特許第5664567号(P5664567)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5664567
(24)【登録日】2014年12月19日
(45)【発行日】2015年2月4日
(54)【発明の名称】ステアリングホイール用エアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/203 20060101AFI20150115BHJP
   B60R 21/2346 20110101ALI20150115BHJP
【FI】
   B60R21/203
   B60R21/231 500
【請求項の数】3
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-18542(P2012-18542)
(22)【出願日】2012年1月31日
(65)【公開番号】特開2013-154830(P2013-154830A)
(43)【公開日】2013年8月15日
【審査請求日】2014年2月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】飯田 仁
(72)【発明者】
【氏名】林 幹根
(72)【発明者】
【氏名】石黒 直彦
(72)【発明者】
【氏名】長縄 明敏
【審査官】 木原 裕二
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−100838(JP,A)
【文献】 特開2011−126307(JP,A)
【文献】 特開2004−256091(JP,A)
【文献】 特開2002−029354(JP,A)
【文献】 米国特許第06022046(US,A)
【文献】 国際公開第2011/074423(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0116455(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16 − 21/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングホイールにおける収納部位内に折り畳まれて収納されるエアバッグと、該エアバッグに膨張用ガスを供給するインフレーターと、折り畳まれた前記エアバッグを覆うエアバッグカバーと、を備える構成とされて、
前記エアバッグが、
可撓性を有した袋状とされるとともに、前記インフレーターから吐出される膨張用ガスを、ガス流入口を経て内部に流入させて、前記ステアリングホイールの上面を略全面にわたって覆うように、略円板状に膨張するバッグ本体と、
可撓性を有したシート材から構成されるとともに、前記バッグ本体の前記ガス流入口の上方を覆うように、前記バッグ本体内に配置される整流用部材と、
を備える構成のステアリングホイール用エアバッグ装置であって、
前記整流用部材が、
4つの縁部を有する略四角形状のシート状とされ、隣接する該縁部間となる4箇所を取付部として、該取付部の部位で、前記バッグ本体における前記ガス流入口の周縁とともに前記収納部位側に取り付けられるとともに、4つの前記縁部の領域を、前記エアバッグの展開膨張時に、それぞれ、前記エアバッグカバーの意匠面より上方に位置させて、前記ガス流入口を経て内部に流入した膨張用ガスを、前記ステアリングホイールのリング部の外周縁側に向かうように、前記バッグ本体内に整流して流出させる前記ガス流出穴とする構成とし、さらに、
平らに展開した状態で対向する一対の縁部相互を重ねるように、該一対の縁部間の中央を通る連結基準線を基準として二つ折りした際に、外形形状を略同一として相互に重なる二枚の片側シート部からなる構成として、
二枚の前記片側シート部が、前記連結基準線を基準として、前記連結基準線を上縁側に配置させて相互に重ねた際に、
上縁側に、相互に結合されるとともに、前記連結基準線に沿った方向側の縁部側にかけて下方に延びるように傾斜する結合部を、備え、
下縁の中央に、相互に重なって前記ガス流出穴を形成する凹部を、備え、
前記連結基準線に沿った方向側の縁部を、他の前記ガス流出穴の周縁とするように、構成されていることを特徴とするステアリングホイール用エアバッグ装置。
【請求項2】
前記取付部が、平らに展開した状態の前記整流用部材の四隅付近に、配置され、
二枚の前記片側シート部が、前記連結基準線を基準として、相互に重ねた際の下縁において、前記整流用部材における前記取付部から前記凹部までの幅寸法を、前記エアバッグの展開膨張時に、前記凹部周縁を、前記エアバッグカバーの意匠面より上方に突出させて配置可能な寸法に、設定されていることを特徴とする請求項1に記載のステアリングホイール用エアバッグ装置。
【請求項3】
前記整流用部材が、前記連結基準線を前後方向に略沿わせるようにして、配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のステアリングホイール用エアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステアリングホイールの収納部位に折り畳まれて収納されるエアバッグと、エアバッグに膨張用ガスを供給するインフレーターと、折り畳まれたエアバッグを覆うエアバッグカバーと、を備える構成のステアリングホイール用エアバッグ装置に関し、特に、エアバッグが、膨張完了時にステアリングホイールの上面側を覆う略円板状のバッグ本体と、バッグ本体内に配置される整流用部材と、を備える構成のステアリングホイール用エアバッグ装置に、関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バッグ本体の内部に整流用部材を配置させたエアバッグを有するステアリングホイール用エアバッグ装置としては、整流用部材として、可撓性を有したシート材から構成されて、バッグ本体のガス流入口の上方を覆うように、配置される構成のものがあった。