(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1はこの発明に係る蛍光ランプ(以下、単に「ランプ」ともいう)を示し、(a)は長手方向の断面図を示し、(b)は(a)のA−A断面図を示す。
蛍光ランプは発光管(ガラス管)1より構成されており、発光管1の外壁には、一対の帯状電極2(2a,2b)が、発光管1の長手方向に同じように伸びるよう配設される。電極2(2a,2b)には保護膜3が被さる。発光管1の内部には、誘電体バリア放電によってエキシマ分子を生成するためのガス、例えば、キセノンガスが100Torr封入されており、各々の電極に図示略の交流電源が接続されており、交流電力が供給されると、発光管1を構成する材料である石英ガラスを介在させて発光管1の内部に誘電体バリア放電が発生する。
【0011】
発光管1の内壁には、断面方向約半周に紫外線反射体4が形成されている。この紫外線反射体4は、一方の電極2aに相当する位置と他方の電極2bに相当する位置を跨るように形成されている。さらに、発光管1の内壁及び紫外線反射体4の内面にはガラス層5が形成されており、さらに、その内面には蛍光体層6が円周方向のほぼ同一の厚みで形成されている。ガラス層5と蛍光体層6は発光管1の内周面全域に形成されているので、紫外線反射体4はガラス管1と蛍光体層6に挟まれるように構成されることになる。紫外線反射体4が形成されていない領域は光取り出し領域となる。発光管1の内部であって一端には、例えばペースト状の始動アシスト用導電性部材7が塗布されている。
【0012】
誘電体バリア放電によって発生した紫外線、例えば波長172nmの光は、蛍光体層6を刺激することで波長250〜380nmの紫外光に変換されて放射される。この紫外光は、直接あるいは紫外線反射体4で反射されてランプ外部に放射される。
【0013】
紫外線反射体4は、シリカ粒子(SiO2)とそれ以外の粒子、例えば、アルミナ粒子(Al2O3)から構成される。シリカ粒子は、放電容器を構成する材料と同じ物質でもあるため接着性(接着強度)という点で有用である。また、アルミナ粒子はシリカ粒子よりも紫外線を反射する能力が高い点で利用される。従って、仮に、反射体4をシリカ粒子(SiO2)のみで構成させると、紫外線の反射機能という点で、シリカ粒子(SiO2)とアルミナ粒子(Al2O3)からなる反射膜に対して劣ることになり、また、仮に、反射体4をアルミナ粒子(Al2O3)のみから構成させると、発光管1との接着性が低下して、アルミナ粒子が剥離するという問題を生じかねない。シリカ粒子以外の粒子はアルミナ粒子に限定されるわけではなく、シリカ粒子よりも紫外線の反射能力が高い粒子であれば代替させることができる。例えば、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化バリウム、フッ化ランタン、フッ化セリウム、酸化セリウム、酸化イットリウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウムなどの粒子を使うことができる。また、放電容器への接着性と真空紫外光の反射特性を低下させないという機能を併せて有する限り、シリカ粒子とアルミナ粒子に加えて上記粒子を混在させてもよい。シリカ粒子(SiO2)と他の粒子との混合比率は、放電容器の接着性という観点からシリカ粒子を30重量%以上とすることが好ましく、また、他の粒子として、アルミナ粒子を使った場合は、真空紫外光の反射機能という観点も考慮して、シリカ粒子の比率は50〜100重量%未満の範囲が好ましい。
【0014】
