【実施例】
【0015】
以下に、3相コイル抵抗測定装置及び3相コイル抵抗測定方法にかかる実施例につき、図面を参照して説明する。
本例の3相コイル抵抗測定装置1は、
図1に示すごとく、スター結線される3相のコイル3U,3V,3Wの各抵抗値を測定するものである。3相コイル抵抗測定装置1は、次の電源21、第1〜第4抵抗31,32,33,34、第1〜第3未知抵抗41,42,43、検流計23及び抵抗計22を備えている。
【0016】
電源21は、測定回路10の両端に直流電圧を印加するよう構成されている。第1抵抗31と第2抵抗32とは、電源21の電極間に対して一端から順に直列接続されている。第1未知抵抗41、第2未知抵抗42、第3抵抗33及び第4抵抗34は、電源21の電極間に対して、第1抵抗31及び第2抵抗32と並列に、一端から順に直列接続されている。第3未知抵抗43は、第2未知抵抗42及び第3抵抗33に対して並列接続されている。検流計23は、第1抵抗31及び第2抵抗32の中間点P1と、第2未知抵抗42及び第3抵抗33の中間点P2との間に接続されている。抵抗計22は、電源21の電極間の抵抗値を測るよう構成されている。
【0017】
スター結線される3相のコイル3U,3V,3Wは、第1未知抵抗41、第2未知抵抗42及び第3未知抵抗43として接続される。
そして、3相コイル抵抗測定装置1は、第1抵抗31の抵抗値R1と第2抵抗32の抵抗値R2とのいずれか、及び第3抵抗33の抵抗値R3と第4抵抗34の抵抗値R4とのいずれかをそれぞれ可変させて、検流計23を流れる電流がほぼゼロになる状態を形成し、第1未知抵抗41の抵抗値X1、第2未知抵抗42の抵抗値X2及び第3未知抵抗43の抵抗値X3を、R1:R2=X1:R4=X2:R3の関係式A1、並びに第1〜第4抵抗31,32,33,34及び第1〜第3未知抵抗41,42,43の合成抵抗Rxが抵抗計22の抵抗値Rに等しいとした関係式A2から求めるよう構成されている。
【0018】
以下に、本例の3相コイル抵抗測定装置及び3相コイル抵抗測定方法につき、
図1〜
図5を参照して詳説する。
図1、
図2に示すごとく、3相コイル抵抗測定装置1は、3相回転電機のステータに配置された状態の3相のコイル3U,3V,3Wの各抵抗値を測定するものである。また、3相コイル抵抗測定装置1は、ダブルブリッジ回路を利用して3相のコイル3U,3V,3Wの各抵抗値を測定するものである。
本例の第1抵抗31及び第4抵抗34は、抵抗値が固定された固定抵抗である。また、第2抵抗32及び第3抵抗33は、抵抗値を変化させることができる可変抵抗である。第2抵抗32及び第3抵抗33は、デジタル式可変抵抗器によって構成されている。
【0019】
本例においては、第3抵抗33の抵抗値R3及び第4抵抗34の抵抗値R4は3相のコイル3U,3V,3Wにおける各相のコイルの設計上の抵抗値に比べて、また第2抵抗32の抵抗値R2は第1抵抗31の抵抗値R1に比べて、1000倍以上の抵抗値になるよう設定されている。
本例の3相のコイル3U,3V,3Wにおける各相のコイルの設計上の抵抗値は、45(mΩ)である。この抵抗値は、数(mΩ)の値でばらつく可能性がある。本例においては、第1抵抗31は、1(Ω)の固定抵抗とし、第2抵抗32は、2150(Ω)±100(Ω)の可変抵抗とし、第3抵抗33は、100(Ω)±5(Ω)の可変抵抗とし、第4抵抗34は、100(Ω)の固定抵抗としている。
【0020】
図3に示すごとく、第2抵抗32、第3抵抗33、検流計23及び抵抗計22は、GPIB等の入出力インターフェイス51を介して制御装置5によって入出力制御が可能である。
