【実施例】
【0025】
本発明の板状外装材を用いた外装構造は、
図1(a)〜(c)に示す第1〜第3実施例、
図5(a)〜(c)に示す第4〜第6実施例のように窯業系の焼き付け等により製造された板状外装材1A,1Bと、支持材2A〜2Dと、弾性材3A〜3Dとからなり、各板状外装材1A,1Bは前記支持材2A〜2Dにて下地4に取り付けられると共に前記弾性材3A〜3Dにて水下側へ弾性付勢されていることを特徴とする。
【0026】
図1(a)〜(c)の第1〜第3実施例に用いられる板状外装材1Aは、窯業系の焼き付け等により製造されたもので、
図2(a)に示すように水上側と水下側との2箇所の裏面側に、水下側へ向く略L字状の係止部11,12(水上側に位置する係止部を11、水下側に位置する係止部を12とする)を有する構成であり、水下側が開放する係合溝11',12'が形成される構成と説明することもできる。
図5(a)〜(c)の第4〜第6実施例に用いられる板状外装材1Bは、水上側と水下側との2箇所の裏面側に、水下側へ向く係止部11,12を含み、更に
図2(b)に示すように係止部11,12間に水下側へ向く略L字状の係止部13,14を備える構成である。
【0027】
図1(a),(b)の第1実施例及び第2実施例、
図5(a),(b)の第4実施例及び第5実施例に用いられる支持材2Aは、
図2(c)に示すように下地4上に沿わせる横片部21の表面側に、上段側の板状外装材1Aの水下側の係止部12に係合する上方係合部22と、下段側の板状外装材1Aの水上側の係止部11に係合する下方係合部23とを備える構成であり、各係合部22,23は水上側及び下方が開放する隅状に形成されている。
これらの上方係合部22も下方係合部23も、横片部21から表面側へ略鉛直状に起立する縦片24,25の上端を水上側のやや下方へ折り曲げて形成される隅部を指すが、前記板状外装材1Aの係止部11,12が形成される構成を「水下側が開放する係合溝11',12'」が形成される構成と見なした場合には、この支持材2Aの水上側及び下方が開放する隅状の係合部22,23は、「水上側やや下方へ向く係止片22',23'」が形成される構成と説明できる。
【0028】
図1(a)の第1実施例に用いられる弾性材3Aは、
図2(h)に示すように中空状の弾性体、即ち敷設状態よりも大径の円管(パイプ)状弾性体で形成されている。
図5(a)の第4実施例に用いられる弾性材3Bは、
図2(g)に示すように中実状の弾性体、即ち敷設状態よりも大径の円柱状弾性体で形成されている。
図1(b)の第2実施例、及び
図5(b)の第5実施例に用いられる弾性材3Cは、
図2(i)に示すようにバネ弾性を有する金属成形体、即ち敷設状態よりも広角の略V字状に成形された金属成形体で形成されている。
これらの弾性材3A〜3Cは、上方から嵌め込むように配設しているだけで、特別な固定手段を用いていないが、その施工状態において上段側の板状外装材1A,1Bが上方を覆うため、想定外の外れを生ずることは決してない。
【0029】
図1(c)の第3実施例、及び
図5(c)の第5実施例に用いる支持材2Dは、
図2(f)に示すように下段側の板状外装材1A,1Bの水上側の係止部11が係合される隅状の下方係合部23d(≒水上側やや下方へ向く係止片23d')を備える支持基材2d
1と、弾性材3Dを兼ねる金属成形材2d
2とからなる。この金属成形材2d
2の略U字状部分が弾性材3Dの役割を果たし、その水上側に位置する縦片の上端を水上側のやや下方へ折り曲げて形成される隅部が上段側の板状外装材1Aの水下側の係止部12が係合される隅状の上方係合部22d(≒水上側やや下方へ向く係止片22d')となる。
【0030】
また、
図5(a)〜(c)の第4〜第6実施例には、前記支持材2A,2Dばかりでなく、
図2(d),(e)に示す支持材2B,2Cをも用いて板状外装材1Bを下地4に取り付けており、係止部11,12間に設けられた係止部13,14を、支持材2C,2Bに設けられた水上側及び下方が開放する隅状の係合部26c,26bに係合させて取り付けている。
【0031】
次に、前記
図1(b)の第2実施例にて、仮に暴風雨等にて一部の板状外装材1Aが完全に中央付近にて分断するような破損が生じたケースを想定し、その取り外し手順を
図3に基づいて説明する。
なお、ここでは第2実施例を例にしたが、他の第1,第3〜第6実施例でもほぼ同様の取り外し手順にて施工できることを確認している。
【0032】
図3(a)に示すように図示中央の板状外装材1Aが破損を受け、これを取り外す対象と仮定する。
なお、同図では破損を受けた箇所を模式的に表示したが、以降の
図3(b)〜(d)ではこの表示を省略した。
【0033】
まず、当該板状外装材1Aを取り外す第1段階として、
図3(b)に示すように当該板状外装材1Aを水下側(図では左側)から押圧して水上側へずらし(摺動させ)、水上側の端部を弾性材3Cに当接させて圧縮させる。図では当初略V字状の弾性材が圧縮されて略縦長ハート状に見える弾性材を「3C"」と示している。この状態で、板状外装材1Aの水上側の係止部11及び水下側の係止部12は、支持材2A,2Aの係合部23,22から離反している。
