【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用 〔発行者名〕 社団法人 電子情報通信学会 〔刊行物名〕「電子情報通信学会技術研究報告(マイクロ波研究会)」Vol.109,No.431 〔発行年月日〕平成22年2月25日
【文献】
IEEE PHOTONICS TECHNOLOGY LETTERS, Vol.19 No.10, p.735-737
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
電気光学効果を有する材料からなる基板と、該基板上に形成された入力光導波路、該入力光導波路より分岐した2本の位相シフト光導波路、および該2本の位相シフト光導波路が合流した出力光導波路を有する光導波路と、前記基板上に配置された前記位相シフト光導波路に電界を印加するための変調電極と、該変調電極に変調信号を印加する変調信号印加手段とを備え、
前記変調電極は、前記変調信号印加手段に接続される給電部と少なくとも1つの共振電極部とからなり、
前記給電部は前記共振電極部に前記変調信号の電力を供給するための給電結合線路を有し、
前記共振電極部はその両端部に設けた共振結合線路と該共振結合線路の間に設けた前記位相シフト光導波路の延伸方向に平行で前記位相シフト光導波路に近接して配置されたスロット線路またはコプレーナ線路からなる電界印加線路とを有し、
前記給電結合線路と前記共振結合線路とが近接して並置され互いに結合することにより、前記給電部より前記共振電極部に前記変調信号の電力の供給がなされ、
前記共振電極部は前記共振結合線路の前記電界印加線路より遠い側の端部を開放端または短絡端とすることにより前記共振結合線路と前記電界印加線路とが全体として共振するように構成されていることを特徴とする導波路型光変調器。
前記変調電極は前記共振電極部を複数個有し、該共振電極部の少なくとも一方の共振結合線路は、前記給電結合線路または隣接する共振電極部の共振結合線路と近接して並置され互いに結合しており、該互いに結合した複数の共振電極部は全体として共振するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の導波路型光変調器。
前記位相シフト光導波路の延伸方向に互いに隣接する前記共振電極部の前記電界印加線路により前記各位相シフト光導波路に印加される電界の方向が互いに反転するように形成されていることを特徴とする請求項2に記載の導波路型光変調器。
前記変調電極は、前記位相シフト光導波路の延伸方向に互いに隣接する前記共振電極部の前記電界印加線路により前記各位相シフト光導波路に印加される電界の方向が互いに同相となるように形成されていることを特徴とする請求項2に記載の導波路型光変調器。
【背景技術】
【0002】
近年、放送の再送信やネットワークの柔軟性を高める目的で、無線信号をそのまま光伝送する用途が広がっている。この場合、電源設備の不要化や、雷害、ノイズ対策などの理由で、無線電波の受信点から無給電で信号を受信伝送することが望まれることがある。このためには、受信電波のエネルギーだけで光変調を行うために、高速、高効率の光変調器が要求される。
【0003】
従来、マイクロ波帯などの超高周波域での高効率の光変調器は、導波路型光変調器で実現されている。このような導波路型光変調器としては、(1)通常の光通信システムで用いられている進行波型光変調器、(2)外付けの共振回路と組み合わせた分割型電極による光変調器(例えば、非特許文献1参照)、(3)共振型電極による光変調器(例えば、特許文献1参照)、などが知られている。
【0004】
上記(1)の進行波型光変調器は、変調波と光波との速度整合を取ることにより広帯域特性を有し、電極長を大きくして低電圧動作可能な光変調器が実現され、光通信用として実用化されている。しかし、上述したような無給電で光変調する用途には十分でなく、また、電極間容量が大きいため、外付けの共振回路を付加することができない。
【0005】
上記(2)の光変調器方式では、光の通過時間の制限により電極長を短くする必要があるが、分割電極構造により電極間容量を小さくして共振回路の付加を可能とすることにより、印加電圧を大きくして高効率化している。また、上記(3)の共振電極型では、電極を変調波に対して共振器構造とすることにより、光導波路に印加される電圧を増大させ高効率化している。(2),(3)の方式とも帯域は狭いが、無線電波信号の伝送では狭帯域でも使用できる。
