特許第5663712号(P5663712)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5663712
(24)【登録日】2014年12月19日
(45)【発行日】2015年2月4日
(54)【発明の名称】内視鏡装置用補助具
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/00 20060101AFI20150115BHJP
【FI】
   A61B1/00 300B
【請求項の数】1
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-141993(P2013-141993)
(22)【出願日】2013年7月5日
(62)【分割の表示】特願2009-61880(P2009-61880)の分割
【原出願日】2009年3月13日
(65)【公開番号】特開2013-188638(P2013-188638A)
(43)【公開日】2013年9月26日
【審査請求日】2013年7月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】504150461
【氏名又は名称】国立大学法人鳥取大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000187
【氏名又は名称】特許業務法人ウィンテック
(72)【発明者】
【氏名】植木 賢
(72)【発明者】
【氏名】大谷 英之
【審査官】 増渕 俊仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−93247(JP,A)
【文献】 特開2006−334397(JP,A)
【文献】 特開2004−65679(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00−1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部と根本部を有し、根本部を内視鏡装置の先端部側を覆うように取り付けて使用するための環状キャップと、
前記環状キャップの外周側に沿って取り付けられた前記環状キャップの根本部の径よりも細径の管路からなり、出口端が前記環状キャップの先端部に位置し、入口端が前記環状キャップの根本部を超えて長く延在された端部に形成されている処置具挿入管路と、
を備える内視鏡装置用補助具であって、
前記処置具挿入管路には、出口端から入口端側まで連続的に、前記処置具挿入管路の内部と外部との間を連通するスリットが形成されていることを特徴とする内視鏡装置用補助具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大腸内視鏡検査等に使用する内視鏡装置及びポリープ等の一括回収用処置具と共に使用するための内視鏡装置用補助具に関し、特に大腸内視鏡検査等において大腸内視鏡装置を抜いたり再挿入したりすることなしに多発ポリープ等の複数個の組織を容易にかつ安全に切除することができ、しかも、これらのポリープ等を一括して回収することができる内視鏡装置及びポリープ等の一括回収用処置具と共に使用するための内視鏡装置用補助具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から挿入部を有する内視鏡装置を用いて大腸内視鏡検査が行われており、この大腸内視鏡検査に際してポリープ等の病変部が発見された場合には、大腸内視鏡装置と組み合わされて使用される処置具によりポリープ等の病変部を切除することが普通に行われている。この切除したポリープ等は組織診断等のためには外部に取り出す必要がある。
【0003】
従来、上行結腸等の深部大腸に5mmを超えるポリープがあった場合、ポリープ切除術を行い、取れたポリープをいわゆる3脚という処置具を大腸内視鏡装置の各種処理具挿入口から出して捕獲し、そのまま大腸内視鏡装置を引き抜いて回収して組織診断を行うことが行われていた。しかしながら、大腸内のポリープは1箇所のみでなく複数箇所同時に発生することが多く、大腸内視鏡を引き抜く際に別途大きなポリープが見つかった場合には、大腸内視鏡再度挿入してポリープを切除及び回収する必要があった。この時、大腸内には空気が多くなり、内視鏡の再挿入に時間がかり、患者の負担も大きいという問題点があった。
【0004】
