特許第5664044号(P5664044)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5664044
(24)【登録日】2014年12月19日
(45)【発行日】2015年2月4日
(54)【発明の名称】センサ一体型リニアアクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/02 20060101AFI20150115BHJP
   H02K 41/03 20060101ALI20150115BHJP
【FI】
   F16F15/02 A
   H02K41/03 A
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2010-202475(P2010-202475)
(22)【出願日】2010年9月9日
(65)【公開番号】特開2012-57742(P2012-57742A)
(43)【公開日】2012年3月22日
【審査請求日】2013年8月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002059
【氏名又は名称】シンフォニアテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137486
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 雅直
(72)【発明者】
【氏名】藤井 隆良
(72)【発明者】
【氏名】福永 崇
(72)【発明者】
【氏名】中川 洋
(72)【発明者】
【氏名】守屋 英朗
(72)【発明者】
【氏名】尾上 孝志
【審査官】 莊司 英史
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−338505(JP,A)
【文献】 特開平10−292847(JP,A)
【文献】 特開平09−242813(JP,A)
【文献】 特開2006−162024(JP,A)
【文献】 特開平09−329168(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/02
H02K 41/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース内に、固定子、当該固定子に対して所定方向に移動可能な可動子、及び固定子又は可動子の何れかに設けられて前記可動子を前記所定方向に沿って往復動作させるための磁束を発生させるコイルを備えたリニア駆動型のモータを構成するとともに、前記ケースの一部に制振対象への取付部を設定して、前記可動子の作動反力を制振対象の振動を相殺する加振力として利用するものであって、
前記ケースに加速度センサを一体的に取り付けるとともに、一端を前記コイルに接続したモータ用のリード線と、一端を前記加速度センサに接続したセンサ用のリード線と、これらのリード線の他端側を前記ケースの同一箇所から引き出すための集線引出し部とを設け
前記集線引出し部が、リード線をケースの内部から外部に引き出すための複数の通線シール孔を含んで構成されていることを特徴とするセンサ一体型リニアアクチュエータ。
【請求項2】
ケースの一部を切欠状にすることによって、ケースの側壁の内奥に側方に解放される引出し空間を形成し、その引出し空間に臨む壁面に前記集線引出し部を設けている請求項1記載のセンサ一体型リニアアクチュエータ。
【請求項3】
前記引出し空間に臨む立面に集線引出し部を設け、前記引出し空間に臨む水平面にリード線固定部を設けている請求項2記載のセンサ一体型リニアアクチュエータ。
【請求項4】
ケースが、前記制振対象への取付部を有する下ケースと、この下ケースに封止状態で取り付けられる上ケースとを具備し、前記加速度センサが前記コイルともどもケース内に配置されて、前記複数の通線シール孔が、前記下ケースの同一個所に設けられている請求項1〜3何れかに記載のセンサ一体型リニアアクチュエータ。
【請求項5】
加速度センサが、ケース内空間に臨む下ケースの上面に設けた凹部に埋設固定されている請求項4記載のセンサ一体型リニアアクチュエータ。
【請求項6】
加速度センサを、固定子と可動子の間に発生する磁束を避けた位置に配置している請求項4又は5何れかに記載のセンサ一体型リニアアクチュエータ。
【請求項7】
