(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記IGBTセル(10)のチャネル層(37)と前記ダイオードセル(20)のリサーフ領域(52)とは、前記ダイオードセル(20)において前記半導体基板(30)の一面(31)に垂直な方向でオーバーラップしていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
前記IGBTセル(10)のチャネル層(37)と前記ダイオードセル(20)のリサーフ領域(52)とは、前記IGBTセル(10)において前記半導体基板(30)の一面(31)に垂直な方向でオーバーラップしていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【背景技術】
【0002】
従来より、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)セルとダイオード(Free Wheeling Diode)セルとが同じ半導体基板に形成された半導体装置が、例えば特許文献1で提案されている。
【0003】
具体的に、特許文献1では、例えばN型半導体基板の表層部にP型層が形成され、このP型層の表層部にN型エミッタ領域が形成されたものに対して、N型エミッタ領域とP型層とを貫通してN型半導体基板に達する第1トレンチが複数形成されている。各第1トレンチには絶縁膜を介してゲート電極が埋め込まれている。
【0004】
また、隣同士の第1トレンチの間にはN型エミッタ領域よりも深いP+型領域がコンタクト用として形成されており、このP+型領域を貫通してP型層に達する第2トレンチが形成されている。そして、N型半導体基板の表面上には、ゲート電極を覆う層間絶縁膜を介してエミッタ電極が形成されている。このエミッタ電極は、第2トレンチにも埋め込まれている。すなわち、第1トレンチはトレンチゲート構造を構成するトレンチであり、第2トレンチはエミッタコンタクト用のトレンチである。
【0005】
さらに、N型半導体基板の裏面側にP+型コレクタ領域とN+型カソード領域とが設けられ、これらP+型コレクタ領域およびN+型カソード領域の上に共通のコレクタ電極が形成されている。これにより、P+型コレクタ領域が形成された部分はIGBT素子として機能し、N+型カソード領域が形成された部分はダイオード素子として機能する。
【0006】
このような構造によると、ダイオード素子領域のアノード構造はIGBT素子領域の構造であり、P型層に達する第2トレンチ内に埋め込まれたエミッタ電極がダイオード素子領域のアノード電極として機能する。しかしながら、ダイオード素子領域においてエミッタ電極に接するP型領域は、IGBT素子領域のチャネル領域の閾値電圧Vtを決めるための不純物濃度に設定されているので、ダイオード素子のアノードの不純物濃度としては濃すぎるという問題があった。
【0007】
そこで、特許文献1では、ダイオード素子領域には第1トレンチおよび第2トレンチを設けずに、別マスクを用いた専用工程でIGBT素子領域のP型領域よりも低濃度のP型アノード領域を形成した構造も提案されている。これにより、半導体基板へのホールの注入を低減でき、所望のダイオード特性が得られる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、ダイオード素子領域に専用のP型アノード領域を設けた構造では、相対的にIGBT素子領域からダイオード素子領域へのホールの注入が多くなるので、順方向電圧Vfがシフトしてしまうことや、リカバリ耐量が低下するという問題が生じる。また、ダイオード素子領域の断面構造がIGBT素子領域と異なるため、IGBT素子領域の端に位置するトレンチの底部付近に電界が集中してしまい、耐圧が低下してしまうという問題もある。
【0010】