【0006】
しかし、(2),(3)の方式でも、マイクロ波帯のように数GHz以上の高周波域では、光波の通過時間による制限のため、有効な電極長がさらに小さくなり、変調効率が低下していた。
【0007】
そこで、光導波路中の変調された光波の速度に整合させて複数の共振電極を周期的に配置する方法が提案されている(例えば、非特許文献2参照)。この方法では、共振電極の数だけ変調効率を増大させることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記の非特許文献2の方式では、独立に一定の周期で配置された複数の共振電極に印加するマイクロ波の位相を同相となるよう調整する必要があり、共振電極の外部における位相調整のための手段が必要となること、また、共振電極単体の長さに対して共振電極が配置される周期が大きいため、光導波路中の光波に対するマイクロ波の作用長を大きくできなく、変調効率が十分でないことなどの問題がある。
【0011】
この場合、変調効率改善のため多くの共振電極を配置しようとすると、それらの間の位相調整の手段がさらに複雑化することになる。
【0012】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、簡単な構成でマイクロ波帯などの超高周波域で高い変調効率を実現することが可能な導波路型光変調器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、電気光学効果を有する材料からなる基板と、該基板上に形成された入力光導波路、該入力光導波路より分岐した2本の位相シフト光導波路、および該2本の位相シフト光導波路が合流した出力光導波路を有する光導波路と、前記基板上に配置された前記位相シフト光導波路に電界を印加するための変調電極と、該変調電極に変調信号を印加する変調信号印加手段とを備え、前記変調電極は、前記変調信号印加手段に接続される給電部と共振電極部とからなり、前記給電部は前記共振電極部に前記変調信号の電力を供給するための給電結合線路を有し、前記共振電極部はその両端に設けた共振結合線路と該共振結合線路の間に設けた前記位相シフト光導波路の延伸方向に平行で前記位相シフト光導波路に近接して配置されたスロット線路またはコプレーナ線路からなる電界印加線路とを有し、前記給電結合線路と前記共振結合線路とが近接して並置され互いに結合することにより、前記給電部より前記共振電極部に前記変調信号の電力の供給がなされ、前記共振電極部は前記共振結合線路と前記電界印加線路とが全体として共振するように構成される導波路型光変調器が提供される。
【0014】
ここで、前記変調電極は前記共振電極部を複数個有し、該共振電極部の少なくとも一方の共振結合線路は、前記給電結合線路または隣接する共振電極部の共振結合線路と近接して並置され互いに結合していてもよい。
【0015】
この場合、前記位相シフト光導波路の延伸方向に互いに隣接する前記共振電極部の前記電界印加線路により前記各位相シフト光導波路に印加される電界の方向が互いに反転するように形成されていてもよい。
【0016】
この場合、複数の前記電界印加線路は、前記位相シフト光導波路の等価屈折率をn、前記変調信号の周波数をf
0、真空中での光速をcとすると、前記位相シフト光導波路の延伸方向における複数の前記電界印加線路の中心間距離Pは、P=c/2nf(但し、f=0.4f
0〜1.3f
0)となるように配置されていることが望ましい。
【0017】
また、前記変調電極は、前記位相シフト光導波路の延伸方向に互いに隣接する前記共振電極部の前記電界印加線路により前記各位相シフト光導波路に印加される電界の方向が互いに同相となるように形成されていてもよい。
【0018】
この場合、複数の前記電界印加線路は、前記位相シフト光導波路の等価屈折率をn、前記変調信号の周波数をf
0、真空中での光速をcとすると、前記位相シフト光導波路の延伸方向における複数の前記電界印加線路の中心間距離Pは、P=c/nf(但し、f=0.4f
0〜1.3f
