(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記ハロゲン化イソシアヌル酸及び/又はその金属塩が、クロロイソシアヌル酸、クロロイソシアヌル酸ナトリウム、クロロイソシアヌル酸カリウム、ジクロロイソシアヌル酸、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム、ジクロロイソシアヌル酸カリウム及びトリクロロイソシアヌル酸から選ばれる1種以上である請求項1〜3のいずれか1項記載のゴルフボールの製造方法。
ジエン系ゴムを主体としたゴム組成物から形成されるソリッドコアとそれを被覆する1層以上のカバーとを有するゴルフボールの製造方法において、コアの表面を研磨し、次いで研磨されたコアをハロゲン化イソシアヌル酸及び/又はその金属塩を含む溶液中に浸漬し、更に水で洗浄し、乾燥した後、カバーとしてポリウレタンエラストマー及びポリアミドエラストマーから選ばれる少なくとも1種のエラストマーを被覆することを含むゴルフボールの製造方法。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
本発明のゴルフボールは、ソリッドコアと、それを被覆する1層以上のカバーとを有するものである。
【0015】
本発明におけるソリッドコアは下記の各成分、
(A)シス−1,4−結合を60%以上含有したポリブタジエンを60〜100質量%含むゴム基材、
(B)有機過酸化物、
(C)不飽和カルボン酸及び/又はその金属塩、
(E)無機充填剤
を含むゴム組成物から形成されることが好ましい。
なお、必要に応じて(D)有機硫黄化合物を配合することができる。
【0016】
本発明における上記(A)シス−1,4−結合を60%以上含有したポリブタジエンを60〜100質量%含むゴム基材において、上記ポリブタジエンに含まれるシス−1,4−結合の含量としては60%以上、好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上である。上記ポリブタジエンに含まれるシス−1,4−結合の含量が60%未満であると、好適な反発性が得られない場合がある。また、分子量分布Mw/Mn(Mw:重量平均分子量、Mn:数平均分子量)の範囲は、2.0以上、好ましくは2.2以上、更に好ましくは2.4以上、最も好ましくは2.6以上であり、上限としては8.0以下、好ましくは7.5以下、更に好ましくは4.0以下、最も好ましくは3.4以下であることが好ましい。Mw/Mnが小さすぎると作業性が低下し、大きすぎると反発性が低下する場合がある。
【0017】
本発明における上記ポリブタジエンは、特に限定されるものではないが、希土類元素系触媒で合成されたものが高反発性の点から好ましく用いられる。希土類元素系触媒としては、公知のものを使用することができるが、例えば、ランタン系列希土類元素化合物、有機アルミニウム化合物、アルモキサン、ハロゲン含有化合物、更に、必要に応じルイス塩基との組み合わせよりなる触媒を挙げることができる。
【0018】
上記ランタン系列希土類元素化合物としては、原子番号57〜71の金属ハロゲン化物、カルボン酸塩、アルコラート、チオアルコラート、アミド等を挙げることができる。
【0019】
上記有機アルミニウム化合物としては、例えば、AlR
1R
2R
3(ここで、R
1、R
2及びR
3は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素残基を表す)で示されるものを用いることができる。
【0020】
上記アルモキサンは、下記式(I)又は下記式(II)で示される構造を有する化合物を好適に挙げることができる。この場合、ファインケミカル,23,(9),5(1994)、J.Am.Chem.Soc.,115,4971(1993)、J.Am.Chem.Soc.,117,6465(1995)で示されるアルモキサンの会合体でもよい。
【0021】
【化1】
(式中、R
4は炭素数の炭素原子を含む1〜20の炭化水素基、mは2以上の整数である。)
【0022】
上記ハロゲン含有化合物としては、AlX
nR
3-n(ここで、Xはハロゲン原子を示し、Rは、炭素数が1〜20の炭化水素残基であり、例えば、アルキル基、アリール基、アラルキル基であり、nは、1、1.5、2又は3である)で示されるアルミニウムハライド、Me
3SrCl、Me
2SrCl
2、MeSrHCl
2、MeSrCl
3などのストロンチウムハライド(Meはメチル基を示す)、その他、四塩化ケイ素、四塩化スズ、四塩化チタンなどの金属ハライド等が用いられる。
【0023】
上記ルイス塩基は、ランタン系列希土類元素化合物を錯化するのに用いることができ、例えば、アセチルアセトン、ケトンアルコールなどを挙げることができる。
【0024】
本発明においては、特に、ランタン系列希土類元素化合物としてネオジウム化合物を用いたネオジウム系触媒の使用が、1,4−シス結合が高含量、1,2−ビニル結合が低含量のポリブタジエンゴムを優れた重合活性で得られるので好ましく、これらの希土類元素系触媒の具体例は、特開平11−35633号公報に記載されているものを好適に挙げることができる。
【0025】
また、ランタン系列希土類元素化合物を用いた希土類元素系触媒の存在下でブタジエンを重合させる場合、シス結合含量及び分子量分布Mw/Mn(Mw:重量平均分子量、Mn:数平均分子量)を上記範囲とするために、ブタジエン/ランタン系列希土類元素化合物は、モル比で1000〜200万、特には5000〜100万とすることが好ましく、また、AlR
1R
2R
3/ランタン系列希土類元素化合物は、モル比で1〜1000、特には3〜500とすることが好ましい。更に、ハロゲン化合物/ランタン系列希土類元素化合物は、モル比で0.1〜30、特に0.2〜15であることが好ましい。ルイス塩基/ランタン系列希土類元素化合物は、モル比で0〜30、特に1〜10とすることが好ましい。重合にあたっては、溶媒を使用しても、溶媒を使用せずにバルク重合あるいは気相重合してもよい。なお、重合温度は、通常−30〜150℃、好ましくは10〜100℃である。