このポリープが非常に小さい場合には、内視鏡の各種処理具挿入口から吸引トラップにより吸引して回収することが可能であるが、その際にポリープは座滅する可能性があり、また、1cmを超える大きなポリープは各種処理具挿入口内に入らないため回収することはできなかった。
【0005】
一方、このような多発ポリープ等をそれぞれ切り取った後、一括して回収する処置具として既に回転式の回収ネット装置が市販されている。ここで、この回収ネット装置の具体的構成を図7を用いて説明する。なお、図7は市販のポリープ等の回収ネット装置を示す平面図である。このポリープ等の回収ネット装置80は、軟質の繊維より作製されたネット部81を備え、このネット部81の開口付近にはスネア状の硬質の弾性ワイヤからなるネットワイヤ82が通されて、ネット部81の開口部の形状がポリープを受け入れ易いようにほぼ長円形状になるように保持されている。
【0006】
このスネア状のネットワイヤ82の末端83には更にスライドワイヤ84が接続され、このスライドワイヤ84は細長い可撓性のシース85及びこのシース85に一体に取り付けられている本体86の内部を経てネットリング87にまで延びている。また本体86には前記シース85と指掛けリング88とが一体に構成されており、この本体86と指掛けリング88との間にはスライダ89が摺動可能に取り付けられている。このスライダ89には、両端に指を挿入する2つのリング90a及び90bが設けられ、また中央部にネットリング87を取り付け固定するためのネットリング取付部91が設けられている。
【0007】
前記回収ネット装置80の使用方法は次のとおりである。まず、別途被験者の大腸内視鏡内に挿入された処置具により1ないし複数のポリープの切除が行なわれる。次いで、スネア状のネットワイヤ82の先端を開いてネット部81の開口端部を開いた状態で支持するように取り付けた後にネットワイヤ82の先端を閉じる。そうすると、ネット部81はスネア状のネットワイヤ82から外れない状態となる。その後にスライドワイヤ84のネットリング87をネットリング取付部91に取り付けた後、2つのリング90a及び90bにそれぞれ人差し指及び中指を、また指かけリング88に親指をかけてスライダ89を指掛けリング88側へ移動させる。そうするとスネア状のネットワイヤ82の末端がシース85内に引き込まれるので、シース状のネットワイヤ82の中央部が閉じて細長い形状となり、大腸内視鏡の各種処理具挿入口内に挿入できる状態となる。
【0008】
この状態で回収ネット装置80をネット部81側より被験者の肛門より挿入された大腸内視鏡装置の鉗子等の各種処理具挿入口(図示せず)より挿入し、ネット部81が大腸内の所定位置に達したときにスライダ89を最初の位置にまで戻す。そうすると、スネア状のネットワイヤ82は自身の弾力により元の状態に戻るので、ネット部81の開口部が開く。次いで、本体86を回転操作することにより1ないしは複数のポリープをネット部81内へ採取し、その後再度スライダ89を指掛けリング88側へ移動させるとネット部81の開口端が閉じるので、ネット部81内に1ないしは複数のポリープが採取された状態となる。
【0009】
この段階で大腸内視鏡装置を被験者の肛門より引き出すと、ネット部81もそれと一緒に引き出されるので、1ないし複数のポリープを一度の操作で取り出すことができる。この回収ネット装置80を使用することにより、バラバラになりやすい病変部の組織も安全に確実に回収でき、また、回収した組織の座滅も防止できるという効果を奏するものである。
【0010】
しかしながら、上記の市販の回収ネット装置80を使用する場合は、予めポリープ等を切除してこの切除した多数のポリープ等を回収前に1箇所に集めなければならず、しかも、一旦ポリープ等を回収ネット装置80内に回収して大腸内視鏡装置を引き出す際に新たなポリープ等が発見されても、この回収ネット装置80のシース85が大腸内視鏡装置の各種処理具挿入口内に挿入されているために、この新たに発見されたポリープ等を再度切除するための処置具を挿入することができないという問題点が存在していた。もちろん、大腸内視鏡装置に各種処理具挿入口を複数個設けることができれば、回収ネット装置80のシース85が挿入されている各種処理具挿入口とは異なる各種処理具挿入口より所定の処置具を挿入することができるようになるが、このような構成は大腸内視鏡装置の外径が大きくなりすぎるために被験者に与える苦痛が大きくなるので実用的ではない。
