(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、従来のリン酸基を含有する含フッ素ポリマーからなる離型剤においては、リン酸基の存在によって成形型との密着性が向上し、ひいては成形型に付与される離型性が向上するという好ましい側面がある一方で、リン酸基の存在は、場合によっては離型剤が成形材料と反応してしまい、離型性が損なわれる要因ともなりうることを新たに見出した。そこで、本発明は、従来は成形型に付与される離型性を向上させる作用を有すると考えられていた、リン酸基をはじめとする官能基を含まないものであるにもかかわらず、優れた離型性を成形型に付与しうる離型剤を提供することを課題とする。また、本発明は、通常の使用温度で成形型に塗布する際に均一となりやすい離型剤を提供することも別の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、離型剤の成形型への密着性を向上させるために従来利用されてきた官能基を欠くにもかかわらず、優れた離型性を成形型に付与しうるフッ素系離型剤を得るべく鋭意検討を重ねた。その結果、本発明者らは、炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基を含有するモノマーを、モノマー総量を基準として20重量%以上使用して得られる含フッ素ポリマーが、上記課題を解決しうることを見出した。すなわち、この離型剤は、官能基を欠いているにもかかわらず、優れた離型性を成形型に付与することができる。本発明は、この新たな知見に基づいてさらに種々の検討を重ねることにより完成されたものであり、次に掲げるものである。
項1.
(A)モノマー総量を基準として20重量%以上の、炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基を含有し、かつ官能基を有さないラジカル重合反応性のモノマー、及び
(B)官能基を有さないラジカル重合反応性のモノマー
を共重合して得られうる含フッ素ポリマーからなる、離型剤。
項2.
前記モノマー(A)が、下記一般式(I)で表される、項1に記載の離型剤
【化1】
(式中、Rfは、炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基、
R
1は、直鎖状若しくは分岐状の二価の脂肪族炭化水素基、二価の芳香族炭化水素基又は二価の環状脂肪族炭化水素基、
R
2は、水素原子又はメチル基である。)。
項3.
前記式(I)中において、R
1が、炭素数1〜30の直鎖状若しくは分岐状の二価の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜12の二価の芳香族炭化水素基又は炭素数6〜12の二価の環状脂肪族炭化水素基である、項2に記載の離型剤。
項4.
前記式(I)中において、R
1が、炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状の二価の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜10の二価の芳香族炭化水素基又は炭素数6〜10の二価の環状脂肪族炭化水素基である、項2に記載の離型剤。
項5.
前記式(I)中において、R
1が、炭素数1〜10のアルキレン基である、項2に記載の離型剤。
項6.
前記式(I)中において、R
1が、炭素数1〜6のアルキレン基である、項2に記載の離型剤。
項7.
前記式(I)中において、R
1が、炭素数1〜4のアルキレン基である、項2に記載の離型剤。
項8.
前記式(I)中において、R
1が、炭素数1〜2のアルキレン基である、項2に記載の離型剤。
項9.
前記モノマー(B)が、下記一般式(II)で表されるアルキル(メタ)アクリル酸エステルである、項1〜8のいずれかに記載の離型剤
【化2】
(式中、R
3は、直鎖状若しくは分岐状の一価の脂肪族炭化水素基、一価の芳香族炭化水素基又は一価の環状脂肪族炭化水素基、
R
4は、水素原子又はメチル基である。)。
項10.
前記式(II)中において、R
3が、炭素数1〜30の直鎖状若しくは分岐状の一価の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜12の一価の芳香族炭化水素基又は炭素数6〜12の一価の環状脂肪族炭化水素基である、項9に記載の離型剤。
項11.
前記式(II)中において、R
3が、炭素数1〜22の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基である、項9に記載の離型剤。
項12.
モノマー総量を基準として98重量%以下の前記モノマー(A)、及び前記モノマー(B)を共重合して得られうる含フッ素ポリマーからなる、項1〜11のいずれかに記載の離型剤。
項13.
項1〜12のいずれかに記載の離型剤を含有する、離型剤組成物。
項14.
水性エマルションである、項13に記載の離型剤組成物。
項15.
ノニオン性乳化剤又はアニオン性乳化剤を含有する、項14に記載の離型剤組成物。
項16.
(A)モノマー総量を基準として20重量%以上の、炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基を含有し、かつ官能基を有さないラジカル重合反応性のモノマー、及び
(B)官能基を有さないラジカル重合反応性のモノマー
を共重合して得られうる含フッ素ポリマーの、離型剤としての使用。
項17.