0)となるように配置されていることが望ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の導波路型光変調器では、上記のように、電界印加線路と共振結合線路とが一体となって共振電極部を構成し、かつ、その共振電極部が変調周波数において全体として共振し、さらに、互いに隣接する電界印加線路により各位相シフト光導波路に印加される電界の方向が互いに反転するか、または互いに同相となるような共振モードを使用することにより、変調電極の外部における位相調整のための手段が不要となる。
【0020】
また、互いに隣接する電界印加線路により各位相シフト光導波路に印加される電界の方向が互いに反転するように構成した場合、位相シフト光導波路近傍に位相シフト光導波路の延伸方向に互いに離間して配置される電界印加線路の周期は上記非特許文献2に記載の導波路型光変調器に比べて半分とできるため、光導波路中の光波に対するマイクロ波の作用長を従来に比べて2倍とすることができ、より高い変調効率が得られる。
【0021】
さらに、本発明においては、1つの共振電極部において位相シフト光導波路に印加される電界が打ち消されないように、共振状態において光変調に有効な電界が電界印加線路で発生し、その電界が反転する領域が位相シフト光導波路から離れた共振結合線路となるようにして不要な電界が位相シフト光導波路に印加されないようにすることで高い変調効率が得られる。これにより、単一の共振電極部であっても従来よりも高い変調効率が得られる。さらに、複数の共振電極部を設けた場合、共振結合線路中の変調信号の伝搬方向を位相シフト光導波路から離れるようにして位相シフト光導波路中の光波に作用させないようにすることで、互いに隣接する電界印加線路間の光波に対して作用しない部分の間隔を狭くできるので、長いマイクロ波の作用長が得られ、さらに高い変調効率が得られる。
【0022】
以上のように、本発明の導波路型光変調器によれば、簡単な構成でマイクロ波帯などの超高周波域で高い変調効率を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
【0025】
以下の図面の記載において、同一または類似の部分には同一または類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、現実のものとは異なることに留意すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0026】
また、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための構造や方法を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0027】
[第1の実施の形態]
図1(a)は本発明の第1の実施の形態に係る導波路型光変調器を示す平面図、
図1(b)は
図1(a)に示す導波路型光変調器の位相シフト導波路中を伝搬する光の位相シフト量を示す図、
図2は
図1(a)におけるA−A断面図である。
【0028】
図1、
図2に示すように第1の実施の形態に係る導波路型光変調器1は、基板2と、マッハツェンダー型光導波路3(以下、単に光導波路3ということもある)と、バッファ層11と、給電部6および4つの共振電極部9からなる変調電極と、変調信号入力端子10とを備える。
【0029】
基板2は、電気光学効果を有するニオブ酸リチウム(LiNbO
3)からなる。第1の実施の形態では、LiNbO
3のXカット基板を用いる。
【0030】
光導波路3は、基板2の上面側にTi拡散により形成され、入力光導波路3aと、この入力光導波路3aから分岐した2本の位相シフト光導波路3b,3cと、位相シフト光導波路3b,3cが合流した出力光導波路3dとを有する。位相シフト光導波路3b,3cの延伸方向の中央部分は互いに平行であり、この中央部分の間隔は20〜50μm程度である。
【0031】
バッファ層11は、基板2上に形成されるSiO
2からなる厚さ100〜3000nm程度の層であり、光導波路3を伝搬する光の一部が、変調電極によって吸収されることを防止する等の目的で設けられるものである。
【0032】