制御装置5は、第2抵抗32の抵抗値R2及び第3抵抗33の抵抗値R3をそれぞれ段階的に可変させ、検流計23における電流値Gがゼロに近い所定の許容範囲内になったときに、第2抵抗32の抵抗値R2、第3抵抗33の抵抗値R3及び抵抗計22の抵抗値Rを読み取るとともに、第1抵抗31の抵抗値R1及び第4抵抗34の抵抗値R4を用いて、第1未知抵抗41の抵抗値X1、第2未知抵抗42の抵抗値X2及び第3未知抵抗43の抵抗値X3を求めるよう構成されている。
【0021】
図2、
図3に示すごとく、抵抗計22は、電源21の電極間の電圧を測定する電圧計、及び電源21の電極間に流れる電流を測定する電流計を用いて、測定回路10全体の抵抗値Rを測定するよう構成されている。検流計23は、電流計によって構成されている。検流計23は、第1抵抗31及び第2抵抗32の中間点P1と、第2未知抵抗42及び第3抵抗33の中間点P2との間において、電圧が高い方から低い方へと流れる電流を測定するよう構成されている。
3相コイル抵抗測定装置1においては、スター結線された3相のコイル3U,3V,3Wにおける各相のコイルをそれぞれ接続する3つの端子部24が設けられている。3相のコイル3U,3V,3Wには、U相、V相、W相のコイルがあるが、3つの端子部24に対して、どの相のコイルを接続してもよい。そして、U相、V相、W相のコイル3U,3V,3Wは、接続する端子部24によって、第1〜第3未知抵抗41,42,43のいずれの未知抵抗とすることもできる。
【0022】
3相コイル抵抗測定装置1は、次のようにして、第2抵抗32及び第3抵抗33を段階的に可変させることにより、検流計23によって測定される電流値Gがほぼゼロになる状態を探り出す。
具体的には、本例においては、第3抵抗33を95(Ω)から105(Ω)まで0.1(Ω)ずつ段階的に可変させるとともに、第2抵抗32を2050(Ω)から2250(Ω)まで10(Ω)ずつ段階的に可変させる。また、この可変調整を行う際に、検流計23によって測定される電流値Gが、プラス側からマイナス側に向けて、あるいはマイナス側からプラス側に向けてゼロ(0(mA)になる値)を通過したときには、第3抵抗33を、ゼロを通過したときの抵抗値R3に固定し、第2抵抗32を2050(Ω)から2250(Ω)まで1(Ω)ずつ段階的に可変させる。そして、検流計23によって測定される電流値Gがゼロを通過したときに、電流値Gがゼロである平衡状態に達したとして、このときの第2抵抗32の抵抗値R2及び第3抵抗33の抵抗値R3を読み取る。
【0023】
第2抵抗32の抵抗値R2及び第3抵抗33の抵抗値R3の調整をして検流計23を流れる電流値Gがほぼゼロになったときに、第1未知抵抗41の抵抗値X1は、X1=R1・R4/R2から算出し、第2未知抵抗42の抵抗値X2は、X2=X1・R3/R4から算出する。
また、第3未知抵抗43の抵抗値X3は、次のように算出する。抵抗計22には、第1抵抗31及び第2抵抗32と、第1〜第3未知抵抗41,42,43、第3抵抗33及び第4抵抗34とが並列に接続されている。そして、第1〜第3未知抵抗41,42,43、第3抵抗33及び第4抵抗34による合成抵抗をSとすると、S=X1+{(X2+R3)・X3}/(X2+R3+X3)+R4となる。また、第1〜第4抵抗31,32,33,34及び第1〜第3未知抵抗41,42,43の合成抵抗Rxは、Rx={(R1+R2)・S}/(R1+R2+S)となる。これをSの式に変換すると、S={(R1+R2)・Rx}/(R1+R2−Rx)となる。そして、合成抵抗Rxを抵抗計22の抵抗値Rに置き換え、X1+{(X2+R3)・X3}/(X2+R3+X3)+R4={(R1+R2)・R}/(R1+R2−R)の等式をX2の式に変換して、X3を算出する。
