特許第5664580号(P5664580)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許56645803相コイル抵抗測定装置及び3相コイル抵抗測定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5664580
(24)【登録日】2014年12月19日
(45)【発行日】2015年2月4日
(54)【発明の名称】3相コイル抵抗測定装置及び3相コイル抵抗測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 27/02 20060101AFI20150115BHJP
【FI】
   G01R27/02 R
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-58600(P2012-58600)
(22)【出願日】2012年3月15日
(65)【公開番号】特開2013-190389(P2013-190389A)
(43)【公開日】2013年9月26日
【審査請求日】2014年2月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000100768
【氏名又は名称】アイシン・エィ・ダブリュ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 匠
(72)【発明者】
【氏名】片田 良二
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 敏浩
(72)【発明者】
【氏名】田阪 雅幸
(72)【発明者】
【氏名】上野 仁嗣
【審査官】 柳 重幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭52−129919(JP,A)
【文献】 特開昭60−219564(JP,A)
【文献】 特開昭60−130193(JP,A)
【文献】 特開平01−057056(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0114030(US,A1)
【文献】 英国特許出願公開第02485038(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 27/00−27/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スター結線される3相のコイルの各抵抗値を測定する装置であって、
直流電圧を印加する電源と、
該電源の電極間に対して、一端から順に直列接続された第1抵抗及び第2抵抗と、
上記電源の電極間に対して、上記第1抵抗及び上記第2抵抗と並列に、一端から順に直列接続された第1未知抵抗、第2未知抵抗、第3抵抗及び第4抵抗と、
上記第2未知抵抗及び上記第3抵抗に対して並列接続された第3未知抵抗と、
上記第1抵抗及び上記第2抵抗の中間点と、上記第2未知抵抗及び上記第3抵抗の中間点との間に接続された検流計と、
上記電源の電極間の抵抗値を測る抵抗計と、を備えており、
スター結線される3相のコイルを、上記第1未知抵抗、上記第2未知抵抗及び上記第3未知抵抗として接続し、
上記第1抵抗の抵抗値R1と上記第2抵抗の抵抗値R2とのいずれか、及び上記第3抵抗の抵抗値R3と上記第4抵抗の抵抗値R4とのいずれかをそれぞれ可変させて、上記検流計を流れる電流がほぼゼロになる状態を形成し、上記第1未知抵抗の抵抗値X1、上記第2未知抵抗の抵抗値X2及び上記第3未知抵抗の抵抗値X3を、R1:R2=X1:R4=X2:R3の関係式、並びに上記第1〜第4抵抗及び上記第1〜第3未知抵抗の合成抵抗Rxが上記抵抗計の抵抗値Rに等しいとした関係式から求めるよう構成されていることを特徴とする3相コイル抵抗測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の3相コイル抵抗測定装置において、上記第3抵抗の抵抗値R3及び上記第4抵抗の抵抗値R4は上記3相のコイルにおける各相のコイルの設計上の抵抗値に比べて、また上記第2抵抗の抵抗値R2は上記第1抵抗の抵抗値R1に比べて、100倍以上の抵抗値になるよう設定されており、
