(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5663756
(24)【登録日】2014年12月19日
(45)【発行日】2015年2月4日
(54)【発明の名称】タイヤ温度監視装置
(51)【国際特許分類】
B60C 23/20 20060101AFI20150115BHJP
B60C 19/00 20060101ALI20150115BHJP
G01J 5/00 20060101ALI20150115BHJP
【FI】
B60C23/20
B60C19/00 B
G01J5/00 101Z
【請求項の数】6
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2008-1049(P2008-1049)
(22)【出願日】2008年1月8日
(65)【公開番号】特開2009-161053(P2009-161053A)
(43)【公開日】2009年7月23日
【審査請求日】2010年12月22日
【審判番号】不服2013-18289(P2013-18289/J1)
【審判請求日】2013年9月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100066865
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 信一
(74)【代理人】
【識別番号】100066854
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 賢照
(74)【代理人】
【識別番号】100117938
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 謙二
(74)【代理人】
【識別番号】100138287
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 功
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】中谷 興司
(72)【発明者】
【氏名】海老沼 利光
(72)【発明者】
【氏名】丸山 智弘
【合議体】
【審判長】
鳥居 稔
【審判官】
平田 信勝
【審判官】
丸山 英行
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−212696(JP,A)
【文献】
特開2002−103931(JP,A)
【文献】
国際公開第2005/121727(WO,A1)
【文献】
特表2008−501963(JP,A)
【文献】
特開2000−355202(JP,A)
【文献】
特開平8−67117(JP,A)
【文献】
特開2006−23084(JP,A)
【文献】
特開平3−292207(JP,A)
【文献】
特開2004−262273(JP,A)
【文献】
特開平11−342712(JP,A)
【文献】
特開2007−55347(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 23/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リム組みされたタイヤの空洞部に該タイヤの内周面の温度を検知する温度センサを設置し、該温度センサの検知信号を前記タイヤの外側に設置された受信部に無線で送信するようにしたタイヤ温度監視装置において、
前記温度センサが、入力する赤外線の強度に応じた電気信号を出力するサーモパイルセンサからなり、該サーモパイルセンサを、その赤外線入射孔を前記タイヤの内周面に対向させて前記タイヤ空洞部内の非変動部分であるタイヤのビード部の内周面に取り付けたタイヤ温度監視装置。
【請求項2】
前記サーモパイルセンサを信号処理用回路と共にモジュールに組み立て、このモジュールを、前記タイヤのビード部の内周面に取り付けた請求項1に記載のタイヤ温度監視装置。
【請求項3】
前記モジュールを、前記タイヤのビード部の内周面に接着剤により固定した請求項2に記載のタイヤ温度監視装置。
【請求項4】
前記サーモパイルセンサの赤外線入射孔を、前記タイヤのトレッド部の内周面に対向させた請求項1〜3のいずれかに記載のタイヤ温度監視装置。
【請求項5】
前記サーモパイルセンサの赤外線入射孔を、前記タイヤのサイドウォール部の内周面に対向させた請求項1〜3のいずれかに記載のタイヤ温度監視装置。
【請求項6】
