(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ワーク支持部は、下型ベース部にフローティング支持された下型クランパであり、該下型クランパは前記キャリアプレートの外周縁部を支持することでワークを金型クランプ面より離間させて支持し、金型クランプ状態では上型クランパと共にキャリアプレートの外周縁部を挟みこむ請求項1又は請求項2記載の樹脂モールド方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような半導体装置の製造方法において、半導体チップをキャリアプレートに貼り付ける粘着テープに熱発泡性を有する熱剥離テープを用いたときには、昇温されたモールド金型にキャリアプレートを搬入し樹脂モールドする過程において、金型面からの熱伝導により加熱が必要以上に進んでしまったときには熱剥離テープの粘着力が低下して個片化された半導体ウエハ(半導体チップ)が樹脂の流動によって位置ずれ(フライングダイ)する不具合が発生する場合がある。
また、半導体ウエハや回路基板に複数の半導体チップが搭載されたまま、一括して樹脂モールドされる際に、ワークをモールド金型に搬入すると、予め昇温されているモールド金型にワークが載置或いは吸着されたときから樹脂の粘度が上昇して硬化(架橋反応)が始まり、モールド金型をクランプしても樹脂の流動性が低下するため未充填領域が発生するおそれがある。
特に、8インチや12インチなどの半導体ウエハのサイズのワークをトランスファー成形或いは圧縮成形により樹脂モールドするとすれば、モールド樹脂の流動面積が広い一方で樹脂厚が薄くなるため、金型クランプ面からのワークの加熱によりモールド樹脂の硬化が進みやすくなり成形品質が低下する。
【0005】
本発明は上記従来技術の課題を解決し、モールド金型に搬入されたワークへの熱伝導を遅らせて半導体チップを粘着する粘着シートの粘着力の低下を防
いでフライングダイを防止しかつ粘着面に供給されたモールド樹脂の粘度が上昇するのを抑えて樹脂の流動性を確保することで成形品質を向上させた
樹脂モールド方法及び樹脂モールド装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記目的を達成するため、次の構成を備える。
半導体チップがキャリアプレート上に粘着保持されたワーク
をプレス部に搬入して
一対のモールド金型により
樹脂と共にクランプして樹脂モールド
を行う樹脂モールド
方法であって、
型開きした前記モールド金型に、前記半導体チップ粘着面側に
熱剥離性を有する粘着シートが貼られたた前記キャリアプレートを
一方の金型クランプ面より突出させたワーク支持部により
当該一方の金型クランプ面より離間させて
前記粘着シートの粘着力を低下させずに支持する工程と
、前記キャリアプレートに粘着保持された前記ワークを前記粘着シート上に供給された樹脂と共に前記一方の金型と他方の金型とでクランプし、
前記ワーク支持部が前記一方の金型クランプ面より金型内に退避して
前記キャリアプレートが前記一方の金型クランプ面に密着したまま樹脂モールドする工程と、前記モールド金型の型開き動作に伴って、前記ワーク支持部が前記一方の金型クランプ面より突出して前記キャリアプレートを前記一方の金型より離間させて支持する工程と、を含むことを特徴とする。
【0007】
これにより、粘着シートの半導体チップ粘着面側に樹脂が供給されたキャリアプレートをワーク支持部により金型クランプ面より離間させて支持するので、ワークがプレヒートされたモールド金型に搬入されても、粘着シートに樹脂が広がる直前まで金型クランプ面から熱が伝わり難く半導体チップの位置ずれやモールド樹脂とともに半導体チップが流動するのを防ぐことができる。
また、ワークに金型クランプ面から熱伝導し難くなるので、ゲルタイムの短い樹脂においては樹脂が広がる前に粘度が上昇し流動性が低下して未充填部分が発生するのを防いで成形品質を向上させることができる。
尚、ワーク支持部は金型クランプ状態において金型クランプ面より金型内に退避するので、樹脂モールドの妨げになることはない。
【0008】
前記樹脂モールド工程において前記モールド金型が前記ワークをクランプする前にキャビティの外周側に設けられた上型クランパと下型クランパがクランプして形成される金型空間を真空引きして減圧空間を形成してから金型をクランプして圧縮成形されることを特徴とする。
【0009】
これにより、金型クランプ状態で減圧空間を形成することで、樹脂の流動面積が広いワーク上を流動するモールド樹脂に混入するエアーを減少させて、成形品質を向上させることができる。
【0010】
前記ワーク支持部は、下型キャビティ駒に弾性部材によりフローティング支持された複数のフロートピンを備えていることを特徴とする。
フロートピンは、モールド金型が非クランプ状態では常時金型クランプ面より突設されており、クランプ状態で金型内に押し戻される。よって、複雑な機構を用いずに、ワークに供給された樹脂が金型クランプ面から加熱硬化が進むのを遅らせることができる。また、ワークがフロートピンに支持されるので、ワーク搬送機構によりワーク搬入搬出時のチャックがし易くなる。
【0011】
前記ワーク支持部は、前記半導体チップの基板実装領域外に配置されていることを特徴とする。
これにより、金型クランプ面からワーク支持部を介して伝わった熱によって当該ワーク支持部に当接する直上の粘着シートの粘着力が下がるのを防止すると共に、金型とワーク支持部とでキャリアプレートをクランプした際のキャリアプレートの撓みを減らすことができる。
【0012】
前記ワーク支持部は、下型ベース部にフローティング支持された下型クランパであり、該下型クランパは前記キャリアプレートの外周縁部を支持することでワークを金型クランプ面より離間させて支持し、金型クランプ状態では上型クランパと共にキャリアプレートの外周縁部を挟みこむことを特徴とする。
【0013】
これによれば、ワークをモールド金型に搬入すると、キャリアプレートの外周縁部を下型クランパにより支持するので、格別なワーク支持部を設けなくとも、粘着シートに金型クランプ面から熱が伝わり難く半導体チップの位置ずれやモールド樹脂とともに半導体チップが流動するのを防ぐことができる。また、モールド樹脂が広がる前に粘度が上昇し流動性が低下して未充填部分が発生するのを防いで成形品質を向上させることができる。更には、金型クランプ状態では上型クランパと下型クランパとでキャリアプレートの外周縁部を挟みこむので、ワークの反りを防ぐことができる。