本発明は上記点に鑑み、IGBT素子領域からダイオード素子領域へのホールの注入を抑制することができ、さらに耐圧を確保できる構造を備えた半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、一面(31)および他面(32)を有すると共に第1導電型のドリフト層(33)を含む半導体基板(30)を備え、半導体基板(30)の他面(32)側に、第2導電型のコレクタ層(35)と第1導電型のカソード層(36)とが同じ階層に形成され、これらコレクタ層(35)およびカソード層(36)の上にコレクタ電極が形成されており、半導体基板(30)の一面(31)の面方向において、コレクタ層(35)が形成された領域がIGBT素子として動作するIGBTセル(10)とされ、カソード層(36)が形成された領域がダイオード素子として動作するダイオードセル(20)とされている。
【0012】
また、IGBTセル(10)は、ドリフト層(33)の上に形成された第2導電型のチャネル層(37)と、チャネル層(37)を貫通してドリフト層(33)に達するように形成されたトレンチ(38)と、トレンチ(38)の表面に形成されたゲート絶縁膜(41)と、トレンチ(38)内において、ゲート絶縁膜(41)の上に形成されたゲート電極(43)と、チャネル層(37)の表層部に形成され、当該チャネル層(37)内においてトレンチ(38)の側面に接するように形成された第1導電型のエミッタ領域(44)と、チャネル層(37)の表層部に形成された第2導電型の第1コンタクト領域(45)と、チャネル層(37)内においてトレンチ(38)の深さ方向にエミッタ領域(44)および第1コンタクト領域(45)よりも深いと共に当該チャネル層(37)をエミッタ領域(44)および第1コンタクト領域(45)側とドリフト層(33)側とに分割する第1導電型のフローティング層(48)と、ゲート電極(43)上を含むように形成された層間絶縁膜(50)と、を備えている。
【0013】
そして、ダイオードセル(20)は、IGBTセル(10)とダイオードセル(20)との境界側では少なくともトレンチ(38)よりも深
いアノードとしての第2導電型のリサーフ領域(52)と、リサーフ領域(52)の表層部に形成された第2導電型の第2コンタクト領域(55)を備え
ており、リサーフ領域(52)の第2導電型不純物濃度を深さ方向において積分して得られる面密度が、チャネル層(37)の第2導電型不純物濃度を深さ方向において積分して得られる面密度よりも小さくされていることを特徴とする。
【0014】
これによると、ダイオードセル(20)にトレンチ(38)よりも深いリサーフ領域(52)が形成されているので、チャネル層(37)によってドリフト層(33)に形成される空乏層とリサーフ領域(52)によってドリフト層(33)に形成される空乏層とがIGBTセル(10)とダイオードセル(20)との境界付近で滑らかに接続される。これにより、当該境界付近の電界強度が滑らかになるので、IGBTセル(10)とダイオードセル(20)との境界付近における電界集中を緩和することができ、耐圧を確保することができる。
【0015】
また、IGBTセル(10)のチャネル層(37)に設けられたフローティング層(48)が電位の壁となって機能するので、IGBTセル(10)の動作時には、ドリフト層(33)からチャネル層(37)へのホールの流れが抑制される。これにより、エミッタ電極にホールが吐き出されにくくなり、ドリフト層(33)のホールおよび電子の濃度が上昇していわゆる導電率変調が促進される。したがって、ドリフト層(33)の抵抗が下がり、IGBTセル(10)の定常損失低減を実現することができる。
【0016】
一方、ダイオードセル(20)の動作時には、IGBTセル(10)の第1コンタクト領域(45)からダイオードセル(20)側に供給されるホールの流れがフローティング層(48)によって阻止されるので、IGBTセル(10)からダイオードセル(20)への過剰なホール注入を抑制することができる。これにより、IGBTセル(10)のゲート干渉によってダイオードセル(20)の順方向電圧Vfが変動してしまうことを抑制することができる。
【0017】
請求項2に記載の発明では、IGBTセル(10)のチャネル層(37)と前記ダイオードセル(20)のリサーフ領域(52)とは、前記ダイオードセル(20)において前記半導体基板(30)の一面(31)に垂直な方向でオーバーラップしていることを特徴とする。
【0018】
