【実施例】
【0024】
以下に示す実施例及び比較例を参照して本発明をさらに詳しく説明するが、本発明の範囲は、これらの実施例によって限定されるものでないことは言うまでもない。
【0025】
熱可塑性エラストマー組成物の調製
実施例1
表1に示す量(質量部)で、架橋可能なエラストマー成分と、カーボンブラックと、架橋剤(酸化亜鉛、ステアリン酸およびステアリン酸亜鉛)を、密閉型バンバリーミキサー((株)神戸製鋼所製)に入れ、100℃で2分間混合して予備混合物を調製した。得られた予備混合物をゴムペレタイザー(モリヤマ製)によりペレット化した。ペレット状の予備混合物と、表1に示す量(質量部)の熱可塑性樹脂および変性ポリオレフィンを二軸混練押出機((株)日本製鋼所製)を使用して混練および動的架橋を行った。ペレット状の予備混合物と、熱可塑性樹脂としてナイロン6/66共重合体およびマレイン酸変性エチレン−アクリル酸エチル共重合体とを、二軸混練押出機の原料供給口からシリンダー内に導入し、温度250℃および滞留時間3分間に設定された動的架橋ゾーンで溶融混練することにより架橋可能なエラストマー成分を動的架橋させ、溶融混練物を吐出口に取り付けられたダイからストランド状に押し出した。得られたストランド状押出物を樹脂用ペレタイザーでペレット化し、熱可塑性エラストマー組成物のペレットを得た。
【0026】
実施例2
表1に示す量(質量部)で、架橋可能なエラストマー成分と、カーボンブラックと、架橋剤(酸化亜鉛、ステアリン酸およびステアリン酸亜鉛)を、加圧型ニーダー((株)モリヤマ製)にて100℃で2分間混合して予備混合物を調製した。得られた予備混合物を実施例1と同様にゴムペレタイザーによりペレット化した後、得られたペレット状の予備混合物と、表1に示す量(質量部)の熱可塑性樹脂を、実施例1と同様に、二軸混練押出機により処理し、ペレット化して、熱可塑性エラストマー組成物のペレットを得た。
【0027】
実施例3
この実施例は、スクリュー根元部に設けられた第1の原料供給口と、第1の原料供給口よりも押出方向下流側に順に設けられた混練ゾーンおよび動的架橋ゾーンと、混練ゾーンと動的架橋ゾーンの間に設けられた第2の原料供給口と、吐出口とを有する二軸混練押出機((株)日本製鋼所製)を使用して熱可塑性エラストマー組成物を調製したことを示す例である。表1に示す量(質量部)で、架橋可能なエラストマー成分と、カーボンブラックと、架橋剤(酸化亜鉛、ステアリン酸およびステアリン酸亜鉛)を第1の原料供給口からシリンダー内に導入し、温度100℃および滞留時間1分間に設定された混練ゾーンに搬送して混練することによりカーボンブラックおよび架橋剤を架橋可能なエラストマー成分中に分散させ、第2の原料供給口より熱可塑性樹脂をシリンダー内に導入し、温度250℃および滞留時間2分間に設定された動的架橋ゾーンで溶融混練することにより架橋可能なエラストマー成分を動的架橋させ、溶融混練物を吐出口に取り付けられたダイからストランド状に押し出した。得られたストランド状押出物を樹脂用ペレタイザーでペレット化し、熱可塑性エラストマー組成物のペレットを得た。
【0028】
実施例4および5
表1に示す量(質量部)で、架橋可能なエラストマー成分と、カーボンブラックと、架橋剤(酸化亜鉛、ステアリン酸およびステアリン酸亜鉛)を、実施例1と同様に密閉型バンバリーミキサー((株)神戸製鋼所製)に入れ、100℃で2分間混合して予備混合物を調製した。得られた予備混合物を実施例1と同様にゴムペレタイザーによりペレット化した後、得られたペレット状の予備混合物と、表1に示す配合量の熱可塑性樹脂を、実施例1と同様に、二軸混練押出機により処理し、ペレット化して、熱可塑性エラストマー組成物のペレットを得た。
【0029】
実施例6
カーボンブラックを第2の原料供給口からシリンダー内に導入したことを除いて、実施例3と同様にして熱可塑性エラストマー組成物のペレットを得た。
【0030】
比較例1