【0026】
本発明で用いられるポリブタジエンのムーニー粘度(ML
1+4(100℃))としては、好ましくは20以上、より好ましくは30以上、更に好ましくは40以上、上限として好ましくは140以下、より好ましくは120以下、更に好ましくは100以下、最も好ましくは80以下である。ムーニー粘度が上記範囲外であると、作業性が悪くなったり、反発性が低下する場合がある。
【0027】
なお、本発明でいうムーニー粘度とは、いずれも回転可塑度計の1種であるムーニー粘度計で測定される工業的な粘度の指標(JIS−K6300)であり、単位記号としてML
1+4(100℃)を用いる。また、Mはムーニー粘度、Lは大ロータ(L型)、1+4は予備加熱時間1分間、ロータの回転時間4分間を示し、100℃の条件下にて測定したことを示す。
【0028】
本発明における上記ポリブタジエンは、上記の希土類元素系触媒による重合に引き続き、ポリマーの活性末端に末端変性剤を反応させることにより得られるものであってもよい。
【0029】
ここで、上記末端変性剤は、公知のものを使用でき、下記〔1〕〜〔7〕に記載した末端変性剤を使用することができる。
【0030】
〔1〕まず、アルコキシシリル基を持つ化合物が挙げられる。アルコキシシリル基を持つ化合物としては、エポキシ基又はイソシアナート基を分子内に少なくとも1個有するアルコキシシラン化合物が好適に使用される。具体例としては、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、(3−グリシジルオキシプロピル)メチルジメトキシシラン、(3−グリシジルオキシプロピル)メチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)トリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)トリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルジメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランの縮合物、(3−グリシジルオキシプロピル)メチルジメトキシシランの縮合物などのエポキシ基含有アルコキシシラン;3−イソシアナートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアナートプロピルトリエトキシシラン、(3−イソシアナートプロピル)メチルジメトキシシラン、(3−イソシアナートプロピル)メチルジエトキシシラン、3−イソシアナートプロピルトリメトキシシランの縮合物、(3−イソシアナートプロピル)メチルジメトキシシランの縮合物などのイソシアナート基含有アルコキシシラン化合物が挙げられる。
【0031】
また、上記アルコキシシリル基を持つ化合物を活性末端に反応させる際、反応を促進させるためにルイス酸を添加することもできる。ルイス酸が触媒としてカップリング反応を促進させ、変性ポリマーのコールドフローが改良され貯蔵安定性がよくなる。ルイス酸の具体例としては、ジアルキルスズジアルキルマレート、ジアルキルスズジカルボキシレート、アルミニウムトリアルコキシドなどが挙げられる。
【0032】
〔2〕R
5pM′X
4-p、M′X
4、M′X
3、R
5pM′(−R
6−COOR
7)
4-p又はR
5pM′(−R
6−COR
7)
4-p(式中、R
5及びR
6は、同一でも異なっていてもよく、炭素数1〜20の炭素原子を含む炭化水素基、R
7は炭素数1〜20の炭素原子を含む炭化水素基であり、側鎖にカルボニル基又はエステル基を含んでいてもよく、M′はスズ原子、ケイ素原子、ゲルマニウム原子又はリン原子、Xはハロゲン原子、pは0〜3の整数を示す)に対応するハロゲン化有機金属化合物、ハロゲン化金属化合物、又は、エステル基又はカルボニル基を分子中に含有した有機金属化合物、
〔3〕分子中に、Y=C=Z結合(式中、Yは炭素原子、酸素原子、チッ素原子又はイオウ原子、Zは酸素原子、チッ素原子又はイオウ原子を示す)を含有するヘテロクムレン化合物、
〔4〕分子中に下記式(III)に示す結合を含有するヘテロ3員環化合物、
【化2】
(式中、Zは、酸素原子、チッ素原子又はイオウ原子を示す。)
〔5〕ハロゲン化イソシアノ化合物、
〔6〕R
8−(COOH)
q、R
9(COX)
q、R
10−(COO−R
11)
q、R
12−OCOO−R
13、R
14−(COOCO−R
15)
q、又は下記式(IV)で示されるカルボン酸、酸ハロゲン化物、エステル化合物、炭酸エステル化合物又は酸無水物、
【化3】
(式中、R
8〜R
16は、同一でも異なっていてもよく、炭素数1〜50の炭素原子を含む炭化水素基、Xはハロゲン原子、qは1〜5の整数を示す。)
〔7〕R
17rM″(OCOR
18)
4-r、R
19rM″(OCO−R
20−COOR
21)
4-r、又は下記式(V)で示されるカルボン酸の金属塩
【化4】
(式中、R
17〜R
23は、同一でも異なっていてもよく、炭素数1〜20の炭素原子を含む炭化水素基、M″はスズ原子、ケイ素原子又はゲルマニウム原子、rは0〜3の整数を示す。)
等を挙げることができる。
【0033】
以上に示される末端変性剤の具体例及び反応させる方法は、例えば、特開平11−35633号公報、特開平7−268132号公報、特開2002−293996号公報等に記載されている具体例及び方法を挙げることができる。
なお、上述した触媒の中では、希土類元素系触媒、特にNd系触媒が好ましい。
【0034】
本発明における上記(A)成分は、上記のようなポリブタジエンを主材としたゴム基材であるが、この主材のポリブタジエンの含有量としては、ゴム基材中60質量%以上、好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、最も好ましくは85質量%以上である。また、ゴム基材の100質量%が上記ポリブタジエンであってもよく、95質量%以下、場合によっては90質量%以下の含有量とし得る。ポリブタジエンの含量が60質量%未満であると、反発性が劣る場合がある。
