(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を説明する。
図1乃至
図6は医療装置の一実施形態に係り、
図1は冷却手段を有するトロッカーを備えた内視鏡システムを説明する図、
図2はトロッカーの一構成例を説明する分解斜視図、
図3はトロッカーの構成を説明する断面図、
図4はトラカールとトロッカーとを腹腔に刺入した状態を示す図、
図5はトラカールを介して体腔内に導入した硬性鏡と、トロッカーを介して体腔内に導入した生検鉗子とによる生検を説明する図、
図6はトロッカーの他の構成例を説明する図である。
【0012】
図1は外科手術を行う内視鏡システム1であり、本実施形態の内視鏡システム1は、光源装置2と、硬性鏡3と、カメラコントロールユニット(以下、CCUと略記する)4と、表示装置5と、冷却採取装置10とを備えて構成される。
【0013】
光源装置2は硬性鏡3の備える照明光学系に照明光を供給する。光源装置2と硬性鏡3とは光源ケーブル6によって着脱自在に接続される。硬性鏡3は基端部に接眼部を有し、その接眼部には硬性鏡用カメラ7が接続される。光源装置2から硬性鏡3に供給された照明光で照明された観察部位の光学像は、接眼部に接続された硬性鏡用カメラ7で撮像される。硬性鏡用カメラ7で撮像された光学像は、撮像信号に光電変換され、その撮像信号は撮像ケーブル8を介してCCU4に出力される。CCU4は、伝送された撮像信号を映像信号に生成して表示装置5に出力する。表示装置5は例えば液晶ディスプレイであって、CCU4から出力された映像信号を受けて、画面上に観察部位の内視鏡画像を表示する。CCU4と表示装置5とは映像ケーブル9によって着脱自在に接続される。
【0014】
冷却採取装置10は、冷却手段を備えた医療装置であるトロッカー20と、極低温流体供給装置(以下、流体供給装置と略記)30と、タンク31とを備えて構成されている。本実施形態において極低温流体は生体組織を瞬間的に冷凍する例えば−196℃近傍の低温な、液体窒素や、プロパン−イソペンタン寒剤とで構成された液体(以下、これを液体窒素と記載)である。
【0015】
流体供給装置30は、図示しない流体ポンプ、流体制御部を備え、図示しないフットスイッチの操作に基づいて、液体窒素を循環させる制御、循環されていた液体窒素をタンク31内に回収する制御等を行うように構成されている。
【0016】
トロッカー20と供給装置30とは液体窒素供給用の極低温流体供給チューブ(以下、流体チューブと略記する)11によって連結されている。流体チューブ11には、流入用チューブ12と流出用チューブ13とが備えられている。本実施形態において、流入用チューブ12は、トロッカー20に設けられた第1連結部材14に連結され、流出用チューブ13はトロッカー20に設けられた第2連結部材15に連結される。
【0017】
図2、
図3に示すようにトロッカー20は、トロッカー本体(以下、本体と略記する)21と、冷却筒22と、冷却シート23と、蓋体24と、先端部25とを備えて構成されている。
【0018】
先端部25は硬質部材、例えば樹脂製、金属製であり、生検鉗子等の処置具が通過する貫通孔25aを備えている。この貫通孔25aは、生検手段挿通路の最先端部を構成する。先端部25は先端側に斜面部25bを備え、基端側に凹部25cを備えている。凹部25cの内周面には雌ネジ部25dが設けられている。雌ネジ部25dは、本体部21に設けられる後述する凸部21bの雄ネジ部21eに螺合する。
【0019】
蓋体24は閉塞手段であって、本実施形態においてこの蓋体24は紙製である。蓋体24は、先端部25を構成する凹部25cの底面に設置される。蓋体24は、円形に形作られ、体腔内の水分及び湿気が冷却筒22の後述する挿通孔22aに侵入することを防止し、挿通孔22a内に格納された生検鉗子40の生検部41を術者の手元操作によって所定以上の力量で先端側に移動させることによって突き破られる用紙で形成されている。生検部41は回動自在に構成された一対の生検カップ42、43を備えている。
【0020】
冷却シート23は冷却手段であってシート状に構成されている。冷却シート23はシート本体23aと断熱シート23bとを備えて構成されている。シート本体23a内には液体窒素が循環する配管23cが備えられている。断熱シート23bは、シート本体23aの一面側に設けられており、他面側は後述する冷却用溝(
図2中の符号22d参照)に密着して配置される冷却面になっている。
【0021】
