特許第5664532号(P5664532)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ダイフクの特許一覧

<>
  • 特許5664532-洗車機 図000002
  • 特許5664532-洗車機 図000003
  • 特許5664532-洗車機 図000004
  • 特許5664532-洗車機 図000005
  • 特許5664532-洗車機 図000006
  • 特許5664532-洗車機 図000007
  • 特許5664532-洗車機 図000008
  • 特許5664532-洗車機 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5664532
(24)【登録日】2014年12月19日
(45)【発行日】2015年2月4日
(54)【発明の名称】洗車機
(51)【国際特許分類】
   B60S 3/04 20060101AFI20150115BHJP
【FI】
   B60S3/04
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2011-256526(P2011-256526)
(22)【出願日】2011年11月24日
(65)【公開番号】特開2013-107601(P2013-107601A)
(43)【公開日】2013年6月6日
【審査請求日】2013年11月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】特許業務法人 佐野特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100085501
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 静夫
(74)【代理人】
【識別番号】100128842
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 温
(74)【代理人】
【識別番号】100149179
【弁理士】
【氏名又は名称】高野 洋一
(72)【発明者】
【氏名】西濱 淳盛
【審査官】 木原 裕二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−101791(JP,A)
【文献】 特開平04−314658(JP,A)
【文献】 特開2000−119000(JP,A)
【文献】 特開平09−240438(JP,A)
【文献】 特開2003−034492(JP,A)
【文献】 特開平07−228475(JP,A)
【文献】 特開2002−193568(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60S 3/00 − 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被洗浄車両と洗車機本体を前後方向に相対移動させながら洗車を行う洗車機であって、
前記洗車機本体と共に装着され該本体側に位置する待機位置と、被洗浄車両の下部に移動して被洗浄車両の下面を洗浄する洗浄位置と、の間を移動自在とされる下面洗浄装置を備えるとともに、当該下面洗浄装置を移動させる移動手段は、シリンダ部材と、該シリンダ部材の伸縮量よりも大きなストロークで前記下面洗浄装置を変位するためのチェーンとチェーンスプロケットと該チェーンスプロケットからのチェーンの外れを防止するチェーン外れ防止部材と、を備えた倍速移動機構を有し、
前記下面洗浄装置は、前記洗車機本体と共に固定される支持台と、該支持台に支持され上から下に向かうにつれて水平に近づくように湾曲したガイドレールと、該ガイドレールに摺動自在に装着される移動アームと、該移動アームに装着される水噴射ノズルと、を備え、前記シリンダ部材のロッド先端部に複数のチェーンスプロケットを回転自在に支持するスプロケット支持部を設け、該スプロケット支持部に前記チェーン外れ防止部材を配設し、
前記移動アームの上側から下側への移動は、主に1本のチェーンを介して行い、前記移動アームの下側から上側への移動は、主に2本のチェーンを介して行うことを特徴とする洗車機。
【請求項2】
前記移動アームの基端側に第一のチェーン取付部を設け、前記移動アームの先端側に第二のチェーン取付部を設け、前記第一のチェーン取付部に1本の第一チェーンを取り付け、前記第二のチェーン取付部に2本の第二チェーンを取り付けたことを特徴とする請求項に記載の洗車機。
【請求項3】