前記タイヤが建設車輌用タイヤである請求項1〜5のいずれかに記載のタイヤ温度監視装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はタイヤ温度監視装置に関し、更に詳しくは、リム組みされて車輌に装着されたタイヤの内周面の温度を測定するタイヤの温度を非接触で精度よく測定することができるタイヤ温度監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車輌に装着されたタイヤの空気圧が低下すると、大きな変形を繰り返しながら走行を行うため、タイヤの寿命が短くなったり、あるいは事故の原因となる危険性がある。また、ブレーキ時の制動距離が延びたり、コーナリング特性が低下したりするという車輌の性能低下をもたらすおそれもある。そのため近年では、タイヤの空気圧を管理することを目的として、走行中のタイヤの空気圧を監視する装置(Tire Pressure Monitoring System:以下、単に「TPMS」という。)が開発されている。
【0003】
このTPMSにおいては、タイヤの空気圧低下に伴うタイヤの損傷の程度を把握するために、タイヤの空気圧と共にタイヤの温度を測定することが行われている。タイヤの温度を測定する方法としては、タイヤ空洞内の空気温度を測定する方法が先行していた。しかし、空気温度は、タイヤの温度との間にずれがあることが分かるようになってからは、タイヤ温度を直接測定する手段が開発され、例えばタイヤに熱電対やサーミスタを埋め込む測定方法や、特許文献1のように、タイヤ内周面に可撓性磁石を貼り付けて、温度による磁力の変化をホイールに取り付けた磁気センサで検出して温度を推定する間接的な測定方法などが提案されている。
【0004】
しかし、前者のセンサ埋め込みによる測定方法では、配線が切断したりタイヤの強度に影響を及ぼしたりするという問題があり、後者の可撓性磁石を用いた間接的な測定方法では、走行中のタイヤに加わる遠心力、振動及び変形やタイヤ外部の磁界などにより誤差が発生するという問題があった。
【特許文献1】特開2004−132864号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、車輌に装着されたタイヤの温度を非接触で精度よく測定することができるタイヤ温度監視装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成する本発明のタイヤ温度監視装置は、リム組みされたタイヤの空洞部に該タイヤの内周面の温度を検知する温度センサを設置し、該温度センサの検知信号を前記タイヤの外側に設置された受信部に無線で送信するようにしたタイヤ温度監視装置において、前記温度センサが、入力する赤外線の強度に応じた電気信号を出力するサーモパイルセンサからなり、該サーモパイルセンサを、その赤外線入射孔を前記タイヤの内周面に対向させて前記タイヤ空洞部内
の非変動部分
であるタイヤのビード部の内周面に取り付けたことを特徴とするものである。
【0007】
サーモパイルセンサを信号処理用回路と共にモジュールに組み立て、このモジュールを
、タイヤのビード部の内周面に取り付けることが望ましく、その取り付けは接着剤による固定が望ましい。
【0008】
サーモパイルセンサの赤外線入射孔は、タイヤのトレッド部の内周面、又はタイヤのサイドウォール部の内周面に対向させることが望ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明のタイヤ温度監視装置によれば、タイヤ温度監視装置の温度センサに赤外線センサであるサーモパイルセンサを用いると共に、そのサーモパイルセンサをタイヤ空洞内における非変動部分に取り付けるようにしたので、タイヤに加わる遠心力、振動及び変形などの影響が小さい状態で、タイヤ内周面の温度を赤外線を介して直接測定することができるので、車輌に装着されたタイヤの温度を非接触で精度よく測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0011】
図1は
、タイヤ温度監視装置
の参考例を示す。
【0012】
図1において符号1は、
図2に例示するようなサーモパイルセンサ2と、
図3に例示するような信号処理用回路3とから組み立てられたモジュールである。このモジュール1は、サーモパイルセンサ2の赤外線入射孔20をタイヤ4のトレッド部5の内周面に向くようにして、タイヤ4の空洞部における非変動部分であるリム6のウェル部7の表面に接着剤により固定されている。トレッド部5はタイヤ4の中でも最も故障を起こしやすい箇所のひとつであり、そのトレッド部5の温度をサーモパイルセンサ2が非接触で検知するようになっている。モジュール1の取付手段としては、接着剤によるほか、ウェル部7に環状に巻き付けた鋼製又は樹脂製のバンドにより固定するようにしてもよい。
【0013】
サーモパイルセンサ2は、小型の熱電対を複数段に接続した赤外線センサの一種であり、