この従来のステアリングホイール用エアバッグ装置では、整流用部材は、バッグ本体のガス流入口周縁とともに、収納部位側に取り付けられるとともに、エアバッグの展開膨張時にエアバッグカバーの意匠面より上方に突出する構成として、複数のガス流出穴から、ガス流入口を中心として略放射状に、バッグ本体内に膨張用ガスを流出させる構成であった(例えば、特許文献1参照)。この従来のステアリングホイール用エアバッグ装置では、整流用部材は、ガス流入口側となる車体側シート部と、運転者側となる運転者側シート部と、を平らに展開した状態で重ねて、周縁相互を放射状となる位置で部分的に結合させ、車体側シート部と運転者側シート部との間の隙間から形成されるガス流出穴から、略放射状に膨張用ガスを流出させる構成であった。詳細には、この従来のステアリングホイール用エアバッグ装置では、車体側シート部において、運転者側シート部に結合される結合部位の間の領域に、外周縁を凹ませて形成される凹部が、形成されており、整流用部材内に流入した膨張用ガスは、ガス流出穴から、ステアリングホイールにおけるリング部の外周縁側に向かうように、バッグ本体内に流出される構成であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−29354公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のステアリングホイール用エアバッグ装置では、整流用部材が、ステアリングホイールのリング面に沿って重ねられる2枚の車体側シート部と運転者側シート部との周縁相互を部分的に結合させて形成されており、整流用部材内に流入した膨張用ガスは、略半球状に膨らむ運転者側シート部に沿って流れて、車体側シート部と運転者側シート部との間の隙間から構成されるガス流出穴から、バッグ本体内に流出されることとなる。すなわち、この従来のステアリングホイール用エアバッグ装置では、整流用部材のガス流出穴からバッグ本体内に流出される膨張用ガスの流出方向は、内部に膨張用ガスを流入させて湾曲する運転者側基材の湾曲量に起因することとなり、ガス流出穴から流出される膨張用ガスの流れを偏向させることが、容易ではなく、ガス流出穴からバッグ本体内に流出される膨張用ガスの流出方向を容易に調整する点に、改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、整流用部材のガス流出穴からバッグ本体内に流出される膨張用ガスの流出方向を容易に調整することが可能なステアリングホイール用エアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るステアリングホイール用エアバッグ装置は、ステアリングホイールにおける収納部位内に折り畳まれて収納されるエアバッグと、エアバッグに膨張用ガスを供給するインフレーターと、折り畳まれたエアバッグを覆うエアバッグカバーと、を備える構成とされて、
エアバッグが、
可撓性を有した袋状とされるとともに、インフレーターから吐出される膨張用ガスを、ガス流入口を経て内部に流入させて、ステアリングホイールの上面を略全面にわたって覆うように、略円板状に膨張するバッグ本体と、
可撓性を有したシート材から構成されるとともに、バッグ本体のガス流入口の上方を覆うように、バッグ本体内に配置される整流用部材と、
を備える構成のステアリングホイール用エアバッグ装置であって、
整流用部材が、
4つの縁部を有する略四角形状のシート状とされ、隣接する縁部間となる4箇所を取付部として、取付部の部位で、バッグ本体におけるガス流入口の周縁とともに収納部位側に取り付けられるとともに、4つの縁部の領域を、エアバッグの展開膨張時に、それぞれ、エアバッグカバーの意匠面より上方に位置させて、ガス流入口を経て内部に流入した膨張用ガスを、ステアリングホイールのリング部の外周縁側に向かうように、バッグ本体内に整流して流出させるガス流出穴とする構成とし、さらに、
平らに展開した状態で対向する一対の縁部相互を重ねるように、一対の縁部間の中央を通る連結基準線を基準として二つ折りした際に、外形形状を略同一として相互に重なる二枚の片側シート部からなる構成として、
二枚の片側シート部が、連結基準線を基準として、連結基準線を上縁側に配置させて相互に重ねた際に、
上縁側に、相互に結合されるとともに、連結基準線に沿った方向側の縁部側にかけて下方に延びるように傾斜する結合部を、備え、
下縁の中央に、相互に重なってガス流出穴を形成する凹部を、備え、
連結基準線に沿った方向側の縁部を、他のガス流出穴の周縁とするように、構成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明のステアリングホイール用エアバッグ装置では、バッグ本体内に配置される整流用部材が、4つの縁部を有する略四角形状のシート状とされ、隣接する該縁部間となる4箇所を、バッグ本体のガス流入口の周縁とともに収納部位側に取り付けられるとともに、平らに展開した状態で対向する一対の縁部間の中央を通る連結基準線を基準として二つ折りした際に外形形状を略同一として相互に重なる二枚の片側シート部から構成されている。そして、これらの相互に重ねられた状態の片側シート部において、連結基準線側には、相互に結合されて、連結基準線に沿った方向側の縁部側にかけて下方に延びるように傾斜する結合部が、形成されている。すなわち、本発明のステアリングホイール用エアバッグ装置では、整流用部材を構成する片側シート部は、ステアリングホイールのリング面と直交する方向側で重ねられるような構成となり、この片側シート部相互を結合させる結合部は、エアバッグの膨張時に、収納部位から上方に突出するように、エアバッグカバーの意匠面より上方となる位置に配置されるとともに、中央側を上方に位置させ、両端側を下方に位置させるように、片側シート部の縁部側にかけて下方に延びるように傾斜して形成されている。