前記スプロケット支持部に3個のチェーンスプロケットを回転自在に配設し、真ん中のチェーンスプロケットに前記第一チェーンを巻回し、左右両側のチェーンスプロケットに前記第二チェーンを巻回したことを特徴とする請求項に記載の洗車機。
【請求項4】
前記ガイドレールは円弧状に湾曲し所定間隔離間して並設される左右一対の2本のガイドパイプから成り、前記移動アームは前記2本のガイドパイプをその前後方向の離れた二か所の上下で挟み込む左右一対のガイドローラにより摺動自在に支持され、前記2本のガイドパイプの中間に前記水噴射ノズルに接続される配水管を挿通し前記シリンダ部材を配設し、2本のチェーンから成る前記第二チェーンは、前記水噴射ノズルを挟む両側に配設され、1本の前記第一チェーンは前記シリンダ部材の軸線と平行に配設されたことを特徴とする請求項に記載の洗車機。
【請求項5】
前記外れ防止部材は、チェーンスプロケットに噛み込んだチェーンの外側に近接して装着されるネジ頭から成ることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の洗車機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗車に使用される洗車機に関し、特に、被洗浄車両の下面を洗浄する下面洗浄装置を有する洗車機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、洗車に使用される洗車機としては、給油所などに設置されて、被洗浄車両と洗車機本体を前後方向に相対移動させながら、被洗浄車両に貯液タンクに貯留された液剤や洗浄水を噴射して、また、ブラッシングして洗車を行う構成とされる門型洗車機が知られている。
【0003】
従来の門型洗車機の洗浄工程においては、先ず、洗浄水を用いて汚れを落とし、次いでシャンプーなどの液剤を用いて洗浄し、さらに洗浄水を用いて水洗いする。この洗浄工程の後で、各送風ノズルから送風して乾燥する乾燥工程が行われる。また、必要に応じてワックスや撥水コートなどの液剤塗布工程を適宜組み合わせて洗車を行う。このように、洗車の際に用いる液剤としては、各種のシャンプーやワックスやコート類が用いられており、それぞれ専用の貯液タンクに貯留され、タンク内に挿入されたチューブを介して、洗車工程の処理に応じて噴射され消費される。また、複数の洗車モードから所望のモードを選択し、使用する液剤の種類を選択して所定の洗車モードに設定する操作パネルやリモートパネルを備えている。操作パネルは洗車機本体に配設しているが、リモートパネルは洗車機本体から離れた位置に設置して、このリモートパネルと操作パネルとを電気的に接続して、リモートパネルに設定された洗車モードにより、洗車機を駆動可能にしている。
【0004】
上記の門型洗車機を用いて被洗浄車両の表面を洗車することはできるが、下面は洗車できないので、この門型洗車機に下面洗浄装置を併設した洗車機が提案されている。例えば、被洗浄車両の下面を洗浄するための放水ノズルを備える水噴射ベッドを被洗浄車両の下部に出し入れ可能とした洗車機の下面洗浄装置が既に提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−101791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された下面洗浄装置は、エアシリンダを伸縮させ、この伸縮をプーリに巻回したワイヤを用いて伝達して、水噴射ベッドをその2倍のストロークで出し入れしている。また、ピストンロッド先端部に装着するプーリ支軸に前後各2個のプーリを取り付け、それぞれにワイヤを巻回している。そのために、ピストンロッド先端部に計4個のプーリを装着しており、水噴射ベッドを備えた走行アームの先端側と根元側にそれぞれ左右一対のプーリを取り付けて、それぞれ2本のワイヤを巻回して走行アームを出し入れ操作していることになる。
【0007】
また、エアシリンダの伸縮をワイヤを介して走行アームに伝達して2倍のストロークで出し入れしているので、所定のワイヤ強度を得るために、一般的には所定径のスチールワイヤが用いられる。このようなスチールワイヤを巻回している溝プーリ(シーブ)は、繰り返し曲げを受けるワイヤ寿命の観点から、その径は大きい方が好ましいので、特許文献1に記載された下面洗浄装置に用いるシーブ径は必然的に大きくなってしまう。すなわち、コンパクトな構成にできないという問題を有する。
【0008】
