して第1の付勢部材41による引張力を付加できる構成とされている。
【0131】
(各部のその他構成および動作形態)
本実施形態では、
図18に例示するように、第3の作動部材83が、開閉可動である一方のヒータ3Aが設置されるヒータ取付台として機能し、回転支点83aを中心に回転作動する構成とすることができる。第1の実施形態において、
図6などを用いて説明したヒータ取付台はスライド可動方式であるが、ヒータ3がスリーブ12を押圧する一つ目の作用点、ヒータ3A(ヒータ取付台)が駆動体(第3のカム機構)を押す二つ目の作用点、第2の付勢部材42がヒータ3A(ヒータ取付台)を押す力点の各々のバランスが状況によって変化する。このため、スライド可動方式では、ヒータ取付台が傾いた方向(捩り)に力が働きやすく、ヒータ可動機構には、捩りに強いスライドガイド機構、あるいは、リニアベアリングのような部材を設けなければ、ヒータ取付台の動きがスムーズにならず、このような機構、部材を用いた場合には、補強加熱装置を大型化させるという問題があった。
本実施形態においては、一方のヒータ3Aが設置される第3の作動部材83を、回転支点83aを中心に回動作動するレバー状部材から構成することにより、装置全体を小型化することが可能となる。
【0132】
本実施形態では、例えば、
図4や、後述の
図24(a)、(b)〜
図28(a)、(b)などに示す例のように、各作動部材の内の少なくとも何れかが、光ファイバ11、スリーブ12および各カム機構(カムシャフト7)の回転軸と並行な各回転支点を中心に回動運動するレバー状部材からなる構成とすることができ、上記効果が得られやすい点から好ましい。
図24(a)、(b)〜
図28(a)、(b)に示す例においては、第1、3、4の作動部材81、83、84が、第1、3、4のカム機構71、73、74の回転軸と並行な各回転支点を中心に回動運動するレバー状部材から構成されている。
【0133】
また、
図4に示す例のように、カムシャフト7が、装置下部に配置される上記各回転支点と、装置上部に配置される左右一対のクランプ部2A、2B、2つのヒータ3A、3Bおよび蓋部10との間に配置されてなる構成とすることが、装置全体をより小型化できる観点から好ましい。
【0134】
また、一方のヒータ3Aを押圧するための第2の付勢部材42を、
図18中に示すヒータ取付台である第3の作動部材83の回転支点83aに設置したコイルばねから構成することも可能である。
本実施形態の第3の作動部材83は、弾性部材あるいは磁力部材からなる第2の付勢部材42によって押圧されるが、第3の作動部材83の位置によって押圧力の変動が少ない状態を得るためには、上述のような、可動ストロークと比較して全長の長い圧縮コイルばねが必要となる。しかしながら、全長の長い圧縮コイルばねを用いた場合、装置全体が大型化するという問題がある。
これに対し、上述のように、コイルばねからなる第2の付勢部材42を回転支点83aに設置し、この回転支点83aを中心とした回動作動を利用することで、広い可動範囲において、一定の押圧力を得ることが可能になり、補強加熱装置の小型化が可能となる。
【0135】
また、本実施形態では、上述のような、2つのヒータ部3A、3Bを付勢する第2の付勢部材42、左右一対のクランプ部2A、2Bにおける光ファイバ11の把持機構、および、蓋部10の付勢部材(図示略)にコイルばねを用い、上記各回転支点とコイルばねとを同軸で配置することが、補強加熱装置をさらに小型化できる観点から好ましい。
【0136】
また、上述した第1の実施形態と同様、一方のクランプ部2Aの駆動についても、上記の一方のヒータ3Aの場合と同様の機構とすることができる。すなわち、
図4に示すような、モータ6によるカムシャフト7の回転駆動に伴う第1のカム機構71により、第1の作動部材81を介して、弾性部材あるいは磁力部材からなる第5の付勢部材45(
図29参照)が、左右一対のクランプ部2A、2Bが光ファイバ11を挟んで把持する方向で付勢するように動作させる構成とすることができる。
【0137】
上述のように、左右一対のクランプ部2A、2Bの開閉可動側を、動力源であるモータ6を用いて可動とさせることにより、以下に示すような効果が得られる。
(1)従来、作業者が手動で行っていたクランプ部の開閉動作が自動になることで、補強加熱装置を用いたスリーブ12の加熱収縮作業の高速化が可能になる。
