(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5663732
(24)【登録日】2014年12月19日
(45)【発行日】2015年2月4日
(54)【発明の名称】バイザー組立体
(51)【国際特許分類】
A42B 3/24 20060101AFI20150115BHJP
A42B 3/18 20060101ALI20150115BHJP
【FI】
A42B3/24
A42B3/18
【請求項の数】11
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-108(P2011-108)
(22)【出願日】2011年1月4日
(62)【分割の表示】特願2001-517899(P2001-517899)の分割
【原出願日】2000年8月24日
(65)【公開番号】特開2011-63929(P2011-63929A)
(43)【公開日】2011年3月31日
【審査請求日】2011年1月4日
【審判番号】不服2013-8679(P2013-8679/J1)
【審判請求日】2013年5月13日
(31)【優先権主張番号】1012896
(32)【優先日】1999年8月24日
(33)【優先権主張国】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】502068034
【氏名又は名称】ピンロック パテント ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】アーノルド、デレク、レスリー
【合議体】
【審判長】
千葉 成就
【審判官】
河原 英雄
【審判官】
紀本 孝
(56)【参考文献】
【文献】
実開平4−131619(JP,U)
【文献】
実開平5−70639(JP,U)
【文献】
米国特許第3012248(US,A)
【文献】
米国特許第3718937(US,A)
【文献】
特表平10−510596(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A42B3/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイザー組立体であって、外側遮蔽体と、外側遮蔽体から間隔を置かれ且つ外側遮蔽体の外周より内方に位置する内側遮蔽体であり内側遮蔽体の外寸は外側遮蔽体の凹部の寸法に相応して内側遮蔽体が当該凹部に嵌る内側遮蔽体と、外側遮蔽体から延びて内側遮蔽体に係合して内側遮蔽体を外側遮蔽体の当該凹部内に解離可能に固定する機械的固定要素と、外側遮蔽体をヘルメットやゴーグルのような他の部品に固定するための要素と、内側遮蔽体の周囲に延びて内側遮蔽体に固着され外側遮蔽体と機械的固定要素とに接着されておらず、弾性を有するシール材料で形成されて内側遮蔽体を機械的固定要素に押し付けるスペーサと、を有するバイザー組立体。
【請求項2】
スペーサは、外側遮蔽体と内側遮蔽体との間のガス/空気チャンバのシール部材として作用する、請求項1に記載のバイザー組立体。
【請求項3】
外側遮蔽体と内側遮蔽体との間にガス/空気チャンバが形成され、ガス/空気チャンバの内幅は少なくとも2mmである、請求項1又は請求項2に記載のバイザー組立体。
【請求項4】
機械的固定要素は、前記凹部内に内側遮蔽体を固定するスナップばめリム、又は内側遮蔽体内の凹部と協働する外側遮蔽体上のピンを備える、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のバイザー組立体。
【請求項5】
スペーサは、シリコーン材料で形成されている、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のバイザー組立体。
【請求項6】
スペーサは、ゴム状弾性シールである、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のバイザー組立体。
【請求項7】
スペーサは、フレキシブルシールである、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のバイザー組立体。
【請求項8】
内側遮蔽体は、熱処理された酢酸セルロースで形成される、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のバイザー組立体。