ガラス層5は発光管1の基材となる石英ガラスの軟化点(1600℃)よりも低い軟化点を有するガラスが使われる。特に、軟化点が蛍光体の焼成温度(400〜900℃)の範囲にあるガラスであり、耐熱衝撃性の優れた硬質ガラスが望ましい。なかでも、ホウケイ酸ガラス(Si−B−O系ガラス、軟化点:約800℃)、アルミノケイ酸ガラス(Si−Al−O系ガラス、軟化点:約900℃)は適している。
【0015】
蛍光体層6は、例えば、ユ−ロピウム付活ホウ酸ストロンチウム(Sr−B−O:Eu(以下SBEと称する。)、中心波長368nm)蛍光体、セリウム付活アルミン酸マグネシウムランタン(La−Mg−Al−O:Ce(以下、LAMと称する。)、中心波長338nm(ただしbroad))蛍光体、ガドリニウム、プラセオジム付活リン酸ランタン(La−P−O:Gd,Pr(以下、LAP:Pr,Gdと称する、中心波長311nm)蛍光体などが使われる。これらの蛍光体は、いずれも波長250nm未満の領域の紫外光を吸収して、各々有する中心波長帯の紫外線に変換する。
【0016】
電極は、例えば、銀または金、アルミテープなどから構成される。なお、帯状電極に限定されるものではなく、直線状の電極であってもかまわない。
【0017】
本発明の蛍光ランプは、石英ガラス製の発光管1と蛍光体層6の間に、軟化点が石英ガラスの軟化点よりも低い材料からなるガラス層5が形成されている。このため、ガラス層5の軟化温度で加熱させることで蛍光体(蛍光体層6の構成材料)をガラス層5に付着させることができる。また、ガラス層5と石英ガラス1の固着もガラス層5の軟化温度で可能となる。さらには、ガラス層5と発光管1の間に紫外線反射体4を有しているので、紫外線を特定方向に反射させることで高い放射効率を得ることができる。
【0018】
図2は
図1(b)に示した蛍光ランプの断面構造の変形例を示す。具体的には、
図1(b)に示した蛍光ランプは蛍光体層6の厚みが円周方向でほぼ同一であるのに対し、
図2(a)に示した蛍光ランプは蛍光体層の厚みが円周方向で変化している。より具体的には、蛍光体層4は、紫外線反射体4が存在する領域は厚くなっており、紫外線反射体4が存在しない領域、すなわち、光取り出し領域では薄くなっている。
この構造の利点は、光取り出し領域の蛍光体層6を薄くすることで、紫外線反射体4で、反射した紫外線の透過率を、上げることができると同時に、蛍光体層6で、誘電体バリア放電によって発生した紫外線を、波長250〜380nmに変換した紫外光を、加えることができ、合計した紫外線強度を上げることができる。
また、
図2(b)に示した蛍光ランプは、蛍光体層は紫外線反射体4が存在する領域のみ存在し、紫外線反射体4が存在しない領域、すなわち光取出領域には存在しない。
この構造の利点は、光取り出し領域の蛍光体層6をなくすことで、紫外線反射体4で、反射した紫外線の透過率を上げることができ、
図2(a)の場合よりも、製作が容易であることである。
【0019】
図3も
図1に示した蛍光ランプの断面構造の変形例を示す。具体的には、
図1に示した蛍光ランプは発光管の断面形状が円形であるのに対し、
図3に示した蛍光ランプは発光管の断面形状が矩形状である。従がって、
図3に示される実施形態は、全体として扁平形状の発光管になる。
発光管1の一方の外表面に一方の電極2aが設けられており、他方の外表面に他方の電極2bが設けられている。各電極は光を透過させるために網目状になっている。
この蛍光ランプにおいても、発光管1の内壁に紫外線反射体4が形成されており、その内面にガラス層5と、蛍光体層6が形成されている。
図1において説明した始動アシスト導電性部材は省略している。
【0020】
図4に示す蛍光ランプは、2つの電極がいずれも発光管1の中に存在するタイプである。発光管1の内面には、
図1に示した蛍光ランプと同様に、紫外線反射体4、ガラス層5、蛍光体層6が順に形成されている。発光管1は石英ガラスからなり、単部には封止板11が取り付けられており、封止板11を貫通してフィラメント型の電極2が取り付けられる。