【0014】
前述したいずれかの樹脂モールド方法に用いられ、半導体チップがキャリアプレート上に粘着保持されたワークをプレス部に搬入して一対のモールド金型により樹脂と共にクランプして樹脂モールドが行われる樹脂モールド装置であって、前記ワークが支持される一方の金型と、前記モールド金型の型閉じ動作に伴って前記一方の金型クランプ面から出没可能に設けられたワーク支持部と、前記一方の金型クランプ面より前記ワーク支持部によって離間して支持されたワーク及び樹脂を前記一方の金型と共にクランプする他方の金型と、を具備し、型開きした前記モールド金型に、前記半導体チップ粘着面側に熱剥離性を有する粘着シートが貼られた前記キャリアプレートを前記一方の金型クランプ面より突出させた前記ワーク支持部により当該一方の金型クランプ面より離間させて支持し、前記ワークを前記粘着シート上に供給された樹脂と共に前記他方の金型との間でクランプすることで前記ワーク支持部が前記一方の金型クランプ面より金型内に退避して前記キャリアプレートが前記一方の金型クランプ面に密着したまま樹脂モールドすることを特徴とする。
また、ワークをロボットハンドに保持して搬送する多関節ロボットの移動範囲を囲んでワーク供給部、樹脂供給部、プレス部及びワーク収納部が各々配置され、前記樹脂供給部で液状樹脂が供給されたワークが前記プレス部のモールド金型へ搬入されて圧縮成形されることを特徴とする。
【0015】
これによれば、樹脂供給部で液状樹脂が供給されたワークがロボットハンドに保持されてプレス部へ搬送されモールド金型へ搬入されて圧縮成形されるので、樹脂供給から樹脂モールドまでの作業を迅速に行えるうえに、モールド金型に搬入されてからクランプされるまでに液状樹脂の加熱硬化が進むのを遅らせることができる。
【発明の効果】
【0016】
上記
樹脂モールド方法及び樹脂モールド装置を用いれば、モールド金型に搬入されたワークへの熱伝導を遅らせて半導体チップを粘着する粘着シートの粘着力の低下を防
いでフライングダイを防止しかつ粘着面に供給されたモールド樹脂の粘度が上昇するのを抑えて樹脂の流動性を確保することで成形品質を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る
樹脂モールド方法及び樹脂モールド装置の好適な実施の形態について添付図面と共に詳述する。以下の実施形態では、プレス装置の一例として圧縮成形装置を用い、下型を可動型とし上型を固定型として説明する。
【0019】
(樹脂モールド装置の全体構成)
図1は、本発明に係る樹脂モールド装置の一実施形態である平面レイアウト図である。本実施形態の樹脂モールド装置は、ワーク搬送機構Hに備えた多関節ロボットの移動範囲を囲んでワーク供給部A、樹脂供給部B、プレス部C、ワーク検査部D(冷却部)、加熱硬化部E及びワーク収納部Fのような各処理工程を行う処理部と、これらの処理部の動作を制御する制御部Gが配置されている。プレス部Cの近傍には情報読取り部Iが設けられている。また、樹脂供給部Bの近傍には、表示部J及び操作部Mが設けられている。このように多関節ロボットの移動範囲を囲んで各工程を配置したことにより、移動距離が短縮されて工程間で効率の良いワーク搬送が実現できる。特に樹脂モールド装置に加熱硬化部Eを組み込まれているので、樹脂モールド後の成形品を迅速にキュア炉に搬入して加熱硬化させることができる。以下各部の構成について具体的に説明する。
【0020】
図1において、ワークWは、半導体チップがキャリア上に保持されたものが用いられる。このワークWは、例えばE−WLP(Embedded Wafer Level Package)若しくはeWLB (embededd Wafer Lebel BGA)と呼ばれる樹脂封止方法に用いられるものである。具体的には、例えばウエハ搬送治具のような周辺装置を共用するため半導体ウエハと同じサイズとして、直径12インチ(約30cm)の丸型の金属製(SUS等)のキャリアプレートKに熱はく離性を有する粘着シートS(粘着テープ)が貼着されており、該粘着シートSに複数の半導体チップが行列状に粘着されたものが用いられる。
【0021】
粘着シートSは熱発泡性フィルムであり、加熱により粘着性を低下させることができ、モールド後のキャリアプレートKの剥離を容易に行うことができる。各ワークWの縁部には、製品に関する情報が対応付けられた情報コード(QRコード、バーコード等)が付与されている。なお、キャリアプレートKは矩形状であってもよい。この場合、半導体チップを複数行の行列状配置する場合、半導体チップが配置できないエリアを小さくすることができ成形効率上好ましい。
【0022】
(表示部L及び操作部M)
図1に示すように、表示部L及び操作部Mは一体的に配置されている。作業者は、表示部Lに表示された情報を確認しながら、必要に応じて操作部Mを操作して装置内部における各部(例えば多関節ロボット2)の動作を制御可能となっている。また、後述する各種情報の入力や変更を行なうことも可能となっている。なお、通信回線を用いることで装置から離れた位置に表示部と操作部を設けて遠隔操作する構成としてもよい。
【0023】
(ワーク搬送機構H)
図1において、ワーク搬送機構Hは、ワークWをロボットハンド1に吸着保持して各工程間を搬送する回転及び直線移動可能な多関節ロボット2を備えている。多関節ロボット2は、折りたたみ可能な垂直リンクによる上下動と、回転可能な水平リンクとの組み合わせにより構成されている。上記各リンクは、図示しないサーボモータに備えたエンコーダにより回転量が検出されてフィードバック制御が行われる。ロボットハンド1は、キャリアプレートKを載置して吸着保持するようになっている。尚、ロボットハンド1は、ワークWを吸着保持するほかに、機械的にチャックする方式でも良い。また、ロボットハンド1は垂直軸を中心に回転する他に、水平軸を中心に回転(反転)するようになっていても良い。
【0024】
また、