変調電極の給電部6は2つのスロット線路7a、8aとそれらに接続し共振電極部9に変調信号の電力を供給するための給電結合線路7b、8bとを有する。共振電極部9は、それぞれその両端部に設けたスロット線路からなる共振結合線路4b、5bと、これらにそれぞれ接続され、これらの間の位相シフト光導波路3c、3b上にそれぞれ配置されたスロット線路からなる電界印加線路4a、5aとを有する。給電結合線路7b、8bと初段の共振電極部9の共振結合線路4b、5bとがそれぞれ近接して並置され互いに結合することにより、給電部6より初段の共振電極部9に変調信号の電力の供給がなされ、2段目以降も各段の共振電極部9の共振結合線路4b、5bが隣接する共振電極部9の共振結合線路4b、5bとそれぞれ近接して並置され互いに結合している。さらに、各共振電極部9はそれぞれ共振結合線路4b、5bと電界印加線路4a、5aとがそれぞれ全体として共振するように構成されている。
【0033】
電界印加線路4aにおいてはそのスロットの中央に位相シフト光導波路3cが位置し、電界印加線路5aにおいてはそのスロットの中央に位相シフト光導波路3bが位置するように配置される。
【0034】
この電界印加線路4a、5aは、
図2に示すように、それぞれ位相シフト光導波路3c,3bにZ軸方向の互いに逆向きの電界Ezを印加するためのものである。
【0035】
すなわち、電界印加線路4aを構成する第1のスロット線路と電界印加線路5aを構成する第2のスロット線路の位相シフト光導波路3b,3cに挟まれる部分の電極を変調信号を印加する共通電極とし、それらの対向側を接地電極とすることにより、位相シフト光導波路3cに印加される電界の方向と、位相シフト光導波路3bに印加される電界の方向とが反対方向になる。
【0036】
スロット線路は金(Au)等の導電性材料からなり、バッファ層11を介して基板2上に設けられている。
【0037】
図1に示すように、4段の電界印加線路4a、5aが位相シフト光導波路3b,3cの延伸方向に周期的に互いに離間して配置されている。
【0038】
本実施の形態においては、各共振電極部9の共振結合線路4b、5bの先端が短絡されていることにより変調信号の反射が生じ、変調信号の周波数において、各段の共振電極部が単体としても共振器として働くと同時に、4段の共振電極部全体としても共振器となるように構成されている。ここで、
図1では4段目の共振電極部9の終端は給電部6と同様な線路に結合しているが、この終端は短絡端または開放端であってもよい。
【0039】
この場合の共振モードは、1段目と3段目の電界印加線路で同相の電界となり、2段目と4段目の電界印加線路でそれらの逆相の反転電界となるように、電界印加線路と共振結合線路を合わせたスロット線路長、およびそれらの各スロット線路長の比率が調整されている。
【0040】
また、位相シフト光導波路3b,3cの延伸方向における電界印加線路4a、5aの配置の周期Pは、位相シフト光導波路3b、3cの等価屈折率をn、変調信号の周波数をf、真空中での光速をcとすると、P=c/2nfとなるように配置されている。
【0041】
上記のように構成された導波路型光変調器1において、導波路型光変調器1の入力光導波路3aの入射口から、図示しない光源からの光を光導波路3に導入し、変調信号入力端子10により変調電極に変調信号を印加すると、上述のように電界印加線路4a、5aにより、2本の位相シフト光導波路3b,3cに、Z軸方向に互いに逆向きの電界が印加される。
【0042】
これにより、位相シフト光導波路3b,3cにおける電気光学効果による屈折率変化の方向が互いに逆向きとなり、位相シフト光導波路3b,3cの伝搬光に互いに逆向きの位相シフトが生じ、この伝搬光が出力光導波路3dへの合流時に干渉して光強度が変調される。
【0043】
ここで、位相シフト光導波路3b,3cの等価屈折率をn、真空中での光速をcとすると、変調された光は位相シフト光導波路3b,3c中をc/nの速度で進行する。したがって、ある時点でみると、変調信号の周波数fで変調された光は、
図1(b)に示すように、位相シフト光導波路3b,3c中では光伝搬方向にΛ=c/nfの周期で位相シフト量が変化しており、Λ/2=c/2nfの周期で位相シフト量が反転していることになる。具体的な数値例としては、等価屈折率n=2.15、変調信号の周波数f=10GHzとしたとき、Λ=14mmとなる。
