特許第5664514号(P5664514)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5664514
(24)【登録日】2014年12月19日
(45)【発行日】2015年2月4日
(54)【発明の名称】電槽ケース、単電池及び組電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/02 20060101AFI20150115BHJP
   H01M 2/10 20060101ALI20150115BHJP
【FI】
   H01M2/02 A
   H01M2/10 E
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-213196(P2011-213196)
(22)【出願日】2011年9月28日
(65)【公開番号】特開2013-73843(P2013-73843A)
(43)【公開日】2013年4月22日
【審査請求日】2013年12月5日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成23年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、次世代自動車用高性能蓄電システム技術開発の委託研究、産業技術協力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(72)【発明者】
【氏名】中島 修弘
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 勉
(72)【発明者】
【氏名】稲益 徳雄
【審査官】 竹口 泰裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−151013(JP,A)
【文献】 特開2011−171029(JP,A)
【文献】 特開2009−272234(JP,A)
【文献】 特開2011−113706(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/140584(WO,A1)
【文献】 実開昭55−133572(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/00−2/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電槽ケースであって、前記電槽ケースは幅の狭い一対の短側面と幅の広い一対の長側面とを有する直方体状であり、前記一対の短側面に連結部材を備え、
前記連結部材は、
前記連結部材の幅方向に挿通孔を有する挿通部を有し、
前記挿通部が同一短側面内に対角線上に離間して、前記短側面の上下両端部近傍に配置されることを特徴とする電槽ケース。
【請求項2】
請求項1に記載の電槽ケースと、該電槽ケースに収容された発電要素と、前記電槽ケースの上方に前記発電要素の出力端子とを備えることを特徴とする単電池を幅方向と横方向のいずれか又は双方に複数並置した単電池群と、
前記単電池群を挟持するためのエンドプレートと、
前記挿通孔に挿通されて前記単電池群及び前記エンドプレートを連結する連結ロッドとを含む組電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組電池の製造に適した単電池の電槽ケースに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の角形単電池を連結してモジュール(組電池)とする技術として、一対のエンドプレートで複数の角形単電池を狭持し、締結ロッドで締結した二次電池モジュールが知られている(特許文献1)。
【0003】
この種の二次電池モジュールは通常角形単電池の幅方向、すなわち、長側面同士を対向させて連結するタイプが一般的であるが、中には横方向、すなわち、短側面同士を隣接させて連結したもの(特許文献2)、或いは、幅方向と横方向の両方に連結したもの(特許文献3)なども知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−156392号公報
【特許文献2】特開2000−164186号公報
【特許文献3】特開2007−324004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、幅方向と横方向の両方に連結する場合、従来は幅方向に連結する連結部材と、横方向に連結する連結部材とがそれぞれ必要であった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、連結部材の部品点数を抑えつつ複数の単電池を幅方向と横方向の双方に連結できる新規な電槽ケースを提供することを主たる技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る電槽ケースは、幅の狭い一対の短側面と幅の広い一対の長側面とを有する直方体状であり、前記一対の短側面に連結部材を備え、前記連結部材は、前記連結部材の幅方向に挿通孔を有すると共に前記電槽ケースの略半分の幅を持つ突起部で構成された挿通部を有し、
