(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
プレスマシンのワーク搬送方向に略直交して延在されワークを保持解放可能に構成されるクロスバーを利用してワークを搬送するワーク搬送装置と、クロスバーを支持可能に構成されたクロスバー交換装置と、の間におけるクロスバーの交換システムであって、
両端部が、中央部に対して、クロスバーの長手方向軸廻りに相対回転可能な状態と相対回転不能な状態とを切り換え可能に構成されたクロスバーを利用し、
ワーク搬送装置がクロスバーをクロスバー交換装置に置きに行く際には、前記クロスバーの両端部と中央部との間に回転角度位相差を与えることで、前記クロスバーの両端部に設けられワーク搬送装置のクロスバー着脱部のクロスバー取付面へ着脱可能に取り付けられる着脱装置の取付面を、略水平方向に向けた状態にて、クロスバー交換装置に支持させ、
ワーク搬送装置がクロスバーをクロスバー交換装置に取りに行く際には、前記クロスバー着脱部のクロスバー取付面を略水平方向に向けた状態で、前記クロスバー交換装置に支持されているクロスバーの着脱装置の取付面に接近させてクロスバーを装着し、その後に、前記クロスバーの両端部と中央部との間の回転角度位相差を無くすことを特徴とするクロスバーの交換システム。
プレスマシンのワーク搬送方向に略直交して延在されワークを保持解放可能に構成されるクロスバーを利用してワークを搬送するワーク搬送装置と、クロスバーを支持可能に構成されたクロスバー交換装置と、の間におけるクロスバーの交換方法であって、
両端部が、中央部に対して、クロスバーの長手方向軸廻りに相対回転可能な状態と相対回転不能な状態とを切り換え可能に構成されたクロスバーを利用し、
ワーク搬送装置がクロスバーをクロスバー交換装置に置きに行く際には、前記クロスバーの両端部と中央部との間に回転角度位相差を与えることで、前記クロスバーの両端部に設けられワーク搬送装置のクロスバー着脱部のクロスバー取付面へ着脱可能に取り付けられる着脱装置の取付面を、略水平方向に向けた状態にて、クロスバー交換装置に支持させ、
ワーク搬送装置がクロスバーをクロスバー交換装置に取りに行く際には、前記クロスバー着脱部のクロスバー取付面を略水平方向に向けた状態で、前記クロスバー交換装置に支持されているクロスバーの着脱装置の取付面に接近させてクロスバーを装着し、その後に、前記クロスバーの両端部と中央部との間の回転角度位相差を無くすことを特徴とするクロスバーの交換方法。
【背景技術】
【0002】
従来のツール交換装置(クロスバー交換装置)の一例が、例えば、特許文献1に記載されている。
【0003】
特許文献1に記載されているクロスバー交換方法にあっては、クロスバーを利用したワーク搬送装置が、クロスバーを支持する部分に回転駆動機構が備えられ、クロスバーを回転させることで、ワークを支持するアーム部分などを任意に傾斜(回動)させることができるチルト機能を有していることが前提となる。
【0004】
そして、特許文献1に記載されているものでは、クロスバーを交換する際には、クロスバーをチルト機構を介して傾斜(回動)させて所定に傾けることにより、結果としてワークを支持するアーム部を傾斜させるような動作が必要となっている。
【0005】
ここで、既述したように、ワーク搬送装置は、クロスバーを交換することで、様々な形状のワークを搬送することが可能となる。
【0006】
例えば1時間おきに形状の異なるワークを加工する必要がある場合も想定され、このような場合にはワークの形状に対応するようにクロスバーを変更することになるが、生産ラインの停止時間をできるだけ短くして生産能率を高めるべく、現生産と次生産を遅延なく速やかに切り替えることが要求される。
【0007】
このため、現生産中、次生産用(次回生産に使用される)クロスバーの準備を行っておく必要があることから、現生産中はクロスバー交換装置を生産ライン外に退避させておき、クロスバー交換時に、次生産用クロスバーを支持しているクロスバー交換装置をワーク搬送装置付近へ移動させる。
【0008】
このとき,クロスバー交換装置は,ワーク搬送装置のプレス加工工程上流あるいはプレス加工工程下流に設置されたプレスマシン間の隙間を通ることになるが、
