(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5665071
(24)【登録日】2014年12月19日
(45)【発行日】2015年2月4日
(54)【発明の名称】フッ素を含む汚染土壌を修復するための土壌改良材の製造方法および土壌改良材ならびにこれを用いた汚染土壌の修復方法
(51)【国際特許分類】
C09K 17/06 20060101AFI20150115BHJP
C09K 17/02 20060101ALI20150115BHJP
C09K 17/08 20060101ALI20150115BHJP
B09C 1/02 20060101ALI20150115BHJP
B09C 1/08 20060101ALI20150115BHJP
【FI】
C09K17/06 ZZAB
C09K17/02 Z
C09K17/08 Z
B09B3/00 304K
【請求項の数】11
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2009-256318(P2009-256318)
(22)【出願日】2009年11月9日
(65)【公開番号】特開2011-99079(P2011-99079A)
(43)【公開日】2011年5月19日
【審査請求日】2012年8月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】598015084
【氏名又は名称】学校法人福岡大学
(73)【特許権者】
【識別番号】506407475
【氏名又は名称】有限会社大牟田エコクリーン
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100093285
【弁理士】
【氏名又は名称】久保山 隆
(72)【発明者】
【氏名】押方 利郎
(72)【発明者】
【氏名】森田 博史
【審査官】
福山 則明
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−094901(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/128490(WO,A1)
【文献】
特開2006−263509(JP,A)
【文献】
特開2009−209283(JP,A)
【文献】
特開2004−137107(JP,A)
【文献】
特開2001−122645(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 17/00−17/52
B09C 1/08
C09K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素を含む汚染土壌に混合して用いられるフッ素を含む汚染土壌を修復するための土壌改良材の製造方法であって、粉砕された廃石膏を加熱脱水して得られた半水石膏に、火山灰土を混合攪拌する工程を含むフッ素を含む汚染土壌を修復するための土壌改良材の製造方法。
【請求項2】
前記火山灰土は乾燥または焼成したものである請求項1記載のフッ素を含む汚染土壌を修復するための土壌改良材の製造方法。
【請求項3】
前記火山灰土は前記半水石膏100質量部に対して10質量部以上である請求項1または2に記載のフッ素を含む汚染土壌を修復するための土壌改良材の製造方法。
【請求項4】
前記火山灰土は黒ボク土である請求項1から3のいずれかに記載のフッ素を含む汚染土壌を修復するための土壌改良材の製造方法。
【請求項5】
さらに硫酸アルミニウムまたは水酸化カルシウムを攪拌混合することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のフッ素を含む汚染土壌を修復するための土壌改良材の製造方法。
【請求項6】
廃石膏ボードを粉砕して紙と前記廃石膏とに分離し、前記廃石膏を加熱脱水する工程を含む請求項1から5のいずれかに記載のフッ素を含む汚染土壌を修復するための土壌改良材の製造方法。
【請求項7】
フッ素を含む汚染土壌に混合して用いられるフッ素を含む汚染土壌を修復するための土壌改良材であって、粉砕された廃石膏を加熱脱水して得られた半水石膏と火山灰土とを含むフッ素を含む汚染土壌を修復するための土壌改良材。
【請求項8】
前記火山灰土は乾燥または焼成したものである請求項7記載のフッ素を含む汚染土壌を修復するための土壌改良材。
【請求項9】
前記火山灰土は前記半水石膏100質量部に対して10質量部以上である請求項7または8に記載のフッ素を含む汚染土壌を修復するための土壌改良材。
【請求項10】
