(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
積層プラスチックフィルムからなる包装袋本体の側部内表面に、外気の袋内への侵入を阻止する外側逆止機能を有するフィルム状逆止ノズルを、その基端部の融着によって接合して突設させてなるフレキシブル包装袋において、
前記包装袋本体の、フィルム状逆止ノズル基端部との融着部下部を含むその近傍の位置に、対面する2枚の積層プラスチックフィルム同士を融着して形成した整流・補強用シール部を有し、
該整流・補強用シール部は、その上端部が、フィルム状逆止ノズルの注出口に到る下辺外周シール部内縁方向の延長線上に設けられたものであり、かつ前記フィルム状逆止ノズル先端位置の引裂き開口によって形成される注出口の、厚み方向の開口径(d)を、最大開口径(D)の1/3以下(d≦1/3D)に抑制するものであることを特徴とするフレキシブル包装袋。
前記整流・補強用シール部は、包装袋本体のフィルム状逆止ノズル側縦シール部と、フィルム状逆止ノズルの下辺外周シール部のノズル基端部分との融着部を含む領域に形成された、縦長楕円形状のヒートシール部からなることを特徴とする請求項1に記載のフレキシブル包装袋。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
外気の袋内への侵入をそれ自身が自動的に阻止する、セルフシール逆止機能を有するフィルム状逆止ノズルは、熱可塑性の一軸もしくは二軸延伸ベースフィルム層と、そのいずれか一方、もしくはその両側を挟むように積層してなるシーラント層とからなる2層もしくは3層の軟質積層プラスチックフィルム(以下、3層の例で述べる)を表裏となるように重ね合わせてなり、たとえば、2枚で一対の軟質積層プラスチックフィルムにおける対面する前記シーラント層どうし、または半幅に折返してなる1枚の軟質積層プラスチックフィルムの、互いに対向するシーラント層どうしを、包装袋の袋本体に接続される基端部および、液状物の注出通路となる中央部分を除く外周部分について、所定の幅、たとえば0.5〜3.0mmの幅、好ましくは1.0〜2.0mmの幅にわたってヒートシール、高周波シールまたは、インパルスシール等によって相互に皺が寄らないように平坦に融着させて、全体として略楔形を呈するように形成したものである。
【0020】
前記フィルム状逆止ノズルの有する逆止機能とは、後で詳細に説明するように、包装袋から被包装物を注出する際に、被包装物と入れ代わって、空気等が液状被包装物が充填された袋本体内へ侵入するのを防ぐ外側逆止機能であって、例えば、特開2005−52596号の逆止ノズルのように、被包装物が袋本体から排出するのを防ぐ内側逆止機能とは異なるものである。
【0021】
このフィルム状逆止ノズルは、被包装物の負荷を受けないので、PE20/NY15/PE20のような薄い、3層構造の積層プラスチックフィルムが好適であり、薄ければ薄いほどよく、腰の弱いフィルムの方が逆止作用が良好である。とくに、表裏2枚の積層プラスチックフィルムは、フラット性(平坦度)の高いものの方が高い逆止効果が得られ、表裏2枚のプラスチックフィルムの重合時の隙間を2μm〜300μm程度とすることが必要となる。また、シーラント材料としてPVDCを用いて、例えば、PE15/PET12/PVDC5の組み合わせからなる薄く柔らかい3層積層フィルムにより逆止ノズルを形成した場合には、注出口が小さな力で開きやすく、注ぎ出しが容易で、さらにPVDC自身が、ガスバリア性とヒートシール性に優れているため、ベースフィルムにガスバリア層を形成する必要がない点で好ましい。
【0022】