図1において、多関節ロボット2のベース部3は、直動ガイドレール4に沿って往復移動可能に設けられている。例えば、ベース部3に設けられたナットにボールねじが連繋しており、図示しないサーボモータにより正逆回転駆動することにより、多関節ロボット2が直動ガイドレール4に沿って往復動するようになっている。
【0025】
(ワーク供給部A及びワーク収納部F)
図1において、多関節ロボット2が往復動する直動ガイドレール4の手前側には、ワーク供給部Aとワーク収納部Fが併設されている。具体的には、ワークW(被成形品)を収納した供給マガジン9と、ワークW(成形品)を収納可能な収納マガジン10が2セットずつ併設されている。尚、供給マガジン9と収納マガジン10とは構造が同様であるので、以下では供給マガジン9の構造を代表して説明するものとする。また、2セット設けられた供給マガジン9は、同じ種類のワークWを収納する場合でも、異なる種類のワークWを収納する場合でもいずれでも良い。収納マガジン10についても同様である。また、供給マガジン9及び収納マガジン10を1列ずつ設ける構成としてもよく、或いはそれぞれを3列以上設ける構成としてもよい。
【0026】
(情報読取り部I)
図1において、情報読取り部Iには、コード情報読取り装置16とアライナ16aとが設けられており、供給マガジン9から搬送されたワークWを受け取ったアライナ16aを回転させることでワークWの情報コードをコード情報読取り装置16の直下に移動させる。この際に、ワークWは一定の方向に統一される。コード情報読取り装置16は、ワークWに付与された製品に関する情報コード(QRコード、バーコード等)を読み取る。この情報コードに対応して、記憶部47には、樹脂供給情報(樹脂種別、樹脂供給量、供給時間など)やモールド条件(プレス番号、プレス温度、プレス時間、成形厚など)、キュア情報(キュア温度、キュア時間など)、冷却情報(冷却時間)、などの成形条件が記憶されている。コード情報読取り装置16が読み取った情報コードに対応した成形条件情報に基づいて、搬送しているワークWに対して後述する各工程の処理を行う。多関節ロボット2は成形条件の読み取りが完了したワークWを樹脂供給部Bからワーク収納部Fに至る後の各処理工程へ順次搬送する。
【0027】
(樹脂供給部Bの構成)
図1において、ワーク供給部Aに隣接して樹脂供給部Bが設けられている。樹脂供給部Bには液状樹脂供給装置が設けられている。液状樹脂供給装置には、複数のシリンジ19を回転可能に保持したリボルバ式のシリンジ供給部17を挟んで両側に一対のディスペンスユニット18が設けられている。樹脂供給部B内は、液状樹脂の品質維持のため、室内を冷却し除湿する空調装置が設けられている。また、後述するように装置側面には扉が設けられており、作業者がシリンジを交換可能となっている。
【0028】
液状樹脂をワークWに吐出して供給する一対のディスペンスユニット18の間に交換用の複数のシリンジ19を保持したシリンジ供給部17が回転可能に設けられている。各ディスペンスユニット18はシリンジ供給部17を共用して交換用のシリンジ19を受け取って液材吐出位置に保持されたワークWに液状樹脂を所定量吐出して供給する。
【0029】
図2において、シリンジ供給部17は、保持部本体17aに回転ホルダー17bが回転可能に支持されている。シリンジ19は、シリコーン樹脂やエポキシ樹脂といった熱硬化性樹脂を所定量ずつ貯留し、回転ホルダー17bの上部に設けられたフランジ部17cに周方向で6箇所に設けられた凹部17dに保持されている。また、回転ホルダー17bの下方にはシリンジ19の先端に設けられたチューブノズル19aから万一液状樹脂が漏出してもこれを受け止めるための樹脂受け部17eが設けられている。保持部本体17aの上部にはモータ20が組み付けられている。モータ20のモータ軸20aはフランジ部17cと連繋している。モータ20を起動すると、回転ホルダー17bは所定方向に60°回転して新たな交換用シリンジ19をシリンジ受け取り位置Lまで回転するようになっている。尚、回転ホルダー17bの下端部においてチューブノズル19aが位置する高さにピンチバルブ19bが設けられており、各シリンジ19のチューブノズル19aを押し挟み閉止することで液だれを防いでいる。また、前述したように、シリンジ供給部17は、一対のディスペンサユニット18により共用しているため、双方のディスペンサユニット18に供給するシリンジ19を同時に交換することができる。また、一対のディスペンサユニット18は、個別にシリンジ19を交換してもよい。
【0030】
一方のディスペンスユニット18についてその構成を説明する。なお、他方のディスペンスユニット18もシリンジ供給部17を挟んで反対側に反転した配置に同様の構成を有するため説明を省略する。ディスペンスユニット18は、シリンジ供給部17に対して図示しない直動機構によって接離動可能なユニット本体18aにピストン保持部18bが上下動可能に保持されている。ピストン保持部18bの上部にはピストン18cが上下動可能に設けられている。また、ピストン保持部18bには、ピストン18cより下方にシリンジ19を受け取って保持するチャック18dが設けられている。また、チャック18dより下方には、シリンジ19やチューブノズル19aの姿勢を保持するガイド部18eが設けられている。また、チャック18dに保持された各シリンジ19のチューブノズル19aに対応する位置には、ピンチバルブ18fが各々設けられている。
【0031】
ユニット本体18aは図示しない駆動源(モータ、シリンダ等)を起動すると液材吐出位置より退避した待機位置からシリンジ保持部17へ近接してチャック18dにシリンジ19を保持する。ユニット本体18aはシリンジ19を保持したまま液材吐出位置Jへ移動してピンチバルブ19bを開放し、ピストン18cを図示しないシリンダやモータなどの駆動源により下動させてシリンジ19内に圧入することでチューブノズル19aより液状樹脂を吐出しワークWに供給する。所定量の液状樹脂をワークW上に供給したら、ピストン18cの動作を停止しピンチバルブ19bによってチューブノズル19aが閉じて、液だれによる供給樹脂量の変動や装置内の汚染を防止するようになっている。
【0032】
また、ユニット本体18aの近傍には捨て打ちカップ21が回転可能に設けられている。捨て打ちカップ21は、シリンジ19から液状樹脂5を吐出する際に、チューブノズル19a先端側の比較的品質が劣化した液状樹脂5を吐出するため設けられている。捨て打ちカップ21は、ワークWに液状樹脂を吐出する前に液材吐出位置Jへ回転移動して不要樹脂が捨て打ちされる。
