(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5663772
(24)【登録日】2014年12月19日
(45)【発行日】2015年2月4日
(54)【発明の名称】揺動可能バイオコンテナ
(51)【国際特許分類】
C12M 3/00 20060101AFI20150115BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20150115BHJP
C12N 5/00 20060101ALI20150115BHJP
C12N 1/00 20060101ALI20150115BHJP
【FI】
C12M3/00 Z
C12M1/00 C
C12N5/00 201
C12N1/00 A
【請求項の数】16
【外国語出願】
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2012-271521(P2012-271521)
(22)【出願日】2012年12月12日
(65)【公開番号】特開2013-143937(P2013-143937A)
(43)【公開日】2013年7月25日
【審査請求日】2012年12月12日
(31)【優先権主張番号】13/331,212
(32)【優先日】2011年12月20日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】596064112
【氏名又は名称】ポール・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】Pall Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100148596
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 和弘
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ティモシー アラン バーレット
(72)【発明者】
【氏名】アリソン ジェーン ウエスト
(72)【発明者】
【氏名】ケニス ロイ ウエイト
(72)【発明者】
【氏名】アダム ピーター ウエストウッド
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル ジェイムズ ケセラー
【審査官】
鈴木 崇之
(56)【参考文献】
【文献】
特表2010−539936(JP,A)
【文献】
特表2008−513034(JP,A)
【文献】
特表2010−529854(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0151551(US,A1)
【文献】
特開2011−152077(JP,A)
【文献】
特表2012−531930(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00−3/10
C12N 1/00
C12N 5/00
Thomson Innovation
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底板、上板、互いに対向する第1の側板および第2の側板、ならびに、互いに対向する第3の側板および第4の側板を備える密閉型の容器であり、前記側板が、前記上板および前記底板と接合されている閉じた容器と、
少なくとも2つのポートと、
を備えるバイオコンテナであって、
前記底板、前記上板、および、前記第1、第2、第3及び第4の側壁は可撓性のシート材料から形成されており、
前記バイオコンテナは、略直方体形状を有し、かつ、前記容器に固定された第1のブラケット、第2のブラケット、第3のブラケットおよび第4のブラケットを少なくともさらに備え、前記第1のブラケット、前記第2のブラケット、前記第3のブラケットおよび前記第4のブラケットのそれぞれは、互いに向かい合った一対の先の曲がったラグを有するように2つの突出部を備え、前記バイオコンテナを支持することに適したプラットフォームと取り外し可能に係合可能である、バイオコンテナ。
【請求項2】
前記第1のブラケットが、前記上板と前記第1の側板との接合部の近傍において、前記容器に固定されており、前記第2のブラケットが、前記上板と前記第2の側板との接合部の近傍において、前記容器に固定されている、請求項1に記載のバイオコンテナ。
【請求項3】
前記第1のブラケットおよび前記第3のブラケットが、それぞれ、前記上板と前記第1の側板との接合部の近くまたは該接合部において、および、前記底板と前記第1の側板との接合部の近傍において、前記容器に固定されており、前記第2のブラケットおよび前記第4のブラケットが、それぞれ、前記上板と前記第2の側板との接合部の近傍において、および、前記底板と前記第2の側板との接合部の近傍において、前記容器に固定されている、請求項1に記載のバイオコンテナ。
【請求項4】
細胞培養物を含む流体を処理する方法であって、
プラットフォーム上の、略直方体形状の密閉型の容器を備えるバイオコンテナを、互いに直角である略水平な第1の枢動軸線および第2の枢動軸線を中心に揺動させるステップを含み、
前記容器が、液体培養培地および細胞を少なくとも含み、前記バイオコンテナが、前記容器に固定された第1のブラケット、第2のブラケット、第3のブラケットおよび第4のブラケットを少なくともさらに備え、
前記ブラケットのそれぞれは、当該ブラケットが前記プラットフォームと取り外し可能に係合するように、互いに向かい合った一対の先の曲がったラグを含む2つの突出部を備える、方法。
【請求項5】
前記バイオコンテナから、細胞を含む液体サンプルを取り除くステップをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記バイオコンテナ内のpHを調節するステップをさらに含む、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
水平な前記第1の枢動軸線が、第1の揺動角を有しており、水平な前記第2の枢動軸線が、第2の揺動角を有しており、前記第1の揺動角と前記第2の揺動角とが異なっている、請求項4〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
水平な前記第1の枢動軸線が、第1の揺動角を有しており、水平な前記第2の枢動軸線が、第2の揺動角を有しており、前記第1の揺動角と前記第2の揺動角とが同じである、請求項4〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の揺動角または前記第2の揺動角が、水平から約1〜約15度の範囲内である、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の揺動角および前記第2の揺動角が、それぞれ、水平から約1〜約15度の範囲内である、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
