(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、以下に表面ハプティックデバイス(SHD)と称されるハプティックデバイスを提供するもので、この表面ハプティックデバイスは、基板を横方向の動きまたは横振動および摩擦減少振動の調節に曝すことにより、ハプティック基板の表面に接触する指または物体に力を与えることができる。本発明の一実施形態は、ハプティックデバイスであって、平面ガラスまたはその他の板のような基板と、基板を横方向の動きまたは横振動に曝すための1またはそれ以上のアクチュエータと、基板を摩擦低減超音波振動に曝すための1またはそれ以上のその他のアクチュエータとを備えるハプティックデバイスを提供する。アクチュエータは、一実施形態では、コンピュータ制御デバイスにより制御されて、基板の表面に接触する利用者の指または物体に剪断力を生成するように、摩擦減少振動の調節と同調して、基板を横方向の動きまたは横振動に曝す。本発明は、以下に述べるように、一軸(例えば、X軸)または多軸(例えば、XおよびY軸)上で基板を横方向の動きまたは振動に曝すことを想定している。
【0015】
例示的な実施形態では、本発明は、
図1A、
図1Bおよび
図2に示す例示的なタイプの可変摩擦ハプティックデバイスTPaD(“Tactile Pattern Display(触覚パターンディスプレイ)”)を使用して実施することができ、このデバイスは、作用ハプティック面を有する基板100と、1またはそれ以上のアクチュエータ(振動子)とを有し、アクチュエータが、可変摩擦能力を与えるべく、基板に振動(揺動)を与えるように基板と動作可能に関連するものであり、これについては、本発明と同じ譲受人の2007年3月21日に出願された同時係属中の米国特許出願第11/726,391号および2009年3月19日に出願された同時係属中の米国特許出願第12/383,120号に記載されている。これら出願の開示内容は、引用により本明細書に援用されるものである。同時係属出願の可変摩擦ハプティックデバイスVFHDは、以下において、可変摩擦ハプティックデバイスTPaDと呼ばれる。
【0016】
図1A、
図1Bおよび
図2を参照すると、本発明の例示的な一実施形態に係る可変摩擦ハプティックデバイスTPaDが示されており、このデバイスは、基板100を備え、この基板は、接触(ハプティック)面104aを有する受動基板シートまたは層部材104に取り付けられた圧電シートまたは層部材の形態の圧電曲げ素子(piezoelectric bending element)102を含み、それにより、相対的に薄い積層構造を与えて、薄さ、高い面摩擦、不可聴および制御可能な摩擦の利点を提供することができる薄いハプティックデバイス設計を与える。相対的に薄いハプティックデバイスは、受動支持シートまたは層104に接着あるいは取り付けられた圧電セラミックシートまたは層から形成することができる。圧電シートまたは層102に亘って電圧が加えられるときに、それは拡大または収縮しようとするが、受動支持シートまたは層104との結合により、拡大または収縮することができない。積層体は、圧電シートまたは層102に電圧が印加されたときに、ディスクの中心部に単一の山または谷を有する湾曲形状を有することとなる。生じる応力は曲げ変形を引き起こす。圧電シートまたは層に加えられる電圧が大きいほど、たわみが大きくなる。圧電曲げ素子に正の励起電圧が印加される場合、それは、上方向/正曲率で曲がる。圧電曲げ素子に負の励起電圧が印加される場合、それは、下方向/負曲率で曲がる。正弦波励起電圧が加えられる場合、圧電曲げ素子は、それら曲率の間で、交互に曲がることとなる。正弦波励起電圧が基板100の共振周波数と周波数が一致する場合、振動振幅が最大化される。マウント150は、曲げを単一の所望モードのみに、または任意の数の所望モードのみに制限するために、使用することができる。ハプティックデバイスのすべての機械的部分は、可聴範囲外で振動することが望ましい。この目的を達成するために、基板100は、20kHz以上の共振で振動するように設計されることが望ましい。
【0017】
限定ではなく例示を目的とするものであるが、圧電部材102の厚さは、約0.01インチ乃至約0.125インチとすることができる。基板部材104の例示的な厚さは、約0.01乃至約0.125インチとすることができる。よって、ハプティックデバイスの集合の厚さも、本発明の例示的な実施形態においては、約0.25インチを超えないように調整することができる。
【0018】
図1A、
図1Bおよび