(2)クランプ部を作業者の指などで操作する必要がなくなるため、クランプ部を人の指で開閉するのに適した形状に設計する必要が無い。従来は、例えば、光ファイバの長さ方向で左右に配された各クランプ部には、指を引っ掛かり易くするための図示略の突起が設けられるとともに、その近傍には指が入るスペースが設けられることから、クランプが大型化するとともに複雑な形状となっていた。本実施形態の如く、左右一対のクランプ部2A、2Bの把持開閉動作を自動化することにより、各クランプ部の小型化が可能となる。
(3)補強加熱装置を用いて作業を行うためには、光ファイバをセットしてからクランプ部を閉め、光ファイバにテンションを掛けて前進可動範囲と後退可動範囲を確保し、ヒータを押圧して熱収縮させるという順序で作業を行う必要がある。しかしながら、習熟度が低い作業者では、操作ミスが発生する可能性がある。本実施形態のように、一方のヒータ3Aの押圧動作、および、左右一対のクランプ部2A、2Bの把持開閉動作を自動化することで、操作ミスの防止が可能となる。
【0138】
また、本実施形態においては、以下に詳述するように、同軸のカムシャフト7上に設けられて回転駆動される各カム機構の内の少なくとも何れか2以上、具体的には第1のカム機構71と第3のカム機構73とを、駆動トルクを要するプラス駆動と、トルクを受け取るマイナス駆動とを組み合わせて減殺するタイミングに設定することで、モータ6による回転駆動力を低減する構成とすることが好ましい。
【0139】
上述したように、一方のヒータ3Aを押圧する押圧力としては数百gf、左右一対のクランプ部2A、2Bの開閉可動側を駆動して光ファイバ11を把持するにも数百gfの押圧力が必要である。例えば、これらの駆動・押圧タイミングのピーク(押圧力のピーク)が重複する場合には、次式{ヒータ:500gf+一方のクランプ部250gf+他方のクランプ部250gf=1000gf}で表されるような圧縮コイルばねの力が働いていることになる。また、上述したような、各回転支点を中心とした回動運動によって各作動部材を駆動する場合、必要駆動力はさらに大きくなる。また、例えば、各回転支点から各付勢部材をなす圧縮コイルばねまでの距離が、回転支点から各カム機構までの2倍の距離である場合には、テコの原理により、各カム機構には圧縮コイルばねの2倍の力が必要になる。その結果、カムシャフトが駆動する力の合計は2000gfにものぼり、駆動機構が大型化してしまうという問題がある。
【0140】
図19、
図20は、本実施形態において、左右一対のクランプ部2A、2Bの開閉可動側を把持駆動する第1のカム機構71と、一方のヒータ3Aを駆動する第3のカム機構73の動作タイミングを示し、プラス駆動とマイナス駆動とを相殺させる作用効果を説明するためのタイミングチャート(グラフ)である。
図19および
図20中において、横軸は各カム機構の角度、縦軸は各カム機構の回転中心から、各付勢部材(圧縮コイルばね)方向への押し出し量である。すなわち、
図19および
図20中においては、上述したような、各回転支点を中心として各作動部材が回動運動を行う場合の例をグラフ化している。
【0141】
図19に示すように、クランプ部を駆動する第1のカム機構の回転が0〜90°の範囲においては、カム機構の押し出し量は減少している。このような動作は、クランプ部が閉じて把持動作を行っている過程を表す。この区間においては、カム機構に駆動力は必要なく、むしろ、圧縮コイルばねからなる付勢部材がカム機構の回転を補助する。この場合、圧縮コイルばねがカム機構の回転を手助けする力は、クランプ力・250gfの2倍(テコの原理)の500gfである。
クランプ部が閉じて光ファイバを把持すると、次に、一方のヒータが閉じる。
図19のグラフ中において、一方のヒータを駆動する第2のカム機構の回転が90〜180°の区間が、その動作を表している。
その後、第2の180°の位置で第2のカム機構が停止し、スリーブに対して2つのヒータによる加熱が開始される。スリーブの収縮が完了すると、加熱が停止する。
【0142】
そして、
図19のグラフにおける180〜360°の範囲では、一方のヒータおよび左右一対のクランプ部の開閉可動側が一斉に解放動作を行うが、この際、カムシャフトには2000gfもの駆動力が必要となる。
また、補強加熱装置においては、駆動機構への負担軽減を考慮し、ゆっくりとした動作で開くことになるが、この動作が遅すぎると、補強加熱装置からスリーブ(光ファイバ)を取り出すことができない時間が長くなってしまうという問題がある。
【0143】
図20のグラフは、
図19に示すような過大な駆動力を低減するため、ヒータの駆動力を反転させた構成のタイミング(駆動力)を示すものである。
図20に示すように、