冷却シート23の一側面からは、2つの管路23d、23eが延出している。一方の管路23dは配管23c内に液体窒素を流入させる流入用であり、他方の管路23eは配管23c内の液体窒素を流出させる流出用である。
【0022】
冷却筒22は、硬質部材、例えば樹脂製、金属製であり、生検鉗子等の処置具が挿通する生検手段挿通路となる貫通孔である挿通孔22aを備える。この挿通孔22aの先端開口は突出開口であって、この突出開口を介して処置具が体腔内に導出される。
【0023】
冷却筒22は、先端側から順に、係入部22b、フランジ部22c、冷却用溝22d、筒本体22e及び鍔部22fを備えて構成されている。
【0024】
フランジ部22cの外形寸法と筒本体22eの外形寸法とは同寸法であり、後述する21iの内径寸法より所定寸法、細径である。
【0025】
筒本体22eの外周面には一対の管路用凹部22gが形成されている。管路用凹部22gは、断面形状が半円形、コ字状、V字状の所謂、溝であり、管路23d、23eが収納される。
【0026】
冷却用溝22dには冷却シート23が配置される。冷却用溝22dの幅寸法である長手軸方向の寸法、及び深さ寸法である筒本体22eの外周面から長手歩行中心軸に向かう寸法は、冷却シート23の外形形状を基に設定されている。深さ寸法は、冷却シート23の厚み寸法より所定量、深く設定してある。
【0027】
冷却筒22には、例えばL字流路22hが一対形成されている。L字流路22hの先端開口は管路用凹部22g内に形成されており、この先端開口には管路口金26が固設されている。すなわち、それぞれの管路用凹部22g内の鍔部22f側端面には管路口金26が備えられている。
【0028】
一方、L字流路22hの基端開口は筒本体22eの基端側の外周面に形成されており、この基端開口には連結部材口金27が固設されている。すなわち、筒本体22eの鍔部22fの外周面からは、一対の連結部材口金27が突出している。
【0029】
本体部21は、硬質部材、例えば樹脂製、金属製であり、冷却筒22が配設される段付きの貫通孔である筒用孔21aを備えている。
【0030】
本体部21は、先端側から順に、凸部21b、胴部21c、太径部21dを備える。凸部21bの外周面には、先端部25の雌ネジ部25dが螺合する雄ネジ部21eが設けられている。太径部21dの側面には連結部材14、15がそれぞれ配設される連結部材用孔21fの一開口21gが設けられている。連結部材用孔21fは、前記連結部材口金27に対応している。
【0031】
段付きの筒用孔21aは、基端側から順に、鍔用凹部21h、長穴21i及び連通孔21kを備えている。
【0032】
鍔用凹部21hは鍔受け部であって、太径部21dの基端面に開口を備える。鍔用凹部21h内には、冷却筒22の鍔部22fが配置される。
【0033】
長穴21i内には、冷却筒22のフランジ部22c及び筒本体22eが遊嵌状態で配置される。
【0034】
連通孔21kは、長穴21iと外部とを連通する。連通孔21k内には冷却筒22の係入部22bが配置される。連通孔21kの先端側の開口は突出開口である。
【0035】
なお、本体部21の基端側には一対の切り欠き凹部21mが形成されている。切り欠き凹部21mは、鍔用凹部21hの底面から所定深さ寸法で形成されている。切り欠き凹部21mには、一対の連結部材用孔21fの他開口21nが形成されている。
【0036】
この切り欠き凹部21mには、L字流路22hの基端開口に固設された連結部材口金27が挿通して配置される。
【0037】
ここで、トロッカー20の組み立てを説明する。
【0038】
作業者は、まず、冷却シート23を冷却用溝22dに固定するため、冷却シート23を冷却筒22の冷却用溝22dに配置する。このとき、シート本体23aから延出している管路23d、23eをそれぞれ管路用凹部22g内に収納する。その際、作業者は、それぞれの管路23d、23eの端部を管路口金26に連通させる。そして、管路23d、23eの端部と口金部材とを例えば接着で水密に固定する。
【0039】
また、作業者は、冷却シート23の冷却面を、冷却用溝22dの底面に密着させた状態に巻き付けておく。そして、図示しない固定テープによって、冷却シート23を冷却用溝22d内に一体的に固定する。このことによって、冷却シート23の冷却用溝22dへの固定が完了する。
【0040】
次に、作業者は、冷却シート23が固定されている冷却筒22を、本体部21に取り付ける。その際、作業者は、冷却シート23が固定されている冷却筒22の係入部22b及びフランジ部22cを、筒用孔21aを構成する鍔用凹部21hを介して長穴21iの基端側に挿通させる。