項1〜12のいずれかに記載の離型剤の製造方法であって、
(A)モノマー総量を基準として20重量%以上の、炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基を含有し、かつ官能基を有さないラジカル重合反応性のモノマー、及び
(B)官能基を有さないラジカル重合反応性のモノマー
を共重合する工程
を含む方法。
項18.
(1)請求項4又は5に記載の離型剤組成物を成形型の内面に塗布して離型剤被膜を形成する工程
を含む、離型剤被膜の形成方法。
項19.
項18に記載の工程(1)に加えて、
(2)工程(1)により離型剤被膜が形成された成形型に成形用組成物を充填して成形材料を成形する工程;及び
(3)工程(2)により成形された成形材料を前記成形型から離型する工程
を含む、成形された成形材料の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、優れた離型性を有する離型剤を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1.
離型剤
本発明の離型剤は、
(A)モノマー総量を基準として20重量%以上の、炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基を含有し、かつ官能基を有さないラジカル重合反応性のモノマー、及び
(B)官能基を有さないラジカル重合反応性のモノマー
を共重合して得られうる含フッ素ポリマーからなる、離型剤である。
【0010】
本発明の離型剤は、特に限定されないが、数平均分子量(Mn)が、例えば2,000〜200,000、好ましくは3,000〜100,000、より好ましくは5,000〜50,000である。数平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定できる。
【0011】
1.1
モノマー(A)
モノマー(A)は、炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基を含有し、かつ官能基を有さないラジカル重合反応性のものであればよく、特に限定されない。
【0012】
モノマー(A)のパーフルオロアルキル基の炭素数が1〜6の範囲内であることに起因して、本発明の離型剤は優れた離型性を発揮しうる。例えば、本発明の離型剤は、モノマー(A)のパーフルオロアルキル基を従来広く使用されてきた炭素数が8のものに置き換えた場合に比べると、格段に優れた離型性を発揮する。
【0013】
さらに、モノマー(A)のパーフルオロアルキル基の炭素数が1〜6の範囲内であることに起因して、本発明の離型剤は、溶融粘度が従来のものよりも低くなっており、このため通常の温度条件(100℃〜190℃程度)で成形型に塗布した際に均一になりやすいというさらなる利点も有している。
【0014】
パーフルオロアルキル基は、直鎖状であってもよいし、分岐状であってもよい。好ましくは、直鎖状のパーフルオロアルキル基である。パーフルオロアルキル基は、特に限定されないが、工業的に生産し易いという点では、好ましくは、炭素数2、4又は6のパーフルオロアルキル基である。より優れた離型性を離型剤に付与しうるという点で、パーフルオロアルキル基は、炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基が好ましく、炭素数2〜6のパーフルオロアルキル基がより好ましく、炭素数6のパーフルオロアルキル基がさらに好ましい。
【0015】
モノマー(A)は、官能基を有さない。本発明において、官能基とは、成形材料との反応性を示さない、リン酸基をはじめとする基をいう。モノマー(A)がこのような官能基を含まなければ、使用時において離型剤と成形材料との反応を避けることができる。
【0016】
モノマー(A)は、ラジカル重合反応性を示す部位(ラジカル重合反応性部位)を有している。特に限定されないが、そのような部位として、例えば、アクリレート基、メタアクリレート基、ビニル基、ビニリデン基及びアリル基等が挙げられる。ラジカル重合反応性部位としては、アクリレート基及びメタアクリレート基が好ましい。
【0017】
モノマー(A)の、パーフルオロアルキル基及びラジカル重合反応性部位を除く部位の構造は、本発明の効果が損なわれない限り、広範囲のものから選択可能である。モノマー(A)は、パーフルオロアルキル基及びラジカル重合反応性部位の他に、成形材料との反応に関して不活性な、アルキル基及びアルキレン基をはじめとする一種以上の置換基をさらに有していてもよい。モノマー(A)は、さらに、その置換基同士の間、又は置換基とパーフルオロアルキル基又はラジカル重合反応性部位の間に、成形材料との反応に関して不活性な、エステル結合をはじめとする結合が挿入されていてもよい。
【0018】
モノマー(A)は、特に限定されないが、例えば、一方の末端にパーフルオロアルキル基を、他方の末端にラジカル重合反応性部位をそれぞれ有し、パーフルオロアルキル基が、直接又はその他の部位を介して、ラジカル重合反応性部位に連結されていてもよい。
【0019】
モノマー(A)としては、例えば、下記一般式(I)で表されるパーフルオロアルキル基含有(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。
【0021】
