特許第5665072号(P5665072)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5665072
(24)【登録日】2014年12月19日
(45)【発行日】2015年2月4日
(54)【発明の名称】ポンプとバルブを備えた液体供給装置
(51)【国際特許分類】
   F04B 53/10 20060101AFI20150115BHJP
   F04B 53/16 20060101ALI20150115BHJP
   F16K 7/17 20060101ALI20150115BHJP
【FI】
   F04B21/02 D
   F04B21/02 J
   F04B21/00 K
   F16K7/17 Z
【請求項の数】30
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2009-526155(P2009-526155)
(86)(22)【出願日】2007年9月3日
(65)【公表番号】特表2010-502873(P2010-502873A)
(43)【公表日】2010年1月28日
(86)【国際出願番号】FR2007051863
(87)【国際公開番号】WO2008029051
(87)【国際公開日】20080313
【審査請求日】2010年8月19日
(31)【優先権主張番号】0653560
(32)【優先日】2006年9月4日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】504288421
【氏名又は名称】デビオテック ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100089196
【弁理士】
【氏名又は名称】梶 良之
(74)【代理人】
【識別番号】100104226
【弁理士】
【氏名又は名称】須原 誠
(72)【発明者】
【氏名】シュネバーガー ニコラウス
(72)【発明者】
【氏名】ヴァレ ヴェロニク
(72)【発明者】
【氏名】シャペル エリック
【審査官】 田谷 宗隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−121076(JP,A)
【文献】 特表昭56−500440(JP,A)
【文献】 実開昭53−61701(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 53/10
F04B 53/16
F16K 7/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容積式ポンプ(1)を有する液体供給装置であって、前記容積式ポンプ(1)が、インレットバルブと、アウトレットバルブと、上流の液体貯留部(6)と前記ポンプ(1)の前記インレットバルブとに接続されるのに適しており、且つ、前記インレットバルブよりも上流に位置するインレットダクト(8)と、前記ポンプ(1)の前記アウトレットバルブに接続される、硬質材料からなるアウトレットダクト(2)と、ポンプ膜と該ポンプ膜の変形に応じて容量が変化するポンプ室とが設けられた制御手段を有するポンプ部とを有する液体供給装置において、
前記装置は、前記ポンプ(1)の外部に配置されたアンチサイフォンバルブ(4)と、基準室(5)とをさらに備え、
前記アンチサイフォンバルブ(4)は、前記ポンプ(1)の前記アウトレットダクト(2)に直接接続されるインレットチャネル(3)と、アウトレットチャネル(7)と、弁座(11a)と、上面及び下面を有する可動部材(11)とを有し、
前記弁座(11a)と前記可動部材(11)は互いに協働可能であり、前記インレットチャネル(3)と前記アウトレットチャネル(7)との間に液漏れ防止のされた液流動帯を画定し、
前記基準室(5)は、前記アウトレットチャネル(7)と流体連通しておらず基準圧力(Pref)を有しており、
前記可動部材(11)の前記上面は、前記可動部材(11)に前記基準室(5)の基準圧力(Pref)と同等の圧力を印加する流体と接触し、
前記可動部材(11)は、少なくとも前記基準圧力(Pref)を受け、液体が前記液流動帯を通過可能となる開位置から、前記可動部材(11)の前記下面が前記アンチサイフォンバルブ(4)の前記弁座(11a)と接触し前記液流動帯内の流れを防ぐ閉位置へ移動可能であり、
前記基準圧力(Pref)は、休止状態にある前記ポンプ(1)の前記インレットダクト(8)の圧力と略同等であり、
前記弁座(11a)及び/又は前記アンチサイフォンバルブ(4)の前記可動部材(11)は、軟質材料からなることを特徴とする液体供給装置。
【請求項2】
前記アンチサイフォンバルブ(4)の前記可動部材(11)が、その閉位置と開位置との間を、少なくとも前記基準室(5)の圧力(Pref)によって移動することを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記アンチサイフォンバルブが、前記インレットチャネル(3)の圧力(Pin)、前記アウトレットチャネル(7)の圧力(Pout)、及び、前記基準室(5)の圧力(Pref)が互いに等しくなる均衡位置にあるとき、前記可動部材(11)は開位置にあり、
前記アウトレットチャネル(7)の圧力(Pout)が、少なくとも所定のアウトレット圧閾値(Tout)の分だけ低下し、且つ、前記インレットチャネル(3)の圧力(Pin)、及び、前記基準室(5)の圧力(Pref)が一定であるとき、前記可動部材(11)は前記アンチサイフォンバルブ(4)の前記均衡位置から前記閉位置へ移動し、