【0041】
そして、作業者は、冷却筒22の筒用孔21aの奥方への挿入を行う。このことにより、冷却用溝22dに固定されている冷却シート23が、長穴21iに導入され、その後、筒本体22eも長穴21i内に導入されていく。
【0042】
作業者が、冷却筒22の筒用孔21aの奥方への挿入作業を継続して行うことによって、筒本体22eの外周面から突出している連結部材口金27が鍔用凹部21hに近接する。
【0043】
ここで、作業者は、本体部21と冷却筒22との回転方向の位置調整を行う。すなわち、連結部材口金27と鍔用凹部21hの底面に形成されている切り欠き凹部21mの開口とを対向させる。位置調整後、作業者は、冷却筒22の筒用孔21aの奥方への挿入作業を再開する。
【0044】
すると、その挿入作業によって、連結部材口金27が切り欠き凹部21m内に挿通されるとともに、冷却筒22の係入部22bが連通孔21k内に挿通され、鍔部22fが鍔用凹部21h内に挿通される。
【0045】
そして、鍔部22fの先端面が鍔用凹部21hの底面に当接することによって、冷却筒22が本体部21の筒用孔21a内に配置された状態になる。このとき、係入部22bの先端面は、蓋体24に当接することなく、近接して配置される。また、冷却シート23の断熱シート23bは、長穴21iの内周面に当接することなく、長穴21i内に配置される。さらに、連結部材口金27が切り欠き凹部21m内の所定位置に配置される。
【0046】
本体部21の長穴21iの内周面と冷却筒22のフランジ部22cの外周面との隙間、本体部21の長穴21iの内周面と冷却シート23を構成する断熱シート23bとの隙間、本体部21の長穴21iの内周面と冷却筒22の筒本体22eの外周面との隙間は断熱部32である。
【0047】
なお、断熱部32を設けるとともに、冷却筒22を構成するフランジ部22c、断熱シート23b及び筒本体22eの外周に断熱部材を設けるようにしてもよい。
【0048】
次いで、作業者は、連結部材14、15を、太径部21dの側面に形成されている一開口21gから連結部材用孔21fに挿通する。そして、連結部材14、15と連結部材口金27とを連通させ、その後、接着剤によって、連結部材14と連結部材口金27とを水密に固定する。同様に、連結部材15と連結部材口金27とを水密に接着固定する。その後、作業者は、鍔部22fと鍔用凹部21hとを接着によって水密に固定する。
【0049】
最後に、先端部25を凸部21bへ取り付ける。この際、作業者は、必要に応じて、蓋体24を、先端部25を構成する凹部25cの底面に設置する。そして、蓋体24を凹部25cの底面に設置させた状態にして、作業者は、先端部25の雌ネジ部25dを凸部21bの雄ネジ部21eに螺合していく。
【0050】
このことによって、
図3に示すように冷却シート23を本体部21の内部に備え、先端部25が凸部21bへ取り付けられたトロッカー20が構成される。このトロッカー20において、蓋体24は、凹部25cの底面と凸部21bの先端面とによって、挟持されている。
【0051】
即ち、本実施形態のトロッカー20は、先端部25を本体部21の凸部21bから取り外すことによって、蓋体24の交換を容易に行える。言い換えれば、ユーザーによって、選択的に蓋体24をトロッカー20に装着することができる。
【0052】
上述のトロッカー20を使用して被検体内の生体組織を生検鉗子40によって瞬間的に凍結採取する手順を説明する。
【0053】
生体組織を瞬間的に凍結させて採取を行う際、
図4に示すように患者90の腹部の所定位置に、硬性鏡3を腹腔90a内に導く挿通孔を有するトラカール91と、生検鉗子40を腹腔90a内に導く挿通孔22aの先端側の開口を蓋体24で塞いだトロッカー20とを刺入する。
【0054】
なお、トロッカー20の連結部材14、15にはそれぞれ図示は省略するが流入用チューブ12、流出用チューブ13が連結されている。また、トラカール91には、図示しない気腹チューブの一端部が取り付けられている。さらに、腹腔90a内には、硬性鏡3の視野を確保する目的及び手術機器等を操作するための領域を確保する目的で気腹用気体として、例えば二酸化炭素ガスなどが注入されている。
【0055】
術者は、トラカール91に硬性鏡3を挿通して、表示装置5の画面に表示される内視鏡画像を確認しながら、目的部位を観察する。このとき、体腔内の例えば病変部などの処置部位を特定した後、術者は、その部位の生体組織の採取を開始する。