前記挿通部が同一短側面内に対角線上に離間して、前記短側面の上下両端部近傍に配置されることを特徴とする。なお、「同一短側面内に対角線上に離間して」とは、一つの短側面内の中心線を挟んで対角線上に配置されることを意味する。また、対向短側面側に設けられる2つの挿通部も同様に対角線上に配置される。
挿通部が短側面内の同じ側に配置される場合には、振動又は衝撃等による、電池の上下方向及び幅方向にかかるせん断応力や電池の横方向にかかる引張応力が、電池の短側面の片方側に集中するために、挿通部の剥離が起こりやすくなる。しかし、このように挿通部を同一短側面内に対角線上に配置することにより、上述のせん断応力や引張応力が、電池の短側面全体に分散するために挿通部の剥離が起こりにくくなる。また、組電池を構成した際に、挿通部と隣り合う空間に、連結する電池の(電槽の)挿通部が嵌め込まれる。このため、組電池に掛かる振動や衝撃が特定の挿通部に集中することなく、各挿通部で均一に分散できるようになるため、組電池の耐振動性、耐衝撃性が向上すると共に、各挿通部と電槽ケースの剥離も起こりにくくなる。
【0008】
上記の電槽ケースに発電要素を収容し、電槽ケースの上方に発電要素の出力端子を設けることで単電池を構成することができ、さらに、この単電池を幅方向すなわち電槽ケースの厚み(短側面の幅)方向と及び横方向すなわち電槽ケースの横の長さ(長側面の幅)方向とにそれぞれ複数並置して連結部材に連結ロッドを挿通することで幅方向と横方向の双方に連結し、大規模な組電池を構成することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明を用いて構成した単電池は、特別な連結部材を必要とせず、連結部材の部品点数を抑えつつ幅方向と横方向の双方に連結することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1の実施形態の組電池を構成する単電池の斜視図である。
図2】(a)は図1の側面図である。(b)は、図1の正面図である。
図3】電槽ケース10の短側面Qに連結部材2を取り付ける様子を示す図である。
図4】電池間スペーサーの斜視図である。
図5】単電池に図4の電池間スペーサーを取り付けた様子を示す図である。
図6】組電池ユニット30の組立図である。
図7】押圧スペーサー14を取り付ける様子を示す図である。
図8】第1の実施形態の大規模組電池の斜視図である。
図9】(a)及び(b)は、連結部材の他の形態を示す図である。
図10】連結部材の他の形態を示す図である。
図11】第2の実施形態を示す組電池の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、同一又は同種の機能を発揮する構成部分については同じ符号を用いて説明を省略する場合がある。また、各実施形態はいずれも例示であり、本発明について限定的な解釈を与えるものではない。
【0012】
(第1の実施形態)
図1図2(a)及び図2(b)は、いずれも第1の実施形態の組電池を構成する単電池を示している。図1に示すように、この単電池20は、一対の長側面P及び一対の短側面Qを側面に有する直方体状の角形単電池である。電槽ケース10の内部には図示しない発電要素が収容されている。単電池20の上面には、電極端子3(正極3a、負極3b)が設けられている。
【0013】
電槽ケース10の一対の短側面Qのそれぞれに連結部材2が取り付けられている。連結部材2とは複数の電槽ケース10同士を連結するための部材である。図1に示す連結部材2は、電槽ケース10の短側面Qの一つの対角線上に離間して配置された2つの連結ロッドの挿通部21及び22と、これらを支持する枠状の支持部23とによって、一体構造をなしている。図1に示すように、対向短側面側に設けられる2つの挿通部も同様に対角線上に配置される。挿通部21(22)は、連結ロッドを挿通できる挿通孔24(25)を有する。
【0014】
