特許第5664547号(P5664547)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5664547-転写シートおよびその製造方法 図000032
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5664547
(24)【登録日】2014年12月19日
(45)【発行日】2015年2月4日
(54)【発明の名称】転写シートおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/30 20060101AFI20150115BHJP
   B29C 45/16 20060101ALI20150115BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20150115BHJP
【FI】
   B32B27/30 A
   B29C45/16
   B32B27/00 L
【請求項の数】16
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2011-513344(P2011-513344)
(86)(22)【出願日】2010年5月11日
(86)【国際出願番号】JP2010057959
(87)【国際公開番号】WO2010131652
(87)【国際公開日】20101118
【審査請求日】2011年11月8日
(31)【優先権主張番号】特願2009-115478(P2009-115478)
(32)【優先日】2009年5月12日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100068526
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 恭生
(74)【代理人】
【識別番号】100156085
【弁理士】
【氏名又は名称】新免 勝利
(72)【発明者】
【氏名】椛澤 誠
(72)【発明者】
【氏名】福田 晃之
(72)【発明者】
【氏名】今村 亜実
【審査官】 村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−058674(JP,A)
【文献】 特開2008−040262(JP,A)
【文献】 特開2006−119345(JP,A)
【文献】 特開2009−034846(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
B29C 45/00−45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材シート(a)、防汚層(b)およびコーティング層(c)をこの順に有し、基材シート(a)を除去した後の防汚層表面の水接触角が100度以上、ヘキサデカン接触角が40度以上である、防汚性転写シートであって、
防汚層(b)が、重合性二重結合基を有するフッ素化合物を含んでなる防汚組成物から得られた層であり、
コーティング層(c)が、重合性コーティング剤モノマーまたはコーティング用樹脂によって形成されており、
重合性コーティング剤モノマーが、アクリル系モノマー、ビニルアルコール、酢酸ビニルおよびビニルエーテルからなる群から選択され、
コーティング用樹脂が、硬化型樹脂である、防汚性転写シート
【請求項2】
防汚層(b)を形成する防汚組成物が、パーフルオロポリエーテルウレタンアクリレート含有組成物である、請求項1に記載の防汚性転写シート。
【請求項3】
防汚層(b)が
(A)ジイソシアネートを3量体化させたトリイソシアネート、および
(B)少なくとも2種の活性水素含有化合物の組み合わせ
からなる炭素−炭素二重結合含有組成物であって、
活性水素含有化合物(B)が、
(B−1)少なくとも1つの活性水素を有するパーフルオロポリエーテル、および
(B−2)活性水素と炭素−炭素二重結合を有するモノマー
を含んでなる防汚組成物から得られた層である、請求項1または2に記載の防汚性転写シート。
【請求項4】
コーティング層(c)が重合性コーティング剤モノマーによって形成されており、重合性コーティング剤モノマーが非ケイ素化合物である、請求項1記載の防汚性転写シート。
【請求項5】
コーティング層(c)が重合性コーティング剤モノマーによって形成されており、重合性コーティング剤モノマーが、1つの炭素―炭素二重結合を有する単官能性モノマー、または2つ以上の炭素―炭素二重結合を有する多官能性モノマーである、請求項1記載の防汚性転写シート。
【請求項6】
コーティング層(c)が重合性コーティング剤モノマーによって形成されており、重合性コーティング剤モノマーが(メタ)アクリロイル基含有モノマーである2つ以上の炭素―炭素二重結合を有する多官能性モノマーである、請求項1記載の防汚性転写シート。
【請求項7】
基材シート(a)と防汚層(b)との間に、離型層(e)を有する、請求項1〜のいずれか1つに記載の防汚性転写シート。
【請求項8】
基材シート(a)上に防汚組成物を塗布して、防汚層(b)を形成する工程、
防汚層(b)の上に重合性コーティング剤組成物を塗布して、コーティング層(c)を形成する工程、および
防汚組成物および重合性コーティング剤組成物を硬化する工程
を含んでなる、請求項1〜のいずれか1つに記載の防汚性転写シートの製造方法。
【請求項9】
基材シート(a)上に防汚組成物を塗布および硬化して、防汚層(b)を形成する工程、
防汚層(b)の上に重合性コーティング剤組成物を塗布および硬化して、コーティング層(c)を形成する工程、
を含んでなる、請求項1〜のいずれか1つに記載の防汚性転写シートの製造方法。
【請求項10】
コーティング層(c)の硬化の前または後に、コーティング層(c)上に接着剤組成物を塗布し、接着剤層(d)を形成する工程を含む、請求項またはに記載の方法。
【請求項11】
防汚組成物が、パーフルオロポリエーテルウレタンアクリレート含有組成物である、請求項8〜10のいずれか1つに記載の方法。
【請求項12】
防汚層が
(A)ジイソシアネートを3量体化させたトリイソシアネート、および
(B)少なくとも2種の活性水素含有化合物の組み合わせ
からなる炭素−炭素二重結合含有組成物であって、
成分(B)が、
(B−1)少なくとも1つの活性水素を有するパーフルオロポリエーテル、および
(B−2)活性水素と炭素−炭素二重結合を有するモノマー
を含んでなる防汚組成物を含む層である、請求項8〜11のいずれか1つに記載の方法。
【請求項13】
請求項1〜のいずれか1つに記載の防汚性転写シートを用いる、防汚性樹脂成形品の製造方法。
【請求項14】
製造方法がインモールド成形である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
金型の内表面に、防汚組成物を塗布し硬化する工程、重合性コーティング剤組成物を塗布し硬化する工程、および接着剤を塗布する工程、を順次経た後に、樹脂組成物を金型に充填してインモールド成形を行なう、防汚性樹脂成形品の製造方法。
【請求項16】
請求項13〜15のいずれか1つに記載の製造方法によって得られる、防汚性樹脂成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学製品、自動車部品又は事務機器等の樹脂成形品の製造に用いられる防汚性転写シートおよびその製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、防汚性転写シート、その製造方法、該シートを用いる成形方法および該成形方法によって得られる成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
光学製品、自動車内装部品又は事務機器等の樹脂成形品の外表面への種々の機能付与を目的として、所望の機能を備えた転写シートが用いられる。それらの機能としては、防汚性付与、帯電防止性付与、硬度付与又は美観付与等である。これらの機能のうち、特に光学製品に関しては、例えば画像表示表面への指紋付着等を防止するための防汚性付与機能が求められる。防汚性転写シートは、基材シート上に防汚剤を塗布・乾燥して形成した防汚層を有している。
従来、防汚性付与を目的とした防汚性転写シートには最外層にフッ素樹脂フィルムを導入する試みが知られている(引用文献:特開平9−131749号公報)。
しかしながら、フッ素樹脂フィルムの表面防汚性能は十分でなく、その実用化面においてもフィルムの表面硬度、密着性、耐久性を確保する点においても問題点が多い。また、樹脂成形品表面に防汚層を転写後、基材シートの防汚層からの剥離性が低いと、基材シートを離型すると同時に防汚層の(部分的)破壊が生じて防汚性の低下を招くため、離型性の高い防汚層が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−131749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、防汚性、例えば指紋付着防止性、および離型性に優れた防汚性転写シート、転写シートの製造方法、転写シートを用いる防汚性樹脂成形品の製造方法、および前記方法で製造された防汚性樹脂成形品に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、基材シート(a)、防汚層(b)、コーティング層(c)および要すれば接着剤層(d)をこの順に有し、基材シート(a)除去後の防汚層表面の水接触角が100度以上、ヘキサデカン接触角が40度以上である、防汚性転写シートに関するものである。
ここで、防汚層(b)およびコーティング層(c)は特に限定されるものではないが、好ましくは、防汚層(b)は重合性二重結合基を有するフッ素化合物を含んでなる重合性防汚組成物(または防汚剤組成物もしくは単に、防汚組成物)から得られた層、およびコーティング層(c)は表面硬度に優れる重合性コーティング組成物から得られた層である。
防汚組成物は、特に好ましくは、パーフルオロポリエーテルウレタンアクリレート含有組成物である。
本発明は、基材シート(a)と防汚層(b)との間に、離型層(e)を有してよい。
【0006】
本発明は、基材シート(a)上に防汚組成物を塗布する工程、防汚層(b)の上に重合性コーティング剤組成物を塗布する工程、および防汚組成物および重合性コーティング剤組成物を硬化する工程を含んでなる、防汚性転写シートの製造方法に関するものである。
ここで、硬化は、重合性組成物を塗布後および重合性コーティング剤組成物を塗布後にそれぞれ実施されてよい。
本発明は、コーティング層(c)の硬化の前または後に、コーティング層(c)上に接着剤組成物を塗布し、接着剤層(d)を形成する工程を含んでよい。
【0007】
本発明は、前記防汚性転写シートを用いる、防汚性樹脂成形品の製造方法に関するものである。ここで、前記方法は、好ましくは、インモールド成形である。
【0008】
本発明は、金型の内表面に、防汚組成物を塗布し硬化する工程、重合性コーティング剤組成物を塗布し硬化する工程、および接着剤を塗布する工程、を順次経た後に、樹脂組成物を金型に充填してインモールド成形を行なう、防汚性樹脂成形品の製造方法に関するものである。
【0009】
本発明は、前記製造方法によって得られる、防汚性樹脂成形品に関するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、防汚性、特に指紋付着性に優れ、且つ離型性に優れた防汚性転写シートおよび該転写シートの製造方法を提供することができる。
本発明により、防汚性に優れ且つ離型性に優れた前記防汚性転写シートを用いた防汚性樹脂成形品の製造方法および該方法で得られた樹脂成形品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明実施例1および2のハードコート硬化膜上の転写面の静的接触角評価法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
本発明は、基材シート(a)、防汚層(b)、コーティング層(c)および要すれば接着剤層(d)をこの順に有し、基材シート(a)を除去した後の防汚層表面の水接触角が100度以上、ヘキサデカン接触角が40度以上である、防汚性転写シートに関するものである。
接触角は、好ましくは水の場合100度以上、さらに好ましくは110度以上である。水の接触角の上限の値は、170度、例えば150度であってよい。接触角は、ヘキサデカンの場合、40度以上、好ましくは60度以上、より好ましくは65度以上である。ヘキサデカンの接触角の上限の値は、170度、例えば150度、特に100度であってよい。接触角は、マイクロシリンジから防汚層表面に液体を2μL滴下することによって測定した静的接触角である。
【0013】
基材シート(a)はその表面上に、防汚層(b)、コーティング層(c)および要すれば接着剤層(d)をこの順に有して、防汚性転写シートに強度とフレキシビリティを付与する。基材シート表面に上記各層を構成する組成物の溶液を浸漬、スプレー、スピンコート等の方法で均一に塗布することによって、本発明の防汚性転写シートが得られる。基材シート(a)は転写シートを樹脂成形品に転写した後に、転写シートから剥離されて、防汚層が樹脂成形品の最外表面に現れて、樹脂成形品に防汚性を付与する。すなわち、基材シートは、剥離シートとして機能する。
基材シートには、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド等の合成樹脂フィルムを用いることができる。これらの中でも、成形性、耐熱性等を考慮すると2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)又はポリプロピレンフィルムが最も好ましい。基材の厚さは3〜1000μm、好ましくは5〜200μm程度で、より好ましくは16〜100μmである。
【0014】
防汚層(b)は特に限定されるものではないが、希釈剤(特に、非フッ素希釈剤)との相溶性が良好で、金型や多種の基材の上に防汚性(撥水性、撥油性)の強固な皮膜を形成でき、且つ剥離性が良好な点で、含フッ素単量体を含む組成物、例えばパーフルオロロアクリレート、好ましくはパーフルオロポリエーテルウレタンアクリレートを含む防汚組成物から得られた防汚層が好ましい。
パーフルオロアクリレートとしては、例えば、
(i) 一般式:
CH2=C(−X)−C(=O)−Y−Z−Rf (1)
[式中、Xは、水素原子、炭素数1〜21の直鎖状または分岐状のアルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、CFX12基(但し、X1およびX2は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子である。)、シアノ基、炭素数1〜21の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル基、置換または非置換のベンジル基、置換または非置換のフェニル基であり;
Yは、−O−または−NH−であり;
Zは、炭素数1〜10の脂肪族基、炭素数6〜10の芳香族基または環状脂肪族基、
-CH2CH2N(R1)SO2−基(但し、R1は炭素数1〜4のアルキル基である。)または
-CH2CH(OZ1) CH2−基(但し、Z1は水素原子またはアセチル基である。)または
-(CH2)m−SO2−(CH2)n−基 または -(CH2)m−S−(CH2)n−基(但し、mは1〜10、nは0〜10、である)、
Rfは、炭素数1〜21の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル基または炭素数3〜100のパーフルオロポリエーテル基である。]
で表される、含フッ素単量体が挙げられる。
【0015】
