特許第5663789号(P5663789)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5663789圧縮空気用オイル及びオゾン分離除去装置
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  • 特許5663789-圧縮空気用オイル及びオゾン分離除去装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5663789
(24)【登録日】2014年12月19日
(45)【発行日】2015年2月4日
(54)【発明の名称】圧縮空気用オイル及びオゾン分離除去装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/04 20060101AFI20150115BHJP
   B01J 20/20 20060101ALI20150115BHJP
   B01J 20/26 20060101ALI20150115BHJP
   F04B 39/16 20060101ALI20150115BHJP
【FI】
   B01D53/04 C
   B01J20/20 B
   B01J20/26 A
   F04B39/16 D
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-150041(P2013-150041)
(22)【出願日】2013年7月19日
(65)【公開番号】特開2015-20112(P2015-20112A)
(43)【公開日】2015年2月2日
【審査請求日】2014年2月13日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000154521
【氏名又は名称】株式会社フクハラ
(74)【代理人】
【識別番号】100129056
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 信雄
(72)【発明者】
【氏名】福原 廣
(72)【発明者】
【氏名】植松 健一
(72)【発明者】
【氏名】石黒 衆亮
【審査官】 神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−107916(JP,A)
【文献】 特開平07−096176(JP,A)
【文献】 特開2013−116463(JP,A)
【文献】 実開昭59−162919(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/02−53/12
B01D 46/00−46/54
B01J 20/00−20/34
F04B 39/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気圧縮機から吐出された圧縮空気中の異物を分離・除去するための圧縮空気用オイル及びオゾン分離除去装置であって、
中空部を有し上方及び下方が夫々開口した筒状体から成る中空筒本体と、所定箇所に流入口を備え且つ締結手段を介して前記中空筒本体の下方開口端を閉塞可能な底板と、所定箇所に排気口を備え且つ締結手段を介して前記中空筒本体の上方開口端を閉塞可能な蓋体と、から成り、
前記中空筒本体の中空部内に、ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリエチレンテフタレートの中から選択される少なくとも一種若しくは複数種の不織布を含む繊維状物に酸変性若しくは酸化させた高級脂肪酸あるいはポリオレフィンワックスを添加または塗布したものを所要長さ・幅・厚さの直方体形状に成形して成る油吸着材と活性炭とが交互に積層した状態で充填されていることを特徴とする圧縮空気用オイル及びオゾン分離除去装置。
【請求項2】
前記底板の上面に、前記流入口と略同一径の孔部を複数備えた所要高さを有する外周側壁並びに該外周側壁で囲まれた空間上方を閉塞する天面板から成る流路形成体が備えられることで、流入口から流入した圧縮空気が該流路形成体の孔部を介して中空筒本体の中空部に流入されることを特徴とする請求項1に記載の圧縮空気用オイル及びオゾン分離除去装置。
【請求項3】
前記蓋体の下方に、排気口に連結された濾過フィルターが装着されることで、中空筒本体の中空部内の圧縮空気が該濾過フィルターを介して排気口から排気されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の圧縮空気用オイル及びオゾン分離除去装置。
【請求項4】
前記中空筒本体の中空部内に油吸着材と活性炭とが交互に積層した状態で充填される場合において、最下端面、最上端面及び油吸着材層と活性炭層との境界面のうち選択される少なくとも一箇所以上に、所定径を有する通気孔を複数備えたパンチングプレートが配設されて成ることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の圧縮空気用オイル及びオゾン分離除去装置。