図2に示すように、視野角α内に位置する物体から発せられた赤外線を赤外線入射孔20から取り入れ、レンズ21によりサーモパイル素子22上に集光させて、赤外線の強度に応じた電気信号を電極23から出力するものである。
【0014】
タイヤ6は変形を繰り返すことにより、内部摩擦により発熱し、その発熱量に対応する赤外線を発生するため、この赤外線の強度をサーモパイルセンサ2に入射させることにより、タイヤ内面温度を測定することができる。
【0015】
図3は、モジュール1の中にサーモパイルセンサ2と共に組み立てられた信号処理用回路3の一例である。この信号処理用回路3は、サーモパイルセンサ2の検知信号を増幅する増幅回路30と、増幅された検知信号からノイズを除去するフィルタ回路31と、ノイズを除去された検知信号をデジタル変換するA/D変換器32と、デジタル変換された検知信号を処理する制御回路33と、検知信号をタイヤの外側に設置された受信部(図示せず)へ向けて送信するRF回路34及び送信アンテナ35から主に構成される。制御回路33はマイクロプロセッサからなり、データを格納する記憶回路36を備えている。これらの電気回路は、制御回路33に接続された電源37(電池)により駆動される。
【0016】
図3に示すモジュール1による動作の一例を、
図3及び
図4に基づいて説明する。
【0017】
サーモパイルセンサ2が検知したタイヤ4のトレッド部5の内面温度に関する検知信号Tを、増幅回路30、フィルタ回路31及びA/D変換器32を経由して入力し(S10)、RF回路34と送信アンテナ35を通じてタイヤ4の外側に設置された受信部へ向けて送信する(S11)。次に、記憶回路36にあらかじめ格納されている所定の値Xを入力する(S12)。この所定の値Xとしては、タイヤ4の強度を担保できる上限温度などが例示される。そして、検知信号Tと所定の値Xとを比較して(S13)、検知信号Tが所定の値Xよりも大きい場合には、アラームを受信部へ向けて送信する(S14)。検知信号Tが所定の値X以下の場合には、一定の時間を経過した後に、再び検知信号Tを入力する(S10)。なお、タイヤ4の外側に設置された受信部で受信された検知信号T及びアラームは、運転手に視覚的又は聴覚的な手段を通じて伝達される。
【0018】
上述した
参考例は、サーモパイルセンサ2を組み込んだモジュール1を、非変動部分であるリム6のウェル部7に取り付けた状態にして、タイヤ4のトレッド部5を監視するようにしたものである。
これに対して、本発明のタイヤ温度監視装置は、モジュール1の取付場所やタイヤ4に対する監視箇所
を、
図5に例示するようにしている。
【0020】
図
5に例示するように、本発明は、モジュール1の取付場所を、タイヤ4のビード部10の内周面にし、サーモパイルセンサ2がサイドウォール9の内周面を監視するようにしている。ビード部10はタイヤ4の構成部であるが、リム6のフランジ部11に固定された部分であるため、リム組みされたタイヤ4の空洞部内において非変動部分に相当する。ビード部10を非変動部分としてモジュール1の取付箇所に選択するときは、建設車輌用(ORタイヤ)のようにビード部10の剛性が非常に大きい大型タイヤの場合に有効である。ビード部10の内周面に対するモジュール1の固定手段としては、接着剤による固定が好ましい。
【0021】
上述した本発明によれば、タイヤ温度監視装置に非接触で測定可能な赤外線センサであるサーモパイルセンサ2を用いると共に、サーモパイルセンサ2
をタイヤ4のビード部10の内周面のようなタイヤ空洞内における非変動部分に固定するようにしたので、タイヤに加わる遠心力、振動及び変形などの影響を小さくした状態で、タイヤ4の内周面の温度を赤外線を介して直接測定することができるので、車輌に装着されたタイヤ4の温度を非接触で精度よく測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
タイヤ温度監視装置
の参考例を示すタイヤの一部断面図である。
【
図2】サーモパイルセンサの構成を示す概念図である。
【
図3】サーモパイルセンサの信号処理用回路の例を示すブロック図である。
【
図4】モジュールの動作の一例を示すフロー図である。
【
図5】
本発明の実施形態からなるタイヤ温度監視装置を示すタイヤの一部断面図で ある。
【0023】
1 モジュール
2 サーモパイルセンサ
3 信号処理用回路
4 タイヤ
5 トレッド部
6 リム
7 ウェル
部
9 サイドウォール部
10 ビード部
11 フランジ部
20 入射孔
21 レンズ
22 サーモパイル素子
23 電極
30 増幅回路
31 フィルタ回路
32 A/D変換器
33 制御回路
34 RF回路
35 送信アンテナ
36 記憶回路
37 電源