図7(A)に示すように、クロスバー1100が生産中と同じ水平姿勢であった場合には、ツール1105を含むクロスバー1100の大きさは、プレスマシン1、2間の隙間よりも大きくなり,プレス加工工程上下流のプレスマシン1、2に干渉する可能性がある。
【0009】
そこで,従来においては、
図7(B)に示すように、ワーク搬送装置のチルト機能(回転駆動部)(
図6等の符号1315を参照)を利用し,クロスバー1100全体を傾斜(回転)させた状態で,クロスバー交換装置1200に積載することで,干渉を回避するといった方法を取ることが行われている。
【0010】
ここでは,解り易く説明するため,クロスバーの傾斜角度を,鉛直方向に対して,約90°傾けた姿勢でクロスバー交換装置に積載している状態として説明している。
【0011】
ワーク搬送装置が,現生産用(現在の生産に使用していた)クロスバー1100をクロスバー交換装置1200に積載する(渡す)際の動作の一例について説明する(
図6において,(F)、(E)、(D)、(C)、(B)、(A)の順)。
【0012】
ステップ101にて、ワーク搬送装置1300は,チルト機能(回転駆動部)1315の駆動力を利用して揺動アーム1310の先端のクロスバー着脱部1320を回転させて、現生産用クロスバー1100を鉛直方向に対して約90°傾ける(
図6の(F)から(E)の動作)。
【0013】
ステップ102では、90°傾けた姿勢のまま,クロスバー交換装置1200上面のクロスバー受け台1210に現生産用クロスバー1100を下降させ,積載し,固定する(
図6の(E)から(D)の動作)。
【0014】
ステップ103では、クロスバー交換装置1200に現生産用クロスバー1100を固定したまま,ワーク搬送装置1300の揺動アーム1310の先端のクロスバー着脱部1320を、水平方向に離脱させる(
図6(D)から(C)の動作)。
【0015】
次に、ワーク搬送装置が,次生産用クロスバー1100を支持しているクロスバー交換装置1200から次生産用クロスバー1100を取り外して装着する(受け取る)際の動作の一例について説明する(
図6において,(A)、(B)、(C)、(D)、(E)、(F)の順)。
【0016】
ステップ111では、ワーク搬送装置1300は,クロスバーを装着していない状態で,次生産用クロスバー1100を支持しているクロスバー交換装置1200へ接近させ(
図6の(A)から(B)の動作)、揺動アーム1310の先端のクロスバー着脱部1320のクロスバー取付面1321を鉛直方向に対して,約90°傾ける(
図6の(B)から(C)の動作)。
【0017】
ステップ112では、90°傾けたクロスバー着脱部1320を,同様に90°傾いた次生産用クロスバー1100の両端部に設けられた着脱装置1130へ水平方向に密着させて装着する(
図6の(C)から(D)の動作)。装着は、ガイドピンで案内させつつラッチ機構などにより係合保持させるような方法を採用することができる。
【0018】
ステップ113では、90°傾けた姿勢のまま,次生産用クロスバー1100を鉛直上方向に持ち上げ,クロスバー交換装置1200から取り外す(
図6の(D)から(E)の動作)。
【0019】
ステップ114では、ワーク搬送装置1300のチルト機能(回転駆動部)1315の駆動力を利用してクロスバー着脱部1320を回転させて、90°傾いた状態の次生産用クロスバー1100を、生産に適応した水平状態へ回転させつつ、規定の位置へ戻って次生産に備える(
図6の(E)から(F)の動作)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
上述したような従来のクロスバー交換方法は,クロスバーの構造が容易である点で優れている。
【0022】
しかし,従来のクロスバー交換方法では、クロスバー1100が、その両端部1120に設けられた着脱装置1130の取付面1131を略鉛直方向に立てた姿勢でクロスバー交換装置1200に載置(支持)されているため、ワーク搬送装置1300が、このクロスバー1100を取りに行く際には、クロスバー着脱部1320のクロスバー取付面1321を略鉛直に立てながら水平方向に密着させる必要があるため,揺動アーム1310を備えたワーク搬送装置1300にあっては、運転操作や運転調整(段取り)などが困難であるという課題を残している。
【0023】
すなわち、クロスバー着脱部1320のクロスバー取付面1321を略鉛直に立てて装着する場合、