前記基準室(5)の圧力(Pref)が、少なくとも所定のインレット圧閾値(Tin)の絶対値の分だけ上昇し、且つ、前記アウトレットチャネル(7)の圧力(Pout)が一定であるとき、前記可動部材(11)が前記アンチサイフォンバルブ(4)の前記均衡位置から前記閉位置へ移動することを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記ポンプ(1)は、ポンプ量が10マイクロリットル未満のマイクロポンプであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記アンチサイフォンバルブ(4)の前記アウトレットチャネル(7)が注入管に接続されており、前記注入管が遠心端を下に垂直になっている場合、前記所定の閉圧閾値(Tout)が前記注入管内の液柱によって前記アンチサイフォンバルブにおいて生じる圧力であるサイフォン圧力の反数(−Psiph)より小さいことを特徴とする請求項3に記載の装置。
【請求項6】
前記アンチサイフォンバルブ(4)が、前記インレットチャネル(3)、前記液流動帯、及び、前記アウトレットチャネル(7)が形成されているバルブ本体(10)を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記可動部材(11)は、前記液流動帯に沿って延在し、前記バルブ本体(10)の表面に液漏れしないように固定された可撓性の膜の一部であることを特徴とする請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記膜が弾性材料であることを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記基準室(5)は、前記ポンプ(1)の前記インレットダクト(8)と連通することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
前記ポンプ(1)の前記インレットダクト(8)に接続される液体貯留部(6)をさらに備えることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
前記基準室(5)は、前記液体貯留部(6)の圧力(Pres)と同じ圧力(Pref)を受けることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記液体貯留部(6)の容量は可変であることを特徴とする、請求項1又は11に記載の装置。
【請求項13】
前記液体貯留部(6)の圧力(Pres)は、前記液体貯留部(6)の外の圧力と略同等であることを特徴とする、請求項11又は12に記載の装置。
【請求項14】
前記液体貯留部(6)は、固定された貯留部本体(13)及び前記液体貯留部(6)の窪みを画定する可動の貯留部壁(14)とを有することを特徴とする請求項12に記載の装置。
【請求項15】
前記可動の貯留部壁(14)は、液漏れしないように前記固定された貯留部本体(13)の外面に固定されていることを特徴とする請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記可動の貯留部壁(14)は、ポリマー材からなる可撓性の膜で形成されていることを特徴とする請求項14に記載の装置。
【請求項17】
前記可動の貯留部壁(14)が、弾性材料からなることを特徴とする請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記アンチサイフォンバルブが、前記インレットチャネル、前記液流動帯、及び、前記アウトレットチャネルを含むバルブ本体を有しており、前記固定バルブ本体(10)と前記固定された貯留部本体(13)は、固定体(10、13)として一体的に形成されていることを特徴とする請求項6及び13のいずれか1項に記載の装置。
【請求項19】
前記アンチサイフォンバルブ(4)及び前記液体貯留部(6)は、前記バルブ本体(10)及び前記貯留部本体(13)を形成する前記固定体(10、13)の同一の表面(9、12)によって画定されることを特徴とする請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記アンチサイフォンバルブが、前記インレットチャネル、前記液流動帯、及び、前記アウトレットチャネルを含むバルブ本体を有しており、前記可動部材(11)は、前記液流動帯に沿って延在し、前記バルブ本体(10)の表面に液漏れしないように固定された可撓性の膜の一部であり、前記可動部材(11)の前記可撓性の膜、及び、前記可動の貯留部壁(14)の前記可撓性の膜は、同一の可撓性の膜からなることを特徴とする請求項7及び16のいずれか1項に記載の装置。
【請求項21】
前記可撓性の膜(11、14)は、可撓性の第1の層と、前記膜(11、14)の前記貯留部(6)と前記アンチサイフォンバルブ(4)の前記弁座(11a)に対向する面に位置する軟質の第2の層とを有することを特徴とする請求項20に記載の装置。
【請求項22】
前記可撓性の膜(11、14)は、前記アンチサイフォンバルブ(4)の前記液流動帯と前記液体貯留部(6)の窪みを形成するように、前記固定体(10、13)の表面に対して液漏れしないように固定されていることを特徴とする請求項19及び20のいずれか1項に記載の装置。
【請求項23】
前記可撓性の膜(11、14)は、超音波溶接、熱融着、又は、レーザー溶接によって、前記固定体(10、13)に液漏れしないように固定されていることを特徴とする請求項22に記載の装置。
【請求項24】
前記可撓性の膜(11、14)は、接着によって、前記固定体(10、13)に液漏れしないように固定されていることを特徴とする請求項22に記載の装置。
【請求項25】
前記可撓性の膜(11、14)は、保持機構によって、前記固定体(10、13)に液漏れしないように固定されていることを特徴とする請求項22に記載の装置。
【請求項26】
前記液体貯留部(6)は、前記固定された貯留部本体(13)に搭載されたカバー(15)をさらに備え、前記可動の貯留部壁(14)は前記カバー(15)と前記固定された貯留部本体(13)との間に収容されていることを特徴とする請求項14に記載の装置。
【請求項27】
前記基準室(5)は前記カバー(15)と前記可動の貯留部壁(14)との間に画定される空間に接続されていることを特徴とする請求項26に記載の装置。
【請求項28】