このようなフィルム状逆止ノズルは、その基端部分において、例えば、このノズルの外表面に位置することになるシーラント層、たとえば、無延伸の各種PE層、PP層、EVA層、メタロセン触媒ポリエチレン層等のオレフィン系樹脂層、エチレン酢酸ビニル共重合体層、エチレンアクリル酸エチル共重合体層、アイオノマー層、PVDC層、EVOH層等の熱可塑性樹脂層を介して、軟質積層プラスチックフィルム(主として2層)からなる包装袋本体の内表面のシーラント層(好ましくは、同種のシーラント層)に、たとえばヒートシールによって融着させることにより、該包装袋本体から突出した状態で簡易、迅速に、しかも確実に融着接合され、
図2に示すようなフィルム状逆止ノズルを備えるフレキシブル包装袋Aとして使用される。
【0023】
なお、フィルム状逆止ノズル1は、
図3に、
図2のノズル幅方向のIII−III線に沿う拡大断面図で示すように、相互に融着される表裏のそれぞれの積層プラスチックフィルム3,4を、たとえば縦方向を積層プラスチックフィルムのほぼ幅方向に向けて配設したそれぞれのベースフィルム層5、5’と、このベースフィルム層5、5’の両面に積層したそれぞれのシーラント層6,6’、7,7’との3層構造としたところにおいて、互いに対向する内面側のシーラント層6、6’どうしを、基端辺を除く周辺部分で、所定の幅、たとえば0.5〜3mmの幅、好ましくは1.0〜2.0mmの幅にわたって、好適にはヒートシールにより所要の形態(楔形)となるように融着させることで、簡易迅速に、しかも常に確実に製造することができる。ここにおける「ほぼ幅方向」とは、先に述べたのと同様に、引裂き方向、ひいては、逆止ノズル開口縁部の延在方向を、積層プラスチックフィルムの幅方向に対して0〜15°の範囲の角度で傾斜させることがあることを考慮したものである。かかるフィルム状逆止ノズル1は、その平坦な形状に特徴があり、それの基端部で、外面側のシーラント層7、7’を包装袋本体2の内表面にこれも好ましくはヒートシールによって融着させることで、その包装袋本体2に、常に適正にかつ確実に、しかも簡単に接合させることができる。
【0024】
一方、包装袋本体のフィルム構成としては、それの外表面に位置するベースフィルム層および、内表面に位置するシーラント層のそれぞれを、フィルム状逆止ノズルと同種のベースフィルム層およびシーラント層とすることができる。また、フィルム状逆止ノズルと包装袋本体のベースフィルム層とシーラント層との間に、それぞれ異なる中間層を、適宜、介装させてもよい。ここで好ましくは、軟質積層フィルムからなる袋本体の内表面を形成するシーラント層は、該逆止ノズルの最外層のシーラント層と同種の樹脂材料により構成する。これによれば、該逆止ノズルと袋本体との融着接合強度を十分に高めることができる。
【0025】
包装袋本体は、例えば、2層もしくは3層構造の積層フィルムのうちの一軸もしくは二軸延伸ベースフィルムを、厚みが8〜30μmのポリエチレンテレフタレートフィルム層(PET層)やナイロン樹脂フィルム層(NY層)、エチレンビニルアルコール(EVOH)などにて構成することが好ましく、シーラント層としては、10〜60μmの厚みの無延伸のPE層またはPP層、EVA層、アイオノマー層、EVOH層などにより構成することが好ましい。
【0026】
すなわち、ベースフィルム層としてのPET層やNY層は、優れた水蒸気不透過性および、高いガスバリア性を発揮させる上で好ましく、また、シーラント層としてのPE層およびPP層は、比較的低い温度のヒートシール性に優れ、シール強度を向上させる上で好ましい。
【0027】
このような本発明のフィルム状逆止ノズルを備えた包装袋内に充填した液状被包装物の注出は、前記フィルム状逆止ノズルの先端部寄りに形成される開口予定部分(引き裂き誘導疵やノッチの付加位置より先端側)を手指によって切り取って開封した後、当該包装袋の本体部分を、フィルム状逆止ノズルの開口部(注ぎ口)が下方に向く姿勢となるように傾動させることにより行われる。