図9に示すようなガイドピン322が水平方向に突出することになるため、ワーク搬送装置1300は、揺動アーム1310の揺動動作と、揺動アーム1310の伸縮動作と、チルト機能(回転駆動部)1315によるクロスバー着脱部1320の回転動作(チルト動作)と、を組み合わせて、クロスバー着脱部1320のクロスバー取付面1321を略鉛直に立てながら水平移動させて、水平方向に延びるガイドピン322と円滑に係合させて装着するといった難しい動作が必要であることに加え、
クロスバー着脱部1320と、ガイドピン322と、を係合させる際に、ガイドピン322を微小に下方に移動させたいような場合があっても、クロスバー交換装置1200に載置(重力方向に支持)されているクロスバー1100がそれ以上下方へは移動することができないため、ワーク搬送装置1300及びクロスバー着脱部1320側に対して極めて高精度で慎重な水平移動が要求されることになる、といった実情がある。
【0024】
本発明は,このような従来の実情に鑑みなされたもので、比較的簡単かつ低コストな構成でありながら、ワーク搬送装置と、クロスバー交換装置と、の間で、ワーク搬送装置が支持するクロスバーを迅速かつ円滑に着脱して交換することができ、以って段取り作業時間の短縮により生産効率の向上等を図ることができるクロスバーの構造、クロスバー交換システム及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
このため、本発明に係るクロスバーは、
ワーク搬送装置に装着され、プレスマシンのワーク搬送方向に略直交して延在されワークを保持解放可能に構成されるクロスバーであって、
両端部が、中央部に対して、クロスバーの長手方向軸廻りに相対回転可能な状態と相対回転不能な状態とを切り換え可能に構成されたことを特徴とする。
【0026】
また、本発明に係るクロスバーの交換システムは、
プレスマシンのワーク搬送方向に略直交して延在されワークを保持解放可能に構成されるクロスバーを利用してワークを搬送するワーク搬送装置と、クロスバーを支持可能に構成されたクロスバー交換装置と、の間におけるクロスバーの交換システムであって、
両端部が、中央部に対して、クロスバーの長手方向軸廻りに相対回転可能な状態と相対回転不能な状態とを切り換え可能に構成されたクロスバーを利用し、
ワーク搬送装置がクロスバーをクロスバー交換装置に置きに行く際には、前記クロスバーの両端部と中央部との間に回転角度位相差を与えることで、前記クロスバーの両端部に設けられワーク搬送装置のクロスバー着脱部のクロスバー取付面へ着脱可能に取り付けられる着脱装置の取付面を、略水平方向に向けた状態にて、クロスバー交換装置に支持させ、
ワーク搬送装置がクロスバーをクロスバー交換装置に取りに行く際には、前記クロスバー着脱部のクロスバー取付面を略水平方向に向けた状態で、前記クロスバー交換装置に支持されているクロスバーの着脱装置の取付面に接近させてクロスバーを装着し、その後に、前記クロスバーの両端部と中央部との間の回転角度位相差を無くすことを特徴とする。
【0027】
本発明に係るクロスバーの交換システムにおいて、前記クロスバー交換装置に支持されているクロスバーのワーク保持面は、略鉛直方向を向けられることを特徴とすることができる。
【0028】
また、本発明に係るクロスバーの交換システムは、
プレスマシンのワーク搬送方向に略直交して延在されワークを保持解放可能に構成されるクロスバーを利用してワークを搬送するワーク搬送装置と、クロスバーを支持可能に構成されたクロスバー交換装置と、の間におけるクロスバーの交換方法であって、
両端部が、中央部に対して、クロスバーの長手方向軸廻りに相対回転可能な状態と相対回転不能な状態とを切り換え可能に構成されたクロスバーを利用し、
ワーク搬送装置がクロスバーをクロスバー交換装置に置きに行く際には、前記クロスバーの両端部と中央部との間に回転角度位相差を与えることで、前記クロスバーの両端部に設けられワーク搬送装置のクロスバー着脱部のクロスバー取付面へ着脱可能に取り付けられる着脱装置の取付面を、略水平方向に向けた状態にて、クロスバー交換装置に支持させ、