また、特許文献1に記載された下面洗浄装置のように、水噴射ベッドを円弧状に湾曲したガイドレールに沿って円弧状に摺動移動させる場合には、直線的なシリンダ部材の変位を曲線移動に変位する際にワイヤに弛みが生じて、ワイヤ挿通用の溝プーリであるシーブからワイヤが外れる虞が生じて問題となる。
【0009】
そのために、よりコンパクト化が可能で、ワイヤ外れも生じずに安全で確実に出し入れ可能な構成とされる下面洗浄装置を実現することが望まれる。
【0010】
本発明は、上記問題点に鑑み、被洗浄車両の下面を洗浄する下面洗浄装置を有する洗車機において、よりコンパクト化が可能で確実に出し入れ可能な下面洗浄装置を備えた洗車機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために本発明は、被洗浄車両と洗車機本体を前後方向に相対移動させながら洗車を行う洗車機であって、前記洗車機本体と共に装着され該本体側に位置する待機位置と、被洗浄車両の下部に移動して被洗浄車両の下面を洗浄する洗浄位置と、の間を移動自在とされる下面洗浄装置を備えるとともに、当該下面洗浄装置を移動させる移動手段は、シリンダ部材と、該シリンダ部材のロッド伸縮量よりも大きなストロークで前記下面洗浄装置を変位するためのチェーンとチェーンスプロケットと該チェーンスプロケットからのチェーンの外れを防止するチェーン外れ防止部材と、を備えた倍速移動機構を有することを特徴としている。
【0012】
この構成によると、チェーンを介してシリンダ部材の伸縮を下面洗浄装置に伝達するので、機械的強度が大きい駆動機構を実現できる。また、チェーン外れ防止部材を備えているので比較的径の小さいチェーンスプロケットを用いた倍速移動機構であっても、チェーンが外れずに確実に移動させることができる。すなわち、よりコンパクト化が可能で確実に出し入れ可能な下面洗浄装置を備えた洗車機を得ることができる。
【0013】
また本発明は上記構成の洗車機において、前記下面洗浄装置は、前記洗車機本体と共に固定される支持台と、該支持台に支持され上から下に向かうにつれて水平に近づくように湾曲したガイドレールと、該ガイドレールに摺動自在に装着される移動アームと、該移動アームに装着される水噴射ノズルと、を備え、前記シリンダ部材のロッド先端部に複数のチェーンスプロケットを回転自在に支持するスプロケット支持部を設け、該スプロケット支持部に前記チェーン外れ防止部材を配設したことを特徴としている。この構成によると、シリンダ部材のロッド先端部にチェーンスプロケットを装着しているので、移動アームにその一端側を取付け他端側をガイドレール側に取付けたチェーンをこのチェーンスプロケットに巻回させてシリンダロッドを伸縮させることで、移動アームをシリンダ部材のロッド伸縮量の2倍のストロークで変位させることができる。また、このスプロケット支持部にチェーン外れ防止部材を配設したので、チェーン巻回部におけるチェーンの外れを確実に防止して安全に移動させることができる。
【0014】
また本発明は上記構成の洗車機において、前記移動アームの基端側に第一のチェーン取付部を設け、前記移動アームの先端側に第二のチェーン取付部を設け、前記第一のチェーン取付部に1本の第一チェーンを取り付け、前記第二のチェーン取付部に2本の第二チェーンを取り付け、前記移動アームの上側から下側への移動は、主に1本のチェーンを介して行い、前記移動アームの下側から上側への移動は、主に2本のチェーンを介して行うことを特徴としている。この構成によると、移動アームを上向きに引き上げる操作は主に2本のチェーンを介して行うので、機械的強度が安定する。また、移動アームを引き下げる際には、その自重を利用することも可能であるので、主に1本のチェーンを介して駆動可能である。すなわち、可能な限りチェーンの本数を削減することでコンパクトな駆動機構を実現できる。
【0015】
また本発明は上記構成の洗車機において、前記スプロケット支持部に3個のチェーンスプロケットを回転自在に配設し、真ん中のチェーンスプロケットに前記第一チェーンを巻回し、左右両側のチェーンスプロケットに前記第二チェーンを巻回したことを特徴としている。この構成によると、移動アームを引き下げる際に用いる1本のチェーンを真ん中にしてその両側に移動アームを上向きに引き上げる際に用いる2本のチェーンを配設する構成となるので、3本のチェーンを用いて倍速移動機構を構成したときに、バランスのよい駆動機構を構築することができる。
【0016】