また、請求項3に記載の発明では、IGBTセル(10)のチャネル層(37)とダイオードセル(20)のリサーフ領域(52)とは、IGBTセル(10)において半導体基板(30)の一面(31)に垂直な方向でオーバーラップしていることを特徴とする。
【0019】
請求項2または3に記載された発明により、チャネル層(37)によって形成される空乏層とリサーフ領域(52)によって形成される空乏層との接続を滑らかにすることができる。
【0020】
請求項4に記載の発明では、トレンチ(38)は、IGBTセル(10)とダイオードセル(20)とが並べられた方向に対して垂直な方向に延設されている。そして、第2コンタクト領域(55)は、トレンチ(38)の延設方向に対して断続的に形成されていると共に、トレンチ(38)の延設方向に対して垂直な方向に断続的に形成された構造とすることができる。
【0021】
また、請求項5に記載の発明のように、第2コンタクト領域(55)は、トレンチ(38)の延設方向に対して垂直な方向に沿うようにストライプ状に形成されていても良い。
【0022】
一方、請求項6に記載の発明のように、リサーフ領域(52)は、トレンチ(38)の延設方向に対して垂直な方向に沿うようにストライプ状に形成されていても良い。
【0023】
他方、請求項7に記載の発明のように、リサーフ領域(52)はトレンチ(38)の延設方向に対して垂直な方向に沿うようにストライプ状に形成されており、第2コンタクト領域(55)は、半導体基板(30)の一面(31)に垂直な方向で所定数のリサーフ領域(52)を含むと共にリサーフ領域(52)に沿うようにストライプ状に形成されていても良い。
【0024】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。また、以下の各実施形態で示されるN型およびN−型は本発明の第1導電型に対応し、P型およびP+型は本発明の第2導電型に対応している。
【0027】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について図を参照して説明する。本実施形態で示される絶縁ゲート型の半導体装置は、例えば、インバータ、DC/DCコンバータ等の電源回路に使用されるパワースイッチング素子として用いられるものである。
【0028】
図1(a)は、本実施形態に係る半導体装置を製造するために用いられるマスクをすべて重ね合わせた平面図である。また、
図1(b)は、本実施形態に係る半導体装置の断面図である。
【0029】
図1(b)に示されるように、半導体装置は、IGBTセル10と、このIGBTセル10に隣接するダイオードセル20と、を備えて構成されたRC−IGBTである。IGBTセル10は多数のIGBT素子が形成された領域であり、ダイオードセル20はダイオード素子が形成された領域である。図示しないが、IGBTセル10とダイオードセル20とは交互に複数設けられている。
【0030】
これらIGBTセル10およびダイオードセル20は、一面31および他面32を有すると共にN−型のドリフト層33を含む半導体基板30に形成されている。また、半導体基板30の他面32に、オン電圧およびスイッチング損失の低減を目的としてN型のフィールドストップ層34が形成されている。そして、フィールドストップ層34のうち、IGBTセル10の領域の上にはP型のコレクタ層35が形成され、ダイオードセル20の領域の上にはN型のカソード層36が形成されている。コレクタ層35およびカソード層36は同じ階層に形成され、これらコレクタ層35およびカソード層36の上に図示しないコレクタ電極が形成されている。
【0031】
このような半導体基板30に対して、IGBTセル10には、ドリフト層33の表層部にP型のチャネル層37が形成され、チャネル層37を貫通してドリフト層33まで達するように複数個のトレンチ38が形成されている。本実施形態では、チャネル層37の表面を半導体基板30の一面31とし、ドリフト層33のうちチャネル層37とは反対側を他面32とする。各トレンチ38は、半導体基板30の一面31の面方向のうち一方向を長手方向とし、この長手方向に平行に延設されている。ここで、一方向とは、IGBTセル10とダイオードセル20とが並べられた方向に対して垂直な方向である。そして、トレンチ38は例えば複数個等間隔に平行に形成されている。