前記カバー(15)は、前記固定バルブ本体(10)と、前記固定された貯留部本体(13)とを形成する前記固定体(10、13)に搭載され、前記カバー(15)と前記固定体(13)によって、前記液体貯留部(6)と前記基準室(5)を収納する空間が画定されていることを特徴とする請求項18及び27のいずれか1項に記載の装置。
【請求項29】
前記ポンプ(1)は、前記アンチサイフォンバルブ(4)が休止している間は自吸する、すなわち、前記ポンプ(1)は前記インレット及びアウトレットバルブの絶対開圧力の比よりも高い圧縮比を有することを特徴とする請求項28に記載の装置。
【請求項30】
前記ポンプ(1)のポンプ量は、10μlより小さいことを特徴とする請求項29に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体貯留部に接続され、且つ、前記ポンプのインレット制御部材に接続されるのに適したインレットダクトと、前記ポンプのアウトレット制御部材に接続されたアウトレットダクトと、ポンプ膜及び該ポンプ膜の変形に応じて容量が変化するポンプ室が設けられた制御手段を有するポンプ部とを備えるポンプを有する液体供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液剤注入用ポンプのユーザにとって、サイフォン効果は代表的な大問題である。患者の体に液剤を注入する高さよりも、ポンプ、又は、液剤貯留部が高い場合、完全な漏れ防止がされていないポンプだと、注入管内の液柱によって圧力が生じ、当該圧力によって液体が体内へ送られてしまう。
【0003】
これは、例えばインスリン持続皮下注入法(CSII)のインスリンポンプ等のように、液剤貯留部を有する移動式注入ポンプによく見られる状態である。
【0004】
注入ポンプの技術的特徴点の一つとして、可変の容量を有する液剤貯留部が用いられている場合、当該液剤貯留部に圧力がかかると、同様の危険な状態が発生し得る。上記圧力は、CSII式ポンプのように液剤貯留部が換気された筐体内にあり、且つ、換気システムが故障した時に発生する。
【0005】
日常生活において、このような状況が生じる場面としては、ポンプのユーザが海やプールへ泳ぎに行ったときが挙げられる。患者が水からあがると、海水が乾燥することによって塩が生成される。この塩が、前記換気システムへの水の浸入を防ぐ親水性フィルタの膜を塞ぎ、海面気圧100キロパスカル(kPa)が筐体に閉じ込められる。その後、ユーザが航空機に搭乗し、該航空機が急激に巡航高度まで上昇したとする。このとき客室内の圧力は、海面よりも低い約72kPaの所定の圧力となり、前記筐体内に閉じ込められた圧力は前記貯留部から患者に送られる液剤に28kPaの推進力を発生させる。
【0006】
日常生活における別の場面としては、患者がポンプを注入位置よりも高い所に載置することが考えられる。注入管の長さや高度の差によっては、液体の重量に起因するサイフォン効果によって、ポンプ出口に吸引力を生じさせることがある。この場合もまた、圧力差(或いは「サイフォン圧力」Psiph)によって液剤が患者に向かって送られる。一般的には、注入管の長さが1メートル(m)で、薬剤の密度が水の密度に近い場合、圧力差が最大で10kPaになることもある。
【0007】
いずれの場合においても、液剤貯留部と患者の体の注入箇所との間に生じる正の圧力差(或いは「追加圧力」)という共通の事実に由来する危険性がある。
【0008】
通常、この危険性を緩和するために、液体の流れる領域に「クラックバルブ」が用いられている。このクラックバルブは、既定の状態では閉じており、予期できる最大の圧力差よりより大きな圧力差が生じると開く(EP0882466参照)。しかしながら、ポンプは、注入を行うたびに前記クラックバルブによって築かれた障壁を乗り越えなければならない。従って、この解決案は注入に必要とされる圧力が増加するという点で不利である。注入に必要とされる圧力の増加によって、消費エネルギーや、ポンプによる一回当たりの投与量の計測の正確さに問題を生じる。更に、前記貯留部とポンプ出口間の圧力差が、通常予測される圧力差を上回ると、バルブが開く。従って、バルブの寸法が重要になる。
【0009】
容積式のポンプ(例えば、WO90/15929、及び、EP183957参照)においては、前記ポンプのアウトレット制御部材として、三つのポートを有するアンチサイフォンバルブ(ASV)を用いることができる。このアンチサイフォンバルブ(WO90/15929の図1における18参照)はポンプに統合されており、液体用のインレットチャネル20及びアウトレットチャネル3と、基準ポート(基準圧力Pref、可動膜18aよりも高い外部圧力)とを有する。このバルブによって、液体が基準ポートからアウトレットに向かって流れるのを防ぐことができる。インレットとアウトレットとの間に存在する液流動帯は、まず前記インレットポートPinと前記基準ポートPrefとの間の圧力差、及び、前記基準ポートPrefと前記アウトレットポートPoutとの間の圧力差に応じて開閉する。
【0010】
前記サイフォンバルブの寸法によっては、前記二つの圧力差ΔPin=Pin−Pref、及び、ΔPout=Pref−Poutが同時に前記アンチサイフォンバルブに作用することがあるが、図1に図式的に示されるように、前記流動帯が開く原因となる前記二つの圧力差がそれぞれ異なるようにすればよい。この図では、二つの圧力差ΔPin、及び、ΔPoutによって特徴づけられるバルブ状態を、座標(ΔPin、ΔPout)上の点として示している。斜線領域内に点が位置する場合、バルブは閉じており、非斜線領域内に点が位置する場合バルブは開いている。二つの領域を区別する曲線は、開いた状態と閉じた状態との変わり目を示すものであり、バルブの特性を表すものである。
【0011】
アンチサイフォンバルブの動作を説明する。まず、以下にインレット圧力が基準圧力と釣り合っており、ΔPinがゼロである状態を検討する。この状態は、図1の水平軸に対応する。圧力差ΔPoutが、Tout(アウトレット圧閾値)を上回る場合、前記アンチサイフォンバルブは閉じている(図1の斜線領域)。ここで、Tout(アウトレット圧閾値)とは、前記アンチサイフォンバルブ固有の設定値である。一方、圧力差ΔPoutが、Toutを下回る場合、前記アンチサイフォンバルブは開いている(図1の非斜線領域)。