【0008】
そして、本発明のステアリングホイール用エアバッグ装置では、ガス流入口から整流用部材内に流入した膨張用ガスは、ガス流入口の上方に配置される結合部に沿うように流れて、片側シート部における連結基準線に沿った方向側の縁部側のガス流出穴から、ステアリングホイールのリング部の外周縁側に向かうように、バッグ本体内に流出されることとなる。また、本発明のステアリングホイール用エアバッグ装置では、相互に重ねられている各片側シート部の下縁の中央にも、ガス流出穴を形成する凹部が、形成されている。すなわち、ガス流出穴は、片側シート部を穴状に切り抜くのではなく、片側シート部の下縁から連なるように切り欠いて形成されていることから、膨張時における片側シート部の結合部から凹部までの領域の曲率を、膨張時における結合部の傾斜状態(湾曲形状)と略一致させることができて、この凹部から構成されるガス流出穴からも、リング面に対する膨張用ガスの流出方向の傾きを、片側シート部の連結基準線に沿った方向側の縁部側に配置されるガス流出穴と、略一致させるようにして、ステアリングホイールのリング部の外周縁側に向かうように、膨張用ガスを、バッグ本体内に流出させることができる。
【0009】
その結果、本発明のステアリングホイール用エアバッグ装置では、整流用部材のガス流出穴からバッグ本体内に流出される膨張用ガスの流出方向は、整流用部材を構成する2枚の片側シート部の連結基準線近傍に配置される結合部の傾斜に起因することから、この結合部の傾斜量を変更するだけで、ガス流出穴から流出される膨張用ガスの流れの向きを偏向(膨張用ガスの流出方向のリング面に対する傾斜量を変化)させることが可能となる。そのため、例えば、リング径の異なるステアリングホイールに使用する場合にも、使用するステアリングホイールに応じて、ガス流出穴から流出される膨張用ガスの流出方向を、リング部の外周縁側に向かって流出させるように、容易に調整することができる。
【0010】
したがって、本発明のステアリングホイール用エアバッグ装置では、整流用部材のガス流出穴から流出される膨張用ガスの流出方向を容易に調整することができる。
【0011】
また、本発明のステアリングホイール用エアバッグ装置では、整流用部材は、内部に流入した膨張用ガスを、ガス流入口を中心として略放射状に配置される4つのガス流出穴から、ステアリングホイールのリング部の外周縁側に向かって略放射状に流出させる構成であることから、エアバッグの膨張初期に、バッグ本体を、運転者側に過度に突出することを抑制して、ステアリングホイールのリング面に沿って広く展開させることができる。
【0012】
さらに、本発明のステアリングホイール用エアバッグ装置において、取付部を、平らに展開した状態の整流用部材の四隅付近に、配置させ、
二枚の片側シート部を、連結基準線を基準として、相互に重ねた際の下縁において、整流用部材における取付部から凹部までの幅寸法を、エアバッグの展開膨張時に、凹部周縁をエアバッグカバーの意匠面より上方に突出させて配置可能な寸法に、設定することが好ましい。
【0013】
ステアリングホイール用エアバッグ装置を上記構成とすれば、エアバッグの展開膨張時に、整流用部材における凹部周縁の領域を、確実に、収納部位から上方に突出させることができて、エアバッグカバーの上方に位置する凹部(ガス流出穴)から、膨張用ガスを、円滑に、バッグ本体内に流出させることができる。
【0014】
さらにまた、上記構成のステアリングホイール用エアバッグ装置において、整流用部材を、連結基準線を前後方向に略沿わせるようにして、配置させる構成とすれば、ステアリングホイールのリング部を把持している運転者の両腕の近傍には、片側シート部の凹部周縁から構成されるガス流出穴が配置されることとなり、この片側シート部の凹部周縁から構成されるガス流出穴は、片側シート部の縁部により周縁を構成されるガス流出穴と比較して、ステアリングホイールの中心から外方への突出量が小さいことから、膨張時に、ガス流出穴から流出される膨張用ガスが、運転者の両腕側に向かって流出することを抑制することができて、好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態であるステアリングホイール用エアバッグ装置を示す概略平面図であり、膨張完了時のエアバッグを二点鎖線で示している。
図2図1のステアリングホイール用エアバッグ装置の車両搭載時の概略縦断面図であり、膨張完了時のエアバッグを二点鎖線で示している。
図3図1のエアバッグ装置に使用されるエアバッグを単体で膨張させた状態を示す前後方向に沿った概略縦断面図である。
図4図3のエアバッグを単体で膨張させた状態の左右方向に沿った概略縦断面図であり、図3のIV−IV部位に対応する。
図5図3のエアバッグを構成する布材を示す概略斜視図である。
図6図3のエアバッグに使用される整流用部材を平らに展開した状態の平面図である。
図7図6の整流用部材を、片側シート部を相互に重ねるように、連結基準線を基準として二つ折りした状態の正面図である。
図8図6の整流用部材をリテーナに取り付けた状態を示す平面図である。
図9図6の整流用部材をリテーナに取り付けた状態を示す底面図である。
図10図6の整流用部材をステアリングホイールに取り付けて単体で膨張させた状態の概略側面図である。