細胞培養物を含む前記流体が、動物細胞を含む、請求項4〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
細胞培養物を含む前記流体が、微生物細胞を含む、請求項4〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
細胞培養物を含む前記流体が、植物細胞を含む、請求項4〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記バイオコンテナから、前記流体の少なくとも一部を排出するステップと、前記ブラケットと前記プラットフォームとの係合を解くステップと、前記プラットフォームから、前記バイオコンテナを取り外すステップとをさらに含む、請求項4〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
バイオコンテナを揺動させるための揺動可能なプラットフォームであって、
当該プラットフォームが、略直方体形状の容器を受け入れることに適しており、
前記容器が、該容器に固定された第1のブラケット、第2のブラケット、第3のブラケットおよび第4のブラケットを少なくとも備え、前記ブラケットのそれぞれは、互いに向かい合った一対の先の曲がったラグを有するように2つの突出部を備え、選択的に前記プラットフォームに係合し、
当該プラットフォームが、第1のブラケット係合部、第2のブラケット係合部、第3のブラケット係合部および第4のブラケット係合部を少なくとも含み、
前記第1のブラケット係合部は、前記第1のブラケットを受け入れるための少なくとも1つのスロットを備え、前記第2のブラケット係合部は、前記第2のブラケットを受け入れるための少なくとも1つのスロットを備え、前記第3のブラケット係合部は、前記第3のブラケットを受け入れるための少なくとも1つのスロットを備え、前記第4のブラケット係合部は、前記第4のブラケットを受け入れるための少なくとも1つのスロットを備える、プラットフォーム。
【請求項16】
前記バイオコンテナを加熱するためのヒータをさらに備える、請求項15に記載のプラットフォーム。
【発明の詳細な説明】
【0001】
[0001]細胞培養は、例えば抗体、タンパク質、ワクチンおよび遺伝子治療製品を生成する例えばバイオテクノロジー工業や製薬工業において、様々な用途に用いられている。一般に、1リットルまたは2リットルより多い量の流体を処理するために、例えば約10リットル以上、さらには約20〜約500リットル以上の量の流体を処理するために、バイオリアクタが使用されている。
【0002】
[0002]しかしながら、当該技術分野では、細胞への損傷を最小限に抑えながらも、改善された混合物(例えば、酸素、pHおよび/または基質に関するもの)を供給するバイオリアクタおよびシステムが必要とされている。本発明のこれらの利点および他の利点は、以下に記載する説明から明らかとなろう。
【発明の概要】
【0003】
[0003]本発明の一実施形態は、底板、上板、互いに対向する第1および第2の側板、ならびに、互いに対向する第3および第4の側板を備え、側板が上板および底板に接合された密閉型の容器と、少なくとも2つのポートとを備えるバイオコンテナを提供するものであって、このバイオコンテナは、略直方体形状をなし、かつ、容器に固定された第1および第2のブラケットを少なくとも備える。また、このバイオコンテナは、第1および第2のブラケットが、バイオコンテナを支持することに適したプラットフォームに取り外し可能に係合可能である。このバイオコンテナは、容器に固定された少なくとも第3および第4のブラケットをさらに備え、第3および第4のブラケットが、バイオコンテナを支持することに適したプラットフォームに取り外し可能に係合可能であることが好ましい。
【0004】
[0004]一実施形態では、第1のブラケットは、上板と第1の側板との接合部の近傍において、容器に固定されており、第2のブラケットは、上板と第1の側板に対向する第2の側板との接合部の近傍において、容器に固定されている。当該実施形態は、容器の底板に固定されたブラケット、および/または、容器の互いに対向する側板に固定されたブラケットをさらに備えていてもよい。例えば、バイオコンテナの一実施形態は、底板と第1の側板との接合部の近傍において容器に固定された第3のブラケット、および、底板と第1の側板に対向する第2の側板との接合部の近傍において容器に固定された第4のブラケットをさらに備える。
【0005】
[0005]少なくとも4つのブラケットを備えるさらに別の実施形態では、第1のブラケットおよび第3のブラケットは、それぞれ、上板と第1の側板との接合部の近傍において、および、底板と第1の側板との接合部の近傍において、容器に固定されており、第2のブラケットおよび第4のブラケットは、それぞれ、上板と第1の側板に対向する第2の側板との接合部の近傍において、および、底板と第1の側板に対向する第2の側板との接合部の近傍において、容器に固定されている。
【0006】
[0006]一実施形態において、細胞培養物を含む流体を処理する方法は、プラットフォーム上の、略直方体形状の密閉型の容器を備えるバイオコンテナを、1つ以上の自由角度で揺動させるステップを含み、この場合、容器は、液体培養培地および細胞を少なくとも含み、バイオコンテナは、プラットフォームと係合された第1のブラケットおよび第2のブラケットを少なくともさらに備える。本方法の好ましい実施形態は、プラットフォーム上のバイオコンテナを、互いに直角である略水平な第1の枢動軸線および第2の枢動軸線を少なくとも中心にして揺動させるステップを含み、この場合、バイオコンテナは、プラットフォームと係合された第1のブラケットおよび第2のブラケットを少なくともさらに備える。本方法のより好ましい実施形態では、バイオコンテナは、該バイオコンテナが揺動されている間プラットフォームに係合されている第3のブラケットおよび第4のブラケットを少なくともさらに備える。本方法の実施形態は、バイオコンテナから流体の少なくとも一部を排出するステップと、ブラケットとプラットフォームとの係合を解除するステップと、プラットフォームからバイオコンテナを取り外すステップとをさらに含んでもよい。
【0007】
[0007]さらに別の実施形態では、略直方体形状の容器を揺動させるための揺動可能なプラットフォームが提供される。この場合、該揺動可能なプラットフォームは、揺動装置と共に使用することに適しており、また、少なくとも第1および第2のブラケット係合部を含んでいる。より好ましい実施形態では、プラットフォームは、少なくとも第3および第4のブラケット係合部をさらに備える。実施形態によっては、プラットフォームは、容器を加熱するためのヒータをさらに備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A】第1、第2、第3および第4のブラケットをさらに備える、本発明の実施形態に係るバイオリアクタを示し、部分的に折り畳まれた状態または部分的に潰された状態のバイオリアクタの上方からの図および下方からの図を示している。
【
図1B】バイオリアクタの上面図、底面図および側面図を示し、側面図に関しては、充填または膨張された状態のバイオリアクタを示している。