【0035】
なお、上記(A)成分に含まれるポリブタジエン以外のゴム成分としては、例えば、スチレンブタジエンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム等が挙げられる。
【0036】
上記ポリブタジエン以外のゴム成分のゴム基材中における含有量は、上記ポリブタジエンの含有量の残部とすることができ、40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下、最も好ましくは15質量%以下である。
【0037】
次に、本発明における(B)有機過酸化物としては、具体的には、ジクミルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン等が挙げられる。これら有機過酸化物は市販品を用いることができ、例えば、パークミルD(日本油脂社製)、パーヘキサ3M(日本油脂社製)、Luperco 231XL(アトケム社製)等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を混合して使用できる。
【0038】
また、上記有機過酸化物の配合量は、上記(A)成分100質量部(以下、質量部を「部」と略記する事がある)に対して好ましくは0.1部以上、より好ましくは0.2部以上、更に好ましくは0.3部以上、上限として好ましくは10部以下、より好ましくは5部以下、更に好ましくは2部以下である。(B)成分の配合量が少なすぎると、架橋に要する時間が長くなり、生産性の低下が大きく、コンプレッションも大きく低下してしまう場合がある。配合量が多すぎると、反発性、耐久性が低下してしまう場合がある。
【0039】
次に、(C)不飽和カルボン酸及び/又はその金属塩において、不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸等が挙げられ、特にアクリル酸、メタクリル酸が好ましい。不飽和カルボン酸の金属塩としては、亜鉛塩、マグネシウム塩等が挙げられ、中でもアクリル酸亜鉛が好適に用いられる。
【0040】
上記(C)成分の配合量としては、上記(A)成分100部に対し、好ましくは10部以上、より好ましくは15部以上、更に好ましくは20部以上であり、上限として好ましくは60部以下、より好ましくは50部以下、更に好ましくは45部以下、最も好ましくは40部以下である。(C)成分の配合量が上記範囲を外れると、反発性や打感が低下する(劣る)場合がある。
【0041】
本発明における上記(D)成分の有機硫黄化合物は反発性を高めるための任意成分であり、例えば、チオフェノール類、チオナフトール類、ハロゲン化チオフェノール類又はそれらの金属塩が挙げられる。より具体的には、ペンタクロロチオフェノール、ペンタフルオロチオフェノール、ペンタブロモチオフェノール、パラクロロチオフェノール又はそれらの亜鉛塩、硫黄数が2〜4のジフェニルポリスルフィド、ジベンジルポリスルフィド、ジベンゾイルポリスルフィド、ジベンゾチアゾイルポリスルフィド、ジチオベンゾイルポリスルフィド、アルキルフェニルジスルフィド類、フラン環を有する硫黄化合物類、チオフェン環を有する硫黄化合物類が挙げられるが、特に、ペンタクロロチオフェノールの亜鉛塩、ジフェニルジスルフィドを好適に用いることができる。
【0042】
上記(D)成分の配合量としては、上記(A)成分100部に対し、好ましくは0.1部以上、より好ましくは0.2部以上、更に好ましくは0.4部以上、最も好ましくは0.7部以上で、上限として好ましくは10部以下、より好ましくは5部以下、更に好ましくは3部以下である。その配合量が少なすぎると、反発性を向上させる効果がなくなる場合があり、多すぎると、硬度が低くなりすぎ、十分な反発性が得られない場合がある。
【0043】
本発明における(E)成分の無機充填剤としては、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等が挙げられ、その配合量としては、上記(A)成分100部に対し、好ましくは3部以上、より好ましくは5部以上、更に好ましくは10部以上、上限として好ましくは80部以下、より好ましくは65部以下、更に好ましくは50部以下である。配合量が多すぎたり、少なすぎたりすると、適正な重量及び好適な反発性を得ることができない場合がある。
【0044】
また、上記(A)〜(E)成分を含んでなるゴム組成物には必要に応じ、更に老化防止剤を添加することもできる。老化防止剤の添加量としては、上記(A)成分100部に対し、好ましくは0.05部以上、より好ましくは0.1部以上、更に好ましくは0.2部以上で、上限として好ましくは5部以下、より好ましくは3部以下、更に好ましくは1部以下を配合することができる。上記老化防止剤としては市販品を用いることができ、例えば、ノクラックNS−6、同NS−30(大内新興化学工業(株)製)、ヨシノックス425(吉富製薬(株)製)等が挙げられる。
【0045】
本発明における上記ソリッドコアは、上記成分を含むゴム組成物(なお、(D)成分は任意成分)から形成されるものであるが、形成方法としては、該ゴム組成物を加硫・硬化する方法が好適である。加硫条件としては、例えば、加硫温度100〜200℃、加硫時間10〜40分間にて実施することができる。
【0046】
また、上記のように形成される上記ソリッドコアの局部的な硬度は適宜調整することができ、特に制限されるものではなく、局部的な硬度の分布としては、中心から成形物表面までが同等の硬度であっても、中心と成形物表面までに硬度差があってもよい。
【0047】