通常、発光管には、バッファガスとして、Arを主成分とする希ガスと、水銀が封入された低圧水銀放電を行うランプである。
【0021】
次に、
図1に示した蛍光ランプの製造方法について説明する。
図4は
図1に示した蛍光ランプの製造ステップを示すフローチャートである。
【0022】
ステップ1は紫外線反射体を形成する工程である。
シリカ粒子とアルミナ粒子を含有したゾルゲル液から懸濁液を作り、その溶液を発光管用材料の内表面に流すことで紫外線反射体を作ることができる。紫外線反射体の厚さは、流下する回数や懸濁液が流れる速度を制御することでコントロールできる。紫外線反射体を形成した後、500〜1000℃での大気中焼成を行い、紫外線反射体を固着させる。
【0023】
ステップ2はガラス層を生成する工程である。
まず、塊状のガラスを細かく砕きボールミルにかける。粉砕したガラス粉末はメッシュにより粒径を分類し、例えば、平均粒径が0.5〜10μm(好ましくは1〜5μm)のガラスの粉末を抽出する。このガラス粉末を、例えばニトロセルロース、酢酸ブチル液と重量比1:4〜1:10の割合で混合して、当該混合液をアルミナボールとともにボールミルにより十分ミリングしスラリーを生成する。以下、このガラス粉末を分散させたスラリーを「ガラススラリー」と称する。次に、このガラススラリーを発光管用材料の内表面に塗布する。発光管用材料は、一方の端部に2つの排気管が形成された管である。これを垂直に保持して、前記ガラススラリーを満たした容器の液面に、一方の排気管を入れてスラリーを吸引する。吸引されたガラススラリーは、発光管用材料の内部に充填されるが、他方の排気管から抜き出すことで内表面に塗布させることができる。なお、ガラススラリーの粘度や塗布回数を調整することによって、最終的に得られるガラス層の厚みを調整することができる。ガラススラリーの厚みは1〜30μmの範囲に形成されることが好ましい。なお、所定の紫外光について高い透過率を得るため、ガラス層の厚みは、後工程で形成する蛍光体層を保持できる範囲で可能な限り小さい方が好ましい。これは、ガラス層での紫外線の吸収を最小限に留めるためである。
【0024】
次に、ガラススラリーを乾燥させる。
発光管用材料に取り付けられた2つの排気管を使って乾燥窒素ガスを循環させることで、ガラススラリーに含まれる酢酸ブチルを蒸発させる。この結果、発光管用材料の内表面に厚さが1〜30μmのガラス粉末が堆積した層(ガラス層)が形成される。なお、乾燥に用いるガスは乾燥空気でも良い。そして、ガラス層を焼成させる。具体的には、ガラス管を加熱することでガラス粉末を焼成させるが、焼成条件は、大気中であって、約500〜1000℃、時間としては、最高温度での保持時間で表すと、0.2〜1時間となる。上述したホウケイ酸ガラス粉末やアルミノケイ酸ガラス粉末を用いた場合には、600〜900℃で行うのが好ましい。そして、このような焼成工程によって粒子同士が結合するとともに、ガラス管に融着し、ガラス層が基材に強力に結着する。また、ガラス層が、粉末の状態であると、蛍光体で発生した紫外線の反射層としての機能も有する。なお、ガラス層は、溶融温度まで昇温しないことから通常は粉末状の形態を維持しているが、更に温度を上げて溶融させた状態としても構わない。
【0025】
ステップ3は蛍光体を発光管用材料の内面に塗布する工程である。