請求項1〜6何れかに記載のセンサ一体型リニアアクチュエータを利用したものであって、ケースを加振対象である自動車の車体に取り付けることによって、自動車制振制御においてアクチュエータと加速度センサとを前記車体の同一又は実質的に同一とみなせる位置に配置するとともに、集線引出し部からモータ用のリード線及びセンサ用のリード線を引き出して、センサ用のリード線を通じて得られる加速度センサの信号に基づきコントローラからモータ用のリード線を通じて所要の給電を行うことにより前記センサ一体型リニアアクチュエータに車体の振動を相殺する制振振動を発生させるようにしたことを特徴とする自動車制振装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の車体の振動に対して相殺関係を有する制振振動を発生させて、当該車体の振動を制振するためのリニアアクチュエータに係り、特に振動検出のためのセンサを一体化したセンサ一体型リニアアクチュエータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車制振装置は、特許文献1にも開示されているように、自動車の車体における制振したい位置である参照点に取付けられて、当該参照点における振動加速度を検出する加速度センサと、前記車体における制振力を発生させる位置である加振点に取付けられて、自動車から発生する振動に対して相殺関係を有する制振振動を発生させるアクチュエータと、前記加速度センサの検出信号に基づいた制振振動を前記アクチュエータに発生させるべく、当該アクチュエータをコントロールするコントローラとを備えた装置であって、加振点の配置とは無関係に、参照点の制振を効果的に行える装置である。
【0003】
アクチュエータとしては、振動子を往復直線運動させる構成のものが多用され、代表的には、鉄心可動型モータ、ボイスコイルモータ、ムービングマグネットモータが挙げられる。そして、基本的な制振原理は、参照点に取付けられた加速度センサにより、当該参照点における自動車のエンジンの作動が原因の発生振動の周波数、位相、振幅を検出して、前記アクチュエータから、自動車の振動の位相が180°異なるように反転させ、しかも自動車の振動の振幅に対応する振幅の制振振動を発生させ、当該制振振動と自動車の発生振動とを相殺させて制振している。
【0004】
例えば、図8に示される例では、車体181における振動発生源であるエンジンEの近傍(加振点)にアクチュエータAが取付けられると共に、運転席の近傍(参照点)に加速度センサS´が取付けられて、当該アクチュエータA及び加速度センサS´は、それぞれ電源線182及び信号線等をまとめたワイヤーハーネス183によってコントローラKに接続されている。このように、参照点(加速度センサS´が取付けられた位置)P1と加振点(アクチュエータAが取付けられた位置)P2とが離れている場合には、アクチュエータAと加速度センサS´とは、それぞれコントローラKに対して異なる部分に配線された個別の電源線182及びワイヤーハーネス183並びに個別のコネクタ(図示せず)によってそれぞれ接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−275822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、車体に対する配置スペース等の観点から、参照点と加振点とを同一又は実質的に同一とみなせる位置に設定したい場合、即ち、アクチュエータと加速度センサとを車体の同一場所に配置したい場合においても、当該アクチュエータ及び加速度センサをコントローラに対してそれぞれ電源線、及びワイヤーハーネス、並びに各コネクタによって個別に接続しようとすると、ハーネス及びコネクタの配置位置が同一又は近接しているため、大きな配置スペースを無駄に取ってしまう。また、設置場所が狭あいな場合において、個別にコネクタ接続を行うと、スペース的な取り合いになって、アクチュエータと加速度センサとをまとめて同一場所に配置できなくなる場合がある。さらに、使用されるコネクタの規格が車種間で必ずしも一律でないことを考えると、種々の車種に適用できる汎用性のある対策を講じておくことも必要である。
【0007】
本発明は、このような課題を有効に解決することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、かかる目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
