(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5664115
(24)【登録日】2014年12月19日
(45)【発行日】2015年2月4日
(54)【発明の名称】自動販売機の外扉ロック装置
(51)【国際特許分類】
G07F 9/10 20060101AFI20150115BHJP
E05B 65/02 20060101ALI20150115BHJP
【FI】
G07F9/10 B
E05B65/02 C
【請求項の数】1
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2010-236390(P2010-236390)
(22)【出願日】2010年10月21日
(65)【公開番号】特開2012-88999(P2012-88999A)
(43)【公開日】2012年5月10日
【審査請求日】2013年9月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100150441
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 洋一
(72)【発明者】
【氏名】葛山 悟
(72)【発明者】
【氏名】臼杵 博昭
(72)【発明者】
【氏名】山崎 剛
(72)【発明者】
【氏名】才木 順
(72)【発明者】
【氏名】中川 大輔
【審査官】
望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−079883(JP,A)
【文献】
特開平04−167092(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07F 9/10
E05B 65/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外扉に対しその吊り元と反対側の扉枠背面に布設して扉開閉用のハンドルに連係させた上下動可能なチャンネル鋼板製のスライダロックと、該スライダロックの後端面に上下方向に分散して開口した複数の係合角穴に対向して本体キャビネットの開口端部に複数のフックプレートを設け、前記スライダロックの係合角穴をフックプレートに引っ掛けて外扉を閉位置に鎖錠するようにした自動販売機の外扉ロック装置において、前記スライダロックの前端縁であって、当該スライダロックの後端面に開口した複数の係合角穴の近傍位置に鉤形の係合爪を突出して形成した上で、該係合爪を、当該係合爪に対応して外扉の扉枠に上下方向に分散して形成したスリット状係合溝に引っ掛けてスライダロックを扉枠に係合保持し、前記係合爪における前記スリット状係合溝との嵌め合い代となる突出し長さは、当該嵌め合い代が上下動するスライダロックの移動ストロークの範囲内においては前記係合爪の係合溝への引っ掛かりが外れないように少なくとも前記移動ストロークよりも長くなるように定めたことを特徴とする自動販売機の外扉ロック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動販売機の本体キャビネット前面に配した外扉の扉ロック装置に関し、詳しくは該扉ロック装置の中核部品をいたずら行為から防護する組立構造に係わる。
【背景技術】
【0002】
周知のように、機内に商品収納ラック,コインメックなどを搭載した自動販売機の本体キャビネットの前面には片開き式の外扉を備えており、該外扉は扉前面に配した錠付きハンドルの操作により扉を閉位置で鎖錠,釈放する扉ロック装置を装備している。
【0003】
また、自動販売機の外扉ロック装置に関しては、バールなどの工具を使って扉を無理やりにこじ開けて庫内の商品収納ラック,コインメックの金庫から商品,金銭を不正に盗み出す手口に対する防犯対策として従来から様々な防盗構造が提案されている。
【0004】
次に、自動販売機に採用されている外扉ロック装置の従来構造,および該外扉ロック装置をいたずら行為から防護する防盗構造を
図4ないし
図8で説明する。まず、
図4において、1は自動販売機の本体キャビネット、2は本体キャビネット1の前面に配した片開き式の外扉、3は販売商品の見本を陳列したディスプレイ室、4は操作パネル、5は商品取出口、6は外扉2の吊り元(ヒンジ)と反対側に設けた扉開閉用のハンドル(シリンダ錠付き)であり、該ハンドル6は
図5に示す構造の扉ロック装置(例えば、特許文献1参照)に連係している。
【0005】
図5において、6aは前記ハンドル6の後端に連結した操作レバー、7は操作レバー6aに連繋して外扉の背面に布設した上下可動なスライダロック、
9はスライダロック7に対向してキャビネット本体1の前端開口部に沿い上,中,下の3箇所に分散して設けた鉤形のフックプレート(掛け金)、10は外扉2の側縁に沿い扉枠2bから背後に張り出して外扉2と本体キャビネット1との間の合せ面を外側から覆うように設けた庇状の防盗板であり、
図6で示すように前記スライダロック7,防盗板10は外扉2の側縁部に沿ってその扉枠に組み付けられる。なお、