【
図2】ブラケット係合部を含む例示的な揺動プラットフォームを示し、さらに、該揺動プラットフォームを備える例示的な装置を示している。
【
図3】本発明の実施形態に係る揺動プラットフォーム上のバイオリアクタを示し、さらに、共通の中心を有する2つの揺動軸線を示している。
【
図4】少なくとも4つのブラケットを備える、本発明に係るバイオリアクタの別の実施形態を示し、ブラケット係合部をさらに備える、バイオリアクタを受け入れるための揺動プラットフォームをさらに示しており、「さねはぎ形」の係合を示している。
【
図5】少なくとも4つのブラケットを備える、本発明に係るバイオリアクタの別の実施形態を示し、ブラケット係合部をさらに備える、バイオリアクタを受け入れるための揺動プラットフォームをさらに示しており、ブラケットと、プラットフォームの側板におけるプラットフォーム側板エッジおよび開口との係合を示している。
【
図6A】少なくとも4つのブラケットを備える、本発明に係るバイオリアクタのさらなる実施形態を示し、さらに、ブラケット係合部をさらに備える、バイオリアクタを受け入れるための揺動プラットフォームをさらに示しており、「I字形状」のブラケットとスロットとの係合を示している。また、一体スロットを含むプラットフォームを示している。
【
図6B】プラットフォームに装着されるスロットを示している。
【
図7】ブラケット本体をその内に備えるスリーブを含む少なくとも4つのブラケットを備える、本発明に係るバイオリアクタのさらに別の実施形態を示しており、さらに、揺動プラットフォームを示している。
【0009】
[0015]略直方体形状であり、容器に固定されたブラケットをさらに備える使い捨て型のバイオコンテナであって、ブラケットが、当該バイオコンテナを支持することに適したプラットフォームに取り外し可能に係合可能である、バイオコンテナは、略直方体形状を維持しながら、揺動中に当該バイオコンテナの内容物を効率的に混合することができ、有利である。バイオコンテナの形態および/または形状の維持が補助されることに加えて、複数のブラケットを使用することによって、揺動中のバイオコンテナの動きが最小限に抑えられ、その結果、バイオコンテナに対する応力、摩擦および/または磨耗(例えば、バイオコンテナのシールおよび/または壁に対する応力、摩擦および/または磨耗)が最小限に抑えられる。
【0010】
[0016]さらに、剪断に弱い(shear−sensitive)細胞への損傷を最小限に抑えながらも、混合を迅速かつ効率的に行うことができる。このため、細胞増殖および細胞生産性が最適となる。
【0011】
[0017]「枕形状」の容器が、容器の中心を通って延びる1つの軸線を中心に前後に揺動される結果として、容器の左右方向における混合率と、容器の前後方向における混合率とが相違することになるシステムとは対照的に、実質的に水平な2つの枢動軸線を中心に揺動される、現在説明しているバイオリアクタを使用することによって、バイオコンテナの内容物が、まんべんなく、より速く混合される。したがって、添加された酸または塩基(pHを調節するための)が、バイオコンテナの全体にわたって迅速に分散するため、pH制御が改善され、添加された栄養素がバイオコンテナの全体にわたってより均一に迅速に分散し、また、酸素(例えば、ヘッドスペースから加えられた)がバイオコンテナ内の細胞に効率的に分配される。
【0012】
[0018]任意の特定の機構に制限されることなく、混合が改善されたのは、一方向に揺動される際のより長い経路に沿う流体の流れと、この方向に略直角の方向に揺動される際のより短い経路に沿う流体の流れとを組み合わせた結果であると考えられる。例えば、より長い経路に沿って移動する流体は、バイオコンテナの短い側面と接触する際に、バイオコンテナの深さ方向全体にわたってバルク流体の流れへ「畳み込まれる」。
【0013】
[0019]同等の量を培養する場合に、従来の枕形状の容器と比べて、設置面積のより小さいバイオコンテナを使用することができることが、別の利点として挙げられる。
【0014】
[0020]本発明の一実施形態は、底板、上板、互いに対向する第1および第2の側板、ならびに、互いに対向する第3および第4の側板を備える密閉型の容器であって、前記側板が上板および底板と接合される容器と、少なくとも2つのポートとを備えるバイオコンテナを提供する。このバイオコンテナは、略直方体形状をなし、かつ、容器に固定された第1および第2のブラケットを少なくともさらに備え、第1のブラケットおよび第2のブラケットが、バイオコンテナを支持することに適したプラットフォームと取り外し可能に係合可能である。このバイオコンテナは、容器に固定された第3および第4のブラケットを少なくともさらに備え、第3および第4のブラケットが、バイオコンテナを支持することに適したプラットフォームと取り外し可能に係合可能であることが好ましい。一般に、少なくとも4つのブラケットを含むこれらの実施形態では、少なくとも2つのブラケットが、バイオコンテナの下部に結合され、少なくとも2つのブラケットが、バイオコンテナの上部に結合される。
【0015】
[0021]一実施形態では、第1のブラケットは、上板と第1の側板との接合部の近傍において、容器に固定されており、第2のブラケットは、上板と、第1の側板に対向する第2の側板との接合部の近傍において、容器に固定されている。この実施形態は、容器の底板に固定され、および/または、容器の互いに対向する側板に固定されたブラケットをさらに備えていてもよい。例えば、バイオコンテナの実施形態は、底板と第1の側板との接合部の近傍において、容器に固定された第3のブラケット、および、底板と第1の側板に対向する第2の側板との接合部の近傍において、容器に固定された第4のブラケットをさらに備える。他の例示的な実施形態では、バイオコンテナは、第1の側板に固定された第3のブラケット、および、第1の側板に対向する第2の側板に固定された第4のブラケットをさらに備えるか、または、第1の側板に固定された少なくとも一対の第3のブラケット、および、第1の側板に対向する第2の側板に固定された少なくとも一対の第4のブラケットをさらに備える。あるいは、バイオコンテナは、底板に固定された第3のブラケットを少なくともさらに備えるか、または、バイオコンテナは、第1の側板の近傍において底板に固定された第3のブラケット、および、第1の側板に対向する第2の側板の近傍において底板に固定された第4のブラケットをさらに備える。あるいはまた、バイオコンテナは、第1の側板の近傍において底板に固定された少なくとも一対の第3のブラケット、および、第1の側板に対向する第2の側板の近傍において底板に固定された少なくとも一対の第4のブラケットをさらに備える。
【0016】
[0022]少なくとも4つのブラケットを備えるさらに別の実施形態では、第1および第3のブラケットは、それぞれ、上板と第1の側板との接合部の近傍において、および、底板と第1の側板との接合部の近傍において、容器に固定されており、第2および第4のブラケットは、それぞれ、上板と第1の側板に対向する第2の側板との接合部の近傍において、および、底板と第1の側板に対向する第2の側板との接合部の近傍において、容器に固定されている。