【0044】
第1の実施の形態に係る導波路型光変調器1では、互いに離間した電界印加線路の中心間距離Pを、P=Λ/2=c/2nfとなるように配置している。これにより、位相シフト光導波路3b,3cを伝搬する光に対して、変調電極への印加電界により加算的に位相シフトを与えることができるので、実効的な変調電極長が長くなり、マイクロ波帯などの超高周波域でも高い変調効率を得ることができる。
【0045】
この場合、変調効率の周波数特性はP=Λ/2=c/2nfを満たす周波数fの付近を中心におおよそガウス分布に近い特性となっており、電界印加線路の段数が増加するに従って変調効率のピークはfより小さい値からfに近づいて行き、変調可能な周波数帯域幅は電界印加線路の段数が増加するに従って狭くなる。
【0046】
また、位相シフト光導波路上に占める電界印加線路の割合にも依存する。すなわち、電界印加線路の段数が2段のとき、変調効率がピークとなる周波数および変調可能周波数が上記fの値に対して最も低周波側となり、例えば、電界印加線路に対する電界印加線路間の間隔の比率を0.2〜1としたとき、0.4f〜1.3f程度の周波数であれば電界印加線路が1段の場合よりも高い変調効率が得られる。
【0047】
同様に、電界印加線路の段数を5段以上としたときは、段数の増加に従って変調効率のピーク値は大きくなるが、1段の場合より高い効率が得られる変調可能帯域は0.7〜1.25f程度となる。
【0048】
[第2の実施の形態]
図3(a)は本発明の第2の実施の形態に係る導波路型光変調器を示す平面図、
図3(b)は
図3(a)に示す導波路型光変調器の位相シフト導波路中を伝搬する光の位相シフト量を示す図である。
【0049】
図3に示す第2の実施の形態の導波路型光変調器20は、基本的な構成は第1の実施の形態と同じであるが、変調電極を第1の実施の形態の変調信号の周波数に対して2倍の周波数で共振するように構成している。すなわち、
図2(b)に示すようにこの場合の位相シフト導波路中を伝搬する光の位相シフト量の空間的な周期Pは
図1の半分となる。
【0050】
XカットLiNbO
3基板を基板2として用いること、変調電極の給電部16は共振電極部19に変調信号の電力を供給するための給電結合線路17b、18bを有すること、共振電極部19は、それぞれその両端部に設けたスロット線路からなる共振結合線路14b、15bと、これらにそれぞれ接続され、これらの間の位相シフト光導波路3c、3b上にそれぞれ配置されたスロット線路からなる電界印加線路14a、15aを有すること、各段の共振電極部19の共振結合線路14b、15bが隣接する共振電極部19の共振結合線路とそれぞれ近接して並置され互いに結合していること、さらに、各共振電極部19はそれぞれ共振結合線路14b、15bと電界印加線路14a、15aとが全体として共振するように構成されていること、電界印加線路4aにおいてはそのスロットの中央に位相シフト光導波路3cが位置し、電界印加線路5aにおいてはそのスロットの中央に位相シフト光導波路3bが位置するように配置されることなどは導波路型光変調器1と同様である。
【0051】
但し、位相シフト光導波路3b,3cの延伸方向における電界印加線路4a、5aの配置の周期Pは、位相シフト光導波路3b,3cの等価屈折率をn、変調信号の周波数をf、真空中での光速をcとすると、P=c/nfとなるように配置されている。
【0052】
また、導波路型光変調器1と同様に、4段の共振電極部が全体として変調信号の周波数において共振器となるように構成されているが、導波路型光変調器1と異なり、この場合の共振モードは、1段目から4段目のすべての電界印加線路で同相の電界となるように、電界印加線路と共振結合線路を合わせたスロット線路長、およびそれらの各スロット線路長の比率が調整されている。
【0053】
このようにしても、導波路型光変調器1と同様に、位相シフト光導波路3b,3cを伝搬する光に対して加算的に位相シフトを与えることができ、マイクロ波帯などの超高周波域でも高い変調効率を得ることができる。
【0054】