【0056】
まず、術者は、供給装置30のメインスイッチをオン状態にする指示を行う一方、トロッカー20の挿通孔22aに生検鉗子40の挿入部44を配置する。
【0057】
次に、術者は、フットスイッチを操作して供給装置30によって液体窒素が循環させる状態にする。すると、タンク31内の液体窒素が、流入路を構成する流入用チューブ12、連結部材14、連結部材口金27、L字流路22h、管路口金26、管路23dを介して冷却シート23の配管23c内に流入する一方、流出路を構成する管路23e、管路口金26、L字流路22h、連結部材口金27、連結部材15、流出用チューブ13を介して循環する。このことによって、冷却用溝22dが冷却シート23によって冷却される。
【0058】
次いで、術者は、液体窒素の循環を確認したなら、生検鉗子40を構成する生検カップ42、43を開状態にする操作を行う。すると、それぞれの生検カップ42、43が、冷却シート23が配置されている冷却用溝22d近傍の挿通孔22aの内周面に当接する。このことによって、生検カップ42、43が−150℃以下の極低温に冷却される。
【0059】
次に、術者は、生検カップ42、43が冷却されたと判断したなら、フットスイッチを操作して供給装置30の動作状態を液体窒素をタンク31に回収する制御に切り替える。そして、生検鉗子40による組織採取を開始する。
【0060】
即ち、術者は、生検部41を体腔内に導くために生検鉗子40の押し出し操作を行う。すると、生検部41によって蓋体24を突き破られて、
図5に示すように生検部41が腹腔90a内に突出する。
【0061】
ここで、術者は、表示装置5の画面上に表示される内視鏡画像を確認して、生検部41を特定した部位に近接させる。そして、所定の手元操作を行って組織採取を行う。この組織採取において、生検カップ42、43が極低温に冷却されているので、生検カップ42、43内に採取された生体組織は酸欠と虚血の無い状態で瞬間的(例えば10
5℃/秒)に凍結される。この急速凍結によって、生検カップで採取した組織塊が、数μm以上の大きな氷晶形成による細胞組織ダメージを受けることが回避される。即ち、生体内臓器が、瞬時に生きたままの状態で、生検鉗子によって凍結採取される。
【0062】
この後、術者は、生検鉗子40をトロッカー20から抜去して、生検部41を液体窒素中に浸漬させて採取した生体組織を冷凍保存する。保存された生体組織は、病理にて−80℃〜−150℃で、光学顕微鏡或いは電子顕微鏡で観察可能な、光学顕微鏡及び電子顕微鏡用の凍結置換固定試料、或いは、電子顕微鏡用ディープエッチングレプリカ膜試料として作製される。
【0063】
具体的な一例として、生体組織は、例えば、−196℃で冷凍保存された後、約−80℃の2パーセントパラフォルムアルデヒト、或いは1パーセント四酸化オスミウム含有アセトン中で、12〜24時間凍結置換固定されて、生きた細胞組織形態像として保存される。なお、光学顕微鏡用においては、生きた細胞組織形態像をパラフィン包埋し、薄切り後、ヘマトキシリン・エオジン染色して病理診断学的検討が行われる。
【0064】
このように、医療装置であるトロッカーに冷却手段として配管を備える冷却シートを設けたことによって、液体窒素を冷却シートの配管に循環させて、トロッカーの生検手段挿通路となる貫通孔内に格納した生検鉗子の生検部を極低温に冷却した後、生体組織の採取を行うことができる。このことによって、極低温に冷却した生検部で生体組織の採取を行うことによって、生体組織を瞬間的に凍結させて採取することができる。
【0065】
また、トロッカーの生検手段挿通路となる貫通孔の先端開口を蓋体で塞いだことによって、被検体内の水分、湿気が貫通孔内に侵入することを防止することができる。このことによって、一対の冷却された生検カップが生体内の水分によって凍結されて、動作不良を起こすことを防止することができる。
【0066】
さらに、長穴の内周面とフランジ部の外周面との間、長穴の内周面と冷却シートの断熱シートとの間、及び長穴の内周面と筒本体の外周面との間に断熱部としての隙間を設けて、本体部が冷却されることを防止することができる。
【0067】
又、蓋体が不要の場合には蓋体を、先端部を構成する凹部の底面に設置することなく、先端部を本体部の凸部に螺着する。このことによって、貫通孔を有するトロッカーとして構成することができる。
【0068】