上記第1抵抗の抵抗値R1及び上記第4抵抗の抵抗値R4を固定する一方、上記第2抵抗の抵抗値R2及び上記第3抵抗の抵抗値R3を可変させて、上記検流計を流れる電流がほぼゼロになる状態を形成するよう構成されていることを特徴とする3相コイル抵抗測定装置。
【請求項3】
請求項2に記載の3相コイル抵抗測定装置において、上記第2抵抗及び上記第3抵抗は、デジタル式可変抵抗器によって構成されており、
上記第2抵抗、上記第3抵抗、上記検流計及び上記抵抗計は、制御装置によって入出力制御が可能であり、
該制御装置は、上記第2抵抗の抵抗値R2及び上記第3抵抗の抵抗値R3を段階的に可変させ、上記検流計における電流値がゼロを通過したときの上記第2抵抗の抵抗値R2、上記第3抵抗の抵抗値R3及び上記抵抗計の抵抗値Rを読み取って、上記第1未知抵抗の抵抗値X1、上記第2未知抵抗の抵抗値X2及び上記第3未知抵抗の抵抗値X3を求めるよう構成されていることを特徴とする3相コイル抵抗測定装置。
【請求項4】
スター結線される3相のコイルの各抵抗値を測定する方法であって、
直流電圧を印加する電源と、
該電源の電極間に対して、一端から順に直列接続された第1抵抗及び第2抵抗と、
上記電源の電極間に対して、上記第1抵抗及び上記第2抵抗と並列に、一端から順に直列接続された第1未知抵抗、第2未知抵抗、第3抵抗及び第4抵抗と、
上記第2未知抵抗及び上記第3抵抗に対して並列接続された第3未知抵抗と、
上記第1抵抗及び上記第2抵抗の中間点と、上記第2未知抵抗及び上記第3抵抗の中間点との間に接続された検流計と、
上記電源の電極間の抵抗値を測る抵抗計と、を用い、
スター結線される3相のコイルを、上記第1未知抵抗、上記第2未知抵抗及び上記第3未知抵抗として接続し、
上記第1抵抗の抵抗値R1と上記第2抵抗の抵抗値R2とのいずれか、及び上記第3抵抗の抵抗値R3と上記第4抵抗の抵抗値R4とのいずれかをそれぞれ可変させて、上記検流計を流れる電流がほぼゼロになる状態を形成し、上記第1未知抵抗の抵抗値X1、上記第2未知抵抗の抵抗値X2及び上記第3未知抵抗の抵抗値X3を、R1:R2=X1:R4=X2:R3の関係式、並びに上記第1〜第4抵抗及び上記第1〜第3未知抵抗の合成抵抗Rxが上記抵抗計の抵抗値Rに等しいとした関係式から求めることを特徴とする3相コイル抵抗測定方法。
【請求項5】
請求項4に記載の3相コイル抵抗測定方法において、上記第3抵抗の抵抗値R3及び上記第4抵抗の抵抗値R4は上記3相のコイルにおける各相のコイルの設計上の抵抗値に比べて、また上記第2抵抗の抵抗値R2は上記第1抵抗の抵抗値R1に比べて、100倍以上の抵抗値になるよう設定しておき、
上記第1抵抗の抵抗値R1及び上記第4抵抗の抵抗値R4を固定する一方、上記第2抵抗の抵抗値R2及び上記第3抵抗の抵抗値R3を可変させて、上記検流計を流れる電流がほぼゼロになる状態を形成することを特徴とする3相コイル抵抗測定方法。
【請求項6】
請求項5に記載の3相コイル抵抗測定方法において、上記第2抵抗及び上記第3抵抗は、デジタル式可変抵抗器によって構成しておき、
上記第2抵抗、上記第3抵抗、上記検流計及び上記抵抗計は、制御装置によって入出力制御を可能とし、
該制御装置は、上記第2抵抗の抵抗値R2及び上記第3抵抗の抵抗値R3を段階的に可変させ、上記検流計における電流値がゼロを通過したときの上記第2抵抗の抵抗値R2、上記第3抵抗の抵抗値R3及び上記抵抗計の抵抗値Rを読み取って、上記第1未知抵抗の抵抗値X1、上記第2未知抵抗の抵抗値X2及び上記第3未知抵抗の抵抗値X3を求めることを特徴とする3相コイル抵抗測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スター結線される3相のコイルの各抵抗値を測定する3相コイル抵抗測定装置及び3相コイル抵抗測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