上記ソリッドコアの直径としては、好ましくは35mm以上、より好ましくは37mm以上、上限として好ましくは42mm以下、より好ましくは41mm以下、更に好ましくは40mm以下である。ソリッドコアの直径が小さすぎると、打感や反発性が悪くなる場合があり、一方、大きすぎると、割れ耐久性が悪くなる場合がある。
【0048】
上記ソリッドコアのたわみ変形量としては、ソリッドコアに対し初期荷重98N(10kgf)を負荷した状態から終荷重1275N(130kgf)を負荷したときまでの変形量として、2.0mm以上、好ましくは3.0mm以上、上限としては5.5mm以下、好ましくは5.0mm以下である。当該たわみ変形量が2.0mm未満であると、打感が悪くなると共に、特にドライバーなどのボールに大変形が生じるロングショット時にスピンが増えすぎて飛ばなくなり、一方、5.5mmを超えると、打感が鈍くなると共に、反発性が十分でなくなり飛ばなくなる上、繰り返し打撃による割れ耐久性が悪くなる場合がある。
【0049】
上記ソリッドコアの比重(g/cm
3)としては、好ましくは0.9以上、より好ましくは1.0以上、更に好ましくは1.1以上、上限として1.4以下、好ましくは1.3以下、更に好ましくは1.2以下であることが推奨される。
【0050】
本発明においては、上記ソリッドコアはハロゲン化イソシアヌル酸及び/又はその金属塩を含む溶液にて表面処理が施される。
【0051】
また、上記ソリッドコアに対して、以下に示すハロゲン化イソシアヌル酸及び/又はその金属塩を含む溶液にて表面処理を施す前に、該コア表面に研磨処理を施すことにより、コア表面と隣接するカバー材との接着性を更に向上させることもできる。
【0052】
この際、上記研磨処理は、加硫後のコア表面からスキン層を取り除き、ハロゲン化イソシアヌル酸及び/又はその金属塩溶液のコア表面への浸透性を上げるとともに、隣接するカバー材との接触面積を増やすことが出来る。その具体的な方法としては、バフ研磨、バレル研磨、センタレス研磨等が挙げられる。
【0053】
本発明におけるハロゲン化イソシアヌル酸及びその金属塩は、下記式(VI)で表される化合物である。
【0054】
【化5】
(ここで、Xは、水素原子、ハロゲン原子又はアルカリ金属原子を表す。Xの少なくとも1個はハロゲン原子である。ハロゲン原子としては、F、Cl、Brが好ましく、特にClが好ましい。アルカリ金属原子としては、Li、Na、Kが好ましい。)
【0055】
ハロゲン化イソシアヌル酸及び/又はその金属塩の具体例としては、クロロイソシアヌル酸、クロロイソシアヌル酸ナトリウム、クロロイソシアヌル酸カリウム、ジクロロイソシアヌル酸、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム二水和物、ジクロロイソシアヌル酸カリウム、トリクロロイソシアヌル酸、三臭化イソシアヌル酸、二臭化イソシアヌル酸、臭化イソシアヌル酸、二臭化イソシアヌル酸ナトリウム等の塩、及びこれらの水和物、ジフルオロイソシアヌル酸等が例示される。これらの中でも、好ましくはクロロイソシアヌル酸、クロロイソシアヌル酸ナトリウム、クロロイソシアヌル酸カリウム、ジクロロイソシアヌル酸、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム、ジクロロイソシアヌル酸カリウム、トリクロロイソシアヌル酸である。これらは水分により容易に加水分解し、酸と塩素を生成し、ジエン系ゴム分子中の二重結合への付加反応の開始剤的な役割を果たすからである。特に、トリクロロイソシアヌル酸を用いると接着性改善効果が著しい。
【0056】
本発明において、上記ハロゲン化イソシアヌル酸及び/又はその金属塩は有機溶媒に溶解して溶液として用いることが好ましい。上記有機溶媒としては、公知のものを用いることができ、特に水に可溶な有機溶媒を好適に使用することができる。その具体例としては、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。中でもコア表面への浸透性の観点からアセトンが特に好ましい。水に可溶な溶媒は、溶媒中に水分を取り込みやすく、取り込まれた水分がコア表面に付着したハロゲン化イソシアヌル酸及び/又はその金属塩と加水分解反応し易くなること、あるいは次工程に水洗浄を用いる場合、コア表面への親和性が向上すると共に、水とハロゲン化イソシアヌル酸及び/又はその金属塩との加水分解反応が生起し易くなる等の理由で好ましく用いられる。
【0057】
有機溶媒に溶解した場合、溶液中のハロゲン化イソシアヌル酸及び/又はその金属塩の含有量は、好ましくは0.3質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは2.5質量%以上であり、0.3質量%未満では、コア表面処理後に期待される接着性改善効果が得られず、打撃耐久性が劣る場合がある。上限としては飽和溶液濃度までが可能である。但し、費用対効果を考慮すると、例えばアセトン溶液とした場合には、10質量%程度を上限とするのが好ましい。また、コアの上記溶液への浸漬時間としては、好ましくは0.3秒以上、より好ましくは3秒以上、更に好ましくは10秒以上、上限として好ましくは5分以内、より好ましくは1分以内、更に好ましくは30秒以内である。短すぎると処理効果が得られない場合があり、長い場合は生産性が損なわれる場合がある。
【0058】
本発明におけるハロゲン化イソシアヌル酸及び/又はその金属塩によるコア表面の処理方法としては、ハロゲン化イソシアヌル酸及び/又はその金属塩溶液をコア表面に刷毛塗りや吹き付け等により塗布する方法、もしくはコアをハロゲン化イソシアヌル酸及び/又はその金属塩溶液へ浸漬する方法などが挙げられるが、生産性、コア表面への溶液の高浸透性という観点から、特に浸漬法が好適に用いられる。
【0059】
本発明においては、上記ソリッドコアはハロゲン化イソシアヌル酸及び/又はその金属塩を含む溶液にて表面処理が施された後にコア表面を水洗浄することが好ましい。コア表面の水洗浄は、流水や吹付け、洗浄槽を用いた漬け置きなどの方法により行うことができるが、単に洗浄するだけではなく、所望の処理反応を開始・促進する目的もあるため、余り急激な洗浄方法は適さない。よって、本発明では洗浄漕を設けた漬け置き洗いが好適に用いられる。この場合、新鮮な水を入れた洗浄漕に1〜5回くらい入れることが好ましい。