また本発明は上記構成の洗車機において、前記ガイドレールは円弧状に湾曲し所定間隔離間して並設される左右一対の2本のガイドパイプから成り、前記移動アームは前記2本のガイドパイプをその前後方向の離れた二か所の上下で挟み込む左右一対のガイドローラにより摺動自在に支持され、前記2本のガイドパイプの中間に前記水噴射ノズルに接続される配水管を挿通し前記シリンダ部材を配設し、2本のチェーンから成る前記第二チェーンは、前記水噴射ノズルを挟む両側に配設され、1本の前記第一チェーンは前記シリンダ部材の軸線と平行に配設されたことを特徴としている。この構成によると、左右一対の湾曲したガイドパイプから成るガイドレールに沿って移動アームをスムーズに摺動移動させることができる。
【0017】
また本発明は上記構成の洗車機において、前記外れ防止部材は、チェーンスプロケットに噛み込んだチェーンの外側に近接して装着されるネジ頭から成ることを特徴としている。この構成によると、チェーンスプロケットにチェーンを巻回した後で、スプロケット支持部にネジを装着するだけで、チェーンの外れ防止部材を容易に形成することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、シリンダ部材を伸縮しチェーンを介して移動アームを出し入れ移動するので、機械的強度が大きい駆動機構を実現できる。また、チェーン外れ防止部材を備えているので比較的径の小さいチェーンスプロケットを用いた倍速移動機構であっても、チェーンが外れずに確実に移動させることができる。そのために、よりコンパクト化が可能で確実に出し入れ可能な下面洗浄装置を備えた洗車機を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】洗車機の全体構成を示す概略側面図である。
図2】本発明に係る下面洗浄装置を備えた洗車機の全体構成を示す概略正面図である。
図3】下面洗浄装置の作動状態を示す概略斜視図である。
図4】下面洗浄装置の要部構成を示す概略側面図である。
図5】シリンダロッド先端に設けるスプロケット支持部の一例を示す概略平面図である。
図6】下面洗浄装置の作動状態を示す概略側面図であって、(a)は下から上に引き上げる動作を示し、(b)は上から下に引き下げる動作を示す。
図7】スプロケット支持部におけるチェーンの弛みを説明する概略側面図である。
図8】ガイドレールとローラーガイドとの係合状態を示す断面図であって、(a)は図4のAA矢視図に相当する移動アームに設けるローラーガイドを示し、(b)は図4のAB矢視図に相当するスプロケット支持部に設けるローラーガイドを示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明の実施形態を図面を参照して説明する。図1図2は一実施形態の洗車機WAを示す側面図、概略正面図である。洗車機WAは左右の対向する2つのスタンド部90の上端を連結する天井部91を有して門型に形成される洗車機本体(本体部)1を備える。洗車機本体1の進入経路上にはリモートパネル7Aが配される。被洗浄車両CAはリモートパネル7Aの面前で停車し、リモートパネル7Aの操作によって洗車の受け付け等を行う。
【0021】
洗車機本体1の底面には地面に設けられた左右一対のレール2上に配される車輪3が設けられる。これにより、洗車機本体1はレール2上を走行して被洗浄車両CAに対して前後に相対移動するように立設される。
【0022】
洗車機本体1には被洗浄車両CAをブラッシングする複数の回転するブラシを設けている。ブラシはトップブラシ4、サイドブラシ5及びロッカーブラシ6から成っている。トップブラシ4は被洗浄車両CAの上面を洗浄し、布(織布、編布、不織布等)や樹脂繊維から成るブラシ毛を放射状に固着して形成される。
【0023】
サイドブラシ5は左右一対設けられ、被洗浄車両CAの両側面と前後面に摺動して被洗浄車両CAを洗浄する。ロッカーブラシ6は左右一対設けられ、被洗浄車両CAのタイヤを含む側面下部を洗浄する。サイドブラシ5及びロッカーブラシ6もトップブラシ4と同様の回転軸及びブラシ毛を有している。
【0024】
洗車機本体1の一方の側方には洗剤やワックス等の各種液剤を貯液する複数の貯液タンク(不図示)を収納するタンク収納部50が配される。タンク収納部50の上方には市水及び各貯液タンクからの液剤を電磁弁等を介して分配する分配配管部51が設けられる。分配配管部51には第1、第2浄水ノズル11、13、第1、第2洗剤ノズル12、15、撥水コートノズル14、ワックスノズル16が導出される。洗車機本体1の後方には洗浄液や高圧空気を供給する供給部(不図示)が設けられ、分配配管部51に接続される。洗浄液は市水だけでなく、洗剤やワックス等の各種液剤と混合されてもよい。
【0025】