3相モータ等に用いられる、スター結線がされた3相のコイルは、性能を低下させないよう互いに同じ抵抗値になるように製造している。この抵抗値は、例えば数十mΩ程度と小さく、製造後に専用の測定装置を用いて測定をしている。そして、U相及びV相のコイル、V相及びW相のコイル、W相及びU相のコイルの3つの結線部分の抵抗値を順次測定し、各相のコイルの抵抗値が適正であるかを判断している。
また、スター結線された3相のコイルの抵抗値を測定する装置ではないが、導体の抵抗を測定する電気抵抗測定装置としては、例えば、特許文献1に開示されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−5682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記専用の測定装置を用いたコイルの抵抗値の測定においては、2相のコイルに対して直流電圧を印加しているだけであり、測定する抵抗値が安定するまでに時間がかかる。また、スター結線における3つの結線部分に対して、順次測定を行う必要があり、測定に時間がかかる。さらに、測定するコイルの抵抗値が数十mΩと小さいため、この測定を安定させるためには、測定装置に更なる工夫が必要とされる。
【0005】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたもので、短時間かつ高い測定精度で3相のコイルの抵抗値を測定することができる3相コイル抵抗測定装置及び3相コイル抵抗測定方法を提供しようとして得られたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、スター結線される3相のコイルの各抵抗値を測定する装置であって、
直流電圧を印加する電源と、
該電源の電極間に対して、一端から順に直列接続された第1抵抗及び第2抵抗と、
上記電源の電極間に対して、上記第1抵抗及び上記第2抵抗と並列に、一端から順に直列接続された第1未知抵抗、第2未知抵抗、第3抵抗及び第4抵抗と、
上記第2未知抵抗及び上記第3抵抗に対して並列接続された第3未知抵抗と、
上記第1抵抗及び上記第2抵抗の中間点と、上記第2未知抵抗及び上記第3抵抗の中間点との間に接続された検流計と、
上記電源の電極間の抵抗値を測る抵抗計と、を備えており、
スター結線される3相のコイルを、上記第1未知抵抗、上記第2未知抵抗及び上記第3未知抵抗として接続し、
上記第1抵抗の抵抗値R1と上記第2抵抗の抵抗値R2とのいずれか、及び上記第3抵抗の抵抗値R3と上記第4抵抗の抵抗値R4とのいずれかをそれぞれ可変させて、上記検流計を流れる電流がほぼゼロになる状態を形成し、上記第1未知抵抗の抵抗値X1、上記第2未知抵抗の抵抗値X2及び上記第3未知抵抗の抵抗値X3を、R1:R2=X1:R4=X2:R3の関係式、並びに上記第1〜第4抵抗及び上記第1〜第3未知抵抗の合成抵抗Rxが上記抵抗計の抵抗値Rに等しいとした関係式から求めるよう構成されていることを特徴とする3相コイル抵抗測定装置にある(請求項1)。
【0007】
本発明の他の態様は、スター結線される3相のコイルの各抵抗値を測定する方法であって、
直流電圧を印加する電源と、
該電源の電極間に対して、一端から順に直列接続された第1抵抗及び第2抵抗と、
上記電源の電極間に対して、上記第1抵抗及び上記第2抵抗と並列に、一端から順に直列接続された第1未知抵抗、第2未知抵抗、第3抵抗及び第4抵抗と、
上記第2未知抵抗及び上記第3抵抗に対して並列接続された第3未知抵抗と、
上記第1抵抗及び上記第2抵抗の中間点と、上記第2未知抵抗及び上記第3抵抗の中間点との間に接続された検流計と、
上記電源の電極間の抵抗値を測る抵抗計と、を用い、
スター結線される3相のコイルを、上記第1未知抵抗、上記第2未知抵抗及び上記第3未知抵抗として接続し、