【請求項5】
前記中空筒本体の中空部内に油吸着材と活性炭とが交互に積層した状態で充填される場合において、最上層及び最下層には油吸着材が積層されて成ることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の圧縮空気用オイル及びオゾン分離除去装置。
【請求項6】
前記中空筒本体の中空部内に油吸着材と活性炭とが交互に積層した状態で充填される場合において、所定圧力で加圧しつつ油吸着材及び活性炭が積層・充填されて成ることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の圧縮空気用オイル及びオゾン分離除去装置。
【請求項7】
前記活性炭は、粒状に成形されて成ることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の圧縮空気用オイル及びオゾン分離除去装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮空気内の異物を分離・除去するための装置に関し、詳しくは、空気圧縮機が吐出する圧縮空気に含有されるオイルミストやオゾンなどの異物を分離・除去するための装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
空気圧縮機が吐出する圧縮空気内には、オイルミストやスラッジなどの異物が含有している。従来より、かかる異物を圧縮空気から分離・除去すべく、圧縮空気圧回路の所定中間箇所、特に末端箇所において、グラスファイバーや樹脂を編み込み若しくは中空糸膜により成形されたミストフィルターを使用することが一般的であった。
【0003】
しかしながら、上記従来のミストフィルターによれば、油滴やスラッジにより目詰まりが発生し易いといった問題があった。また、上記従来のミストフィルターでは、圧縮空気の通過距離が短いためにオイルミストを完全に除去することができず、多量のオイルミストが残留したまま圧縮空気を吐出してしまうといった問題があった。
【0004】
上記問題を解決すべく、特開2003−62417号公報(特許文献1)や特開2006−297363号公報(特許文献2)に記載の技術提案がなされている。すなわち、特許文献1及び特許文献2では、夫々2つ若しくはそれ以上の円筒から構成され、外側が外部と接する外筒の内側に該外筒より小径の内筒を配置すると共に、内筒の内側と外側とが連通され、かつ、内筒または外筒のどちらか若しくは両方に油吸着材を充填して成り、長さ方向でオイルミストを吸着させる装置が提案されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載の技術提案は、長さ方向でオイルミストを分離・除去して通過距離を稼ぐものであるが、圧縮空気は流れ易いところへ集中して流れるため、使用開始直後は略垂直方向のフィルター詰りが甘いところへより多く流れてしまって、性能が充分に発揮されないことがあり、また油吸着材の充填方法如何では、装置としての吸着量や圧力損失の概算を数値でもって制御することが難しく、経験や勘に基づき実施されるといった問題があった。
【0006】
また、特許文献1に記載の技術提案は、フィルターが保持できなくなったオイルを外筒下部に貯留するものであるため、使用後相当時間の経過に伴い貯留された油でフィルターエレメントが浸油してしまって性能が著しく低下してしまうと共に、貯留した油が排気口まで巻き上げられて圧縮空気と共に吐出されてしまうといった問題があった。
【0007】
さらに、特許文献2に記載の技術提案によれば、圧縮空気を上蓋側から入気した場合に、重力と圧縮空気の圧力で下方へ落ちてきた油滴が底板と多孔板との空間部に貯留することとなって、その貯留した油が排気口から圧縮空気と共に吐出されてしまうといった問題があった。
【0008】
またさらに、特許文献2に記載の技術提案によれば、内筒の内側と外側を連通させる通路の大きさがある程度大きくても、圧縮空気は1箇所あるいは2箇所からの流入に集中することとなり、また、そもそも圧縮空気の流れを折り返す構造であるため、圧力損失が累積し易い構造であった。
【0009】
さらにまた、特許文献1及び特許文献2に記載の技術提案は、油吸着材がポリエチレンやポリプロピレン、ポリエチレンテフタレート等から成るものであったが、それのみでは一度吸着したオイルの保持力が弱く、また、酸化したオイルミストの分離・除去効率が著しく悪いものであった。
【0010】