ワーク搬送装置がクロスバーをクロスバー交換装置に取りに行く際には、前記クロスバー着脱部のクロスバー取付面を略水平方向に向けた状態で、前記クロスバー交換装置に支持されているクロスバーの着脱装置の取付面に接近させてクロスバーを装着し、その後に、前記クロスバーの両端部と中央部との間の回転角度位相差を無くすことを特徴とする。
【0029】
本発明に係るクロスバーの交換方法において、前記クロスバー交換装置に支持されているクロスバーのワーク保持面は、略鉛直方向を向けられることを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、比較的簡単かつ低コストな構成でありながら、ワーク搬送装置と、クロスバー交換装置と、の間で、ワーク搬送装置が支持するクロスバーを迅速かつ円滑に着脱して交換することができ、以って段取り作業時間の短縮により生産効率の向上等を図ることができるクロスバーの構造、クロスバー交換システム及び方法を提供することができる。
【0031】
特に、本発明に係るクロスバーの構造、クロスバー交換システム及び方法によれば,ワーク搬送装置が略水平方向にクロスバーを着脱することを無くすことができる。このため、クロスバー交換の際に、ワーク搬送装置側とクロスバー側の着脱装置の傾き角度を調整する必要がなくなるため、交換作業の容易化や迅速化が図れ、以って段取り作業時間の短縮により生産効率の向上等を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に、本発明に係るプレス機械(プレスマシン)のためのワーク搬送装置に着脱可能に取り付けられるクロスバーの交換システム及び方法の一例を示す実施の形態について、添付の図面を参照しつつ説明する。なお、以下で説明する実施の形態により、本発明が限定されるものではない。
【0034】
本実施の形態に係るワーク搬送装置は、例えばプレスマシン間においてワークWを搬送するために利用される。
なお、本実施の形態に係るワーク搬送装置としては、例えば、プレスマシン間に設けられた柱等に設置された揺動アームを揺動させてワークを搬送する揺動アーム方式のワーク搬送装置に適用可能である。
【0035】
図1は、クロスバー100の両端部120を、クロスバー着脱部320を介してワーク搬送装置300に装着(支持)している様子と、クロスバー100を積載(載置、支持)することが可能なクロスバー交換装置200を示している。符号Wは、ワークであり、ツール105により吸着支持されている様子(想像線)を示している。なお、ツール105のワーク保持部により形成される面(ワークWの表面と平行な面)を、ワーク保持面と称する。
【0036】
クロスバー交換装置200は、自走或いは移動可能な台車やロボットなどとして構成されることができる。
【0037】
図2および
図3は,クロスバー100がクロスバー交換装置200に積載されている様子を示している。
【0038】
クロスバー交換装置200は,1つあるいは複数のクロスバー100を積載することが可能であり,ワーク搬送装置300は必要に応じて,クロスバー交換装置200にクロスバー100を積載したり,あるいはクロスバー100が積載されたクロスバー交換装置200からクロスバー100を受け取ることができるようになっている。
【0039】
ここで、便宜上,
図1のようなワーク搬送装置300に装着された状態から,
図2および
図3のようなクロスバー交換装置200に積載された状態になるときのクロスバー100を現生産用(現在の生産に使用していた)クロスバー100Aと呼ぶことにする。
【0040】
また、
図2および
図3のようなクロスバー交換装置200に積載された状態から,
図1のようなワーク搬送装置300に装着された状態になるクロスバー100を次生産用(次回生産に使用される)クロスバー100Bと呼ぶことにする。
【0041】
図2は、本実施の形態において、次生産用クロスバー100Bの中央部110(中央部110の下面111延いてはワーク保持面)と両端部120(取付面131)とが約90°の角度位相差(回転角度位相差:ここでは、略直交)を保ったまま,クロスバー交換装置200に積載されている様子を示している。なお、中央部110の下面111面と、ワーク保持面と、は略平行である。
【0042】
図3は,従来の装置に関し、次生産用クロスバー100Bの中央部1110(中央部1110の下面1111延いてはワーク保持面)と両端部1120(取付面1131)とが同位相(略平行)でクロスバー交換装置1200に積載されている様子を示している。