第1、第2浄水ノズル11、13は洗車機本体1の手前側及び奥側にそれぞれ配され、被洗浄車両CAに対して市水を噴射する。第1、第2洗剤ノズル12、15は洗車機本体1の手前側及び奥側にそれぞれ配され、被洗浄車両CAに対して洗剤を噴射する。撥水コートノズル14は洗車機本体1の奥側に配され、被洗浄車両CAに対して撥水コート剤を噴射する。ワックスノズル16は洗車機本体1の奥側に配され、被洗浄車両CAに対してワックスを噴射する。
【0026】
また、洗車機本体1には被洗浄車両CAを乾燥させるトップ送風ノズル21とサイド送風ノズル22とを設けている。洗車機本体1の中央上部にはトップ送風ノズル21が設けられ、両側方にはサイド送風ノズル22が設けられる。トップ送風ノズル21及びサイド送風ノズル22はブロワ20からの送風を被洗浄車両CAに対して吹き付けて乾燥させる。
【0027】
洗車機本体1の前面上部には車両センサ8が設けられている。車両センサ8は光電センサや超音波センサ等から成り、洗車機本体1に進入する被洗浄車両CAの外面形状を検知する。
【0028】
洗車機本体1の一方の側方の前面には操作パネル7が配される。操作パネル7はリモートパネル7Aと同様の操作ボタンを備え、被洗浄車両CAから降車したユーザ等の操作により洗車の受け付けや洗車条件の設定を行う。
【0029】
洗車条件の設定としてはシャンプー、ワックス掛け、撥水コート等を水洗いに追加するボタンが操作パネル7及びリモートパネル7Aに設けられる。また、高級なシャンプー、高級なワックス(例えば、艶出しコーティング)、高級な撥水コート、特殊なコート等を行うボタンも設けられている。さらに、フロントガード有り、フェンダーポール有り、ドアミラー有り、リヤワイパー有り、該当装備品無し等の装備品設定ボタンが設けられている。
【0030】
本実施形態の洗車機WAは、洗車機本体1と被洗浄車両CAとを前後方向に相対移動させながら、被洗浄車両の洗車を行う洗車機であって、先に説明した第1、第2浄水ノズル11、13、第1、第2洗剤ノズル12、15、撥水コートノズル14、ワックスノズル16に加えて、被洗浄車両CAの下面を洗浄する下面洗浄装置SWを設けた構成とされている。
【0031】
下面洗浄装置SWは、被洗浄車両CAの左右の下面を同時に洗浄するために、門型の洗車機本体1の左右にそれぞれ下面洗浄装置SWa、SWbを設置しており、それぞれ、洗車機本体1と共に装着され該本体側に位置する待機位置と、被洗浄車両CAの下部に移動して被洗浄車両CAの下面を洗浄する洗浄位置との間を移動自在とされる。
【0032】
また、後述するように、下面洗浄装置SWを移動する移動手段は、シリンダ部材と、シリンダ部材のロッド伸縮量よりも大きな(略2倍の)ストロークで下面洗浄装置SW(が備える洗浄手段)を変位するためのチェーンとチェーンスプロケットと該チェーンスプロケットからのチェーンの外れを防止するチェーン外れ防止部材と、を備えた倍速移動機構を有する。
【0033】
下面洗浄装置SWは、洗車機本体1と被洗浄車両CAとが所定の洗車位置に停止した後、被洗浄車両CAの下側に潜り込んで下面を洗浄する装置であるので、本実施形態に係る下面洗浄装置SWは、下向きに湾曲したガイドレールに沿って移動する移動アームを備えている。また、この移動アームに水噴射ノズルを設けた構成としている。
【0034】
すなわち、図3に示すように、洗車機本体1と共に固定される支持台33と、該支持台33に支持され上から下に向かうにつれて水平に近づくように湾曲したガイドレール31と、該ガイドレール31に摺動自在に装着される移動アーム32と、該移動アーム32に装着される水噴射ノズルN1、N2と、を備える。
【0035】
ガイドレール31は円弧状に湾曲し所定間隔離間して並設される左右一対の2本のガイドパイプ31a、31bから成り、移動アーム32は、この2本のガイドパイプをその前後方向の離れた二か所の上下で挟み込む左右一対のガイドローラG1、G2(図4参照)を備えた断面コの字状に折り曲げ構成された板金から成る。
【0036】
また、2本のガイドパイプ31a、31bは連結具34を介して一体に構成され、この2本のガイドパイプ31a、31bの中間部に配水管35が配設され水噴射ノズルN1、N2に接続されている。また、この2本のガイドパイプ31a、31bの中間部にシリンダ部材40(図4参照)を配設している。シリンダ部材40は、例えば、エアシリンダである。また、油圧シリンダなどの他種のシリンダ装置を用いることもできる。
【0037】