図11】実施形態のステアリングホイール用エアバッグ装置において、エアバッグが膨張を完了させた状態を示す概略縦断面図である。
図12】本発明の他の形態の整流用部材を示す図であり、二つ折りした状態の正面図と、ステアリングホイールに取り付けて単体で膨張させた状態の概略側面図と、を示す。
図13】本発明のさらに他の形態の整流用部材を示す図であり、二つ折りした状態の正面図と、ステアリングホイールに取り付けて単体で膨張させた状態の概略側面図と、を示す。
図14】本発明のさらに他の形態である整流用部材を、二つ折りした状態の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。実施形態のステアリングホイール用エアバッグ装置(以下、単に「エアバッグ装置」と省略する)Mは、図1,2に示すようなステアリングホイールWに搭載されている。
【0017】
なお、実施形態において、前後・上下・左右の方向は、特に断らない限り、車両に搭載されたステアリングホイールWの直進操舵時を基準とするものであり、ステアリングホイールWを組み付けるステアリングシャフトSS(図2参照)の軸方向に沿った上下を上下方向とし、ステアリングシャフトSSの軸直交方向である車両の前後を前後方向とし、ステアリングシャフトSSの軸直交方向である車両の左右を左右方向として、前後・上下・左右の方向を示すものである。
【0018】
ステアリングホイールWは、図1,2に示すように、実施形態の場合、ステアリングホイール本体1と、ステアリングホイール本体1の中央のボス部Bの上部に配置されるエアバッグ装置Mと、を備えて構成されている。ステアリングホイール本体1は、操舵時に把持する円環状のリング部Rと、リング部Rの略中央に配置されてステアリングシャフトSSに連結されるボス部Bと、ボス部Bとリング部Rとを連結する複数(実施形態の場合、4本)のスポーク部Sと、を備えて構成されている。
【0019】
ステアリングホイール本体1は、図2に示すように、リング部R、ボス部B、スポーク部Sの各部を連結するように配置されて、アルミニウム合金等の金属からなる芯金2を、備えている。芯金2におけるリング部Rの部位と、各スポーク部Sのリング部R側の部位と、には、合成樹脂製の被覆層5が、被覆されている。また、芯金2におけるボス部Bの部位には、ステアリングシャフトSSを挿入させてナットN止めするための鋼製のボス3が、配設されている。また、ステアリングホイール本体1の下部には、ボス部Bの下方を覆う合成樹脂製のロアカバー7が、配設されている。
【0020】
実施形態のエアバッグ装置Mは、図1,2に示すように、ステアリングホイールWの略中央のボス部Bに配置されるもので、折り畳まれて収納されるエアバッグ22と、エアバッグ22に膨張用ガスを供給するインフレーター10と、エアバッグ22とインフレーター10とを収納して保持する収納部位としてのケース11と、折り畳まれたエアバッグ22を覆うエアバッグカバー15と、エアバッグ22とインフレーター10とをケース11に取り付けるためのリテーナ9と、を備えて構成されている。なお、ボス部Bは、ステアリングホイールWにおけるリング部Rの中心から若干後方にずれた位置に配置されていることから、エアバッグ22も、中心を、リング部Rの中心から若干後方にずれた位置で、搭載されることとなり、エアバッグ22は、中心を、リング部Rの中心から若干後方にずらした状態で、リング部Rを略全面にわたって覆うように膨張することとなる(図1,2の二点参照)。
【0021】
リテーナ9は、インフレーター10の円柱状の本体部10aを下方から挿入可能な略四角環状の押え板部9aの四隅に、下方へ突出するボルト9bを配設させて構成されている。このリテーナ9は、ボルト9bを、エアバッグ22の後述する取付孔26から突出させた状態で、エアバッグ22内に収納されて、ケース11への取付時に、各ボルト9bを、ケース11の底壁部12を経て、インフレーター10のフランジ部10cから突出させて、ナット(図示せず)止めすることにより、押え板部9aと底壁部12とによってエアバッグ22のガス流入口25周縁を挟持しつつ、インフレーター10をケース(収納部位)11に取付固定している。
【0022】
インフレーター10は、上部に膨張用ガスを吐出するガス吐出口10bを配設させた略円柱状の本体部10aと、本体部10aの外周面から突出して配置される略四角板状のフランジ部10cと、を備えている。フランジ部10cには、リテーナ9のボルト9bを貫通させる図示しない貫通孔が、形成されている。
【0023】
収納部位としてのケース11は、板金製として、図2に示すように、長方形板状の底壁部12と、底壁部12の外周縁から上下に延びる側壁部13と、を備えて構成されている。底壁部12には、図2に示すように、インフレーター10の本体部10aを下方から挿入可能に円形に開口した挿通孔12aが形成されるとともに、その周囲に、リテーナ9のボルト9bを貫通させる4つの貫通孔12bが、形成されている(図1参照)。側壁部13の上端には、外方へ延びる取付片13aが形成され(図1参照)、取付片13aには、図示しないホーンスイッチ機構の取付基板が取り付けられている。そして、実施形態の場合、この図示しない取付基板を利用して、ケース11がステアリングホイールWの芯金2に取付固定されて、エアバッグ装置Mが、ステアリングシャフトSSに装着済みのステアリングホイール本体1へのボス部Bの上部に搭載されることとなる。また、ケース11の側壁部13には、リベット19等を利用して、エアバッグカバー15の側壁部18が取り付けられている(図2参照)。
【0024】