図2に示すように、ディスク型のハプティックデバイスは、曲げ素子ディスクの振動を01モードに制限するために、マウント150内に配置されている。ここで、01モードとは、圧電シートまたは層に電圧が印加されたときに、ディスクの中心部に単一の山または谷を有する曲率を積層体が備えることを意味する。マウント150は、薄い輪状または環状面150aに沿って圧電ディスクに取り付けることができ、その環状面の直径は、圧電ディスクの2/3の直径とすることができる。マウント150の固着には、圧電ディスクおよびガラス基板ディスクを固着するのと同じ非常に粘性の低いエポキシ系接着剤を使用することができる。マウント150の内部の高さは、ある程度任意であり、ほんの数ミリメートル程度に形成することもできる。マウント150は、自動車のコンソール、ダッシュボード、ハンドル、ドア、コンピュータおよびその他の最終用途/製品の表面上またはその内部に限定される訳ではないが、それらを含む最終用途製品上またはその内部に取り付けられるように構成されている。
【0019】
透明なハプティックデバイスは、無頓着な観察者により容易に見られることがないように周囲の表面と一体化されて当該ハプティックデバイスの存在が隠されるべきである場合であって、当該ハプティックデバイスが、タッチスクリーン、画像表示、または自動車の内面または外面に配置されるときに、提供されることが望ましい。この目的を達成するために、圧電部材102および基板部材104の一方または両方を透明な材料から形成することができる。圧電素子102は、その両側に、当該圧電素子102に電圧を加えるための透明電極(図示省略)をそれぞれ含む。
【0020】
限定ではなく例示を目的とするものであるが、基板104はガラスまたはその他の透明材料であってもよい。電極材料としては、透明電極を提供するために、Kumade等による米国特許第4,352,961号に記載されているように、In
2O
3−SnO
2酸化インジウムスズ系の薄膜を使用することができる。透明なハプティックデバイスを達成するために、必ずしも透明な圧電材料を用いる必要はない。当然のことながら、受動基板シート104は、ガラスのような透明材料から形成することができ、圧電シート102よりも表面積を非常に広くすることができる。圧電シート102は、受動基板シート104の周縁の小さい領域のみを占めるものであってもよく、それにより、受動基板シート104の残りの部分を、表示を遮ることなく、グラフィック表示上に配置させることが可能である。圧電材料には、ランタンドープチタン酸ジルコン酸(PLZT)、(PbBa)(ZrTi)O
3、(PbSr)(ZrTi)O
3および(PbCa)(ZrTi)O
3のようなPZT(Pb(ZrTi)O
3)ベースのセラミックス、チタン酸バリウム、石英、またはポリフッ化ビニリデンのような有機材料が含まれるが、それらに限定されるものではない。
【0021】
当業者は、本発明が透明な圧電および基板部材に限定されるものではなく、半透明または不透明なものを使用して実施することができ、美容上、セキュリティ上または安全上の目的のために色付きのハプティックデバイスが望まれる場合に、それらを所与のサービス用途のために望まれるように着色できることを理解するであろう。基板部材104の作成に使用することができる非透明材料には、鋼、アルミニウム、黄銅、アクリル、ポリカーボネート、酸化アルミニウムが含まれる他、その他の金属、プラスチックおよびセラミックスも含まれるが、それらに限定されるものではない。
【0022】
円形ディスク状のハプティックデバイスTPaDの設計には、適当なディスク半径、圧電セラミックディスクの厚さ、基板ディスクの材料および厚さを選択することが含まれることとなる。行われた具体的な選択は、デバイスの共振周波数を決定することとなる。ディスク状のハプティックデバイスの好ましい実施形態では、相対振幅を著しく犠牲にすることなく(可聴範囲外の動作を保証する)共振周波数を増加させるために、0.5mm乃至2mmの厚さを有する基板ディスクであって、鋼またはその他の金属よりはむしろガラスから形成される基板ディスクが用いられる。
【0023】
当業者は、圧電曲げ素子102および基板104の設計が上述した円形ディスク形状に制約されるものではないことを理解するであろう。それら構成要素について、後述するように、長方形またはその他の多角形のようなその他の形状を使用することも可能であり、それら形状は、異なる相対振幅および共振周波数を示すものとなるであろう。
【0024】
図1A、
図1Bおよび