支持台33は、ガイドレール31と移動アーム32とを一体的に所定角度範囲回転自在に軸支するものであって、例えば、洗車機本体1から延設されるアーム部材に固定されている。また、正面を向いた正規の位置に位置固定するバネ部材(不図示)を介装しており、移動アーム32がタイヤなどに当接すると一旦首振り状態となるが、その後、首振り状態から正規位置に自動的に復帰するようにしている。
【0038】
また、図4に示すように、ガイドレール31から延設するブラケットに設ける支持部41にシリンダ部材40を一点支持式に配設する。このシリンダ部材40は、2本のガイドパイプ31a、31bの中間部に相当する位置に設けられ、このシリンダ部材40のロッド先端部に複数のチェーンスプロケットを回転自在に支持するスプロケット支持部43を設け、該スプロケット支持部43にチェーン外れ防止部材を配設している。
【0039】
また、ガイドローラG1とガイドローラG2が、ガイドレール31の基端側の前後方向に離れた上下にそれぞれ装着されている。すなわち、ガイドローラG1、G2は、左右一対の2本のガイドパイプ31a、31bをその前後方向の離れた二か所の上下で挟み込むように設けられている。
【0040】
次に、ロッド先端部に設けるスプロケット支持部43について図5を用いて説明する。例えば、スプロケット支持部43は複数のチェーンスプロケットを一体に回転自在に支持する部材であって、図5に示すように、シリンダ部材40のロッド42の先端に装着されるU字状の両側板を有するスプロケット支持部43を用いる。このスプロケット支持部43の装着方法は特には限定されないが、例えば、雌ねじ部を設けてロッド42の先端部にネジ込んでナット45により固定する方法を採用する。
【0041】
スプロケット支持部43は、U字状の両側板を貫通する支持軸44を有し、この支持軸44に第一チェーンスプロケットCS1、第二チェーンスプロケットCS2a、CS2bの3個のチェーンスプロケットがブッシュなどの回転支持具を介装して回転自在に装着されている。また、それぞれのスプロケット間(回転支持具間)にズレ止め用のカラーを装着している。さらに、それぞれのチェーンスプロケットに巻回されたチェーンの外れを防止するためのチェーン外れ防止部材STa、STb、STc、をそれぞれ備えている。
【0042】
チェーン外れ防止部材STa、STb、STcは、チェーンスプロケットに噛み込んだチェーンの外側に近接して装着されるネジ頭を利用して形成できる。この構成であれば、チェーンスプロケットにチェーンを巻回した後で、スプロケット支持部43にネジを装着するだけで、チェーンの外れ防止部材を容易に形成することができる。
【0043】
支持軸44の両端には、ローラーガイドG3(G3a、G3b)が装着されており、ロッド42が伸縮する際に、スプロケット支持部43が前述したガイドレール31に沿って移動するように構成されている。すなわち、シリンダ部材40は、その一端が支持部41にて支持され、その他端はローラーガイドG3(G3a、G3b)が湾曲しているガイドレール31に係合してその姿勢が制御される。
【0044】
上記したように、シリンダ部材40のロッド先端部にチェーンスプロケットCS1、CS2a、CS2bを装着しているので、移動アーム32にその一端側を取付け他端側をガイドレール32側に取付けたチェーンをこのチェーンスプロケットCS1、CS2(CS2a、CS2b)に巻回させてシリンダ部材40を伸縮させることで、移動アーム32をシリンダ部材40のロッド伸縮量よりも大きな(略2倍の)ストロークで変位する倍速移動機構を構成することができる。
【0045】
また、直線的に移動するシリンダ部材40のロッド42の先端が湾曲しているガイドレール31に沿って曲線的に移動しても、このロッド先端部に装着するスプロケット支持部43にチェーン外れ防止部材を配設したので、チェーン巻回部におけるチェーンの外れを確実に防止して安全にチェーン駆動させることができる。
【0046】
例えば、図6(a)に示すように、チェーンスプロケットCS1に巻回する第一のチェーンCH1は、その一端をガイドレール31側に設ける固定側取付部A1に締結し、その他端を移動アーム32の基端側に設ける移動側取付部B1に締結する。すなわち、この移動側取付部B1は第一のチェーン取付部である。
【0047】
また、図6(b)に示すように、チェーンスプロケットCS2(CS2a、CS2b)にそれぞれ巻回する2本の第二のチェーンCH2は、それぞれ、その一端をガイドレール31の先端側に設ける固定側取付部A2に締結し、その他端を移動アーム32の先端側に設ける移動側取付部B2に締結する。すなわち、この移動側取付部B2は第二のチェーン取付部である。
【0048】