含フッ素単量体(i)は、(アクリレートまたはメタクリレートの)α位がハロゲン原子などで置換されていることがある。したがって、式(1)において、Xが、炭素数2〜21の直鎖状または分岐状のアルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、CFX12基(但し、X1およびX2は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子である。)、シアノ基、炭素数1〜21の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル基、置換または非置換のベンジル基、置換または非置換のフェニル基であってよい。
【0016】
上記式(1)において、Rf基が、フルオロアルキル基である場合に、パーフルオロアルキル基であることが好ましい。Rf基の炭素数は1〜21、例えば1〜7、特に4〜6、特別には6であってよい。Rf基の例は、−CF3、−CF2CF3、−CF2CF2CF3、−CF(CF3) 2、−CF2CF2CF2CF3、−CF2CF(CF3) 2、−C(CF3) 3、−(CF2)4CF3、−(CF2) 2CF(CF3) 2、−CF2C(CF3) 3、−CF(CF3)CF2CF2CF3、−(CF2)5CF3、−(CF2)3CF(CF3) 2、−(CF2)4CF(CF3) 2等である。特に、−(CF2)5CF3が好ましい。
Rf基が、パーフルオロポリエーテル基である場合に、Rf基が、OCF基、OCFCF基、OCFCFCF基およびOC(CF3)FCFCF基から選択された少なくとも1種の単位を有することが好ましい。パーフルオロポリエーテル基の分子量は、200〜500000、特に500〜10000000であることが好ましい
【0017】
含フッ素単量体(i)の具体例としては、例えば以下のものを例示できるが、これらに限定されるものではない。
CH2=C(−H)−C(=O)−O−(CH2)2−Rf
CH2=C(−H)−C(=O)−O−C6H4−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)2−Rf
CH2=C(−H)−C(=O)−O−(CH2)2N(−CH3) SO2−Rf
CH2=C(−H)−C(=O)−O−(CH2)2N(−C2H5) SO2−Rf
CH2=C(−H)−C(=O)−O−CH2CH(−OH) CH2−Rf
【0018】
CH2=C(−H)−C(=O)−O−CH2CH(−OCOCH3) CH2−Rf
CH2=C(−H)−C(=O)−O−(CH2)2−S−Rf
CH2=C(−H)−C(=O)−O−(CH2)2−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−H)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−Rf
CH2=C(−H)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−H)−C(=O)−NH−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CH3)−C(=O)−O−(CH2)2−S−Rf
CH2=C(−CH3)−C(=O)−O−(CH2)2−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CH3)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−Rf
CH2=C(−CH3)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CH3)−C(=O)−NH−(CH2)2−Rf
【0019】
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)2−S−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)2−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−NH−(CH2)2−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)2−S−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)2−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−NH−(CH2)2−Rf
【0020】
CH2=C(−CF3)−C(=O)−O−(CH2)2−S−Rf
CH2=C(−CF3)−C(=O)−O−(CH2)2−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF3)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−Rf
CH2=C(−CF3)−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF3)−C(=O)−NH−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF2H)−C(=O)−O−(CH2)2−S−Rf
CH2=C(−CF2H)−C(=O)−O−(CH2)2−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF2H )−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−Rf
CH2=C(−CF2H )−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF2H )−C(=O)−NH−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CN)−C(=O)−O−(CH2)2−S−Rf
CH2=C(−CN)−C(=O)−O−(CH2)2−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CN )−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−Rf
CH2=C(−CN )−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CN )−C(=O)−NH−(CH2)2−Rf
【0021】
CH2=C(−CF2CF3)−C(=O)−O−(CH2)2−S−Rf
CH2=C(−CF2CF3)−C(=O)−O−(CH2)2−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF2CF3 )−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−Rf
CH2=C(−CF2CF3 )−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF2CF3 )−C(=O)−NH−(CH2)2−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)3−S−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)3−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−F)−C(=O)−NH−(CH2)3−Rf
【0022】
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)3−S−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)3−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−Rf
CH2=C(−Cl)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF3)−C(=O)−O−(CH2)3−S−Rf
CH2=C(−CF3)−C(=O)−O−(CH2)3−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF3)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−Rf
CH2=C(−CF3)−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF2H)−C(=O)−O−(CH2)3−S−Rf
CH2=C(−CF2H)−C(=O)−O−(CH2)3−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF2H )−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−Rf
CH2=C(−CF2H )−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−(CH2)2−Rf
【0023】
CH2=C(−CN)−C(=O)−O−(CH2)3−S−Rf
CH2=C(−CN)−C(=O)−O−(CH2)3−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CN )−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−Rf
CH2=C(−CN )−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF2CF3)−C(=O)−O−(CH2)3−S−Rf
CH2=C(−CF2CF3)−C(=O)−O−(CH2)3−S−(CH2)2−Rf
CH2=C(−CF2CF3 )−C(=O)−O−(CH2)3−SO2−Rf
CH2=C(−CF2CF3 )−C(=O)−O−(CH2)2−SO2−(CH2)2−Rf
[上記式中、Rfは、フルオロアルキル基またはパーフルオロポリエーテル基である。]
成分(i)は、2種類以上の混合物であってもよい。
【0024】
本発明の防汚層の例として、
(1)パーフルオロロアクリレートモノマー、例えば、パーフルオロアルキル(メタ)アクリレート(パーフルオロアルキル基の炭素数は、1〜21、好ましくは1〜7である。)、またはパーフルオロポリエーテルウレタンアクリレートモノマー、あるいは、
(2)パーフルオロロアクリレートモノマーを含む防汚組成物から得られた防汚層が好ましい。
【0025】
本発明において特に好ましい防汚層は、
(A)ジイソシアネートを3量体化させたトリイソシアネート、および
(B)少なくとも2種の活性水素含有化合物の組み合わせ
からなる炭素−炭素二重結合含有組成物であって、
成分(B)(即ち、活性水素含有化合物(B))が、
(B−1)少なくとも1つの活性水素を有するパーフルオロポリエーテル、および
(B−2)活性水素と炭素−炭素二重結合を有するモノマー
を含んでなる防汚組成物から得られた防汚層である。
【0026】
トリイソシアネート(A)と成分(B)とを反応させることによって、すなわち、トリイソシアネート(A)に存在するNCO基と成分(B)に存在する活性水素を反応させることによって、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有するパーフルオロポリエーテル含有化合物を得ることができる。本発明の組成物は、炭素−炭素二重結合を有するパーフルオロポリエーテル含有化合物を含んでなることが好ましい。トリイソシアネート(A)に存在するNCO基と成分(B)に存在する活性水素の当量比は、1:少なくとも1、特に1:1であってよい。
【0027】
例えば、トリイソシアネート(A)に存在するNCO基に、成分(B−1)および成分(B−2)に存在する活性水素を反応させることによって、炭素−炭素二重結合を有するパーフルオロポリエーテル含有化合物が得られる。トリイソシアネート(A)に、成分(B−1)および(B−2)を同時に添加してもよいし、あるいは成分(B−1)および(B−2)を順次反応させてもよい。トリイソシアネート(A)1モルに対して、成分(B−1)の有する活性水素と成分(B−2)の有する活性水素の総和が3モルであってよい。成分(B−1)の量は、トリイソシアネート(A)1モルに対して、下限が0.0001モル、例えば0.01モル、特に0.1モルであり、上限が2モル、例えば1.5モル、特に1.0モルであってよい。成分(B−1)の量は、トリイソシアネート(A)1モルに対して、例えば0.0001〜2モル、特に0.01〜1.2モルであってよい。成分(B−2)の量は、トリイソシアネート(A)1モルに対して、下限が1モル、例えば1.2モル、特に1.5モル、上限が2.5モル、例えば2.0モル、特に1.8モルであってよい。成分(B−2)の量は、トリイソシアネート(A)1モルに対して、例えば1.0〜2.5モル、特に1.2〜2.0モルであってよい。
【0028】
成分(B)がさらに(B−3)活性水素を有する化合物を含んでいてよい。少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有するパーフルオロポリエーテル含有化合物は、成分(A)と、成分(B−1)、(B−2)および(B−3)とを反応させることによって得られる。トリイソシアネート(A)に、成分(B−1)、(B−2)および(B−3)を同時に添加してもよいし、あるいは成分(B−1)、(B−2)および(B−3)を順次(添加は記載の順序に限定されない。)添加してもよい。
トリイソシアネート(A)に存在するNCO基に成分(B−2)を1モル以上反応させ、残りのNCO基を成分(B−1)および成分(B−3)と反応させることが好ましい。トリイソシアネート(A)1モルに対して、成分(B−1)、(B−2)および(B−3)が有する活性水素の総和が少なくとも3モル、特に3モルであることが好ましい。
【0029】
本発明によれば、炭素−炭素二重結合を有するパーフルオロポリエーテル含有化合物を得るための原料(すなわち、成分(A)および(B))ならびに炭素−炭素二重結合を有するパーフルオロポリエーテル含有化合物は、希釈剤(例えば、溶媒あるいはアクリルモノマー)に均一分散させることができる。
【0030】
トリイソシアネート(A)は、ジイソシアネートを三量体化して得られたトリイソシアネートである。トリイソシアネート(A)を得るために使用するジイソシアネートとしては、イソシアネート基が脂肪族的に結合したジイソシアネート、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート;イソシアネート基が芳香族的に結合したジイソシアネート、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、トリジンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネートが挙げられる。
【0031】
【化1】
【0032】
【化2】
【0033】
【化3】
【0034】
【化4】
【0035】
成分(B)は、
(B−1)少なくとも1つの活性水素(例えば、活性水酸基)を有するパーフルオロポリエーテル、
(B−2)活性水素と炭素−炭素二重結合を有するモノマー、および
(B−3)必要に応じて使用する、活性水素(例えば、活性水酸基)を有する化合物
を含んでなる。活性水素は、活性水酸基などの活性水素含有基中に存在する。
パーフルオロポリエーテル(B−1)は、パーフルオロポリエーテル基に加えて、1つの分子末端に1つの水酸基を有するか、あるいは両末端のそれぞれに1つの水酸基を有する化合物である。
パーフルオロポリエーテル(B−1)は、一般式:
【0036】
【化5】