【請求項9】
内側遮蔽体は、プロピオン酸セルロースで形成される、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のバイザー組立体。
【請求項10】
内側遮蔽体は、その一方の面に、曇り防止コーティングを備える、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載のバイザー組立体。
【請求項11】
内側遮蔽体は、その一方の面に、耐引っ掻き性コーティングを備える、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載のバイザー組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイザー組立体であって、外側遮蔽体とこれに間隔をおいた内側遮蔽体とを含み、該内側遮蔽体が外側遮蔽体の外周より内方に位置しており、前記内側遮蔽体の外周に沿って延在するシール/スペーサが、外側遮蔽体と内側遮蔽体との間に配置されている形式のものに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のバイザー組立体は、特許文献1に開示されている。該刊行物には、外側遮蔽体と内側遮蔽体とから成る安全バイザー組立体が記載されている。内側遮蔽体はヘルメット構造物にヒンジ結合されている。双方の遮蔽体は、ゴム製リングによって間隔をおいて保持され、該ゴム製リングは、一方の遮蔽体のシート内に配置されている。その場合、各部品は成形材料により互いに固定されている。内側遮蔽体と外側遮蔽体との間隙に、任意にプラスチック配合物を充填することで、遮蔽体の強度を高めることができる。この種のヘルメットにとって、強度が最も重要である。
内側遮蔽体と外側遮蔽体とを間隔をおいて保持するための機械式構造物は、デレク(Derek)の特許B.V.の名称での特許文献2に開示されている。この構成では、外側遮蔽体が、ヘルメット等に固定されるための手段を備えている。この構成の目的は、バイザーの曇りを防止することである。この構成では、内側遮蔽体と外側遮蔽体との間隔は一カ所でしか保証されておらず、原則として、湿気を含む空気や、水分や、ほこりが、内側遮蔽体と外側遮蔽体との間に自由に出入することができる。このため、どんな条件下でも内側遮蔽体の曇りを最適な形式で防止するというわけにはいかない。
しかし、特許文献1による構成を使用した場合は、損傷した場合、内側遮蔽体と外側遮蔽体との双方を取り外さねばならない点が欠点となろう。
また、この種の構成で、内側遮蔽体と外側遮蔽体とが永久固定されている形式のものが、特許文献3と特許文献4とに開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】DE3244152A1
【特許文献2】PCT出願9616563
【特許文献3】US3718937
【特許文献4】EP0504518A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、先行技術に関係する欠点を除去することにある。言い換えると、内側遮蔽体と外側遮蔽体との間に空気またはガスを充填可能なチャンバを、環境に対し密封可能である限りにおいて設けることが目的である。加えて、該チャンバの幅、すなわち内側遮蔽体と外側遮蔽体との内側間隔を、できる限り曇りが防止されるように、最適化せねばならない。更に、種々の構成部品が互いに別個に簡単に交換できなければならない。また遮蔽体の形状は、できるだけ互いに従うようにする、言い換えると遮蔽体は互いに正確に当て付けられるようにせねばならない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
これらの目的は、前記バイザー組立体の場合に、シール/スペーサが、内側遮蔽体には固着され、外側遮蔽体からは解離可能にされ、かつまた遮蔽体を互いに固定するために、機械式固定手段が2個の遮蔽体の間に設けられ、前記外側遮蔽体が、ヘルメットまたはゴーグルのフレーム等の別の部品に固定するための手段を備えるようにすることで、達せられた。
【0006】