そして、空気圧縮機が吐出する圧縮空気から有害な異物を分離・除去する従来の技術提案では、単にオイルミストのみを分離するだけの機能を有するにとどまり、圧縮空気中のオゾンを除去できるものではなかった。これにより、少なくとも圧縮比分だけ大気より濃度の上がったオゾンは、当該装置でオイルだけを分離・除去してしまうと、オイルのように容易に酸化でき得る相手をなくし、装置以降の2次側機器等において使用されているSBR(スチレンブタジュンゴム)やNBR(ニトリルゴム)、NR(天然ゴム)等のジェン系ゴムを使用したパッキン材等を酸化劣化させることとなって、シール不良を引き起こすといった問題があり、その害を防ぐためにハロゲン類を結合させた素材から成るパッキン類を備える装置へと変更するにも、多くの手間と費用がかかるという問題があった。
【0011】
本出願人は、以上のような従来の圧縮空気用異物分離除去装置における機能性の問題点に着目し、油吸着材層における所定中間層位置に活性炭層を設けることで、上記問題点を解決することができないものかとの着想の下、装置本来の機能性向上を実現すると共に、圧縮空気中のオゾンをも分離・除去することが可能な異物分離除去装置を開発し、本発明における「圧縮空気用オイル及びオゾン分離除去装置」の提案に至るものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2003−62417号公報
【特許文献2】特開2006−297363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は上記問題点に鑑み、圧縮空気用異物分離除去装置の機能性向上を実現すると共に、圧縮空気中のオゾンをも分離・除去することが可能な圧縮空気用オイル及びオゾン分離除去装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、本発明は、空気圧縮機から吐出された圧縮空気中の異物を分離・除去するための圧縮空気用オイル及びオゾン分離除去装置であって、中空部を有し上方及び下方が夫々開口した筒状体から成る中空筒本体と、所定箇所に流入口を備え且つ締結手段を介して前記中空筒本体の下方開口端を閉塞可能な底板と、所定箇所に排気口を備え且つ締結手段を介して前記中空筒本体の上方開口端を閉塞可能な蓋体と、から成り、前記中空筒本体の中空部内に、油吸着材と活性炭とが交互に積層した状態で充填された構成となっている。
【0015】
また、本発明は、前記底板の上面に、前記流入口と略同一径の孔部を複数備えた所要高さを有する外周側壁並びに該外周側壁で囲まれた空間上方を閉塞する天面板から成る流路形成体が備えられることで、流入口から流入した圧縮空気が該流路形成体の孔部を介して中空筒本体の中空部に流入される構成を採用する。
【0016】
さらに、本発明は、前記蓋体の下方に、排気口に連結された濾過フィルターが装着されることで、中空筒本体の中空部内の圧縮空気が該濾過フィルターを介して排気口から排気される構成を採用する。
【0017】
またさらに、本発明は、前記中空筒本体の中空部内に油吸着材と活性炭とが交互に積層した状態で充填される場合において、最下端面、最上端面及び油吸着材層と活性炭層との境界面のうち選択される少なくとも一箇所以上に、所定径を有する通気孔を複数備えたパンチングプレートが配設された構成となっている。
【0018】
さらにまた、本発明は、前記中空筒本体の中空部内に油吸着材と活性炭とが交互に積層した状態で充填される場合において、最上層及び最下層には油吸着材が積層された構成を採用し得る。
【0019】
そしてまた、本発明は、前記中空筒本体の中空部内に油吸着材と活性炭とが交互に積層した状態で充填される場合において、所定圧力で加圧しつつ油吸着材及び活性炭が積層・充填された構成を採用することもできる。
【0020】
またさらに、本発明は、前記油吸着材について、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテフタレートの中から選択される少なくとも一種若しくは複数種の不織布を含む繊維状物に、酸変性若しくは酸化させた高級脂肪酸あるいはポリオレフィンワックスを添加または塗布したものを、所要長さ・幅・厚さの直方体形状に成形した構成を採用している。
【0021】
そしてさらに、本発明は、前記活性炭について、粒状に成形された構成とすることも可能である。
【発明の効果】
【0022】
本発明にかかる圧縮空気用オイル及びオゾン分離除去装置によれば、油吸着材と活性炭とを積層しつつ充填した構造であるため、油吸着材により酸化していないオイルミストを分離・除去することができると共に、活性炭により酸化したオイルミストを分離・除去することができ、さらに活性炭がオゾンを分解・除去することが可能となって、当該装置以降に接続された2次側機器をオイルとオゾンから保護可能にするといった、従来にない優れた効果を奏する。
【0023】
また、本発明にかかる圧縮空気用オイル及びオゾン分離除去装置によれば、底板に流入口を備えると共に蓋体に排気口を備えることで、より重力のかかる底板側から圧縮空気を流入させることにより、分離・除去されたオイルが重力により油吸着材や活性炭の下部領域に滞留したり、さらに下方へ垂れ滴ったりして、圧縮空気中に混入することがあったとしても、排気口に至るまでの間に再度分離・除去することが可能であるといった、優れた効果を奏するものである。