図2(a)は、図1の単電池の側面図である。図中の一点鎖線Cは、短側面の幅方向の中心線である。挿通部が対角線上に離間するとは、同一短側面内にある2つの挿通部21と22が互いに単電池の幅方向の中心線Cを挟んで対角線上に配置されることを意味する。挿通部21、22の幅は、図2(a)において破線で示す挿通部21aのように狭くても逆に挿通部22bのように広くてもよい。挿通部21、22の幅が単電池の電槽ケースからはみ出した部分は、幅方向に単電池を連結した際に電池間距離を一定幅に保つスペーサーとして機能する。しかし、挿通部の幅が広すぎると組電池の実装密度が低下するため好ましくない。逆に幅が狭すぎると挿通部と電槽ケース外面との接触面積が小さくなり、接着強度が低下するため好ましくない。このような観点から、この図に示すように、一つの挿通部21(22)は、支持部23のほぼ半分の幅(さらに好ましくは、電槽ケース10の幅の半分よりもわずかに広い幅)を持つ突起部で構成され、同一短側面内に対角線上に離間して、短側面Qの上下両端部近傍に配置されることが好ましい。そのため、挿通部21(22)の隣には、左右を逆にして、挿通部21(又は22)とほぼ同形同大の空間Sが設けられる。空間Sは短側面Qが露出しているため、放熱性に優れている。連結部材2は、支持部23の中央に窓枠部26を有しており、短側面の表面が露出しているため、放熱性に優れている。また、単電池20を用いて組電池を構成した際、挿通部21、22の接着強度も高められる。
【0015】
図2(b)は、図1の組電池の正面図である。この図に示すように、支持部23には肉厚部23aや肉薄部23bが設けられていてもよい。この場合、強度を確保できる範囲であれば、肉厚部23aの厚みは挿通部21又は22の横方向の厚みの1/2以下でなければならず、より小さい方が好ましい。肉厚部23aの厚みが挿通部21又は22の横方向の厚みの1/2を越えると、隣り合う肉厚部が邪魔をするために、挿通部がかみ合わなくなり、単電池を横方向にきれいに連結できなくなるためである。さらに、この肉厚部23aに窪み27が設けられていてもよい。窪み27は、組電池化した際に効率のよい放熱手段となるように、電池間スペーサーを設けるためのものである。詳細については後述する。
【0016】
図3は、電槽ケース10の短側面Qに連結部材2を取り付ける様子を示している。電槽ケース10の材質は、例えば、放熱性の良いアルミニウム等の金属や合成樹脂等で構成することができる。連結部材2は、例えば樹脂などの連結ロッドよりも機械的に柔らかい部材で構成してもよい。連結部材2の材料の選択は、放熱性、強度、重量やコスト等の観点から選択することが好ましい。例えば、各短側面間の連結部材2には放熱性を考慮してカーボンファイバー含有樹脂を用い、最外部の連結部材にはカーボンファイバー含有樹脂よりも低コストのガラスファイバー含有樹脂を用いてもよい。連結部材2は、電槽ケース10に接着剤で接着して取り付けてもよく、射出成形によって金属製の電槽ケースと一体化して形成してもよい。
【0017】
電槽ケースがアルミニウム製、連結部材が樹脂製の場合、電着に適した公知の電解質水溶液中で電槽ケースを陽極とし、白金板等を陰極として、陽極と陰極との間に電圧を印加し、電槽ケースの表面に陽極酸化皮膜を形成して接合してもよい。
【0018】
図4は、電池間スペーサーの一例を示す図である。電池間スペーサー18は、単電池を幅方向に連結した際に、長側面同士が直接接触しないように一定距離離間させる。図4に示すように、電池間スペーサー18は、両端部に突起部18aを有し、中間部に一定間隔ごとに一定の幅の凸部18bを有する。突起部18aは連結部材2に設けられた窪み27に嵌合するように直径や長さが調整される。
【0019】
図5は、単電池に図4の電池間スペーサーを取り付けた様子を示す図である。電池間スペーサー18によって隣接する単電池間に空隙Gが形成され、これが通風のための流路となって空冷が促進される。
【0020】
図6は、幅方向に8個並べて連結した組電池をさらに横方向に3列、連結した24連(8×3=24)の組電池ユニット30の組立て途中の様子を表している。先ず、単電池20を幅方向に複数並べ、一方の短側面Qのそれぞれの挿通部21及び22に連結ロッド12を挿通することで、幅方向に連結する。次に、連結される一方の挿通部21(22)の突起部を他方の突起部21(22)に隣接する空間Sに嵌め入れることで、一方の挿通部21(22)の挿通孔24(25)と他方の挿通部21(22)の挿通孔24(25)とを同一軸上に配置する。この状態で連結ロッド12を挿通することで、横方向に連結することができる。最後に幅方向の両側からエンドプレートを介してナット等の締結部材で締めつけることで、組電池が完成する。なお、組立時における連結の順序は問わない。
【0021】
このように、単電池20は、連結部材2を介して幅方向にも横方向にも連結することができ、特に横方向に隣接する際には、連結部材1つ分の厚みで連結されるため、電槽ケース間の距離を短くすることができる。このため、単電池としての使用や、幅方向のみに連結した小規模な組電池はもちろん、幅方向と横方向の双方に組電池化した際には、特に、組電池の実装密度が高められ、機械的にも強固な結合状態を実現できる。
【0022】