【0033】
また、液材吐出位置Jには、ロボットハンド1から受け取ったワークWを載置するワーク載置部22が設けられている。ロボットハンド1で支持突起22aが挟まれる位置まで樹脂供給部B内に進入させることにより(
図1参照)、ワークWはロボットハンド1に保持された状態でキャリアプレートKが支持突起22a上に搬送される。ワーク載置部22にはロボットハンド1に吸着保持されたワークWの吸着が解かれて載置され、ワークWはキャリアプレートKが支持突起22aに支持される。ワーク載置部22には、重量計23が設けられており、ワークWの重さとワークWに吐出される液状樹脂の重さが計量される。液状樹脂の吐出量は、製品に応じて成形条件として記憶されており、目標値に対して所定の精度(例えば±0.3g程度)で吐出される。この場合、実際に樹脂が供給された樹脂の供給情報(樹脂供給部番号、シリンジ番号、樹脂供給量、供給開始から供給終了時刻など)がこのワークWに対応する稼働情報として記憶される。
【0034】
また、樹脂供給部Bでは、ピストン18cの上下方向の位置に応じてディスペンスユニット18にセットされたシリンジ19内における液状樹脂の残量を監視しシリンジ19の交換を自動的に行う。交換が必要と判断されたときには、使用後のシリンジ19をシリンジ保持部17に戻すと共に、樹脂が充填済みの使用前のシリンジ19を自動的に受け取る構成となっている。この場合、例えばシリンジ保持部17に保持されたシリンジ19が全て使用後済みとなったときに、シリンジ保持部17に保持されたシリンジ19を交換するように表示部Jに表示して作業者に指示を出す。これにより、ディスペンスユニット18に装填されたシリンジ19から樹脂供給を継続しながらシリンジ19の交換も行うことができるため、シリンジ19交換のために装置を停止する必要がなく、装置のスループットの向上に寄与することができる。
【0035】
図1に示すように、シリンジ供給部17には回転角で60°ごとにシリンジ19が6か所に保持されている。また、一対のディスペンスユニット18は、シリンジ供給部17のシリンジ受け取り位置Lと液材供給位置Jとの間を移動可能であって、シリンジ受け取り位置とシリンジ供給部17の回転中心とを結ぶ角度が120°となるように配置されている。
【0036】
これにより、例えばロボットハンド1が同じ位置から液材吐出位置J(
図2参照)にワークWを供給してディスペンスユニット18により液材を供給することができるので、液状樹脂供給装置をコンパクトに配置することができるうえに、シリンジ供給部17に回転角で60°ごとにシリンジ19を保持しておくことで、各ディスペンスユニット18もシリンジ供給部17に保持されたシリンジを同時に交換することも可能になる。
【0037】
液状樹脂が吐出されたワークWは、ワーク載置部22よりロボットハンド1に吸着保持されてプレス部Cへ搬送される。この場合、例えば樹脂供給部Bからプレス部Cへの移動に要する時間が長くなった場合、供給した液状樹脂封が吸湿してしまったり、プレス部Cに搬入する前に加熱されてしまったりするなどの不具合が発生することがある。しかしながら、多関節ロボット2を用いてワークWを短時間で移動可能な構成にしたことにより、例えばエアシリンダ等により移動可能とした所定の搬送経路上を動作させる構成と比較して、短時間かつ均一な時間で移動することができる。
【0038】
以上のように構成された2つのディスペンスユニット18でシリンジ供給部17を併用しシリンジ19の交換を自動的に行うことができる構成とすることにより、途切れなく樹脂供給を行うことができ、コンパクトな構成で複数プレス部Cにおいて連続する樹脂モールド動作に追従することができ、生産効率の向上に寄与することができる。
【0039】
尚、上記実施形態は液状樹脂を供給する装置構成について説明したが、他の樹脂(タブレット樹脂、粉末・顆粒状樹脂、或いはペースト状樹脂、シート状樹脂など)の供給装置をワークの形態に応じて適宜選択可能である。また、粉末・顆粒状樹脂などの場合には、ロボットハンド1に樹脂搬送用の構成を設け、樹脂供給部B内では樹脂をワークW上に直接供給しない構成を採用してもよい。この場合、ロボットハンド1がワークW及び樹脂を各々プレス部Cに搬入し、当該プレス部C内で加熱溶融してからワークWに触れて樹脂モールドするので、成形品質の向上に寄与することができる。
【0040】
(プレス部C)
次に
図1及び
図3を参照してプレス部Cの構成について説明する。
図1に示すように、本実施形態では複数のプレス部Cが直動ガイドレール4より奥側に併設されている。一例としてプレス部Cを2台設けたが、1台であっても3台以上であっても良い。またプレス部Cは同じ製品を樹脂モールドするモールド金型を備えていても、異なる製品を樹脂モールドするモールド金型を備えていてもいずれでも良い。プレス部Cの搬送エリア11に臨む側には仕切り壁24が設けられており、該仕切り壁24には開口部(図示せず)が設けられている。開口部は開閉可能なシャッター25によって通常は閉塞されている。シャッター25は、シリンダ、ソレノイドなどの駆動源により開閉するように設けられる。
【0041】
また、プレス部Cにはプレス装置26から搬送エリア11にかけて往復動可能なローダー32が設けられている。また、シャッター25により手前側の搬送エリア11には、図示しないワーク載置部が設けられている。ワーク載置部には、ロボットハンド1に吸着保持された液状樹脂が塗布されたワークWが受け渡され、或いはプレス装置26からローダー32によって取出されたワークWが受け渡される。
【0042】
図1において、各プレス装置26には、フィルム供給装置35が設けられている。
図3(A)に示すようにフィルム供給装置35は上型28のクランプ面を覆う長尺状のリリースフィルム36をリール間で繰り出し及び巻き取りを行う装置である。リリースフィルム36は上型面に公知の吸引機構により吸着保持されるようになっている。リリースフィルム36としては、モールド金型の加熱温度に耐えられる耐熱性を有するもので、金型面より容易に剥離するものであって、柔軟性、伸展性を有するフィルム材、例えば、PTFE、ETFE、PET、FEP、フッ素含浸ガラスクロス、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニリジン等が好適に用いられる。尚、リリースフィルム36として、クランプ面を覆う程度の大きさの短冊状に切断されたものを用いる構成を採用してもよい。