【0024】
さらに、本発明にかかる圧縮空気用オイル及びオゾン分離除去装置によれば、流路形成体を備えることで、該流路形成体の外周側壁に備えられる複数の孔部により圧縮空気を分流しつつ中空筒本体の中空部内へ流入させることが可能となり、該中空部内に積層・充填された油吸着材及び活性炭の能力を最大限に引き出すことができると共に、孔部の径を流入口と略同一径とすることで、圧縮空気の圧力損失を抑えることが可能であるといった、優れた効果を奏するものである。
【0025】
またさらに、本発明にかかる圧縮空気用オイル及びオゾン分離除去装置によれば、積層された油吸着材及び活性炭の最下端面や最上端面、そして油吸着材層と活性炭層との境界面のうち選択される少なくとも一箇所以上にパンチングプレートを配設することで、該パンチングプレートに複数備えられ通気孔により圧縮空気を分流して相当数の流路を形成することが可能となって、積層・充填された油吸着材及び活性炭の能力を最大限に引き出すことが可能となる。
【0026】
さらにまた、本発明にかかる圧縮空気用オイル及びオゾン分離除去装置によれば、所定圧力で加圧しつつ油吸着材及び活性炭を積層・充填する構成を採用することにより、中空筒本体の中空部内における充填むらを無くすことができ、油吸着材・活性炭夫々の一重量当たりの吸着能力、および夫々の実際の充填量との積で得られる装置としての吸着能力、そして充填密度による圧力損失を、いずれも正確な数値でもって計算・制御することが可能となる。
【0027】
そしてまた、本発明にかかる圧縮空気用オイル及びオゾン分離除去装置によれば、蓋体の下方に排気口に連結された濾過フィルターを装着する態様を採用することで、オゾンが活性炭に触れて二酸化炭素に変化した際に発生する該活性炭の粒径の細かい微粉末を濾過フィルターで除去することが可能となって、該微粉末が2次側機器へ漏出するのを防止することが可能となる。
【0028】
またさらに、本発明にかかる圧縮空気用オイル及びオゾン分離除去装置によれば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテフタレートの中から選択される油吸着材に、酸変性若しくは酸化させた高級脂肪酸あるいはポリオレフィンワックスを添加または塗布することによって、油吸着材の親油性・オイル保持力を高めることが可能となって、小形の集合体であっても充分にオイルを保持することができると共に、表面積を増やしつつも圧縮空気の通りを良好にし、圧力損失を抑えることを可能にするといった、優れた効果を奏するものである。
【0029】
そしてさらに、本発明にかかる圧縮空気用オイル及びオゾン分離除去装置によれば、活性炭が粒状に成形されることで、該活性炭の表面積を増やしつつも圧縮空気の通りを良好にし、圧力損失を抑えることを可能にするといった、優れた効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明にかかる圧縮空気用オイル及びオゾン分離除去装置の実施形態を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明にかかる圧縮空気用オイル及びオゾン分離除去装置1は、中空部11を有し上方及び下方が夫々開口した筒状体から成る中空筒本体10と、所定箇所に流入口22を備え且つ締結手段Tを介して前記中空筒本体10の下方開口端を閉塞可能な底板20と、所定箇所に排気口32を備え且つ締結手段Tを介して前記中空筒本体10の上方開口端を閉塞可能な蓋体30と、から成り、前記中空筒本体10の中空部11内に、油吸着材61と活性炭62とが交互に積層した状態で充填されていることを最大の特徴とする。以下、本発明にかかる圧縮空気用オイル及びオゾン分離除去装置1の実施形態を、図面に基づいて説明する。
【0032】
なお、本発明にかかる圧縮空気用オイル及びオゾン分離除去装置1は、以下に述べる実施形態に特に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内、すなわち同一の作用効果を発揮できる形状や寸法、材質等の範囲内で適宜変更することができる。
【0033】
図1は、本発明にかかる圧縮空気用オイル及びオゾン分離除去装置1の実施形態を示す側断面図である。
本発明にかかる圧縮空気用オイル及びオゾン分離除去装置1は、空気圧縮機から吐出された圧縮空気中の異物を分離・除去するための装置であって、主な構成として、中空筒本体10と、底板20と、蓋体30と、から構成されている。
【0034】
中空筒本体10は、中空部11を有し、上方及び下方が夫々開口した筒状体から構成されている。中空筒本体10の外形状については、筒状であれば特に限定はなく、円筒形状や多角筒形状が考え得る。該中空筒本体10の下方及び上方の開口端には、夫々底板20及び蓋体30が装着される。そしてまた、中空部11内には油吸着材61及び活性炭62が積層・充填されることとなる。