【0043】
図4は、本実施の形態に係るクロスバー交換システム及び方法を実現するために必要な回転自在軸141を備えた回転機構140と、回転を固定する為の回転固定機構150と、をクロスバー100の両端部120と中央部110との間に備えて構成した場合の一例を示している。
図4では、一対の両端部120の片方のみを表示している。
【0044】
回転自在軸141は,固定ボルト141A,141Bなどを介して、クロスバー100の両端部120側に接続固定されている。
【0045】
一方、鍔部141Cを除く回転自在軸141の外周部分を回転自在に収容支持する回転軸受部142は,固定ボルト142Aを介して、クロスバー100の中央部110側に接続固定されている。
【0046】
かかる構成により、回転中心軸141X廻りに、クロスバー100の両端部120のそれぞれが、中央部110に対して相対回転可能に構成されることになる。
【0047】
そして、回転固定機構150は,
図4においてスプリング152により左側に弾性付勢されているピン151を、圧縮空気155によってスプリング152の弾性付勢力に抗して押圧して右側へ移動させることで、クロスバー100の中央部110側に設けられている係合穴143にピン151を係合させて、回転自在軸141の回転軸受部142に対する相対回転(クロスバー100の両端部120の中央部110に対する相対回転)を固定することができるように構成されている。
【0048】
なお、圧縮空気155を開放することで、ピン151はスプリング152により弾性付勢されて、
図4において左側に移動され、係合穴143との係合が解かれて、回転自在軸141の回転軸受部142に対する相対回転(クロスバー100の両端部120の中央部110に対する相対回転)が可能となるように構成されている。
【0049】
これにより,クロスバー100は両端部120と中央部110が必要に応じて,両端部120が中央部110に対して回転自在となったり,回転固定となったりすることができる。すなわち、クロスバー100は、両端部120が中央部110に対して、クロスバーの長手方向軸廻りに、相対回転可能(相対回転自在)な状態と、相対回転不能(相対回転固定)な状態、とが切り換え可能に構成されている。
【0050】
そして、両端部120が中央部110に対して回転自在の場合には、ワーク搬送装置300の有するチルト機能(回転駆動部)315により、クロスバー100の両端部120のみ回転させることができ(クロスバー100の両端部120を中央部110に対して相対回転させることができ)、両端部120が中央部110に対して回転固定されている場合には、ワーク搬送装置300の有するチルト機能(回転駆動部)315により、両端部120と中央部110を含むクロスバー100全体をチルト(回転)させることができるようになる。
【0051】
図4は、一例を示しており、回転機構と回転固定機構を有しているならば,
図4の構造に限定されるものではなく、例えば,クラッチ機構(摩擦クラッチ機構、電磁クラッチ機構など)を利用することなども可能である。
【0052】
図5は、本実施の形態に係るクロスバー100の交換方法(交換の様子)を示している。
図5の(A)、(B)、(C)、(D)、(E)、(F)、(G)の順においては,次生産用クロスバー100Bを、ワーク搬送装置300に装着し,クロスバー交換装置200から次生産用クロスバー100Bを取り外す動作の様子を示している。
【0053】
また、
図5の(G)、(F)、(E)、(D)、(C)、(B)、(A)の順おいては、現生産用クロスバー100Aを装着したワーク搬送装置300が、何も支持していない空のクロスバー交換装置200に現生産用クロスバー100Aを設置(載置)した後、別のクロスバー交換装置200に次生産用クロスバー100Bを取りに行く動作の様子を示している。
【0054】
ここで、本実施の形態に係るクロスバー100の交換方法を、
図5に従って説明する。
まず、ワーク搬送装置300が、現生産用クロスバー100Aをクロスバー交換装置200に積載する際の動作方法(
図5において、(G)、(F)、(E)、(D)、(C)、(B)、(A)の順)について説明する。
【0055】