【0060】
本発明においては、コア表面をハロゲン化イソシアヌル酸及び/又はその金属塩により処理することによってカバーとの接着性が大きく向上する。その理由は明確ではないが、次のようなことが考えられる。
【0061】
まず、ハロゲン化イソシアヌル酸及び/又はその金属塩は溶媒と共にコアを形成するジエン系ゴム内部へと浸み込み、主鎖の二重結合の周りへと近づく。その後、コア表面に水が入り込み、ハロゲン化イソシアヌル酸及び/又はその金属塩は水により加水分解されてハロゲンを放出する。そして、ハロゲンは近くにあるジエン系ゴム主鎖の二重結合を攻撃し、付加反応が進んでいく。その付加反応の過程で、遊離したイソシアヌル酸が環構造を保ったままジエン系ゴム主鎖に塩素とともに付加していく。なお、付加したイソシアヌル酸は分子内に−NHCO−の構造を3つ持つものである。
【0062】
従って、ハロゲン化イソシアヌル酸及び/又はその金属塩で処理されたコア表面は−NHCO−の構造が付与されるためカバー材との接着性がより向上し、そのためゴルフボールとしての打撃耐久性が改良されると考えられる。更に、カバー材としてそのポリマー分子中に同じ−NHCO−の構造を有するポリウレタンエラストマーやポリアミドエラストマーを用いるとより一層親和性が増すので打撃耐久性が高くなると考えられる。
【0063】
なお、ジエン系ゴム表面へのイソシアヌル酸及び塩素の付加が起こった場合、付加前後の結合の状態変化は赤外吸収スペクトルにおいて、1725〜1705cm
-1におけるC=O結合(伸縮)の吸収ピーク、3450〜3300cm
-1におけるN−H結合(伸縮)のブロードな吸収ピーク、800〜600cm
-1におけるC−Cl結合の吸収ピークの増加に現れる。そのため、表面処理を施したコアについて赤外吸収スペクトルを計測し、これらの吸収ピークの増加を確認することにより、コア表面におけるジエン系ゴム分子内へのイソシアヌル酸及び塩素の付加が生じたことを定性的に裏づけることができる。
【0064】
また、表面処理後のソリッドコアの表面部分の材料は、示差走査熱量測定(DSC)により、室温から300℃までに発熱および吸熱のいずれのピークも確認されない。これは、この温度範囲において、導入された官能基が安定した状態で維持されることを意味する。つまり、導入された官能基がカバー材の成形過程において、熱による分解などを起こさず、効力を持続すること、また、ホットメルト系樹脂のような溶融を起こさず、パーティングラインへの滲みだし等、耐久性や外観品質へ悪影響を及ぼすような心配がないことを意味している。なお、上記の通り表面処理後のソリッドコアの表面部分の材料が安定であることは、300℃以上の融点を持つイソシアヌル酸がその分子構造を維持した状態で付加したことを示す裏づけのひとつであるともいえる。
【0065】
本発明に用いられるカバーは、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、熱硬化性ポリウレタン樹脂、ポリアミドエラストマーから選ばれる1種以上を主成分として形成されるものである(以下、カバー材と略記することがある)。
【0066】
これらの樹脂は、その樹脂骨格中にイソシアヌル酸と同じ−NHCO−の分子構造を持っており、上記の処理を施したソリッドコア表面と強い分子間力により強固に密着する。
【0067】
本発明に用いられるポリウレタンエラストマーとしては、ポリウレタンを主成分とする熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂であれば特に限定されるものではなく、ソフトセグメントを構成する高分子ポリオール化合物と、ハードセグメントを構成するジイソシアネート及び単分子鎖延長剤とから構成されていることが好適である。
【0068】
まず、熱可塑性ポリウレタンエラストマーについて説明すると、高分子ポリオール化合物としては、特に制限されるものではないが、例えばポリエステル系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール等が挙げられ、反発弾性の観点あるいは低温特性の観点から、ポリエーテル系ポリオールが好ましく用いられる。
【0069】
上記ポリエーテル系ポリオールとしては、例えば、ポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が挙げられ、特に、ポリテトラメチレングリコールが好ましく用いられる。また、これらの数平均分子量は、好ましくは1000以上、より好ましくは1500以上、上限として好ましくは5000以下、より好ましくは3000以下である。
【0070】
ジイソシアネートとしては、特に制限されるものではないが、例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネートや、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネートが挙げられる。本発明では、後述するイソシアネート混合物を配合した場合の、イソシアネート混合物との反応安定性の観点から、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートが好ましく用いられる。
【0071】
単分子鎖延長剤としては、特に制限されるものではないが、通常の多価アルコール、アミン類を用いることができ、例えば、1,4−ブチレングリコール、1,2−エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,6−ヘキシレングリコール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブチレングリコール、ジシクロヘキシルメチルメタンジアミン(水添MDA)、イソホロンジアミン(IPDA)などが挙げられる。これら鎖延長剤の平均分子量は20〜15000であることが好ましい。