[式中、Xはフッ素原子または-CH2OH基、
YおよびZはフッ素原子またはトリフルオロメチル基、
aは1から16の整数、cは0から5の整数、b,d,e,f,gは0から200の整数、hは0から16の整数である。]
に示される化合物であることが好ましい。
【0037】
活性水素と炭素−炭素二重結合を有するモノマー(B−2)は、活性水素、特に水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルおよびビニルモノマーであることが好ましい。モノマー(B−2)の例は次のとおりである。
ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、
アミノエチル(メタ)アクリレート
HO(CH2CH2O)i- COC(R)C=CH2(R:H、CH、i=2〜10)、
CH3CH(OH)CH2OCOC(R)C=CH2(R:H、CH;2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート)
CH3CH2CH(OH)CH2OCOC(R)C=CH2(R:H、CH;2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート)
C6H5OCH2CH(OH)CH2OCOC(R)C=CH2(R:H、CH;2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート)
アリルアルコール、
HO(CH2)k CH=CH2(k=2〜20)、
(CH3)3SiCH(OH)CH=CH2
スチリルフェノール。
【0038】
活性水素を有する化合物(B−3)は、パーフルオルオロポリエーテル基および炭素−炭素二重結合の両方を有さず、少なくとも1つの活性水素を有する化合物であることが好ましい。化合物(B−3)の好ましい例は、次のとおりである。
炭素数1〜16の直鎖状あるいは分枝鎖状炭化水素からなる1価のアルコール、
炭素数1から16の直鎖状あるいは分枝鎖状炭化水素からなる2級アミン、
【0039】
【化6】