なお、再度、生体組織を凍結させて採取を行う場合には、蓋体を備えるトロッカーに交換する。
【0069】
また、本実施形態においては、蓋体を用紙で形成するとしている。しかし、蓋体は用紙に限定されるものではなく、被検体内の水分、湿気が貫通孔内に侵入する合成樹脂製の膜部材等であってもよい。
【0070】
さらに、本実施形態においては、トロッカーに冷却手段として冷却シートを設ける構成にしている。しかし、冷却手段は、極低温流体を循環させる冷却シートに限定されるものではなく、ペルチェ素子を使用した熱交換装置であってもよい。
【0071】
また、本実施形態においては、トロッカー20を分解・組立可能な構造としている。しかし、トロッカー20は、蓋体24と先端部25とを除き、分解・組立を前提とするものではなく、1つの構造体であってもよい。
【0072】
また、本実施形態においては、冷却手段の循環を供給装置30による制御としている。しかし、冷却手段の循環は、液体の気化圧力による受動的な循環であってもよい。
【0073】
図6は冷却手段として熱交換装置を備えるトロッカーを説明する図である。
【0074】
図6に示すトロッカー20Aは、冷却手段として冷却シート23に代えてペルチェ素子を備える熱交換装置33を有する。また、内視鏡システム1は、供給装置30に代えて図示しない電源装置を備えている。
【0075】
熱交換装置33の冷却面は、冷却用溝22dに密着させた状態で接着によって固定される。熱交換装置33からは図示しない電線が延出している。その電線は、電線挿通用孔を構成するリード線用管路34、L字路35、コネクタ用孔36内を挿通され、その電線の端部がコネクタ部37に接続されている。このコネクタ部37には電源装置から延出する電気ケーブル38が着脱自在に接続されるようになっている。
【0076】
電源装置には制御手段を構成するCPUが内蔵されている。CPUは、電源装置内に設けられている電源部、スイッチ、記憶装置、及び熱交換装置33のペルチェ素子と接続されている。スイッチは、ペルチェ素子の駆動状態をオンオフ操作する。
【0077】
その他の構成は上述した実施形態と同様であり、同部材には同符号を伏して説明を省略する。
【0078】
熱交換装置33を備えたトロッカー20Aの作用を説明する。
【0079】
トロッカー20Aは、電源装置のスイッチをオン操作することによって熱交換装置33が駆動状態になる。即ち、電源装置がオン操作されると、ペルチェ素子に電力が供給され、ペルチェ素子が駆動される。すると、冷却用溝22dが所定温度に冷却制御される。
【0080】
この冷却状態において、上述した実施形態と同様に、術者が、生検部41の生検カップ42、43を開状態にする操作を行う。すると、それぞれの生検カップ42、43は、熱交換装置33が配置されている冷却用溝22d近傍の挿通孔22aの内周面に当接して、生検カップ42、43が極低温に冷却される。
【0081】
このように、トロッカーに冷却手段として熱交換装置を設けることによって同様の作用及び効果を得ることができる。
【0082】
また、熱交換装置によれば、電源装置に備えるCPUによって冷却温度を適宜制御することが可能である。
【0083】
さらに、冷却手段を熱交換装置にすることによって、トロッカーに電線を挿通する電線挿通用孔を1つだけ設ければよいので、トロッカーを製造する際の作業性が簡略化されて、安価なトロッカーを提供することができる。
【0084】
上述した実施形態においては、冷却手段を備える医療装置をトロッカーとしている。しかし、冷却手段を備える医療装置は、トロッカーに限定されるものではなく、トロッカーに着脱自在に挿通されて、その挿通孔に生検鉗子等の処置具が挿通されるシース、或いは、生検鉗子等の処置具が挿通される処置具チャンネルを有する挿入が硬性、或いは軟性な内視鏡であってもよい。
【0085】
図7は冷却手段を備えるシースの一構成例を説明する図である。
【0086】
図7のシース50は、トロッカーに着脱自在に挿通される挿入部51を備えている。シース50は、前記トロッカー20の本体部21に対応する挿入部本体52と、冷却筒53と、熱交換装置33と、蓋体24Aとで主に構成されている。
【0087】
蓋体24Aは、閉塞手段であって、本実施形態における蓋体24Aは、ユーザーの手によって挿入部51の先端面に例えば接着によって固定される。
【0088】
冷却筒53は、硬質部材、例えば樹脂製、金属製であり、生検鉗子等の処置具が挿通する生検手段挿通路となる貫通孔である挿通孔53aを備える。この挿通孔53aの先端開口は突出開口であって、この突出開口を介して処置具が体腔内に導出される。