エアバッグカバー15は、合成樹脂製として、ケース11に収納されたエアバッグ20の上方を覆う天井壁部16と、天井壁部16の外周縁付近から下方へ延びる略四角筒形状の側壁部18と、を備えて構成されている。天井壁部16には、膨張するエアバッグに押されて前後に開く2枚の扉部17が、形成されている。そして、実施形態では、エアバッグカバー15の意匠面16aは、天井壁部16の外表面(上側面)から構成されている(図2参照)。
【0025】
エアバッグ22は、可撓性を有した袋状のバッグ本体23と、バッグ本体23内に配置される整流用部材31と、を備えている。
【0026】
バッグ本体23は、図1,2の二点鎖線に示すように、膨張完了形状を、ステアリングホイールWの上面を略全面にわたって覆うような略円板状として、構成されている。バッグ本体23は、可撓性を有したシート材から構成されて、内部に膨張用ガスを流入させて膨張可能な袋状として構成されるもので、実施形態の場合、ポリアミド糸やポリエステル糸等からなる可撓性を有した織布から形成されている。実施形態の場合、バッグ本体23は、外形形状を同一の略円形として、膨張完了時にステアリングホイールW側に配置される車体側壁部24と、膨張完了時に運転者側に配置される運転者側壁部29と、を有し、この車体側壁部24と運転者側壁部29との外周縁相互を、縫合糸を用いて縫着(結合)させることにより、袋状として構成されている(図3,4参照)。
【0027】
車体側壁部24の中央には、図5に示すように、インフレーター10の本体部10aを下方から挿入させて、インフレーター10のガス吐出口10bから吐出される膨張用ガスを、バッグ本体23内に流入させるためのガス流入口25が、円形に開口して形成されている。また、車体側壁部24におけるガス流入口25の周縁には、リテーナ9に形成されるボルト9bを挿通させるための取付孔26が、4個形成されている。さらに、車体側壁部24において、ガス流入口25の前方となる領域には、バッグ本体23内に流入した余剰の膨張用ガスを排気するためのベントホール27が、左右対称となる2箇所に、形成されている。
【0028】
整流用部材31は、可撓性を有したシート材から構成されるもので、図3,4に示すように、バッグ本体23のガス流入口25の上方を覆うように、バッグ本体23内に配置されている。整流用部材31は、4つの縁部(前縁31a,後縁31b,左縁31c,右縁31d)を有する略四角形状のシート状とされている。詳細には、実施形態の場合、整流用部材31は、図6に示すように、後述する結合部38の部位を一方に倒すようにして平らに展開させた形状を、略正方形状とされるとともに、前縁31a,後縁31bを左右方向に略沿わせ、左縁31c,右縁31dを前後方向に略沿わせるようにして、バッグ本体23に取り付けられている。すなわち、整流用部材31において、後述する連結基準線CLと交差する前縁31a,後縁31bは、略直線状とされるとともに、相互に平行とされている。この整流用部材31は、隣り合う縁部(前縁31a,後縁31b,左縁31c,右縁31d)間となる4箇所を、ケース11側に取り付けられる取付部32としている。実施形態の整流用部材31では、取付部32は、四隅に配置され、この四隅の取付部32の部位に、それぞれ、リテーナ9の各ボルト9bを挿通可能な取付孔32aが、形成されている。
【0029】
また、実施形態の整流用部材31は、1枚のシート材から構成されるもので、図6に示すように、平らに展開した状態で相互に対向する一対の左縁31c,右縁31dを重ねるように、左縁31c,右縁31d間の中央を通る連結基準線CPを基準として二つ折りした際に、外形形状を同一の略長方形状として相互に重なる二枚の片側シート部37,37から構成されている(図7参照)。実施形態の場合、片側シート部37,37は、前後方向側で幅広な略長方形状とされている。
【0030】
各片側シート部37,37には、整流用部材31を、連結基準線CLを基準として二つ折りした状態で、連結基準線CLを上縁側に配置させた際の上縁37a側に、片側シート部37,37を相互に結合させる結合部38が、配置されている。結合部38は、実施形態の場合、片側シート部37,37を、縫合糸を用いて縫着させることにより、形成されるもので、片側シート部37の前後の略全域にわたって、形成されている。また、この結合部38は、図7に示すように、前後方向の縁部(端部38a,38b)側にかけて下方に延びるように、傾斜して、形成されている。詳細には、実施形態の場合、結合部38は、前後方向の中央を中心として対称形とされるもので、前後の中央38cを上方に位置させ、前後の端部38a,38b側を下方に位置させるように、なだらかに湾曲して形成されている。結合部38は、中央38cを、各片側シート部37の上縁37aに近接させるようにして、配置されるもので、端部38a,38bにかけての傾斜量(湾曲量)を、エアバッグ22の展開膨張時に、整流用部材31内に流入した膨張用ガスを、後述する第1ガス流出穴34から、ステアリングホイールWのリング部Rの外周縁側に向かって流出可能な傾斜量に、設定されている。
【0031】
また、各片側シート部37において、連結基準線CL(結合部38)を上縁37a側に配置させた状態での下縁37bの中央には、下縁37bから連なるように、下縁37bを略逆V字状に切り欠くようにして、凹部39が、形成されている。なお、凹部39の切欠量は、実施形態の場合、整流用部材31の膨張時において、凹部39により周縁を構成される第2ガス流出穴35の開口面積を、後述する第1ガス流出穴34の開口面積と略一致させるように、設定されている。また、実施形態の場合、整流用部材31は、バッグ本体23を構成する車体側壁部24及び運転者側壁部29と同様に、ポリアミド糸やポリエステル糸等からなる可撓性を有した織布から形成されている。なお、実施形態の整流用部材31において、連結基準線CLは、各片側シート部37の上縁37aと一致している(図6,7参照)。