【0072】
このような熱可塑性ポリウレタンエラストマーとしては、市販品を用いることができ、例えばパンデックスT7298、同TR3080、同T8190、同T8195(ディーアイシーバイエルポリマー社製)やレザミン2593、同2597(大日精化工業社製)などが挙げられる。これらは一種を単独で用いても良いし、二種以上を併用しても良い。
【0073】
これら熱可塑性ポリウレタンエラストマーには、所望により他の成分、例えば顔料、分散剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、可塑剤等や無機充填剤(酸化亜鉛、硫酸バリウム、二酸化チタン等)を配合することもできる。
【0074】
上記添加剤の配合量としては、上記熱可塑性ポリウレタンエラストマー100質量部に対し、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは1質量部以上、上限として好ましくは50質量部以下、より好ましくは30質量部以下、更に好ましくは6質量部以下である。添加剤の配合量が多すぎると、耐久性が低下する場合があり、添加剤の配合量が少なすぎると、添加剤の効果が得られない場合がある。
【0075】
上記カバー材の硬度(ショアD)は、好ましくは40以上、より好ましくは50以上、上限として好ましくは70以下、より好ましくは60以下である。ショアD硬度が低すぎると反発性に劣る場合があり、ショアD硬度が高すぎると打感、コントロール性の改善が見られない場合がある。なお、本発明においてショアD硬度とは、ASTM D2240に準じ、D型デュロメータにより測定した硬度である。
【0076】
他方、熱硬化性ポリウレタン樹脂カバーとは、上記熱可塑性ポリウレタンエラストマーの主成分を混合したものを、反応前にコア表面に被覆させ、加熱等によりコア表面上で反応硬化させたものである。熱可塑性ポリウレタンエラストマーとの違いは、反応によって溶融点を持たない分子量以上に高分子化させる点である。
【0077】
上記熱硬化性ポリウレタン樹脂には、所望により他の成分、例えば、顔料、分散剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、可塑剤等や無機充填剤(酸化亜鉛、硫酸バリウム、二酸化チタン等)、硬化促進剤などを配合することができる。
【0078】
上記添加剤の配合量としては、上記熱硬化性ポリウレタン樹脂主成分100質量部に対し、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは1質量部以上、上限として好ましくは50質量部以下、より好ましくは30質量部以下、更に好ましくは6質量部以下である。添加剤の配合量が多すぎると、耐久性が低下する場合があり、添加剤の配合量が少なすぎると、添加剤の効果が得られない場合がある。
【0079】
ポリアミドエラストマーとしては、その分子内にポリアミド成分を有している熱可塑性樹脂であれば特に限定されるものではない。このポリアミドエラストマーは、その硬度が低いもの程、反発弾性が高いという特徴があるため、ゴルフボールのカバー材をソフト化させ、かつ高反発性のゴルフボールを設計する上で非常に好適な材料である。
【0080】
上記ポリアミドエラストマーは、ハードセグメントとして、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、芳香族ポリアミドなどのポリアミド成分を有し、ソフトセグメントとして、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコールのようなポリオキシアルキレングリコールあるいは脂肪族ポリエステルなどの成分を有するブロック共重合体が使用できる。
【0081】
上記カバー材の硬度(ショアD)は、好ましくは20以上、より好ましくは40以上、上限として好ましくは70以下、より好ましくは60以下である。ショアD硬度が低すぎるとハードセグメントのポリアミド成分の含有量が少ないため、改質したコア表面との相性が悪くなり、層間密着力が低下する場合がある。ショアD硬度が高すぎると良好な打感、コントロール性の改善が見られない場合がある。なお、本発明においてショアD硬度とは、ASTM D2240に準じ、D型デュロメータにより測定した硬度である。
【0082】
このポリアミドエラストマーには、市販品を用いることができ、例えば、ARKEMA社のPEBAX2533、PEBAX3533、PEBAX4033、ダイセル・ヒュルス社製のダイアミド−PAE E40、ダイアミド−PAE E47、エムスジャパン社製のグリロン、グリルアミド、大日本インキ社製のグリラックスA、三菱化学社製のノバミッドEL、宇部興産社製のUBE−PAE等を挙げることができる。
【0083】
これらポリアミドエラストマーには、所望により他の成分、例えば、顔料、分散剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、可塑剤等や無機充填剤(酸化亜鉛、硫酸バリウム、二酸化チタン等)などを配合することができる。
【0084】
上記添加剤の配合量としては、上記ポリアミドエラストマー100質量部に対し、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは1質量部以上、上限として好ましくは50質量部以下、より好ましくは30質量部以下、更に好ましくは6質量部以下である。添加剤の配合量が多すぎると、耐久性が低下する場合があり、添加剤の配合量が少なすぎると、添加剤の効果が得られない場合がある。
【0085】
上記のカバー材は、非常に良好な耐擦過傷性を示し、良好な打感を実現するものである。
【0086】