【0011】
そこで、本発明者等は上記のような従来のポリープ等の回収処置具が有する問題点を解決した新規なポリープ等の一括回収用処置具を開発している(下記特許文献1参照。以下、ここに記載の発明を「先行発明」という。)。この先行発明のポリープ等の一括回収具を図8及び図9を用いて説明する。
【0012】
なお、図8Aは先行発明のポリープ等の一括回収用処置具の回収ネット及び糸と第1の可撓管とを組み合わせた一部断面図であり、図8Bは第2の可撓管とスネアとを組み合わせた図であり、図8C図8A及び図8Bに示された部材を組み合わせた状態の斜視図である。また、図9Aは1箇所でポリープ等を回収した状態を表す図であり、図9Bは2箇所でポリープ等を回収した状態を示す図である。
【0013】
先行発明のポリープ等の一括回収用処置具10は、図8Aに示すように、柔軟な一端が開口された回収用ネット12aを有しており、この回収用ネット12aの開口端14には極細の環状に通された糸、例えば極細のテグスからなる環状リング16が設けられている。この環状リングの任意位置には例えば極細のテグスからなる糸18aの一端部が結びつけられており、この糸18aは、ネット止め具20a、20bを介して可撓性の第1のシース22内を通され、この第1のシースの途中に設けられている開口24から更に外部に延びている。
【0014】
ネット止め具20a、20bは、糸18aに摺動可能に設けられており、この糸18aが引っ張られたときに回収用ネット12aの開口端14を絞って閉鎖してその状態を維持する程度の抵抗を有するようになされており、さらにその大きさは第1のシース22の外径よりも大きくなっている。したがって、図5Aに示した状態で糸18aを引っ張ると、ネット止め具20a、20bは第1のシース22の開口端に引っかかり、その後、環状リング16がネット止め具20a、20b内に引き込まれて回収用ネット12aの開口端14が絞られて閉鎖される。
【0015】
さらに、先行発明においては、図8Bに示したように、可撓性の第1のシース22より大径でありかつネット止め具20a、20bよりも大径の可撓性の第2のシース26を有し、この可撓性の第2のシース26内には周知の弾性部材からなるスネア28が挿入され、このスネア28の先端は分離されており、末端は第2のシース26の端部より外部へ導出されている。図8Aに示されている可撓性の第1のシース22を図8Bに示されている可撓性の第2のシース26内に挿入して、スネア28を回収用ネット12aの開口端に通すと、図8Cに示したようなポリープ等の一括回収用処置具10が得られる。この状態では、スネア28の弾性力により回収用ネット12aの開口端14は開いた状態で保持される。そして、使用前には通常この状態に組み立てて保存される。
【0016】
このポリープ等の一括回収用処置具10を使用する際には、スネア28の端部36を引っ張り、また、糸18aはたるまない程度に同時に引っ張ると、スネア28は第2のシース26内に入り、それと共に第1のシース22及びネット止め具20a、20bも第2のシース内に入るが、スネア28の末端32が第2のシース26内に入るとスネア28の幅が狭まって回収用ネット12aの開口端14の形状は細長くなる。この状態で一括回収用処置具10を図9Aに示したような従来例のものと同様の内視鏡装置40の各種処理具挿入口44より挿入し、大腸の所定位置まで送り込む。なお、内視鏡装置40には、操作部42、鉗子等の各種処置具挿入口44、可撓管46、処置具挿入管路47、各種処置具出口開口48及び観察窓、照明窓等の各種先端開口部49が設けられているが、これらの構成は全て周知のものであるので、詳細な説明は省略する。
【0017】
次いで、第2のシース26の先端が内視鏡装置40の各種処置具出口開口48より出た状態でスネア28の端部36を押し込むことによってスネア28が第2のシース26の開口から出るようにすると、スネア28はその弾性力により元の形状に戻るので、回収用ネット12aの開口端14は開いた状態となり、ポリープ等を回収する準備が整う。
【0018】
所定の操作によりポリープ等を回収用ネット12a内に回収した後、糸18a及びスネア28の端部36を同時に引っ張ると、ネット止め具20a、20bは第1のシースの入り口端で引っかかり、次いで、スネアの先端30が開いているので、スネア28が回収用ネット12aの開口端から抜け、それに引き続いて環状リングがネット止め具20a、20bを経て第1シース22内に引き込まれるので、回収用ネット12aの開口端14が絞られ、回収用ネット12a内に回収されたポリープ等が保持される。