【0017】
[0023]本発明の実施形態によれば、バイオコンテナブラケットは、揺動可能プラットフォームのブラケット係合部に取り外し可能に係合可能であり、また、細胞培養流体(この流体中に細胞が含まれていることが好ましい)を含むバイオコンテナは、ブラケットがブラケット係合部と係合されている間、揺動させることができる。
【0018】
[0024]本発明の実施形態によって提供される、細胞培養物を含む流体を処理する方法は、プラットフォーム上の、実質的に直方体形状の閉じた容器を備えるバイオコンテナを、枢動点を中心に1以上の自由な角度で、好ましくは、互いに直角である略水平な第1および第2の枢動軸線を少なくとも中心にして、揺動させるステップを含み、この場合、容器は、液体培養培地および細胞を少なくとも含み、バイオコンテナは、プラットフォームと係合された第1および第2のブラケットを少なくともさらに備える。前記方法のより好ましい実施形態では、バイオコンテナは、該バイオコンテナが揺動されている間プラットフォームに係合されている第3および第4のブラケットを少なくともさらに備える。前記方法の実施形態は、バイオコンテナから流体の少なくとも一部を排出するステップと、ブラケットとプラットフォームとの係合を解除するステップと、プラットフォームからバイオコンテナを取り外すステップとをさらに含む。
【0019】
[0025]さらに別の実施形態では、略直方体形状の容器を受け入れ、揺動させるための揺動可能プラットフォームが提供される。この場合、該揺動可能プラットフォームは、揺動装置と共に使用することに適しており、バイオコンテナに固定されたブラケットと取り外し可能に係合されるように配置された第1および第2のブラケット係合部を少なくとも含んでいる。プラットフォームのより好ましい実施形態では、プラットフォームは、少なくとも第3および第4のブラケット係合部をさらに備える。その結果、バイオコンテナの直方体の形状および/または形態が、該バイオコンテナがプラットフォーム上で揺動されている間も維持される。実施形態によっては、プラットフォームは、容器を加熱するためのヒータをさらに備える。
【0020】
[0026]本発明の実施形態にしたがって、多種多様な細胞(例えば、動物、植物、微生物および昆虫の細胞)を、例えば自由な懸濁システムおよび/または足場依存性システムにおいて培養することができる。本発明の実施形態は、ウイルスの培養および病原体の培養にも適している。
【0021】
[0027]細胞培養流体の温度は、例えば、バイオコンテナ、および、揺動プラットフォームを含む機器を、温度制御チャンバ内に配置するか、または、ヒータまたは加熱部品をさらに備えるプラットフォーム上に、バイオコンテナを配置することによって、制御することができる。
【0022】
[0028]一般に、バイオコンテナは、密閉型の容器を備える。この密閉型容器は、可撓性のシート材料から作製された、略矩形状の底板、上板および4つの側板と、複数のポートとを備える。なお、底板、上板および4つの側板は、各エッジにおいて互いに接合された4つの別々のシートによって形成される。この場合、第1のシートが底板を形成し、第2のシートが上板を形成し、第3および第4のシートは、容器の互いに対向する2つの側面において、第1および第2の側板を形成する。また、4つのシートは、底面、上面、第1の側面および第2の側面を形成する部分に加えて、それぞれの両端部に、一体的に形成された三角形または台形の壁部をさらに備える。これらの三角形および台形の壁部は、互いに接合されると、第3および第4の側板のそれぞれを形成する。
【0023】
[0029]本明細書において使用される場合、「密閉型容器」または「密閉型バイオコンテナ」という用語は、容器が、シールされて環境から遮断されており、バイオコンテナの内部との連絡が、1つまたは複数のポートに制限されていることを意味している。このようにして、バイオコンテナの無菌完全性(sterile integrity)に関して妥協する必要なく、流体を処理することができる。このことは、バイオコンテナが無菌システムの一部を形成すべき場合に特に重要である。閉じたシステムまたは無菌システムは、元からそのようなものとして作製されてもよいし、例えば「無菌ドッキング(sterile docking)」装置として知られているものを用いて、システムの部品を連結することによって形成されてもよい。
【0024】
[0030]内層が細胞に対する唯一の接触表面である、使い捨ての密閉型バイオコンテナを使用することによって、優れた封じ込めが行われ、大きな労力を要する洗浄および滅菌が必要なくなる。
【0025】
[0031]一般に、バイオコンテナの上板には、複数のポートが備え付けられており、底板には、少なくとも1つのポートが備え付けられている。バイオコンテナは、上板の中央に、もしくは、上板の中央の近傍に配置された1つ以上のガスポート、および/または、上板の中央以外の部分に配置された1つ以上の液体ポートを含んでいることが好ましい。複数のポートは、複数種類の流体を別々に容器に供給するために、ならびに/または、装置の検査および/もしくはサンプリングのためにアクセスできるようにするために、使用することができる。中央に配置されたガスポートを使用することによって、バイオコンテナの揺動中に、ポートが、液体によって塞がれる可能性を最小限に抑えるか、または、除去することができる。また、中央以外の部分に配置された液体ポートを使用することによって、導入される液体が、揺動されている容器内で動く液体と接触させられるため、より効率的な混合が可能になり得る。あるいは、または、さらに、バイオコンテナは、底板の中央に、もしくは、底板の中央の近傍に配置された排出ポートを有する。これによって、特に、膨張した際のバイオコンテナの形状が、わずかにドーム形になっている場合に、より効率的な排出を行うことができる。
【0026】
[0032]バイオコンテナは、平坦な状態で市場に供給されることが好ましい。この場合、第1および第2の側板は、約半分の高さの位置に折り目を備えていて、内側に折り畳まれており、三角形の部分と台形の部分とが互いに接合されることによって形成された第3および第4の側板は、外側に折り畳まれている。必要に応じて、無菌化および/または輸送を容易にするために、バイオコンテナを別の容器(パッケージなどの)内に封入することができる。
【0027】
[0033]平坦なバイオコンテナは、揺動可能プラットフォーム内またはこの上に容易に据え付けることができる。この場合、例えば、外側に折り畳まれた第3の側板および第4の側板は、外側に折り畳まれている。
【0028】
[0034]次に、本発明の構成要素のそれぞれについて、以下により詳細に説明する。なお、同一の部品には同一の参照符号を付す。
【0029】
[0035]
図1は、バイオコンテナ100の実施形態を示している。バイオコンテナ100は、密閉型容器10を備える。また、密閉型容器10は、底板12と、上板14と、第1の側板16と、第2の側板18と、第3の側板20と、第4の側板22と、上板に設けられた複数のポート70、71、72(便宜上、ポート70〜72は「ガスポート」と呼ぶ)、81、82、83および84(便宜上、ポート81〜84は「液体ポート」と呼ぶ)と、底板に設けられたポート64と、第1のブラケット151と、第2のブラケット152と、第3のブラケット153と、第4のブラケット154とを備える。なお、これらのブラケットは、容器に固定されている。