【0035】
底板20は、前記中空筒本体10における下方の開口端を閉塞可能な大きさを有し、所定箇所(好ましくは平面視略中央箇所)に流入口22を備えた構成となっている。該底板20の中空筒本体10の下方開口端への締結手段については、特に限定はないが、例えば螺子等の締結手段により装着されることとなる。
【0036】
前記底板20の上面には、流路形成体40を備える態様が考え得る。該流路形成体40は、所要高さを有する外周側壁42と、該外周側壁42で囲まれた空間上方を閉塞する天面板44と、から構成されており、外周側壁42には、前記流入口22と略同一径を有する孔部46が複数備えられている。かかる複数の孔部46は、外周側壁42に等間隔で備えられるのが望ましく、さらには4乃至16個の孔部46が外周側壁42に備えられる態様が好ましい。
【0037】
該流路形成体40が備えられることで、底板20の流入口22から上方略垂直方向に向け流入した圧縮空気が、該流路形成体40の複数の孔部46を介して側方へ方向を変えつつ分流され、その後再び上方略垂直方向に向きを変えて中空筒本体10の中空部11内に均一に流入されることとなる。なお、孔部46の径を流入口22と略同一径とすることで、圧縮空気の圧力損失を極力抑えることが可能となる。
【0038】
蓋体30は、前記中空筒本体10における上方の開口端を閉塞可能な大きさを有し、所定箇所(好ましくは平面視略中央箇所)に排気口32を備えた構成となっている。該蓋体30の中空筒本体10の上方開口端への締結手段については、前記底板20同様、特に限定はないが、例えば螺子等の締結手段により装着されることとなる。
【0039】
前記蓋体30の下方には、濾過フィルター50が装着される態様が考え得る。該濾過フィルター50は、底面が閉塞されると共に上方が開放され且つ外周側面にはフィルターエレメント52が配備された筒状体構造となっており、開放された上方箇所を蓋体30の排気口32に連結することで、蓋体30の下方に装着される。
【0040】
なお、フィルターエレメント52は粒径0.1マイクロメートル程度の濾過特性を有するものとし、濾過フィルター50による圧力損失が約1〜20kPa程度に抑えることが望ましい。かかる濾過フィルター50を備えることで、圧縮空気中に含まれる活性炭62の微粉末を濾過フィルター50で除去してから排気口32を介して排気することとなって、該微粉末の2次側機器への漏出を防止することが可能となる。
【0041】
油吸着材61の材質については、ポリエチレンやポリプロピレン、ポリエチレンテフタレートなど、従来から用いられている常法のものを使用すれば足り、本発明においては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテフタレートの中から選択される少なくとも一種若しくは複数種の不織布を含む繊維状物に、酸変性若しくは酸化させた高級脂肪酸あるいはポリオレフィンワックスを添加または塗布し、それを所要長さ・幅・厚さの直方体形状に成形したものを用いる態様を採用する。
【0042】
上記の通り、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテフタレートの繊維状物に、酸変性若しくは酸化させた高級脂肪酸あるいはポリオレフィンワックスを添加または塗布することによって、油吸着材61の親油性・オイル保持力を高めることが可能となる。
【0043】
油吸着材61を直方体形状に成形する際の寸法については、特に限定はないが、例えば長さ約10mm、幅約5mm、厚さ約5mm程度の小形の直方体形状とすることが考え得る。これにより、小形の集合体であっても充分にオイルを保持することができると共に、表面積を増やしつつも圧縮空気の通りを良好にし、圧力損失を抑えることを可能にする。


【0044】
活性炭62については、従来から用いられている常法のものを使用すれば足り、原材料等についても植物質や石炭質、石油質など特に限定するものではなく、酸化したオイルの分離・除去と、オゾンの分解とのバランスで、平均的なマクロポアとミクロポアの面積に依存する両者の吸着効率などを考慮して適宜決定される。なお、本発明で使用する活性炭62として、好ましくは、粒状に成形されたものを用いる態様を採用する。
【0045】
活性炭62を粒状に成形する際の寸法については、特に限定はないが、例えば粒径が約1〜5mm程度とすることが考え得る。これにより、活性炭62の表面積を増やしつつも圧縮空気の通りを良好にし、圧力損失を抑えることを可能にする。
【0046】
以上の各構成要素から、本発明にかかる圧縮空気用オイル及びオゾン分離除去装置1は構成される。すなわち、中空筒本体10の下方開口端を締結手段Tを介して底板20により閉塞し、中空筒本体10の上方開口端から中空部11内へ油吸着材61及び活性炭62を交互に積層した状態で充填し、最後に中空筒本体10の上方開口端を締結手段Tを介して蓋体30により閉塞することで、本発明にかかる圧縮空気用オイル及びオゾン分離除去装置1が完成する。