図2の例示的なディスク状のハプティックデバイスTPaDにおいては、ハプティックデバイスの接触(ハプティック)面104a上で利用者により感じられる摩擦の量が、圧電部材102における励起電圧の振幅の関数となる。励起電圧は、以下の実施例に記載されるように、あるいは2007年3月21日に出願された同時係属中の米国特許出願第11/726,391号および2009年3月19日に出願された同時係属中の米国特許出願第12/383,120号にも記載されるように、制御される。それら出願は、引用により本明細書に援用されるものである。励起電圧は、望ましくは、ハプティックデバイスの共振周波数と実質的に同一の振動の周波数を有する振幅変調された周期波形である。制御システムは、パンタグラフ式/光学エンコーダとともに、あるいは光学平面(二次元)位置検出システムとともに、あるいはその他の1軸または2軸の指位置検出センサ(引用により本明細書に援用される同時係属中の米国特許出願第11/726,391号に記載されている)とともに、あるいはその他の種類の指位置検出センサとともに使用することができ、それらの多くが従来より知られている。
【0025】
[実施例]
1自由度の平面ハプティックデバイス
図3を参照すると、本発明の例示的な実施形態に従う例示的な平面ハプティックデバイスSHDが示されており、これは、TPaDと以下で称する
図1A、
図1Bおよび
図2のディスク状のハプティックデバイスTPaDを包含する。ディスク状のハプティックデバイスTPaDは、摩擦低減の間接的なハプティック効果を達成するために必要な超音波周波数および振幅を生じさせるために、圧電曲げ素子(単一タイプ)の単一の円形ディスクおよびガラス基板の単一の円形ディスクを使用して構成された。圧電曲げ素子ディスクは、1ミリメートルの厚さ、25ミリメートル(mm)の直径を有するPIC151圧電セラミック材料(PI Ceramic有限会社により製造される)から構成された。ガラス基板ディスクは、1.57mmの厚さ、25mmの直径を有していた。圧電セラミックディスクは、Loctite E−30CL Hysolエポキシ接着剤のような非常に粘性の低いエポキシ系接着剤を使用して、ガラス基板ディスクに接着された。ディスク状のハプティックデバイスは、アルミニウムから形成されるマウント内に配置されるとともに、圧電ディスクの直径の2/3の直径を有する薄い輪状または環状面150aに沿って圧電ディスクに取り付けられた。マウント150の固着には、圧電ディスクおよびガラス基板ディスクを固着するのと同じ非常に粘性の低いエポキシ系接着剤が使用された。
【0026】
ハプティックデバイスSHDは、連結ロッド211によりリニアスライダ210に連結されたボイスコイルのような線形アクチュエータ200を含み、その動作のために、ハプティックデバイスTPaDがリニアスライダ上に固定して設けられている。TPaDは、クランプ、接着剤、ネジまたはリベットのような任意の結合手段により、スライダ210上の定位置で保持することができる。リニアスライダ210は、単一のX軸上の動作のために、固定ベースB上にあるサポート212上で移動可能に配置されている。線形のボイスコイルアクチュエータ200は、20Hzと1000Hzの間の周波数で正弦波的に作動され、その上のスライダ210およびハプティックデバイスTPaDを同じ周波数でX方向に横方向に移動・振動させる。ボイスコイルアクチュエータ200がこのシステムの共振周波数で正弦波的に作動されるとき、横振動の振幅が増加する。しかしながら、本発明は、そのような正弦波的な作動に限定されるものではない。
【0027】
摩擦は、ガラス基板104の下側に取り付けられた圧電素子102に39kHzの正弦曲線を加えることにより、ハプティックデバイスTPaDのガラス基板面104a上で調節されている。39kHzの信号は、AD9833波形発生器チップによって生成され、可聴周波増幅器を使用して、+0−20Vまで増幅される。それは、圧電素子102に加えられるとき、ガラス基板の共振振動を引き起こす。これらの振動は、指先の下にスクイーズ空気膜(squeeze film of air)を生成し、それにより摩擦の低減をもたらす。高励起電圧では、ガラス基板と指の間の摩擦は、μ=約0.15であり、ゼロ電圧では、その面は、標準ガラスの摩擦(μ=約0.95)を有する。
【0028】
プログラマブル集積回路(PIC−18F4520)は、ボイスコイル(X−アクチュエータ)に対して低周波信号を生成するとともに、
図4の波形信号発生器(AD98330)にコマンドを発して、圧電素子102の39kHzの信号を開始/停止する。これは、両方の機能を提供するため、ハプティックデバイスTPaDの摩擦レベルと横方向の動きとの間の位相関係を決定付けることができる。PICを有するマイクロコントローラまたはその他のコントローラと、指位置検出センサ250とを有する制御システムが、