図1Aは、実質的に折り畳まれているが、完全に平坦にされた状態ではない容器10を示している。この場合、側板16および18は、それぞれ、折り目58および60に沿って内側に折り畳まれている。
図1Bにおける側面図は、膨張した状態のバイオコンテナ100を示している(液体細胞培地は、図示していない)。
【0030】
[0036]容器10は、一般に、4つの別々の可撓性のプラスチックシート材料から作製されている。この場合、第1のシート24が底板12となり、第2のシート26が上板14となり、第3のシート28が第1の側板16となり、第4のシート30が第2の側板18となる。なお、第1および第2の側板16、18は、容器10の互いに対向する側面に位置している。第1、第2、第3および第4のシート材料24、26、28、および30のそれぞれの形状は略矩形である。互いに対向する側板を形成しているシート28および30の両側にあるエッジは、接合部または継目32、34、36、および38によって、底板シート材料24および上板シート材料26のエッジと接合され、その結果、スリーブ状の構造が形成される。
【0031】
[0037]各シート材料の両端部には、三角形または台形の壁部40、42、44および46が備わっている。これらの壁部40、42、44、46が、互いに接合されることによって、互いに対向する第3および第4の側板20、22が形成される。接合されている部分は、継目48、50、52、54、56として示されている。こうして、容器は、閉じた状態となる。第3および第4の側板20、22は、容器10の本体から外側に折り畳まれ、実質的に三角形または台形のフラップ62として平坦にされる。
【0032】
[0038]
図1に示されている実施形態によれば、バイオコンテナは、上板14と第1の側板16との接合部または継目36の近傍において容器に固定された第1のブラケット151(図では、接合部または継目36に連結されているように示されている)と、上板14と、第1の側板に対向する第2の側板18との接合部または継目38の近傍において容器に固定された第2のブラケット152と、底板12と第1の側板16との接合部または継目32の近傍において容器に固定された第3のブラケット153と、底板12と、第1の側板に対向する第2の側板18との接合部または継目34の近傍において容器に固定された第4のブラケット154とをさらに備える。
【0033】
[0039]
図1に示されている実施形態では、各ブラケットは、本体および2つの突出部を備えており、各突出部は、互いに向かい合った一対の先の曲がったラグ(angled lug)を備える。このように、第1のブラケット151は、本体151aと、互いに向かい合った第1の突出ラグ151cおよび151dを備える第1の突出部151bと、互いに向かい合った第2の突出ラグ151c’および151d’を備える第2の突出部151b’とを備える。図示されている第2、第3および第4のブラケットも同様である。例えば、第2のブラケット152は、本体152aと、互いに向かい合った第1の突出ラグ152cおよび152dを備える第1の突出部152bと、互いに向かい合った第2の突出ラグ152c’および152d’を備える第2の突出部152b’とを備える。
【0034】
[0040]ブラケットは、当該技術において知られているように、例えば、接着剤、溶剤、レーザ溶接、高周波シール(radio frequency sealing)、超音波シール、および/または熱シールによって、恒久的にバイオコンテナに固定されることが好ましい。
【0035】
[0041]以下により詳細に説明するように、バイオコンテナブラケットは、揺動可能プラットフォームのブラケット係合部に取り外し可能に係合され、細胞培養流体(液体細胞培地)およびこれに含まれる細胞を含むバイオコンテナは、所望の期間にわたって揺動される。
【0036】
[0042]例えば、
図2を参照すると、例示的な装置1000が示されている。例示的な装置1000は、揺動可能プラットフォーム500を備える。揺動可能プラットフォーム500は、拡大開口551aおよびスロット551bならびに拡大開口551a’およびスロット551b’を備える第1のブラケット係合部551と、拡大開口552aおよびスロット552bならびに拡大開口552a’およびスロット552b’を備える第2のブラケット係合部552と、拡大開口553aおよびスロット553b(図ではプラットフォーム500の背後に隠れている)ならびに拡大開口553a’およびスロット553b’(双方とも、図ではプラットフォーム500の背後に隠れている)を備える第3のブラケット係合部553と、拡大開口554aおよびスロット554bならびに拡大開口554a’およびスロット554b’を備える第4のブラケット係合部554とを含んでいる。この場合、第1のバイオコンテナブラケット151(
図1Bに示されている)は、第1のブラケット係合部に取り外し可能に係合され、第2、第3および第4のバイオコンテナブラケット(
図1Bに示されているブラケット152〜154)は、第2、第3および第4のブラケット係合部のそれぞれに取り外し可能に係合される。
【0037】
[0043]その後、細胞培養物を含む流体(好ましくは、細胞をさらに含む)を含むバイオコンテナは、揺動されるが、好ましくは、
図3に概略的に示されているような、共通の中心を有する2つの略水平な揺動軸線(好ましくは、互いに直交している)を中心に揺動される。
【0038】
[0044]本明細書において使用される場合、「取り外し可能に係合される」または「取り外し可能に係合可能な」という用語は、係合が恒久的ではないことだけでなく、ブラケットが、必要に応じて各ブラケット係合部に係合され、また、ブラケットが、必要に応じて各ブラケット係合部から分離されることを意味している。このように、ブラケットは、バイオコンテナが揺動される前に、各ブラケット係合部に係合され、また、バイオコンテナが揺動している間は、該各ブラケット係合部と係合し続ける。しかしながら、揺動が終了した後、所望の時点で、ブラケットは、各ブラケット係合部から分離され、バイオコンテナは、プラットフォームから取り除かれる。
【0039】
[0045]ブラケットおよびブラケット係合部の様々な構造および構成が、本発明での使用に適している。
図1は、バイオコンテナの「より短い」壁(側板16および18)の近くに結合されたブラケットを示しているが、ブラケットおよびブラケット係合部の位置は、このように限定されているわけではない。例えば、バイオコンテナの実施形態は、側板20および22の近傍にブラケットを含んでいてもよい(例えば、側板20および22ならびに上板14および底板12の間の接合部または継目の近傍にブラケットを含むか、もしくは、これらと連結されたブラケットを含み、これに対応した、揺動プラットフォームの位置に、ブラケット係合部が配置されてもよい)し、または、ブラケットおよび/またはブラケット係合部は、例えば以下に述べるように垂直に配置されてもよい。