【0028】
この場合、軟質の表・裏一対の積層プラスチックフィルムからなるフィルム状逆止ノズルの注出通路は、液状物が常時介在することにより生ずる、フィルム−液体−フィルム間の分子間力による密着が、液状被包装物の水頭圧の作用や、手指によって包装袋の本体部分胴部を加圧することによる作用によって解放されることになり、したがって、表・裏の側に離隔して大きな隙間を作ることになり、該液状被包装物の注出を許容する態勢となる。
【0029】
なお、軟質の積層フィルムからなる袋本体部分は、フィルム状逆止ノズルの開口部(注ぎ口)を通じて液状被包装物を注出する際、液状被包装物の注出にもかかわらず、該逆止ノズルのもつセルフシール逆止機能(注ぎ出された液状被包装物に代わって、空気が袋本体内に侵入しないこと)により、外気の吸い込み(逆流)が行われないので、その注出体積分に相当する量だけ順次に収縮ないしは潰れ変形することになる。
【0030】
即ち、包装袋内の液状被包装物は、フィルム状逆止ノズルの開封下で、それを傾動させることによって、所要量が袋内から注出され、そして、フィルム状逆止ノズルの開口部からの該液状被包装物の流出は、この包装袋を元の起立姿勢に復帰させることにより停止する。この流出の停止により、該フィルム状逆止ノズルの注出通路内および袋本体内の非液体部分は、袋本体内に充填されている液状物が毛細管現象によって、これらの部分が常時、液状被包装物が介在して濡れた状態になるため、その停止と同時に、フィルム状逆止ノズルの積層プラスチックフィルムの内面どうしは相互に強く密着し、したがって、フィルム状逆止ノズルの先端部に設けた前記開口部もまた、密着したままとなるため、外気の、袋本体部内への侵入を確実に阻止することができる。
【0031】
以上の説明から明らかなように、このフィルム状逆止ノズルを構成する2枚の積層プラスチックフィルムの内表面(注出通路)には、袋本体内に液状物が残っている限り、毛細管現象によって常時液状物が介在することになる。即ち、このフィルムどうしが密着することによる外側逆止機能は、フレキシブル包装袋の起立復帰によって、該フィルム状逆止ノズルが水頭圧の作用から解放されて製造時の元形状に復帰することに加え、フィルム状逆止ノズル内の液状被包装物の一部が、袋本体部内へ還流するに際して、減圧により液状被包装物によって濡れた表裏一対のフィルムどうしの内表面(注出通路)が、相互に吸着し合うこと等によって自動的に行われる(セルフシール)。そして、このような密着は、包装袋からの液状被包装物の注出に伴って、収縮ないしは潰れ変形された袋本体部分が、それに固有の弾性復元力に基づいて、その内部を減圧傾向へと作用するときに、より確実になる。
【0032】
しかし、包装袋内に液状被包装物が多量に存在した状態で、上述したように包装袋を傾動させて被包装物を注出しようとすると、わずかな傾動にもかかわらず、被包装物の高い水頭圧によって、多量の被包装物がフィルム状逆止ノズル部分に流れ込んでしまい、注出量をコントロールすることができなくなると共に液だれが発生しやすく、また被包装物の水圧によってノズル外周シール部が剥離しやすいという問題点がある。反対に、袋内被包装物が少なくなると、被包装物の水頭圧が小さくなるため、袋本体胴部を手指で押して被包装物に圧力を与えて、逆止ノズルの注出口を開口させる必要があるが、この場合もまた、注出量のみならず注出方向をコントロールすることが難しいという問題点がある。
【0033】
しかも、フィルム状逆止ノズルに流れ込んだ被包装物は、上記したように