【0047】
このように、中空筒本体10の中空部11内に油吸着材61と活性炭62とを交互に積層・充填する場合において、該油吸着材61と活性炭62の積層順については特に限定はないが、より好ましきは、図面に示すように、最上層及び最下層には油吸着材61が積層される構成態様を採用し得る。かかる態様を採用することで、酸化していないオイルの活性炭への付着を極力防げ、活性炭の寿命を延ばすことができ、また、装置の2次側以降にオイルが持ち出されることを極力防ぐことができる。
【0048】
また、中空筒本体10の中空部11内に油吸着材61と活性炭62を積層・充填する場合において、上方から所定圧力で加圧しつつ油吸着材61及び活性炭62を押し込むように積層・充填することが望ましい。これにより、充填むらを無くすことができ、油吸着材61・活性炭62夫々の一重量当たりの吸着能力、および夫々の実際の充填量との積で得られる装置としての吸着能力、そして充填密度による圧力損失を、いずれも正確な数値でもって計算・制御することが可能となる。
【0049】
ところで、上記の通り中空筒本体10の中空部11内に油吸着材61及び活性炭62を交互に積層した状態で充填する際に、その最下端面あるいは最上端面若しくは油吸着材61層と活性炭62層との境界面に、パンチングプレート70を配設する態様が可能である。かかるパンチングプレート70は、選択的に少なくとも一箇所以上に配設されるものであり、図面では最下端面と油吸着材61層と活性炭62層との境界面の二箇所に夫々パンチングプレート70を配設した態様について示している。
【0050】
該パンチングプレート70は、中空筒本体10の中空部11内に略水平状に挿嵌可能な平板であって、所定径を有する通気孔が複数備えられた構成となっている。かかる通気孔は、好ましくは2mm以上6mm以下の径を有し、また、隣接する通気孔同士が少なくとも1mm以上の間隔をおいて備えられる。
かかるパンチングプレート70を配設することで、複数の通気孔により圧縮空気を分流して相当数の流路を形成することが可能となって、積層・充填された油吸着材61及び活性炭62の能力を最大限に引き出すことが可能となる。
【0051】
以上の構成態様により完成する圧縮空気用オイル及びオゾン分離除去装置1の作用並びに効果については、次の通りとなる。
すなわち、底板20の流入口22から上方略垂直方向に流入した圧縮空気は、流路形成体40の外周側壁42に備えられた複数の孔部46を介して側方へ方向を変えつつ分流される。該孔部46を通過した圧縮空気は、その後再び上方略垂直方向に向きを変えて中空筒本体10の中空部11内に均一に流入され、油吸着材61層及び活性炭62層を夫々通過しつつ上昇する。このとき、圧縮空気中の酸化していないオイルミストは油吸着材61により分離・除去され、また、圧縮空気中の酸化したオイルミスト及びオゾンは活性炭62により分離若しくは分解・除去されることとなる。そしてオイルミスト及びオゾンが除去された圧縮空気は、濾過フィルター50の外周側面に配備されたフィルターエレメント52を通過することで活性炭62がオゾンを分解した際に発生する微粉末を除去した後、最終的に蓋体30の排気口32から外部へ排気されることとなる。
【0052】
以上、本発明にかかる圧縮空気用オイル及びオゾン分離除去装置1の基本的構成態様及び作用効果について説明したが、本発明は上記実施形態や図面に示す構成態様に限定されるものではない。
例えば、図面では、油吸着材61が最上層及び最下層の二層にのみ積層・充填され、活性炭62が該油吸着材61層に挟まれた一層にのみ積層充填されている構成態様について示しているが、油吸着材61及び活性炭62を何層にもわたってより多く積層・充填する態様も可能であり、また、その量も各々変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、圧縮空気用オイル及びオゾン分離除去装置1において、中空筒本体10の中空部11内に油吸着材61と活性炭62とを交互に積層した状態で充填することで、装置本来の機能性向上に資すると共に、圧縮空気中のオゾンをも分離・除去することが可能であり、食品加工や三次元測定機・精密機器における加工、清掃のほか、圧縮空気を使用するあらゆる分野において本発明を採用することが可能であって、本発明における「圧縮空気用オイル及びオゾン分離除去装置」の産業上の利用可能性は大であると思料する。
【符号の説明】
【0054】
1 圧縮空気用オイル及びオゾン分離除去装置
10 中空筒本体
11 中空部
20 底板
22 流入口
30 蓋体
32 排気口
40 流路形成体
42 外周側壁
44 天面板
46 孔部
50 濾過フィルター
52 フィルターエレメント
61 油吸着材
62 活性炭
70 パンチングプレート
T 締結手段
図1