【0012】
さらに、垂直軸に対応する状態を検討する。前記基準圧力が前記アウトレット圧力と釣り合っており、ΔPoutがゼロである場合、圧力差ΔPinがTin(インレット圧閾値)を上回ると前記バルブが開く。ここで、Tin(インレット圧閾値)は、前記アンチサイフォンバルブ固有の別の設定値である。
【0013】
従って、ΔPinの増加したとき、或いは、ΔPoutの減少した時(或いは両方が同時に起こった時)に、前記アンチサイフォンバルブが閉位置から開位置に移動する。逆の場合も同様である。
【0014】
このようなアンチサイフォンバルブの開閉に関する開閉原理を表す曲線を、関数f(ΔPout)で表わすことができ、これにより条件(ΔPin、ΔPout)が、ΔPin>f(ΔPout)の場合に、前記バルブが開いていることが分かる。また、圧閾値Tout及びTinのそれぞれが、前記関数と軸とが、交差する点であることも分かる。
【0015】
図2は、このようなアンチサイフォンバルブの開閉に関する開閉原理を表す曲線の、より一般的な例である。図において、前記曲線の形状は、図1(f(ΔPout)=Tin+ΔPout(Tin/Tout))の場合とは異なり直線的ではなく、f(ΔPout)関係の一般的な原理を満たす形状をしている。
【0016】
前記f(ΔPout)関係を表す曲線がいかなる場合でも、バルブの状態を表す始点(ΔPin,ΔPout)に関わらず、
*開領域(曲線左側の非斜線領域)からスタートして、ΔPinが減少し、ΔPinがf(ΔPout)(Y軸上では、Tin)に到達又はそれより低い位置に留まると仮定すると、このように圧閾値を超えることによってすぐにバルブが閉じる/*”or remains”が矛盾しているように思いますが、仏語でも同様でしたので、そのまま訳しています。*/;
*開領域(曲線左側の非斜線領域)からスタートして、ΔPoutが増加し、ΔPoutがx(ここで、xは式ΔPin=f(x)の解)に到達又はそれより高い位置に留まると仮定すると、このように圧閾値を超えることによってすぐにバルブが閉じる;
*閉領域(曲線右側の斜線領域)からスタートして、ΔPinが増加し、ΔPinがf(ΔPout)(X軸上では、Tin)に到達又はそれより高い位置に留まると仮定すると、このように圧閾値を超えることによってすぐにバルブが開く;
*閉領域からスタートして、ΔPoutが減少し、ΔPoutがx(ここで、xは式ΔPin=f(x)の解)に到達又はそれより低い位置に留まると仮定すると、このように圧閾値を超えることによってすぐにバルブが開く。
【0017】
このような図1及び2に示す開閉原理のアンチサイフォンバルブにおいては、インレット閾値Tinが正の値で、アウトレット閾値Toutが負の値であり、点O(ΔPin=ΔPout=0とした時の原点)が閉領域に位置する。従ってバルブは既定の状態では閉じていることになる。
【0018】
理想的には、基準ポート或いは基準室の圧力Prefが、液剤貯留部内の液体の圧力Presと釣り合い(即ちPres=Pref)、圧力差ΔPout=res−Poutが充分に小さい時にのみ、バルブが開く。この理想的な構成において、液体貯留部Presと注入ポンプ出口との圧力差がさらに広がると、ポンプ内の圧力、或いは、ポンプの出口から液体を吸い上げる液柱によって、前記アンチサイフォンバルブ(ASV)が閉じられる。
【0019】
このようなシステム(例えばWO90/15929、EP183957に記載)において、前記アンチサイフォンバルブは、ポンプ自身のアウトレット制御部材としてポンプの出口に配置され、Pres=Prefとなるように設定される。上述した由々しき事態のように、水泳用水から発生した塩がポンプを収納する筺体の換気をブロックし、海面気圧100kPaが、基準圧力Prefとして、該筐体に閉じ込められたとする。ユーザーがその後、圧力72kPaの航空機の客室内にいた場合、追加圧力28kPaによってインレット制御部材(WO90/15929、図1のバルブ16)が開かれる。そして、貯留部内の圧力100kPaが、前記アンチサイフォンバルブ(WO90/15929、図1の領域20)のインレット圧力と釣り合い、以下のような状態になる。Pin=Pres=Pref、従って、ΔPin=0であり、ΔPout=28kPaとなる。よって、Tout<28kPaの場合、前記アンチサイフォンバルブは確実に閉じる。何らかの理由によって、圧力差ΔPoutが28kPaをさらに上回る場合、安全機能が作用し、前記アンチサイフォンバルブは閉じたままになる。
【0020】
この動作は、追加圧力差によって開き、負の追加圧力差によって閉じるバルブとは、逆の動作である。
【0021】
よって、流動開始圧力(或いは「アウトレット圧閾値」)Toutが、予想圧力差よりも小さい、即ち単なる2ポートバルブの流動開始圧力(或いは「インレット圧閾値」)Tinよりも小さいアンチサイフォンバルブを設計することが可能となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
EP183957等に記載のマイクロポンプは、液剤注入について、高い精度や少ないポンプ量などの利点を有する。また、微細加工技術を用いて、少ないポンプ量にも関わらず、自吸するのに充分高い圧縮比を有するマイクロポンプを製造することも可能である。これは、ポンプ全ての容量を、ポンプ量に比例して削減することによって可能となる。残念ながら微細加工では軟質材料を用いることができないため、バルブ、特にバルブの可動部及び/又は弁座には、硬質材料(例えばシリコン)が用いられることになる。
【0023】
従って、このようなポンプは埃や粒子に極端に敏感であり、これら埃や粒子が、硬質材料からなるバルブの接触面の間に引っかかると、バルブの密閉を妨げる。バルブが密閉されていないと、液剤貯留部と注入箇所との間の圧力差によって、危険な漏れが起きる可能性がある。
【0024】