(式中、Rfは、炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基、
R
1は、直鎖状若しくは分岐状の二価の脂肪族炭化水素基、二価の芳香族炭化水素基又は二価の環状脂肪族炭化水素基、
R
2は、水素原子又はメチル基である。)
【0022】
上記一般式(I)において、R
1は、直鎖状若しくは分岐状の二価の脂肪族炭化水素基、二価の芳香族炭化水素基又は二価の環状脂肪族炭化水素基である。R
1は、好ましくは炭素数1〜30の直鎖状若しくは分岐状の二価の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜12の二価の芳香族炭化水素基又は炭素数6〜12の二価の環状脂肪族炭化水素基である。R
1は、より好ましくは、炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状の二価の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜10の二価の芳香族炭化水素基又は炭素数6〜10の二価の環状脂肪族炭化水素基である。
【0023】
上記において、炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状の二価の脂肪族炭化水素基としては、特に限定されないが、例えば、炭素数1〜10のアルキレン基等が挙げられる。
【0024】
具体的には、炭素数1〜10のアルキレン基として、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、2−メチルエチレン基、ヘキシレン基及びオクチレン基等が挙げられる。
【0025】
炭素数1〜10のアルキレン基の中では、炭素数1〜6のアルキレン基が好ましく、炭素数1〜4のアルキレン基がより好ましく、炭素数1〜2のアルキレン基がさらに好ましい。
【0026】
炭素数6〜10の二価の芳香族炭化水素基としては、特に限定されないが、例えば、1,4−フェニレン基、1,4−ビスメチレンフェニレン基及び1,4−ビスエチレンフェニレン基等が挙げられる。
【0027】
炭素数6〜10の二価の環状脂肪族炭化水素基としては、特に限定されないが、例えば、1,4−シクロヘキシレン基、1,4−ビスメチレンシクロヘキシレン基及び1,4−ビスエチレンシクロヘキシレン基等が挙げられる。
【0028】
上記一般式(I)で表されるパーフルオロアルキル基含有(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、下記のものが挙げられる。
CH
2=CH-COO-CH
2-(CF
2)
4F
CH
2=CH-COO-CH
2-(CF
2)
6F
CH
2=CH-COO-(CH
2)
2-(CF
2)
3F
CH
2=CH-COO-(CH
2)
2-(CF
2)
4F
CH
2=CH-COO-(CH
2)
2-(CF
2)
6F
CH
2=C(CH
3)-COO-CH
2-(CF
2)
3F
CH
2=C(CH
3)-COO-CH
2-(CF
2)
4F
CH
2=C(CH
3)-COO-CH
2-(CF
2)
6F
CH
2=C(CH
3)-COO-(CH
2)
2-(CF
2)
4F
CH
2=C(CH
3)-COO-(CH
2)
2-(CF
2)
6F
上記一般式(I)で表されるパーフルオロアルキル基含有(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、上記の中で、以下のものが好ましい。
CH
2=CH-COO-CH
2-(CF
2)
6F
CH
2=CH-COO-(CH
2)
2-(CF
2)
6F
CH
2=C(CH
3)-COO-CH
2-(CF
2)
6F
CH
2=C(CH
3)-COO-(CH
2)
2-(CF
2)
6F
【0029】
モノマー(A)及びモノマー(B)の総量に対するモノマー(A)の割合は、20重量%以上であればよく、特に限定されないが、好ましくは98重量%以下である。モノマー(A)及びモノマー(B)の総量に対するモノマー(A)の割合は、より好ましくは、25重量%〜98重量%であり、さらに好ましくは、30重量%〜95重量%である。
【0030】
本発明の離型剤は、上記したモノマー(A)のうち一種をモノマー(B)と共重合して得られうる含フッ素ポリマーからなる離型剤であってもよいし、二種以上をモノマー(B)と共重合して得られうる含フッ素ポリマーからなる離型剤であってもよい。
【0031】
1.2
モノマー(B)
モノマー(B)は、官能基を有さないモノマーである。モノマー(B)は官能基を含まないので、使用時において離型剤と成形材料との反応を避けることができる。
【0032】
モノマー(B)は、モノマー(A)と共重合可能なモノマーである。
【0033】
モノマー(B)は、ラジカル重合反応性部位を有している。ラジカル重合反応性部位としては、特に限定されないが、例えば、アクリレート基、メタアクリレート基、ビニル基、ビニリデン基及びアリル基等が挙げられる。ラジカル重合反応性部位としては、アクリレート基及びメタアクリレート基が好ましい。
【0034】