本発明のゴルフボールは、上記コアに隣接したカバー層が上記カバー材で形成されたゴルフボールである。なお、本発明のゴルフボールは、イソシアヌル酸及び/又はその金属塩溶液にて表面処理されたソリッドコアの表面に上記カバー材のみを被覆したツーピースソリッドゴルフボールとしてもよいし、上記カバー材で該コア表面を被覆して内層カバーを形成した後、更にその外側に外層カバーとして他のカバー材を少なくとも1層被覆して、該コア表面に2層以上のカバーを形成した多層構造ソリッドゴルフボールとしてもよい。
【0087】
他のカバー材としては、ゴルフボール用のカバー材として公知の材料を使用することができ、特に制限されるものではないが、具体的には、アイオノマー樹脂、ポリエステルエラストマー、内層カバーに用いたポリウレタンエラストマー及びポリアミドエラストマーとは物性の異なるポリウレタンエラストマー及びポリアミドエラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、又はこれらの混合物等が挙げられる。
【0088】
カバーの形成方法としては公知の方法を用いることができ、特に限定されるものではないが、例えば、予め作製したコアを金型内に配備し、上記カバー材を加熱溶融もしくは加熱混合溶融し、射出成形する方法等を採用できる。
【0089】
また、カバー材により予め一対の半球状のハーフカップを成形し、このハーフカップでコアを包んで120〜170℃、1〜5分間、加圧成形する方法を用いても良い。熱硬化型樹脂を用いる場合は、RIM成形もしくはLIM成形等の方法が採用できる。
【0090】
特に、上記カバー材を溶融射出成形にて成形する場合は、射出成形に特に適した流動性を確保し、成形性を改良するため、メルトフローレートを調整することが好適である。この場合、JIS−K6760で試験温度190℃、試験荷重21.18N(2.16kgf)に従って測定したときのメルトフローレート(MFR)が、通常0.5dg/min以上、好ましくは1dg/min以上、より好ましくは1.5dg/min以上、更に好ましくは2dg/min以上であり、上限としては通常20dg/min以下、好ましくは10dg/min以下、より好ましくは5dg/min以下、更に好ましくは3dg/min以下に調整されることが推奨される。上記メルトフローレートが、大きすぎても小さすぎても加工性が著しく低下する場合がある。
【0091】
上記カバー材にて形成されるカバー厚みは、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは1.0mm以上、上限として好ましくは4.0mm以下、より好ましくは2.5mm以下である。カバー厚みが大きすぎると、反発性が低下する場合があり、カバー厚みが小さすぎると、耐久性が低下する場合がある。
【0092】
本発明の製法によって得られるゴルフボールにおいては、カバーの表面に多数のディンプルを形成し、更に該カバー上に下地処理、スタンプ、塗装等の種々の処理を行うことが好適である。ディンプルの配設に当たっては、ディンプルに交差しない大円線が1本もないようにディンプルを配設することが好適である。ディンプルと交差しない大円線が存在すると、飛びにバラツキが発生する場合がある。
【0093】
上記ディンプルとしては、更にディンプルの種類の数及び総数が適正化されたものであることが好ましく、ディンプルの種類の数及び総数の適正化による相乗効果で弾道がより安定し、飛距離性能に優れたゴルフボールを得ることができる。
【0094】
ここで、ディンプルの種類の数は、直径及び/又は深さが互いに異なるディンプルの種類の数をいい、好ましくは2種以上、より好ましくは3種以上であることが推奨される。なお、上限として8種以下、特に6種以下であることが推奨される。
【0095】
また、ディンプルの総数は、好ましくは250個以上、より好ましくは300個以上、上限として500個以下、好ましくは455個以下にすることが推奨される。ディンプル総数が少なすぎても、ディンプル総数が多すぎても、最適な揚力が得られず、飛ばなくなる場合がある。
【0096】
また、本発明において、上記塗装を行う際には、特開平10−234884号公報に開示されている塗料組成物、即ち、多価アルコール成分と多塩基酸成分とを反応させて得られる水酸基含有ポリエステルと、無黄変ポリイソシアネートとを含有し、前記の多価アルコール成分の少なくとも一部が、分子内に脂環構造を有するゴルフボール用塗料組成物、もしくは、特開2003−253201号公報に開示されている塗料組成物、即ち、水酸基価が30〜180mgKOH/g(固形分)であるポリエステル及び/又はポリエーテル含有アクリルポリオール、及びポリイソシアネートを含むゴルフボール用塗料組成物であって、成分がアクリル系重合体からなる主鎖とポリエステル及び/又はポリエーテルからなる側鎖とから構成されており、イソシアネート基と水酸基のモル比が[NCO]/[OH]=0.5〜1.5であるゴルフボール用塗料組成物を用いることが特に好適である。当該塗料組成物は、凝集破壊強度に優れ、ゴルフクラブによる繰り返し打撃に耐える耐衝撃性、バンカーショットに耐える耐砂摩耗性、優れた耐草汁汚染性、耐候性及び耐水性に優れる塗料組成物であるが、本発明におけるカバー層と良好に密着させることが可能であることが知見されたものである。
【0097】
本発明の多層構造ソリッドゴルフボールは、競技用としてゴルフ規則に従うものとすることができ、直径42.67mm以上に形成することができる。その重量としては、通常45.0g以上、好ましくは45.2g以上、上限として45.93g以下とすることが好適である。
【0098】
本発明における多層構造ソリッドゴルフボールは上記コアと上記カバーとを具備し、好ましくはカバー表面に多数のディンプルを具備したものであるが、ボール全体のたわみ量としては、ボールに対し初期荷重98N(10kgf)を負荷した状態から終荷重1275N(130kgf)を負荷したときまでの変形量として、好ましくは2.0mm以上、より好ましくは3.0mm以上、上限としては好ましくは5.0mm以下、より好ましくは4.5mm以下である。当該たわみ変形量が少なすぎると、打感が悪くなると共に、特にドライバーなどのボールに大変形が生じるロングショット時にスピンが増えすぎて飛ばなくなる場合があり、一方、大きすぎると、打感が鈍くなると共に、反発性が十分でなくなり飛ばなくなる上、繰り返し打撃による割れ耐久性が悪くなる場合がある。