【0009】
すなわち、本発明のセンサ一体型リニアアクチュエータは、ケース内に、固定子、当該固定子に対して所定方向に移動可能な可動子、及び固定子又は可動子の何れかに設けられて前記可動子を前記所定方向に沿って往復動作させるための磁束を発生させるコイルを備えたリニア駆動型のモータを構成するとともに、前記ケースの一部に制振対象への取付部を設定して、前記可動子の作動反力を制振対象の振動を相殺する加振力として利用するものであって、前記ケーケーススに加速度センサを一体的に取り付けるとともに、一端を前記コイルに接続したモータ用のリード線と、一端を前記加速度センサに接続したセンサ用のリード線と、これらのリード線の他端側を前記ケースの同一箇所から引き出すための集線引出し部とを設け、前記集線引出し部が、リード線をケースの内部から外部に引き出すための複数の通線シール孔を含んで構成されていることを特徴とする。
【0010】
同一箇所とは、一定の範囲(領域)を含み、リード線を一定の箇所から引き出せる状態を意味する。
【0011】
このように構成すると、センサを別体として扱うよりも当該センサの安定設置が可能であり、しかも最適位置に配置することで振動を的確に検知することが可能となる。そして、集線引出し部からリード線を所要方向に引き出すだけでよいのでコネクタを配置するスペースが不必要となるほか、コネクタ同士のスペースの取り合いの問題も生じず、配線処理も一括で行うことができ、制振対象の規格に制約を受けずに種々の制振対象に汎用的に適用することが可能となる。また、前記集線引出し部がリード線をケースの内部から外部に引き出すための複数の通線シール孔を含んで構成されていることで、エンジン等の制振対象に適用した際の塵埃、防水対策に万全を期することができる。
【0012】
リード線の保護を図り引き回しの便を向上させるためには、ケースの一部を切欠状にすることによって、ケースの側壁の内奥に側方に解放される引出し空間を形成し、その引出し空間に臨む壁面に前記集線引出し部を設けていることが望ましい。
【0013】
特に好ましい態様としては、前記引出し空間に臨む立面に集線引出し部を設け、前記引出し空間に臨む水平面にリード線固定部を設けているものが挙げられる。
【0014】
制振対象がエンジン等である場合にリード線を処理し易くするためには、ケースが、前記制振対象への取付部を有する下ケースと、この下ケースに封止状態で取り付けられる上ケースとを具備し、前記加速度センサが前記コイルともどもケース内に配置されて、前記複数の通線シール孔が、前記下ケースの同一個所に設けられていることが好ましい。
【0015】
温度センサの精度を担保するためには、加速度センサが、ケース内空間に臨む下ケースの上面に設けた凹部に埋設固定されている構成や、加速度センサを、固定子と可動子の間に発生する磁束を避けた位置に配置している構成が効果的である。
【0016】
以上のようなセンサ一体型リニアアクチュエータを自動車に適用すべく、ケースを加振対象である自動車の車体に取り付けることによって、自動車制振制御においてアクチュエータと加速度センサとを前記車体の同一又は実質的に同一とみなせる位置に配置するとともに、集線引出し部からモータ用のリード線及びセンサ用のリード線を引き出して、センサ用のリード線を通じて得られる加速度センサの信号に基づきコントローラからモータ用のリード線を通じて所要の給電を行うことにより前記センサ一体型リニアアクチュエータに車体の振動を相殺する制振振動を発生させる自動車制振装置を構成すれば、スペース的な制約の多い車体に対して車種によらず可及的に適切な位置を選択して振動検知と加振とを行い、制振精度を有効に向上させることが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、以上説明した構成であるから、このセンサ一体型リニアアクチュエータを用いれば自ずと加振点と参照点とを常に同一又は実質的に同一とみなせる位置に設定することができ、制振精度を有効に向上させることができるとともに、塵埃対策および防水対策に万全を期しつつ同一箇所からリード線を引き出して自由に引き回せるため配線処理の便とスペースファクタも有効に向上させることが可能となる。さらに、コネクタのように規格によって制約を受けることがないため、種々の制振対象に適用可能となって汎用性も向上したものになる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係るセンサ一体型リニアアクチュエータの正面図。