導波路型光変調器20は、同じ変調信号の周波数に対しては電界印加線路が配置される周期Pが導波路型光変調器1に比べ大きいため、光導波路中の光波に対するマイクロ波の作用長は導波路型光変調器1に比べ小さく、変調効率も小さいが、共振器長が小さいさらに高い周波数で変調を行う場合には適しており、従来の光変調器に比べて構成が簡単で位相調整の手段が不要になるという利点がある。
【0055】
[第3の実施の形態]
図4(a)は本発明の第3の実施の形態に係る導波路型光変調器を示す平面図、
図4(b)は
図4(a)に示す導波路型光変調器の位相シフト導波路中を伝搬する光の位相シフト量を示す図である。
【0056】
図4に示す第3の実施の形態の導波路型光変調器30は、共振電極部29の段数が3段であること、給電部26の給電結合線路27b、28b、および共振電極部の共振結合線路24b、25bの構造が異なること以外の基本的な構成は第1の実施の形態と同じである。
【0057】
すなわち、XカットLiNbO
3基板を基板2として用いること、変調電極の給電部26は共振電極部29に変調信号の電力を供給するための給電結合線路27b、28bとを有すること、共振電極部29は、それぞれその両端部に設けた共振結合線路24b、25bと、これらにそれぞれ接続され、これらの間の位相シフト光導波路3c、3b上にそれぞれ配置されたスロット線路からなる電界印加線路24a、25aとを有すること、各段の共振電極部29の共振結合線路24b、25bが隣接する共振電極部29の共振結合線路とそれぞれ近接して並置され互いに結合していること、さらに、各共振電極部29はそれぞれ共振結合線路24b、25bと電界印加線路24a、25aとが全体として共振するように構成されていること、電界印加線路24aにおいてはそのスロットの中央に位相シフト光導波路3cが位置し、電界印加線路25aにおいてはそのスロットの中央に位相シフト光導波路3bが位置するように配置されることなどは導波路型光変調器1と同様である。
【0058】
但し、本実施の形態においては、給電部26の給電結合線路27b、28b、および共振電極部の共振結合線路24b、25bは、それぞれコプレーナ線路と類似の線路として動作する。すなわち、互いに近接して並置され結合する給電結合線路と共振結合線路、または2つの共振結合線路は、2つの信号電極を持つコプレーナ線路とみることもできる。
【0059】
また、本実施の形態においては、電界印加線路24a、25aを上記のようにそれぞれ独立な2つのスロット線路としてみるではなく、電界印加線路24a、25aのスロットに挟まれた部分を信号電極とする1つのコプレーナ線路とみることができ、共振結合線路24b、25bと電界印加線路24a、25aとが全体として共振する場合にも、それらが一体化したコプレーナ線路の共振器としてみることができる。
【0060】
また、この場合、第1および第2の実施の形態では給電結合線路と共振結合線路の先端は短絡端となっており、共振モードはその先端での電界強度が0となる共振モードとなるが、本実施の形態では、給電結合線路と共振結合線路の先端は開放端となるので、その先端で電界強度が最大となる共振モードである。光変調器として変調効率を大きくするためには位相シフト光導波路3b,3cの延伸方向における電界印加線路の中央部分で電界強度が最大となるような共振モードを生じさせることが重要であり、目的とする変調信号周波数によって、このような共振モードを生じさせやすい実施の形態を選択することができる。
【0061】
第1の実施の形態と同様に、変調信号の周波数において各段の共振電極部単体での共振と同時に3段の共振電極部が全体としても共振器となるように構成されている。ここで、3段目の共振電極部29の終端は短絡または開放端であってもよい。
【0062】
共振モードは、1段目と3段目の電界印加線路で同相の電界となり、2段目の電界印加線路でそれらの逆相の反転電界となるように、電界印加線路と共振結合線路を合わせた線路長、およびそれらの各線路長の比率が調整されている。また、位相シフト光導波路3b,3cの延伸方向における電界印加線路24a、25aの配置の周期Pは、位相シフト光導波路3b、3cの等価屈折率をn、変調信号の周波数をf、真空中での光速をcとすると、P=c/2nfとなるように配置されており、これにより、位相シフト光導波路3b,3cを伝搬する光に対して、変調電極への印加電界により加算的に位相シフトを与えることができるので、実効的な変調電極長が長くなり、マイクロ波帯などの超高周波域でも高い変調効率を得ることができる。