芳香族基を有する2級アミン、
Rfアルコール; Q(CF2)l(CH=CH)m(CHI)n(CH2)oOH(Qは水素原子、フッ素原子、(CF3)2CF-基であり、lは1から10の整数、m,nは0から1の整数、oは1から10の整数)
ポリアルキレングリコールモノエステル;例えば、R(OCH2CH2)pOH、R(OCH2CH2CH2)qOH (Rは炭素数1から16の直鎖状または分枝鎖状炭化水素あるいはアセチル基あるいはアルキルフェノキシ基であり、p,qは1から20の整数)、
芳香族アルコール、
活性水素を持つシラン化合物、
(CH3)3Si(CH2)sOH(sは1から20の整数)、
[(CH3)3C]2NH、
【0040】
【化7】
【0041】
【化8】
【0042】
【化9】
【0043】
炭素−炭素二重結合を有するパーフルオロポリエーテル含有化合物を得る反応は、例えば、次のように表すことができる。
【0044】
【化10】
【0045】
第3成分(すなわち、成分(B−3))を使用して得られる、炭素−炭素二重結合を有するパーフルオロポリエーテル含有化合物の具体例は次のような化学式のものである。
【0046】
【化11】
【0047】
炭素−炭素二重結合を有するパーフルオロポリエーテル含有化合物は、イソシアヌレート環からでている第1のイソシアネート基が成分(B−1)と反応し、第2のイソシアネート基が成分(B−2)に反応し、第3のイソシアネート基が成分(B−3)に反応している上記の化学式のような化合物であってよい。
【0048】
【化12】
【0049】
【化13】
【0050】
炭素−炭素二重結合を有するパーフルオロポリエーテル含有化合物においては、イソシアヌレート環からでているそれぞれのイソシアネート基が、1分子の成分(B−1)、(B−2)または(B−3)とのみ反応しており、その反応した成分(B−1)、(B−2)および(B−3)が、他のいずれの化合物とも反応しておらず、末端を形成していることが好ましい。
【0051】
炭素−炭素二重結合を有するパーフルオロポリエーテル含有化合物は、少なくとも1つのイソシアネート基に結合した1分子の成分(B−2)を有する化合物である。残りの2のイソシアネート基は、成分(B−1)、(B−2)および(B−3)のいずれかと反応して、これらと結合してよい。
パーフルオロポリエーテル含有化合物は、残りの2のイソシアネート基に結合している成分(B−1)、(B−2)および(B−3)の種類が異なっている混合物の形態であることがある。
【0052】
パーフルオロポリエーテル含有化合物の混合物において、成分(B−1)が結合していないパーフルオロポリエーテル含有化合物分子、1分子の成分(B−1)が結合したパーフルオロポリエーテル含有化合物分子、および/または2分子の成分(B−1)が結合したパーフルオロポリエーテル含有化合物分子が存在し得る。パーフルオロポリエーテル含有化合物の混合物において、1分子の成分(B−1)が結合しているパーフルオロポリエーテル含有化合物の割合は、パーフルオロポリエーテル含有化合物全量1モルに対して、下限が0.0001モル、例えば0.01モル、特に0.1モルである。パーフルオロポリエーテル含有化合物の混合物において、2分子の成分(B−1)が結合しているパーフルオロポリエーテル含有化合物存在することがあり、その割合は、パーフルオロポリエーテル含有化合物全量1モルに対して、上限が1モル、例えば0.8モル、特に0.5モルである。パーフルオロポリエーテル含有化合物の混合物において、2分子の成分(B−1)が結合しているパーフルオロポリエーテル含有化合物は存在しなくてもよい。
【0053】
パーフルオロポリエーテル含有化合物の混合物において、成分(B−3)が結合していないパーフルオロポリエーテル含有化合物分子、1分子の成分(B−3)が結合したパーフルオロポリエーテル含有化合物分子、および/または2分子の成分(B−3)が結合したパーフルオロポリエーテル含有化合物分子が存在し得る。1分子の成分(B−3)が結合しているパーフルオロポリエーテル含有化合物の割合は、パーフルオロポリエーテル含有化合物全量1モルに対して、上限が1モル、例えば0.8モル、特に0.5モルである。パーフルオロポリエーテル含有化合物の混合物において、2分子の成分(B−3)が結合しているパーフルオロポリエーテル含有化合物存在することがあり、その割合は、パーフルオロポリエーテル含有化合物全量1モルに対して、上限が0.8モル、例えば0.5モル、特に0.3モルである。
【0054】
種々の非フッ素系物質に親和性の高いジイソシアネート(例えば、アルキルジイソシアネート)の3量体であるトリイソシアネート(A)、例えばHMDI-イソシアヌレート変性3量体に、末端に活性水素を持つパーフルオロポリエーテル(B−1)と、活性水素を有する付加重合性モノマー(B−2)、必要に応じて第三の活性水素を有する化合物(B−3)を反応させることによって、パーフルオロポリエーテルに非フッ素系物質に対する親和性を付与できる。
【0055】
同一反応器内で、モノマー(B−2)の活性水素/PFPE(B−1)の活性水素/トリイソシアネート(A)のイソシアネート基=2/1/3(当量)で反応させると、化合物(2)単品が得られる。化合物(2)は、希釈剤、特にフッ素を含まない希釈剤に対して高い相溶性を有する。
さらに反応仕込み比を調整し、モノマー(B−2)の活性水素/PFPE(B−1)の活性水素≧2(当量比)で、トリイソシアネートのNCO基をすべて修飾すると、非フッ素系の化合物(1)とPFPEを持つフッ素系化合物(2)の複数成分の混合物が同一反応器内に生成することになる。この混合物は、さらに乳化性を高めた付加重合性組成物である。非フッ素系化合物(1)はフッ素を含有せずかつ化合物(2)と類似構造であるので、フッ素系化合物(2)を非フッ素系のコーティング剤に可溶化させる役割と多官能アクリレート架橋剤の役割をあわせもつ。
【0056】
この防汚組成物は以下のような特長を持つ:(a)イソシアヌレート骨格を持つウレタンアクリレート構造を加えることで相溶性が格段に向上したPFPEを含む防汚剤が得られ、
(b)ワンポット中でトリイソシアネートに反応させる活性水素を持つ化合物の組成比を制御することによって化合物(1)と化合物(2)の混合物を簡便に製造することができ、(c)混合物にすることで格段に非フッ素系化合物への溶解性を向上させることができる。
【0057】
化合物(2)が存在し化合物(1)が存在しない組成物は、或る程度の溶解性を有するが、化合物(2)と化合物(1)の混合物にすることがより溶解性が向上する。
これにより例えば、化合物(2)の単品は数種の単官能希釈性アクリレートに分散できるようになり、希釈性モノマー共存下、ハードコート剤に用いられる高架橋性の多官能アクリレートに均一分散できるようになり、均一な膜が作成できるようになる。
さらに仕込み比を調整しワンポットで得られた化合物(1)と化合物(2)の混合物は非フッ素系の多官能性アクリレートとも相溶性であり、(希釈性アクリレートなしで)高架橋性の多官能アクリレートのみからなる混合溶液にも配合可能である。
【0058】
この防汚組成物は炭素−炭素二重結合を有するので、熱または光重合によりコーティングモノマーと共重合され表面コーティング膜中に強く固定される。
表面保護膜として用いるにはある程度の硬度が要求されるので、硬度を上げるために架橋密度が高い多官能モノマーが主成分として用いられることが好ましい。このため、炭素−炭素二重結合を有するパーフルオロポリエーテル含有化合物は、多官能モノマーに相溶する事が好ましい。
【0059】
上記の修飾によりポリフルオロポリエーテル(PFPE)を、たとえば(ハード)コーティング剤を構成するアクリルのような付加重合性モノマー組成物へ配合することが可能となり、樹脂、さらに金属、ガラス等も含め、使用することができるPFPEの表面特性を有したコーティング剤ができる。本発明のコーティング剤は、硬い皮膜を形成するのに使用できるが、共重合させるモノマーに応じて、柔軟な皮膜も形成できる。
【0060】
本発明においてNCO基と水酸基の反応を利用するために、水酸基を持つPFPEと水酸基を持つアクリレートを逐次あるいは混合しておいた物を一度にHMDI−イソシアヌレート変性体(トリイソシアネート)と反応する事により、反応器から取り出すことなく合成できる。すなわち、ワンポット合成が行なえる。
トリイソシアネート1モルに対し、総量3モル反応させるHEAと水酸基をもつPFPEについてHEA(水酸基を持つアクリレート)/水酸基を持つPFPEの比をコントロールすることで化合物(1)と化合物(2)の組成比を変えることができ炭化水素系材料への溶解度とPFPEの含有量を目的に応じて制御できる。しかも、目的の化合物をワンポットで製造できる。例えば、HEA/PFPE=2/1(モル比)の時、上記の図の化合物(2)が100%で得られ、HEA/PFPE=8/1(モル比)の時、化合物(1)/化合物(2)=2/1(モル比)が得られる。
【0061】
ワンポット合成の利点は、生産性が良いことである。重合性化合物を最終生成物まで熱履歴少なく、途中で重合させずに、取り扱える。
後混合(化合物(1)と化合物(2)を各々別に作っておいて後で混ぜる)によって組成物を作るより良く混ざった組成物ができる。したがって、他のコーティング用モノマーによりよく相溶できる。
溶解性や重合皮膜の目標物性にあわせて組成物における化合物の組成を任意に変えることができ種々の目的のコーティング剤へ相溶化させる事ができる。たとえばPFPE化合物の分子量を例えば、500〜10000に調整することによって、相溶性を向上させることができる。溶解性の乏しいコーティング剤を併用しても、この防汚組成物を相溶化させることができる。相溶性を向上させるには、成分(B−2)/成分(B−1)(例えば、HEA/PFPE)の当量比(すなわち、活性水素に関する当量比)を大きくする、2/1以上、例えば、2/1〜20,000/1にすることが好ましい。