前記火山灰土は黒ボク土である請求項7から9のいずれかに記載のフッ素を含む汚染土壌を修復するための土壌改良材。
【請求項11】
請求項7から10のいずれかに記載の土壌改良材を、フッ素を含む汚染土壌に混合することを特徴とする汚染土壌の修復方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素を含む汚染土壌
を修復
するための土壌改良材の製造方法および土壌改良材ならびにこれを用いた汚染土壌の修復方法に関する。
【背景技術】
【0002】
廃石膏ボードのリサイクルにおいては、石膏ボード中に含まれるフッ素の除去が問題となる。フッ素除去技術としては、水酸化カルシウムを加えてフッ化カルシウムとする方法が一般的である。しかしながら、フッ化カルシウムの溶解度は比較的高いため、土壌環境基準(0.8mg/L)のように非常に厳しい規制値まで下げるために、非特許文献1に記載のようにリン酸水素カルシウム二水和物を加えてフルオロアパタイト(フッ素燐灰石)を生成させる方法が開発されている。また、非特許文献2に記載のように高炉セメントB種を用いて生成するエトリンガイト内部にフッ素が取り込まれることが知られている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】袋布昌幹、丁子哲治,“廃石膏ボードリサイクルにおける不純物の問題と対策〜フッ素などの化学物質に着目して〜”,廃石膏ボードの再資源化と地盤改良への適用に関するワークショップ,NPO法人北関東産官学研究会、同内廃石膏ボード再資源化研究会,2007年8月17日,ページp.1−6
【非特許文献2】亀井健史、蓬莱秀人,“高炉セメントB種による半水石膏のフッ素不溶化技術の開発”,地盤工学ジャーナル,社団法人地盤工学会発行,2009年3月27日,第4巻,第1号,ページp.91−98
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、リン酸水素カルシウム二水和物は高価であり、安定したフッ素の溶出防止のためには石膏への添加量を減らすことが難しい。そのため、非特許文献1に記載の方法はまだ事業化されていない。また、水酸化カルシウムを用いる方法は、前述のとおりフッ化カルシウムの溶解度が比較的高いため土壌環境基準をクリアできないほか、地盤改良材として用いた場合には改良後の土壌のpHが高く、盛土や埋め戻しなど利用先の地盤環境に悪影響を及ぼす恐れが指摘されている。さらに、非特許文献2に記載の高炉セメントB種の利用も水酸化カルシウムと同様に、強アルカリのため利用先の地盤環境面から問題がある。
【0005】
そこで、本発明では、廃石膏ボード等の廃石膏のリサイクルにおいて、石膏中に含まれているフッ素の溶出を防止し、フッ素を含む汚染土壌を修復することが可能な土壌改良材の製造方法および土壌改良材ならびにこれを用いた汚染土壌の修復方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の土壌改良材の製造方法は、粉砕された廃石膏を加熱脱水して得られた半水石膏に、火山灰土を混合攪拌する工程を含むことを特徴とする。これにより、廃石膏ボード等の廃石膏のリサイクルにおいて、粉砕された廃石膏を加熱脱水して得られた半水石膏に含まれるフッ素は、火山灰土の混合攪拌によって吸着および凝集され、溶出が防止される。そして、これにより得られた半水石膏と火山灰土とを含む土壌改良材は、フッ素を吸着および凝集することができるので、フッ素を含む汚染土壌に混合すると、汚染土壌中のフッ素を吸着および凝集し、フッ素の溶出を防止することができ、汚染土壌を修復することができる。
【0007】
なお、本発明に係る火山灰土とは、火山砕屑物(テフラ)を母材とする土壌をいい、土壌分類上では、腐植質火山灰土、黒色土、火山性黒色土、腐植質アロフェン土、黒ボク土や草原様褐色森林土などの名称で呼ばれるものである。
【0008】
ここで、火山灰土は乾燥または焼成したものであることが望ましい。火山灰土を乾燥することによって、火山灰土中の水分がなくなり、半水石膏と混合攪拌したときに火山灰土の保有水分が半水石膏と反応しない土壌改良材を製造することができる。また、火山灰土を焼成した場合には、火山灰土中の水分がなくなるとともに有機物が分解され、さらに加熱により滅菌されるので、土壌改良材を長期間保管しても、保管中に有機物が分解されることのない長期間安定な土壌改良材を製造することができる。
【0009】
