【実施例1】
【0011】
本発明の基板内蔵用チップ抵抗器は、
図1に示すように、表面と裏面とを有する厚さが100μm程度のアルミナ等の絶縁性基板11の表面に、厚さが10μm程度のAg−Pd等の厚膜焼成体からなる一対の内部電極12a,12bを備え、該一対の内部電極間に跨るようにRuO
2等の厚膜焼成体からなる抵抗膜13が配置されている。抵抗膜13はガラスコートからなる第1保護膜17およびエポキシ樹脂等のオーバコートからなる第2保護膜18に被覆されている。
【0012】
すなわち、保護膜は、抵抗膜13上に形成され抵抗膜全体を覆う第1保護膜17と、該第1保護膜上に形成されその端部以外を覆う第2保護膜18とからなり、電流方向における第1保護膜17の長さは、第2保護膜18の長さよりも長い。そして、第1保護膜17は、内部電極12a,12bの少なくとも一部が露出するように形成されている。また、第2保護膜18は抵抗膜13が形成された領域の少なくとも一部を覆い、内部電極12a,12bとオーバーラップしない範囲で形成されている。これにより、第2保護膜が短いので、塗り重ねによる高さ寸法の増大を低減でき、電極形成部分における高さ寸法を均一化できる。
【0013】
そして、内部電極12a,12bの露出部と接続され、該電極12a,12bと保護膜17および保護膜18の端部を覆うように形成された一対の第2内部電極14a,14bを備える。第2内部電極14a,14bの厚さは20μm程度である。この第2内部電極14a,14bは、実施例1ではNiを主な導電材料として含有する導電性樹脂であり、この導電性樹脂のペーストをスクリーン印刷で塗布し、加温硬化することにより形成する。導電性樹脂ペーストであるので下層の凹凸を吸収して表面の平坦性が高く、且つ第2保護膜18を覆った広い電極面積が得られる。これにより、一対の第2内部電極14a,14bの間隔は、一対の内部電極12a,12bの間隔よりも狭くでき、広い電極面積と平坦性が得られるので、後述するように良好な実装性が得られる。
【0014】
そして、第2内部電極14a,14bはそれぞれ厚さ7μm程度のCuメッキ層からなる外部電極15a,15bにより被覆されている。この外部電極15a,15bは実装時のレーザビームエッチングによるビア形成に際して、レーザビームの衝撃から内部電極や第2内部電極を保護するためのストッパ層として機能すると共に、回路基板の配線層に対して良好な接続性が得られる。
【0015】
なお、電流方向と直交する方向における第2内部電極14a,14bの幅は、内部電極12a,12bの幅よりも大きくすることが好ましく、絶縁性基板11の幅と等しくしている(
図4(d)参照)。これにより、外部電極15,15を広面積化し、且つ外部電極表面の平坦性を向上させることができる。
【0016】
絶縁性基板11の裏面側には、文字または図形または記号からなるマーキング19a,19bが形成されている。このマーキング19a,19bは、外部電極15a,15bの中央部の直下に設けることが好ましい。これにより、実装時のレーザビームエッチングによるビア形成に際して位置合わせの目印として用いることができる。
【0017】
基板内蔵用チップ抵抗器では、回路基板の絶縁体内部に埋め込んだ後、レーザビームを照射してチップ抵抗器を被覆する絶縁層にビアを形成して外部電極を露出させ外部配線に接続する場合があり、ビア形成のため外部電極はできるだけ大きいことが好ましい。この実施例では、回路基板の絶縁体内部に埋め込むチップ抵抗器の実装に好適な、内部電極12a,12bの有効領域(外部との導通を図るに際しての有効領域。即ち、抵抗膜13にも保護膜17にも覆われていない領域)よりも大きな第2内部電極14a,14bを備えた基板内蔵用チップ抵抗器を形成することができる。また、内部電極12a,12bの有効領域の間隔よりも、第2内部電極14a,14bの間隔を狭くしたので、微小なチップの限られた範囲内で大きな第2内部電極14a,14bを形成することができる。
【0018】