上記したように、ガイドレール31は円弧状に湾曲し所定間隔離間して並設される左右一対の2本のガイドパイプ31a、31bから成り、移動アーム32は2本のガイドパイプをその前後方向の離れた二か所の上下で挟み込む左右一対のガイドローラG1、G2により摺動自在に支持され、2本のガイドパイプの中間に水噴射ノズルに接続される配水管35を挿通しシリンダ部材40を配設し、2本のチェーンから成る第二チェーンCH2は水噴射ノズルを挟む両側に配設され、1本の第一チェーンCH1はシリンダ部材の軸線と平行に配設されている。この構成であれば、左右一対の湾曲したガイドパイプ31a、31bから成るガイドレール31に沿って移動アーム32をスムーズに摺動移動させることができる。
【0049】
2本の第二のチェーンCH2は、2本のガイドパイプ31a、31bの中間に配設される配水管35を挟む両側に配設されているので、固定側取付部A2および移動側取付部B2も、それぞれ所定間隔離間して左右一対設けられている。
【0050】
すなわち、本実施形態の下面洗浄装置SWは、移動アーム32の基端側に第一のチェーン取付部(移動側取付部B1)を設け、移動アーム32の先端側に第二のチェーン取付部(移動側取付部B2)を設け、第一のチェーン取付部に1本の第一チェーンCH1を取り付け、第二のチェーン取付部に2本の第二チェーンCH2を取り付け、移動アーム32の上側から下側への移動は、主に1本のチェーンを介して行い、移動アーム32の下側から上側への移動は、主に2本のチェーンを介して行う構成としている。
【0051】
上記した構成であれば、移動アーム32を上向きに引き上げる操作は主に2本のチェーンを介して行うので、機械的強度が安定する。また、移動アーム32を引き下げる際には、その自重を利用することも可能であるので、主に1本のチェーンを介して駆動可能である。すなわち、可能な限りチェーンの本数を削減することでコンパクトな駆動機構を実現できる。
【0052】
シリンダ部材40を伸縮してロッド42の先端部に固定したスプロケット支持部43を長さL1移動すると、チェーンスプロケットの両側のチェーンがそれぞれ長さL1移動して、その結果2倍の長さ2L1、移動アーム32が移動する。すなわち、ロッド42を長さL1伸ばすと、移動アーム32が長さ2L1送り出され、ロッド42を長さL1縮ませると、移動アーム32が長さ2L1引き戻される。
【0053】
シリンダ部材40のロッド42は直線的に移動し、移動アーム32は曲線的に移動するので、チェーン長さやワイヤ長さが変化して、一部に弛みが生じる。例えば、図7に示すように、ロッド42の先端部に設ける支持軸44に複数のチェーンスプロケットCS(CS1、CS2)を取り付けて、上下の異なる方向に複数のチェーンを巻回すると、下側の第二チェーンCH2が張った状態のときに上側の第一チェーンCH1に弛みが生じる。
【0054】
そのために、従来のようにスチールワイヤをシーブに巻回した構成の駆動機構では、ワイヤがシーブから外れてしまい問題となる。本実施形態では前述した通り、チェーンとチェーンスプロケットとを用いると共に、チェーンがチェーンスプロケットから外れないように規制するチェーン外れ防止部材を設けた構成の倍速移動機構としたので、チェーンの一部に弛みが生じても、チェーンがチェーンスプロケットから外れない。従って、安全で確実に出し入れ可能な構成とされる下面洗浄装置SWを実現することができる。
【0055】
次に、湾曲したガイドレール31に沿って移動アーム32およびスプロケット支持部43を摺動移動させる構成について図8(a)(b)を用いてさらに説明する。図8(a)には、図4のAA矢視図に相当する、移動アームに設けるローラーガイドとガイドレール31を構成する2本のガイドパイプ31a、31bとの係合状態を示し、図8(b)には、図4のAB矢視図に相当する、スプロケット支持部43に設けるローラーガイドとガイドパイプ31a、31bとの係合状態を示す。
【0056】
図8(a)に示すように、移動アーム32に、それぞれ左右一対のローラーガイドG1、G2を設け、このローラーガイドG1、G2によりガイドパイプ31a、31bを挟持する構成としている。このローラーガイドG1、G2は、その配設位置が前後に離れており、離間した二か所で挟み込む。すなわち、湾曲したガイドパイプ31a、31bの離間した二か所の上下をガイドすることで、移動アーム32がガイドレール31から離れるのを抑制して、移動アーム32の上方向への移動と下方向への移動を共にスムーズに行うことが可能になる。
【0057】