ステップ1では、ワーク搬送装置300は、揺動アーム310の先端に備えられているチルト機構(回転駆動部)315を介して、現生産用クロスバー100A全体(回転固定機構150により、両端部120が中央部110に対して回転固定された状態)を鉛直方向に対して約90°傾ける(
図5の(G)から(F)の動作)。
【0056】
ステップ2では、90°傾けた姿勢のまま,クロスバー交換装置200の上面に現生産用クロスバー100Aを下降させ,積載し固定する(
図5の(F)から(E)の動作)。
なお、後述する
図8に示すような、現生産用クロスバー100Aの中央部110を回転固定させるためのクロスバー受け台210の上に載置する。
【0057】
ステップ3では、回転固定機構150による固定を解除し,現生産用クロスバー100Aの両端部120を回転自在とする。
【0058】
ステップ4では、ワーク搬送装置300のチルト機構(回転駆動部)315の駆動等を利用して,現生産用クロスバー100Aの両端部120のみを回転機構140を介して、90°回転させて,水平姿勢にする(取付面131を水平に持ち来たす)。このとき,後述する
図8に示すようなクロスバー受け台210に支持されている現生産用クロスバー100Aの中央部110(中央部110の下面111)は回転固定されているため、元のままで、90°傾いたまま(鉛直に立ったまま)である(
図5の(E)から(D)の動作)。
【0059】
ステップ5では、ワーク搬送装置300の揺動アーム310を伸長して、その先端のチルト機構(回転駆動部)315に取り付けられたクロスバー着脱部320を、着脱装置130(取付面131)から、鉛直下方向に離脱する(
図5の(D)から(C)の動作)。
【0060】
次に、ワーク搬送装置300が,次生産用クロスバー100Bを装着し,クロスバー交換装置から取り外す際の動作方法について説明する(
図5において,(A),(B)、(C)、(D)、(E)、(F)、(G)の順)。
【0061】
ステップ11では、ワーク搬送装置300は,クロスバーを装着していない状態で,揺動アーム310の先端のクロスバー着脱部320のクロスバー取付面321を水平に維持した水平姿勢のまま,クロスバー交換装置200に載置された次生産用クロスバー100Bの両端部120に設けられた着脱装置130の取付面131に対して鉛直下方向から密着させ,装着する(
図5の(C)から(D)の動作)。
【0062】
ステップ12では、ワーク搬送装置300のチルト機構(回転駆動部)315の駆動等を利用して,次生産用クロスバー100Bの両端部120のみを、回転機構140を介して、鉛直方向に対して90°回転させ,次生産用クロスバー100Bの中央部110と両端部120とが角度位相差なく、姿勢が同じ方向を向くようにする(
図5の(D)から(E)の動作)。すなわち、取付面131やクロスバー取付面321が中央部110の下面111(ワーク保持面)と略平行となる状態(鉛直に立った状態)とする。
【0063】
ステップ13では、回転機構140を回転固定機構150により固定して,次生産用クロスバー100Bの中央部110と両端部120とが相対回転不能となるように固定する。
【0064】
ステップ14では、90°傾けた姿勢のまま,次生産用クロスバー100Bを鉛直上方向に持ち上げ,クロスバー交換装置200から取り外す(
図5の(E)から(F)の動作)。
【0065】
続く、ステップ15では、ワーク搬送装置300のチルト機構(回転駆動部)315の駆動等を利用して,次生産用クロスバー100B全体を90°回転させ,次生産用クロスバー100Bの中央部110の下面111やワーク保持面が略水平となる(下方を向く)ようにしてワーク搬送に備える(
図5の(F)から(G)の動作)。
【0066】
本実施の形態では、上記のように動作するため,ワーク搬送装置300が水平方向にクロスバー100を着脱することを無くすことができる。
【0067】
すなわち、
図5で説明したように、本実施の形態においては、ワーク搬送装置300がクロスバー100を着脱する際に,従来のようにクロスバー着脱部320のクロスバー取付面321を略鉛直に立てながら水平方向に移動させて密着させるといった水平動作を必要とせず,
図5の(C)および(D)に示したように,クロスバー取付面321を略水平に保ち鉛直下方向からクロスバー着脱部320を着脱させることが可能である。
【0068】