図19において問題となっていた180〜360°の範囲の部分では、一方のヒータ3A(第3のカム機構73)と、左右一対のクランプ部2A、2Bの開閉可動側の合計駆動力が打ち消し合い、少なくとも理論的にはトルクが不要となっている(実際には、各部材間の摩擦などにより、駆動トルクはゼロにはならない)。
【0144】
上述のように、各機構の駆動トルクを一部反転させて打ち消し合い、相殺させる構成を採用することにより、駆動トルクを低減して駆動機構を小型化できるので、補強加熱装置を小型化することが可能になる。
【0145】
また、本実施形態では、
図21や
図22に示す例のように、駆動トルクの反転のために、補助可動レバーを用いる構成を採用することができる。なお、以下の説明においては、上述したような、各作動部材が回転支点を中心とした回動運動を行う場合の例であるが、これには限定されず、スライド駆動方式に適用することも可能である。
【0146】
以下、
図21に示す構成について説明する。
(1)ヒータ取付台である第3の作動部材83と補助移動レバー83Cとの間には、圧縮コイルばね83Dが圧縮された状態ではめ込まれている。この圧縮コイルばね83Dは、第3の作動部材83と補助移動レバー83Cとを引き離そうとする力を発揮するが、接触部83bの部分がストッパの役割を果たし、接触によって設定距離以上は引き離されないように構成されている。
(2)すなわち、第3の作動部材83と補助移動レバー83Cは連動して動くように構成されている。
(3)なお、図示例においては、圧縮コイルばね83Dと補助圧縮コイルばね83Eの2つのばねがあるが、補助圧縮コイルばね83Eのばね力は、圧縮コイルばね83Dと比較して十分に弱く、補助移動レバー83Cを第3のカム機構73に押し付けるためだけの役割を有する。
(4)第3のカム機構73によって補助移動レバー83Cが駆動されると、ヒータ取付台である第3の作動部材83も連動して駆動される。
(5)一方、2つのヒータ3A、3Bがスリーブ12に接触した後は、第3の作動部材83はそれ以上移動できない。その結果、第3の作動部材83が圧縮コイルばね83Dを縮める作用を発現し、この際のばねの力が、スリーブ12への押圧力を発生させる。
以上の動作により、一方のヒータ3Aを閉じる動作を行う際は、押圧するための駆動トルクが必要になり、一方のヒータ3Aを開く際は、駆動トルクが不要になる(解放される)ことから、左右一対のクランプ部2A、2Bとは反対の駆動トルクを発生させることが可能となる。
【0147】
すなわち、本実施形態においては、
図4に示すような各カム機構を備える構成において、各カム機構の少なくとも何れか、具体的には、第1のカム機構71および第3のカム機構73において、各々、第1の作動部材81および第3の作動部材83に対して、
図21の模式図に示すような構成を適用することも可能である。すなわち、第1の作動部材81および第3の作動部材83とはカムシャフト7を挟んで反対側に補助可動部材(
図21中の符号83C参照)を配置し、各作動部材と補助可動部材とを弾性部材または磁力部材で連結し、各作動部材に代わって補助可動部材を各カム機構によって従動して変位させることで、各カム機構の回転駆動トルクをプラス駆動からマイナス駆動へ反転させることにより、第1のカム機構71と第3のカム機構73との間でプラス駆動とマイナス駆動とを組み合わせ、減殺する構成とすることが可能である。これにより、モータ6の駆動力を大きくする必要がなく、また、装置全体を小型化することが可能となる。
【0148】
なお、
図22に示す例のように、各コイルばねとして引張コイルばね83F、83Gを用いた場合でも、上記同様の効果が得られ、補強加熱装置の一層の小型化が可能になる。
【0149】
また、本実施形態においては、第1の実施形態でも説明したように、開閉可動側である一方のヒータ3Aの駆動にカム機構を用い、
図4や
図6などに示すように、第3のカム機構73によって駆動する構成とすることが好ましい。また、このような構成において、回転支点と一方のヒータ3Aとの間の位置に第3のカム機構73を配置することで、装置全体をさらに小型化することが可能となる。
【0150】
また、本実施形態においては、上記の一方のヒータ3Aの場合と同様、左右一対のクランプ部2A、2Bの開閉可動側を、回転支点を中心に回転作動する構成とすることも可能である。第1の実施形態において、
図6などを用いて説明した左右一対のクランプ部2A、2Bはスライド可動方式であるが、クランプ部2が光ファイバ11を押す一つ目の作用点、クランプ部2が駆動体(第1のカム機構71)を押す二つ目の作用点、第5の付勢部材(