【0019】
この状態で、第1のシース22、第2のシース26及びスネア28を大腸内視鏡の各種処理具挿入口44より引き抜くと、図9Aに示したように、ポリープ等を保持した回収用ネット12aは糸18aにつながれたまま大腸内に残ったままとなる。この状態では、内視鏡装置40の処置具挿入管路47内には糸18aのみしか残っていないので、この内視鏡装置40を取り出す際に新たなポリープ等が発見された場合、各種処置具挿入口44より新たに鉗子等を挿入して再度ポリープ等を切除することができる。その後、鉗子等を除去した後、再度図9Cに示したようなポリープ等の一括回収用処置具10を挿入すると、再度挿入された回収用ネット12b内にポリープ等を回収することができる。
【0020】
そして、この状態で第1のシース22、第2のシース26及びスネア28を内視鏡装置40の各種処置具挿入口44より引き抜くと、図9Bに示したように、先のポリープ等を保持した回収用ネット12a及び12bを残したまま、ポリープ等を保持した回収用ネット12a及び12bがそれぞれ糸a8a及び18bにつながれて大腸内に残った状態となる。このような処置を必要な回数だけ繰り返した後、内視鏡装置40及び糸18a、18b・・・を同時に引き抜くと、内視鏡装置40の先端開口部の後にポリープ等を保持した回収用ネット12a、12b・・・を数珠繋ぎに連なった状態で取り出すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】特許第4130766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
上記特許文献1に開示されている先行発明のポリープ等の一括回収用処置具10によれば、1ないし複数のポリープを一度の操作で回収した場所ごとに区別して取り出すことができ、バラバラになりやすい病変部の組織も安全に確実に回収でき、また、回収した組織の座滅も防止できるという効果を奏するだけでなく、患者に与える影響も非常に少ないという優れた効果を奏することができる。
【0023】
しかしながら、上記先行発明のポリープ等の一括回収用処置具10を用いて一旦ポリープ等を保持した回収用ネット12aを残したまま次の操作を行なおうとすると、図10の内視鏡写真に示すように、回収したポリープ等を保持している回収用ネット12a(なお、図10においては、回収用ネット12aはより奥の方に位置しているため、表れていない。)及びこれに連なる糸18が内視鏡装置の対物レンズの前に存在しているため、視野の邪魔になる場合があり、また、次のポリープを切除する際に糸が邪魔になって切除し難くなったり、糸を切断してしまうおそれがあるという問題点が存在していた。
【0024】
この場合、回収したポリープ等を保持している回収用ネット12a及びこれに連なる糸18が内視鏡装置40の先端よりも手前側(肛門側)に存在するようにすれば、上述の問題点は解決し得るが、従来の内視鏡装置40では、内視鏡装置40の先端に形成されている開口から糸が導出されているため、回収したポリープ等を保持している回収用ネット12a及びこれに連なる糸18を内視鏡の先端より手前側に配置させることが困難であった。
【0025】
本発明は上述のような従来例の問題点を解決すべくなされたものであって、例えば大腸内視鏡検査等において大腸内視鏡を抜いたり再挿入することなしに多発ポリープ等の複数個の組織を容易にかつ安全に切除することができ、しかも、これらのポリープを一括して回収することができる内視鏡装置及びポリープ等の一括回収用処置具と共に使用するための内視鏡装置用補助具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
【0027】
【0028】
【0029】
【0030】
【0031】
【0032】
【0033】
【0034】
【0035】
【0036】
【0037】
【0038】
【0039】
【0040】
【0041】
【0042】
【0043】
【0044】
上記目的を達成するため、本発明の内視鏡装置用補助具は、先端部と根本部を有し、根本部を内視鏡装置の先端部側を覆うように取り付けて使用するための環状キャップと、