図1(a)に示すノズル基端部1c下端と、液溜め部1b上端の突出部分とを通って、注出口1aへと向かうため、とくに袋内被包装物が少なくなって水頭圧が低くなると、注出口1aを大きく開口させることが難しくなり、被包装物を注出しづらくなるという問題点がある。
【0034】
そこで、本発明では、
図2に示すように包装袋本体2の、ノズル1との融着部(ノズル基端部1c)下部近傍の領域に、包装袋本体2の表裏2枚の積層プラスチックフィルムを、例えば縦長楕円形状に融着して形成した整流・補強用シール部19を設ける。そして、この整流・補強用シール部19によって、フィルム状逆止ノズル1に向う被包装物である液体の吐出流を一旦、堰き止めて整流化し、その後、その整流後の液状被包装物がフィルム状逆止ノズル1内へと流れ込むようにしたことで、被包装物の注き出し量がコントロールし易くなると共に、液だれの発生を効果的に抑制することができる。また、整流・補強用シール部19によって、ノズルを構成する表裏2枚の積層プラスチックフィルムの、相互に離隔する方向(被包装物の流入によって膨らむ方向)への開口が抑制されることになるため、ノズルに対する引張力が小さくなって、フィルム状逆止ノズル1へ被包装物が大量に流れ込んだとしても、逆止ノズル1の外周シール部が剥離し破袋するおそれがない。
【0035】
しかも、本発明では、
図2に示すように前記整流・補強用シール部19を、包装袋本体2のノズル側縦シール部2Lと逆止ノズル1の下辺外周シール部1uのノズル基端部分との融着部とを含むように対面する積層プラスチックフィルム同士をヒートシールして融着して形成しているため、とくに、被包装物の水圧が集中し易く、融着が剥離しやすいノズル基端部下端位置の、包装袋本体とフィルム状逆止ノズルとの接合を強化することができるという効果や、薄く、腰の弱い積層プラスチックフィルムからなるフィルム状逆止ノズルの、基端部下部のフィルム強度を、包装袋本体のフィルム強度と同程度まで向上させることができるため、フィルム状逆止ノズルの折れ曲がり等が抑制され、吐出性能を向上させることができるという効果もある。
【0036】
また、上記したように、フィルム状逆止ノズル内に流れ込んだ被包装物は、従来、
図1(a)に矢印で示すように、ノズル基端部1c下端および液溜め部1b上端の突出部分とを通って注出口1aへと向うため、実際の開口部分1dは注出口1aよりも小さくなる。袋内被包装物が多い場合には、フィルム状逆止ノズル内に多量に被包装物が流れ込み、その水圧によって注出口1aを大きく開口させることができるが、袋内被包装物が少なくなってしまうと、水頭圧が小さくなるため、注出口1aの開口部分1dが狭くなり被包装物を吐出できないという問題点があった。
【0037】
この点についても、本発明では、被包装物の吐出流下辺が、
図1(b)に矢印で示すように整流・補強用シール部19の上側角部と、液溜め部1b上端の突出部分とを通って注出口1aへと向うようになるため、注出口1aの開口部分1dが従来よりも大きくなり、液状被包装物を常にスムーズに吐出させることができるようになる。
【0038】
なお、前記整流・補強用シール部19の大きさ等は、包装袋本体の縦シール部2Lと逆止ノズル1の下辺外周シール部1uの基端部分との融着部が含まれる大きさであればよく、包装袋の容積やフィルム状逆止ノズルの大きさ等によって適宜選定することが好ま
しい。また、該整流・補強用シール部19は、その上端部がフィルム状逆止ノズル1の吐出口1aに到る下辺外周シール部1u内縁方向
の延長線上に位置するように設けること
で、上記整流化の効果
を大きく
することができると共に、ノズルの注出口1aを大きく開口させる
ことができる。
【0039】
なお、このようなフレキシブル包装袋においては、フィルム状逆止ノズルの逆止機能を効果的に発揮させるため、フィルム状逆止ノズルを構成する表裏2枚の積層プラスチックフィルムの密着力をより確実にすることが好ましく、そのためには、逆止ノズルを構成する積層プラスチックフィルムの注出通路内面に濡れ処理を施すことが有効となる。