図4に示されている。
図4は、TPaDがX軸およびY軸上で同時に作動される場合の、X軸上でリニアスライダ210を振動させるX軸アクチュエータと、以下に述べる2自由度の平面ハプティックデバイスとともに使用するためのY軸アクチュエータとを示している。
【0029】
指の位置を測定するために、2軸の指位置検出システム250の1軸を使用することができる。このシステムは、同時係属中の米国特許出願第11/726,391号に記載の2軸の指位置検出センサと同様のタイプであるが、そのシステムの赤外線発光ダイオードが、
図5の光照射線形光ダイオードアレイ256のコリメートシート(collimated sheet)を生成するレーザ線発生器252およびフレネルレンズ254に置き換えられている。光のコリメートシートは、TPaDの表面104aの直上に配置され、TPaDの表面104aに接触する指が、光のシートを遮断して、線形光ダイオードアレイ256上に影を落とす。PICマイクロコントローラは、線形光ダイオードアレイ256の出力を読み取り、指の影の重心を計算し、それが、指の位置の測定に使用される。
【0030】
力発生の特性評価
1自由度の実施形態では、ハプティックデバイスTPaDが平面内で横方向に振動される周波数と同じ周波数で、低摩擦状態と高摩擦状態とを交互に生じさせることにより、力が生成される。左向きの合力を生成するために、ハプティックデバイスTPaDは、その速度が左向きである間に、高摩擦に設定され、その速度が右向きのときに、低摩擦に設定される。ハプティックデバイスTPaDは、利用者の指を左に押すことと、指の下で右に戻すように滑らせることを交互に行う。この“押して滑らせる(pushslip)”サイクルはそれ自体繰り返し、一連の強い左向きのインパルスの後に弱い右向きのインパルスが続くことにより、右への合力がもたらされる。これらのインパルスは、
図8のフィルタリングされなかった力信号において見ることができ、
図3Aに示すように指先の代替物(proxy fingertip)に動作可能に連結された1自由度の引張/圧縮ロードセルを使用して、SHDの表面104aと指先との間の横力または剪断力が測定される。ロードセルは、リニアスライダ上で垂直に移動することができる。ロードセルおよび指先の重量は、低剛性のバネにより懸架される。指先の垂直位置は、つまみナットによって調整可能である。指先がTPaDの近接位置(0.5mm未満)以内に下げられた後、図示のようにL字形の指に重りを加えることにより、垂直抗力が制御される。この実施例では、392mN(40g)の常用負荷が使用された。この配置は、横振動の作用を含む、指の代替物の上に作用する力を高い精度で測定することを可能にする。この実施例に使用された指先の代替物は、指先パッドの代替物として、紙ヤスリで磨かれた絶縁用テープに覆われたブドウにより構成された。指先の代替物は、絶縁用テープにより、
図3Aに示されるL字形のアルミニウムの“指”に固定され、アルミニウムの指は、ロードセルに装着された。指先と指の接続にコンプライアンスが存在するが、人間の指にも同様のコンプライアンスが存在するため、これは適当である。
【0031】
代替的には、SHDの表面104aと指先との間の横力または剪断力も、実質的に摩擦無しでアセンブリ全体が横方向に移動することを可能にする支持アセンブリ上に、ベースBを取り付けることにより測定することができる(
図3B)。例えば、ベースBは、重い黄銅の塊または板230上に取り付けることができ、黄銅の塊または板は、遮音発泡体板232上に載置される。遮音発泡体板232は、精密接地鋼板234上に置かれ、この精密接地鋼板は、3個の大きな鋼球236上に載置される。鋼球は、測定システムの基部として機能する最下部の精密接地鋼板B2上に置かれる。黄銅の塊または板230は、横方向の動きを規制する唯一の構成要素がロードセルとなり、かつ指に作用する横方向の力すべてがロードセル上に作用する力と必ず一致するように、低剛性のバネ238を介してロードセル240に連結される。黄銅の塊または板230の質量とバネ238の低剛性との組合せは、機械的な低帯域通過フィルタのように作用し、その結果、横振動がロードセルの測定に与える影響が最小となる。その結果として、ロードセルの出力が、指先の平均力の正確な測定値となる。
【0032】
図6Aおよび
図6Bは、右への反対方向の合力を生成する同様の“押して滑らせる”サイクルを例示しており、ここでは、強い右向きのインパルスの後に弱い左向きのインパルスが続き、それにより、利用者の指に作用する右への合力がもたらされている。
【0033】