上記第1抵抗の抵抗値R1と上記第2抵抗の抵抗値R2とのいずれか、及び上記第3抵抗の抵抗値R3と上記第4抵抗の抵抗値R4とのいずれかをそれぞれ可変させて、上記検流計を流れる電流がほぼゼロになる状態を形成し、上記第1未知抵抗の抵抗値X1、上記第2未知抵抗の抵抗値X2及び上記第3未知抵抗の抵抗値X3を、R1:R2=X1:R4=X2:R3の関係式、並びに上記第1〜第4抵抗及び上記第1〜第3未知抵抗の合成抵抗Rxが上記抵抗計の抵抗値Rに等しいとした関係式から求めることを特徴とする3相コイル抵抗測定方法にある(請求項4)。
【発明の効果】
【0008】
上記3相コイル抵抗測定装置は、ダブルブリッジ回路を利用して3相のコイルの抵抗値を測定するものである。
3相コイル抵抗測定装置においては、スター結線される3相のコイルを、第1未知抵抗、第2未知抵抗及び第3未知抵抗として、測定回路中に接続する。そして、第1抵抗と第2抵抗とのいずれか、及び第3抵抗と第4抵抗とのいずれかの各抵抗値を可変させ、検流計を流れる電流がほぼゼロになる状態を形成する。
【0009】
そして、このときの第1〜第4抵抗の各抵抗値をR1,R2,R3,R4、抵抗計の抵抗値をR、第1〜第3未知抵抗の各抵抗値をX1,X2,X3とすると、R1:R2=X1:R4=X2:R3の関係式が成り立つ。そして、この関係式から、第1未知抵抗としてのいずれかの相のコイルの抵抗値、及び第2未知抵抗としての他のいずれかの相のコイルの抵抗値を求めることができる。また、第1〜第4抵抗及び第1〜第3未知抵抗の合成抵抗をRxとすると、Rx=Rの関係から、第3未知抵抗としての残りの相のコイルの抵抗値を求めることができる。
【0010】
このように、上記3相コイル抵抗測定装置においては、ダブルブリッジ回路を応用して、3相のコイルの抵抗値を測定することができる。そして、検流計を流れる電流がほぼゼロとなるように、第1抵抗と第2抵抗とのいずれか、及び第3抵抗と第4抵抗とのいずれかの2つの抵抗の抵抗値を可変させることにより、短時間で3相のコイルの抵抗値を測定することができる。また、3相のコイルの抵抗値の測定精度を向上させることができる。
【0011】
それ故、上記3相コイル抵抗測定装置によれば、短時間かつ高い測定精度で3相のコイルの抵抗値を測定することができる。
また、上記3相コイル抵抗測定方法によっても、装置の場合と同様に、短時間かつ高い測定精度で3相のコイルの抵抗値を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例にかかる、3相コイル抵抗測定装置を示す回路図。
図2】実施例にかかる、3相コイル抵抗測定装置を、図1とは異なる表示の仕方で示す回路図。
図3】実施例にかかる、3相コイル抵抗測定装置を示す構成図。
図4】実施例にかかる、3相コイル抵抗測定方法を示すフローチャート。
図5】実施例にかかる、他の3相コイル抵抗測定方法の一部を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
上述した3相コイル抵抗測定装置及び3相コイル抵抗測定方法における好ましい実施の形態につき説明する。
上記3相コイル抵抗測定装置及び3相コイル抵抗測定方法においては、上記第3抵抗の抵抗値R3及び上記第4抵抗の抵抗値R4は上記3相のコイルにおける各相のコイルの設計上の抵抗値に比べて、また上記第2抵抗の抵抗値R2は上記第1抵抗の抵抗値R1に比べて、100倍以上の抵抗値になるよう設定し、上記第1抵抗の抵抗値R1及び上記第4抵抗の抵抗値R4を固定する一方、上記第2抵抗の抵抗値R2及び上記第3抵抗の抵抗値R3を可変させて、上記検流計を流れる電流がほぼゼロになる状態を形成することができる(請求項2,5)。
この場合には、R1:R2=X1:R4=X2:R3の関係式における抵抗値の比をできるだけ大きくとることができる。そして、検流計を流れる電流がほぼゼロとなる状態を形成するための第2抵抗の抵抗値R2及び第3抵抗の抵抗値R3の調整を行いやすくすることができる。