【0062】
この防汚剤は、一分子に三つあるNCO基のうち少なくとも一つのNCO基が炭素−炭素二重結合に接続している化合物である。したがって、トリイソシアネート(A)1分子に反応させる成分(B−2)(例えば、活性水素を有するアクリレート)が少なくとも1モル以上である。残りのNCO基に、成分(B−1)(すなわち、PFPE含有アルコール)と第三成分(例えば、成分(B−3))を結合させる。
この防汚剤は、トリイソシアネート1モルの3つのNCO基の内の少なくとも1つのNCO基にPFPE含有アルコール(B−1)が反応していて、成分(B−2)(例えば、水酸基を有するアクリレート)が1モル以上、残りが機能性の第三成分(例えば可溶性を付与する為に長鎖アルキルのアルコール、硬さを上げるためにシリコーン化合物)である化合物であってもよい。
【0063】
この防汚組成物の炭素−炭素二重結合を有するパーフルオロポリエーテル含有化合物(すなわち、PFPE含有モノマー)は、1つまたは2つの水酸基を有してよい。2つの水酸基を有する場合には、パーフルオルオロポリエーテル化合物分子の両方の末端にそれぞれ1つの水酸基を有する。
【0064】
成分(B−1)がモノオールタイプである場合に、PFPEモノマーの製造は、成分(B−1)、(B−2)および(B−3)を含む原料を同一反応容器内に逐次あるいは混合物として一度に投入しトリイソシアネートに反応させることによって行なえる。成分(B−1)がジオールタイプである場合に、PFPEモノマーの製造は、最初に活性水素と炭素−炭素二重結合を有するモノマー(B−2)と活性水素を有する化合物(B−3)(すなわち、第3成分)の混合物をトリイソシアネート1モルに対して2モル反応させた後、残ったNCO残基1モルに0.5モルのPFPE両末端ジオール(すなわち、ジオールタイプの成分(B−1))を反応させるという逐次反応によって行なうことが好ましい。
【0065】
この防汚組成物を非極性溶媒(例えば、炭素数4〜20の脂肪族または芳香族炭化水素)により沈殿させ高沸点反応溶媒を除き、次いで、沈殿にアセトンと重合禁止剤を添加し、炭素−炭素二重結合およびパーフルオロポリエーテル基を有する化合物の溶液として反応器から取り出すことによって、炭素−炭素二重結合およびパーフルオロポリエーテル基を有する化合物を精製することができる。
【0066】
この防汚組成物、特に炭素−炭素二重結合を有するパーフルオロポリエーテル含有化合物(すなわち、PFPEモノマー)を含んでなる組成物は、希釈剤(特に、種々の溶媒や種々の重合性コーティング剤モノマー(すなわち、炭素−炭素二重結合を有するモノマー))に高濃度で相溶化することができ、膜形成が容易であり、製膜後に適当な方法で、PFPEモノマーの単独重合あるいはPFPEモノマーと重合性コーティング剤モノマーとの共重合を行なうことができる。希釈剤は、一般に、非フッ素化合物であるが、含フッ素化合物であってもよい。
溶媒および/または重合性コーティング剤モノマー(炭素−炭素二重結合を有するモノマー)は、この防汚組成物を基材に塗布する前に、必要に応じて、この防汚組成物に添加する。
【0067】
溶媒は、非フッ素溶媒(特に、炭化水素系溶媒)または含フッ素溶媒である。非フッ素溶媒の例は、ケトン(例えば、メチルエチルケトン、アセトン)、アルコール(例えば、エタノール、プロパノールなどの一価アルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコールなどの多価アルコール(特に、2〜4価のアルコール))、エステル(例えば、酢酸エチル)、エーテル(例えば、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート)である。含フッ素溶媒の例は、含フッ素アルコール、含フッ素エーテル、ジトリフルオロメチルベンゼンなどである。
【0068】
含フッ素アルコールの例としては、
H(CF2)v(CH2)-OH
F(CF2)v(CH2)w-OH
F(CF2)vCH=CHCH2OH
F(CF2)vCH2CH(I)CH2OH
[Vは1〜8の整数、wは1〜8の整数]
が挙げられる。
【0069】
含フッ素エーテルは、R21-O-R22(R21およびR22は、フッ素を含んでも含まなくても良い炭素数1〜10までの直鎖あるいは分枝鎖のアルキル基であり、R21およびR22の少なくとも一方がフッ素原子を含む。)で示される化合物であってよい。含フッ素エーテルの例は、ハイドロフルオロアルキルエーテルである。含フッ素エーテルの市販品としては、例えば3M社製のHFE-7100およびHFE-7200が挙げられる。
ジトリフルオロメチルベンゼンは、o-、m-、p-各々異性体の単量体もしくは混合物)などであってよい。
【0070】
防汚組成物を合成する際に、組成を調整し水酸基を持つPFPE基の含有率を減じたり、活性水素基を有する化合物(B−3)を目的に応じて反応させることにより、様々な媒体と親和することができる組成物が得られるため、ここに挙げられる溶媒の例に限られるわけではない。
防汚組成物(特に、炭素−炭素二重結合を有するパーフルオロポリエーテル含有化合物(すなわち、PFPEモノマー))と希釈剤の重量比は、1:100,000〜1:1、例えば1:10,000〜1:1、特に1:100〜1:1であってよい。
防汚組成物は、重合させる前に金型又は基材表面に塗布してもよいし、あるいは重合させた後に金型又は基材表面に塗布してもよい。防汚層の厚さは0.001〜1μm、特に0.05〜0.1μmであってよい。
【0071】
コーティング層は、重合性コーティング剤モノマーまたは樹脂によって形成されている。
【0072】
重合性コーティング剤モノマーは、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有する化合物である。重合性コーティングモノマーは、例えば、(メタ)アクリル酸エステルなどのアクリル系モノマー;ビニルアルコール、酢酸ビニル、ビニルエーテル(例えば、C1−12アルキルビニルエーテル)などのビニルモノマーであってよい。重合性コーティング剤モノマーは、(メタ)アクリル酸エステル、例えば、少なくとも1つの水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルであってよい。(メタ)アクリル酸エステルは、例えば、2〜5価アルコール(例えば、C〜C10アルキレンジオールのようなジオール)と(メタ)アクリル酸とのエステル化によって得られる化合物であってよい。
重合性コーティング剤モノマーは、含フッ素化合物または非フッ素化合物である。重合性コーティング剤モノマーは、含ケイ素化合物または非ケイ素化合物である。
重合性コーティング剤モノマーは、1つの炭素―炭素二重結合を有する単官能性モノマー、または2つ以上の炭素―炭素二重結合を有する多官能性モノマーであってよい。
【0073】
重合性コーティングモノマーは単官能性モノマーであってよい。単官能性モノマーとしては、例えば、アクリルアミド、7−アミノ−3,7−ジメチルオクチル(メタ)アクリレート、イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、イソボルニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、エチルジエチレングリコール(メタ)アクリレート、t−オクチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルフォリン、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエン(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミドテトラクロロフェニル(メタ)アクリレート、2−テトラクロロフェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、テトラブロモフェニル(メタ)アクリレート、2−テトラブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−トリクロロフェノキシエチル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、2−トリブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ペンタクロロフェニル(メタ)アクリレート、ペンタブロモフェニル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、メチルトリエチレンジグリコール(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルポリオキシ(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、フェニルオキシエチルオキシエチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカンモノ(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、N−ビニルカプロラクタム、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−メタクリロイロキシエチルコハク酸、2−メタクリロイロキシエチルヒキサヒドロフタル酸、エトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、2−メタクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸、および下記式(i)〜(iii):
【0074】
【化14】