モノマー(B)の、ラジカル重合反応性部位を除く部位の構造は、本発明の効果が損なわれない限り、広範囲のものから選択可能である。モノマー(B)は、ラジカル重合反応性部位の他に、成形材料との反応に関して不活性な、アルキル基をはじめとする一種以上の置換基をさらに有していてもよい。モノマー(B)は、さらに、その置換基同士の間、又は置換基とラジカル重合反応性部位の間に、成形材料との反応に関して不活性な、エステル結合をはじめとする結合が挿入されていてもよい。
【0035】
モノマー(B)としては、例えば、下記一般式(II)で表される(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。
【0037】
(式中、R
3は、直鎖状若しくは分岐状の一価の脂肪族炭化水素基、一価の芳香族炭化水素基又は一価の環状脂肪族炭化水素基、
R
4は、水素原子又はメチル基である。)
【0038】
上記一般式(II)において、R
3は、直鎖状若しくは分岐状の一価の脂肪族炭化水素基、一価の芳香族炭化水素基又は一価の環状脂肪族炭化水素基である。R
3は、好ましくは炭素数1〜30の直鎖状若しくは分岐状の一価の脂肪族炭化水素基、一価の炭素数6〜12の芳香族炭化水素基又は一価の炭素数6〜12の環状脂肪族炭化水素基である。
【0039】
上記において、炭素数1〜30の直鎖状若しくは分岐状の一価の脂肪族炭化水素基としては、特に限定されないが、例えば、炭素数1〜30のアルキル基が挙げられ、炭素数1〜22のアルキル基が好ましい。
【0040】
具体的には、炭素数1〜22のアルキル基として、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、n−ヘキシル基、2−エチルブチル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、セチル基、ステアリル基及びベヘニル基等が挙げられる。
【0041】
具体的には、一価の炭素数6〜12の芳香族炭化水素基として、フェニル基、2−エチルフェニル基、インデニル基、トルイル基及びベンジル基等が挙げられる。
【0042】
具体的には、一価の炭素数6〜12の環状脂肪族炭化水素基として、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、ノルボルニルメチル基、イソボルニル基、ボルニル基、メンチル基、オクタヒドロインデニル基、アダマンチル基及びジメチルアダマンチル基等が挙げられる。
【0043】
上記一般式(II)で表される(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸i−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ペンチル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸t−ペンチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸n−ヘプチル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸セチル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ベヘニル、(メタ)アクリル酸ノルボルニル、(メタ)アクリル酸ノルボルニルメチル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ボルニル、(メタ)アクリル酸メンチル、(メタ)アクリル酸オクタヒドロインデニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアダマンチル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸2−エチルフェニル、(メタ)アクリル酸インデニル、(メタ)アクリル酸トルイル及び(メタ)アクリル酸ベンジル等が挙げられる。特に、アクリル酸ステアリル及びアクリル酸ベヘニルが好ましい。
【0044】
本発明の離型剤は、上記したモノマー(B)のうち一種をモノマー(A)と共重合して得られうる含フッ素ポリマーからなる離型剤であってもよいし、二種以上をモノマー(A)と共重合して得られうる含フッ素ポリマー構造からなる離型剤であってもよい。
【0045】
2.
離型剤の製造方法
本発明の離型剤は、
(A)モノマー総量を基準として20重量%以上の、炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基を含有し、かつ官能基を有さないラジカル重合反応性のモノマー、及び
(B)官能基を有さないラジカル重合反応性のモノマー
を共重合する工程を含む方法により製造できる。
【0046】
モノマー(A)及び(B)については、離型剤について既に説明した通りである。
【0047】
共重合は、乳化重合であってもよいし、溶液重合であってもよい。
【0048】
乳化重合は、特に限定されないが、例えば次のようにして行うことができる。重合開始剤及び乳化剤の存在下で、各種モノマーを水中に乳化させ、窒素置換後、50〜80℃の範囲で1〜10時間、撹拌して共重合させる。
【0049】