例えば、上述した由々しき状態では、圧力差ΔPout=28kPaによってバルブが閉じるとしても、粒子によって漏れが発生すると、前述の圧力差によって液体が患者に送られることになり安全性が確保できなくなる。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明の目的は、先行技術における上記問題の解決された装置、具体的には自吸型マイクロポンプの利点と、粒子の影響が比較的少ないアンチサイフォンバルブの利点とを組み合わせることを可能とする装置を提供することにある。
【0026】
上記目的を達成するために、本発明の液体供給装置は、前記ポンプの外部に配置されたアンチサイフォンバルブをさらに備え、前記アンチサイフォンバルブは、前記ポンプの前記アウトレットダクトに接続されるインレットチャネルと、アウトレットチャネルと、弁座と、可動部材とを有し、前記弁座と前記可動部材は互いに協働可能であり、前記インレットチャネルと前記アウトレットチャネルとの間に液漏れ防止のされた液流動帯を画定し、前記可動部材は、液体が前記流動帯を通過可能となる開位置から、前記可動部材が前記バルブの前記弁座と接触し前記流動帯内の流れを防ぐ閉位置へ移動可能であり、前記可動部材は、前記アウトレットチャネルと流体連通していない基準室の圧力を受ける。
【0027】
これにより、マイクロポンプと外部バルブを組み合わせることにとって、マイクロポンプの精度を維持するとともに、使用可能なバルブの種類の幅を広げることができる。
【0028】
前記ポンプの外部にあるアンチサイフォンバルブは、微細加工技術とは異なる技術を用いて得ることができる。従って、例えば、粒子の影響が少ない大型のアンチサイフォンバルブを形成することができる。
【0029】
前記アンチサイフォンバルブの弁座及び/又は可動部材は、軟質材料からなることが好ましい。前記軟質材料は、例えばエラストマー、特にシリコーン又は天然ゴム、実際には合成ゴムである。
【0030】
従って、バルブが閉じている時に接触する領域が硬質材料(例えば、微細加工技術にて用いられるシリコーン、金属酸化物などの材料)からなる場合と比べて、軟質の外部バルブを用いることによって、マイクロポンプの精度を維持し、粒子に対する耐性が向上し、バルブが閉位置にあるときの漏れを削減することが可能になる。
【0031】
このように、微細加工された小型ポンプの利点と、粒子に対する耐性を有する軟質バルブの利点とを組み合わせることが可能である。
【0032】
実際にこのような外部バルブは微細加工されたバルブよりも大きく、死空間も大きい。自吸時に、空間内全体の気体が前記バルブを通り、液体が流れるようにするために、マイクロポンプは外部バルブの開閾値Tinに達するまで前記気体を圧縮しなければならない。従って、死空間及び前記外部バルブの開閾値(或いは、インレット圧閾値)Tinがマイクロポンプ、つまり全システムの自吸性能に影響する。
【0033】
前記アンチサイフォンバルブの前記可動部材が、その閉位置と開位置との間を、少なくとも前記基準室の圧力(Pref)によって移動することが好ましい。
【0034】
前記アンチサイフォンバルブの可動部材は、ΔPin=Pin−Pref、及び、ΔPout=Pref−Poutの二つの圧力差によって開く。
【0035】
特に好適な実施形態においては、外部バルブが既定の状態で開いており、所定のアウトレット圧閾値Toutが正の値で、所定のインレット圧閾値Tinが負の値である。この好ましい実施形態を図5及び6に示す。前記バルブが、前記インレットチャネルの圧力(Pin)、前記アウトレットチャネルの圧力(Pout)、及び、前記基準室の圧力(Pref)が互いに等しくなる均衡位置にあるとき、前記可動部材は開位置にある。加えて、前記アウトレットチャネルの圧力(Pout)が、少なくとも所定のアウトレット圧閾値(Tout)の分だけ低下し、且つ、前記インレットチャネルの圧力(Pin)、及び、前記基準室の圧力(Pref)が一定であるとき、前記可動部材は前記アンチサイフォンバルブの前記均衡位置から前記閉位置へ移動する。また、前記基準室の圧力(Pref)が、少なくとも所定のインレット圧閾値(Tin)の絶対値の分だけ上昇し、且つ、前記アウトレットチャネルの圧力(Pout)一定であるとき、前記可動部材が前記アンチサイフォンバルブの前記均衡位置から前記閉位置へ移動する。
【0036】
この場合、インレット圧閾値Sinを超えて、気体を前記アンチサイフォンバルブへ送るために、ポンプ出口の気体を圧縮する必要がないので、マイクロポンプの自吸容量は外部のアンチサイフォンバルブによって影響されなくなる。
【0037】
前記ポンプは、マイクロポンプであり、微細加工技術を用いて製造されたマイクロメカニカルポンプであることが好ましい。
【0038】
前記アンチサイフォンバルブの前記アウトレットチャネルが(例えば終端が注入カテーテルにつながる)注入管に接続されており、もし、前記注入管が遠心端(患者に近い端部)を下に垂直になっている場合、前記所定の閉圧閾値(Tout)が前記バルブにおけるサイフォン圧力の反数(−Psiph)よりも小さいので好都合である。
【0039】
この場合、以下の不等式が満たされる。
【0040】
0<Tout<−Psiph=LxGxD
【0041】
ここで、Lは注入管の長さであり、Gは重力定数、そしてDは流体の密度である。
【0042】
本発明において、前記基準圧力(Pref)は、休止状態或るいは均衡状態にある前記ポンプの前記インレットダクトの圧力と略同等であることが好ましい。
【0043】
特に、前記装置の構造について言えば、以下に述べる特徴点の少なくとも一つを備えることができる。
*前記バルブが、前記インレットチャネル、前記流動帯、及び、前記アウトレットチャネルが形成されているバルブ本体を備える;
*前記可動部材(11)は、前記流動帯に沿って延在し、前記バルブ本体(10)の表面に液漏れしないように固定された可撓性の膜の一部であり、弾性材料、或いは、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリアミド、或いは、ポリオレフィン等のポリマー、特に、シリコーン,ポリブタジエン、バイトン(登録商標)の合成ゴム或いはその同等品、エチレンープロピレンゴム、天然ゴム等のエラストマー重合体の組み合わせ(多層構造)からなることが好ましい;