【0043】
ワークWのプレス動作について説明する。
図3(A)において、ワークWプレス装置26内に進入して例えば180℃程度に昇温された下型30にワークWをセットする。
【0044】
ワークWは直径300mmのキャリアプレートKに粘着シートSを貼って、該粘着シートSに半導体チップTを粘着させたものである。この粘着シートSは熱発泡性フィルムであり、加熱により半導体チップTの粘着力を低下させることができ、モールド後に成形品をキャリアプレートKから取り外すことができる。このため、加熱の状態によっては粘着力が低下して液状樹脂5の流動と共に移動したりするおそれがある。また、ワークWは底面積が広いにもかかわらず成形厚が極めて薄い製品である。よって、ワークWがプレス装置26の下型30に搬入されるとその時点から下型クランプ面からの熱伝導によって半導体チップTの粘着面側に供給された液状樹脂5の粘度が上昇してプレスが完了する前に硬化が進んでしまう可能性がある。
【0045】
そこで、
図3(A)において、下型30にワーク支持部としてのフロートピン37を設けてワークWが直接下型クランプ面に触れないようになっている。フロートピン37は、下型30より内蔵されたコイルばね38等によりピン先端が上型面に向けて突出するように常時付勢されている。コイルばね38はワークWを載置した状態で、フロートピン37が下型30内に完全に退避しない(ワークWと下型面との間にクリアランスが生じる)程度のばね係数のあるものが好ましい。尚、ワークWがフロートピン37により下型面よりフローティング支持されると、ローダー32のハンドと下型30との干渉を防いでかつワークWを掴み易くなるという利点がある。
【0046】
尚、フロートピン37は
図4に示すようにワークWの中心から中心角で90°ずつ間隔をあけた位置に4か所に設けられている。フロートピン37は、同図において破線で示す半導体チップTの基板実装領域Vを避けてその外側に配置されている。これは、フロートピン37を介して伝わった熱によってフロートピン37直上の粘着シートSの粘着力が下がるのを防止すると共に、上型28のクランパとフロートピン37とでキャリアプレートKをクランプした際のキャリアプレートKの撓みを減らすためである。
また、フロートピン37の数や配置は適宜増減変更してもよく、例えば中心角で120°ずつ間隔をあけた位置に3か所に設けてもよい。また、下型クランプ面からの熱伝導を抑えることができれば、断面円形や矩形や管形などの棒状、板状、枠状といった任意の形状を採用することができる。
【0047】
図3(A)は型開きしたプレス装置26にワークWが搬入された状態を示す。ワークWは、フロートピン37を押し下げながらも下型面より離間した状態でフローティング支持されている。これにより、ワークWが昇温されたモールド金型に搬入されても、粘着シートSに液状樹脂5が広がる直前まで金型クランプ面から熱が伝わり難く半導体チップTの位置ずれや液状樹脂5とともに半導体チップTが流動するのを防ぐことができる。具体的には、キャリアプレートK上に塗布された液状樹脂5はその外縁から外側に向けて拡大するように流れるため、塗布時の外縁において樹脂の流動量が最も多くフライングダイが起こりやすい。即ち、下型面から加熱されることで粘着シートSの粘着力が低下すると共に加熱により一時的に粘度が下がった液状樹脂5が半導体チップT近傍を流動するため、フライングダイが起こりやすくなる。そこで、液状樹脂5を上型面に接触させて加熱することで、半導体チップTから離れた上側の液状樹脂5を優先的に流動させると共に粘着シートSの加熱を抑制し粘着力が低下させないようにすることで、フライングダイを効率的に防止している。
また、ワークWに下型クランプ面から熱伝導し難くなるので、ゲルタイムの短い樹脂においては樹脂が広がる前に粘度が上昇し流動性が低下して未充填部分が発生するのを防いで成形品質を向上させることができる。
【0048】
図3(B)は、プレス装置26が型閉じした状態を示す。ワークWは上型28と下型30とでクランプされており、フロートピン37はコイルばね38を圧縮して先端部が下型30内へ退避した状態にある。
【0049】
圧縮成形が完了するとプレス装置26が型開きする。
図3(C)に示すように、下型30が下動すると、ワークWはモールド面がリリースフィルム36に覆われた上型28より離型し、かつ下型30のフロートピン37の先端側がコイルばね38の弾性力によって突出するため、下型30よりフローティング支持される。この状態でシャッター25が開放されるとローダー32が搬送エリア11からプレス装置26内に進入して下型30に載置されたワークWを掴んで搬送エリア11へ取出してワーク載置部に受け渡される(
図1参照)。
【0050】
(ワーク検査部D)
次にワーク検査部Dの構成について
図1を参照して説明する。ベース部39には直動レール39aが設けられている。この直動レール39aには可動ステージ40がレール長手方向に往復動可能に設けられている。可動ステージ40は例えば公知の駆動機構、ナット部がボールねじに連繋し、該ボールねじをモータにより正逆回転駆動することにより直動レール39a上を往復動するようになっている。可動ステージ40は、加熱硬化後のワークWの冷却部を兼用している。
【0051】
可動ステージ40は直動レール39の一端側であるワーク受取位置に待機している。この可動ステージ40に、プレス部Cで圧縮成形されたワークWがロボットハンド1によって載置され吸着を解除されて受け渡される。受け渡し位置にある可動ステージ40のワーク搬送機構H側には、レーザー変位計41がワークWの上下一対で設けられており、ロボットハンド1によってワークWが可動ステージ40に載置される前に該レーザー変位計41によってレーザー光を照射してワークWの厚みが計測される。制御部Gは、測定した厚みを稼働情報として記憶部47に記憶する。この場合、ワークWの厚みからキャリアプレートKの厚みを差し引くことで成形品の厚みを算出可能である。また、可動ステージ40は、直動レール39の一端側より他端側に移動する。この直動レール39の他端側の上方には外観検査部42が設けられている。外観検査部42では、成形品を一括或いは分割して撮像して外観観察によって未充填、フローマークまたはフライングダイのような成形不良がないか否かが検査される。成形の良否と不良がある場合には不良の種類や撮像画像を稼働情報として記憶部47に記憶する。検査が終了すると、ワークWを載置した可動ステージ40が受け渡し位置へ戻って、ロボットハンド1に受け渡されて、加熱硬化部Eへ搬送される。