前記環状キャップの外周側に沿って取り付けられた前記環状キャップの根本部の径よりも細径の管路からなり、出口端が前記環状キャップの先端部に位置し、入口端が前記環状キャップの根本部を超えて長く延在された端部に形成されている処置具挿入管路と、
を備える内視鏡装置用補助具であって、
前記処置具挿入管路には、出口端から入口端側まで連続的に、前記処置具挿入管路の内部と外部との間を連通するスリットが形成されていることを特徴とする。
【0045】
本発明の内視鏡装置用補助具は、容易に既製の内視鏡装置に取り付けて使用することができる。しかも、本発明の内視鏡装置用補助具によれば、ポリープ等の回収用ネットに糸が接続されている公知のポリープ等の一括回収用処置具を用いてポリープ等を回収する場合、回収したポリープ等を保持しているネット及びこれに連なる糸が内視鏡装置の視野の邪魔となることが抑制され、また、次のポリープを切除する糸が邪魔になって切除し難くなったり糸を切断してしまうおそれがなくなるので、内視鏡装置を抜いたり再挿入することなしに多発ポリープ等の複数個の組織を容易にかつ安全に切除することができるとともに、これらのポリープ等を一括して回収することができるようになる。
【0046】
【0047】
しかも、スリットが内視鏡装置用補助具の処置具挿入管路の出口端から入口端側まで連続的に形成されていれば、この内視鏡装置用補助具を取り付けた内視鏡装置を体腔内に挿入したままでも、回収したポリープ等を保持しているネットに連なる糸を引っ張ることにより、回収したポリープ等を保持しているネットを処置具挿入管路に形成されているスリットに沿って体腔外まで取り出すことができる。加えて、糸を引っ張るときに、糸が処置具挿入管路内に位置しているので、糸が体組織と接触することがないため、糸が体組織と擦れて体組織を痛めることがなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】参考例1の内視鏡装置を用いて1箇所でポリープ等を回収した状態を表す図である。
図2】参考例1の内視鏡装置を用いて2箇所でポリープ等を回収した状態を示す図である。
図3】参考例2の内視鏡装置を用いてポリープ等を回収した状態及び回収用ネットの移動状態を表す図である。
図4】参考例3の内視鏡装置を用いてポリープ等を回収した状態を表す図である。
図5】参考例4の内視鏡装置を用いてポリープ等を回収した状態を表す図である。
図6】実施例の内視鏡装置用補助具と、これを内視鏡装置に取付た状態を表す図である。
図7】従来のポリープ等の回収ネット装置を示す平面図である。
図8図8Aは先行発明のポリープ等の一括回収用処置具の回収ネット及び糸と第1の可撓管とを組み合わせた一部断面図であり、図8Bは第2の可撓管とスネアとを組み合わせた図であり、図8Cは先行発明のポリープ等の回収ネットの斜視図である。
図9図9Aは先行発明のポリープ等の一括回収用処置具を用いて1箇所でポリープ等を回収した状態を表す図であり、図9Bは2箇所でポリープ等を回収した状態を示す図である。
図10】先行発明を用いて次のポリープ等を回収する際の内視鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下、本発明の内視鏡装置及び内視鏡セットを図面を参照しながら説明するが、以下に示す内視鏡装置及び内視鏡セットは、本発明をこれらのものに限定することを意図するものではなく、本発明は特許請求の範囲に示した技術思想を逸脱することなく種々の変更を行ったものにも均しく適用し得るものである。また、本発明の内視鏡装置及び内視鏡セットで使用するポリープ等の一括回収具は、図8に示したものと実質的に相違はないので、適宜図8を引用すると共に、図8及び図9に示したものと同一の構成部分には同一の参照符号を付与して説明することとする。なお、この明細書における説明のために用いられた各図面においては、各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各部材毎に適宜縮尺を異ならせて表示しており、必ずしも実際の寸法に比例して表示されているものではない。
【0050】
[参考例1]