【0014】
また、上記第2抵抗及び上記第3抵抗は、デジタル式可変抵抗器によって構成し、上記第2抵抗、上記第3抵抗、上記検流計及び上記抵抗計は、制御装置によって入出力制御を可能とし、該制御装置は、上記第2抵抗の抵抗値R2及び上記第3抵抗の抵抗値R3を段階的に可変させ、上記検流計における電流値がゼロを通過したときの上記第2抵抗の抵抗値R2、上記第3抵抗の抵抗値R3及び上記抵抗計の抵抗値Rを読み取って、上記第1未知抵抗の抵抗値X1、上記第2未知抵抗の抵抗値X2及び上記第3未知抵抗の抵抗値X3を求めることができる(請求項3,6)。
この場合には、制御装置によって、第2抵抗の抵抗値R2及び第3抵抗の抵抗値R3を段階的に可変させることにより、3相のコイルの抵抗値をデジタル的に短時間で測定することができる。
なお、上記検流計における電流値がゼロを通過したときとは、この電流値が、プラス側からマイナス側に向けて、あるいはマイナス側からプラス側に向けて0(mA)を挟んで変化したときのことをいう。この電流値は、場合によっては、丁度0(mA)になることもある。
【実施例】
【0015】
以下に、3相コイル抵抗測定装置及び3相コイル抵抗測定方法にかかる実施例につき、図面を参照して説明する。
本例の3相コイル抵抗測定装置1は、図1に示すごとく、スター結線される3相のコイル3U,3V,3Wの各抵抗値を測定するものである。3相コイル抵抗測定装置1は、次の電源21、第1〜第4抵抗31,32,33,34、第1〜第3未知抵抗41,42,43、検流計23及び抵抗計22を備えている。
【0016】
電源21は、測定回路10の両端に直流電圧を印加するよう構成されている。第1抵抗31と第2抵抗32とは、電源21の電極間に対して一端から順に直列接続されている。第1未知抵抗41、第2未知抵抗42、第3抵抗33及び第4抵抗34は、電源21の電極間に対して、第1抵抗31及び第2抵抗32と並列に、一端から順に直列接続されている。第3未知抵抗43は、第2未知抵抗42及び第3抵抗33に対して並列接続されている。検流計23は、第1抵抗31及び第2抵抗32の中間点P1と、第2未知抵抗42及び第3抵抗33の中間点P2との間に接続されている。抵抗計22は、電源21の電極間の抵抗値を測るよう構成されている。
【0017】
スター結線される3相のコイル3U,3V,3Wは、第1未知抵抗41、第2未知抵抗42及び第3未知抵抗43として接続される。
そして、3相コイル抵抗測定装置1は、第1抵抗31の抵抗値R1と第2抵抗32の抵抗値R2とのいずれか、及び第3抵抗33の抵抗値R3と第4抵抗34の抵抗値R4とのいずれかをそれぞれ可変させて、検流計23を流れる電流がほぼゼロになる状態を形成し、第1未知抵抗41の抵抗値X1、第2未知抵抗42の抵抗値X2及び第3未知抵抗43の抵抗値X3を、R1:R2=X1:R4=X2:R3の関係式A1、並びに第1〜第4抵抗31,32,33,34及び第1〜第3未知抵抗41,42,43の合成抵抗Rxが抵抗計22の抵抗値Rに等しいとした関係式A2から求めるよう構成されている。
【0018】
以下に、本例の3相コイル抵抗測定装置及び3相コイル抵抗測定方法につき、図1図5を参照して詳説する。
図1図2に示すごとく、3相コイル抵抗測定装置1は、3相回転電機のステータに配置された状態の3相のコイル3U,3V,3Wの各抵抗値を測定するものである。また、3相コイル抵抗測定装置1は、ダブルブリッジ回路を利用して3相のコイル3U,3V,3Wの各抵抗値を測定するものである。
本例の第1抵抗31及び第4抵抗34は、抵抗値が固定された固定抵抗である。また、第2抵抗32及び第3抵抗33は、抵抗値を変化させることができる可変抵抗である。第2抵抗32及び第3抵抗33は、デジタル式可変抵抗器によって構成されている。
【0019】
本例においては、第3抵抗33の抵抗値R3及び第4抵抗34の抵抗値R4は3相のコイル3U,3V,3Wにおける各相のコイルの設計上の抵抗値に比べて、また第2抵抗32の抵抗値R2は第1抵抗31の抵抗値R1に比べて、1000倍以上の抵抗値になるよう設定されている。