【実施例】
【0099】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
【0100】
〔実施例1〜11,比較例1〜4〕
下記表1に示すゴム組成物を用い、155℃で17分間の加硫により、ソリッドコアを作製した。次いで、表3及び表4に示す条件でソリッドコア表面を処理した。次に、表面処理後のソリッドコアを十分な容量の水が入った水漕に5分間浸漬し、更に新たな水に入れ替えて3回同じように浸漬した。それを取り出して室温にて乾燥させた。
【0101】
【表1】
【0102】
上記の配合についての詳細は下記の通りである。
HCBN−13
JSR社製、シス−1,4−結合含量96%、ムーニー粘度(ML
1+4(100℃))53、分子量分布Mw/Mn3.2、触媒Nd
パーヘキサ3M−40
日本油脂社製。パーヘキサ3M−40は40%希釈品であり、添加量は1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンとしての実質添加量で示した。
パークミルD
日本油脂社製、ジクミルパーオキサイド
アクリル酸亜鉛
日本蒸留工業(株)製
ペンタクロロチオフェノール亜鉛塩
東京化成工業(株)製
酸化亜鉛
堺化学工業(株)製
ノクラックNS−6
大内新興化学社製、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)
【0103】
上記の表面処理により、ジエン系ゴム表面へのイソシアヌル酸および塩素の付加が起こった場合、付加前後の結合の状態変化は赤外吸収スペクトルにおいて、1725〜1705cm
-1におけるC=O結合(伸縮)の吸収ピーク、3450〜3300cm
-1におけるN−H結合(伸縮)のブロードな吸収ピーク、800〜600cm
-1におけるC−Cl結合の吸収ピークの増加として現れる。
【0104】
実際に上記トリクロロイソシアヌル酸による処理品と未処理品について赤外吸収スペクトルにて計測を行い、吸収ピークを比較したところ、予想される波数域にて吸収ピークの増加が見られた。これにより、コア表面におけるジエン系ゴム分子内へのイソシアヌル酸および塩素の付加が生じたことが定性的に裏づけられた。
【0105】
なお、赤外吸収スペクトルの計測は以下の条件により行った。
[赤外吸収スペクトルの計測]
使用機器:島津製作所製 FTIR−8100M
上記にATR計測用のアタッチメント DuraSamplIR(SensIR Technologies社製)を装着し、計測を行った。
試料は処理コア表面をナイフにて切り出して調製した。
切り出した切片は、処理面を下面にした状態で、上記アタッチメントの計測部分であるダイヤモンド結晶に圧し当てた状態で、4000〜650cm
-1の計測波長範囲を、40回の積算平均で計測した(データ補正はATR補正のみ)。
【0106】
次に、表2に示す各成分を200℃で混練型二軸押出機にてミキシングし、ペレット状のカバー材を得た。得られたカバー材を上記ソリッドコアを配備した金型内に射出し、ツーピースソリッドゴルフボールを作製した。
【0107】
【表2】
【0108】
上記の配合についての詳細は下記の通りである。
パンデックスT8190
DICバイエルポリマー(株)製、熱可塑性ポリウレタンエラストマー。
PEBAX4033
ARKEMA社製、熱可塑性ポリアミドエラストマー。
【0109】
表3及び表4に、作製したゴルフボールの諸性能を示す。
【0110】
【表3】
A:ポリウレタンエラストマー
B:ポリアミドエラストマー
C:注型ウレタン ハイキャスト3400N(H&K Ltd.社製 注型用ウレタン樹脂)のA液とB液を等量配合したもの100質量部に対し、二酸化チタンを2質量部添加したものを、注型成形にてコア表面に被覆した。
【0111】
【表4】
A:ポリウレタンエラストマー
B:ポリアミドエラストマー
C:注型ウレタン ハイキャスト3400N(H&K Ltd.社製 注型用ウレタン樹脂)のA液とB液を等量配合したもの100質量部に対し、二酸化チタンを2質量部添加したものを、注型成形にてコア表面に被覆した。
【0112】
[ボールの諸物性の評価]
コア外径(mm)
表面を5点測定した平均値。
【0113】
コアたわみ変形量(mm)
初期荷重98N(10kgf)を負荷した状態から終荷重1275N(130kgf)を負荷したときまでの変形量を計測した。
【0114】
カバー厚み(mm)
(ボール外径−コア外径)÷2として算出した。
【0115】
カバー硬度
ASTM D−2240に準じて測定したショアD硬度。
【0116】
ボール外径(mm)
ディンプルのない部分を5点測定した平均値。
【0117】
打感
各ボールについて、アマチュア上級者5名によるドライバー(W#1)及びパター打撃したときの打感を下記基準で評価し、最も多かった評価をボールに対する評価とした。
○:軟らかい
△:普通
×:硬い
【0118】
耐擦過傷性
ボールを23℃に保温し、ピッチングウェッジをスイングロボットマシンに取り付け、ヘッドスピード33m/sにて打撃し、打撃傷を目視で判断した。次の評価基準で評価した。
○:傷がない、もしくは使用上、全く気にならない程度の傷。
×:表面が毛羽立つ、ディンプルが欠ける、などのひどい傷。
【0119】
打撃耐久性
十分な質量を持つ鋼鉄板にゴルフボールを40m/sの速度で繰り返し衝突させた際における、コアとカバーの層間剥離を観察した。
計測には各5個のボールを使用し、次の基準で評価した。
○:500回を超えても全てのボールで剥離が見られなかった。
△:500回未満で5個中の1から2個のボールに剥離が見られた。
×:500回未満で5個中の殆どのボールに剥離が見られた。