本発明によるバイザー組立体は、どのような用途にも使用可能であることが理解されよう。一つの重要な用途は、ヘルメットまたは他のかぶり物と組み合わせて使用することである。別の用途は、ゴーグルのような構造物に用いることである。しかし、本発明による技術は、車両の窓や戸外で露出している器具等のカバーにも利用できる。本発明の一つの具体的な用途は、低温時に使用されるヘルメットやゴーグルなどである。例えばスノーモービルの場合、ドライバーおよび/または乗員の呼気が、環境との直接の熱伝達の結果としてバイザー上に氷結する。驚くべきことに、このような問題は、本発明による構成の場合には、もはや発生しないことが判明した。
【0007】
既述のことから分かるように、スペーサは内側遮蔽体にのみ固着されている。外側遮蔽体への内側遮蔽体の固定は、機械式の手段で行われる。したがって、内側遮蔽体と外側遮蔽体との結合は、好きなときに解離可能である。例えば、外側遮蔽体が破損した場合、これを取り外すことができる。更に、外側遮蔽体の内側、または内側遮蔽体の外側が、何らかの理由で曇ったり汚れたりした場合にも、取り外しを要することがある。
【0008】
本発明の一好適実施例によれば、機械式の固定手段は、外側遮蔽体に設けられたピンを含み、該ピンが内側遮蔽体に設けられた切欠きと協働する。この機械式固定手段は、バイザー組立体の従来技術において周知であり、該固定手段により、内側遮蔽体と外側遮蔽体とが互いに位置づけられる。この構成は、デレクの特許B.V.という名称のヨーロッパ特許出願95937212.9に記載されている。
【0009】
本発明の場合、内側遮蔽体と外側遮蔽体との間には間隙が設けられている。
既述のピンおよびピンと協働する切欠きは、更に、用途に応じて開発することができる。例えば、ピンは偏心ピンを含むことができ、その結果として、より密接に切欠きの位置に係合できる。更に、切欠きは、内側遮蔽体に取り付けられる付属品に設けねばならない。付属品が弾性的な構造物を含む場合には、製造時または使用時に発生するピンと切欠きとの間の公差の相違は、補償することができる。
【0010】
本発明の一好適実施例によれば、シール/スペーサは、シリコーン材料製である。シール/スペーサは、内側遮蔽体と外側遮蔽体との間のフレキシブルなシールとして機能する。更に、2つの遮蔽体間の圧縮ひずみは、一様に分布する。好ましくは、シリコーン材料は乾性の、固化したフレキシブルなシリコーン材料である。2つの遮蔽体間への湿分等の侵入は、このような構成によって出来るだけ防止される。スペーサは外側遮蔽体には固着されていないので、外側遮蔽体に対するいくらかの動きは可能である。このことは、内側遮蔽体と外側遮蔽体とが異なる材料製の場合、重要である。その一例は、外側遮蔽体がポリカーボネート製、内側遮蔽体が酢酸セルロース製の場合である。膨張率の相違は、ゴム製の弾性シールにより問題なしに克服できる。酢酸セルロースまたは他のプラスチックを使用する場合は、それらを前以て熱処理しておくことが重要である。それによって機械的強度を改善できる。また、この熱処理により、すべての方向に等しい特性を有する材料を得ることができ、かつまた材料が後に高温にさらされた場合に収縮を制限することができる。例えば酢酸セルロースは、この目的のため、約2時間、約25〜80℃で熱処理が可能である。
【0011】
本発明の一好適実施例によれば、内側遮蔽体がプロピオン酸セルロース製である。プロピオン酸セルロースの光透過性は、酢酸セルロースのそれより多少すぐれている。内側遮蔽体には、シリコーン基剤のコーティングを施すことで親水特性を改善でき、それによって曇りを防止できる。他方の面には硬質の耐引っ掻き性のコーティングを施すことができる。内側遮蔽体を外側遮蔽体に対し取り外し可能にすることで、2つの位置で内側遮蔽体を使用できる。第1の位置は冬季位置で、この場合は、内側遮蔽体の曇り防止コーティングが使用者の顔に向けられ、第2の位置は夏季位置で、この場合は、内側遮蔽体が逆に取り付けられる。もちろん、その場合は、内側遮蔽体の両面に弾性材料製リムを設けておく。
【0012】
既述のように内側遮蔽体にプロピオン酸セルロースを使用した場合も、外側遮蔽体に固定する技術が制限されることはない。言い換えると、プロピオン酸セルロース材料製の内側遮蔽体が、どのような形式で互いに固定され、相互シールを備えた、または相互シールなしの外側遮蔽体と、どのように組み合わされても、本発明の範囲に属している。