参考例1にかかる内視鏡装置40Aとして大腸内視鏡装置の場合を例にとって図1及び図2を用いて説明する。なお、図1は参考例1の内視鏡装置を用いて1箇所でポリープ等を回収した状態を表す図である。図2は参考例1の内視鏡装置を用いて2箇所でポリープ等を回収した状態を示す図である。この参考例1の内視鏡装置40Aは、一端側に操作部42と、鉗子等の各種処置具挿入口44と、可撓管46と、可撓管46内に形成された処置具挿入管路47と、各種処置具出口開口48及び観察窓、照明窓等の各種先端開口部49が設けられており、これらの基本的構成は上述した従来例のものと相違はないので、これらの構成の詳細な説明は省略する。
【0051】
参考例1の内視鏡装置40Aが図9Aに示した従来の内視鏡装置40と構成が相違している点は、処置具挿入管路47に、各種処置具出口開口48から各種処置具挿入口44側に向かって、処置具挿入管路47の内部と外部との間を連通する一定長さ、例えば5cmの長さのスリット50aが形成されている点である。このスリット50aの長さは、一旦ポリープ等を保持した回収用ネット12aを内視鏡装置40Aの観察視野外へ移動させることができる長さであればよく、少なくとも2cmあればよい。また、スリット50aの幅は、回収用ネット12aに接続されている極細の糸18aが抵抗なく移動できる幅であればよいが、好ましくは用いる糸18aの太さよりも僅かに幅広とすることが好ましい。
【0052】
この参考例1の内視鏡装置40Aを用いて最初のポリープ等を回収する工程は、上述した先行発明の場合と差異はない。すなわち、図8Cに示したポリープ等の一括回収用処置具10を用い、使用時にスネア28の端部36を引っ張り、また、糸18aをたるまない程度に同時に引っ張って、スネア28を第2のシース26内に挿入させて回収用ネット12aの開口端14の形状を細長くし、この状態で一括回収用処置具10を図1に示したような参考例1の内視鏡装置40の各種処理具挿入口44より挿入し、処置具挿入管路47を経て各種処置具出口開口48から大腸の所定位置まで送り込む。なお、このような内視鏡装置40Aとポリープ等の一括回収用処置具10とを組み合わせたものが本発明の内視鏡セットに対応する。
【0053】
次いで、第2のシース26の先端が内視鏡装置40Aの先端の各種処置具出口開口48より出た状態でスネア28の端部36を押し込むことによってスネア28が第2のシース26の開口から出るようにすると、スネア28はその弾性力により元の形状に戻るので、回収用ネット12aの開口端14は開いた状態となり、ポリープ等を回収する準備が整う。
【0054】
所定の操作によりポリープ等を回収用ネット12a内に回収した後、糸18a及びスネア28の端部36を同時に引っ張ると、ネット止め具20a、20bは第1のシースの入り口端で引っかかり、次いで、スネアの先端30が開いているので、スネア28が回収用ネット12aの開口端から抜け、それに引き続いて環状リングがネット止め具20a、20bを経て第1シース22内に引き込まれるので、回収用ネット12aの開口端14が絞られ、回収用ネット12a内に回収されたポリープ等が保持される。この状態で、第1のシース22、第2のシース26及びスネア28を内視鏡装置40Aの各種処理具挿入口44より引き抜くと、ポリープ等を保持した回収用ネット12aは糸18aにつながれたまま大腸内に残ったままとなる。
【0055】
この内視鏡装置40Aを取り出す際に新たなポリープ等が発見された場合、まず、内視鏡装置40Aを回転させて糸18aがスリット50aの先端部分に位置するようにし、この状態で糸18a引っ張るかあるいは内視鏡装置40Aを押し込むと、糸18aがスリット50a内に挿入され、ポリープ等を保持した回収用ネット12aは、図1に示したように、内視鏡装置40Aの各種先端開口部49よりも手前側に位置するようになる。この状態で内視鏡装置40Aの各種先端開口部49を切除すべき新しいポリープ等の近傍にまで近接させると、ポリープ等を保持した回収用ネット12aをより確実に内視鏡装置40Aの視野外に移動させることができる。
【0056】
この状態では、処置具挿入管路47内には糸18aしか存在していないから、各種処置具挿入口44より新たに鉗子等を挿入して再度ポリープ等を切除することができる。その後、鉗子等を除去した後、再度図8Cに示したようなポリープ等の一括回収用処置具10を挿入すると、図2に示したように、再度挿入されたポリープ等の一括回収用処置具10の回収用ネット12b内にポリープ等を回収することができる。
【0057】