図2】同底面図。
図3】同側面図。
図4図4図1におけるIV−IV線断面図。
図5図5図4におけるV−V線断面図。
図6】同リニアアクチュエータの底面側斜視図。
図7図1におけるVII−VII線断面図。
図8】自動車制振装置の構成を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0020】
図1は本実施形態に係るセンサ一体型リニアアクチュエータAの正面図、図2は底面図、図3は側面図、図4図1におけるIV−IV線断面図、図5図4におけるV−V線断面図である。図4及び図5は便宜上、部分的にハッチングが施してある。このリニアアクチュエータAは、図8に示したような自動車の車体181に取り付けられて制振用として利用されるもので、ケース1内において内側に固定子2、外側に可動子3を配置したアウター可動型のものであり、かつ、可動子3が固定子2に対して往復上下動を行う、いわゆるリニア駆動型のモータMを構成するものである。そして、図8の構成と異なり加振点P2と参照点P1とを同一又は実質的に同一とみなせる位置に配置すべく、リニアアクチュエータAに加速度センサ7を内有するようにしている。
【0021】
具体的に説明すると、固定子2は、図4等に示すようにシャフト21と、シャフト21に固定された固定子コア22と、固定子コア22に取り付けられたコイルボビン23と、コイルボビン23に巻回されたコイル24と、コイルボビン23の側端部に、S極、N極の向きを内外に互いに異ならせて取り付けられた対をなす永久磁石25a、25bと、シャフト21の上下端近傍に固定され、可動子3を動作可能に支持するための可動支持部たる一対の板ばね26とを主に有している。コイル24が巻かれる向きは固定子コア22の内部においてシャフ21の軸心と直交する方向に正逆交番する磁束Hを発生させる向きであり、モータ用のリード線81を通じて外部から交流電流が給電される。
【0022】
可動子3は、可動子本体31と、当該可動子本体31を上下から挟み込んだ状態で固定する端板32とを主に有したものである。端板32は中央においてシャフト21を挿通させるべくシャフト挿通孔32bが設けられており、可動子本体31の一部(外壁部)は板ばね26をサンドイッチできるスペーサ構造をなしている。
【0023】
ケース1は、シャフト21を固定状態で収容し得る、例えばアルミダイキャストを主体として構成されるもので、下ケース4と、この下ケース4に封止状態で取り付けられる上ケース5とを有している。下ケース4は図2に示すように、矩形状のベース41と、このベース41の2箇所から側方に突出して制振対象物である車体の適宜部位に取り付けられる取付部42と、前記ベース41に設けられてシャフト21を固定するためのシャフト取付孔43とを有しており、上ケース5は図3及び図4等に示すように前記ベース41に対応する頂壁および外壁52を有した有底角形のものである。前記可動子3もこの上ケース5の内面に沿った外形を有する概略直方体状をなしている。下ケース4と上ケース5の間はインロー構造で嵌め合わされて、嵌め合い分にOリング61rが介在されている。シャフト21と下ケース4との嵌合部にもOリング62rが介在されている。
【0024】
かかるリニア駆動型(特にこの実施形態では鉄心可動型)のモータMの基本的な作動原理それ自体は、既にWO2007/129627A1等において既に紹介されているとおりであって詳細は割愛するが、コイル24に交流電流が給電されて固定子コア22に生じる交番磁束Hが永久磁石25a、25bの何れの磁力と強め合い、弱め合うかによって、強め合う方の永久磁石25a(25b)を通過した磁束Hが対向位置にある可動子3の磁極5xとの間に最短の磁路を形成すべく、可動子3は交番磁束Hの向きに応じてシャフト21の軸心方向に推力を得て往復動する。このような交流電流の給電を、制振対象物の振動とは逆位相の加振力となるように行うことによって、制振対応物たる車体の振動を加振力によって相殺することができる。
【0025】
そして本実施形態は、可動子3の発生する加振力(反力)による振動加速度を検出するために、前記ケース1に図5等に示す加速度センサ7を一体的に取り付けるとともに、一端を前記コイル24に接続した図4に示すモータ用のリード線81のほかに、一端を前記加速度センサ7に接続した図5に示すセンサ用のリード線82を設け、これらのリード線81、82の他端側を前記ケース1に設けた図4及び図7等に示す集線引出し部9を介して同一箇所から引き出している。