【0032】
実施形態の整流用部材31は、図6に示すように、左縁31c,右縁31d相互を離隔させつつ、結合部38の領域を、端部38a,38b相互を結ぶような線で折り返すようにして一方に倒して平らに展開した状態で、左右方向側(後述する連結基準線CLと直交する方向側)の幅寸法W1を、前後方向側の幅寸法W2よりも僅かに大きく設定されている。そして、実施形態の場合、整流用部材31は、前後左右の幅寸法W1,W2を、エアバッグ22(バッグ本体23)の展開膨張時に、図11に示すように、取付部32間の領域となる4つの縁部(前縁31a,後縁31b,左縁31c,右縁31d)側の領域をエアバッグカバー15の意匠面16aより上方に位置させることが可能な寸法に、設定されている。さらに具体的には、各片側シート部37は、取付部32を構成する下縁37b側の両端側から凹部39までの幅寸法W3(図7参照)を、エアバッグ22の展開膨張時に、凹部39周縁をエアバッグカバー15の意匠面16aより上方に突出させて配置可能な寸法に、設定されている。
【0033】
そして、実施形態の整流用部材31では、四隅の取付部32間の領域である4つの縁部(前縁31a,後縁31b,左縁31c,右縁31d)側の領域を、ガス流出穴(第1ガス流出穴34,第2ガス流出穴35)として、これらのガス流出穴(第1ガス流出穴34,第2ガス流出穴35)から、内部に流入した膨張用ガスGを、前後左右の四方で、かつ、ステアリングホイールWのリング部Rの外周縁側に向かうように、バッグ本体23内に整流して流出させることとなる。具体的には、整流用部材31において、連結基準線CLに沿った方向側の縁部となる前縁31a側と後縁31b側とにおいては、図10,11に示すように、整流用部材31の前縁31a及び後縁31b自体が、前後両側に膨張用ガスを流出させる第1ガス流出穴34,34の周縁を構成することとなる。また、整流用部材31において、連結基準線CLと略直交する方向側の縁部となる左縁31c側と右縁31d側とにおいては、図10,11に示すように、片側シート部37に形成される凹部39の周縁が、左右両側に膨張用ガスを流出させる第2ガス流出穴35,35の周縁を構成することとなる。
【0034】
詳細には、整流用部材31は、図8,9に示すように、四隅に配置される各取付部32の取付孔32aにリテーナ9の各ボルト9bを挿通させて、片側シート部37における下縁37b側の領域を縮めるようにして、リテーナ9を利用してケース11の底壁部12に取り付けられることから、インフレーター10の作動時に、内部に膨張用ガスを流入させて、前後両側を開口させた略筒状に膨らむとともに、前後の中央を大きく上方に突出させるように、前後方向側で屈曲させるように膨らむこととなる。そのため、膨張した整流用部材31においては、結合部38は、中央をさらに上方に突出させるように大きく湾曲されることとなり、前縁31a及び後縁31bは、上側を外方に向けるように上下方向に対して傾斜しつつ(前後両縁側の開口からなる第1ガス流出穴34の開口面を上下方向に対して傾斜しつつ)、エアバッグカバー15の意匠面16aから大きく上方に突出することとなる。そして、実施形態のエアバッグ22では、図11に示すように、整流用部材31の前縁31a側と後縁31b側との開口において、エアバッグカバー15の意匠面16aより上方に突出している領域を、第1ガス流出穴34とし、整流用部材31の前後の中央付近における左側と右側とにおいて、エアバッグカバー15の意匠面16aより上方に突出している凹部39の領域から構成される開口を、第2ガス流出穴35として、第1ガス流出穴34,第2ガス流出穴36から前後左右に向かって膨張用ガスGが流出されることとなる。
【0035】
次に、実施形態のエアバッグ装置Mの車両への搭載について説明すると、ボルト9bを取付孔32aから突出させるようにして、整流用部材31を取り付けた状態のリテーナ9を、予め製造しておいたバッグ本体23の内部に、ガス流入口25を利用して挿入させ、取付孔26から各ボルト9bを突出させる。このとき、整流用部材31の各取付部32は、リテーナ9の押え板部9aとガス流入口25の周縁部位との間に介在されることとなる。その後、バッグ本体23を、車体側壁部24と運転者側壁部29とを重ねるように平らに展開した状態から、ケース11内に収納可能に折り畳み、折り崩れしないように、折り畳まれたエアバッグ22の周囲を、所定の折り崩れ防止材によりくるむ。次いで、リテーナ9の各ボルト9bを貫通孔12bから突出させるように、ケース11の底壁部12上に、エアバッグ22を収納し、さらに、インフレーター10の本体部10aを下方から底壁部12の挿通孔12aに挿入させ、フランジ部10cにリテーナ9の各ボルト9bを貫通させて、ナット止めすれば、ケース11に、エアバッグ22とインフレーター10とを取り付けることができ、同時に、整流用部材31をケース11の底壁部12に取り付けることができる。さらに、ケース11にエアバッグカバー15を被せて、リベット19等を利用して側壁部13,18相互を連結させることにより、ケース11にエアバッグカバー15を取り付け、その後、ケースの取付片13aに、図示しないホーンスイッチ機構を組み付ければ、エアバッグ装置Mを組み立てることができる。このエアバッグ装置Mは、予めステアリングシャフトSSに締結しておいたステアリングホイール本体1に対して、ホーンスイッチ機構の図示しない取付基板を利用して、取り付ければ、車両に搭載することができる。
【0036】