【0089】
冷却筒53は、先端側から順に、係入部53b、フランジ部53c、冷却用溝53d、筒本体53e及び鍔部53fを備えて構成されている。筒本体22eの外周面には管路用凹部53gが形成されている。管路用凹部53gは、断面形状が半円形、コ字状の溝であり、熱交換装置33から延出する電線が挿通するリード線用管路34が収納される。
【0090】
冷却用溝22dには熱交換装置33が配置される。冷却用溝53dの幅寸法、及び深さ寸法は、熱交換装置33の外形形状を基に設定されている。冷却筒53には、例えばL字路35が形成されている。L字路35の先端開口は管路用凹部53g内に形成されており、この先端開口には管路口金26が固設されている。一方、L字路35の基端開口は筒本体53eの基端側の外周面に形成されており、この基端開口は、挿入部本体52の後述するコネクタ用孔36に連通する。
【0091】
挿入部本体52は、硬質部材、例えば樹脂製、金属製であり、冷却筒53が配設される段付きの貫通孔である筒用孔52aを備えている。
挿入部本体52は、先端側から順に、挿入部51を構成する本体部52c、太径部52dを備えている。太径部52dの側面にはコネクタ部37が配設されるコネクタ用孔36が形成されている。コネクタ用孔36は、上述したようにL字路35の基端開口に連通する。
【0092】
段付きの筒用孔52aは、鍔用凹部52hと長穴52iと係入孔52kを備えている。鍔用凹部52hは鍔受け部であって、鍔用凹部52h内には、冷却筒53の鍔部53fが配置される。長穴21i内には、冷却筒53のフランジ部53c及び筒本体53eが配置される。係入孔52kには係入部53bが配置される。
【0093】
そして、熱交換装置33を備えた冷却筒53は、挿入部本体52の筒用孔52aに配置され、その後、例えば接着によって一体的に固定される。このことによって、挿入部51を備えるシース50が構成される。
【0094】
シース50を構成する挿入部51の先端面には、ユーザーによって必要に応じて蓋体24Aが接着固定される。蓋体24Aを接着固定することによって、挿通孔53aの先端開口が閉塞されて、貫通用孔53a内に被検体内の水分、湿気が侵入することが防止される。
【0095】
このように、シースに熱交換装置を設けることによって、トロッカーに挿通されるシースを交換することによって、生体組織の凍結採取を、容易に繰り返し行うことができる。
【0096】
その他の作用及び効果は上述したトロッカーと同様である。
【0097】
図8は冷却手段を備える内視鏡の一構成例を説明する図である。
【0098】
図8の内視鏡60は、挿入部61に図示しない例えば生検鉗子が挿通される処置具挿通チャンネル62を備えている。
【0099】
挿入部61の先端部63には、複数の光学レンズ64、及び撮像素子65を備えて構成された観察光学系66と、図示しない例えばLED等の光学素子を備えて構成された照明光学系と、冷却手段である熱交換装置33とが設けられている。処置具挿通チャンネル62の先端開口は、閉塞手段である蓋体24Aによって閉塞されるようになっている。
【0100】
処置具挿通チャンネル62の先端開口は、ユーザーによって必要に応じて閉塞される。つまり、ユーザーが、蓋体24Aを挿入部先端面の所定位置に接着固定して、処置具挿通チャンネル62の先端開口を閉塞することによって、処置具挿通チャンネル62内に被検体内の水分、湿気が侵入することが防止される。
【0101】
このように、内視鏡の挿入部の先端部に熱交換装置を設けることによって、内視鏡観察中に、生体組織の凍結採取を行うことができる。
【0102】
なお、図示は省略するがカプセル内視鏡に、被検体内の所定部位を生検する処置具を格納する格納部と、その格納部に格納された処置具の生検部を冷却する熱交換装置と、格納部内とカプセル外部とを閉塞する蓋体とを設けることによって生体組織冷凍採取装置を構成することもできる。このカプセル内視鏡において、熱交換装置は、凍結採取した生体組織を冷凍保存する冷凍保存装置を兼ねている。
【0103】
上述した実施形態においては、極低温で生体組織を瞬間的に凍結採取するとしている。しかし、極低温で瞬間的に凍結採取される組織は、人体組織に限らず、動物の組織であってもよい。
【0104】
尚、本発明は、以上述べた実施形態のみに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能である。