そして、この状態で第1のシース22、第2のシース26及びスネア28を内視鏡装置40Aの各種処置具挿入口44より引き抜くと、先のポリープ等を保持した回収用ネット12a及び12bを残したまま、ポリープ等を保持した回収用ネット12a及び12bがそれぞれ糸a8a及び18bにつながれて大腸内に残った状態となる。このような処置を必要な回数だけ繰り返した後、内視鏡装置40A及び糸18a、18b・・・を同時に引き抜くと、内視鏡装置40Aの先端開口部の後にポリープ等を保持した回収用ネット12a、12b・・・を数珠繋ぎに連なった状態で取り出すことができる。
【0058】
このように、参考例1の内視鏡装置40A及び内視鏡セットによれば、回収したポリープ等を保持しているネット及びこれに連なる糸が内視鏡装置の視野の邪魔とならないようにできるので、次のポリープを切除する糸が邪魔になって切除し難くなったり糸を切断してしまうおそれがなくなり、しかも、内視鏡装置40Aを抜いたり再挿入することなしに多発ポリープ等の複数個の組織を容易にかつ安全に切除することができるようになると共に、容易にこれらのポリープ等を一括して回収することができるようになる。
【0059】
[参考例2]
参考例1の内視鏡装置40Aでは、処置具挿入管路47に、各種処置具出口開口48から各種処置具挿入口44側に向かって、処置具挿入管路47の内部と外部との間を連通する一定長さのスリット50aを形成した例を示した。しかしながら、このスリット50aの長さは、一旦ポリープ等を保持した回収用ネット12aを内視鏡装置40Aの観察視野外へ移動させることができる長さであれば、臨界的意義はなく任意である。
【0060】
そこで、参考例2の内視鏡装置40Bでは、処置具挿入管路47の内部と外部との間を連通するスリット50bを各種処置具出口開口48から各種処置具挿入口44まで連続的に形成した。参考例2の内視鏡装置40Bを図3を用いて説明する。なお、図3は参考例2の内視鏡装置40Bを用いてポリープ等を回収した状態及び回収用ネット12aの移動状態を表す図である。この参考例2の内視鏡装置40Bが参考例1の内視鏡装置40Aと構成が相違する点は、スリット50bの部分のみであるので、図1及び図2に示した参考例1の内視鏡装置40Aと同一の構成部分には同一の参照符号を付与してその詳細な説明は省略する。
【0061】
この参考例2の内視鏡装置40Bによれば、参考例1の内視鏡装置40Aと同様の作用効果を奏する他、図3に示したように、糸18aを更に手前に引くことによって、一旦ポリープ等を保持した回収用ネット12aを任意の位置にまで移動させることができる。そのため、一旦ポリープ等を保持した回収用ネット12aを体腔内の周囲空間が広い場所まで移動させたり、保持したポリープ等が小さい場合には必要に応じて内視鏡装置40Bを引き抜くことなく各種処置具挿入口44の位置まで移動させて直接体腔外へ取り出すこともできる。更には、内視鏡装置40Bを抜いいた後には、糸18aを引っ張るだけで、糸18a及びポリープ等を保持した回収用ネット12aを内視鏡装置40Bの処置具挿入管路47から取り外すことができるようになる。
【0062】
[参考例3]
参考例1及び参考例2の内視鏡装置40Aないし40Bでは、スリット50aないし50bを直接内視鏡装置40Aないし40Bの処置具挿入管路47の内部と外部との間に形成した例を示した。このような構成であると、得られる内視鏡装置40Aないし40Bは汎用性がなくなるため、経済的には高価となる。そこで、参考例3の内視鏡装置40Cとしては、従来の内視鏡装置の外周に沿って出口端から入口端側に向けてスリットが形成された外付け処置具挿入管路を形成した。この参考例3の内視鏡装置40Cを図4を用いて説明する。なお、図4は参考例3の内視鏡装置40Cを用いてポリープ等を回収した状態を表す図である。また、参考例3の内視鏡装置40Cにおいても、一端側に操作部42と、鉗子等の各種処置具挿入口44と、可撓管46と、可撓管46内に形成された処置具挿入管路47と、各種処置具出口開口48及び観察窓、照明窓等の各種先端開口部49が設けられており、これらの基本的構成は上述した従来例のものと相違はないので、これらの構成の詳細な説明は省略する。
【0063】
参考例3の内視鏡装置40Cは、従来例の内視鏡装置の外表面に沿って、各種先端開口部49側から各種処置具挿入口44まで、各種先端開口部49側に、一定長さのスリット50cが形成されかつ内視鏡装置40Cの外形よりも小径とされた外付け処置具挿入管路52aを形成したものである。この外付け処置具挿入管路52aは、鉗子等を挿入する必要はないので、患者に苦痛を与えないようにするため、好ましくは処置具挿入管路47よりも小径であって、ポリープ等の一括回収用処置具10の第2のシース第2のシース26(図8C参照)よりも僅かに大径のものが好ましい。なお、この外付け処置具挿入管路52aは、自己保形性を有している柔軟な樹脂製であることが好ましく、内視鏡装置40Cの外側に接着或いは適宜取付用バンド等を用いて取り付ければよい。