力への位相整合の影響
横速度とハプティックデバイスTPaDのオン/オフ信号との間の位相角を変えることにより、合力の方向および大きさを変えることができる。説明のために、用語Φ
onを、ハプティックデバイスTPaDをオン(低摩擦状態をオン)にしたときの横速度の位相角として定義する。この概念は、
図7にグラフで示されている。示されるデータのすべてにおいて、TPaDは、横振動の全サイクルの半分(180°)について、オン状態とされている。
【0034】
最も大きな力をどの位相が生成するのかを判定するために、Φ
onが、約2秒間に亘って0°から360°までゆっくりと回転された。その合力を見付けるために、フィルタリングされていない力のデータが、二次の低帯域通過のバターワース・零相フィルタ(f
cutoff=10Hz)に通された。フィルタリングされた力の信号は、
図8に示されている。円で囲まれた最大力点は、この横振動の特定の周波数および振幅に対する2つの“最適Φ
on”値に対応する。100mNの範囲内のそれらの最大合力は、本出願人によって容易に知覚される。また、文献は、この大きさが一般に人間に知覚され得ることを示している(文献[5][1][8]を参照)。
【0035】
図8は、Φ
onが時間とともに回転したときの合力の変化を示している。所与の速度サイクルにおけるΦ
on値は、
図7における比較と同様の方法で、TPaD状態信号を速度信号と比較することにより、見付けられた。その後、そのデータは、
図8におけるフィルタリングされた力のデータに対してプロットされた。
図9における結果は、力を最適化するΦ
onの値に関するより多くの具体的情報を提供する。力とΦ
onの正確な関係は振動振幅および周波数に依存するが、このデータは人間が気付くことができる力を生成する広範囲の振幅を表している。システムに遅延が生じなければ、TPaDを0°でオンにすることにより最も大きな左向きの力が生成され、Φ
on=180°が最大の右向きの力を生じさせると考えられるであろう。このデータは、最適角が、その代わりに、それぞれΦ
on=340°およびΦ
on=160°となることを示している。この位相前進の必要性は、スクイーズ膜を生成および崩壊させるのに必要な時間によるものである可能性がある。しかしながら、本出願人は、これに関する任意の理論に拘束されることを意図するものでも、望むものでもない。また、ゼロの合力が、Φ
on=270°で予測されるが、Φ
on=250°で生じる。
【0036】
当業者は、位相調整だけでなく、TPaD基板が相対的に高い摩擦状態にある時間の長さを調節することによっても、力を制御できることを認識するであろう。摩擦が高いサイクルの量を減らすことにより、力を減少させることができる。
【0037】
力への振動振幅の影響
横方向の変位の振幅が増加するに連れて、平均合力が初めは比例的に増加し、その後飽和状態となることが、実験的に見出された。
図10は、様々な横振動周波数についてのこの傾向を示している。各データ点は、最適Φ
onにおける具体的な振動の振幅により生じる合力を表している。
【0038】
図10における漸近特性は、クーロン摩擦の特性によるものである。振幅が指およびTPaDを主に滑り接触させた状態に保つのに十分な大きさになると、速度が一方の方向であるときは、μ
glassF
Nの力を指が受け、速度が他方の方向であるときは、−μ
onF
Nの力を指が受けることとなる。ここで、μ
glassは、ガラスの動摩擦係数であり、μ
onは、TPaDが最小の摩擦状態にあるときのその動摩擦係数であり、F
Nは、垂直抗力である。
【0039】
SHDが生じさせることができる理論上の最大合力を見出すために、全サイクルの半分について、指が2の力のレベルの各々を受けると仮定する。その場合、時間平均力は、2の力のレベルの単なる平均となる。よって、最大合力Fの方程式は以下のようになる。
F
max=〔(μ
glass−μ
on)F
N〕/2 方程式(1)
【0040】
図10における漸近線の値は方程式(1)を使用して計算される。μ
glass=0.70は、TPaDおよび横振動子を静止させながら、表面を横切って指の代替物を移動させている間に、最大力を記録することにより得られ、μ
on=0.06は、TPaDをオンにして同様に得られ、F
N=392mNは、40gの重りから得られた。
【0041】
周波数選択