図6に示すように、連結部材2を対向させて配置して横方向に連結することにより、連結部材の肉厚部23b同士が対向して接しあい、対向する肉薄部23bによって組電池ユニット30の幅方向に連通する空冷孔Hが形成される。幅方向の両端側に配置される単電池20のうち、端部に配置される4隅の部分には、対向して設置される単電池がなく嵌め合わせられる挿通部も存在しないため、空間Sが形成される。この空間Sには、挿通部21(22)とほぼ同形同大の押圧スペーサーなどを設けることが好ましい。図7は、押圧スペーサー14を取り付ける様子を示している。このように組電池の両側からエンドプレートなどで押圧する際に押圧スペーサー14を設けると、エンドプレートからの押圧力を均一に作用させることができる。これにより、振動や衝撃によるガタツキの発生も未然に抑えられる。なお、押圧スペーサー14に代えて、この4隅の連結部材のみ、挿通部の幅が2倍の連結部材を用いてもよい(これについては第2の実施形態で詳述する)。
【0023】
図8は、図6に示す組電池ユニット30をさらに組み合わせて得られる大規模組電池40の一例を示している。具体的には、組電池ユニット30を幅方向に3つ(単電池20を8×3×3に)組み合わせてなる例を示している。一対の3列用エンドプレート11によって狭持し、連結ロッド12を各連結部材の挿通孔に挿通し、ナット13等で締結することで、単電池が幅方向と横方向の双方に強固に連結される。エンドプレート間の距離が大きい場合、一定の単位で(例えば単電池8個からなる組電池ユニットごとに)インナープレートを挿入してもよい。
【0024】
図8の例では、組電池の上面部に中蓋15を設け、回路基板等を収納可能な空間が上蓋16との間に形成され、エンドプレート11はリブ状に折り曲げ加工された開口部17が設けられている。この開口部17は幅方向に隣接する組電池の連結部材間に形成される空冷孔Hの出入口となる。これらの構成はいずれも強度と放熱性を高めるのに有益である。
【0025】
このように、本実施形態の組電池は、各単電池間にはエンドプレートに設けられた開口部17や電池間スペーサー18により形成された電池間の空隙Gを介して、空冷が可能である。本実施形態の組電池は、露出部が多いため、高い冷却効率を達成している。
【0026】
また、エンドプレート11及び連結ロッド12には、大きな荷重がかかり易く、組電池の総重量も重くなり易い。そのため、必要であれば、より軽量でかつ高強度な材料、例えば、ジュラルミン等の軽量アルミニウム合金を用いてもよい。
【0027】
本実施態様の組電池によると、特別な連結部材を必要とせず、連結部材の部品点数を抑えつつ幅方向と横方向の双方に連結することができる。
【0028】
図9(a)〜図9(b)及び図10は、連結部材の他の形態を示している。これらの図に示す連結部材は、いずれも連結ロッドの挿通部と支持部とで構成される。
【0029】
図9(a)に示す連結部材2Aは、電槽ケースの短側面の一つの対角線上に離間して配置された2つの連結ロッドの挿通部41及び42と、これらを支持する支持部43とで一体構造をなしている。対向短側面側に設けられる2つの挿通部も同様に対角線上に配置される。挿通部41(42)は、連結ロッドを挿通できる挿通孔44(45)を有する。挿通部の幅は、実施形態1において説明したとおり、狭くても広くてもよいが、支持部43のほぼ半分の幅、さらに好ましくは、電槽ケース10の幅の半分よりもわずかに広い幅、を持つ突起部で構成され、同一短側面内に対角線上に離間して、短側面の上下両端部近傍に配置され、挿通部の隣には、左右を逆にして、挿通部とほぼ同形同大の空間Sが設けられていることが好ましい。これらの留意点及び好ましい実施態様については第1の実施形態同様である。
【0030】
支持部43の横方向の厚みは一定であり、挿通部41(42)の横方向の厚みの1/2以下になるように構成される。支持部43の側面に窪み47が設けられていてもよい。窪み47は、組電池化した際に効率のよい放熱手段となるように、電池間スペーサーを設けるためのものである。
【0031】
このような構成によっても、連結ロッドによる結束時の応力を均一分散化することができる。また、肉厚が一定であるため、強度が大きく、かつ連結部材が一体物で構成される。従って、組立ても容易である。
【0032】
図9(b)に示す連結部材2Bは、電槽ケースの短側面の一つの対角線上に離間して配置された2つの連結ロッドの挿通部51及び52と、複数の支持部53a、53b、53cとで、構成されている。対向短側面側に設けられる2つの挿通部も同様に対角線上に配置される。挿通部51(52)は、連結ロッドを挿通できる挿通孔54(55)を有する。挿通部の幅は、図2において説明したとおり、狭くても広くてもよいが、支持部43のほぼ半分の幅(さらに好ましくは、電槽ケース10の幅の半分よりもわずかに広い幅)を持つ突起部で構成され、同一短側面内に対角線上に離間して、短側面の上下両端部近傍に配置され、挿通部の隣には、左右を逆にして、挿通部とほぼ同形同大の空間Sが設けられていることが好ましい。これらの留意点及び好ましい実施態様については上述のとおりである。