【0040】
この濡れ処理とは、積層プラスチックフィルム相互間に働く密着力をより確実なものとし、上述した外側逆止機能(外気の袋内への侵入阻止)を有効に発揮させる処理であり、例えば、PEやPP、EAV、アイオノマーなどからなる積層プラスチックフィルムのシーラントフィルムの表面に、コロナ放電処理、UVオゾン処理、樹脂コーティング処理、金属蒸着処理、無電解めっき処理、金属低温溶射処理、プラズマエッチング処理、火炎処理等を好適例とする濡れ処理を施すことによって、フィルム表面の物理的な表面改質と極性官能基生成による化学的な表面改質との相乗効果により、フィルムの濡れ性を向上させるものである。
【0041】
なお、上記濡れ処理層は、フィルム状逆止ノズルを形成する前の積層プラスチックフィルムに対し、該ノズルの注出通路の形状に合わせて予め形成される。しかしながら、この濡れ処理が施された表裏2枚の積層プラスチックフィルムを重ね合わせて逆止ノズルを形成しようとすると、濡れ処理形成部分と注出通路部分とを正確に合わせることができず、例えば、
図4のフィルム状逆止ノズルの拡大図に示すように、注出通路8とノズル外周シール部17との境界(注出通路の側縁)に濡れ処理が施されていない部分18(非濡れ処理部分)が生じるおそれがあった。とくに被包装物が水などの濡れ性の低いものの場合には、被包装物の分子間力に伴う積層プラスチックフィルム同士の密着封止の効果が得られず、ノズル1先端を引き裂いて開口した際に、注出口1aから、この注出通路8の非濡れ処理部分18を通って空気等が侵入し、包装袋内の被包装物が汚損されるおそれがあった。
また、そもそも注出通路8とノズル外周シール部17との境界(注出通路の側縁)部分は、積層プラスチックフィルム同士の分子間力による密着力が弱い部分であり、その強化が必要であった。
【0042】
このような弊害を除くため、本発明では、前記濡れ処理を注出通路の内表面全体に施すことが好ましく、
図5のフィルム状逆止ノズルの一実施形態に示すように積層プラスチックフィルムの注出通路8に相当する部分と、その注出通路8の側縁からさらに1〜3mm外側の、外周シール部17にまで濡れ処理11(網掛けで示した範囲)を施すことが好ましい。
【0043】
これにより、本発明では、注出通路8全体に確実に濡れ処理11が施されることになり、従来のように注出通路8と逆止ノズルの外周シール部17との間に非濡れ処理部分が発生するようなことがなく、被包装物のもつ濡れ性等にかかわらず、空気等の包装袋内への侵入を完全に防ぐことができる。
【0044】
また、濡れ処理11が施された、注出通路8とノズル外周シール部17との境界部分は、被包装物を注出する際の圧力によって融着が剥がれやすいが、本発明では、注出通路8側縁からさらに1〜3mm外側の外周シール部17にまで濡れ処理11が施されているため、たとえノズル外周シール部17の注出通路8との境界部分が剥離することがあっても、セルフシール逆止機能を有効に発揮させることができる。
【0045】
なお、濡れ処理11の形成範囲を、注出通路8部分に加えて、注出通路8の側縁からさらに1〜3mm外側の部分に限定したのは、それが1mm未満では、上記のように注出通路8と逆止ノズルの外周シール部分17との境界部分の融着が剥がれた際に、濡れ処理11の施されていない部分が露出してしまうおそれがあり、一方、ノズル外周シール部17の厚みは通常、0.5〜3mm程度であるため、注出通路8側縁からさらに3mm超まで濡れ処理を施してしまうと、ノズル外周シール部17が剥がれるおそれがあるからである。
【0046】