また、火山灰土は半水石膏100質量部に対して10質量部以上であることが望ましい。火山灰土が焼成したものである場合には、火山灰土は半水石膏100質量部に対して10質量部以上であれば、フッ素溶出濃度が土壌環境基準0.8mg/L未満の土壌改良材を得ることができる。なお、火山灰土が乾燥したものである場合には、火山灰土は半水石膏100質量部に対して30質量部以上であれば、フッ素溶出濃度が土壌環境基準0.8mg/L未満の土壌改良材を得ることができる。
【0010】
さらに本発明の土壌改良材の製造方法では、硫酸アルミニウムまたは水酸化カルシウムを攪拌混合することが望ましい。これにより、火山灰土によるフッ素の吸着および凝集効果に加えて、硫酸アルミニウムまたは水酸化カルシウムによるフッ素の吸着および凝集がなされるため、よりフッ素の溶出が防止される。
【0011】
また、本発明の土壌改良材の製造方法は、廃石膏ボードを粉砕して紙と廃石膏とに分離し、廃石膏を加熱脱水する工程を含むことを特徴とする。廃石膏ボードを粉砕して紙と廃石膏とに分離し、この粉砕された廃石膏を加熱脱水して得られた半水石膏に、火山灰土を混合攪拌することで、廃石膏ボードから土壌改良材が得られる。
【発明の効果】
【0012】
(1)粉砕された廃石膏を加熱脱水して得られた半水石膏に、火山灰土を混合攪拌する工程を含む土壌改良材の製造方法により、半水石膏と火山灰土とを含む土壌改良材が得られる。この土壌改良材によれば、フッ素を吸着および凝集することができるので、フッ素を含む汚染土壌に混合すると、汚染土壌中のフッ素を吸着および凝集し、フッ素の溶出を防止することができ、汚染土壌を修復することができる。これにより、従来管理型最終処分場に埋立処分をしなければならなかった廃石膏ボード等の廃石膏のリサイクルを行うことが可能となる
。
【0013】
(2)火山灰土が乾燥または焼成したものであることにより、水分や有機物を含まない土壌改良材、さらには加熱により滅菌された土壌改良材を製造することができ、長期間保管しても、保管中に有機物が分解されることのない長期間安定な土壌改良材が得られるという効果を奏することができる。
【0014】
(3)さらに硫酸アルミニウムまたは水酸化カルシウムを攪拌混合することにより、火山灰土によるフッ素の吸着および凝集に加えて、硫酸アルミニウムまたは水酸化カルシウムによるフッ素の吸着および凝集がなされるため、よりフッ素の溶出が防止され、汚染土壌の修復効果がより高い土壌改良材が得られる。
【0015】
(4)廃石膏ボードを粉砕して紙と廃石膏とに分離し、この粉砕された廃石膏を加熱脱水して得られた半水石膏に、火山灰土を混合攪拌することで、廃石膏ボードから土壌改良材が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施の形態における土壌改良材の製造工程を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は本発明の実施の形態における土壌改良材の製造工程を示すフロー図である。
図1において、本発明の実施の形態における土壌改良材の製造方法では、まず廃石膏ボードを破砕し(S11)、さらに粉砕した後(S12)、紙と廃石膏とに分離する(S13)。石膏ボードは、2枚の紙の間に半水石膏に水を加えて練ったものを流し込み、板状に固化されて製造されるものであり、紙は分別することで容易にリサイクルや焼却等で処分することが可能である。
【0018】
次に、この粉砕された廃石膏を加熱脱水して半水石膏を得る(S14)。石膏ボードに使用されている石膏は、2分子の結晶水を持つ二水石膏(CaSO
4・2H
2O)である。この二水石膏は120〜150℃で加熱すると、結晶水の3/4を失って半水石膏(CaSO
4・1/2H
2O)に変わる。この半水石膏は、水を加えて混練し、放置すると、水和反応を起こして、再び元の二水石膏に戻って固まる性質を持っている。
【0019】
一方、黒ボク土は乾燥もしくは焼成して(S15)、この半水石膏に混合攪拌する(S16)。半水石膏中にはフッ素が1500mg/kg程度含まれるが、このフッ素は黒ボク土によって吸着および凝集される。黒ボク土には活性アルミニウム、粘土鉱物であるアロフェン(二酸化ケイ素・酸化アルミニウムの水和物)やイモゴライト等が多く含まれており、これらはリン酸などの陰イオンも多く多量に吸着する性質を有する。そのため、同じく陰イオンであるフッ素も同様に吸着し、結合することで、フッ素が不溶化される。これにより、フッ素の溶出が防止された土壌改良材が得られる。
【0020】