この一方、従来の技術においては、既述したように、ワーク搬送装置1300がクロスバー1100を着脱する際に,
図6の(C)および(D)のように,クロスバー着脱部1320のクロスバー取付面1321を略鉛直に立てながら水平方向に密着させる水平動作が必要である。
【0069】
従って,
図5と
図6の比較から理解されるように,本実施の形態に係るクロスバーの交換方法によれば,
図5のように,クロスバー交換の際にワーク搬送装置が略水平方向にクロスバーを着脱することを無くすことができる。すなわち、ワーク搬送装置1300が、クロスバー着脱部1320のクロスバー取付面1321を鉛直に立てながら水平方向に移動させるといった運転操作や運転調整の難しい動作を無くすことができる。
【0070】
また,本実施の形態によれば、運転調整時(段取り時)において,ワーク搬送装置側とクロスバー側の着脱装置の傾き角度を調整する必要がなくなるという効果も有する。
【0071】
このように、本実施の形態によれば、比較的簡単かつ低コストな構成でありながら、ワーク搬送装置と、クロスバー交換装置と、の間で、ワーク搬送装置が支持するクロスバーを迅速かつ円滑に着脱して交換することができ、以って段取り作業時間の短縮により生産効率の向上等を図ることができる。
【0072】
なお,本実施の形態においては,クロスバー100の両端部120にある着脱装置130の取付面131が水平姿勢にあるのに対して,クロスバー100の中央部110の下面111が約90°の角度位相差を持っている場合を一例として説明したが,角度位相差は90°に限定されるものではなく、他の角度位相差の場合にも広く適用可能である。
【0073】
図7は、クロスバー交換装置がプレス加工工程上流およびプレス加工工程下流に設置されたプレスマシンの間を走行(移動)する様子を示している。
【0074】
ここで,
図7の(A)のように,ツール1105が生産中と同じ水平姿勢の状態では,プレスマシン1、2に干渉してしまうため,
図7の(B)のように,ツール1105を傾ける(
図7(B)では(A)に対して角度位相差90度とする)ことにより,干渉を回避している様子を示している。
【0075】
図8は,本実施の形態によって,クロスバー100をクロスバー交換装置200に設置する方法の一例として,クロスバー交換装置200が,クロスバー100を回転固定させるためのクロスバー受け台210を備えている様子を示している。
【0076】
このクロスバー受け台210の凹部211に、クロスバー100の中央部110を収容させて長手方向軸廻りに関する回転を規制することで,ワーク搬送装置300がそのチルト機構(回転駆動部)315の回転駆動によってクロスバー100の両端部120のみを回転(クロスバー100の両端部120を中央部110に対して相対回転)させることが可能となる。
【0077】
図9は、クロスバー100の着脱装置130に着脱されるクロスバー搬送装置300のクロスバー着脱部320の一例を示している。
【0078】
クロスバー着脱部320(クロスバー搬送装置300側)は、着脱装置130(クロスバー100側)を装着する際に互いの位置をガイドするガイドピン322と、実際に着脱するための機構としての着脱機構323と、を備えている。
【0079】
ここで,クロスバー着脱部320は,着脱装置130(クロスバー100側)が装着されると同時に、圧縮空気や電気信号などに同時に接続されるような構成とすることが可能である。すなわち、例えば、ガイドピン322や着脱機構323が着脱装置130に対して所定の位置にセットされたときに、圧縮空気や電気信号などが着脱機構323の内側などを通過して着脱装置130(クロスバー100側)に供給されるような構成とすることができる。
【0080】
なお、着脱機構323は、例えば、電磁石を利用してクロスバー100を着脱可能に構成したものや、空気圧などを利用して外径を増減させることで着脱装置130(クロスバー100側)の係合穴に対して離脱不能な状態と離脱可能な状態とを切替可能に構成することでクロスバー100を着脱可能に構成することなどが可能である。
【0081】
クロスバー着脱部320としては、例えば、入手容易なオートマチックツールチャンジャー(自動工具交換装置)(ニッタ株式会社製の「チェンジシステムXC−120」、ビー・エル・オートテック株式会社製のクイックチェンジ「QCP−100」など)を用いることができる。