なお、本発明に係るフィルム状逆止ノズルにおいては、その開口先端部、即ち、注ぎ口縁部の長さは、その積層プラスチックフィルムの積層数にかかわらず、5〜100mm程度とすることが好ましい。逆止ノズル開口部の長さが5mm未満では、袋本体部の容積との関連において注出量が少なすぎる一方で、それが100mmを越えると注出方向の正確な特定が難しくなる。
【0047】
そして、本発明では、
図2に示すように、前記フィルム状逆止ノズル1の開口予定位置(注出口)1aに、Iノッチ、Vノッチ、Uノッチ、ベースノッチおよびダイヤカットなどの開封手段からなる引裂き誘導疵を設けることが好ましく、該引裂き誘導疵を開封して使用状態に供する。
【0048】
また、この
図2に示す実施形態のフィルム状逆止ノズル1では、その下縁部の、開口予定位置1aより基端部1c側に幾分寄った位置に、液だれ防止用の尖塔状の突起16が設けられている。この突起16により、たとえ、フィルム状逆止ノズル1の注出口1aから液だれが発生したとしても、液だれは、包装袋の下方側に位置することとなる辺部分に達する前に、該突起16部分を伝い落ちることになり、袋本体部分2や、これを包囲する外容器内等が汚れることがなく、液だれが意図しない個所へ伝い落ちるおそれを効果的に取り除くことができる。
【0049】
なお、本発明では、このようなフィルム状逆止ノズル1の少なくとも開口部1a(注ぎ口)の外表面、すなわち、開口予定部1aを含むその近傍の外表面および前記液だれ防止用突起16に、撥水性物質・撥油性物質の塗布層10を設けることが好ましい。フィルム状逆止ノズル1に対し、このような処理を施した場合には、包装袋を起立姿勢に復帰させて液状被包装物の注出を停止するに際しての、いわゆる液切れ性が高まり、液状被包装物の不測の垂れ落ちを有効に防止することができる。
【0050】
上記撥水物質としては、シリコーンオイルやフッ素系樹脂、アクリル系樹脂もしくはアミド系樹脂からなる撥水コート剤を用い、撥油物質としては、シリコン樹脂やテフロン樹脂、シリコン変性アクリル樹脂などの撥油コート剤を用い、これらにウレタン系、アクリル系、エステル系、硝化綿系、アミド系、塩ビ系、ゴム系、スチレン系、オレフィン系、塩酸ビ系、セルロース系、フェノール系などの樹脂をバインダとして添加する。
【0051】
また、本発明に係るフィルム状逆止ノズルにおいては、ノズル先端の注出口の開口径が狭いほど外気の侵入を効果的に阻止することができるが、狭すぎると却って被包装物が吐出しにくくなってしまう。そのため、本発明では、フィルム状逆止ノズルの注出口1aの開口径(d)を、
図6の断面図に示すように、最大開口径(D)の1/3以下(d≦1/3D)となるようにす
る。このノズルの注出口1aの開口径(d)は、ノズル1の形状や、それを構成する積層プラスチックフィルムの材質の選択によって調整できる他、前記の包装袋本体2の、逆止ノズル1との融着部(ノズル基端部1c)下部に設けられる整流・補強用シール部19の位置や形状の選択によっ
て調整することができる。
【0052】
このような本発明のフレキシブル包装袋においては、そのフィルム状逆止ノズルの、外表面側のシーラント層を低融点のものとし、それの基端部を、包装袋本体の側部、多くは、上端部分の側部からの突出姿勢で、袋本体の内表面のシーラント層と融着接合させる一方、このフィルム状逆止ノズルの内表面側のシーラント層を高融点のものとすることにより、たとえば、
図2に示すように、フィルム状逆止ノズル1の基端部分1cの内表面同士を、そのフィルム状逆止ノズル1を、袋本体2内表面へ融着接合するに当たっての、本来の半分以下のヒートシール強度で接着し、相対的に低温で仮融着された状態とした仮封止部12とすることが好ましい。
【0053】