図6において、2aは外扉の吊り元側に設けたヒンジ金具、11は外扉のディスプレイ室3に配した商品選択釦、12は外扉2の裏面側に設置したコインメック、12aはその金庫である。
【0006】
次に、前記スライダロック7,防盗板10の組立構造を
図7,
図8で説明する。上下方向に長尺なスライダロック7は断面コ字形のチャンネル鋼板で作られており、その後端面には本体キャビネット1の前端部に設けた前記フックプレート9の先端に形成した切込凹溝と掛け合う係合角穴7a(
図7(a)参照)が上,中,下段の3箇所に分けて開口し、かつ側壁には前記したハンドル6の操作レバー6aの先端に連係する角穴(不図示)が開口している。そして、スライダロック7はその上端部が次記構造の取付金8を介して外扉2の扉枠2bに上下スライド可能に吊り下げ支持されている。
【0007】
すなわち、前記取付金8は、
図7(a),(b)のように断面コ字形の鋼板で、その左右側壁の間にガイドピン8aを掛け渡し、前端面には外扉2に引っ掛ける係合爪8bを切り起こし形成した構造になり、前方からスライダロック7の外側に嵌め合わせ、この位置でスライダロック7の左右側壁面に開口した上下方向の長穴7bに前記ガイドピン8aを通してスライダロック7に連結している。そして、この取付金8は、
図8で示すように外扉2の背面側から扉枠2bに開口した角穴2b−1に前記係合爪8bを引っ掛け、ビス8cにより扉枠2bにねじ止めする。
【0008】
一方、防盗板10は、先記特許文献1に開示されているような異形断面形状になり、その取付基部の端縁に形成した係合フック10aを外扉2の背後側から扉枠2bに開口したスリット状の係合溝2b−2に差し込んで係止し、さらに別な箇所を扉枠2bにねじ止めして固定している。
【0009】
なお、前記扉ロック装置の鎖錠,釈放動作、および防盗板10の防盗機能については、特許文献1にも詳しく述べられており、ここではその説明を省略する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−79883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、昨今では自動販売機に加えるいたずら行為の手口が多様化しており、バール等の工具を使って前記防盗板10を無理やり外扉の側方に変形させた上で、本体キャビネット1と外扉2の合わせ面の隙間から外扉の内側に差し込んだバール等でスライダロック7を変形させ、フックプレート9との係合を強引に外して外扉をこじ開けた状態で機内から商品,金銭を盗み取る手口の盗難事例も報告されている。
【0012】
このようないたずらの手口に対して、従来の扉ロック装置(
図7,
図8参照)では、取付金8の支持ピン8aに上端部を吊り下げ支持した長尺なスライダロック7はその長手方向で外扉2の扉枠2bから浮いており、かつ後端面の上下複数箇所には本体キャビネット側のフックプレート9と係合する角穴7aが開口している。このために、角穴7aの開口部を狙って前記のように本体キャビネット1と外扉2との間の隙間から差し込んだバールの先端をスライダロック7の角穴7aに押し込んで外扉2をこじ開けるように外力を加えると、角穴7aの開口部分(強度の弱点部分)が比較的簡単に捩じれ変形してフックプレート9との係合が外れてしまうことが実機で検証されている。
【0013】
そこで、このようないたずら手口に対して、扉ロック装置を構成する各部品の板厚を厚くして破壊強度を高める、あるいはその周辺に補強部品を追加するなどの様々な対策を検討したが、いずれもその実施には外扉の外郭形状,扉ロック装置に大幅な変更を加える必要があり、さらに製作コストの増加もあって実用化が困難である。
【0014】
本発明は上記の点に鑑みなされたものであり、その目的は在来の外扉,扉ロック装置に大きな変更を加えることなく、扉ロック装置の中核部品に僅かに変更を加えるだけで防盗性の強化が図れるように改良した自動販売機の外扉ロック装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、本発明によれば、外扉に対しその吊り元と反対側の扉枠背面に布設して扉開閉用のハンドルに連係させた上下動可能なチャンネル鋼板製のスライダロックと、該スライダロックの後端面に
上下方向に分散して開口した複数の係合角穴に対向して本体キャビネットの開口端部に
複数のフックプレートを設け、前記スライダロックの係合角穴をフックプレートに引っ掛けて
外扉を閉位置に鎖錠するようにした自動販売機の外扉ロック装置において、
前記スライダロックの前端縁であって、当該スライダロックの後端面に開口した複数の係合角穴の近傍位置に鉤形の係合爪を突出して形成した上で、該係合爪を
、当該係合爪に対応して外扉の扉枠に上下方向に分散して形成したスリット状係合溝に引っ掛けてスライダロックを扉枠に係合保持し、
前記係合爪における前記スリット状係合溝との嵌め合い代となる突出し長さは、当該嵌め合い代が上下動するスライダロックの移動ストロークの範囲内においては前記係合爪の係合溝への引っ掛かりが外れないように少なくとも前記移動ストロークよりも長くなるように定めるように構成するものとする。
【発明の効果】
【0016】