乳化重合において、重合開始剤は、特に限定されないが、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、t−ブチルパーベンゾエート、1−ヒドロキシシクロヘキシルヒドロ過酸化物、3−カルボキシプロピオニル過酸化物、過酸化アセチル、アゾビスイソブチルアミジン−二塩酸塩、アゾビスイソブチロニトリル、過酸化ナトリウム、過硫酸カリウム及び過硫酸アンモニウム等の水溶性の重合開始剤、並びにアゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、ラウリルパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、t−ブチルパーオキシピバレート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート及びアゾビスメチルプロピオネート等の油溶性の重合開始剤が挙げられる。
【0050】
乳化重合において、重合開始剤は、通常、モノマー100重量部に対して、0.01〜10重量部の範囲で用いられる。
【0051】
乳化重合において、放置安定性の優れた共重合体水分散液を得るためには、高圧ホモジナイザーや超音波ホモジナイザーのような強力な破砕エネルギーを付与できる乳化装置を用いて、単量体を水中に微粒子化し、油溶性重合開始剤を用いて重合することが好ましい。
【0052】
乳化重合において、乳化剤としてはアニオン性、カチオン性又はノニオン性の各種乳化剤を用いることができる。乳化剤は、通常、モノマー100重量部に対して、0.5〜20重量部の範囲で用いられる。乳化剤としてノニオン性乳化剤又はアニオン性乳化剤が好ましい。
【0053】
ノニオン性乳化剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ソルビタンアルキレート及びソルビタンアルキルエステル等が挙げられる。
ポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、特に限定されないが、例えば、ポリエキシエチレンラウリルエーテル等が挙げられる。
【0054】
アニオン性乳化剤としては、アルキル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩及びアルキルリン酸エステル等が挙げられる。アルキル硫酸エステルとしては特に限定されないが、アルキル硫酸ナトリウム等が挙げられる。
【0055】
カチオン性乳剤としては、第4級アンモニウム塩及びアルキルアミン塩等が挙げられる。
【0056】
第4級アンモニウム塩としては特に限定されないが、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
【0057】
乳化重合において、モノマーが完全に相溶しない場合は、これらモノマーを充分に相溶させるような相溶化剤、例えば、水溶性有機溶剤や低分子量のモノマーを添加することが好ましい。相溶化剤の添加により、乳化性及び共重合性を向上させることが可能である。
【0058】
相溶化剤としての水溶性有機溶剤としては、特に限定されないが、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコール及びエタノール等が挙げられる。水溶性有機溶剤は、通常、水100重量部に対して、1〜50重量部の範囲で用いられる。水溶性有機溶剤は、好ましくは水100重量部に対して、10〜40重量部の範囲で用いられる。
【0059】
乳化重合において、得られる重合体の分子量を調整するために連鎖移動剤を用いてもよい。連鎖移動剤としては、特に限定されないが、例えば、ラウリルメルカプタン、グリシジルメルカプタン、メルカプト酢酸、2−メルカプトエタノール、チオグリコール酸2−エチルヘキシル及び2,3−ジメチルカプト−1−プロパノール等が挙げられる。連鎖移動剤は、必要に応じて1種又は2種以上を用いてもよい。連鎖移動剤は、通常、モノマー100重量部に対して0.001〜7.0重量部の範囲で用いられる。
【0060】
溶液重合は、特に限定されないが、例えば次のようにして行うことができる。重合開始剤の存在下で、モノマーを有機溶剤に溶解させ、窒素置換後、30〜120℃の範囲で1〜10時間、加熱撹拌する。重合開始剤としては、例えばアゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、ラウリルパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、t−ブチルパーオキシピバレート及びジイソプロピルパーオキシジカーボネート等が挙げられる。重合開始剤は、通常、単量体100重量部に対して、0.01〜20重量部の範囲で用いられる。重合開始剤は、好ましくは、単量体100重量部に対して、0.01〜10重量部の範囲で用いられる。
【0061】
溶液重合において、有機溶剤としては、モノマーに対して不活性であり、かつこれらを溶解するものであればよく、特に限定されない。有機溶剤としては、例えば、アセトン、クロロホルム、イソプロピルアルコール、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、石油エーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル及び酢酸ブチル等が挙げられる。有機溶剤は、通常、モノマーの合計100重量部に対して、50〜2000重量部の範囲で用いられる。有機溶剤は、好ましくは、モノマーの合計100重量部に対して、50〜1000重量部の範囲で用いられる。
【0062】
3.