【0032】
チャネル層37は
図1(a)に示されるマスク39が用いられてイオン注入により形成され、トレンチ38は
図1(a)に示されるようにマスク40が用いられてエッチングにより形成されている。なお、
図1(a)に示される各マスクは、開口部分にハッチングが適宜付されている。
【0033】
各トレンチ38の内壁には、各トレンチ38の内壁表面を覆うようにゲート絶縁膜41が形成されている。このゲート絶縁膜41は
図1(a)に示されるマスク42が用いられて熱酸化やCVD法等で形成されている。各トレンチ38のうちIGBTセル10に形成されたトレンチ38のゲート絶縁膜41の上にはポリシリコン等のゲート電極43が埋め込まれている。これにより、トレンチゲート構造が構成されている。ゲート電極43は図示しないパッドのうちゲート用のものに接続されている。
【0034】
また、IGBTセル10では、チャネル層37はチャネル領域を構成している。本実施形態では、チャネル層37はIGBTセル10とダイオードセル20との境界を越えて、ダイオードセル20のうちIGBTセル10側の領域にも形成されている。そして、チャネル領域であるチャネル層37の表層部にN型のエミッタ領域44が形成されている。エミッタ領域44は、半導体基板30の一面31の面方向におけるトレンチ38の長手方向に対して垂直な方向にストライプ状に形成されている。また、当該チャネル層37の表層部に、エミッタ領域44に挟まれるようにP+型の第1コンタクト領域45が形成されている。
【0035】
N型のエミッタ領域44は、N−型のドリフト層33よりも高不純物濃度で構成され、チャネル層37内において終端しており、かつ、当該チャネル層37内においてトレンチ38の側面に接するように形成されている。具体的には、エミッタ領域44は、トレンチ38間の領域において、トレンチ38の長手方向に沿ってトレンチ38の側面に接するように棒状に延設され、トレンチ38の先端よりも内側で終端した構造とされている。このエミッタ領域44は、マスク46が用いられてイオン注入により形成されている。これにより、エミッタ領域44はIGBTセル10とダイオードセル20とが並んだ方向にストライプ状に延設される。
【0036】
一方、P+型の第1コンタクト領域45は、P+型のチャネル層37よりも高不純物濃度で構成され、エミッタ領域44と同様に、チャネル層37内において終端するようにマスク47が用いられてイオン注入により形成されている。これにより、第1コンタクト領域45は、2つのエミッタ領域44に挟まれてトレンチ38の長手方向(つまりエミッタ領域44)に沿って断続的に形成されている。
【0037】
そして、IGBTセル10におけるチャネル層37には、トレンチ38の深さ方向にエミッタ領域44および第1コンタクト領域45よりも深いと共に当該チャネル層37を分割するN型のフローティング層48が形成されている。このフローティング層48は、マスク49が用いられてイオン注入により形成されている。具体的には、フローティング層48は、チャネル層37をエミッタ領域44および第1コンタクト領域45が形成された側の領域(半導体基板30の一面31側)とドリフト層33に接する領域(半導体基板30の他面32側)とに分割している。
【0038】
さらに、チャネル層37の上にはPSG等の層間絶縁膜50がゲート電極43上を含むように形成されている。層間絶縁膜50は、
図1(a)に示されるマスク51が用いられてCVD法等により形成されている。これにより、N型のエミッタ領域44の一部およびP+型の第1コンタクト領域45が層間絶縁膜50から露出している。また、
図1(b)に示されるように、各トレンチ38のうち最もダイオードセル20側に位置するトレンチ38を覆う層間絶縁膜50については、最もダイオードセル20側に位置するエミッタ領域44を完全に覆っている。これにより、最もダイオードセル20側に位置するエミッタ領域44はIGBT素子として機能しない。
【0039】
一方、ダイオードセル20では、ドリフト層33の表層部にトレンチ38よりも深く、アノードとして機能するP型のリサーフ領域52が形成されている。このリサーフ領域52は、IGBTセル10とダイオードセル20との境界側では少なくともトレンチ38よりも深くなっていれば良い。本実施形態では、リサーフ領域52は