[ここで、R11は水素原子またはメチル基を表わし、R12は炭素数2〜6、好ましくは2〜4のアルキレン基であり、R13は水素原子または炭素数1〜12、好ましくは1〜9のアルキル基であり、Ar1はフェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基等の2価の芳香族基であり、sは0〜12、好ましくは1〜8の数である。]
【0075】
【化15】

[ここで、R21は水素原子またはメチル基を表し、R22は炭素原子数2〜8、好ましくは2〜5のアルキレン基であり、tは1〜8、好ましくは1〜4の数である。]
【0076】
【化16】

[ここで、R31は水素原子またはメチル基を表し、R32は炭素原子数2〜8、好ましくは2〜5のアルキレン基であり、R33は水素原子またはメチル基を表わし、tは1〜8、好ましくは1〜4の数である、但し、それぞれのR33は同一でも異なっていてもよい。]
で表される化合物等の(メタ)アクリロイル基含有モノマーを挙げることができる。
【0077】
フッ素原子を有する単官能性モノマーの例は、トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,4,4,4−ヘキサフルオロブチルメタクリレート、パーフルオロオクチルブチルメタクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルメタクリレートである。
【0078】
ケイ素原子を有する単官能性モノマーの例は、
式(iv):
【0079】
【化17】

[R41は水素原子またはメチル基であり、R42は炭素数1〜10の分岐もしくは直鎖のアルキレン基であり、R43は炭素数1〜10の分岐もしくは直鎖のアルキル基であり、kは1〜10であり、lは1〜200である。]
で表される末端反応性のポリジメチルシロキサンである。
【0080】
重合性コーティング剤モノマーは多官能性モノマーであってよい。多官能性モノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリシクロデカンジイルジメチレンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリス[(メタ)アクリロキシエチル]イソシアヌレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリプロポキシトリ(メタ)アクリレート、グリセリントリプロポキシトリ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリエトキシジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ又はテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタおよびヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジメタクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリアクレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、および下記式(v):
【0081】
【化18】

[ここで、R51およびR52は水素原子またはメチル基を表わし、Xは炭素数2〜6、好ましくは2〜4のアルキレン基、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基等の2価の基であり、p、qは、それぞれ独立に1〜10、好ましくは1〜5の数である。]
で表される化合物等の(メタ)アクリロイル基含有モノマー等の(メタ)アクリロイル基含有モノマーを挙げることができる。
【0082】
フッ素原子およびケイ素原子を含有しない多官能性モノマーの1つの具体例は、式(vi):
【0083】
【化19】

[nは1〜3の数である。]
で表されるビスフェノールAジグリシジルエーテル重合体のアクリル酸エステルである。
ケイ素原子を含有する多官能性モノマーの例は、一般式(vii):
【0084】
【化20】

[式中、mは1〜10の数を示し、nは6〜36の数を示し、R61およびR64は、少なくとも2つのアクリレート基(CH2=CHCOO-)を有する基、R62およびR63は二価の有機基を示す。]
で示されるジメチルシロキサン化合物である。
式中、R61およびR64は、
【0085】
【化21】