なおここで、低温仮融着による仮封止部12は、完全な融着接合部を形成する場合に比して、ヒートシール手段の加熱温度、加圧力および加圧時間の少なくとも一つを低減させることによって実現することができる。
【0054】
ところで、上記の仮封止部の形成位置は、
図2に例示するように、フィルム状逆止ノズル1の、包装袋本体2への融着接合位置に対応する位置とすることはもちろん、その対応位置よりも包装袋本体2の内側に幾分偏った位置、もしくは逆に、その対応位置より、包装袋本体2の外側に幾分偏った位置とすることもできる。そして、これらのいずれの場合にあっても、フィルム状逆止ノズル1に、フィルム状逆止ノズル1がそれ本来の機能、すなわちセルフシール逆止機能を発揮するのに十分な長さ(5〜80mm程度)の注出通路8を、仮封止部12の外側に残存させることが必要である。
【0055】
またここで、上記仮封止部の形成に当っては、フィルム状逆止ノズルに、高融点シーラント層および低融点シーラント層を用いることが必要になるが、これらのシーラント層をともに、直鎖状低密度ポリエチレンを含む低密度ポリエチレンによって形成すること、または、高融点シーラント層を、中密度もしくは高密度ポリエチレンにより形成し、低融点シーラント層を低密度ポリエチレンにより形成することが好ましい。
【0056】
なお、同一材質になるポリエチレンの、融点の高低の選択は、たとえば、シーラント層の積層に際する押出しラミネート条件等を相互に変化させることによって実現することも可能である。
【0057】
上記のように仮封止部を、フィルム状逆止ノズルの、包装袋本体への融着接合位置もしくはその近傍で、フィルム状逆止ノズルの基端部分に設けることは、包装袋に充填包装した液状被包装物の、その仮封止部より逆止ノズル先端側への流入が確実に阻止されることになり、被包装物が、たとえ50〜100℃に加熱されたものであっても、フィルム状逆止ノズルの、被包装物注出通路の大部分が、その注出通路を膨らませる向きの永久変形から十分に保護されることになる。
【0058】
これによれば、フィルム状逆止ノズルの、仮封止部より先端側の部分は、常にフィルム状逆止ノズルの機能を十分に発揮させることができ、包装袋からの被包装物の注出に際する、その袋本体内への外気の侵入を十分に防止することができ、また、被包装物の注出停止時のセルフシール逆止機能を確実に発揮させることができる。
【0059】
ところで、このような仮封止部を形成してなる包装袋においては、袋内被包装物が常温近くまで冷却された後の、その被包装物の包装袋からの注出に当って、包装袋に、たとえばそれの厚み方向に荷重を作用させて仮封止部の開封をもたらすとともに、フィルム状逆止ノズルの先端部分を破断もしくは切断除去して、注出開口を形成し、かかる状態で、包装袋を傾動させ、注出開口が下向きに向く注出姿勢とする。
【0060】
なおここで、包装袋の、仮封止部を除く他の融着接合部は、たとえば、仮封止部の2倍以上の強度でヒートシールされていることから、その仮封止部を開封するに必要な荷重が作用しても、不測の破袋を生じることはない。
【0061】
これがため、加熱された被包装物による膨満変形を受けていないフィルム状逆止ノズル部分は、袋内の被包装物の注出に伴う、包装袋本体内への外気の侵入を、包装袋本体の潰れ変形の下での、注出開口の、必要にして十分な開放下で有効に防止することができる。また、包装袋の、起立姿勢への復帰に基づく注出の停止に際し、被包装物に濡れたその注出ノズル部分の元形状への復帰によるセルフシール逆止機能によって包装袋本体内への外気の侵入を確実に阻止することができる。
【0062】