力が20Hzと1000Hzの間の周波数においてインパルスで加えられるため、利用者は、一方の方向における力全体だけでなく、TPaDの望ましくない基礎振動にも気付くことに留意することが重要である。精神物理学の分野では、人間の指先が20Hzから約500Hzの範囲における振動に感受性を有し、約250Hzに感度のピークを有することが良く知られている。我々は、横方向の振動が極めて顕著ではない高周波(例えば、850Hz)、または振動を感じることができるが不快ではない約40Hzの何れかで、SHDの性能が最高となることを見出した。
【0042】
指が横振動に曝されるのを低減する設計法は、力生成が必要とされるまで、TPaDを連続的にオン(低摩擦状態をオン)で保持するというものである。この戦略では、スクイーズ膜が基本的な低周波振動から利用者を切り離し、それにより、力が加えられるまでは、殆ど知覚できないものとなる。別の方法は、横振動を、必要なときを除いてオフにするというものである。
【0043】
指の探査速度の影響
振動の振幅が力をF
maxの近くに至らせるのに十分な大きさであるときは、振幅の増加が、静止中の指に作用する力に無視できる増加をさらに与える。他方、利用者が積極的に表面を探っている場合には、利用者の指の速度が、指と板との間の相対速度を小さくして、その結果、合力を減少させることがある。このため、探査速度が速くなるほど、目標とする力を維持するのに必要な振動の振幅も大きくなる。
【0044】
許容できる指の探査速度のアイデアは、
図10の同じデータを、変位の代わりに速度に対してプロットすることにより得ることができる。
図11においては、77Hzで振動するTPaDが、20mm/sのRMS速度の周囲で最大力生成の約85%に達することが分かる。
図11においては、77Hzの振動で生じる力が、20mm/s未満のRMS速度の変化に強く影響を受けるが、20mm/sを超える速度には反応しない。このため、20mm/sで振動するSHDにより生成される力は、指の速度変化に影響を受け易いが、60mm/sで動作するSHDは、力の著しい減少が生じる前に、最大約40mm/sの速度で指が動くことを可能にするであろう。
【0045】
力場の表示
SHDは事実上力の源であるため、任意の力場を生成または表示することが可能である。バネ、ダンパまたはその他の基本的なものを表示することを選択できるが、例示の目的で、ラインシンク(line sinks)およびラインソース(line sources)の表示を説明することとする。任意の所与の時点において、デバイスは、その表面に亘って一定の力場を有し、このため、空間的に変化する力場の知覚を生じさせるためには、指の位置の関数として力を変化させる必要がある。実際に、指が表面を横切って移動するときに、望ましい方向および大きさの力を生じさせるためにΦ
onが調整される。
図12においては、ラインソース力場がどのように見えるのかと、そのような場を生成するために使用されるΦ
onコマンドを示す平面図が与えられている。
【0046】
図12のコマンドΦ
onと、
図9の力対Φ
onの関係との間の類似点に留意されたい。ラインソースを生成するには、中心線に沿ってゼロの力が望まれる。このため、x=0において、Φ
on=250°となる。最大力が必要とされるベクトル場の左右のエッジ上において、Φ
onコマンドは、340°および160°の最適Φ
on角を持つ。
【0047】
力場
図13は、4つの異なる力場からのデータを示している。2つのラインソースおよび2つのラインシンクがあり、その各々が“硬直(stiff)”および“柔軟(compliant)”バージョンを有する。原データは、力対位置の形式で提供されるが、触覚体験のより直感的なアイデアを提供するために、本出願人は、それらデータを統合して、“ポテンシャル関数”を構築した。ポテンシャル関数は、
として定義され、ここでF(x)は、位置xの関数として、指に作用する力である。Robles−De−La−TorreおよびHaywardの文献[6][5]から得られた結論は、ポテンシャル関数の形状が、仮想的な突起または穴の認識される形状に類似していることを示唆している。
【0048】
ポテンシャル関数の全体像を見るとき、硬直した平面的なラインソースの代わりに、表面にある急な突起が目に付くであろう。同様に、柔軟な平面的なラインシンクは、表面にある浅い穴として見なすことができる。
【0049】
図14A、
図14Bおよび
図14Cに示すトグルスイッチのような、より洗練されたハプティック作用を生成するためにポテンシャル関数の概念を押し進めることが可能である。ハプティックトグルスイッチは、高いポテンシャル領域(ソース)により分離される2つの低いポテンシャル領域(シンク)である(
図14A、
図14B)。低いポテンシャル領域の一つから次に指がスライドするときは、指が、物理的なトグルスイッチを入れるのとよく似ているように、低いポテンシャル領域に“スッと入る”(