図29中の符号45を参照)がクランプ部を押す力点の各々のバランスが状況によって変化する。このため、クランプ取付台は傾いた(捩る)方向に力が働きやすく、クランプ部可動機構には捩りに強いスライドガイド機能、あるいはリニアベアリングのような部材を設けなければ、取付台の動きがスムーズにならず、このような機構、部材を用いた場合には、補強加熱装置を大型化させるという問題があった。
本実施形態においては、左右一対のクランプ部2A、2Bの開閉可動側を、回転支点を中心に回動運動するレバー状部材から構成することにより、装置全体を小型化することが可能となる。
【0151】
また、本実施形態においては、第1の実施形態でも説明したように、左右一対のクランプ部2A、2Bの開閉可動側の駆動にカム機構を用い、
図4や
図29などに示すように、第1のカム機構71によって駆動する構成とすることが好ましい。また、このような構成において、回転支点と左右一対のクランプ部2A、2Bとの間の位置に第1のカム機構71を配置することで、装置全体をさらに小型化することが可能となる。
【0152】
また、
図29に示すように、左右一対のクランプ部2A、2Bで光ファイバ11を把持するための第5の付勢部材45を、クランプ取付台である第1の作動部材81の回転支点81aに設置したコイルばねなどの弾性部材から構成することも可能である。
図4や
図29に示すような、左右一対のクランプ部2A、2Bの開閉可動側が取り付けられる第1の作動部材(クランプ取付台)81は、弾性部材あるいは磁力部材からなる第5の付勢部材45によって押圧されるが、クランプ取付台である第1の作動部材81の位置によって押圧力の変動が少ない状態を得るためには、上述のような、可動ストロークと比較して全長の長い圧縮コイルばねが必要となる。しかしながら、全長の長い圧縮コイルばねを用いた場合、装置全体が大型化するという問題がある。
これに対し、上述のように、コイルばねからなる第5の付勢部材45を回転支点81aに設置し、この回転支点81aを中心とした回動作動を利用することで、広い可動範囲において、一定の押圧力を得ることが可能になり、補強加熱装置の小型化が可能となる。
【0153】
また、本実施形態では、左右一対のクランプ部2A、2Bの開閉可動側と、一方のヒータ3Aを、同一の駆動源であるモータ6で駆動する構成を採用できる。このように、一方のヒータ3Aと共通の駆動源であるモータ6を利用して開閉可動側の各クランプ部を作動させることで、装置として搭載する駆動源が一つだけで済むので、補強加熱装置の小型化が可能となる。
さらに、本実施形態では、第1〜第3のカム機構71、72、73が同一の駆動源であるモータ6によって駆動されることにより、一方のクランプ部2Aを、光ファイバ11に対して引張力を付加するように動作させる構成とすることが可能である。
【0154】
また、本実施形態では、
図4に示す例のように、左右一対のクランプ部2A、2Bの開閉可動側と、一方のヒータ3Aを、同軸で共通のカムシャフト7上に設けられる各カム機構によって作動させる構成とすることができる。このような場合、図示例のように、1本のカムシャフト7上に、左右一対のクランプ部2A、2Bの開閉可動側作動用である第1のカム機構71と、一方のヒータ3Aの作動用である第3のカム機構73を、それぞれ2箇所に配置することにより、以下に示すような効果が得られる。
(1)1本のカムシャフトで全ての可動体を駆動できるため、各駆動ユニット内に配置する駆動用部材、あるいは各ユニットの駆動用部材を連結する連結用部材が不要となる。これにより、補強加熱装置の小型化が可能となる。
(2)それぞれのカム機構の位相をずらずことで、クランプ部開閉の順序を、わずか一部材で制御することが可能となる。これにより、補強加熱装置の小型化が可能となる。
【0155】
また、本実施形態では、一方のクランプ部2Aの前進ストッパあるいは後退ストッパを、駆動源であるモータ6によって作動させることができる。上述したように、左右一対のクランプ部2A、2Bの少なくとも一方を光ファイバ11の長さ方向で可動とし、後退ストッパである第2のカム機構72を、カムシャフト7を介してモータ6で駆動することにより、以下に示すような効果が得られる。
(1)前進ストッパあるいは後退ストッパの退避を作業者の指で操作する必要がなくなるため、人の指で開閉するのに適した形状に設計する必要が無い。すなわち、退避機構を装置の表面に出す必要がなく内部に収納できるため、補強加熱装置の小型化が可能となる。
(2)補強加熱装置を用いて作業を行うためには、光ファイバをセットしてからクランプ部を閉め、光ファイバにテンションを掛けて前進可動範囲と後退可動範囲を確保し、ヒータを押圧して熱収縮させるという順序で作業を行う必要がある。しかしながら、習熟度が低い作業者では、操作ミスが発生する可能性がある。本実施形態のように、前進ストッパあるいは後退ストッパの退避動作を自動化することで、操作ミスの防止が可能となる。