尚、異常(想定を上回る未充填など)が検出されたときには表示部Jにその旨を通知し、装置全体の動作を止めてメンテナンスすることで、不良品が連続生産されるのを防ぐことができる。
【0052】
(加熱硬化部E)
次に加熱硬化部Eの構成について
図1を参照して説明する。加熱硬化部Eにはキュア炉43が設けられており、検査後のワークWをロボットハンド1によりキュア炉43に収納してモールド樹脂を120℃から150℃程度で加熱硬化(ポストキュア)することで加熱硬化を完了させる。キュア炉43内には、対向配置されたスリット43aが高さ方向に所定ピッチで形成されこのピッチでワークWが保持されるようになっている。ワークWをキュア炉43に収納するときには、いずれかに形成されたスリット43aに沿ってワークWを挿入して保持するようになっている。
【0053】
図1においてキュア炉43の搬送エリア11を囲む側には開口部を有する内扉44が設けられており、装置外面側には外扉45が開閉可能に設けられている。内扉44の内方には開閉扉46が各開口部を常時遮断するように個別に開閉可能に設けられている。
これにより、キュア炉43に対して開閉扉46を開閉するだけでワークをキュア炉内に搬入搬出することができるので、炉内の温度の低下を防ぎ、かつ搬送エリア11側への放熱を抑制することができる。
【0054】
また、プレス部Cで樹脂モールドしてからポストキュアを開始するまでの時間が長くなった場合、樹脂モールド部分に反りが発生してしまうことがある。しかしながら、多関節ロボット2を用いて高さ方向にもワークWをスムーズに移動可能な構成にしたことにより、高さの異なる所望のスリット43aに対していずれも短時間で移動可能となっている。このように、搬送に要する時間が成形品質に影響のあるモールド装置では多関節ロボット2による搬送時間の短縮の効果は特に大きい。
【0055】
ワーク検査部Dにおいて検査されたワークWはロボットハンド1に吸着保持されてキュア炉43へ搬送される。キュア炉43は開閉扉46が閉塞されて所定温度に加熱されている。ワークWを挿入するときは、ロボットハンド1が内扉44に近づくと制御部Gが図示しない駆動機構を制御してスリット43aに対向する開閉扉46が開放し、ロボットハンド1が炉内に進入してワークWをスリット43aに沿って挿入する。そして、ロボットハンド1の吸着を解いてワークWをキュア炉43に受け渡してからロボットハンド1がキュア炉43から退避する。ロボットハンド1が内扉44より離れると開閉扉46を閉塞する。以上の動作が繰り返し行われる。ワークWをキュア炉43に収納してから所定時間経過すると、再度ロボットハンド1がキュア炉43内に進入して、ワークWを吸着保持したままキュア炉43より搬出し冷却部Nへ搬送するようになっている。
【0056】
(冷却部)
冷却部Nは、ワーク検査部Dの上方における空間に、冷却用マガジン(図示せず)が設けられている。冷却用マガジン内の両側壁には、対向配置されたスリットが高さ方向に所定ピッチで形成されておりこのピッチでワークWを保持可能に構成されている。この場合、ロボットハンド1を任意の高さに移動可能な多関節ロボット2によって、所定のスリットに対してワークWを受渡し可能となっている。成形品の加熱硬化が完了したワークWはロボットハンド1により吸着保持されたまま冷却部Nのスリット(受け渡し位置)へ搬送されて吸着を解除されて受け渡される。この状態で所定時間放置することでワークWが自然冷却される。尚、冷却部Nは、ワーク検査部Dとは別個に設けることも可能であるが、ワーク検査部Dの空いているエリアを利用することで装置をコンパクトに構成することができる。
【0057】
(ワーク収納部F)
ワーク収納部Dの構成は前述したようにワーク供給部Aの構成と同様である。ロボットハンド1は、冷却部で冷却されたワークWを可動ステージ40より受け取って隣接する収納マガジン10へ搬送して収納する。
【0058】
(制御部G)
図1において、制御部Gは、CPU(中央演算処理装置)やROM、RAMなどの記憶部47を備え、前述した装置各部の動作を制御する。ROMには各種制御動作プログラムが記憶されているほかに、ワーク搬送対象候補リストや搬送順序情報やワークWに付されたコード情報が記憶されている。CPUは、ROMより必要な制御動作プログラムをRAMに読み出して実行させ、RAMを用いて入力情報を一次的に記憶させたり入力情報に応じた演算処理を行ったりして制御プログラムに基づいて各部にコマンドを出力する。
【0059】
制御部Gには、ワーク供給部Aの稼働情報(受け渡し済みの供給マガジンスリット番号)、コード情報読取り装置16の稼働情報(レシピ情報;樹脂条件、モールド条件、キュア条件、冷却条件)、樹脂供給部Bの情報(シリンジ番号;(樹脂の種類、樹脂の解凍時刻、収容総量)、使用料(供給毎/総量)、供給開始/完了時刻)、プレス部Cの稼働情報(金型温度曲線、クランプ圧力曲線、成形厚、フィルム使用量)、キュア炉43の稼働情報(炉内温度)、ワーク検査部Dの稼働情報(フライングダイ、成形厚)、ワーク収納部Fの情報(受取済みスリットの位置)などの情報が随時入力され、各部に必要なコマンドを出力する。制御部Gは、このような稼働情報や上述した成形条件などをワークWに紐付けして記憶する。これにより、成形後のワークWについての実際の製造条件等を確認することができる。例えば成形後のワークWのキャリアプレートKの情報コードを読取ることで、成形条件と稼働情報とを確認することができ、実際の成形品と関連する情報を容易に閲覧可能としたことにより、成形条件の最適化に利用可能となっている。
尚、制御部Gはワーク搬送機構Hを囲むように配置されているが、例えばコントローラのように有線若しくは無線により遠隔操作できるものであっても良い。