【0064】
このような構成の参考例3の内視鏡装置40Cによれば、上記参考例1の内視鏡装置40Aと同様の作用効果を奏する他、特に従来の内視鏡装置そのものに加工処理せずに作製できるため、安価に製造することができる。
【0065】
[参考例4]
参考例3の内視鏡装置40Cでは、従来例の内視鏡装置の外表面に沿って、各種先端開口部49側から各種処置具挿入口44まで、各種先端開口部49側に、一定長さのスリット50cが形成されかつ内視鏡装置40Cの外形よりも小径とされた外付け処置具挿入管路52aを形成したものを示した。しかしながら、このスリット50cは、参考例2の内視鏡装置40Bの場合と同様に、外付け処置具挿入管路52aの出口端側から各種処置具挿入口44端まで連続的に形成することもできる。
【0066】
このようなスリット50dを外付け処置具挿入管路52bの出口端側から各種処置具挿入口44側まで連続的に形成した参考例4の内視鏡装置40Dを図5を用いて説明する。なお、図5は参考例4の内視鏡装置40Dを用いてポリープ等を回収した状態を表す図である。また、この参考例4の内視鏡装置40Dが参考例3の内視鏡装置40Cと構成が相違する点は、スリット50dの部分のみであるので、図4に示した参考例3の内視鏡装置40Cと同一の構成部分には同一の参照符号を付与してその詳細な説明は省略する。
【0067】
この参考例4の内視鏡装置40Dによれば、参考例3の内視鏡装置40Cと同様の作用効果を奏する他、更に、参考例2の内視鏡装置40Bと同様の作用効果を奏することができるようになる。
【0068】
[実施例]
従来から、内視鏡装置の視野の確保等の目的で内視鏡装置の先端部に透明な環状樹脂材料からなる先端キャップを被せて使用することが行われている。実施例の内視鏡装置用補助具60として、このような先端キャップを用いた内視鏡装置に適用した例を、図6を用いて説明する。なお、図6は実施例の内視鏡装置用補助具を内視鏡装置に取付た状態を表す図である。また、図6においては、図4及び図5に記載した内視鏡装置と同一の構成部分には同一の参照符号を付与してその詳細な説明は省略する。
【0069】
実施例の内視鏡装置用補助具60は、予め先端キャップ54に外付け処置具挿入管路52cを一体に取付けておき、この外付け処置具挿入管路52cの先端キャップ54側から挿入口まで連続的に、参考例2の内視鏡装置40Bの場合と同様に、スリットを形成し、従来の内視鏡装置の先端の各種処置具出口開口48側に取付けて使用するものである。すなわち、この先端キャップ54と処置具挿入管路52cを予め一体化したものが、本発明の内視鏡装置用補助具60に相当する。なお、処置具挿入管路52cは、当然のことながら、内視鏡装置40Cの先端部の径より細径、すなわち先端キャップ54の根本部の径よりも細径のものとする。この先端キャップ54は市販のものをそのまま使用でき、内視鏡装置用補助具60は従来の内視鏡装置に取り付ければよい。
【0070】
このような構成の実施例の内視鏡装置用補助具60によれば、参考例2の内視鏡装置40Bと同様の作用効果を奏することができるほか、先端キャップ54を用いたことによる公知の作用効果をも期待できるようになる。
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
【符号の説明】
【0076】
10…一括回収用処置具 12a、12b…回収用ネット 14…開口端 16…環状リング 18、18a、18b…糸 20a、20b…ネット止め具 22…第1のシース 24…開口 26…第2のシース 28…スネア 40、40A〜40G…内視鏡装置 42…操作部 44…各種処理具挿入口 46…可撓管 47…処置具挿入管路 48…各種処置具出口開口 49…各種先端開口部 50a〜50e…スリット 52a〜52e…外付け処置具挿入管路 54…先端キャップ 56…切欠部 60…内視鏡装置用補助具
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8
図9
図10