【0082】
ここで、従来のように、クロスバー100の着脱装置130の取付面131を鉛直姿勢(鉛直に立てた姿勢)にて、ワーク搬送装置300のクロスバー着脱部320のクロスバー取付面321に装着する場合、クロスバー着脱部320は,装着を円滑に行えるようにするためにガイドピン322が設けられているが,ワーク搬送装置300によって,着脱装置130(クロスバー100側)に、クロスバー着脱部320(ワーク搬送装置300側)が押し付けられることになる。
【0083】
ここで,従来のようにクロスバー100の着脱装置130の取付面131を鉛直姿勢にて装着する場合において、着脱装置130およびクロスバー着脱部320との位置や角度が異なっている場合,ガイドピン322により,クロスバー100側は動かされることになるが,クロスバー100は重量物であるため、水平方向に延びるガイドピン322のみでその重量を支えて垂直上方向に持ち上げることは困難である。また、クロスバー100側はそれ以上下方へ移動することができないため、ガイドピン322を規定の位置まで挿入することができない場合も想定される。
【0084】
更に、ワーク搬送装置300が備える一対のクロスバー着脱部320は、クロスバー100の両端に備えられた一対の着脱装置130を、それぞれ同時に装着しなければならないため,機械的・制御的誤差を考慮した場合,クロスバー100の両端には少なからず位置および角度誤差が存在し,これにより,従来のような鉛直姿勢での装着は困難を極めることになる。
【0085】
一方,本実施の形態のように、クロスバー100の着脱装置130の取付面131(ワーク搬送装置300のクロスバー着脱部320の取付面321)を水平姿勢(水平に寝かせた姿勢)にて装着する場合,クロスバー100の着脱装置130の位置および角度誤差が存在していたとしても,比較的小さい量であれば,ガイドピン322によりクロスバー100は位置補正が可能であり、容易にクロスバー100の着脱装置130を装着することができる。
【0086】
以上説明したように、本実施の形態によれば、クロスバー100の中央部(ワーク保持部)110と両端部120との間で相対回転可能に構成し、クロスバー100の中央部110の下面111やワーク保持面を略鉛直方向としつつも、クロスバー100の両端部120に設けられる着脱装置130の取付面131(ワーク搬送装置300のクロスバー着脱部320のクロスバー取付面321)を略水平にした状態で、クロスバー100をワーク搬送装置300に対して着脱することができるように構成すると共に、少なくともワーク搬送時にはクロスバー100の両端部120に設けられる着脱装置130の取付面131(ワーク搬送装置300のクロスバー着脱部320のクロスバー取付面321)を略水平のまま、クロスバー100の中央部110の下面111やワーク保持面が略水平となる(下方を向く)ように姿勢を切り換えてワーク搬送を行うことができるようにしたので、クロスバー100の両端部120に設けられる着脱装置130の取付面131(ワーク搬送装置300のクロスバー着脱部320のクロスバー取付面321)を略鉛直に立てた状態でのクロスバー100の着脱を行う必要性を排除することができ、以って、難しい運転調整などを無くして、ワーク搬送装置300と、クロスバー交換装置200と、の間で、クロスバー100を迅速かつ円滑に着脱して交換することができる。
【0087】
すなわち、本実施の形態によれば、比較的簡単かつ低コストな構成でありながら、ワーク搬送装置と、クロスバー交換装置と、の間で、ワーク搬送装置が支持するクロスバーを迅速かつ円滑に着脱して交換することができ、以って段取り作業時間の短縮により生産効率の向上等を図ることができる。
【0088】
また、本実施の形態によれば、クロスバー交換装置200には水平方向に対して省スペースな姿勢でクロスバー100を支持させることができるため、プレスマシン間隔を短く維持することができ、以ってタクトタイムの短縮化やプレス加工ラインの省スペース化に貢献することができる。
【0089】
以上で説明した実施の形態は、本発明を説明するための例示に過ぎず、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々変更を加え得ることは可能である。