【0060】
制御部Gは、最も時間がかかる工程の繰り返しサイクルに合わせて多関節ロボット2によるワーク供給動作及びワーク取り出し動作のタイミングを制御している。ちなみに各工程の最小サイクルは、所要時間を装置数で除して算出される。本実施形態では、プレス装置26における樹脂モールド工程の最小サイクルが工程間で最大となるためこれに合わせてワークWの搬入搬出のタイミングが決められている。
【0061】
次にプレス装置26の他例について、
図5乃至
図8を参照して説明する。
図5乃至
図7はモールド金型内に減圧空間を形成して圧縮成形を行う樹脂モールド装置及びその動作について説明する。
図5(A)において、上型28は、加熱された上型キャビティ駒28aの周囲に上型クランパ28bが上型キャビティ駒28aの下面より下がった位置に設けられている。この上型キャビティ駒28aと上型クランパ28bによって形成された凹部が上型キャビティ28cとなる。上型クランパ28bは、図示しない上型ベースにばねでフローティング支持されることで上型キャビティ駒28aに対して上下動可能に設けられている。また、上型キャビティ駒28aを図示しない上型ベースにばねでフローティング支持し、このばねによって上型キャビティ駒28aで樹脂圧を加える構成を採用してもよい。尚、上型キャビティ駒28aは図示しないくさび機構を用いた可動機構により下動可能に設けることもできる。上型キャビティ28cを含む上型クランプ面にはリリースフィルム36が吸着保持されている。
【0062】
下型30は、下型ベース30aに下型キャビティ駒30bが載置されている。下型キャビティ駒30bにはフロートピン37がコイルばね38によって下型クランプ面より突出する向きに常時付勢されている。また、下型ベース30aには、下型キャビティ駒30bを囲むように下型クランパ30cがばね30dを介してフローティング支持されている。下型クランパ30cが摺動する下型ベース30aと下型キャビティ駒30bとの隙間はOリング30eによりシールされている。また、下型クランパ30cには、下型ワーク搭載部に連通する吸引孔30fが形成されている。吸引孔30fは図示しない真空吸引装置に接続されている。
【0063】
図5(A)に示すように、ワークWは、キャリアプレートKの上に貼着された粘着シートSに半導体チップTが粘着し、当該半導体チップTの粘着面側に液状樹脂5が樹脂供給部Bで供給されたものが型開きした下型30の下型クランプ面に載置される。このとき、下型クランプ面にはフロートピン37が突設されているため、ワークWは、図示しないヒータに加熱されている下型クランプ面より離間した状態で支持される。上型キャビティ28cを含む上型クランプ面には、リリースフィルム36が吸着保持されている。
【0064】
次に、
図5(B)に示すように、下型30を上昇させてモールド金型を型閉じすると、先ず上型クランパ28bと下型クランパ30cが突き当たって金型空間Uが形成され、更には図示しない真空吸引装置を作動させて金型空間Uを真空引きして減圧空間を形成する。
【0065】
次に、
図6(A)に示すように、下型30を更に上動させると上型クランパ28bがワークW(粘着シートS及びキャリアプレートK)をクランプし、上型キャビティ28cに液状樹脂5の充填を完了する。この際には、上型キャビティ駒28aからの加熱によって液状樹脂5を直接加熱することにより、樹脂を流動し易くして樹脂の充填を促進しながら、粘着シートSへの直接的な加熱は抑制することができる。
【0066】
次いで、
図6(B)に示すように、上型キャビティ駒28aを図示しない可動機構により矢印方向へわずかに下動させて最終樹脂圧を加えて圧縮成形が行われる。この際には、下型キャビティ駒30bからも加熱されることで粘着シートSも加熱されるが樹脂が流動しないため、液状樹脂5の流動と共にチップTが移動することはない。また、このときフロートピン37の先端側は下型キャビティ駒30bに退避して、ワークWが上型キャビティ駒28aと下型キャビティ駒30bによりクランプされる。これにより、モールド樹脂の未充填をなくしかつ樹脂に混入するエアー抜きを行うことができる。
【0067】
圧縮成形が終了すると、真空吸引動作を停止し、下型30が下動してモールド金型が型開きする。
図7に示すように、モールド樹脂はリリースフィルム36から離型し、ワークWは下型クランプ面に突出したフロートピン37によって支持される。ワークWは、ローダー32により下型30より搬送エリア11に設けられたワーク載置部に取り出される。その後、ロボットハンド1により吸着保持されてワーク検査部へ搬送される。このように、金型クランプ状態で減圧空間を形成することで、樹脂の流動面積が広いワークW上を流動するモールド樹脂に混入するエアーを減少させて、成形品質を向上させることができる。
【0068】
尚、上型クランパ28bと下型キャビティ駒30bとでキャリアプレートKをクランプして、キャリアプレートKを下型キャビティ駒30bによって加熱しながら型締めすることで上型キャビティ駒28aを相対的に下降させるように動作させることもできる。このような場合であっても、下型キャビティ駒30b上に直接配置しているわけではないので粘着シートSの加熱は抑制できる。これにより、粘着シートSの粘着力が下がる前に液状樹脂5の流動を完了させることができれば、液状樹脂5の流動によるチップの移動は防止できる。
【0069】
次に圧縮成形装置のさらなる他例について
図8を参照して説明する。尚、
図5乃至
図7と同一部材には同一番号を伏して説明を援用するものとする。
本実施形態は、下型キャビティ駒30bにはフロートピン37が設けられておらず、ワーク支持部を下型ベース部30aにフローティング支持された下型クランパ30cにより代用している点が異なっている。下型クランパ30cはキャリアプレートKの外周縁部を支持することでワークWを下型クランプ面より離間させて支持するようになっている。
【0070】