エアバッグ装置Mの車両への搭載後、走行中の車両が衝突すれば、インフレーター10が、ガス吐出口10bから膨張用ガスを吐出させるように作動して、エアバッグ22(バッグ本体23)が、膨張用ガスを内部に流入させて膨張し、エアバッグカバー15に形成された扉部17を押し開き、ケース11から突出して、図1,2の二点鎖線、及び、図11に示すように、ステアリングホイールWの上面側を略全面にわたって覆うように、膨張を完了させることとなる。
【0037】
そして、実施形態のエアバッグ装置Mでは、バッグ本体23内に配置される整流用部材31が、4つの縁部(前縁31a,後縁31b,左縁31c,右縁31d)を有する略四角形状のシート状として、隣接する縁部(前縁31a,後縁31b,左縁31c,右縁31d)間となる4箇所(実施形態の場合、四隅)をバッグ本体23のガス流入口25の周縁とともにケース11側に取り付けられるとともに、平らに展開した状態で対向する一対の左縁31c,右縁31d間の中央を通る連結基準線CLを基準として二つ折りした際に外形形状を略同一として相互に重なる二枚の片側シート部37,37から構成されている。そして、これらの相互に重ねられた状態の片側シート部37において、連結基準線CL側(上縁37a側)には、相互に結合されて、連結基準線CLに沿った方向側である前後方向の縁部(前縁31a,後縁31b)側にかけて下方に延びるように傾斜する結合部38が、形成されている。すなわち、実施形態のエアバッグ装置Mでは、整流用部材31を構成する片側シート部37,37は、ステアリングホイールWのリング面Raと直交する方向側で重ねられるような構成となり、この片側シート部37,37相互を結合させる結合部38は、エアバッグ22の膨張時に、ケース11から上方に突出するように、エアバッグカバー15の意匠面16aより上方となる位置に配置されるとともに、中央38c側を上方に位置させ、両方の端部38a,38b側を下方に位置させるように、片側シート部37の縁部側にかけて下方に延びるように傾斜して形成されている。
【0038】
そして、実施形態のエアバッグ装置Mでは、バッグ本体23のガス流入口25から整流用部材31内に流入した膨張用ガスGは、ガス流入口25の上方に配置される結合部38に沿うように流れて、片側シート部37における連結基準線CLに沿った方向側(前後方向側)の縁部である前縁31a,後縁31b側の第1ガス流出穴34,34から、ステアリングホイールWのリング面Raに対して傾斜して、ステアリングホイールWのリング部Rの外周縁側に向かうように、バッグ本体23内に流出されることとなる。また、実施形態のエアバッグ装置Mでは、各片側シート部37の下縁37b(整流用部材31における左縁31c,右縁31d)の中央にも、第2ガス流出穴35を形成する凹部39が、形成されている。この第2ガス流出穴35は、片側シート部37を穴状に切り抜くのではなく、片側シート部37の下縁37bから連なるように切り欠いて形成されていることから、膨張時における片側シート部37の結合部38から凹部39までの領域の曲率を、膨張時における結合部38の傾斜状態(湾曲形状)と略一致させることができて、この凹部39から構成される第2ガス流出穴35からも、リング面Raに対する膨張用ガスの流出方向の傾きを、片側シート部37の端縁側に配置される第1ガス流出穴34と、略一致させるようにして、ステアリングホイールWのリング部Rの外周縁側に向かうように、膨張用ガスGを、バッグ本体23内に流出させることができる。
【0039】
その結果、実施形態のエアバッグ装置Mでは、整流用部材31に形成される第1ガス流出穴34,第2ガス流出穴35からバッグ本体23内に流出される膨張用ガスの流出方向は、整流用部材31を構成する2枚の片側シート部37の連結基準線CL近傍に配置される結合部38の傾斜に起因することから、この結合部38の傾斜量を変更するだけで、第1ガス流出穴34,第2ガス流出穴35から流出される膨張用ガスの流れの向きを偏向(膨張用ガスの流出方向のリング面Raに対する傾斜量を変化)させることが可能となる。例えば、図12に示すように、上縁37aから結合部38Aの端部38a,38bまでの距離D2を、上述の整流用部材31における上縁37aから結合部38Aの端部38a,38bまでの距離D1(図7参照)より大きくして、結合部38Aの傾斜量を大きくした整流用部材31Aを使用すれば、各第1ガス流出穴34A,第2ガス流出穴35Aからの膨張用ガスの流出方向のリング面Raに対する傾斜量を大きくすることができて、図12のBに二点鎖線で示す径の小さなリング部R1に好適となり、逆に、図13に示すように、上縁37aから結合部38Bの端部38a,38bまでの距離D3を、上述の整流用部材31における上縁37aから結合部38Aの端部38a,38bまでの距離D1より小さくして、結合部38Bの傾斜量を小さくした整流用部材31Bを使用すれば、各第1ガス流出穴34B,第2ガス流出穴35Bからの膨張用ガスの流出方向のリング面Raに対する傾斜量を小さくすることができて、図13のBに二点鎖線で示す径の大きなリング部R2に好適となる。そのため、実施形態のエアバッグ装置Mでは、例えば、リング径の異なるステアリングホイールに使用する場合にも、使用するステアリングホイールに応じて、第1ガス流出穴34,第2ガス流出穴35から流出される膨張用ガスの流出方向を、リング部Rの外周縁側に向かって流出させるように、容易に調整することができる。
【0040】
したがって、実施形態のエアバッグ装置Mでは、整流用部材31の第1ガス流出穴34,第2ガス流出穴35からバッグ本体23内に流出される膨張用ガスGの流出方向を容易に調整することができる。
【0041】