【0026】
加速度センサ7は、図5に示すようにケース内空間に臨む下ケース4の上面に設けた凹部44に埋設され、エポキシ樹脂等の固定剤7zによって固定されているもので、基板71の表面に特定方向(この実施形態では特にリニア方向)の加速度を検出可能な種々のセンサ素子72が実装され、基板71からリード線82が引き出されている。
【0027】
一方、図2及び図6等に示すように、ケース1の底面41の一部を切欠状にすることによって、図3に示すようにケース1の側壁52の内奥に下方および側方に解放される引出し空間S1を形成するとともに、図4及び図7等に示すようにモータ用のリード線81およびセンサ用のリード線82を一旦下ケース1の所定箇所に集線するための集線空間S2を前記下ケース4の上面に凹設しており、これらの集線空間S2と前記引出し空間S1との間に位置する図4のケース1の立面1aに前記集線引出し部9を配している。
【0028】
集線引出し部9は、図6及び図7等に示すように、シールゴム91を用いた複数の通線シール孔92と、前記シールゴム91を押さえるための押さえ板93とを備えているもので、前記通線シール孔92を通してリード線81、82をケース1の内部から外部に引き出すことを可能にしている。この実施形態でセンサ用のリード線82は、前述した基板71に電源を供給する電源用のリード線82a、82bおよび基板71により検出された加速度に係る信号を外部のコントローラ等に送る信号検出用のリード線82cの計3本であり、モータ用のリード線81は、コイル24に電源を供給する2本のリード線81a、81bからなる。これらのリード線81、82は、引出し空間S2に臨む水平面である図2及び図3に示す下ケース4の底面1bに設けたリード線固定部90において引き出した直後に固定されている。引き出されたリード線81、82は防水コネクタCに引き込まれているが、防水コネクタCは必須のものではない。
【0029】
前述したように、固定子2と可動子3の間において磁束Hが発生する部位は図4における紙面に平行な面であり、加速度センサ7は図5及び図7に示すようにこの磁束Hが発生する面と直交する方向に位置的にずれており、なお且つ、前記磁束Hが形成される部位よりも低い位置にあるため、磁界の影響を受けにくいものである。
【0030】
以上のように本実施形態のセンサ一体型リニアアクチュエータAは、ケース1内に、固定子2、当該固定子2に対して所定方向に移動可能な可動子3、及び固定子2に設けられて前記可動子3を前記所定方向に沿って往復動作させるための磁束Hを発生させるコイル24を備えたリニア駆動型のモータMを構成するとともに、前記ケース1の一部に制振対象である車体への取付部42を設定して、前記可動子3の作動反力を制振対象の振動を相殺する加振力として利用するものである。そして、前記ケース1に加速度センサ7を一体的に取り付けるとともに、一端を前記コイル24に接続したモータ用のリード線81と、一端を前記加速度センサ7に接続したセンサ用のリード線82と、これらのリード線81、82の他端側を前記ケース1の同一箇所から引き出すための集線引出し部9とを設けたものである。
【0031】
このように構成すると、加速度センサ7を別体として扱うよりもリニアアクチュエータAとともに安定的に設置することが可能であり、しかも当該加速度センサ7を加振点であり参照点となる最適位置に配置することで振動を的確に検知することが可能となる。そして、集線引出し部9からリード線81、82を所要方向に引き出すだけでよいのでコネクタを配置するスペースが不必要となるほか、コネクタ同士のスペースの取り合いの問題も生じず、配線処理も一括で行うことができ、制振対象の規格に制約を受けずに種々の制振対象に汎用的に適用することが可能となる。
【0032】
また、ケース1の一部を切欠状にすることによって、ケース1の側壁52の内奥に側方に解放される引出し空間S1を形成し、その引出し空間S1に臨む壁面(立面)1aに前記集線引出し部9を設けていて、集線引出し部9はケース1の側壁52の内奥に入り込んだ位置にあるため、リード線81、82の保護につながり、また引出し空間S1においてリード線81、82の向きを変えるなどの引き回しが必要な場合のもこれを無理なく行うことができる。