ここで、高融点シーラント層および低融点シーラント層のそれぞれをともに低密度ポリエチレンにより形成した場合、または、高融点シーラント層を、中密度もしくは高密度ポリエチレンにより形成し、低融点シーラント層を低密度ポリエチレンにより形成した場合のいずれにおいても、所期した通りのシール強度を有する仮封止および、フィルム状逆止ノズルに所要の融着接合を簡単かつ容易に実現することができる。
【0063】
また、前記仮封止部のヒートシール強度は、0.3〜3(N/15mm)、とりわけ、0.7〜1(N/15mm)の範囲とすることが、仮封止部の不測の開封を防止する一方で、他の融着接合部に何の影響をも及ぼすことなく、その仮封止部を作為的に開封する上で好ましい。
すなわち、それが0.3(N/15mm)未満では、加熱状態の液状被包装物の、袋内容量等との関連の下で、仮封止部に意図しない開封が起こるおそれがあり、一方で、3(N/15mm)を超えると、仮封止部を開封するのに要する荷重が、他の融着接合部等にも不測の影響(破袋や開封)を及ぼすおそれがある。
【0064】
ところで、仮封止部の開封のための荷重は、50〜350(N)、とりわけ100〜200(N)の範囲とすることが、シール部を含む他の個所の破袋などを招かず、輸送や作業中に誤って開封しないようにするために必要である。
即ち、開封荷重が50(N)未満では、被包装物を充填包装した包装袋の積み重ねにより、下段側の包装袋で、仮封止部が開封されるおそれがあり、逆に、350(N)を越える場合やヒートシール強度が高すぎる場合、仮封止部を開封するに要する荷重によって、他の融着接合部が影響を受けるおそれがある。
【0065】
また、本発明のフレキシブル包装袋においては、包装袋本体の下端に自立用底部を設け、自立できるようにしてもよい。この場合、包装袋本体部分は、自立用底部を除いた3方シール袋からなることが好ましく、その理由は、包装袋本体部分の左右側縁に縦シールを施すことで、包装袋本体内に液状被包装物を液中シール充填等によってガスレス充填した後も、その立ち姿を、上部についてはフラットな扁平形状に維持させることができ、即ち、フィルム状逆止ノズルを構成する表裏二枚の積層プラスチックフィルムのフラット性(平坦度)が高くなり、このことが、前記フィルム状逆止ノズルの逆止機能を保証し、液状被包装物を注出した後の逆止機能を確実に維持させる上で有効に作用するからである。
【0066】
この自立用底部を有する本発明のフレキシブル包装袋Aは、
図7の実施形態に示すように、包装袋本体2下端部(底部)に、船底形底部9を有した自立型のスタンディングパウチであり、底部9を除いた3方をヒートシール等により融着接合してなる自立袋であることが好ましく、これにより、袋本体2内に液状被包装物をガスレス充填した後も、左右側縁に施した縦シールによって立ち姿が上部はフラットな扁平形状で、下部が筒状形状を維持することができる。そのため、フィルム状逆止ノズル1を構成する表裏2枚の軟質積層プラスチックフィルム3、4は、フラット性(平坦度)が高く、セルフシール逆止機能を有効に発揮することができる。
【0067】
また、船底形底部9の両角部は、
図7に示すようにいずれも面取りし、底部9が下向き凸のゆるい湾曲状を呈するようにすることが好ましく、これにより、底部9の両角部が床面に接地して当たることがなく、自立型のスタンディングパウチSの下端全体が床面につくようになって自立安定した立ち姿を確保することができる。
【0068】
なお、自立型のスタンディングパウチの船底形底部9の両角部は、曲率半径Rが8mm以上になるように面取りすることが好ましく、より好ましくは、8mm〜20mmの範囲とする。そして、とくに前記曲率半径Rは、スタンディングパウチSの底部に向って次第に小さくなるように形づくることが好ましい。なお、曲率半径Rを8mm以上としたのは、8mm未満の場合には、船底形底部の両角部が床面に当たって、スタンディングパウチの中央部が浮き上がってしまうためである。