【0156】
さらに、本実施形態では、上述した左右一対のクランプ部2A、2Bの開閉可動側と、一方のヒータ3Aに加え、上記の後退ストッパである第2のカム機構72あるいは図示略の前進ストッパを、同一の駆動源であるモータ6で可動に構成することができる。このように、左右一対のクランプ部2A、2Bの開閉可動側や一方のヒータ3Aと共通の駆動源であるモータ6を利用して各ストッパを作動させることで、装置として搭載する駆動源が一つだけで済むので、補強加熱装置の小型化が可能となる。
【0157】
また、
図4に示す例のように、左右一対のクランプ部2A、2Bの開閉可動側と、一方のヒータ3Aと、各ストッパを、同軸で共通のカムシャフト7上に設けられる各カム機構によって作動させる構成とすることができる。図示例では、1本のカムシャフト7上に、左右一対のクランプ部2A、2Bの開閉可動側作動用である第1のカム機構71と、一方のヒータ3Aの作動用である第3のカム機構73を、それぞれ2箇所に配置し、さらに、後退ストッパである第2のカム機構72を配置することにより、以下に示すような効果が得られる。
(1)1本のカムシャフトで全ての可動体を駆動できるため、各駆動ユニット内に配置する駆動用部材、あるいは各ユニットの駆動用部材を連結する連結用部材が不要となる。これにより、補強加熱装置の小型化が可能となる。
(2)それぞれのカム機構の位相をずらずことで、クランプ部開閉の順序を、わずか一部材で制御することが可能となる。これにより、補強加熱装置の小型化が可能となる。
【0158】
このように、本実施形態の補強加熱装置によれば、当該補強加熱装置に適正化されたカムシャフト7を1本だけ設計するだけでよいので、補強加熱装置の小型化を図ることが可能となる。
【0159】
さらに、本実施形態では、補強加熱装置を開閉するための蓋部10と、弾性部材あるいは磁力部材によって蓋部10を閉める力を付加する第6の付勢部材46と、第1〜第3のカム機構71〜73と同軸のカムシャフト7上に設けられるか、あるいは、カムシャフト7に平行な他のカムシャフト(図示略)上に配置された第4のカム機構74と、第4のカム機構74の変位によって、第6の付勢部材46の付勢力が蓋部10を閉めるように作用させる機構として第4の作動部材84を備える構成も採用できる。そして、同一のモータ6が、第1〜第4のカム機構71〜74により、一対のクランプ部2A、2B、ヒータ3、および、蓋部10に上述した各付勢部材を作用させる構成とすることができる。
この場合、第4のカム機構74を、第4の作動部材84に対して、例えば、ばねやゴム、スポンジなどの弾性部材や、永久磁石、電磁石などの磁力部材を介して変位させることで、蓋部10の開閉動作を行う構成も採用できる。
【0160】
上記構成を採用することにより、以下のような効果が得られる。
(1)補強加熱装置を一定時間使用しない場合であっても、蓋部が閉じることで、雨水などが装置内部に浸入することがない。
(2)補強加熱装置を一定時間使用しない場合であっても、蓋部が閉じることで、ごみや粉塵などが装置内部に浸入することがない。
(3)加熱開始とともに蓋部が閉じることで、誤って、内部のヒータに作業者の指が接触して火傷するのを防止できる。
【0161】
なお、上記構成の蓋部10は、加熱中にスリーブ12の収縮進行状態を目視で確認することができるように、透明材料から構成することが望ましい。
【0162】
なお、上述した各作動部材の回転支点軸は、カムシャフト7の場合と異なり、全ての作動部材で共通(同軸)である必要はない。また、全ての作動部材を、回転支点を中心とした回動運動とする必要はなく、適宜、選択して作用可能である。
【0163】
また、本実施形態では、さらに、左右一対のクランプ部2A、2B、上述の一方のヒータ3A、後退ストッパあるいは前進ストッパ、蓋部10などを、モータ6を共通の駆動源として、1本のカムシャフト7に備えられる各カム機構によって駆動させることができる。すなわち、共通の駆動源であるモータ6により、左右一対のクランプ部2A、2Bを、光ファイバ11を把持するように動作させるとともに、一方のクランプ部2Aを光ファイバ11に対して引張力を付加するように動作させ、また、一方のヒータ3Aを、スリーブ12を挟んで押圧するように動作させ、さらに、蓋部10の開閉動作を行う構成とすることも可能である。
【0164】
上述のように、一つのモータ6で全ての機能を果たすことで、補強加熱装置全体の小型化が可能となる。