内側遮蔽体と外側遮蔽体との間隔は、所望に応じて調節でき、好ましくは2mm以上、特に約3mmとする。これにより、内側遮蔽体と外側遮蔽体との間の絶縁が最適化されることは別として、そうすることにより、また内側遮蔽体と外側遮蔽体との間の最適シールも達せられる。双方の遮蔽体間のシールは、恒久的に閉止された構造物の場合より難しいことは理解されよう。
本発明の別の好適実施例によれば、外側遮蔽体が凹部を備えている。この凹部の寸法は、内側遮蔽体の外周の寸法に少なくとも合致している。内側遮蔽体は、この凹部にはめ込むことができる。機械式の固定手段は、この場合、スナップばめのリム等でよい。当業者には、シート内に内側遮蔽体を固定する他の構造物が容易に考えられるだろうが、それらも本発明の範囲に属している。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明によるバイザー組立体の第1実施例を取付けたヘルメットを示す図。
【
図3】本発明によるバイザー組立体の第2実施例の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下で、本発明を図示の実施例につき、更に詳しく説明する。
図1には、本発明によるバイザー組立体が、その全体を符号1で示されている。外側遮蔽体は、詳細には示されていないヘルメット3にヒンジ結合されている。
図2に見られるように、バイザー組立体1は、外側遮蔽体2に取り付けられた内側遮蔽体6から成っている。内側遮蔽体6は、切欠き12と、外側遮蔽体2に取り付けられ、切欠き12と一緒に
固定手段8を形成しているピン10とにより外側遮蔽体2内に固定される。この構成は、ヨーロッパ特許出願95937212.9に、より詳しく記載されている。
【0015】
本発明によれば、内側遮蔽体6は、シリコーン材料製の周部リム7を備えている。このリム材料は、内側遮蔽体に固着されており、固化した後、すなわちシリコーン材料7が接着特性を失った後でなければ、外側遮蔽体2に当て付けないようにする。このリム7を設けた結果として、内側遮蔽体6は、外側遮蔽体2から幾分間隔をおいて保持されることになる。更に、双方の遮蔽体6,2の間が完全にシールされる。
シリコーン材料7のリムにより生じる接着は恒久的なものではないので、何らかの理由で双方の遮蔽体6,3を分離する必要が生じた場合は、簡単に分離できる。
図示の固定手段8の代わりに、先行技術で公知の、機械式に固定する別の構成を用いてもよい。
図3および
図4には、本発明によるバイザー組立体の変化形が、全体を符号21で示されている。これらの図では、バイザーのみが、何かに取り付けられずに示されている。
【0016】
見られるように、凹部またはシート23が外側遮蔽体22に設けられている。この凹部またはシートの寸法は、内側遮蔽体26の外寸に相応している。既出の実施例の場合のように、内側遮蔽体22は、その周部近くに全周にわたってリムまたはリング27が設けられている。このリムまたはリングは、フレキシブルなシール材料製である。外側遮蔽体22への内側遮蔽体26の固定は、簡単なスナップばめ構造により行われる。スナップばめ用リップ24,25はそれぞれ、外側遮蔽体22の頂部と底部に設けられている。これにより、内側遮蔽体26は、外側遮蔽体22に対し押しはめて幾らかのプリストレスを与えることができる。スペーサ27は、双方の遮蔽体の間をシールし、その結果として、湿気の侵入や、それによる外側遮蔽体22の曇りを防止することができる。
【0017】
内側遮蔽体が外側遮蔽体内に幾らか入り込む構成は、別の形式でも実現可能である。例えば、周部近くの外側遮蔽体の厚さを多少厚く、例えば3mm厚に構成することが可能である。この厚さ内に例えば1mm深さの凹部を形成することにより、内側遮蔽体をその凹部に収容することができる。言い換えると、外側遮蔽体の厚さは、内側遮蔽体の配置部分では、他の部分より薄くされる。この構成では、このように形成された凹部を、より厚い外側遮蔽体材料部分で限界づけることができる。しかし、また外側遮蔽体の薄手の部分を一定方向にその全長にわたって延在させることもできる。内側遮蔽体は、その方向で外側遮蔽体に対し移動させ、定位置へもたらすことができる。
図示の実施例を比較すると、当業者には直ちに別の実施例が明らかになろう。それらの実施例も明らかに既述の説明に含まれるものであり、特許請求の範囲の枠内に属するものとする。