【0024】
次に、本例の3相コイル抵抗測定方法について、
図4のフローチャートを参照して具体的に説明する。
まず、3相コイル抵抗測定装置1における各端子部24に、ステータにおいてスター結線されたU相、V相、W相のコイル3U,3V,3Wをそれぞれ接続する。本例では、第1未知抵抗41としてV相のコイル3Vが接続され、第2未知抵抗42としてU相のコイル3Uが接続され、第3未知抵抗43としてW相のコイル3Wが接続される。
次いで、第2抵抗32の抵抗値R2と第3抵抗33の抵抗値R3とを一番低く設定する(
図4のステップS1)。本例では、第2抵抗32の抵抗値R2を2050(Ω)に設定し、第3抵抗33の抵抗値R3を95(Ω)に設定する。この初期設定を行った状態においては、測定回路10における各抵抗31〜34,41〜43のバランスが取れていないため、検流計23の電流値Gが任意の値を示すと考えられる。
【0025】
次いで、第2抵抗32の抵抗値R2をΔr2として10(Ω)増加させ(S2)、検流計23の電流値Gがゼロを通過したか否かを判別する(S3)。このゼロを通過したかの意味は、検流計23を流れる電流値Gがプラス側からマイナス側に変化するか、マイナス側からプラス側に変化するという意味である。そして、第2抵抗32の抵抗値R2が最大になるまで(S4)、第2抵抗32の抵抗値R2をΔr2として10(Ω)ずつ増加させ(S2)、増加させるごとに、検流計23の電流値Gがゼロを通過したか否かを判別する(S3)。そして、第2抵抗32の抵抗値R2が最大になったときには(S4)、この第2抵抗32の抵抗値R2を最小に戻す(S5)。また、このときには、第3抵抗33の抵抗値R3をΔr3として0.1(Ω)増加させる(S6)。
【0026】
その後、第2抵抗32の抵抗値R2を再びΔr2として10(Ω)ずつ増加させていくとともに(S2)、第3抵抗33の抵抗値R3をΔr3として0.1(Ω)ずつ増加させていき(S6)、検流計23の電流値Gがゼロを通過するまでS2〜S6を繰り返す。
次いで、第2抵抗32の抵抗値R2及び第3抵抗33の抵抗値R3が特定の値になり、検流計23の電流値Gがゼロを通過したときには(S3)、第3抵抗33の抵抗値R3及び第2抵抗32の抵抗値R2を、ゼロ通過したときの値R3’,R2’に設定する(S7)。そして、第3抵抗33の抵抗値R3は、ゼロ通過したときの値に確定し、第2抵抗32の抵抗値R2は、変更幅を小さくして段階的に減少させていく。
【0027】
次いで、第2抵抗32の抵抗値R2をΔr2’として1(Ω)減少させ(S8)、検流計23の電流値Gがゼロを通過したかを判別する(S9)。そして、検流計23の電流値Gがゼロを通過するまでS8,S9を繰り返す。その後、検流計23の電流値Gがゼロを通過したときには、このときの第2抵抗32の抵抗値R2及び第3抵抗33の抵抗値R3を用い、第1〜第3未知抵抗41,42,43を上記関係式A1,A2に当てはめて算出する(S10)。こうして、U相、V相、W相のコイルの抵抗値を、第1〜第3未知抵抗41,42,43の抵抗値として測定することができる。
なお、各抵抗31〜34,41〜43の抵抗値が丁度バランスしたときには検流計23の電流値Gはゼロになるが、たいていの場合は、この電流値Gはゼロに近い値となる。
【0028】
また、
図4におけるa部以降(第3抵抗33の抵抗値R3及び第2抵抗32の抵抗値R2をゼロ通過したときの値R3’,R2’に設定した後)は、次のようにして、U相、V相、W相のコイルの抵抗値を、第1〜第3未知抵抗41,42,43の抵抗値として測定することができる。