【0040】
[0046]ブラケットとブラケット係合部との水平方向の係合を示している、例えば、
図1Bおよび
図2(および以下に詳細に説明する
図4)と対照的に、例えば
図5および
図6(ブラケットおよびブラケット係合部を示している)に示されているような他の実施形態によれば、係合の方向は垂直であり、また、他の実施形態(図示せず)では、少なくとも1つのブラケットが、ブラケット係合部と水平方向に係合することができ、少なくとも1つの他のブラケットが、ブラケット係合部と垂直方向に係合することができる。
【0041】
[0047]一端に拡大開口を含み、ブラケット係合部が両端が閉じたスロットを備えるプラットフォームとの係合を示している
図1Bおよび
図2と対照的に、
図4に示されている実施形態は、代替的にまたは追加的に、さねはぎタイプの係合を示しており、この場合、各ブラケット(251,252,253,254)は、丸い舌片を備え、各ブラケット係合部(651,652,653,654)は、溝を備える(図示されている係合部は、プラットフォームに対して別に装着可能な部品として示されている)。
図5に示されている実施形態によれば、ブラケット(351,352,353,354)は、それぞれ、上部および底部に略U字形状の部分を備える。この略U字形状の部分は、それぞれがプラットフォーム壁のエッジおよび開口を備えるプラットフォームの係合部(751,752,753,754)と取り外し可能に係合可能である。
図6Aおよび
図6Bに示されている実施形態は、「I字」形状のブラケット(451,452,453,454)、および、一端が開いているスロットを含むブラケット係合部をそれぞれが備えるプラットフォームを備えるバイオコンテナを示している(
図6Aでは、プラットフォームと一体の要素としてのブラケット係合部(851,852,853,854)が示されており、
図6Bでは、プラットフォームに対して別に装着可能な要素としてのブラケット係合部(851’,852’,853’,854’)が示されている)。
【0042】
[0048]ブラケットは、スリーブと、該スリーブ内にブラケット本体とを備えることができる。例えば、
図7に示されている実施形態によれば、各ブラケット(951,952,953,954)は、1つ以上のラグを含むブラケット本体(951a、952a、953a、954a)を備えており、この場合、ブラケット本体は、スリーブ(951’’,952’’,953’’,954’’)内に収容されている。
図7に示されている実施形態では、各本体は、2つの突出部を備えており、各突出部は、互いに向かい合った一対の先の曲がったラグを備える。このように、各ブラケットは、本体と、一対の第1の突出ラグ(951cおよび951d,952cおよび952d,953cおよび953d,954cおよび954d)を備える(この場合、一対のラグは、互いに向かい合っている)第1の突出部(951b,952b,953b,954b)と、一対の第2の突出ラグ(951c’および951d’,952c’および952d’,953c’および953d’,954c’および954d’)を備える(この場合、一対のラグは、互いに向かい合っている)第2の突出部(951b’,952b’,953b’,954b’)とを備える。なお、これら突出部は、ブラケット係合スロットまたはブラケット係合開口と係合可能である。
【0043】
[0049]さらに他の実施形態(図示せず)によれば、バイオコンテナは、ピン形状のブラケットを(側板および/または底板に)備え、プラットフォームは、スロットを伴わない開口を含むブラケット係合部を(側板および/または底板に)備える。
【0044】
[0050]様々なプラットフォームが、本発明での使用に適している。プラットフォームは、バイオリアクタを支持するための略矩形の基部と、例えば、ブラケット係合部を取り付けるための、および/または、ブラケット係合部を備える少なくとも2つの互いに対向する側板とを備えることが好ましい。
図2に示されているプラットフォームの実施形態は、4つの側板を有する。この場合、互いに対向する側板の2つが、ブラケット係合部を備える。一般に、基部は、例えばバイオリアクタの底板と結合される少なくとも1つのポートを設けるために、少なくとも1つの開口を含んでいる。
【0045】
[0051]バイオリアクタおよびプラットフォームの実施形態は、任意の揺動装置と共に使用することができる。一般に、揺動装置は、枢動点を中心として、例えば
図3に概略的に示されているように、互いに直角であり、かつ、共通の中心を有する略水平な第1および第2の枢動軸線を中心として、プラットフォームまたはトレイを揺動するために、モータ、ポンプ、駆動部およびピストンのうちの任意の1つ以上をさらに備える。本発明において、「直角」という用語は、正確な90°の角度を要求しないことだけでなく、共通の中心を有する枢動軸線が、例えば約85°〜約95°の範囲の角度であり得ることを意味している。しかしながら、90°または約90°の角度が、好ましい。
【0046】
[0052]水平な第1の枢動軸線は、第1の揺動角を有し、水平な第2の枢動軸線は、第2の揺動角を有する。様々な揺動角が、第1の揺動角および第2の揺動角に適している。一般に、揺動角は、水平から約1度〜約15度の範囲内にある。第1の揺動角および第2の揺動角は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0047】
[0053]さらに、揺動装置は、制御ユニット、速度制御弁、ヒータ、揺動速度の監視および/または表示を行うための装置(例えば、タコメータ)、ならびに、バイオコンテナ内の1つ以上のパラメータ(例えば、pH、酸素、二酸化炭素、温度のうちの任意の1つ以上のパラメータ)の監視および/または検出を行うためのセンサのうちの任意の1つ以上をさらに備えていてもよい。
【0048】
[0054]揺動装置は、任意の適切な周期で、例えば、約1〜約40サイクル/分の範囲の周期、または、これ以上のサイクル/分の周期で、作動されてもよい。一般に、揺動装置は、約20〜約30サイクル/分の周期で作動される。
【0049】
[0055]様々な材料が、バイオコンテナの壁を形成するシート材料としての使用に適している。一般に、シート材料は、プラスチック材料、より一般的には、多層プラスチックフィルムを備える。バイオコンテナの壁のシート材料を形成するために使用される材料は、ポートおよびブラケットを形成するために使用される材料と相性がよいことが好ましい。
【0050】
[0056]様々な材料、好ましくは、高分子プラスチック材料が、ブラケットを形成する際の使用に適している。また、実施形態によっては、この材料は、ポートを形成する際に使用される材料と類似しているか、または、同じである。
【0051】
[0057]フィルムを透明または半透明にすることによって、例えばバイオコンテナの注入および排出を光学的に制御することができるようにするために、バイオコンテナの注入および排出の観察を可能とし、また、バイオコンテナ内の流体において発生する反応の観察を可能とすることが好ましい。