離型剤組成物
本発明の離型剤組成物は、上記説明した離型剤を含有する、組成物である。
【0063】
この離型剤組成物の形態は、使用目的等に応じて適宜選択することができ、特に限定されないが、例えば、溶液、エマルション又はエアゾールである。形態は、好ましくは、水性エマルションである。
【0064】
この離型剤組成物は、特に限定されないが、上記説明した離型剤を好ましくは0.5重量%〜50重量%、より好ましくは1.0重量%〜30重量%、さらに好ましくは1.5重量%〜20重量%含有する。
【0065】
この離型剤組成物は、成形型への濡れ性を向上させる目的で、さらに界面活性剤を含有していてもよい。この界面活性剤としては、特に限定されないが、フッ素系又は非フッ素系の界面活性剤等を用いることができる。フッ素系又は非フッ素系の界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤及びカチオン性界面活性剤を用いることができる。
【0066】
フッ素系界面活性剤としては、含フッ素のポリオキシエチレン、スルホン酸塩、カルボン酸塩、第4級アンモニウム塩等があげられる。
【0067】
また、非フッ素系アニオン性界面活性剤としては、アルキル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩及びアルキルリン酸エステル等が挙げられる。アルキル硫酸エステルとしては特に限定されないが、アルキル硫酸ナトリウム等が挙げられる。
【0068】
非フッ素系ノニオン性界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ソルビタンアルキレート及びソルビタンアルキルエステル等が挙げられる。ポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、特に限定されないが、例えば、ポリエキシエチレンラウリルエーテル等が挙げられる。
【0069】
非フッ素系カチオン性界面活性剤としては、第4級アンモニウム塩及びアルキルアミン塩等が挙げられる。
【0070】
第4級アンモニウム塩としては特に限定されないが、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
【0071】
上記の目的で界面活性剤を含有する場合、その離型剤組成物中における含有割合は、特に限定されないが、通常、0.01重量%〜20重量%であり、好ましくは0.01重量%〜15重量%であり、より好ましくは0.01重量%〜10重量%である。
【0072】
この離型剤組成物は、離型性及び/又は仕上がり性を向上させる目的で、シリコーン化合物、ワックス系化合物及びフッ素系化合物等からなる群より選択される少なくとも1種の添加剤をさらに含有していてもよい。
【0073】
シリコーン化合物としては、特に限定されないが、例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、フルオロシリコーンオイル及びシリコーンレジン等が挙げられる。上記の目的でシリコーン化合物を含有する場合、その離型剤組成物中における含有割合は、特に限定されないが、通常、0.01重量%〜20重量%であり、好ましくは0.01重量%〜15重量%である。
【0074】
ワックス系化合物としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンワックス、パラフィンワックス及びカルナバワックス等が挙げられる。上記の目的でワックス系化合物を含有する場合、その離型剤組成物中における含有割合は、特に限定されないが、通常、0.01重量%〜20重量%であり、好ましくは0.01重量%〜15重量%である。
【0075】
フッ素系化合物としては、特に限定されないが、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、フルオロポリエーテル及びフルオロクロロポリエーテル等が挙げられる。上記の目的でフッ素系化合物を含有する場合、その離型剤組成物中における含有割合は、特に限定されないが、通常、0.01重量%〜20重量%であり、好ましくは0.01重量%〜15重量%である。
【0076】
この離型剤組成物は水性エマルションである場合、特に限定されないが、乳化剤としてノニオン性乳化剤、アニオン性乳化剤及びカチオン性乳化剤からなる群より選択される少なくとも一種の乳化剤を含有する。乳化剤としては、ノニオン性乳化剤及びアニオン性乳化剤からなる群より選択される少なくとも一種の乳化剤が好ましい。
【0077】
ノニオン性乳化剤としては、本発明の離型剤を乳化して水性エマルション中に分散させることができるものであればよく、特に限定されないが、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ソルビタンアルキレート及びソルビタンアルキルエステル等が挙げられる。ポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、特に限定されないが、例えば、ポリエキシエチレンラウリルエーテル等が挙げられる。
【0078】
アニオン性乳化剤としては、アルキル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩及びアルキルリン酸エステル等が挙げられる。アルキル硫酸エステルとしては特に限定されないが、アルキル硫酸ナトリウム等が挙げられる。
【0079】