また、図8(b)に示すように、スプロケット支持部43の支持軸44に装着したローラーガイドG3は、ガイドパイプ31a、31bの下側に当接しながらスプロケット支持部43の摺動移動を補助している。これは、上側にある移動アーム32とチェーンを介して接続されているために、この上側にローラーガイドを設ける必要はないからである。
【0058】
図中に示す35は配水管であり、ガイドパイプ31a、31b間の移動アーム32の中央部分に配設されており、移動アーム32の所定部位に設けられた水噴射ノズルに接続されている。
【0059】
2本のガイドパイプ31a、31bの中間に挿通している配水管35は、移動アーム32の変位に追随して変位可能なように予め弛ませている。あるいは、予め、変位可能なように湾曲して配設している。また、ケーブルベア(登録商標)方式に湾曲自在に変位するように配設されていてもよく、その構造は特には限定されない。洗浄水は、外部に設けるタンクから配管を介して供給され、所定のタイミングで移動アーム32を被洗浄車両の下部に送り込んで洗浄水を噴射して被洗浄車両CAの下面を洗車する。
【0060】
洗車工程の開始は、洗車を望むユーザが所定の洗車モードをリモートパネル7Aに設定し、被洗浄車両CAをレール2、2間の所定の洗車位置に停車した後、開始される。まず、被洗浄車両CAが所定の洗車位置に到達したことが検知されると、待機位置にある洗車機本体1が被洗浄車両CAの方に前進移動して所定の洗車工程を実行する。もしくは、洗車を望むユーザが被洗浄車両CAをレール2、2間の所定の洗車位置に停車した後、所定の洗車モードを洗車機本体に設置された操作パネル7に設定し、洗車工程を開始させる構成としてもよい。
【0061】
洗車機本体1は、例えば被洗浄車両CAの先端部位置と後端部位置を検知するセンサを備えて、車両長さや車体形状を認識する。また、タイヤを検出するセンサを有しており、このタイヤがない被洗浄車両CAの下部領域に下面洗浄装置SWの移動アーム32を送り出して被洗浄車両CAの下面を洗浄する。
【0062】
そのために、車体の下面の洗浄を希望するユーザは、リモートパネル7Aや操作パネル7を介して下面洗浄コースを選択する。すると、被洗浄車両CAの先端部位置と後端部位置との間のタイヤのない領域に移動アーム32を送り出して被洗浄車両CAの下面を洗浄する。
【0063】
以上、説明したように、本実施形態に係る洗車機WAは、被洗浄車両の下面を洗浄する下面洗浄装置を有する洗車機において、チェーンを介してシリンダ部材の伸縮を下面洗浄装置に伝達するので、機械的強度が大きい駆動機構を実現できる。また、チェーン外れ防止部材を備えているので比較的径の小さいチェーンスプロケットを用いても、チェーンが外れずに確実に移動させることができる。すなわち、よりコンパクト化が可能で確実に出し入れ可能な下面洗浄装置を備えた洗車機を得ることができる
【0064】
また、移動アームの上側から下側への移動は、主に1本のチェーン(第一チェーン)を介して行い、移動アームの下側から上側への移動は、主に2本のチェーン(第二チェーン)を介して行うので、移動アームを上向きに引き上げる操作における機械的強度が安定する。また、移動アームを引き下げる際には、その自重を利用することも可能であるので、主に1本のチェーンを介して駆動可能であって、可能な限りチェーンの本数を削減することでコンパクトな駆動機構を実現できる。
【0065】
また、スプロケット支持部に設ける3個のチェーンスプロケットの真ん中のスプロケットに第一チェーンを巻回し、左右両側のチェーンスプロケットに前記第二チェーンを巻回しているので、移動アームを引き下げる際に用いる1本の第一チェーンを真ん中にしてその両側に移動アームを上向きに引き上げる際に用いる2本の第二チェーンを配設する構成となるので、3本のチェーンを用いて倍速移動機構を構成したときに、バランスのよい駆動機構を構築することができる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
そのために、本発明に係る洗車機は、下面洗浄装置を用いて被洗浄車両の下部を洗浄することが求められる、あるいは、コンパクトで確実な洗浄操作が求められる洗車場の洗車機に好適に適用される。
【符号の説明】
【0067】
1 洗車機本体
2 レール
5 サイドブラシ
31 ガイドレール
31a、31b ガイドパイプ
32 移動アーム
35 配水管
40 シリンダ部材
43 スプロケット支持部
44 支持軸
CA 被洗浄車両
CS1,CS2 チェーンスプロケット
STa〜STc チェーン外れ防止部材
SW 下面洗浄装置
WA 洗車機
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8