図14C)。
【0050】
上述した例示的な平面(フラットパネル)ハプティックディスプレイSHDは、指に剪断合力を加えてそれを制御することができる。任意の制御可能な力源と同様に、指の位置のフィードバックに結合されたときに、利用者がその選択した力場を表示することを可能にする。ラインソースおよびシンクを表示する能力は実証されており、それらは、平面エンティティ、または3Dの突起および窪みとして、見ることができる。SHDが、平面的なバネ、ダンパ、マス、および表面特徴のイリュージョンを表示することができるツールであると、推定することができる。
【0051】
例示的なハプティックデバイスSHDは、任意の剪断力を指に加えることができる平面ハプティックディスプレイを提供する。それは、バネ、ダンパ、マスおよびその他の力からなる二次元(2D)世界を表示する能力を有するだけでなく、横方向の力が形状のイリュージョンを形成することができるというアイデアを使用することにより、SHDは、三次元(3D)テクスチャおよびその2D表面上の形状のイリュージョンを生成することができる。
【0052】
2自由度の平面ハプティックデバイス
2自由度の基板の振動を有する平面ハプティックデバイスは、
図3の1自由度の例示的なハプティックデバイスSHDの上記説明を考慮して構築することができる。
【0053】
2自由度の面内振動のために、
図3に示されるハプティックデバイスTPaDは、X軸およびY軸のような多軸上で面内で振動されることができる。例えば、2自由度の動きは、合成スライダを設計することにより与えられ、その合成スライダ上には、ハプティックデバイスTPaDが載って、直交するX軸およびY軸上(
図3のX軸およびY軸を参照)でスライドする。合成スライダは、X軸およびY軸上でハプティックデバイスTPaDを独立に移動させる能力を有するであろう。例えば、合成スライダは、X軸振動用のスライダ210のような第1スライダと、独立したY軸振動用に、第1スライダの上または下に取り付けられた第2スライダとを有するであろう。第1スライダは、図示の線形アクチュエータ200により、X軸上で振動するために作動され、第2スライダは、Y軸スライダに連結されたアクチュエータロッドを有する類似のスピーカの形式で、第2線形アクチュエータ(図示省略)により、Y軸上で振動するために作動されることとなる。制御システムに入力されるXおよびYの指の位置を検出するために、
図5に示すタイプの指の位置検出センサを使用することができる。制御システムは、剪断力を生成するために必要とされるように、TPaDのオン/オフ信号と基板の横速度との間の位相角Φ
onを変化させる。
【0054】
このため、この2自由度の実施形態は、X軸およびY軸上でTPaDを振動させるための別個のアクチュエータを有することを伴う。それらアクチュエータには、電磁アクチュエータ(ボイスコイルのような)、圧電曲げアクチュエータ、形状記憶合金アクチュエータ、人工筋肉アクチュエータ(http://www.artificialmuscle.com/)およびその他のものを選択することが可能である。一般に、それは、ハプティックデバイスTPaDおよびそのマウント150が振動の周波数でXおよびY振動の両方について共振する場合に、必要とされるアクチュエータの力を最小化することとなる。
【0055】
X軸およびY軸上のハプティックデバイスTPaDの振動は、(基板表面104aの平面内において)円形の面内運動を生成すべく、基板の旋回運動を生じさせるように制御されるものであってもよい。基板が旋回すると、その速度ベクトルは、瞬時に、望ましい力の方向に一致することとなる。その瞬間の前後に、基板は、高摩擦状態に設定され、力のインパルスが利用者の指または物体に加えられる。“旋回”サイクルの残りの間、基板は、指または物体に作用する力が無視できる程度となるように、低摩擦状態に設定される。速度ベクトルは、旋回中に360°すべてを通過するため、面内の任意の方向に力を生じさせることができる。本発明のこの実施形態では、基板に垂直な超音波振動が、上述したように、低周波、高振幅の横振動(すなわち、“旋回”を生じさせる表面の面内の動き)と組み合わされる。
【0056】
その結果、ハプティックデバイスTPaDのガラス板表面上の各点は、X−Y平面において、小さくて円形で反時計方向(上から見て)の動作を行い、運動の旋回パターンを生じる。この旋回運動は、周波数および振幅を同じように加えるという点において、線形アクチュエータ200により上に生成されるX方向の振動と完全に類似している。しかしながら、ここで運動がガラス基板の2軸に沿って生じるため、摩擦調整の影響は同じではない。特に、合力は、ゼロになることなく(あるいは大きさが変化することはなく)、単に方向を変化させる。また、力がデバイスの速度と常に同じ方向にあり、速度が絶えず変化しているため、平均力は、一軸の実施形態と同じではない。上記のような摩擦依存状態を仮定すると、平均力が大きさ(μ