本例の3相のコイル3U,3V,3Wにおける各相のコイルの設計上の抵抗値は、45(mΩ)である。この抵抗値は、数(mΩ)の値でばらつく可能性がある。本例においては、第1抵抗31は、1(Ω)の固定抵抗とし、第2抵抗32は、2150(Ω)±100(Ω)の可変抵抗とし、第3抵抗33は、100(Ω)±5(Ω)の可変抵抗とし、第4抵抗34は、100(Ω)の固定抵抗としている。
【0020】
図3に示すごとく、第2抵抗32、第3抵抗33、検流計23及び抵抗計22は、GPIB等の入出力インターフェイス51を介して制御装置5によって入出力制御が可能である。
制御装置5は、第2抵抗32の抵抗値R2及び第3抵抗33の抵抗値R3をそれぞれ段階的に可変させ、検流計23における電流値Gがゼロに近い所定の許容範囲内になったときに、第2抵抗32の抵抗値R2、第3抵抗33の抵抗値R3及び抵抗計22の抵抗値Rを読み取るとともに、第1抵抗31の抵抗値R1及び第4抵抗34の抵抗値R4を用いて、第1未知抵抗41の抵抗値X1、第2未知抵抗42の抵抗値X2及び第3未知抵抗43の抵抗値X3を求めるよう構成されている。
【0021】
図2図3に示すごとく、抵抗計22は、電源21の電極間の電圧を測定する電圧計、及び電源21の電極間に流れる電流を測定する電流計を用いて、測定回路10全体の抵抗値Rを測定するよう構成されている。検流計23は、電流計によって構成されている。検流計23は、第1抵抗31及び第2抵抗32の中間点P1と、第2未知抵抗42及び第3抵抗33の中間点P2との間において、電圧が高い方から低い方へと流れる電流を測定するよう構成されている。
3相コイル抵抗測定装置1においては、スター結線された3相のコイル3U,3V,3Wにおける各相のコイルをそれぞれ接続する3つの端子部24が設けられている。3相のコイル3U,3V,3Wには、U相、V相、W相のコイルがあるが、3つの端子部24に対して、どの相のコイルを接続してもよい。そして、U相、V相、W相のコイル3U,3V,3Wは、接続する端子部24によって、第1〜第3未知抵抗41,42,43のいずれの未知抵抗とすることもできる。
【0022】
3相コイル抵抗測定装置1は、次のようにして、第2抵抗32及び第3抵抗33を段階的に可変させることにより、検流計23によって測定される電流値Gがほぼゼロになる状態を探り出す。
具体的には、本例においては、第3抵抗33を95(Ω)から105(Ω)まで0.1(Ω)ずつ段階的に可変させるとともに、第2抵抗32を2050(Ω)から2250(Ω)まで10(Ω)ずつ段階的に可変させる。また、この可変調整を行う際に、検流計23によって測定される電流値Gが、プラス側からマイナス側に向けて、あるいはマイナス側からプラス側に向けてゼロ(0(mA)になる値)を通過したときには、第3抵抗33を、ゼロを通過したときの抵抗値R3に固定し、第2抵抗32を2050(Ω)から2250(Ω)まで1(Ω)ずつ段階的に可変させる。そして、検流計23によって測定される電流値Gがゼロを通過したときに、電流値Gがゼロである平衡状態に達したとして、このときの第2抵抗32の抵抗値R2及び第3抵抗33の抵抗値R3を読み取る。
【0023】
第2抵抗32の抵抗値R2及び第3抵抗33の抵抗値R3の調整をして検流計23を流れる電流値Gがほぼゼロになったときに、第1未知抵抗41の抵抗値X1は、X1=R1・R4/R2から算出し、第2未知抵抗42の抵抗値X2は、X2=X1・R3/R4から算出する。
また、第3未知抵抗43の抵抗値X3は、次のように算出する。抵抗計22には、第1抵抗31及び第2抵抗32と、第1〜第3未知抵抗41,42,43、第3抵抗33及び第4抵抗34とが並列に接続されている。そして、第1〜第3未知抵抗41,42,43、第3抵抗33及び第4抵抗34による合成抵抗をSとすると、S=X1+{(X2+R3)・X3}/(X2+R3+X3)+R4となる。また、第1〜第4抵抗31,32,33,34及び第1〜第3未知抵抗41,42,43の合成抵抗Rxは、Rx={(R1+R2)・S}/(R1+R2+S)となる。これをSの式に変換すると、S={(R1+R2)・Rx}/(R1+R2−Rx)となる。そして、合成抵抗Rxを抵抗計22の抵抗値Rに置き換え、X1+{(X2+R3)・X3}/(X2+R3+X3)+R4={(R1+R2)・R}/(R1+R2−R)の等式をX2の式に変換して、X3を算出する。