カチオン性乳化剤としては、第4級アンモニウム塩及びアルキルアミン塩等が挙げられる。
【0080】
第4級アンモニウム塩としては特に限定されないが、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
【0081】
乳化剤を含有する場合、その離型剤組成物中における含有割合は、特に限定されないが、モノマー100重量部に対して、通常、0.5重量%〜25重量%であり、好ましくは1.0重量%〜20重量%であり、より好ましくは2.0重量%〜15重量%である。
【0082】
この離型剤組成物は、水性エマルションである場合、特に限定されないが、さらに、上記乳化重合の説明において記載される添加剤、すなわち、相溶化剤及び/又は連鎖移動剤等をさらに含有していてもよい。
【0083】
この離型剤組成物は、溶液である場合、特に限定されないが、さらに、上記溶液重合の説明において記載される有機溶剤等をさらに含有していてもよい。
【0084】
この離型剤組成物は、エアゾールである場合、噴射剤を用いてエアゾール缶に充填できる。噴射剤としては、特に限定されないが、例えば、LPG、ジメチルエーテル及び二酸化炭素等が挙げられる。噴射剤の量は、通常、離型剤組成物と噴射剤の合計量に対して、10〜95重量%、好ましくは20〜90重量%、より好ましくは30〜90重量%である。噴射剤の量が10重量%以上であればより良好に噴射でき、より均一な皮膜が得られる傾向がある。また、噴射剤の量が95重量%以下であれば皮膜が薄くなりすぎず、離型性が低下しすぎない傾向がある。
【0085】
この離型剤組成物は、特に限定されないが、通常、次のようにして使用される。離型剤組成物を成形型の内面に塗布し、溶剤や分散剤が乾燥し除去された後、成形型に離型剤被膜が形成され、該型内に成形用組成物を充填して成形材料を成形し、該型から成形材料を離型する。
【0086】
この離型剤組成物が用いられる成形型としては、特に限定されないが、例えば、アルミ製、SUS製、鉄製、エポキシ樹脂製及び木製等の型、並びにニッケル電鋳又はクロムメッキされた型等が挙げられる。
【0087】
この離型剤組成物を利用して離型される成形材料としては、特に限定されないが、例えば、ウレタンゴム、H−NBR、NBR、シリコーンゴム、EPDM、CR、NR、フッ素ゴム、SBR、BR、IIR及びIR等のゴムや、ウレタンフォーム、エポキシ樹脂、フェノール樹脂及びFRP等の熱硬化性樹脂等が挙げられる。
【実施例】
【0088】
以下に実施例を掲げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0089】
実施例1
パーフルオロアルキルメタクリレート(C
6F
13-CH
2CH
2OCOC(CH
3)=CH
2)45g及びステアリルアクリレート5gを十分に溶解させた後、ポリオキシエチレン(n=20)ラウリルエーテル(ノニオン性乳化剤)4g、ラウリルメルカプタン0.2g、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル7g及びイオン交換水95gを加え、高圧ホモジナイザーで乳化した。得られた乳化液を還流冷却管、窒素導入管、温度計及び攪拌装置を備えた300ml四つ口フラスコに入れ、窒素気流下に約1時間60℃に保った。開始剤として過硫酸アンモニウム0.3gを水5gに溶解したものを添加し、重合を開始した。60℃で3時間加熱攪拌し、水性共重合体エマルションを調製し、得られた水性エマルションをイオン交換水で固形分濃度が0.3mass%になるように調整した。
【0090】
実施例2
パーフルオロアルキルアクリレート(C
6F
13-CH
2CH
2OCOCH=CH
2)35g及びステアリルアクリレート15gを十分に溶解させた後、実施例1と同じ方法で水性共重合体エマルションを調製し、イオン交換水で固形分濃度0.3mass%となるように調整した。
【0091】
実施例3
パーフルオロアルキルメタクリレート(C
6F
13-CH
2CH
2OCOC(CH
3)=CH
2)47.5g及びイソボルニルメタクリレート2.5gを十分に溶解させた後、実施例1と同じ方法で水性共重合体エマルションを調製し、イオン交換水で固形分濃度0.3mass%となるように調整した。
【0092】
実施例4
パーフルオロアルキルメタクリレート(C
6F
13-CH
2CH
2OCOC(CH
3)=CH
2)25g及びステアリルメタクリレート25gを十分に溶解させた後、実施例1と同じ方法で水性共重合体エマルションを調製し、イオン交換水で固形分濃度0.3mass%となるように調整した。
【0093】
実施例5
実施例4と同じ方法で水性共重合体エマルションを調製し、イオン交換水で固形分濃度0.15mass%となるように調整した。
【0094】
実施例6
パーフルオロアルキルメタクリレート(C
6F
13-CH
2CH
2OCOC(CH
3)=CH
2)15g及びラウリルアクリレート35gを充分に溶解させた後、実施例1と同じ方法で水性共重合体エマルションを調製し、イオン交換水で固形分濃度0.3mass%となるように調整した。
【0095】
実施例7
実施例6と同じ方法で水性共重合体エマルションを調製し、イオン交換水で固形分濃度0.15mass%となるように調整した。
【0096】
実施例8
ステアリルアクリレートに代えてベヘニルアクリレートを使用した他は実施例1と同様にして水性共重合体エマルションを調製し、イオン交換水で固形分濃度0.3mass%となるように調整した。