*前記基準室は前記ポンプの前記インレットダクトに連通している;
*前記装置が前記ポンプの前記インレットダクトに接続された液体貯留部をさらに備える;
*前記基準室が、前記液体貯留部内の圧力(Pres)と同じ圧力(Pref)を受ける;
*前記液体貯留部の容量は可変であり、特に、前記液体貯留部は、固定された貯留部本体及び前記液体貯留部の窪みを画定する可動の貯留部壁とを有する、この場合、好ましくは、前記可動の貯留部壁は、液漏れしないように前記固定された貯留部本体の外面に固定され、及び/又は、前記可動の貯留部壁が、好ましくはポリマー材、或いは、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリオレフィン等のポリマー材、特に、シリコーン、ポリブタジエン、バイトン(登録商標)の合成ゴム或いはその同等品、エチレンープロピレンゴム、或いは、天然ゴム等のエラストマー重合体の組み合わせ(積層体等)からなる可撓性の膜で形成されていることが好ましい;
*前記液体貯留部の圧力(Pres)は、前記液体貯留部の外の圧力と略同等であり、この場合、前記固定バルブ本体と前記固定された貯留部本体は、固定体として一体的に形成されていることが好ましく、特に、前記バルブ及び前記液体貯留部は、前記バルブ本体及び前記貯留部本体を形成する前記固定体の同一の表面によって画定されることが好ましい;
*前記可動部材の前記可撓性の膜、及び、前記可動の貯留部壁の前記可撓性の膜は、同一の可撓性の膜からなり、特に、前記可撓性の膜は、可撓性の第1の層と、前記膜の前記貯留部と前記アンチサイフォンバルブの前記弁座に対向する面に位置する軟質の第2の層とを有し、特に、前記可撓性の膜は、前記アンチサイフォンバルブの前記流動帯と前記液体貯留部の窪みを形成するように、前記固定体の表面に対して液漏れしないように固定され、例えば、前記可撓性の膜は、超音波溶接、熱融着、レーザー溶接、接着、圧力による精密に取り付ける手法、或いは、クリップやホットクランプ等の保持する手法を用いて、液漏れしないように前記固定体の表面に固定される;
*前記液体貯留部は、前記固定された貯留部本体に搭載されたカバーをさらに備え、前記可動の貯留部壁は前記カバーと前記固定された貯留部本体との間に収容され、特に、前記基準室は前記カバーと前記可動の貯留部壁との間に画定される空間に接続されており、及び/又は、前記カバーは、前記固定バルブ本体と、前記固定された貯留部本体とを形成する前記固定体に搭載され、前記カバーと前記固定貯留部本体によって、前記液体貯留部と前記基準室を収納する空間が画定される;
*前記ポンプは、容積式のポンプである;
*前記ポンプは、前記アンチサイフォンバルブが休止している間は自吸する、すなわち、前記ポンプ(1)は前記インレット及びアウトレットバルブの絶対開圧力の比よりも高い圧縮比を有する(前記圧縮比は、ポンプ量と前記二つの制御部材の間の前記内部死空間との合計に対する前記ポンプ容量の比);
*前記ポンプの前記ポンプ量は、10マイクロリットル(μl)未満であり、好ましくは1μl未満であり、好ましくは500ナノリットル(nl)未満であり、特に、前記ポンプは微細加工技術によって製造される。
【図面の簡単な説明】
【0044】
本発明のさらに他の目的、特徴、および優れた点は、以下の実施形態の、以下の添付図面を参照した記載によって明らかになるであろう。
図1図1は、アンチサイフォンバルブの開閉についての、開閉原理を図示したものである。
図2図2は、アンチサイフォンバルブの開閉についての、開閉原理を図示したものである。
図3図3は、本発明の第1実施形態に係る装置の断面図である。
図4図4は、本発明の第2実施形態に係る装置の断面図である。
図5図5は、それぞれアンチサイフォンバルブ(外部バルブ)の開閉についての開閉原理を図示したものであって、既定の状態で開いているアンチサイフォンバルブの特に好ましい実施形態における開閉原理を示したものである。
図6図5は、それぞれアンチサイフォンバルブ(外部バルブ)の開閉についての開閉原理を図示したものであって、既定の状態で開いているアンチサイフォンバルブの特に好ましい実施形態における開閉原理を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下に述べる第1及び第2の実施形態において、本発明の装置は自吸型マイクロメカニカルポンプ、或いは、文献EP739451に記載されるような、主にシリコンとガラスからなるマイクロポンプ型のポンプ1を有していてもよい。
【0046】
図3及び4は、前記マイクロポンプ1を箱状に図示しており、このマイクロポンプ1は以下の構成要素を備えている。
*液体インレット制御部材、すなわちインレットバルブ17、及び、液体アウトレット制御部材、すなわちアウトレットバルブ19(図示せず);
*前記ポンプ1の前記インレット制御部材17に接続され、前記インレット制御部材17より上流に位置するインレットダクト8;
*前記ポンプ1のアウトレット制御部材19に接続され、前記アウトレット制御部材19よりも下流に位置するアウトレットダクト2;
*ポンプ膜と、前記ポンプ膜の変形に応じて容量が変化するポンプ室が設けられた制御手段を有するポンプ部(図示せず)。
【0047】
ポンプ1としては、液体インレット/アウトレット制御部材17、19として機能する内部バルブの開口部圧力を上回る充分に高い圧縮比を有する、空気等の圧縮可能な流体用のポンプ1が選択されている。
【0048】
インレットダクト8は、本実施形態の装置に統合されているものの分離することが可能な液体貯留部6に接続するのに適している。
【0049】
また前記装置は、前記ポンプ1とは、別個の外部アンチサイフォンバルブ4有している。前記バルブ4のインレットチャネル3は、前記ポンプ1のアウトレットダクト2に接続されている。
【0050】