onN)/πおよびΦの方向を持つことを示すことができる。
【0057】
摩擦低減のための超音波振動がオンまたはオフに切り換えられる(または調節される)間の旋回運動の位相は、コンピュータ制御下で変化されて、エッジまたはその他のハプティック効果を生じさせることができる。その調節は、測定された指の位置に応答させることができ、若しくはあるハプティック効果については、指の位置の測定が不要である。
【0058】
2自由度のハプティックデバイスSHDについての本発明の別の実施形態は、
図15に示されており、ハプティックデバイスTPaDが必要に応じて所定の限度内で自由に動き回ることができるように、フレキシブル金属レッグ400上に支持されたモータマウント410のような柔軟サポート上にハプティックデバイスTPaDを取り付けることを伴う。フレキシブルレッグ400は、固定されたベースに下端が連結されている。TPaDは、隅柱422によりモータマウント410に剛結合された取付板430上に固定的に取り付けられている。偏心質量モータMM(ページャに使用されるモータのような)は、モータマウント410上に取り付けることができ、偏心質量411を含む。モータの出力軸中心線は、TPaDのハプティック面に対して垂直である。偏心質量モータMMは、その出力シャフトを介して、偏心質量を回転させて、回転周波数で、回転反力(rotating reaction force)を生じさせる。これは、モータマウント410およびその上のTPaD基板104を旋回パターンで振動させることとなる。
【0059】
記載される本発明の実施形態は、コンピュータ(ソフトウェア)制御のハプティック効果が、ガラス基板の表面に表示されることを可能とし、それには、変動摩擦だけでなく、表面を横切って指または物体を積極的に押す横力も含まれる。より強力なハプティック効果も可能である。ハプティックディスプレイとしてではなく、その代わりに、ロボット工学または製造における部品供給または同様の用途に有用であるように、コンピュータ制御下で表面の周囲で小さい物体を駆動するための機構としての付加的な使用も可能である。
【0060】
記載される実施形態では、ハプティックデバイスTPaDは、1ユニットとして摩擦低減効果のために、超音波の手段によって振動される。代替的な実施形態として、ガラス基板表面の異なる領域が異なる超音波振幅を有するように、複数の超音波アクチュエータを使用することが可能であり、おそらくはその各々が旋回運動の異なる位相に対応するように調整される。ガラス板表面に亘って超音波の振幅の空間的変動を得る別の方法は、超音波振動のノードパターンを利用するもの(2009年3月19日に出願された同時係属中の米国出願第12/383,120を参照)、またはこれを複数の超音波周波数、あるいは異なる位相で駆動される超音波アクチュエータと組み合わせるものである。
【0061】
当然のことながら、本発明は、平面的な基板表面に限定されるものではない。例えば、ラジアル方向に超音波振動を生成することにより、円筒状のノブの表面で摩擦力(traction forces)を生成することができ、“横”振動を軸および/または周方向に生成することができる。実際に、任意の表面は、面法線と、その表面に少なくとも局所的に存在する2軸とを有することとなる。法線に沿う超音波振動と、1または2の面内の軸に沿う低周波振動は、組み合わせて摩擦力を生じさせることが可能である。
【0062】
横振動を持続しなければならない理由はない。多くの用途では、短時間のみ、能動的な摩擦力を加える必要がある。そのような場合、横振動は、摩擦力を生じさせることが必要とされるまで、オフとすることができる。実際に、幾つかのハプティック効果については、横振動の1サイクルのみ、あるいは半サイクルのみでも十分な場合もある。横振動の振幅または数は、利用者の指を所望距離移動させるのに、あるいはそれに所望の期間力を加えるのに十分となるように選択することができ、その後、横振動は中止することができる。
【0063】
本発明の特定の例示的な実施形態に関連して本発明を説明したが、当業者にとって明らかなように、特許請求の範囲に示すような本発明の範囲内で、それらに変更および修正を加えることが可能である。
【0064】
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