また、上記各機構を1本のカムシャフト7で駆動することにより、各駆動機構内に配置する駆動用部材や、各機構の駆動用部材を連結する連結用部材が不要となるので、装置全体を小型化することが可能となる。
【0165】
また、
図28(a)、(b)に示すように、第3のカム機構73の近傍には、カムシャフト7の回転位置を検出するための半円板91Aとフォトセンサ91Bが備えられている。また、
図4に示す例においては、全ての作動部材を、各回転支点を中心として回動運動するレバー状の部材から構成している。また、蓋部10の開閉に用いる弾性部材46や、左右一対のクランプ部2A、2Bの開閉に使用する第5の付勢部材45(
図29参照)としてねじりコイルばねを用いるとともに、一方のヒータ3Aの開閉に用いる第2の付勢部材42にはダブルトーションばねを用い、また、一方のクランプ部2Aの光ファイバ11の長さ方向で引張力を付加する第1の付勢部材41には圧縮コイルばねを用いている。
【0166】
ここで、
図23は、本実施形態の補強加熱装置1の正面図であり、この
図23中に示す断面指示線A−A〜E−Eは、それぞれ、
図24(a)、(b)〜
図28(a)、(b)に示す断面図の破断位置を示すものである。そして、
図24〜
図28においては、以下の各部分の位置において各々の動作を行う状態を示している。
(1)A−A(
図24(a)、(b)):一方のヒータ3Aを第3のカム機構73で開閉する際の動作。
(2)B−B(
図25(a)、(b)):一方のクランプ部2Aを第1のカム機構71で開閉する際の動作。一方のクランプ部2Aは、光ファイバ11の長さ方向でスライド移動できる構成であるため、
図25(a)、(b)中に示す例においては、回転支点81aの位置が高くなっている。
(3)C−C(
図26(a)、(b)):他方のクランプ部2Bを第1のカム機構71で開閉する際の動作。
(4)D−D(
図27(a)、(b)):蓋部10を第4のカム機構74で開閉する際の動作。
(5)E−E(
図28(a)、(b)):一方のヒータ3Aを第3のカム機構73で開閉する際の動作。
図28(a)、(b)中においては、第3のカム機構73の手前側に、カムシャフト7の回転位置を検出するための半円板91Aおよびフォトセンサ91Bが配置されている。
【0167】
図24(a)、(b)〜
図28(a)、(b)に示すように、カムシャフト7に設けられる各カム機構によって各々の作動部材が駆動されることにより、左右一対のクランプ部2A、2Bの開閉可動側、一方のヒータ3A、蓋部10などが、それぞれ、所定のタイミングで駆動されることがわかる。
【0168】
(その他の変形例)
以下、本実施形態のその他の変形例について説明する。
【0169】
本実施形態においては、上述した
図4などに示す構成において、左右一対のクランプ部2A、2Bの少なくとも一方の前進可動範囲Z(
図6参照)または後退可動範囲K(
図6参照)を制限するための、前進ストッパあるいは、後退ストッパからなる位置制限部材を備える構成とすることもできる。この位置制限部材は、例えば固定側のクランプ部の前進可動範囲または後退可動範囲を制限する。この位置制限部材は、光ファイバ11に付加する引張力を適正な範囲にする機能を有する。
そして、第1〜第3のカム機構71〜73と同一のカムシャフト7上に配置されるか、あるいは、カムシャフト7に平行な他のカムシャフト(図示略)上に配置された、モータ6の制御によって回転駆動される第5のカム機構(図示略)と、該第5のカム機構の変位が、上記の前進ストッパあるいは、後退ストッパからなる位置制限部材を移動させるように制御する機構とを備え、同一のモータ6が、第1〜第3のカム機構71〜73および第5のカム機構(図示略)により、クランプ部2A、2B(引張するように作用させる機構も含む)、ヒータ3、および、上記の位置制限部材を作用させる構成としてもよい。
【0170】
本実施形態は、第1および第3のカム機構71、73と同一のカムシャフト7上に配置されるか、あるいは、カムシャフト7に平行な他のカムシャフト上に配置された第2のカム機構と、該第2のカム機構の変位が、上記の前進ストッパあるいは、後退ストッパからなる位置制限部材を移動させるように制御する機構とを備えた構成としてもよい。第2のカム機構は、例えばモータ6の制御によって回転駆動される。
本実施形態においては、同一のモータ6が、第1のカム機構71、第3のカム機構73、および第2のカム機構により、クランプ部2A、2Bとヒータ3の移動を、第5および第2の付勢部材により制御し、さらに、同一のモータが、第2のカム機構によって、引張機構(光ファイバに引張力を付加する機構)の移動を、上記の位置制限部材で制御する構成としてもよい。