【0033】
支持部53は3つの部材からなり、横方向の厚みは一定であり、挿通部51(52)の横方向の厚みの1/2以下になるように構成される。支持部53の側面に窪み57が設けられていてもよい。窪み57は、組電池化した際に効率のよい放熱手段となるように、電池間スペーサーを設けるためのものである。
【0034】
このような構成によっても、連結ロッドによる結束時の応力を均一分散化することができる。また、連結部材が3つの部材で構成されるため、短側面Qの露出部分が大きい。従って、放熱性については他の構成例と比べて最もよい。
【0035】
(第2の実施形態)
図10に示す連結部材2Cは、電槽ケースの短側面の上下両端部に離間して配置された2つの連結ロッドの挿通部61及び62と、これらを支持する枠状の支持部63とで、構成されている。挿通部61は、連結ロッドを挿通できる挿通孔64(65)を有する突起部で構成される。挿通部61及び62は、同一短側面内の両端に離間して、短側面の上下両端部近傍に配置される。挿通部61及び62の幅は、電槽ケースの幅よりもやや広いことが好ましい。電槽ケースからはみ出した部分は幅方向に連結した際に電池間距離を確保するスペーサーとして機能し、幅方向に連結して組電池を構成した際に優れた放熱性能を発揮するためである。挿通部61及び62の幅が広すぎると電池間距離が開きすぎ組電池の実装密度が低下するため好ましくない。短側面の幅よりも狭いと、後述するように4隅に配置した際に他の電池と組み合わなくなるので好ましくない。以上の理由により、挿通部61及び62の幅は、適度な幅が求められる。挿通部61及び62の幅の上限は、電池間スペーサーにより確保される単電池間の空隙Gの幅だけ電槽ケースの幅よりも広い、すなわち、挿入部の両側が単電池の短側面側から見た電槽ケースの端よりそれぞれG/2の長さだけ広くなっている幅である。
【0036】
支持部63は枠状の部材からなる。支持部63の側面に窪み67が設けられていてもよい。窪み67は、組電池化した際に効率のよい放熱手段となるように、電池間スペーサーを設けるためのものである。
【0037】
第1の実施形態に示す連結部材2又はその変形例である連結部材2A又は2Bを用いて組電池化した際に、幅方向の両端側に配置される単電池20のうち、4隅の端部には、空間Sが配置される。第1の実施形態においては、図7を参照して説明したように、空間Sに押圧スペーサー14を設ける実施態様を示したが、これに代えて4隅の連結部材に図10に示す連結部材2Cを用いてもよい。こうすることで結束時の応力の均一分散化を図ることができる。また、連結部材2Cは、組電池の両端部であれば任意の部分又は全部に用いてもよい。
【0038】
図11は、第2の実施形態を示す組電池の正面図である。この図に示すように、組電池60の幅方向の両端の連結部材に図10に示す連結部材2Cを適用し、押圧スペーサー14を設けないこととすることができる。放熱バランスを考慮して両側に位置する連結部材2Cと側面間の連結部材2とを、放熱性の異なる材料で構成してもよい。例えば、両端部の連結部材2Cにガラスファイバー入り樹脂を用いる一方、側面間の連結部材2にカーボンファイバー入り樹脂を適用してもよい。一般に、放熱性は、ガラスファイバーの方がカーボンファイバーよりも放熱性が小さいためである。なお、連結部材2に代えて連結部材2A又は2Bを用いてもよい。
【0039】
すなわち、本実施形態が教示する点は、連結部材の設計において重要な点は、連結部材の形状は、配置や放熱バランスに応じていくつかの選択が可能である点である。4隅を除く中央部においては、挿通部が電槽ケースの短側面の一つの対角線上に離間して配置される点が好ましく、他方、4隅においてはスペーサーを設けることに代えて、予め幅方向に空間Sが存在しない連結部材2Cを配置するように構成すればよい。なお、対向短側面側に設けられる2つの挿通部も同様に対角線上に配置されることが好ましい。
【0040】
以上の各実施形態では、連結部材の挿通孔を真円よりも扁平した略楕円形状にしたり、幅方向に対してテーパー形状に形成したりしてもよい。いずれにせよ、特別な連結部材を必要とせず、連結部材の部品点数を抑えつつ幅方向と横方向の双方に連結することができ、かつ冷却性にも優れた比較的大規模な組電池を実現できる。
【符号の説明】
【0041】
2 連結部材
10 電槽ケース
11 エンドプレート
12 連結ロッド
14 押圧スペーサー
17 開口部
18 電池間スペーサー
20 単電池
23 枠状の支持部
30 組電池ユニット

S 空間
H 空冷孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11