図5に示すごとく、ステップS7’の後には、第2抵抗32の抵抗値R2をΔr2’として1(Ω)減少させ(S8’)、検流計23の電流値Gが、ゼロを含む許容範囲内(−α≦G≦+α)になったかを判別する(S9’)。
ここで、検流計23の電流値Gの許容範囲±αは、U相、V相、W相の各相のコイルの抵抗値、抵抗値R2、抵抗値R3の各々を所定幅で変化させたときに、変化する量を算出し、U相、V相、W相の各相のコイルの抵抗値として測定される値の誤差が許容される範囲で設定することができる。
【0029】
次いで、第2抵抗32の抵抗値R2がゼロ通過時の値R2’からΔr2(10(Ω))を差し引いた値以下(R2≦R2’−Δr2)になったかを判別する(S10’)。
通常は、S8’,S9’及びS10’を繰り返すうちに、検流計23の電流値Gは、ゼロを含む許容範囲内(−α≦G≦+α)になると考えられる。このとき、電流値Gが許容範囲内になったときの第2抵抗32の抵抗値R2及び第3抵抗33の抵抗値R3を用い、第1〜第3未知抵抗41,42,43を上記関係式A1,A2に当てはめて算出する(S11’)。こうして、U相、V相、W相のコイルの抵抗値を、第1〜第3未知抵抗41,42,43の抵抗値として測定することができる。
【0030】
一方、S8’,S9’及びS10’を繰り返すうちに、第2抵抗32の抵抗値R2がR2≦R2’−Δr2になったときには、ゼロを通過したときの第3抵抗33の抵抗値R3の設定誤差が許容範囲を超えていると考えられる。この場合には、再調整(S12’)として、第3抵抗33の抵抗値R3を、Δr3(0.1(Ω))よりもさらに小さいΔr3’(例えば0.01(Ω))ずつ可変させて、上記ステップS1〜S6を繰り返すことができる。そして、上記ステップS7〜S10、又はステップS7’〜S11’を再び実行することができる。
【0031】
3相コイル抵抗測定装置1は、ダブルブリッジ回路を利用して3相のコイル3U,3V,3Wの抵抗値を測定するものである。
3相コイル抵抗測定装置1においては、ステータにおいてスター結線された3相のコイル3U,3V,3Wを、第1未知抵抗41、第2未知抵抗42及び第3未知抵抗43として、測定回路10中に接続する。そして、第2抵抗32の抵抗値R2及び第3抵抗33の抵抗値R3を可変させ、検流計23を流れる電流がほぼゼロになる状態を形成する。
【0032】
そして、このときの第1〜第4抵抗31,32,33,34の各抵抗値をR1,R2,R3,R4、抵抗計22の抵抗値をR、第1〜第3未知抵抗41,42,43の各抵抗値をX1,X2,X3とすると、R1:R2=X1:R4=X2:R3の関係式A1が成り立つ。そして、この関係式A1から、本例では、第1未知抵抗41としてのV相のコイル3Vの抵抗値、及び第2未知抵抗42としてのU相のコイル3Uの抵抗値を求めることができる。また、第1〜第4抵抗31,32,33,34及び第1〜第3未知抵抗41,42,43の合成抵抗をRxとすると、Rx=Rの関係から、第3未知抵抗43としてのW相のコイル3Wの抵抗値を求めることができる。
【0033】
このように、3相コイル抵抗測定装置1においては、ダブルブリッジ回路を応用して、3相のコイル3U,3V,3Wの抵抗値を測定することができる。そして、検流計23を流れる電流がほぼゼロとなるように、第2抵抗32の抵抗値R2及び第3抵抗33の抵抗値R3を可変させることにより、短時間で3相のコイル3U,3V,3Wの抵抗値を測定することができる。また、ダブルブリッジ回路の性質を利用して3相のコイル3U,3V,3Wの抵抗値の測定精度を向上させることができる。
それ故、3相コイル抵抗測定装置1及び3相コイル抵抗測定方法によれば、短時間かつ高い測定精度で3相のコイル3U,3V,3Wの抵抗値を測定することができる。