【0034】
次に、当該板状外装材1Aを取り外す第2段階として、
図3(c)に示すように当該板状外装材1Aの水下側を上方へ持ち上げ、係止部12を係止片23'の上方まで持ち上げ、それと共に隣接する上段側(図では右側)の板状外装材1Aを同じ要領で水上側へずらし(摺動させ)、その水下側を上方へ持ち上げる。
【0035】
そして、当該板状外装材1Aを取り外す第3段階として、
図3(d)に示すように当該板状外装材1Aの水上側(図では右側)を上方へ持ち上げて取り外せば当該板状外装材1Aのみを取り外すことができる。その際、弾性材3Cは、板状外装材1Aの押圧から開放されるため、弾性回復した状態(略V字状)で所定位置に残っている。なお、当該板状外装材1Aの水上側を持ち上げる際に、支障(邪魔)にならないように隣接する上段側の板状外装材1Aを水上側へずらしてその水下側を持ち上げたが、特に問題なければ必ずしもこのような操作(手間)を行わなくてもよい。
【0036】
その後、新たな板状外装材1Aを当該部位に配設する際には、前述の操作を逆に行えばよく、即ち
図3(d)の状態から順に、
図3(c)、
図3(b)、
図3(a)となるように取り付ければよい。
そして、隣接する上段側の板状外装材1Aは、
図3(c)の状態となっている筈であるから、同様に順に、
図3(b)、
図3(a)となるように元に戻せばよい。
【0037】
前記前記
図1(b)の第2実施例の板状外装材を用いた外装構造を施工する方法を
図4(a)〜(d)に基づいて説明する。
なお、ここでは第2実施例を例にしたが、他の第1,第3〜第6実施例でもほぼ同様の施工手順にて施工できることを確認している。
【0038】
第1の工程として、
図4(a)に示すように下地4上に前記構成の支持材2Aを固定する。
具体的には、下地4上に横片部21を沿わせ、該横片部21の端縁をビスや押さえ具等にて固定している。
なお、同図は下地4上に予め所定の位置に支持材2Aを取り付けた状態を示したが、以後の
図4(b)〜(d)はその下段側に板状外装材1Aを配設している状態を示している。
【0039】
第2の工程として、
図4(b)に示すように前記支持材2Aに前記構成の弾性材3Cを配すると共に、
図4(c)に示すように該弾性材3Cが圧縮されるように前記構成の板状外装材1Aを配する。
なお、その上段側に板状外装材1Aが配設されていない以外は、
図4(b)は前記
図3(d)と、
図4(c)は前記
図3(c)とほぼ同様である。
【0040】
第3の工程として、
図4(d)に示すように前記板状外装材1Aの係止部11,12を、前記支持材2A,2Aに係合させると共に、前記
図3(a)に示すように板状外装材1Aを水下側へずらして(摺動して)前記弾性材3Cにて係止部11,12を支持材2A,2Aの下方係合部23、上方係合部22に弾性付勢して取り付ける。
なお、その上段側に板状外装材1Aが配設されていない以外は、
図4(d)は前記
図3(b)とほぼ同様である。
【0041】
このように、本発明の板状外装材を用いた外装構造の施工方法を構成する第1の工程〜第3の工程は、何れも特殊な治具や熟練技術を必要なく極めて容易に行うことができ、実用的価値が高いものである。
【0042】
そして、このように施工された本発明の板状外装材を用いた外装構造は、それぞれ簡易な構成の板状外装材1A,1B、支持材2A〜2D、弾性材3A〜3Dからなり、板状外装材1A,1Bの少なくとも二箇所の係止部11,12(13,14)が支持材2A〜2Dの係合部22,23,26b,26cに係止し、且つ弾性材3A〜3Dにて水下側へ弾性付勢される状態で安定に取り付けられ、板状外装材1A,1Bと下地4の係合強度を高め、敷設箇所の制限を減らし、屋根や壁に対する外装材の自由度を高めている。
特に中央付近にも係止部13,14を備える板状外装材1Bは、より安定に取り付けられるものとなる。
【0043】
また、仮に暴風雨等にて一部の板状外装材1A,1Bが完全に中央付近にて分断するような破損が生じたとしても、水上側の破損部分も水上側に設けた係止部11が支持材3A,3Dに係止した状態で保持され、水下側の破損部分も水下側に設けた係止部12が支持材3Aに係止した状態で保持されるため、それぞれ継続的に支持材3A,3Dに保持され、落下等の重大な落下事故を引き起こすことがない。即ち落下や飛散の事故を減らし、事後のメンテナンスを容易に行うことができる。
この場合にも、特に中央付近にも係止部13,14を備える板状外装材1Bは、破損部分が複数箇所にて保持されるために、より安定に保持され、落下事故を起こす可能性が極めて低い。
【0044】
さらに、本発明では、破損した板状外装材1A,1Bを新たな板状外装材1A.1Bと交換するに際し、隣接する板状外装材1A,1Bに殆ど影響を与えることがなく、破損した板状外装材1A,1Bのみを容易に取り外すことができ、新たな板状外装材1A,1Bも容易に取り付けることができるので、補修工事に要する費用と時間を大幅に削減することができる。