【0024】
次に、本例の3相コイル抵抗測定方法について、図4のフローチャートを参照して具体的に説明する。
まず、3相コイル抵抗測定装置1における各端子部24に、ステータにおいてスター結線されたU相、V相、W相のコイル3U,3V,3Wをそれぞれ接続する。本例では、第1未知抵抗41としてV相のコイル3Vが接続され、第2未知抵抗42としてU相のコイル3Uが接続され、第3未知抵抗43としてW相のコイル3Wが接続される。
次いで、第2抵抗32の抵抗値R2と第3抵抗33の抵抗値R3とを一番低く設定する(図4のステップS1)。本例では、第2抵抗32の抵抗値R2を2050(Ω)に設定し、第3抵抗33の抵抗値R3を95(Ω)に設定する。この初期設定を行った状態においては、測定回路10における各抵抗31〜34,41〜43のバランスが取れていないため、検流計23の電流値Gが任意の値を示すと考えられる。
【0025】
次いで、第2抵抗32の抵抗値R2をΔr2として10(Ω)増加させ(S2)、検流計23の電流値Gがゼロを通過したか否かを判別する(S3)。このゼロを通過したかの意味は、検流計23を流れる電流値Gがプラス側からマイナス側に変化するか、マイナス側からプラス側に変化するという意味である。そして、第2抵抗32の抵抗値R2が最大になるまで(S4)、第2抵抗32の抵抗値R2をΔr2として10(Ω)ずつ増加させ(S2)、増加させるごとに、検流計23の電流値Gがゼロを通過したか否かを判別する(S3)。そして、第2抵抗32の抵抗値R2が最大になったときには(S4)、この第2抵抗32の抵抗値R2を最小に戻す(S5)。また、このときには、第3抵抗33の抵抗値R3をΔr3として0.1(Ω)増加させる(S6)。
【0026】
その後、第2抵抗32の抵抗値R2を再びΔr2として10(Ω)ずつ増加させていくとともに(S2)、第3抵抗33の抵抗値R3をΔr3として0.1(Ω)ずつ増加させていき(S6)、検流計23の電流値Gがゼロを通過するまでS2〜S6を繰り返す。
次いで、第2抵抗32の抵抗値R2及び第3抵抗33の抵抗値R3が特定の値になり、検流計23の電流値Gがゼロを通過したときには(S3)、第3抵抗33の抵抗値R3及び第2抵抗32の抵抗値R2を、ゼロ通過したときの値R3’,R2’に設定する(S7)。そして、第3抵抗33の抵抗値R3は、ゼロ通過したときの値に確定し、第2抵抗32の抵抗値R2は、変更幅を小さくして段階的に減少させていく。
【0027】
次いで、第2抵抗32の抵抗値R2をΔr2’として1(Ω)減少させ(S8)、検流計23の電流値Gがゼロを通過したかを判別する(S9)。そして、検流計23の電流値Gがゼロを通過するまでS8,S9を繰り返す。その後、検流計23の電流値Gがゼロを通過したときには、このときの第2抵抗32の抵抗値R2及び第3抵抗33の抵抗値R3を用い、第1〜第3未知抵抗41,42,43を上記関係式A1,A2に当てはめて算出する(S10)。こうして、U相、V相、W相のコイルの抵抗値を、第1〜第3未知抵抗41,42,43の抵抗値として測定することができる。
なお、各抵抗31〜34,41〜43の抵抗値が丁度バランスしたときには検流計23の電流値Gはゼロになるが、たいていの場合は、この電流値Gはゼロに近い値となる。
【0028】
また、図4におけるa部以降(第3抵抗33の抵抗値R3及び第2抵抗32の抵抗値R2をゼロ通過したときの値R3’,R2’に設定した後)は、次のようにして、U相、V相、W相のコイルの抵抗値を、第1〜第3未知抵抗41,42,43の抵抗値として測定することができる。