この実施例は、スクリュー根元部に設けられた第1の原料供給口と、第1の原料供給口よりも押出方向下流側に順に設けられた第1の混練ゾーン、動的架橋ゾーンおよび第2の混練ゾーンと、第1の混練ゾーンと動的架橋ゾーンの間に設けられた第2の原料供給口と、動的架橋ゾーンと第2の混練ゾーンとの間に設けられた第3の原料供給口と、吐出口とを有する二軸混練押出機((株)日本製鋼所製)を使用して熱可塑性エラストマー組成物を調製したことを示す例である。表1に示す量(質量部)で、架橋可能なエラストマー成分および架橋剤(酸化亜鉛、ステアリン酸およびステアリン酸亜鉛)を第1の原料供給口からシリンダー内に導入し、温度100℃および滞留時間1分間に設定された混練ゾーンに搬送し、第2の原料供給口より熱可塑性樹脂をシリンダー内に導入し、温度250℃および滞留時間2分間に設定された動的架橋ゾーンで溶融混練することにより架橋可能なエラストマー成分を動的架橋させた後、第3の原料供給口からカーボンブラックをシリンダー内に導入し、温度250℃および滞留時間1分間に設定された第2の混練ゾーンで溶融混練を続け、溶融混練物を吐出口に取り付けられたダイからストランド状に押し出した。得られたストランド状押出物を樹脂用ペレタイザーでペレット化し、熱可塑性エラストマー組成物のペレットを得た。
【0031】
比較例2〜6
表1に示す量(質量部)で、架橋可能なエラストマー成分と、カーボンブラックと、架橋剤(酸化亜鉛、ステアリン酸およびステアリン酸亜鉛)を、実施例1と同様に密閉型バンバリーミキサー((株)神戸製鋼所製)に入れ、100℃で2分間混合して予備混合物を調製した。得られた予備混合物を実施例1と同様にゴムペレタイザーによりペレット化した後、得られたペレット状の予備混合物と、表1に示す量(質量部)の熱可塑性樹脂を、実施例1と同様に、二軸混練押出機により処理し、ペレット化して、熱可塑性エラストマー組成物のペレットを得た。
【0032】
【表1】
【0033】
表1脚注:
(1)臭素化イソブチレン−パラメチルスチレン共重合体(エクソンモービルケミカル社製のExxpro MDX89−4)
(2)三菱化学(株)製のMA600(MCF級)(BET窒素吸着比表面積:140m
2/g、一次粒子平均粒径:20nm)
(3)東海カーボン(株)製のシーストV(GPF級)(BET窒素吸着比表面積:62m
2/g、一次粒子平均粒径:27nm)
(4)東海カーボン(株)製のシースト3(HAF級)(BET窒素吸着比表面積:79m
2/g、一次粒子平均粒径:28nm)
(5)三菱化学(株)製の#2300(HCF級)(BET窒素吸着比表面積:320m
2/g、一次粒子平均粒径:15nm)
(6)ナイロン6/66共重合体(宇部興産(株)製の5013B)
(7)マレイン酸変性エチレン−エチルアクリレート共重合体(三井デュポンポリケミカル(株)製のHPR AR201)
(8)正同化学(株)製の亜鉛華3号
(9)日本油脂(株)製のビーズステアリン酸
(10)堺化学工業(株)製
*カーボンブラック配合段階の「架橋前」は動的架橋前を意味し、「架橋後」は動的架橋後を意味する。
【0034】
実施例7〜12
下記表2に示すように、架橋可能なエラストマー成分、熱可塑性樹脂および架橋剤のタイプおよび量を変えたことを除き、それぞれ実施例1〜6と同様にして、実施例7〜12の熱可塑性エラストマー組成物のペレットを得た。
【0035】
比較例7〜9
下記表2に示すように、架橋可能なエラストマー成分、熱可塑性樹脂および架橋剤のタイプおよび量を変えたことを除き、比較例1と同様にして比較例7の熱可塑性エラストマー組成物のペレットを得、比較例2〜6と同様にして比較例9の熱可塑性エラストマー組成物のペレットを得た。
【0036】
【表2】
【0037】
表2脚注:
(1)無水マレイン酸変性エチレンプロピレン共重合体(三井化学(株)製のタフマーMP0620)
(2)三菱化学(株)製のMA600(MCF級)(BET窒素吸着比表面積:140m
2/g、一次粒子平均粒径:20nm)