【0052】
[0058]ポリエチレンは、容易にフィルムへ製造される高度に透明な高分子材料であり、また、ポリエチレンに関しては、遊離物(releasable)または抽出物(extractable)をほとんど含まないか、または、まったく含まないグレードのものを容易に入手することができる。したがって、実施形態によっては、バイオコンテナの少なくとも最も内側の層が、ポリエチレンフィルム層を備える。本発明に係るバイオコンテナの一実施形態では、バイオコンテナは、ポリエチレンフィルムの少なくとも2つの層を含む。なお、この場合に、最も内側の層が、ポリエチレンフィルムであり、その次の層が、異なる材料の層(例えば、酸素および/または二酸化炭素に対するバリア層などのガスバリア層)であり、さらにその次の層が、ポリエチレンフィルムの別の層であることが、より好ましい。ガスバリア層は、バイオコンテナへの酸素および/または二酸化炭素の侵入を防止するか、または、最小限に抑えるという用途にとって、望ましい場合がある。
【0053】
[0059]エチレンビニルアルコール(EVOH)は、バリア層としての使用に適した透明または半透明の材料の一例である。
【0054】
[0060]バイオコンテナを使用するための方法の一般的な実施形態は、以下の通りである。バイオコンテナ(折り畳まれた状態の)を、プラットフォーム上に配置する。バイオコンテナの下部にブラケットが結合されている場合、これらのブラケットを、プラットフォームの対応するブラケット係合部と係合させる。
【0055】
[0061]一般的な参照のために、
図1および
図2に示されている例示的な実施形態を用いるならば、ブラケット153および154(
図1B)が、ブラケット係合部553および554(
図2)と係合される。一般に上板の中央以外の位置に配置されたポート(例えば、ポート84)を介して、液体細胞培養培地を、(例えば、ポンプを用いて)バイオコンテナに導入して、該バイオコンテナを膨張させる。バイオコンテナの上部にブラケットが結合されている場合、該バイオコンテナが少なくとも実質的に膨張した時点で、これらのブラケットを、プラットフォームの対応するブラケット係合部と係合させる(例えば、ブラケット151および152(
図1B)が、ブラケット係合部551および552(
図2)と係合される)。
【0056】
[0062]ガスを、例えば上板に配置された1つ以上のガスポート(例えば、ポート72)を介して導入して、温度、pH、および溶存酸素の調節および制御を行うことができる。揺動装置を作動させて、1つ以上の軸線、好ましくは、互いに垂直である、実質的に水平な第1の枢動軸線および第2の枢動軸線を中心に、バイオコンテナを揺動させる。所望の設定値(例えば、温度、pH、および溶存酸素に関する)に達した時点で、一般に上板に配置されたポート(例えば、ポート84)を介して、細胞を、バイオコンテナに(例えば、ポンプを用いて)導入する。
【0057】
[0063]これに続いて、当該技術分野において知られているように、細胞の培養およびサンプリングを行うことができる。例えば、細胞培養サンプルを、(例えば、上板に配置された液体ポート(例えば、ポート82)を介して)所望により、約12〜約24時間おきに採取してもよい。サンプルの量は、適切な量、例えば、約10mLである。
【0058】
[0064]これらのサンプルは、細胞濃度、細胞生存率、pH、所望の産生レベル(例えば、モノクローナル抗体、ワクチンなど)、代謝レベル(例えば、グルコースレベルおよび/または乳酸レベル)のうちの任意の1つ以上に関して、例えば測定および/または定量化を行うことによって、分析される。
【0059】
[0065]適切であると考えられる場合、バイオコンテナ内のpHレベルを、該バイオコンテナの上板に配置されたポート(例えば、ポート81または83)を介して適切な試薬を添加することによって、調節/修正する。
【0060】
[0066]適切であると考えられる場合、補助剤(例えば、グルコース、アミノ酸のうちの1種類以上)を、特定の代謝物、例えば、細胞が消費する代謝物を補充するために添加してもよい。この場合、補助剤は、バイオコンテナの上板に配置された液体ポート(例えば、ポート81または83)を介して、添加される。例えば、培養期間を延長し、生成物力価(product titre)を改善するために、当該技術分野において知られているような、流加プロセス(fed−batch process)を利用することが好ましい。
【0061】
[0067]細胞培養が完了した時点で、液体を、一般にバイオコンテナの底板に配置されたポート(例えば、ポート64)を介して、該バイオコンテナから排出し、ブラケットを、ブラケット係合部から分離する。バイオコンテナを、プラットフォームから取り外し、廃棄する。
【0062】
[0068]以下の実施例は、本発明をさらに例示しているが、当然ながら、本発明の範囲を限定していると決して解釈されるべきではない。
【実施例1】
【0063】
[0069]この実施例は、バイオコンテナが、2つの異なる揺動角で揺動される場合に、該バイオコンテナの内容物を、小さなしぶきが上がる程度で(with little splashing)迅速かつ効率的に混合することができることを実証している。
【0064】
[0070]
図1に概略的に示されているような、4つのブラケットを有する20Lのバイオコンテナを入手し、
図2および
図3に概略的に示されているような揺動装置の揺動可能プラットフォーム上に配置する。折り畳まれた状態(
図1Aに概略的に示されているような)にある間に、底板と第1の側板との接合部の近傍において容器に固定されたブラケット、および、底板と第1の側板に対向する第2の側板との接合部の近傍において容器に固定されたブラケットを、プラットフォームの、対応する下側のブラケット係合部と係合させる。
【0065】
[0071]バイオコンテナに緩衝液(リン酸緩衝液(PBS))を充填して、
図1Bに概略的に示されているような状態となるように、バイオコンテナを膨張させる。上板と第1の側板との接合部の近傍において容器に固定されたブラケット、および、上板と第1の側板に対向する第2の側板との接合部の近傍において容器に固定されたブラケットを、プラットフォームの、対応する上側のブラケット係合部と係合させる。
【0066】
[0072]バイオコンテナを、共通の中心を有する2つの水平な枢動軸線を中心に、様々な揺動角で、30rpmで揺動させる。一般的な参照のために
図3を用いるならば、長い揺動角(long rocking angle)は、左右方向であり、短い揺動角(short rocking angle)は、前後方向である。長い揺動角は、水平から約15°であり、短い揺動角は、水平から約5°である。
【0067】
[0073]混合は、勢いよく行われるが、小さなしぶきが上がる程度にとどめられる。混合時間は、16±3秒である。
【0068】
[0074]比較例では、緩衝液を含むWAVE Cellbag(商標)(GE Healthcare Biosciences,Pittsburgh,PA)を、WAVE Mixer(商標)(GE Healthcare Biosciences,Pittsburgh,PA)上に配置し、42rpmで作動させて、該WAVE Cellbag(商標)を最大10.4°で揺動させる。流体のしぶきが上がる程度であり、混合時間は、98±9秒である。