以上の構成により回路基板に内蔵するのに適した、薄く、且つ基板11の表面にのみ広面積の外部電極を備えた基板内蔵用チップ抵抗器が得られる。なお、抵抗器のサイズは、例えば1005型(1.0mm×0.5mm)および0603型(0.6mm×0.3mm)等の通常のチップ抵抗器サイズに適用が可能であり、通常のチップ抵抗器の厚さに比べて薄い、例えば、半分以下の60〜150μm程度の厚さにすることができる。
【実施例3】
【0021】
次に、本発明のチップ抵抗器の製造工程の一実施例について説明する。まず、
図3(a)(b)に示すように、表面(
図3(a))と裏面(
図3(b))とを有する厚さが100μm程度以下のアルミナ等のセラミックスからなる大判の絶縁性基板11を準備する。この基板11には、縦横の分割溝x、yを備え、デバイス形成後に各区画毎にチップ片に分割可能となっている。なお、分割溝x、yは型押しやレーザ加工機により形成する。
【0022】
基板11の裏面には、一例としてガラスペーストをスクリーン印刷し、乾燥後焼成して厚膜焼成体からなるマーキング19を形成する。但し、マーキング19は後述の内部電極12の形成後に形成してもよく、またマーキング19は最終工程で印刷等により形成してもよい。マーキング19の形成方法の他の例としては、レーザを基板11の裏面に照射して、レーザの照射痕をマーキングとしてもよく、また、基板11の裏面の全面又はマーキングの形成領域に、エポキシ樹脂等の被膜を形成し、この被膜にレーザを照射して被膜を変色させることによりマーキング19を形成してもよい。
【0023】
次に、
図3(c)に示すように、基板11の表面の各区画に跨る内部電極パターンをAg−Pdペーストのスクリーン印刷にて形成し、乾燥後焼成することで、厚膜焼成体からなる内部電極12を形成する。
【0024】
次に、
図3(d)に示すように、RuO
2ペーストのスクリーン印刷にて一区画両側の内部電極12,12に跨る抵抗膜パターンを形成し、乾燥後焼成することで、厚膜焼成体からなる抵抗膜13を各区画に形成する。そして、
図3(e)に示すように、ガラスペーストのスクリーン印刷にて抵抗膜13の全体を被覆するガラス保護膜パターンをスクリーン印刷にて形成し、乾燥後焼成することで、抵抗膜13を被覆する厚膜焼成体からなるガラス保護膜(第1保護膜)17を形成する。
【0025】
次に、
図3(f)に示すように、レーザトリミングを適宜行い、抵抗値を調整する。図中の符号Tはトリミング跡を示す。そして、
図4(a)に示すように、エポキシ樹脂等の樹脂ペーストを用いて、ガラス保護膜17の端部以外を被覆する樹脂保護膜パターンをスクリーン印刷にて形成し、加温硬化することで、ガラス保護膜を被覆する樹脂保護膜(第2保護膜)18を形成する。この実施例では、第2保護膜は、所定方向において(分割溝y方向において)隣接する区画に渡る帯状のパターンで形成する。なお、保護膜18は帯状にしないで(分割溝xを跨がないで)、各区画毎に区切るようにしてもよいが、第2保護膜の表面の平坦性を確保する上でも、区画に渡る帯状パターンとすることが好ましい。
【0026】
次に、
図4(b)に示すように、第2保護膜18の端部に重なるように、Niを主な導電成分とした導電性樹脂ペーストを分割溝yに沿ってスクリーン印刷して、保護膜17,18の一部と内部電極12上に帯状の第2内部電極パターンを形成し、加温硬化することでNiを主な導電成分とした導電性樹脂による帯状の第2内部電極14を形成する。なお、第2内部電極14は帯状にしないで(分割溝xを跨がないで)、各区画毎に区切るようにしてもよいが、第2内部電極14の表面の平坦性を確保する上でも、区画に渡る帯状パターンとすることが好ましい。
【0027】
そして、大判の絶縁性基板11を分割溝yに沿って1次ブレークして短冊状基板とし(
図4(c)参照)、ついで短冊状基板を分割溝xに沿って2次ブレークして、大判の絶縁性基板11をチップ個片に分割する(
図4(d)参照)。更に第2内部電極14a,14bの表面に電解メッキによりCuのメッキ膜を形成することで、外部電極となるCuメッキ層15a,15bを形成する。この段階で、