バルブ4としては、可動部材11及び前記可動部材11に対向する弁座11aから構成される要素のうちどちらか一方或いは両方が軟質材料からなるものが選択されている。これにより、埃や粒子の存在に関わらず、前記アンチサイフォンバルブ4はその閉位置において漏れを防止することができる。
【0051】
ここで、「軟質材料」とは硬くない材料を意味し、その種類や厚さは、前記可動部11が弾性及び/又は柔軟性を有することによって変形し、この変形によって数分の1マイクロメートルから数マイクロメートルレベルの埃や粒子の介在による表面状態の変化を吸収できるようなものである。
【0052】
例えば、前記軟質材料は、シリコーン、ポリブタジエン、バイトン(登録商標)の合成ゴム或いはその同等品、エチレンープロピレンゴム、又は、天然ゴム等のエラストマー重合体が挙げられる。
【0053】
図示された例では、前記可動部11は、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリアミド、或いは、ポリオレフィン等のポリマーからなる、厚さ5マイクロメートルから200マイクロメートルの可撓性の膜である。
【0054】
図示された例において、前記バルブ4は、例えば硬質のプラスチック材からなる筐体10内に形成されており、前記筐体10は以下のものを備える。
*前記ポンプ1の前記アウトレットダクト2に接続される前記バルブ4の前記インレットチャネル3;
*下流側端部が患者につながる注入管(例:カテーテル;図示せず)の上流側端部に搭載される前記バルブ4の前記アウトレットチャネル7;
*前記インレットチャネル3と前記アウトレットチャネル7との間に位置し、両チャネルに流体連通されている前記バルブの前記弁座11a。
【0055】
前記可動部材11を構成する膜は、前記バルブ4の前記弁座11aの周囲全体に亘って、液漏れしないようにバルブ本体10表面に固定されている。
【0056】
前記可動部材11、前記インレットチャネル3、前記アウトレットチャネル7、及び、前記バルブの弁座11aによって、前記ポンプ1より下流に位置し患者(図示せず)よりも上流に位置する、液漏れのない液流動帯が画定される。
【0057】
前記可動部11の弁座11aに対向する面の反対側の面は基準室5と接している。前記基準室5の圧力Prefは、前記バルブ4の前記アウトレットチャネル7における圧力Poutの値に応じて、前記バルブ4の位置(開閉状態)に影響する。
【0058】
図に示された例で、前記貯留部6は貯留部本体13内に形成されている。前記貯留部本体13によって、液剤が充填される窪みを画定し、前記窪みは貯留部壁14で閉じられている。この例において、前記貯留部壁14は可動の壁であり、ポリマー材からなる可撓性の膜で形成されている。この貯留部壁14は、液漏れしないように、前記貯留部本体13の表面に固定されている。
【0059】
気体が前記ポンプ1に入ることを防ぐために、前記貯留部6は、気体を混入することなく液体が充填できるように設計されている。前記貯留部6に液剤が充填されているとき、或いは、液剤が排出されている時に、容量を変化させるために、前記可動の貯留部壁14は、伸縮することなく変形することが可能な膜(可撓性の膜)で形成しなければならない。このため、厚さ5マイクロメートルから200マイクロメートルのポリマー材を使用することができる。ポリマー材としては、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリアミド、或いは、ポリオレフィン等が挙げられる。
【0060】
つまり、図3に見られるように、前記バルブ4の前記筐体10と前記貯留部本体13とで、前記装置の固定体10、13を形成する単一部材の二つの部分を形成し、単一の膜11、14で可動の貯留部壁14とバルブ4の可動部材11とを形成する。
【0061】
上記単一膜11、14には、上述した材料等からなる可撓性の膜を使用してもよい。また、少なくとも以下の2層からなる前記膜11、14であってもよい。
*膜の拡大を防ぐ目的で、上述した材料等から形成可能な、可撓性の第1の層;
*前記膜11、14の、前記貯留部6及び前記バルブ4の前記弁座11aに対向する面に位置し、例えば、シリコーン、ポリブタジエン、バイトン(登録商標)の合成ゴム或いはその同等品、エチレンープロピレンゴム、又は、天然ゴム等のエラストマー重合体からなる軟質の第2の層。
【0062】
カバー15は、前記貯留部6と前記バルブ4、及び、これらの部材とは前記固定体10/13を介して反対側の面に位置する前記ポンプ1の上方に延在し、固定体10/13を覆う。
【0063】
前記カバー15は前記固定体10、13に対して、液漏れを防止するように搭載されていないが、液体が装置(特にカバー15の窪み16)に侵入することを防止できなければならない。このため、前記カバー15の外と、前記カバー15の前記窪み16との間に、疎水性フィルタを有する換気システム(図示せず)が設けられている。
【0064】
従って、前記装置の外(カバー15の外)の外部気圧(外部圧力)が、カバー15の窪み16に入りこむことが分かる。この圧力が、前記可動の貯留部壁14と前記バルブ4の前記可動部材11を構成する前記膜の可撓性によって、前記貯留部6内の圧力(液体圧力Pres)、及び、前記バルブ4の前記基準室5内の圧力(気体圧力Pref)とに影響する外部圧力となる。
【0065】
上述した構成により、前記基準室5の(気体)圧力Prefが、前記液剤貯留部6内の液体圧力(Pres)と等しくなる。
【0066】
図5及び6は、好ましい具体的な実施形態における、既定の状態で開いている外部バルブの動作モード中の状態を示している(物理的構成については、図3に示す第1実施形態、或いは、図4に示す第2実施形態のものと同じであってもよい)。
【0067】
前記バルブ4において、アウトレット圧閾値Toutは正の値である。すなわち、前記インレット圧力Pinが、前記基準圧力Prefと均衡状態にある場合、前記バルブ4の前記アウトレットチャネル7の圧力Poutが、前記基準室5の圧力Prefから前記バルブ4のアウトレット圧閾値Toutを差し引いた値以上(Pout≧Pref−Tout)であれば、前記バルブ4は開いた状態になる。
【0068】