また、実施形態のエアバッグ装置Mでは、整流用部材31は、内部に流入した膨張用ガスを、ガス流入口25を中心として略放射状に配置される4つのガス流出穴(第1ガス流出穴34,第2ガス流出穴35)から、ステアリングホイールWのリング部Rの外周縁側に向かって前後左右に略放射状に流出させる構成であることから、エアバッグ22の膨張初期に、バッグ本体23を、運転者側に過度に突出することを抑制して、ステアリングホイールWのリング面Raに沿って広く展開させることができる。
【0042】
さらに、実施形態のエアバッグ装置Mでは、二枚の片側シート部37を、連結基準線CLを基準として相互に重ねた際の下縁37bにおいて、整流用部材31における取付部32から凹部39までの幅寸法W3を、エアバッグ22の展開膨張時に、凹部39周縁をエアバッグカバー15の意匠面16aより上方に突出させて配置可能な寸法に、設定している。そのため、エアバッグ22の展開膨張時に、図11に示すように、整流用部材31における凹部39周縁の領域全体を、確実に、ケース11から上方に突出させることができて、エアバッグカバー15の上方に位置する凹部39(第2ガス流出穴35)から、膨張用ガスを、円滑に、バッグ本体23内に流出させることができる。勿論、このような点を考慮しなければ、整流用部材における取付部から凹部までの幅寸法を小さく設定し、エアバッグの展開膨張時に、凹部周縁の一部のみを、エアバッグカバーの意匠面より上方に突出させるような構成としてもよい。
【0043】
また、実施形態では、第2ガス流出穴35を構成する凹部39は、片側シート部37の下縁37bを、略逆V字形状に切り欠いて形成されているが、凹部の切欠形状はこれに限られるものではなく、例えば、下縁からスリット状に切れ目を入れ、この切れ目から凹部を構成してもよい。なお、実施形態では、凹部39の切欠量は、整流用部材31の膨張時において、凹部39により周縁を構成される第2ガス流出穴35の開口面積を、第1ガス流出穴34の開口面積と略一致させるように、設定されているが、勿論、これに限られるものではなく、凹部により周縁を構成される第2ガス流出穴の開口面積を、第1ガス流出穴の開口面積より小さくするように、凹部の切欠量を設定してもよい。
【0044】
さらにまた、実施形態のエアバッグ装置Mでは、整流用部材31を、連結基準線CLを前後方向に略沿わせるようにして、配置させていることから、ステアリングホイールWのリング部Rを把持している運転者の両腕の近傍には、片側シート部37の凹部39から構成される第2ガス流出穴35が配置されることとなり、第2ガス流出穴35は、前縁31a,後縁31bにより周縁を構成される第1ガス流出穴34と比較して、ステアリングホイールWの中心から外方への突出量が小さいことから、膨張時に、ガス流出穴35から流出される膨張用ガスが、運転者の両腕側に向かって流出することを抑制することができる。勿論、このような点を考慮しなければ、整流用部材31を、連結基準線CLを左右方向に略沿わせるようにして、配置させてもよい。なお、実施形態では、片側シート部37に形成される結合部38は、前後対称形とされて、前後に配置される第1ガス流出穴34,34は、開口面積を略一致させて構成されているが、例えば、膨張初期にステアリングホイールと運転者の腹部との間に迅速に展開させるために、結合部の傾斜量を前後で異ならせて、後側に配置されるガス流出穴の開口面積を、前側に配置されるガス流出穴の開口面積より大きくするように、設定してもよい。
【0045】
なお、実施形態では、片側シート部37,37相互を結合させている結合部38は、なだらかに湾曲している構成であるが、結合部の外形形状はこれに限られるものではなく、例えば、略直線状に傾斜させる構成としてもよい。また、実施形態では、結合部38は、片側シート部37,37を、縫合糸を用いて縫着させることにより形成されているが、結合手段はこれに限られるものではなく、例えば、片側シート部相互を、接着剤等を用いて接合させることにより結合部を形成してもよい。さらに、実施形態では、整流用部材31は、1枚の基材から構成されているが、実施形態のごとく、結合部を、片側シート部の上縁側において前後の全域にわたって配設させる構成の場合には、別体からなる二枚の片側シート部を結合部の部位で縫着(結合)させることにより、整流用部材を形成してもよい。また、整流用部材を1枚のシート材から形成する場合、図14に示す整流用部材31Cのごとく、縫合糸を用いて片側シート部37C,37C相互を縫着させる縫合部43,43を、部分的に配設させる構成としてもよい。具体的には、図14の整流用部材31Cでは、基材42を二つ折りした際の連結基準線CL近傍となる片側シート部37Cの上縁側において、前縁側と後縁側との一部のみを、縫合糸を用いて縫着させて、前縁側と後縁側との一部に、縫合部43,43を配置させている。各縫合部43,43は、連結基準線CLに対して交差し、前後方向の縁部側にかけて下方に延びるように、傾斜して形成されるもので、このような構成の整流用部材31Cでは、結合部38Cは、基材42における連結基準線CL周縁の部位42aと、縫合部43,43と、から構成されることとなる。
【符号の説明】
【0046】
9…リテーナ、
10…インフレーター、
11…ケース(収納部位)、
12…底壁部(取付面)、
15…エアバッグカバー、
16…天井壁部、
16a…意匠面、
22…エアバッグ、
23…バッグ本体、
25…ガス流入口、
31…整流用部材、
32…取付部、
34…第1ガス流出穴、
35…第2ガス流出穴、
37…片側シート部、
37a…上縁、
37b…下縁、
38…結合部、
39…凹部、
CL…連結基準線、
R…リング部、
Ra…リング面、
W…ステアリングホイール、
M…ステアリングホイール用エアバッグ装置。
図1
図2
図3
図4
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