蛍光体の塗布方法はステップ2と同様であり、発光管形成材料を垂直に保持し、蛍光体スラリーを満たした容器の液面に、排気管の一方を入れ、一方の排気管から吸引を行い、蛍光体スラリーを吸い上げ管内部に蛍光体スラリーを充填し、その後、他方の排気管から抜いて塗布する。ついで、蛍光体スラリーを乾燥させる。発光管用材料の一方の排気管Aから、もう一方の排気管へ、乾燥窒素ガスを流すことで、蛍光体スラリーに含まれる酢酸ブチルを蒸発させる。乾燥に用いるガスは、乾燥空気でも良い。さらに、蛍光体を焼成する工程である。発光管用材料を炉に入れて焼成する。焼成条件は、大気雰中で、約500〜800℃であり、最高温度での保持時間にして、0.2〜1時間加熱する。この焼成工程において、蛍光体層とガラス層との境界面でガラスのごく表面の軟化が生じて蛍光体がガラス層に結着し、結果的に、強固な結合状態が得られる。この結果、石英ガラスからなる発光管構成用材料の内表面上に、低軟化点ガラス粉末からなるガラス層、蛍光体層がこの順に積層された状態が得られる。なお、大気中での劣化が激しい蛍光体の場合は、大気中でニトロセルロースが焼失する温度まで昇温したのち、非酸化雰囲気ないし還元雰囲気にすることにより、約800度程度までの加熱を行うことが可能である。
【0026】
ステップ4は希ガスを封入して封止する工程である。具体的には、排気管の内面に付着した蛍光体層およびガラス層を取り除いた後、一方の排気管を加熱封止し、他方の排気管より排気を行い、所定の希ガス(封入物)を封入して気密封止(チップオフ)する。この結果、気密な放電空間が形成された蛍光ランプ用の発光管が得られる。
封入する希ガスは、例えば、キセノン(Xe)、クリプトン(Kr)、アルゴン(Ar)である。
図4の場合は、排気時に、水銀も同時に封入する。
ステップ5は電極を取り付ける工程である。
【0027】
このような製造工程で蛍光ランプについて、具体的な数値例を挙げる。
発光管の全長は300〜2000mmの範囲から選択されて、例えば1500mm、発光管の肉厚は1〜4mmであり、例えば2mmである。また、蛍光体層の平均厚さは10〜20μmの範囲から選択されて、例えば、15μmであり、蛍光体層と発光管の間に形成された低軟化点ガラスからなるガラス層の厚さは1〜30μmの範囲から選択され、例えば10μmである。
【0028】
次に、本発明の効果を表す実験について説明する。
図3に示す蛍光ランプと同一形態のランプをランプ1、
図3に示す蛍光ランプから紫外線反射体4が存在しないランプをランプ2として、出射面における相対照度を測定した。
相対照度は、比較ランプに対する照度の相対値を使っている。
図6に相対照度値を示し、
図7に発光スペクトルを示す。
実験結果より、紫外線反射体を使ったランプ1は比較ランプに対して波長300〜340nmにおいて相対照度値が「4.4」であり、波長340〜400nmにおいて相対照度値が「3.8」であった。また、蛍光体層だけの設けたランプ2は比較ランプに対して波長300〜340nmにおいて相対照度値が「3.1」であり、波長340〜400nmにおいて相対照度値が「2.6」であった。
また、
図7に示す発光スペクトルは縦軸に比較ランプの波長340nmにおける照度を基準とした相対値を示している。紫外線反射体を設けたランプ1も蛍光体層だけのランプ2もいずれも波長340nm付近にピークを有しており、ランプ1の照度は、ランプ2の照度に比較して格段に高いことがわかる。
【0029】
以上説明した蛍光ランプは、一対の電極がいずれも放電空間の外部に位置されたものであったが、このような例に限定されず、例えば少なくとも一方の電極が内部に配置されたものでも適用できる。なお、放電空間内に電極を配置する場合は、封止工程の前に電極を取り付ければよい。
【0030】
以上のように、本発明に係る蛍光ランプは、石英ガラス製発光管と蛍光体層の間に、軟化点が石英ガラスの軟化点よりも低い材料からなるガラス層が形成されているので、ガラス層の軟化温度で加熱させるだけで蛍光体をガラス層に付着させることができる。また、ガラス層と石英ガラスもガラス層の軟化温度で固着させることができる。さらには、ガラス層と発光管の間に紫外線反射体を有しているので、紫外線を特定方向に反射させることで高い放射効率を得ることができる。