【0033】
特に、前記引出し空間S1に臨む立面1aに集線引出し部9を設け、前記引出し空間S1に臨む水平面である底面1bにリード線固定部90を設けているので、立面1aから引き出したリード線81,82を曲げることなくそのまま側方に引き出せばよく、リード線81、82の無理な方向転換が不要となり、また引き出したリード線81、82を直ぐ近くにおいてリード線固定部90で固定するので、リード線81、82がリード線がフリー状態となって引っ張られる不具合等を有効に防止することができる。
【0034】
さらに本実施形態は、ケース1が、前記制振対象である車体への取付部を有する下ケース4と、この下ケース4に封止状態で取り付けられる上ケース5とを具備し、前記加速度センサ7が前記コイル24ともどもケース1内に配置されて、前記集線引出し部9が、前記下ケース4の同一個所に設けられてリード線81、82をケース1の内部から外部に引き出すための複数の通線シール孔92を含んで構成されている。すなわち、リード線81、82を制振対象に近い位置から引き出した方が、短距離でリード線81、82の制振対象への固定や適宜部位への配線処理を行うことができ、リード線81、82のふらつきも防止することができる。また、ケース1に封止構造を採用し、リード線81、82の引き出し部分にも通線シール孔92を採用することによって、エンジン等の制振対象に適用した際の塵埃、防水対策にも万全を期することができる。
【0035】
そして、加速度センサ7が、ケース内空間に臨む下ケース4の上面に設けた凹部44に埋設固定されているので、可動子3との干渉を回避でき、また、制振対象への取付部42に近い位置(すなわちヒートシンクに近い位置、モータMから遠い位置)に加速度センサ7を配置することで、昇温による加速度センサ7の検出精度の低下も有効に防ぐことができる。
【0036】
さらにまた、加速度センサ7を、固定子2と可動子3の間に発生する磁束Hを避けた位置に配置しているので、磁気の影響によって加速度センサの検出精度が低下することを有効に防止することができる。
【0037】
そして、以上のようなセンサ一体型リニアアクチュエータAを図8に示した自動車に適用すべく、ケース1を加振対象である車体181に取り付けることによって、自動車制振制御においてリニアアクチュエータAによる加振点P2と加速度センサ7による参照点P1とを前記車体181の同一又は実質的に同一とみなせる位置に配置するとともに、集線引出し部9からモータ用のリード線81及びセンサ用のリード線82を引き出して、センサ用のリード線82を通じて得られる加速度センサ7の信号に基づきコントローラKからモータ用のリード線81を通じて所要の給電を行うことにより前記センサ一体型リニアアクチュエータAに車体181の振動を相殺する制振振動を発生させる自動車制振装置を構成すれば、スペース的な制約の多い車体181に対して車種によらず可及的に適切な位置を選択して振動検知と加振とを行い、制振精度を有効に向上させることが可能となる。
【0038】
なお、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではない。
【0039】
例えば、本発明の基本的な作用効果を奏する限りにおいては、加速度センサはケースの外側の壁に取り付けたものであってもよい。
【0040】
また、下ケースの下面に集線引出し部を設けてここから引き出したリード線を90°方向転換して側方に引き出す場合にも、上記に準じた作用効果が奏される。
【0041】
さらに、熱の影響や磁束の影響が許容できる範囲であり、可動子の作動とも干渉しなければ、加速度センサを上ケースの側壁の内面や頂壁の内面に取り付けても構わない。
【0042】
その他、本発明をボイスコイルモータやムービングマグネットモータに適用するなど、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0043】
1…ケース
1a…壁面(立面)
1b…水平面(底面)
2…固定子
3…可動子
4…下ケース
5…上ケース
7…加速度センサ
9…集線引出し部
24…コイル
42…取付部
44…凹部
51…側壁
81…モータ用のリード線
82…センサ用のリード線
90…リード線固定部
92…通線シール孔
H…磁束
M…モータ
S1…引出し空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8