【0171】
また、上記構成において、さらに、左右一対のクランプ部2A、2Bの少なくとも一方の前進可動範囲Zまたは後退可動範囲Kを制限するための第1の付勢部材41、あるいは、該第1の付勢部材と反対方向の引張力を付加する第3の付勢部材(図示略)と、第1〜第3のカム機構71〜73と同一のカムシャフト7上に配置されるか、あるいは、カムシャフト7に平行な他のカムシャフト(図示略)上に配置された、モータ6の制御によって回転駆動される第6のカム機構(図示略)と、この第6のカム機構の変位が、第1の付勢部材41、あるいは、第3の付勢部材の付勢力を強める、あるいは、弱めるように制御する機構(付勢力制御機構)と、を備え、同一のモータ6が、第1〜第3のカム機構71〜73および第6のカム機構(図示略)により、クランプ部2A、2B(引張する機構も含む)、ヒータ3、第1または第3の付勢部材41、43を制御する機構(付勢力制御機構)を制御する構成としてもよい。
【0172】
また、上記構成においては、光ファイバ11に引張力を付加する第1の付勢部材41あるいは第3の付勢部材(図示略)と、上述の第2のカム機構(図示略)と、上述の第6のカム機構(図示略)と、第2のカム機構の変位が第1の付勢部材41の引張力による光ファイバ11の引張を制御する機構と、第6のカム機構の変位が、前記第1の付勢部材、あるいは、前記第3の付勢部材の付勢力を強めるよう制御する付勢力制御機構、あるいは、弱めるよう制御する付勢力制御機構と、を備えた構成としてもよい。
この場合、同一のモータ6が、前記第1〜第3のカム機構および前記第6のカム機構により、前記クランプ部、前記引張機構、前記ヒータ、および前記付勢力制御機構を制御することが望ましい。
【0173】
図45に示す補強加熱装置は、第6のカム機構76が設けられている点と、付勢機構41(第1の付勢部材)および付勢機構43(第3の付勢部材)を有する点と、可動後壁部131を有する点で、
図6〜
図11に示す補強加熱装置と異なる。
第6のカム機構76は、円板状に形成され、カムシャフト7に垂直な面に対して傾いて形成されている。第6のカム機構76は、例えば、カムシャフト7に垂直な面に対して0°を越え、90°未満の角度で傾斜している。
【0174】
可動後壁部131は、クランプ部2A(固定側)の後面に対面する位置に設けられ、前後方向(図中左右方向)に移動可能である。可動後壁部131は、スライド機構21等により移動可能に構成してよい。
可動後壁部131の上面131aには、第6のカム機構76の下部76aが挿入される凹部131bが形成されている。このため、可動後壁部131は、第6のカム機構76の下部76aの前後方向(図中左右方向)の位置に応じた位置に配置される。
例えば、第6のカム機構76の下部76aがクランプ部2Aに近い場合には可動後壁部131もクランプ部2Aに近接し(
図45参照)、第6のカム機構76の下部76aがクランプ部2Aから遠い場合には可動後壁部131もクランプ部2Aから大きく離れて位置する(
図46参照)。
【0175】
付勢機構43(第3の付勢部材)は、クランプ部2Aの固定側2Aaの後端面、および可動後壁部131の前面にそれぞれ設けられた付勢部材43a、43bを有する。
付勢部材43a、43bは、永久磁石や電磁石などの磁力部材であって、互いに同じ磁極をもつ。図示例では、付勢部材43a、43bはいずれもS極である。
付勢機構43は、付勢部材43a、43b間の斥力によってクランプ部2Aを付勢し、光ファイバ11に加えられる引張力を調整する。
【0176】
付勢機構41(第1の付勢部材)は、クランプ部2Aの固定側2Aaの前端面、およびヒータ取付台31Bにそれぞれ設けられた付勢部材41a、41bを有する。付勢部材41a、41bは、互いに同じ磁極をもつ。図示例の付勢部材41a、41bはいずれもN極である。
【0177】
図45に示す状態では、クランプ部2A,2Bおよびヒータ3A,3Bは、第1のカム機構71と第3のカム機構73により、それぞれ押し開けられている。
第6のカム機構76は、可動後壁部131に近づくほどクランプ部2Aに近づくように傾斜した姿勢であるため、下部76aはクランプ部2Aに近い位置にある。そのため、可動後壁部131はクランプ部2Aに近接した位置にある。
可動後壁部131がクランプ部2Aに近いため、付勢部材43a、43b間の斥力により、クランプ部2Aには、ヒータ取付台31Bに近づく方向(図中右方)の力が作用する。
クランプ部2Aには、付勢部材41a、41b間の斥力により、ヒータ取付台31Bから離れる方向(図中左方)の力も作用する。