【実施例2】
【0069】
[0075]この実施例は、バイオコンテナが、共通の中心を有する2つの水平な枢動軸線を中心に、2つの同様の揺動角で揺動される場合に、該バイオコンテナの内容物を、小さなしぶきが上がる程度で(with little splashing)迅速かつ効率的に混合することができることを実証している。
【0070】
[0076]
図1に概略的に示されているような、4つのブラケットを有する20Lのバイオコンテナを入手し、
図2および
図3に概略的に示されているような揺動装置の揺動可能プラットフォーム上に配置する。折り畳まれた状態(
図1Aに概略的に示されているような)にある間に、底板と第1の側板との接合部の近傍において容器に固定されたブラケット、および、底板と第1の側板に対向する第2の側板との接合部の近傍において容器に固定されたブラケットを、プラットフォームの、対応する下側のブラケット係合部と係合させる。
【0071】
[0077]バイオコンテナに流体を充填して、
図1Bに概略的に示されているような状態となるように、バイオコンテナを膨張させる。上板と第1の側板との接合部の近傍において容器に固定されたブラケット、および、上板と第1の側板に対向する第2の側板との接合部の近傍において容器に固定されたブラケットを、プラットフォームの、対応する上側のブラケット係合部と係合させる。
【0072】
[0078]バイオコンテナを、40rpmで揺動させる。このとき、長い揺動角および短い揺動角は、水平から約15°である。
【0073】
[0079]混合は、勢いよく行われるが、小さなしぶきが上がる程度にとどめられる。k
La(1/h)(酸素物質移動(oxygen mass transfer))は、73である。
【0074】
[0080]比較例では、緩衝液を含むWAVE Cellbag(商標)を、WAVE Mixer(商標)上に配置し、42rpmで作動させて、該WAVE Cellbag(商標)を最大10.4°で揺動させる。流体のしぶきが上がる程度であり、k
La(1/h)は、42±1である。
【0075】
[0081]出版物、特許出願、および特許を含む、本明細書に引用されている参考文献のすべては、各参考文献が、個別的かつ具体的に示されて参照により組み込まれているかのように、また、その全体が本明細書に記載されているかのように、参照により本明細書に組み込まれている。
【0076】
[0082]「ある(a)」、「ある(an)」、および「その(the)」という用語、ならびに同様の指示語が、本発明を説明する際に(とりわけ、以下の特許請求の範囲に関して)使用される場合、本明細書に他の用法が示されるか、または、文脈上明らかに矛盾しない限り、単数および複数の双方を含むと解釈されるべきである。「を備える(comprising)」、「を有する(having)」、「を含む(including)」、および「を含む(containing)」という用語は、他の用法が示されない限り、非限定的な用語(open−ended term)である(つまり、「を含むものの、これに限定されるわけではない(including,but not limited to)」を意味する)と解釈されるべきである。本明細書の、値の範囲に関する記載は、他の用法が本明細書に示されない限り、当該範囲内に含まれる個別の値について個々に言及する簡便な方法として機能することを意図されているにすぎない。また、個別の各値は、そのそれぞれが本明細書に記載されているかのように、本明細書に組み込まれている。本明細書に記載されている方法のすべては、本明細書に異なる指示がない限り、または、文脈上明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順番で実行することができる。任意およびすべての実施例の使用、または、本明細書に見られる例示的な語句(例えば、「など(such as))は、本発明をより良く理解してもらうためのものにすぎず、他に請求されない限り、本発明の範囲に対して制限を設けるものではない。本明細書中のいかなる語句も、任意の非請求の要素を、本発明の実施に必要不可欠なものとして示していると解釈されるべきではない。
【0077】
[0083]本発明の好ましい実施形態が、本明細書には記載されており、これらは、本発明を実施するための、本発明者らにとって既知の最良の態様を含んでいる。これらの好ましい実施形態の変更例は、上述の説明を読むことによって、当業者に明らかとなる。本発明者らは、当業者がこのような変更例を適切なものとして利用することを期待するものである。また、本発明者らは、本発明が本明細書に具体的に記載されたのとは異なる方法で実施されることを企図している。したがって、本発明は、適用可能な法律が許す限り、添付の特許請求の範囲に記載されている主題のあらゆる修正例および同等物を含んでいる。さらに、上記した要素のあらゆる可能な変更例の任意の組合せが、本明細書に異なる指示がない限り、または、文脈上明らかに矛盾しない限り、本発明に包含されている。
【符号の説明】
【0078】
10…閉じた容器、12…底板、14…上板、16…第1の側板、18…第2の側板、20…第3の側板、22…第4の側板、24…第1のシート、26…第2のシート、28…第3のシート、30…第4のシート、32、34、36、38…接合部、継目、40、42、44、46…三角形または台形の壁部、48、50、52、54、56…継目、64、70、72、74、81、82、83、84…ポート、100…バイオコンテナ、151…第1のブラケット、152…第2のブラケット153…第3のブラケット、154…第4のブラケット、151a…本体、151b…第1の突出部、151c、151d…第1の突出ラグ、151b’ …第2の突出部、151c’、151d’…第2の突出ラグ、251、252、253、254、351、352、353、354、951、952、953、954…ブラケット、451、452、453、454…「I字」形状のブラケット、500…揺動可能プラットフォーム、551…第1のブラケット係合部、552…第2のブラケット係合部、553…第3のブラケット係合部、554…第4のブラケット係合部、551a、552a、553a、554a…拡大開口、551b、552b、553b、554b…スロット、651、652、653、654、851、852、853、854…ブラケット係合部、751、752、753、754…プラットフォームの係合部、951a、952a、953a、954a…ブラケット本体、951b、952b、953b、954b…第1の突出部、951b’、952b’、953b’、954b’…第2の突出部、951c、951d、952c、952d、953c、953d、954c、954d…第1の突出ラグ、951c’、951d’、952c’、952d’、953c’、953d’、954c’、954d’…第2の突出ラグ、951’’、952’’、953’’、954’’…スリーブ、1000…装置