これによれば、ワークWをモールド金型に搬入すると、キャリアプレートKの外周縁部を下型クランパ30cにより支持するので、格別なワーク支持部を設けなくとも、ワークWに下型クランプ面から熱伝導して粘着シートSの粘着力が低下して半導体チップTが位置ずれしたり液状樹脂5の流動と共に移動したりするおそれがない。また、ワークWがプレス装置26の下型30に搬入されるとその時点から下型クランプ面からの熱伝導によって半導体チップTの粘着面側に供給された液状樹脂5の粘度が上昇してプレスが完了する前に硬化が進むのを防ぐこともできる。更には、金型クランプ状態では上型クランパ28bと下型クランパ30cとでキャリアプレートKの外周縁部を挟みこむので、ワークWの反りを防ぐことができる。
【0071】
次に圧縮成形装置の他例について
図9を参照して説明する。
図8では下型30に対してワークWを搬入する構成になっていたが、上型28に対してワークWを搬入する構成としてもよい。たとえば、該ロボットハンド1が液状樹脂の塗布されたワークWをチャックハンドにより掴んで反転して上型28に供給する構成とすることができる。この場合、ある程度チクソ性が高く樹脂モールド前の状態で反転させても樹脂が落下しない程度の粘度を有するエポキシ樹脂等を用いるのが好ましい。
【0072】
本実施形態における上型28は、キャリアプレートKの縁部で開閉してこれを支持可能な爪部28bを有してワークWを保持可能に構成される。
図9(A)は型開きしたプレス装置26にワークWが搬入された状態を示す。ワークWは、キャリアプレートKが上型28のクランプ面から離間した状態で爪部28bによって上型28に吊り下げ保持(フローティング支持)されている。この場合、クランプするまで上型28のクランプ面からキャリアプレートKを離して保持することにより、液状樹脂への加熱を抑制される。これにより、液状樹脂の粘度が加熱によって一時的に低下して液状樹脂が下型30に落下してしまうような事態を効果的に回避できる。また、E−WLPに用いられる粘着シートの加熱を遅らせることもでき、フライングダイの防止にも有効である。下型30は下型キャビティ駒30bとその周囲に設けられた下型クランパ30cにより下型キャビティ30g(凹部)が形成されている。この下型キャビティ30gを含む下型クランプ面には、リリースフィルム36が吸着保持されている。
【0073】
図9(B)は、プレス装置26が型閉じした状態を示す。ワークWは上型28と下型30とでクランプされて圧縮成形される。圧縮成形が完了するとプレス装置26が型開きする。
図9(C)に示すように、下型30が下動すると、ワークWはモールド面がリリースフィルム36に覆われた下型30より離型し、かつ上型28に吸着保持されたままになる。この状態で搬送エリア11に待機する前述した多関節ロボット2のロボットハンド1を反転させてプレス装置26内へ進入させて、ワークWを掴んだまま上型28面への吸着を解除することで、ロボットハンド1に受け渡して搬出することができる。
この場合には、プレス部Cに設けたローダー32を省略して、ロボットハンド1を反転させた状態で直接型開きしたプレス装置26に進入させてワークWを上型28に吸着保持させ、成形後のワークWを上型28より受け取ってプレス装置26から取り出すことが可能になる。
【0074】
図10は、キャリアプレートKの他例を示す。キャリアプレートKは
図4に示すように円形に限らず
図10破線に示すような矩形状(角型)のキャリアプレートKを用いても良い。
図10は、ワークW及びキャリアプレートKを載置する下型30の平面図である。下型キャビティを形成する下型キャビティ駒30c及びその周囲に配置された下型クランパ30cが矩形状(角型)に形成されている。下型クランパ30cのクランプ面には、コーナー部にエアベント溝30gが放射状に形成されている。また、下型キャビティ駒30cのコーナー部近傍であってワークWの半導体チップの基板実装エリアV外にはフロートピン37が図示しないコイルばねに付勢されてフローティング支持されている。
【0075】
液状樹脂5はワークWの中央部に山盛り状に塗布され、金型がクランプするにしたがって拡径方向に押し広げられるが、液状樹脂5の流動量を少なくするためには、ライティングディスペンスによって、キャビティ形状に倣って矩形状に塗布するようにしても良い。尚、キャリアプレートK、下型キャビティ駒30c及びその周囲に配置された下型クランパ30cは矩形状に限らず、四角以外の多角形や真円以外の変形した円形など他の形状であっても良い。
【0076】
また、上述した角部分のあるキャリアプレートKを用いる場合のようにエアベント溝30gを設ける必要があるときには、エアベント溝30gにおける樹脂バリを防止するためにエアベントピン30hを設ける構成としてもよい。例えば上型内においてコイルばねで一端面側から加圧したエアベントピン30hをクランパに対して可動に配置すると共に、金型の開閉量に応じてエアベントピン30hの他端面がクランパの端面から突出してエアベント溝30gを塞ぐような構成とすることができる。この場合、未充填の防止のため、金型を閉じることで液状樹脂5が押し広げられフローフロントがエアベント溝30gの近くまで到達したときに、エアベントピン30hがエアベント溝30gを塞ぐようにエアベントピン30hの先端位置を調整するのが好ましい。
【0077】
なお、エアベントピン30hは、金型の構成に応じて下型に設けてもよく、上型及び下型の両方に設けてもよい。また、コイルばねに変えてエアシリンダやサーボモータなどの駆動機構を用いて開度を調整する構成を採用することもできる。また、エアベントピン30hによるエアベント溝30gの閉塞が完了してからフロートピン37を下型キャビティ駒内に退避させるように各ピンの動作を調整することもできる。
【0078】
上述した樹脂モールド装置を用いれば、モールド金型に搬入されたワークWへの熱伝導を遅らせて半導体チップTを粘着する粘着シートSの粘着力の低下を防ぎかつ粘着面に供給されたモールド樹脂の粘度が上昇するのを抑えて樹脂の流動性を確保することで成形品質を向上させることができる。
【0079】
尚、樹脂モールド装置は、樹脂供給部Bにディスペンスユニット18をプレス部Cにプレス装置26を各々2台ずつ設けた例について説明したが更に増やしてもよい。またワーク搬送機構Hに備えた多関節ロボットも1台に限らず複数台設けて、搬送エリアを分担させてワークWの搬送を行うことも可能である。
また、プレス装置26は圧縮成形装置に限らずトランスファモールド装置であってもよい。
また、ワーク搬送機構は、多関節ロボットによらず、通常のローダー及びアンローダーを用いた樹脂モールド装置であっても良い。