上記構成によれば、外扉の外郭形状,扉ロック装置の基本構造に大幅な変更を加えたり、別な補強部品を追加したりすることなしに、扉ロック装置の中核部品であるスライダロックの長手方向に沿って複数箇所に係合爪を形成し、この係合爪を外扉の扉枠に形成したスリット状の係合溝に引っ掛けてスライダロックを外扉に係合保持させることができる。
【0017】
これにより、バールなどを使って外部からスライダロックに加える破壊行為に対し、スライダロックの破壊強度を高めて自動販売機の防盗性強化を図ることができる。
また、前記の係合爪を本体キャビネットのフックプレートに掛止するスライダロックの角穴近傍に形成することで、破壊強度を効果的に増強できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施例による外扉ロック装置の要部の組立構造を表す図で、外扉の前方側から見た分解斜視図である。
【
図3】
図1におけるスライダロック,およびその取付金の構造図であって、(a)はスライダロック全体の斜視図、(b)は(a)における矢視A部の拡大図である。
【
図5】
図4の矢視X−X断面図として表した扉ロック装置の組立構造図である。
【
図6】
図5に対応する扉ロック装置の扉側装着部品を外扉の背面側から見た分解斜視図である。
【
図7】
図6におけるスライダロックの詳細構造図であって、(a)は上端部の斜外形視図、(b)は(a)の拡大平面図である。
【
図8】外扉の前面側から見たスライダロック,防盗板の取付手順を表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を
図1〜
図3に示す実施例に基づいて説明する。なお、実施例の図中で
図7,
図8に対応する部材には同じ符号を付してその説明は省略する。
図示実施例の扉ロック装置は基本的に先記の従来構造と同様であるが、扉ロック装置の中核部品であるスライダロック7を外扉2に組み付ける組立構造について、以下述べるように改造されている。
【0020】
すなわち、断面コ字形のチャンネル鋼板で作られたスライダロック7には、
図3(a),(b)で示すように、上,中,下段に分けてその後端面に開口した係合角穴7aと略同じ高さ位置に合わせてチャンネル鋼板の前端縁から前方に向けて逆L字状に突き出す鉤形の係合爪
7cが複数箇所に形成されている。一方、前記係合爪
7cに対向して外扉2の扉枠2bには、
図1で示すように防盗板10の
係合フック10aを引っ掛ける係合溝2b−2の内側に並べてスライダロック7の係合爪
7cを差込み係合する縦長なスリット状の係合溝2b−3が形成されている。
【0021】
そして、スライダロック7を外扉2に組み付けるには、
図1のように外扉2の背面側から前記係合爪
7cを扉枠2bに開口したスリット状係合溝2b−3に差し込んで扉枠2bに引っ掛け、この状態でスライダロック7の上端にあらかじめ連結しておいた取付金8を従来の扉ロック装置と同様な手順で係合爪8b,ビス8cを介して扉枠2bの背面に固定する。
図2はこの組み付け状態を表しており、前記係合爪
7cが扉枠2bに形成したスリット状係合溝2b−3から前方に突出して扉枠2bに係合している。
【0022】
なお、前記スライダロック7に形成した係合爪
7cの突出し長さL(
図3(b)参照)と扉枠2bに形成したスリット状係合溝2b−3との間の嵌め合い代については、スライダロック7に扉開閉用ハンドル6の操作レバー6aを連係させた扉ロック装置(
図5参照)の組立状態で、ハンドル6の開閉操作に従動して上下動するスライダロック7の移動ストロークで係合爪
7cが係合溝2b−3から外れないように設定している。また係合爪
7cの根元(首部)はできるだけ幅を広くし、かつそのコーナー部にはR加工を施して爪部の破断強度を高めるようにしている。
【0023】
上記の構成により、外扉2の扉ロック位置で本体キャビネット1のフックプレート9に掛け止めしたスライダロック7は、その上下長手方向に沿って後端面に係合角穴7aが開口した部位(耐変形強度の弱点部分)が係合爪
7cを介して外扉2の扉枠2bに係合保持されている。したがって、先述のように不正いたずら行為で本体キャビネット1と外扉2の合わせ面から差し込んだバールなどの工具を使ってスライダロック7を無理やり変形させてフックプレート9との係合を外そうと試みても、この部分が係合爪
7cを介して扉枠2bに係合保持されているのでスライダロック7を簡単に変形させることができず、これにより高い防盗性を確保できる。
【0024】
なお、図示実施例では、前記係合爪
7cが断面コ字形のスライダロック7に対してその片方の側壁前端縁にのみ形成されているが、係合爪
7c左右両側壁に形成してスライダロック7の耐変形強度を更に高めようにしてもよい。
【符号の説明】
【0025】
1 本体キャビネット
2 外扉
2a 扉のヒンジ金具
2b 扉枠
2b−1 スライダロック取付金具の係合溝
2b−2 防盗板のロック爪の係合溝
2b−3 スライダロックの爪の係合溝
6 外扉の開閉用ハンドル
6a 操作レバー
7 スライダロック
7a 係合角穴
7c 係合爪
8 スライダロックの取付金
9 フックプレート
10 防盗板
10a
係合フック