図1(a)に示されるマスク53が用いられてイオン注入によりダイオードセル20の全域でトレンチ38よりも深く形成されている。
【0040】
そして、
図1(b)に示されるように、IGBTセル10のチャネル層37とダイオードセル20のリサーフ領域52とは、ダイオードセル20において半導体基板30の一面31に垂直な方向でオーバーラップしている。これにより、チャネル層37によって形成される空乏層とリサーフ領域52によって形成される空乏層とが滑らかに接続される。
【0041】
また、リサーフ領域52の表層部には、
図1(a)に示されるマスク54が用いられてイオン注入によりP+型の第2コンタクト領域55が形成されている。マスク54は、トレンチ38の延設方向に沿っていると共にエミッタ領域44の延設方向に沿って断続的に開口部が設けられたものである。したがって、第2コンタクト領域55は、トレンチ38の延設方向に対して断続的に形成されていると共に、トレンチ38の延設方向に対して垂直な方向に断続的に形成されている。
【0042】
さらに、半導体基板30の一面31から第2コンタクト領域55が露出するように層間絶縁膜50が形成されている。ダイオードセル20に係る層間絶縁膜50の形成の際にも上記と同じマスク51が用いられる。つまり、層間絶縁膜50はマスク51によりIGBTセル10とダイオードセル20とで同じ工程で形成される。
【0043】
第2コンタクト領域55の不純物濃度は、例えばIGBTセル10の第1コンタクト領域45の不純物濃度とは異なる濃度になっている。つまり、第2コンタクト領域55はダイオード特性に最適な不純物濃度に設定されている。
【0044】
さらに、本実施形態では、リサーフ領域52はIGBTセル10のチャネル層37よりも面密度が小さい。これについて、
図2を参照して説明する。
図2(a)は
図1(b)のA−Aプロファイルであり、
図2(b)は
図1(b)のB−Bプロファイルである。
図2に示される各図の横軸は半導体基板30の一面31を基準としたときの他面32側への半導体基板30の深さを示し、縦軸は不純物濃度を示している。
【0045】
図2(a)に示されるように、リサーフ領域52(リサーフP)はトレンチ38よりも深く、
図2(b)に示されるように、チャネル層37(チャネルP)はトレンチ38よりも浅く形成されている。
【0046】
そして、
図2(a)および
図2(b)に示されるように、リサーフ領域52はチャネル層37に対して不純物濃度が低い領域になっている。このため、
図2(a)に示されるリサーフ領域52の領域を積分して得られるリサーフ領域52の面密度は、
図2(b)に示されるチャネル層37の領域を積分して得られるチャネル層37の面密度よりも小さい。
【0047】
上記のような表面構造が形成された半導体基板30の一面31側に図示しないエミッタ電極が形成されている。具体的には、層間絶縁膜50から露出したN型のエミッタ領域44、P+型の第1コンタクト領域45、およびP+型の第2コンタクト領域55の上にエミッタ電極が形成され、これらが電気的に接続されている。
【0048】
以上が、本実施形態に係る絶縁ゲート型の半導体装置の構成である。そして、半導体基板30の一面31の面方向において、コレクタ層35が形成された領域がIGBT素子として動作し、カソード層36が形成された領域がダイオード素子として動作する。
【0049】
以上説明したように、本実施形態では、ダイオードセル20にトレンチ38よりも深く、チャネル層37よりも面密度が小さいアノードとしてのリサーフ領域52を設けたことが特徴となっている。
【0050】
これにより、IGBTセル10とダイオードセル20との境界付近において、チャネル層37によってドリフト層33に形成される空乏層とリサーフ領域52によってドリフト層33に形成される空乏層とを滑らかに接続することができる。このため、当該境界付近においてドリフト層33に形成される電界強度が滑らかになるので、当該境界付近における電界集中を緩和することができる。したがって、半導体装置の耐圧を確保することができる。