(3)ナイロン6/66共重合体(宇部興産(株)製の5033B)
(4)エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂(日本合成化学工業(株)製のソアノールA4412)
(5)3,3’−ジアミノジフェニルスルホン(三井化学ファイン(株)製)
*カーボンブラック配合段階の「架橋前」は動的架橋前を意味し、「架橋後」は動的架橋後を意味する。
【0038】
上記の実施例1〜12および比較例1〜9の熱可塑性エラストマー組成物の特性を下記の試験法により評価した。
(1)室内促進暴露試験法
実施例1〜12および比較例1〜9のペレット状の各熱可塑性エラストマー組成物を、インフレーション成形装置((株)プラコー製)を使用して温度230℃でインフレーション成形し、厚さ100μmのフィルムを得た。得られたフィルムを、縦15cmおよび横15cmの試験片に打ち抜いた。試験片を、サンシャインウェザーメーター(スガ試験機(株)製、光源:サンシャインカーボンアーク)を使用して、温度を63℃および降雨時間を60分あたり12分に設定して7日間(168時間)促進暴露にかけた。促進暴露後、試験片の表面を目視観察して、クラックの有無を調べた。クラックが認められたものを「不合格」、クラックが認められなかったものを「合格」と評価した。
(2)タイヤ耐光性試験法
タイヤの作製
まず、熱可塑性エラストマー組成物を空気透過防止層としてタイヤ内面に貼り付けるための粘接着剤組成物を調製した。粘接着剤組成物は、下記表3に示す成分をドライブレンドして二軸混練押出機((株)日本製鋼所製)に投入し、130℃で3分間混練することにより調製した。得られた混練物をストランド状に押出し、水冷した後、防着剤を塗布し、樹脂用ペレタイザーでペレット化して、粘接着剤組成物のペレットを得た。
【0039】
【表3】
【0040】
表3脚注:
(1)スチレン−ブタジエンブロック共重合体のエポキシ化物(ダイセル化学(株)製のエポフレンドAT501)
(2)正同化学(株)製の亜鉛華3号
(3)日本油脂(株)製のビーズステアリン酸YR
(4)大内新興化学(株)製のノクセラーTOT−N
(5)ヤスハラケミカル(株)製のYSレジンD105
【0041】
得られたペレット状の粘接着剤組成物と、実施例1〜12および比較例1〜9のペレット状の各熱可塑性エラストマー組成物とを、インフレーション成形装置((株)プラコー製)を使用して温度230℃でインフレーション成形し、粘接着剤組成物層と熱可塑性エラストマー組成物層から成る複層フィルムを得た。得られた複層フィルムでは、粘接着剤組成物層の厚みは20μmであり、熱可塑性エラストマー組成物層の厚みは100μmであった。複層フィルムを、タイヤ成型用ドラム上に、熱可塑性エラストマー組成物層がドラム側になるようにして配置した。その上にカーカス層、ベルト層、トレッド層等のタイヤ部材を積層し、タイヤ成型用ドラムからグリーンタイヤを取り外した。次いで、このグリーンタイヤを加硫機で加硫することにより、本発明の熱可塑性エラストマー組成物を空気タイヤサイズ165SR13(リム 13×41/2−J)のスチールラジアルタイヤを作製した。
【0042】
評価
上記のように作製したタイヤを、屋外の十分に日光に曝される地面に横置きにして12ヶ月間放置した後、乗用車に装着して、タイヤ空気圧140kPaおよびタイヤ荷重5.5kNで実路上を10000km走行した。走行後に、タイヤをリムから外し、タイヤ内面の空気透過防止層を目視観察し、空気透過防止層にクラックがあるもの、あるいはライナー層の剥離または浮き上がりがあるものを不合格、ないものを合格と判定した。結果は上記表1および2に示したとおりである。
【0043】
表1および2の結果から、本発明に従って所定量で中級カラーファーネスカーボンブラック(MCF)を使用して調製された熱可塑性エラストマー組成物は、クラック等の欠陥を発生しにくく、優れた耐UV劣化性を示すことが分かる。