図1に示す本発明の実施例1のチップ抵抗器が完成する。このチップ抵抗器では、従来のチップ抵抗器と比べ、大きく且つ平坦な外部電極が得られるので、積層回路基板等に内蔵するのに、良好な実装性が得られる。
【0028】
本発明の実施例2のチップ抵抗器の製造工程については、樹脂保護膜18の形成後に、Agを主な導電成分とした導電性樹脂ペーストをスクリーン印刷して、保護膜17,18の一部と内部電極12上に第2内部電極パターンを形成し、加温硬化することでAgを主成分とした導電性樹脂による第2内部電極14を形成する。
【0029】
そして、1次ブレークと2次ブレークにより、大判の基板11をチップ個片の基板11に分割し、第2内部電極14a,14bの表面に電解メッキによりNiのメッキ膜を形成し、更に電解メッキによりCuのメッキ膜を形成することで、Niメッキ層15c,15dおよびCuメッキ層15e,15fからなる外部電極15,15を形成する。この段階で、
図2に示す本発明の実施例2のチップ抵抗器が完成する。このチップ抵抗器でも、実施例1のチップ抵抗器と同様に、大きく且つ平坦な外部電極が得られる。
【0030】
図5は、本発明のチップ抵抗器の積層回路基板への内装例を示す。この例では、積層回路基板は、絶縁性のシート31a,31bが積層して形成され、本発明のチップ抵抗器が内装されている。このチップ抵抗器は、絶縁性基板11の表面に抵抗膜が配置され、保護膜により該抵抗膜が被覆され、その両側にCuメッキ層を表面に備えた外部電極15が配置され、外部電極15は上述のように内部電極に対して大きく形成された、
図1、
図2に示すチップ抵抗器である。以下に、本発明のチップ抵抗器を積層基板内に内装する工程の一例を説明する。
【0031】
図5(a)に示すとおり、絶縁性のシート31aに接着剤35によりチップ抵抗器を固定する。次に
図5(b)に示すとおり、チップ抵抗器が収まる貫通孔が形成されたシート31bをシート31aに重ね、さらに透明なシート31cを重ね、積層体を得る。その後、この積層体を静水圧プレス法等の手法でプレスし、各シートおよび内蔵したチップ抵抗器を密着させる。
図5(c)は、
図5(b)に示す積層体をプレスした後、その上下を逆転した図である。画像認識装置を用いてチップ抵抗器の基板11に印字されたマーキング19を確認して(符号C)、レーザLの照射位置合せを行い、レーザLをシート31aに照射してエッチングする。シート31cは、少なくともマーキング19を外部から確認できる程度に透明な樹脂シート等である。
【0032】
本発明のチップ抵抗器は広面積の外部電極15を備えるので、エッチングの許容領域が広がり実装が容易となり、またマーキング19によりレーザLの照射位置合せが可能となるため、誤って保護膜表面にレーザを照射する等による不良の発生を防止することができる。また、チップ抵抗器の基板11の裏面側にマーキング19を形成したので、マーキング19の形成が電極には影響しないため、電極寸法や導電性等に影響することがなく好適である。
【0033】
こうして
図5(d)に示すとおりビアホール37が形成される。ビアホール37内には外部電極15が露出している。次に
図5(e)に示すとおり、ビアホール37内に導電材料を充填してビア33を形成し、シート31aの表面にビア33と接続する配線32を印刷形成する。こうして得られた積層体は、さらにシートを重ね、配線の形成とビアによる層間接続を図ることにより多層化することができる。
【0034】
なお、上述の実施例では、第2内部電極をNiまたはAgの金属材料と樹脂成分からなる導電性樹脂で形成する例について説明したが、その他の金属材料を主な導電成分とした導電性樹脂で形成することも可能である。第2内部電極を導電性樹脂で形成することで、下層の内部電極12と抵抗膜13および第1保護膜17の重なりによる凸状部等の凹凸を吸収し、表面が平坦で且つ広面積の第2内部電極14を形成できる。
【0035】
これまで本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。