【0063】
[第4の実施の形態]
図5(a)は本発明の第4の実施の形態に係る導波路型光変調器を示す平面図、
図5(b)は
図4(a)に示す導波路型光変調器の位相シフト導波路中を伝搬する光の位相シフト量を示す図、
図6は
図5(a)におけるA−A断面図である。
【0064】
図5、
図6に示す第4の実施の形態に係る導波路型光変調器40は、
図4に示す導波路型光変調器30に対し、基板をLiNbO
3のZカット基板である基板32に置き換え、変調電極を構成する電界印加線路は信号電極35aを位相シフト光導波路3b上に配置したコプレーナ線路とした構成である。給電部36の給電結合線路37b、38bと共振電極部39の共振結合線路34b、35bは第3の実施の形態と同様な構成である。
【0065】
導波路型光変調器40では、基板32がZカット基板であるため、電界印加線路において印加電界がZ軸方向に印加されるように、コプレーナ線路の信号電極35aは位相シフト光導波路3b上に配置され、その両側の接地電極の一方の端部34aが位相シフト光導波路3c上に配置される。
【0066】
これにより、位相シフト光導波路3cに印加される電界の方向と、位相シフト光導波路3bに印加される電界の方向とが反対方向になる。
【0067】
導波路型光変調器40においても3段の電界印加線路34が位相シフト光導波路3b,3cの延伸方向に周期的に互いに離間して配置されている。
【0068】
第1の実施の形態と同様に、変調信号の周波数において各段の共振電極部単体での共振と同時に3段の共振電極部が全体としても共振器となるように構成されている。ここで、3段目の共振電極部39の終端は短絡または開放端であってもよい。
【0069】
この場合の共振モードは、1段目と3段目の電界印加線路で同相の電界となり、2段目の電界印加線路でそれらの逆相の反転電界となるように、電界印加線路と共振結合線路を合わせた線路長、およびそれらの各線路長の比率が調整されている。
【0070】
また、導波路型光変調器1と同様に位相シフト光導波路3b,3cの延伸方向における電界印加線路14aの配置の周期Pは、位相シフト光導波路3b,3cの等価屈折率をn、変調信号の周波数をf、真空中での光速をcとすると、P=c/2nfとなるように配置されており、これにより、位相シフト光導波路3b,3cを伝搬する光に対して、変調電極への印加電界により加算的に位相シフトを与えることができるので、実効的な変調電極長が長くなり、マイクロ波帯などの超高周波域でも高い変調効率を得ることができる。
【0071】
[その他の実施の形態]
上記のように、本発明は第1、第2および第3の実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述および図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。
【0072】
この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例および運用技術が明らかとなろう。
【0073】
例えば、上記第1、第2、第3および第4の実施の形態においては、共振電極部の段数が3段および4段の例について説明したが、電界印加線路の段数は1段、2段および5段以上であってもよい。共振電極部の段数の増加に伴って変調効率は高くなる。
【0074】
また、上記の実施の形態においては、電界印加線路、共振結合線路、給電結合線路や給電部の線路をスロット線路やコプレーナ線路で構成した例について説明したが、他のマイクロ波線路を用いることができる。
【0075】
電界印加線路、共振結合線路、給電結合線路や給電部の線路で互いに異なるマイクロ波線路を用いることも可能である。共振電極部を共振器として機能させる手段についても、上記の実施の形態以外のインピーダンスの不連続構造を線路中に反射点として設けることも可能である。
【0076】
給電部への変調信号の給電方法なども公知のマイクロ波の結合方法を利用した手段が可能である。
【0077】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。