または
【0086】
【化22】

であってよく、
62およびR63は、
【0087】
【化23】
【0088】
【化24】

であってよい。
【0089】
重合性コーティング剤モノマーは、エポキシ(メタ)アクレリレートまたはウレタン(メタ)アクリレートであってもよい。エポキシ(メタ)アクレリレートまたはウレタン(メタ)アクリレートは、1つまたは2つ以上のアクリル基を有する。
エポキシ(メタ)アクリレートは、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸との反応物である。ここで使用されるエポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニルジグリシジルエーテル、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂、脂肪族又は脂環状オレフィンのエポキシ化物、エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化ロジン等があげられる。
【0090】
ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、ポリオール化合物(a)と有機ポリイソシアネート(b)と水酸基含有(メタ)アクリレート(c)との反応物であってよい。
ウレタン(メタ)アクリレートを生成するポリオール化合物(a)としては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリプロピレングリコール、1,4−ジメチロールベンゼン、1,4−ジメチロールシクロヘキサン、ビスフェノールAポリエトキシジオール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のジオール類、これらジオール類とコハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、アジピン酸、ダイマー酸等の二塩基酸又はこれらの酸無水物類との反応物であるポリエステルポリオール類、前記ジオール類と前記二塩基酸又はこれらの酸無水物類とε−カプロラクトンとの反応物であるポリカプロラクトンポリオール類、ポリカーボネートポリオール類等を挙げることができる。
【0091】
ウレタン(メタ)アクリレートを生成する有機ポリイソシアネート(b)としては、例えば、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、ジシクロペンタニルジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4′−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,2′,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0092】
ウレタン(メタ)アクリレートを生成する水酸基含有(メタ)アクリレート(c)としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとε−カプロラクトンの反応物、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0093】
防汚組成物を基材シート(または金型)の上に塗布し、硬化して防汚層を形成した後、コーティング層用の樹脂層をさらに積層してよい。または、防汚性組成物を塗布し、コーティング層用の樹脂を塗布後に、硬化してよい。このコーティング層は好ましくは透明層である。樹脂成形品表面の硬度を保ちつつ、光学製品の場合には透光性を維持するためである。コーティング用樹脂には硬化型樹脂を用いる。硬化型樹脂としては電離放射線硬化型樹脂、熱硬化性樹脂のいずれもが使用できる。コーティング層の厚さは、1〜100μmであってよい。
【0094】
コーティング層用の電離放射線硬化型樹脂としては、分子中に重合性不飽和結合又はエポキシ基を有するプレポリマー、オリゴマー、および/又は単量体を適宜混合した組成物を用いる。前記プレポリマー、オリゴマーの例としては、不飽和ジカルボン酸と多価アルコールの縮合物等の不飽和ポリエステル類、ポリエステルメタクリレート、ポリエーテルメタクリレート、ポリオールメタクリレート、メラミンメタクリレート等のメタクリレート類、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリオールアクリレート、メラミンアクリレート等のアクリレート類等がある。前記単量体の例としては、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系単量体、アクリル酸メチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸ブトキシエチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ブトキシブチル、アクリル酸フェニル等のアクリル酸エステル類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸メトキシエチル、メタクリル酸エトキシメチル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ラウリル等のメタクリル酸エステル類、アクリル酸−2−(N、N−ジエチルアミノ)エチル、メタクリル酸−2−(N、N−ジメチルアミノ)エチル、アクリル酸−2−(N、N−ジベンジルアミノ)エチル、メタクリル酸(N、N−ジメチルアミノ)メチル、アクリル酸−2−(N、N−ジジエチルアミノ)プロピル等の不飽和酸の置換アミノアルコールエステル類、アクリルアミド、メタクリルアミド等の不飽和カルボン酸アミド、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサジオールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート等の化合物、ジプロピレングリコールジアクリレート、エチレングリコールアクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート等の多官能性化合物、および/又は、分子中に2個以上のチオール基を有するポリチオール化合物、例えば、トリメチロールプロパントリチオグリコレート、トリメチロールプロパントリチオプロピレート、ペンタエリスリトールテトラチオグリコール等がある。
【0095】
以上の化合物を必要に応じ1種もしくは2種以上混合して用いるが、樹脂組成物に通常の塗工適性を付与するために、前記プレポリマー又はオリゴマーを5重量%以上、前記単量体および/又はポリチオールを95重量%以下とすることが好ましい。
【0096】
単量体の選定に際しては、硬化物の可撓性が要求される場合は塗工適性上支障のない範囲で単量体の量を少なめにしたり、1官能又は2官能アクリレート単量体を用い、比較的低架橋密度の構造とする。また、硬化物の耐熱性、硬度、耐溶剤性等を要求される場合には、塗工適性上支障のない範囲で単量体の量を多めにしたり、3官能以上のアクリレート系単量体を用い高架橋密度の構造とするのが好ましい。1、2官能単量体と3官能以上の単量体を混合し塗工適性と硬化物の物性とを調整することもできる。以上のような1官能アクリレート系単量体としては、2−ヒドロキシアクリレート、2−ヘキシルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート等が挙げられる。2官能アクリレート系単量体としては、エチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート等が、3官能以上のアクリレート系単量体としてはトリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等が挙げられる。
【0097】
また、硬化物の可撓性、表面硬度等の物性を調節するために前記プレポリマー、オリゴマー、単量体の少なくとも1種に対して、次のような電離放射線非硬化性樹脂を1〜70重量%、好ましくは5〜50重量%混合して用いることができる。電離放射線非硬化性樹脂としては、ウレタン系、繊維素系、ポリエステル系、アクリル系、ブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル等の熱硬化性樹脂を用いることができ、特に可撓性の点から繊維素系、ウレタン系、ブチラールが好ましい。
【0098】
特に紫外線で硬化させる場合には前記電離放射線硬化性樹脂組成物に光重合開始剤として、アセトフェノン類、ベンゾヘェノン類、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、α−アミロキシムエステル、テトラメチルメラウムモノサルファイド、チオキサントン類、および/又は光増感剤としてn−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等を混合して用いることもできる。光重合開始剤の量は、硬化性樹脂組成物100重量部に対して0.1〜5重量部であってよい。
【0099】
なお、ここで電離放射線とは、電磁波又は荷電粒子線のうち分子を重合、架橋し得るエネルギー量子を有するものを意味し、通常紫外線、電子線などが用いられる。紫外線源としては超高圧水銀燈、高圧水銀燈、低圧水銀燈、カーボンアーク、ブラックライトランプ、メタルハライドランプ等の光源を使用する。電子線源としては、コックロフトワルトン型、バンデグラフ型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、或いは直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器を使用し、100〜1000keV、好ましくは100〜300keVのエネルギーを持つ電子を照射する。
【0100】
熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、メラミン/尿素共縮合樹脂、珪素樹脂、ポリシロキサン樹脂等があり、これらに必要に応じて、架橋剤、重合開始剤等の硬化剤、重合促進剤、溶剤、粘度調整剤、体質顔料等を添加する。硬化剤として、通常、イソシアネートが不飽和ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂に、アミンがエポキシ樹脂に、メチルエチルケトンパーオキサイド、等の過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル等のラジカル開始剤が不飽和ポリエステル系樹脂に良く使用される。イソシアネートとしては、2価以上の脂肪族又は芳香族イソシアネートを使用できるが、熱変色防止、耐候性の点から脂肪族イソシアネートが望ましい。具体例としては、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等が挙げられる。
また、硬化反応を促進するために、必要に応じて塗布後に加熱してもよい。例えば、イソシアネート硬化ウレタン硬化型不飽和ポリエステル系樹脂又はポリウレタン系樹脂の場合は通常40〜80℃で1〜100時間程度、またポリシロキサン樹脂の場合は通常60〜150℃で1〜300分程度である。
コーティング層の厚さは1〜100μmであってよい。
【0101】
本発明の防汚性転写シートには、上記コーティング用の透明樹脂層の上に、要すれば、さらに接着剤層(d)が積層される。この接着剤層は、防汚性転写シートと樹脂成形品との接着性を向上する機能を有する。接着層に用いる樹脂としては、特に制限はなく、通常の転写シートに用いられる樹脂から適宜選択して用いることができる。例えば、ポリエステル−イソシアネート系、ウレタン系、アクリル系、酢酸ビニル系、塩化ビニル系、スチレンーブタジエン系、塩化ビニル酢酸ビニル系、エチレンー酢酸ビニル系、ポリエステル系、塩化ゴム系、塩素化ポリプロピレン系など有機溶剤型樹脂、エマルジョン系樹脂の単独またはそれらの2種以上の混合物を主成分とする樹脂から基材に対して適宜選択して採用される。接着層は、前記樹脂を有機溶剤や水で希釈して得た塗布液を、浸漬法、スピンコート法、スプレー法等により、前記コーティング層上に塗布し、乾燥して形成される。接着剤層の厚さは、特に制限はなく、通常0.3〜20μm程度の範囲から基材の表面状態などに応じて適宜選択して採用される。
本発明の防汚性転写シートには、上記層以外に、要すれば、機能性層を積層してよい。機能性層の例は、装飾層、帯電防止層などである。
【0102】
本発明には、基材シート(a)上に防汚組成物を塗布して、防汚層(b)を形成する工程、
防汚層(b)の上に重合性コーティング剤組成物を塗布して、コーティング層(c)を形成する工程、および
防汚組成物および重合性コーティング剤組成物を硬化する工程
を含んでなる、前記防汚性転写シートの製造方法が含まれる。
【0103】
本発明には、基材シート(a)上に防汚組成物を塗布および硬化して、防汚層(b)を形成する工程、防汚層(b)の上に重合性コーティング剤組成物を塗布および硬化して、コーティング層(c)を形成する工程、
を含んでなる、前記防汚性転写シートの製造方法が含まれる。塗布は、基材シートの上に防汚組成物を0.001〜1μmの厚さ、コーティング剤組成物を1〜100μmの厚さで塗布することが好ましい。
【0104】
本発明には、コーティング層(c)の硬化の前または後に、コーティング層(c)上に接着剤組成物を塗布し、接着剤層(d)を形成する工程を含む、前記防汚性転写シートの製造方法が含まれる。
【0105】
本発明の前記防汚性転写シートの製造方法で用いる防汚組成物については、先に説明したとおりであるが、パーフルオロポリエーテルウレタンアクリレート含有組成物が特に好ましい。
【0106】
本発明の転写シートは、種々の方法、例えば、インモールド成形、貼付、ロールコートなどによって物品に転写できる。本発明には、前記防汚性転写シートを用いる防汚性樹脂成形品の製造方法が含まれる。成形方法としては、インモールド成形、インサート成形、ロール成形等がある。本発明の実施態様としては、特にインモールド成形が好ましい。
【0107】
本発明には、金型の内表面に、防汚組成物を塗布し硬化する工程、重合性コーティング剤組成物を塗布し硬化する工程、および接着剤を塗布する工程、を順次経た後に、樹脂組成物を金型に充填してインモールド成形を行なう、防汚性樹脂成形品の製造方法が含まれる。
【0108】
本発明には、前記製造方法によって得られる、防汚性樹脂成形品が含まれる。これらの防汚性樹脂成形品としては、例えば、光学製品、自動車部品又は事務機器等の樹脂成形品表面の防汚性を必要とするさまざまな物品が挙げられる。物品の例としては、PDP、LCDなどディスプレーの前面保護板、反射防止板、偏光板、アンチグレア板、携帯電話、携帯情報端末などの機器、タッチパネルシート、DVDディスク、CD−R、MOなどの光ディスク、メガネレンズ、光ファイバーなどが挙げられる。
【実施例】
【0109】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。「%」及び「部」は、それぞれ、「重量%」及び「重量部」である。
合成例1
<パーフルオロポリエーテルウレタンアクリレート組成物(1)の50wt%HCFC225溶液の調製>
滴下ロート、コンデンサー、温度計、撹拌装置を装着した1Lの3口フラスコにSUMIDUR N3300(ヘキサメチレンジイソシアナートの環状3量体、住友バイエルウレタン社製、NCO基含有率21.9%)57gをHCFC225 165gに溶解させ、ジブチルスズジラウレート(和光純薬社製一級試薬)0.4g、を加え、空気中室温で、攪拌しながら4.5時間かけてCF3CF2O-(CF2CF2CF2O)10.9-CF2CF2CH2OH(純度86.9%、PFPEモノアルコール、ダイキン工業社製)244gをHCFC225 160gに溶かした溶液を滴下し、室温で6時間撹拌した。40〜45℃に加温し、ヒドロキシエチルアクリレート24.4gを10分で滴下し3時間撹拌した。IRによってNCOの吸収が完全に消失を確認し(生成物の19F-NMRからも−CF2-CH2OHの消失が確認された。)、パーフルオロポリエーテルウレタンアクリレート組成物(1)の50wt%HCFC225溶液を得た。
<パーフルオロポリエーテルウレタンアクリレート組成物(1)の単離>
温度計、撹拌装置、減圧蒸留装置を装着した1Lの3口丸底フラスコに合成例1で得られたパーフルオロポリエーテルウレタンアクリレート組成物(1)の50wt%HCFC225溶液400gに室温でヘキサンを200g加え12時間静置し沈殿させる。上層を分離し、p−tertブチルカテコールを0.5g、アセトン500gを加え撹拌しながら溶解させた。この溶液を30〜40℃に加温しアセトンを減圧留去させ、パーフルオロポリエーテルウレタンアクリレート組成物(1)187gを得た。
【0110】
合成例2
<パーフルオロポリエーテルウレタンアクリレート組成物(2)の50wt%HCFC225溶液の調製>
滴下ロート、コンデンサー、温度計、撹拌装置を装着した2Lの3口フラスコにSUMIDUR N3300(ヘキサメチレンジイソシアナートの環状3量体、住友バイエルウレタン社製、NCO基含有率21.9%)144gをHCFC225 200gに溶解させ、ジブチルスズジラウレート(和光純薬社製一級試薬)0.2g、を加え、空気中室温で、攪拌しながら4.5時間かけてCF3CF2O-(CF2CF2CF2O)10.9-CF2CF2CH2OH(純度86.9%、PFPEモノアルコール、ダイキン工業社製)202gをHCFC225 300gに溶かした溶液を滴下し、室温で6時間撹拌した。30〜40℃に加温し、ヒドロキシエチルアクリレート96gを30分で滴下し6時間撹拌した。IRによってNCOの吸収が完全に消失を確認し(生成物の19F-NMRからも−CF2-CH2OHの消失が確認された。)パーフルオロポリエーテルウレタンアクリレート組成物(2)の50wt%HCFC225溶液を得た。
<パーフルオロポリエーテルウレタンアクリレート組成物(2)の単離>
合成例1のパーフルオロポリエーテルウレタンアクリレート組成物(1)の単離と同様にして、パーフルオロポリエーテルウレタンアクリレート組成物(2)の50wt%HCFC225溶液500gからパーフルオロポリエーテルウレタンアクリレート組成物(2)222gを得た。
【0111】
実施例1
<ディップ法による第1層(防汚離型性付与膜)の製膜>
パーフルオロポリエーテルウレタンアクリレート組成物(1)、(2)を、2,2,3,3,-テトラフルオロ-1-プロパノールに溶解し0.1から0.5wt%濃度の溶液を調整し、さらに溶液中の固形分(パーフルオロポリエーテルウレタンアクリレート組成物(1)、(2))100部に対してIrgacure907(チバスペシャリティーケミカルズ製)3部を添加し第一層用浸漬溶液を調整した。
第一層用浸漬溶液に 0.3×5×5cmのPET板を数秒浸け、すみやかに引き上げ2,2,3,3,-テトラフルオロ-1-プロパノールを蒸発させコーティングし暗所で60℃で1〜2時間硬化した。