以上のように、半水石膏に乾燥もしくは焼成黒ボク土を混合攪拌することで、半水石膏に含まれるフッ素の溶出が防止され、汚染土壌の土壌改良材として使用することが可能となる。この土壌改良材は、さらにフッ素を吸着および凝集することができるため、無機性汚泥、土壌やヘドロ等のフッ素で汚染された汚染土壌に混合すると、汚染土壌中のフッ素を吸着および凝集するようになり、フッ素の溶出を防止することができる。したがって、この土壌改良材により汚染土壌を修復することが可能である
。
【0021】
なお、本実施形態においては、火山灰土として黒ボク土を使用しているが、土壌分類上、腐植質火山灰土、黒色土、火山性黒色土、腐植質アロフェン土、黒ボク土や草原様褐色森林土などの名称で呼ばれる他の火山灰土についても同様に使用することが可能である。
【0022】
また、本実施形態においては、乾燥もしくは焼成した黒ボク土を半水石膏に混合攪拌している。焼成した黒ボク土を混合した土壌改良材では、黒ボク土中の水分がなくなるとともに有機物が分解され、かつ加熱により滅菌されているので、土壌改良材を長期間保管しても、保管中に有機物が分解されることがなく、長期間安定である。一方、乾燥した黒ボク土では、黒ボク土中の水分がなくなり、半水石膏と混合攪拌したときに黒ボク土の保有水分が半水石膏と反応しないという安定性がある。なお、焼成も乾燥もしない黒ボク土では、半水石膏と黒ボク土を混合したときに、自然状態での黒ボク土が保有している水分と半水石膏が反応して二水石膏に戻ってしまい、汚染土壌の水分の吸収ならびに半水石膏の特徴の一つである固化作用が期待できなくなる。
【0023】
また、前述の黒ボク土に加えて、さらに硫酸アルミニウムまたは水酸化カルシウムを攪拌混合することにより、土壌改良材を製造することも可能である。これにより、火山灰土によるフッ素の吸着および凝集効果に加えて、硫酸アルミニウムまたは水酸化カルシウムによるフッ素の吸着および凝集がなされるため、よりフッ素の溶出が防止され、汚染土壌の修復効果がより高い土壌改良材が得られる。
【実施例】
【0024】
以下、本発明を実験結果に基づいて説明する。試験用の試料(サンプル)は、次のようにして作成した。
(1)試料番号1は、半水石膏それ自体を溶出試験用サンプルとした。
(2)試料番号2〜4の乾燥黒ボク土は、雨の振込みを防止した屋内で自然乾燥(風乾)した後、粉砕して所定量の半水石膏と混合し、これを溶出試験用サンプルとした。
(3)試料番号5〜7の乾燥黒ボク土は、350℃の乾燥キルンを用いて焼成した後、粉砕して所定量の半水石膏と混合し、これを溶出試験用サンプルとした。
(4)試料番号8は、半水石膏に所定量の消石灰を混合し、これを溶出試験用サンプルとした。
(5)試料番号9は、半水石膏に所定量の乾燥黒ボク土および硫酸アルミニウムを混合し、これを溶出試験用サンプルとした。
なお、試験用のいずれの試料(サンプル)も、半水石膏と混合した後、チャック付ポリ袋に入れ、室温で14日間養生した資料を溶出試験に用いた。また、溶出試験方法は環境庁告示第46号に準拠して行った。
【0025】
表1に実験結果を示す。
【表1】
【0026】
表1から以下のことがわかる。
(1)半水石膏それ自体からは、土壌環境基準(0.8mg/L)を超えるフッ素の溶出が確認された(試料番号1)。
(2)乾燥黒ボク土では、半水石膏100部に対して30部を加えることでフッ素溶出濃度は土壌環境基準0.8mg/L以下になった(試料番号4)。したがって、半水石膏100部に対して乾燥黒ボク土30部以上を加えることで、フッ素溶出濃度を土壌環境基準0.8mg/L以下とすることが可能であると思われる。
(3)焼成黒ボク土では、半水石膏100部に対して10部以上を加えることでフッ素溶出濃度は土壌環境基準0.8mg/L以下になった(試料番号5〜7)。
(4)既往の技術である消石灰10部を加えた試験では、フッ素溶出濃度は土壌環境基準を超えることが確認されたばかりでなく、pHが12.9と高い値であった。この場合、自然環境に及ぼす影響が懸念される(試料番号8)。
(5)半水石膏に乾燥黒ボク土および硫酸アルミニウムを加えたサンプルでは、フッ素溶出濃度は土壌環境基準0.8mg/L以下であった(試料番号9)。
(6)既往の技術である消石灰10部を加えた試料(試料番号8)のpHは強アルカリ性を示しているのに対し、乾燥黒ボク土および焼成黒ボク土を混合した試料(試料番号2〜7)の溶出液のpHは、いずれも中性を示している。このことから、本発明の土壌改良材は、汚染土壌の浄化材として利用しても、利用先の土壌のpHを上昇させない、すなわち自然に優しい土壌改良材といえる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明の土壌改良材は、無機性汚泥、土壌やヘドロ等のフッ素で汚染された土壌の修
復に用いることのできる土壌改良材として有用である。