【0097】
比較例1
パーフルオロアルキルメタクリレート(C
6F
13-CH
2CH
2OCOC(CH
3)=CH
2)50g、ポリオキシエチレン(n=20)ラウリルエーテル(ノニオン性乳化剤)4g、ラウリルメルカプタン0.2g、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル7g及びイオン交換水95gを入れ、高圧ホモジナイザーで乳化した。得られた乳化液を還流冷却管、窒素導入管、温度計及び攪拌装置を備えた300ml四つ口フラスコに入れ、窒素気流下に約1時間60℃に保った。開始剤として過硫酸アンモニウム0.3gを水5gに溶解したものを添加し、重合を開始した。60℃で3時間加熱攪拌し、水性共重合体エマルションを調製し、得られた水性エマルションをイオン交換水で固形分濃度が0.3mass%になるように調整した。
【0098】
比較例2
パーフルオロアルキルアクリレート(C
nF
n+1-CH
2CH
2OCOCH=CH
2(n=8−14の混合物))35g及びステアリルアクリレート15gを十分に溶解させた後、実施例1と同じ方法で水性共重合体エマルションを調製し、イオン交換水で固形分濃度0.3mass%となるように調整した。
【0099】
比較例3
比較例2と同じ方法で水性共重合体エマルションを調製し、イオン換水で固形分濃度0.6mass%となるように調整した。
【0100】
比較例4
パーフルオロアルキルメタアクリレート(C
nF
n+1-CH
2CH
2OCOC(CH
3)=CH
2(n=8−14の混合物))47.5g及びイソボルニルメタクリレート2.5gを十分に溶解させた後、実施例1と同じ方法で水性共重合体エマルションを調製し、イオン交換水で固形分濃度0.3mass%となるように調整した。
【0101】
比較例5
パーフルオロアルキルメタアクリレート(C
nF
n+1-CH
2CH
2OCOC(CH
3)=CH
2(n=8−14の混合物))25g及びステアリルメタクリレート25gを十分に溶解させた後、実施例1と同じ方法で水性共重合体エマルションを調製し、イオン交換水で固形分濃度0.3mass%となるように調整した。
【0102】
比較例6
パーフルオロアルキルリン酸エステル(C
6F
13(CH
2CH
2O)
mPO(OH)
3-m(mが1、2及び3である化合物(モル比2(m=1):7(m=2):1(m=3))の混合物)30gを10gのイソプロピルアルコール(IPA)で溶解した。その溶液に水10gを加えよく攪拌し、次いでこの溶液を微量のアンモニア水で中和して、パーフルオロアルキルリン酸エステルの水溶液を得た。
【0103】
得られたパーフルオロアルキルリン酸エステル水溶液にポリオキシエチレン(n=20)ラウリルエーテル(ノニオン性乳化剤)を3g加えよく撹拌し、パーフルオロアルキルリン酸エステルの乳化液を得た。その後、固形分濃度が0.3mass%になるようにイオン交換水で希釈した。
【0104】
上記の各実施例及び各比較例で得られた含フッ素ポリマーを含有する組成物それぞれについて、下記の通り離型性を試験した。
【0105】
成型加工を次の条件で行った。
(1)過酸化物加硫型のシリコーンゴムKE−941U(信越化学工業株式会社製)を100重量部、及び加硫剤としてC−8A(信越化学工業株式会社製)0.6重量部をゴム用の練りロールで混練りし、未加硫のゴム生地を得た。
(2)180℃に保温した100個取りのO−リング金型に実施例1〜6、及び比較例1〜6で調整した含フッ素ポリマー組成物をそれぞれスプレーガンを用いて同一条件で塗布し、上記(1)のゴム生地を、180℃×10分でプレス成型し、O−リングのシートを得た。
(3)再度、含フッ素ポリマー組成物を上記(2)と同様に塗布し、成型を繰り返した。
【0106】
その上で、離型性の評価を次のようにして行った。上記の成型加工の際、含フッ素ポリマー組成物の離型性が非常に優れていれば、100個のO−リングが一枚のシートに一体となって金型から離型される。一方、離型性が悪ければ、O−リング部分が金型に残り、O−リング部分が穴の開いた状態のシートで離型される。この傾向を利用して離型性の評価を行った。具体的には、一枚のシートで離型した際に、シートと一体となって離型したO−リングの数が多ければ多いほど離型性がより優れているとして評価した。
【0107】
上記のようにして、パーフルオロアルキル基を含有するモノマーを、官能基を有さないモノマーと共重合させることにより得られる各種の含フッ素ポリマーを評価した。結果を表1〜3に示す。これらの結果から、パーフルオロアルキル基を含有するモノマーとして炭素数1〜6のものを特定割合で使用することによって、官能基を欠くにもかかわらず優れた離型性を有する含フッ素ポリマーが得られることが明らかになった。
【0108】
なお、表中において、各略号はそれぞれ以下に示す化合物を指す。
「13FMA」:C
6F
13-CH
2CH
2OCOC(CH
3)=CH
2
「13FA」:C
6F
13- CH
2CH
2OCOCH=CH
2
「17FA」:C
nF
n+1-CH
2CH
2OCOCH=CH
2(n=8−14の混合物)
「STA」:ステアリルアクリレート
「STMA」:ステアリルメタクリレート
「LA」:ラウリルアクリレート
「IBM」:イソボルニルメタクリレート
「BeA」:ベヘニルアクリレート
【0109】
【表1】
【0110】
【表2】
【0111】
【表3】