逆に、インレット圧力Pinが、基準圧力Prefと均衡状態にあり、前記バルブ4の前記アウトレットチャネル7の圧力Poutが、前記基準室5の圧力Prefより所定の値(前記バルブ4のアウトレット圧閾値Tout)の分低い場合、或いは、Pout<Pref−Toutの場合、前記バルブは閉じた状態になる。
【0069】
本実施形態の前記バルブ4において、インレット圧閾値Tinは負の値であり、アウトレット圧力Poutが基準圧力Prefと均衡状態にある場合、もしΔPin≧Tinであれば、前記バルブは開いており、ΔPin<Tinであれば、前記バルブは閉じている。
【0070】
このように、前記アンチサイフォンバルブが図5及び6に示すように均衡位置において開いている状態(ΔPin=ΔPout=0である原点Oが開領域に位置する状態)では、前記アンチサイフォンバルブの死空間はマイクロポンプの自吸性能に何ら影響しないことが分かる。これは、前記マイクロポンプと前記外部バルブとの間の気体の容積が外部バルブに入るように、前記気体の容積を圧縮する必要がないからである。
【0071】
従って、例えば、海水の中を泳ぐことによって、上述のように換気がブロックされると、カバー15の窪み16内に閉じ込められた圧力が約100kPa或いはそれ以上になる。この圧力の作用によって、前記液体貯留部6内の圧力(Pres)と前記アンチサイフォンバルブ4の前記基準室5内の圧力(Pref)が前述の100kPaという値になる。もし、前記マイクロポンプの前記バルブが充分に液漏れ防止されていなければ、同様の圧力が前記アンチサイフォンバルブ4のインレット(チャンネル3)の圧力となる(Pin=100kPa)。その後ユーザーが航空機で移動し、航空機が巡航高度まで上昇すると、航空機の客室内圧力、つまり前記アンチサイフォンバルブ4のアウトレット圧力が、約72kPaになる。従って、前記基準室5と、前記アンチサイフォンバルブ4の前記アウトレットチャネル7との間で、28kPaの圧力差ΔPoutが生じる。前記航空機が上昇している時の、前記バルブ4のインレットチャネル3の圧力Pinを考慮すると、前記マイクロポンプ1の前記バルブに、完全な液漏れ防止がされていなければ、Pinが前記基準室5の圧力(Pref)の値のままとなり、Pin=ref=100kPaとなる。従って、ΔPin=0(図5及び6において現在地点が垂直のY−軸上)となる。アウトレット圧閾値Toutが、一般的な値である5kPaであれば、前記アンチサイフォンバルブ4は閉じたままとなる。
【0072】
このようにして、前記貯留部6の圧力(Pres)が、患者の体の注入箇所の圧力より高い場合、前記バルブ4が再度閉じることによって反サイフォン機能を果たし、ポンプ1の動作以外の原因によって、液体が患者に向って流れることを防止することができる。
【0073】
また、このような、アンチサイフォンバルブは小さな粒子が混入していても、機能することが分かる。これは、軟質で柔軟な材料を用いることによって、バルブが閉じている時に液が漏れることを防止しているからである。
【0074】
さらに、殆どの場合図5及び6に示す性能を有するバルブが形成される。
【0075】
このような前記アンチサイフォンバルブにおいて、インレット圧閾値Tinは負の値であり、アウトレット圧閾値Toutは正の値であり、点O(ΔPin=ΔPout=0)が、開領域にある。従って、既定の状態で前記バルブは開いている。
【0076】
従って、前記バルブ4が既定の状態で開いているので、前記バルブ4によって、本願発明の液体供給装置内で気体の死空間が圧縮されることはない。よって、前記ポンプ1の自吸性能に影響はない。
【0077】
図4には第2の実施形態としての別の単一部材としての固定体10、13が示されており、前記固定体10、13には、バルブ4の筐体10と貯留部本体13とが隣り合わせに設けられている。しかし、前記バルブ4の弁座11a’は前記貯留部6の底に位置し、可動部材11’と協働する。つまり本実施形態において、前記弁座11a’は前記可動の貯留部壁14から分離している。
【0078】
入れ子型形状の第2の実施形態において、前記バルブ4の可動部材11’を形成する膜は、前記貯留部6の底に搭載され液漏れ防止されている。従って、前記基準室5は前記貯留部によって構成される。
【0079】
よって、よりコンパクトな構成を得ることができ、当該構成によって前記貯留部の圧力Presと基準圧力Prefの均衡状態が保証される。しかし、動作は同じである。
【0080】
例えば、換気がブロックされた状況では、同じ圧力100kPaが、前記カバー15の下に閉じ込められ、前記貯留部6内の液体に作用し、前記アンチサイフォンバルブ4の前記基準室5にも作用する。前記マイクロポンプ1の前記バルブが完全に液漏れ防止されていなければ、圧力100kPaが、前記バルブ4の前記アウトレット圧力Poutと、前記バルブ4の前記インレット圧力Pinに作用する。その後、ユーザが巡航高度にある航空機内に居るとする。航空機の客室内圧力は72kPaである。このシナリオの結果は以下の通りである。
*前記バルブ4のインレット圧力Pinが100kPaで維持され、Pref=Pres=Pin=100kPaとなり、ΔPin=0(図5及び6において、垂直のY−軸上の位置)となる;
*前記バルブ4のアウトレット圧力Poutが72kPaになり、前記基準室5と、前記アンチサイフォンバルブ4のアウトレットチャネル7との間に28kPaの圧力差ΔPoutが生じる。アウトレット圧閾値Toutが一般的な値である5kPaでは,ΔPout>Toutとなり、前記アンチサイフォンバルブ4は閉じたままになる。
【0081】
従って、図3及び4に示す第2の実施形態において、前記外部バルブは3つのポート(インレットチャネル3、アウトレットチャネル7、液体流路の外に位置する前記基準室5)を有する。このバルブ4は、原理上開いたままであり、潜在的な問題(流路出口の圧力が装置外部の圧力より低い場合)が生じた時にのみ閉じるので、ポンプ1と患者との間での安全が確保される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6