【0051】
また、本実施形態では、IGBTセル10のチャネル層37にフローティング層48を設けたことが特徴となっている。これにより、フローティング層48が電位の壁となって機能するので、IGBTセル10の動作時には、ドリフト層33からチャネル層37へのホールの流れを抑制することができる。このため、エミッタ電極にホールが吐き出されにくくなり、ドリフト層33のホールおよび電子の濃度が上昇していわゆる導電率変調が促進される。したがって、ドリフト層33の抵抗が下がり、IGBTセル10の定常損失を低減することができる。
【0052】
一方、ダイオードセル20の動作時には、IGBTセル10の第1コンタクト領域45からダイオードセル20側へのホールの流れをフローティング層48によって阻止ることができる。このため、IGBTセル10からダイオードセル20への過剰なホール注入が抑制される。したがって、IGBTセル10のゲート干渉によってダイオードセル20の順方向電圧Vfが変動してしまうことを抑制することができる。
【0053】
(第2実施形態)
本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について説明する。
図3は、本実施形態に係る半導体装置を製造するために用いられるマスクをすべて重ね合わせた平面図である。
【0054】
図3に示されるように、本実施形態では、IGBTセル10とダイオードセル20とが並べられた方向に沿ってストライプ状に開口したマスク56が用いられて第2コンタクト領域55が形成される。これにより、第2コンタクト領域55はトレンチ38の延設方向に対して垂直な方向に沿うようにストライプ状にレイアウトされる。
【0055】
上記のマスク56の開口部は、第1実施形態で用いられた第2コンタクト領域55形成用のマスク54の開口部よりも広いので、本実施形態に係る第2コンタクト領域55の面積は第1実施形態に係る第2コンタクト領域55よりも広くなる。このため、ドリフト層33へのホールの注入は増える。しかしながら、第1実施形態の構造に対してホールの注入を増やしたい場合には有効である。
【0056】
(第3実施形態)
本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について説明する。
図4は、本実施形態に係る半導体装置を製造するために用いられるマスクをすべて重ね合わせた平面図である。
【0057】
図4に示されるように、リサーフ領域52を形成するためのマスク57は、IGBTセル10とダイオードセル20とが並べられた方向に沿ってストライプ状に開口したものである。すなわち、本実施形態に係るマスク57は、第1実施形態で用いられたマスク53の開口率が調整されたものであると言える。このようなマスク57を用いてリサーフ領域52を形成することもできる。これにより、リサーフ領域52は、トレンチ38の延設方向に対して垂直な方向に沿うようにストライプ状に形成される。なお、マスク57はストライプ状ではなく、メッシュ状に開口していても良い。
【0058】
(第4実施形態)
本実施形態では、第1〜第3実施形態と異なる部分について説明する。
図5は、本実施形態に係る半導体装置を製造するために用いられるマスクをすべて重ね合わせた平面図である。
【0059】
図5に示されるように、本実施形態では、リサーフ領域52を形成するために第3実施形態に係るマスク57を用いると共に、第2コンタクト領域55を形成するために第2実施形態に係るマスク56を用いる。これにより、リサーフ領域52はトレンチ38の延設方向に対して垂直な方向に沿うようにストライプ状に形成される。また、第2コンタクト領域55は、半導体基板30の一面31に垂直な方向で所定数のリサーフ領域52を含むと共にリサーフ領域52に沿うようにストライプ状に形成される。本実施形態では1本の第2コンタクト領域55が2本のリサーフ領域52を含むように形成されている。
【0060】
以上のように、リサーフ領域52と第2コンタクト領域55とを両方ストライプ状にレイアウトすることもできる。
【0061】
(第5実施形態)
本実施形態では、第1〜第4実施形態と異なる部分について説明する。