<第二層の塗布>
UV硬化型ハードコート剤ビームセット 575CB(荒川化学製)をスピンコーター(5500rpm)により5×5cmのPET板上に薄膜化し、GSミニコンベア型UV照射装置ASE-20(2KW)にて紫外線を照射し硬化した。(10m/minで1path 180mJ/cm

<パーフルオロポリエーテルウレタンアクリレート組成物が転写されたハードコート膜の調整>
PET板とハードコート剤硬化膜の界面にカッターの刃先を入れ剥離させることによりパーフルオロポリエーテルウレタンアクリレート組成物が転写されたハードコート膜を得た(図1参照)。
【0112】
実施例2
第1層の溶液中の固形分(パーフルオロポリエーテルウレタンアクリレート組成物(1)、(2))100部に対してIrgacure907(チバスペシャリティーケミカルズ製)3部を添加しない以外は、実施例1と同様にしてパーフルオロポリエーテルウレタンアクリレート組成物が転写されたハードコート膜を得た。
【0113】
実施例3
実施例1中の第1層パーフルオロポリエーテルウレタンアクリレート組成物の代わりにパーフルオロアクリレート(C8Rfアクリレート:CH2=C(−H)−C(=O)−O−(CH2)2−C817)を用いる以外は、実施例1と同様に実施して、パーフルオロアクリレート(C8Rfアクリレート)が転写されたハードコート膜を得た。
【0114】
実施例4
実施例1中の第1層パーフルオロポリエーテルウレタンアクリレート組成物の代わりにパーフルオロアクリレート(C6Rfアクリレート:CH2=C(−H)−C(=O)−O−(CH2)2−C613)を用いる以外は、実施例1と同様に実施して、パーフルオロアクリレート(C6Rfアクリレート)が転写されたハードコート膜を得た。
【0115】
比較例1
第1層にパーフルオロポリエーテルウレタンアクリレート組成物を塗布せず、直接PET板上にビームセット 575CB(荒川化学製)を塗布し硬化したものは、PET板とハードコート剤硬化膜の界面にカッターの刃先を入れるとはがれないか、もしくは細かい切片としてはがれ、界面の接触角評価サンプルは得られなかった。

尚、参考の為に硬化フィルム表面の評価を行ったところ水の静的接触角は66度、ヘキサデカンの静的接触角は9度であった。
【0116】
得られた転写面および離型後のPET(基材シート)表面の静的接触角評価結果を、パーフルオロポリエーテルウレタンアクリレート組成物防汚層に開始剤を3部添加した場合(表1、2)と、開始剤無添加の場合(表3,4)に分けて示した。
防汚層(パーフルオロポリエーテルウレタンアクリレート組成物)の存在により、水接触角、ヘキサデカン接触角ともに、防汚層なしの場合に比べて大きな値となっており、防汚層の存在によって、撥水性、撥油性ともに高くなっていることが示された。
【0117】
【表1】
【0118】
【表2】
【0119】
【表3】
【0120】
【表4】
【0121】
また、第1層がパーフルオロアクリレート(C8Rfアクリレート)の場合、およびパーフルオロアクリレート(C6Rfアクリレート)の場合の評価結果を、それぞれ表5および6に示した。
【0122】
【表5】
【0123】
【表6】
【産業上の利用可能性】
【0124】
本発明は、光学製品、自動車部品又は事務機器等の樹脂成形品表面の防汚性を必要とする物品にさまざまに使用できる。物品の例としては、PDP、LCDなどディスプレーの前面保護板、反射防止板、偏光板、アンチグレア板、携帯電話、携帯情報端末などの機器、タッチパネルシート、DVDディスク、CD−R、MOなどの光ディスク、メガネレンズ、光ファイバーなどが挙げられる。
図1