図5に示すごとく、ステップS7’の後には、第2抵抗32の抵抗値R2をΔr2’として1(Ω)減少させ(S8’)、検流計23の電流値Gが、ゼロを含む許容範囲内(−α≦G≦+α)になったかを判別する(S9’)。
ここで、検流計23の電流値Gの許容範囲±αは、U相、V相、W相の各相のコイルの抵抗値、抵抗値R2、抵抗値R3の各々を所定幅で変化させたときに、変化する量を算出し、U相、V相、W相の各相のコイルの抵抗値として測定される値の誤差が許容される範囲で設定することができる。
【0029】
次いで、第2抵抗32の抵抗値R2がゼロ通過時の値R2’からΔr2(10(Ω))を差し引いた値以下(R2≦R2’−Δr2)になったかを判別する(S10’)。
通常は、S8’,S9’及びS10’を繰り返すうちに、検流計23の電流値Gは、ゼロを含む許容範囲内(−α≦G≦+α)になると考えられる。このとき、電流値Gが許容範囲内になったときの第2抵抗32の抵抗値R2及び第3抵抗33の抵抗値R3を用い、第1〜第3未知抵抗41,42,43を上記関係式A1,A2に当てはめて算出する(S11’)。こうして、U相、V相、W相のコイルの抵抗値を、第1〜第3未知抵抗41,42,43の抵抗値として測定することができる。
【0030】
一方、S8’,S9’及びS10’を繰り返すうちに、第2抵抗32の抵抗値R2がR2≦R2’−Δr2になったときには、ゼロを通過したときの第3抵抗33の抵抗値R3の設定誤差が許容範囲を超えていると考えられる。この場合には、再調整(S12’)として、第3抵抗33の抵抗値R3を、Δr3(0.1(Ω))よりもさらに小さいΔr3’(例えば0.01(Ω))ずつ可変させて、上記ステップS1〜S6を繰り返すことができる。そして、上記ステップS7〜S10、又はステップS7’〜S11’を再び実行することができる。
【0031】
3相コイル抵抗測定装置1は、ダブルブリッジ回路を利用して3相のコイル3U,3V,3Wの抵抗値を測定するものである。
3相コイル抵抗測定装置1においては、ステータにおいてスター結線された3相のコイル3U,3V,3Wを、第1未知抵抗41、第2未知抵抗42及び第3未知抵抗43として、測定回路10中に接続する。そして、第2抵抗32の抵抗値R2及び第3抵抗33の抵抗値R3を可変させ、検流計23を流れる電流がほぼゼロになる状態を形成する。
【0032】
そして、このときの第1〜第4抵抗31,32,33,34の各抵抗値をR1,R2,R3,R4、抵抗計22の抵抗値をR、第1〜第3未知抵抗41,42,43の各抵抗値をX1,X2,X3とすると、R1:R2=X1:R4=X2:R3の関係式A1が成り立つ。そして、この関係式A1から、本例では、第1未知抵抗41としてのV相のコイル3Vの抵抗値、及び第2未知抵抗42としてのU相のコイル3Uの抵抗値を求めることができる。また、第1〜第4抵抗31,32,33,34及び第1〜第3未知抵抗41,42,43の合成抵抗をRxとすると、Rx=Rの関係から、第3未知抵抗43としてのW相のコイル3Wの抵抗値を求めることができる。
【0033】
このように、3相コイル抵抗測定装置1においては、ダブルブリッジ回路を応用して、3相のコイル3U,3V,3Wの抵抗値を測定することができる。そして、検流計23を流れる電流がほぼゼロとなるように、第2抵抗32の抵抗値R2及び第3抵抗33の抵抗値R3を可変させることにより、短時間で3相のコイル3U,3V,3Wの抵抗値を測定することができる。また、ダブルブリッジ回路の性質を利用して3相のコイル3U,3V,3Wの抵抗値の測定精度を向上させることができる。
それ故、3相コイル抵抗測定装置1及び3相コイル抵抗測定方法によれば、短時間かつ高い測定精度で3相のコイル3U,3V,3Wの抵抗値を測定することができる。
【符号の説明】
【0034】
1 3相コイル抵抗測定装置
22 抵抗計
23 検流計
3U,3V,3W 3相のコイル
31 第1抵抗
32 第2抵抗
33 第3抵抗
34 第4抵抗
41 第1未知抵抗
42 第2未知抵抗
43 第3未知抵抗
図1
図2
図3
図4
図5