図6は、本実施形態に係る半導体装置の断面図である。この図に示されるように、本実施形態では、コレクタ層35とカソード層36との境界上に複数のトレンチ38のうちの一つが形成されている。そして、コレクタ層35とカソード層36との境界上に形成された当該トレンチ38を境界として、IGBTセル10とダイオードセル20との各領域が区画されている。このトレンチ38内にはゲート電極43が埋め込まれている。
【0062】
このようなIGBTセル10とダイオードセル20との境界部分では、リサーフ領域52はコレクタ層35とカソード層36との境界上のトレンチ38の底部に接続されるように形成されている。つまり、本実施形態では、チャネル層37とリサーフ領域52とは半導体基板30の一面31に垂直な方向でオーバーラップしていない。また、リサーフ領域52の表層部には、第1実施形態と同様に、第2コンタクト領域55が断続的に形成されている。
【0063】
図6に示されるリサーフ領域52は、半導体基板30の外縁部分に形成される耐圧構造(RESURF)を形成するためのイオン注入工程で同時に形成する。
【0064】
この場合、
図7(a)に示されるマスク58を用いる。このマスク58には、
図7(b)に示されるように、ダイオードセル20に対応する部分に複数の開口部59が形成されている。各開口部59は、例えば千鳥状に設けられている。そして、マスク58の開口部59の開口率を調整することで、リサーフ領域52の不純物濃度や接合深さを調節する。
【0065】
上記マスク58を用いてイオン注入工程を行うと、マスク58のうち開口部59が形成されていない部分では、
図7(c)に示されるようにリサーフ領域52が浅い部分が形成され、このような部分は不純物濃度が薄くなる。そこで、マスク58に開口部59が形成されていない部分が開口した別の図示しないマスクを用意し、このマスクを用いてイオン注入を行う。これにより、第2コンタクト領域55を形成する工程において、上記の不純物濃度が薄い部分を補完する。局所的に不純物濃度が薄くなるとラッチアップを起こし、耐圧低下を起こすため、これを防ぐために第2コンタクト領域55を形成して不純物濃度を補完する。このようにして、
図6に示されるダイオードセル20の構造を得ることができる。
【0066】
以上説明したように、リサーフ領域52はチャネル層37とオーバーラップしていなくても良い。また、リサーフ領域52を外周耐圧部と同じ工程で形成する場合には、開口部59に対応していない部分の不純物濃度を第2コンタクト領域55の形成時に補完して不純物濃度を調整することができる。
【0067】
(第6実施形態)
本実施形態では、第5実施形態と異なる部分について説明する。
図8は、本実施形態に係る半導体装置の断面図である。この図に示されるように、本実施形態では、IGBTセル10のチャネル層37とダイオードセル20のリサーフ領域52とがIGBTセル10において半導体基板30の一面31に垂直な方向でオーバーラップしている。
【0068】
このような構造は、IGBTセル10とダイオードセル20との境界付近は高開口率であると共に当該境界付近からダイオードセル20側に向かって徐々に開口率が低くなるように開口部59のパターンが形成されたマスク58を用いる。これにより、
図8に示されるように、当該境界付近ではリサーフ領域52はIGBTセル10のチャネル層37よりも深くなり、当該境界付近から遠ざかるとリサーフ領域52は次第に接合深さが浅くなる。これにより、当該境界付近での空乏層が滑らかに接続されて電界、電流の集中を緩和でき、半導体装置の耐量を向上することができる。
【0069】
なお、半導体基板30の他面32側のコレクタ層35とカソード層36との境界は深いリサーフ領域52の直下に位置するように、コレクタ層35およびカソード層36を形成する。
【0070】
以上のように、IGBTセル10においてチャネル層37とリサーフ領域52とがオーバーラップするように、リサーフ領域52を形成することもできる。
【0071】
(他の実施形態)
上記各実施形態で示された構造は一例であり、他の構造でも良い。すなわち、コレクタ層35とカソード層36との境界の位置やチャネル層37のうちフローティング層48が設けられる範囲等、適宜変更することができる。