【0178】
図46に示すように、カムシャフト7が回転するのに伴って第1のカム機構71が変位し、クランプ部2Aの開閉可動側2Abが固定側2Aaに近づく方向に移動し、開閉可動側2Abと固定側2Aaとが光ファイバ11を把持する。
また、第3のカム機構73が変位するのに伴って、ヒータ取付台31Aがヒータ取付台31Bに近づき、ヒータ3A、3Bによってスリーブ12が挟まれ、スリーブ12が加熱収縮する。
【0179】
この際、第6のカム機構76は、可動後壁部131に近づくほどクランプ部2Aから離れるように傾斜した姿勢となるため、可動後壁部131はクランプ部2Aから大きく離れた位置に移動する。
これによって、付勢部材43a、43bによる斥力が弱くなる一方、付勢部材41a、41bによる斥力に大きな変化はないため、クランプ部2Aによって光ファイバ11に付与される引張力は増大する。
【0180】
図45に示すように、カムシャフト7がさらに回転すると、第3のカム機構73によりヒータ取付台31Aがヒータ取付台31Bから離れる方向に移動し、スリーブ12が解放されるとともに、第1のカム機構71によって、クランプ部2Aの開閉可動側2Abが固定側2Aaから離れる方向に移動し、光ファイバ11の把持が解除される。
【0181】
第1の付勢部材41は、例えば左右一対のクランプ部2A、2Bの少なくとも一方の固定側(または開閉可動側)のクランプ部の前進可動範囲Zまたは後退可動範囲Kを制限する機能を有していてもよい。
第2のカム機構は、例えば第1および第3のカム機構71、73と同一のカムシャフト7上に配置されるか、あるいは、カムシャフト7に平行な他のカムシャフト(図示略)上に配置されていてよい。第2のカム機構は、モータ6の制御によって回転駆動される構造とすることができる。
本実施形態においては、同一のモータ6が、第1および第3のカム機構71、73、および第2のカム機構により、クランプ部2A、2B、ヒータ3の移動を、第5および第2の付勢部材により制御し、さらに、同一のモータ6が、第2のカム機構によって、引張機構(光ファイバに引張力を付加する機構)の移動を、第1の付勢部材または第3の付勢部材で制御する構成としてもよい。
【0182】
上記のように、光ファイバ11に付加する引張力を調整するための各付勢部材を移動できる構成とすることにより、小型の構成で、適宜引張力を適正化することが可能となる。
また、上記構成において、さらに、前記左右一対のクランプ部の少なくとも一方の前進可動範囲または後退可動範囲を制限する構成も採用可能である。
【0183】
上記いずれの構成を採用した場合でも、補強加熱装置全体を小型化できる効果が顕著に得られる。
【0184】
(作用効果)
以上説明したような本発明に係る第2の実施形態の光ファイバ接続部補強加熱装置によれば、左右一対のクランプ部2A、2B、一方のヒータ3A、蓋部10などを、同一の駆動源であるモータ6を使用して、同軸で設けられた各カム機構によって駆動する構成なので、補強加熱装置全体を小型化することが可能となる。
また、上記の第1の実施形態の場合と同様、スリーブ12を2つのヒータ3A、3Bで挟んで加熱収縮させる際に、光ファイバ11に付加される過剰な張力を解放することで光ファイバ11の破断や長期信頼性の低下が生じるのを防止し、また、装置が大型化することを防止できる。
これにより、信頼性が高く、短時間でスリーブ12を加熱収縮させることができるとともに、操作性に優れた光ファイバ接続部補強加熱装置1が実現できる。
【0185】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記実施形態では、第5の付勢部材45は一対のクランプ部2A、2Bの両方に使用されているが、クランプ部2A、2Bの一方(すなわち片側)にのみ第5の付勢部材45を使用してもよい。
また、上記実施形態では、2つのヒータ3(3A、3B)が用いられているが、ヒータの数は3以上でもよい。
本発明の光ファイバ接続部補強加熱装置は、第2の付勢部材(42)によるスリーブへの押圧力が、第1の付勢部材(41)による光ファイバへの引張力よりも大きく設定され、第1の付勢部材(41)によって光ファイバに引張力を加えた状態において、引張力を付加する一方のクランプ部(2A)が、光ファイバの長さ方向においてヒータ(3)から離間する方向の後退可動範囲が確保されているとともに、ヒータ(3)側に移動できる前進可動範囲が確保されていることにより、第2の付勢部材(42)によってヒータ(3)でスリーブを押圧することで付加される光ファイバへの引張力を減殺する方向へ一方のクランプ部を移動させる。