特許第5665211号(P5665211)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5665211
(24)【登録日】2014年12月19日
(45)【発行日】2015年2月4日
(54)【発明の名称】草取り用具
(51)【国際特許分類】
   A01B 1/18 20060101AFI20150115BHJP
【FI】
   A01B1/18
【請求項の数】3
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-117140(P2014-117140)
(22)【出願日】2014年6月5日
【審査請求日】2014年6月5日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514142429
【氏名又は名称】宗教法人立善寺
(73)【特許権者】
【識別番号】514142430
【氏名又は名称】菊田 貫俊
(74)【代理人】
【識別番号】100166039
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 款
(72)【発明者】
【氏名】菊田 貫俊
【審査官】 木村 隆一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−078501(JP,A)
【文献】 特許第5305369(JP,B1)
【文献】 実開平03−105201(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3163466(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 1/16−1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
種子からなる核を始点として発芽し成長した草を取るための草取り道具であって、草取りの際に草の根や葉を掴んで引っ張ることのない草取り道具において、
土中に突き刺すことが可能な開閉自在の突き刺し部を有しており、前記突き刺し部は、
突き刺し部を土中に突き刺したときに草の根を取り囲むことが可能な包囲部と、
突き刺し部を土中から引き抜く過程で草の核を引っ掛けることが可能な引っ掛け部と、
を有し、前記包囲部は二本のアームで構成され、突き刺し部が閉じた状態では丸みを帯びたアーム先端部が相互に点接触することを特徴とする草取り道具。
【請求項2】
前記突き刺し部は、
開状態で土中に突き刺すことで、前記包囲部の内側に草の根を取り込むことが可能で、
閉状態で土中から引き抜くことで、前記引っ掛け部を、草の核の方へ導くことが可能である、ことを特徴とする請求項1に記載の草取り道具。
【請求項3】
前記突き刺し部の引っ掛け部は、前記包囲部で囲まれた空間に通ずる隙間で構成されている、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の草取り道具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雑草などの草類(植物)を取るための器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
庭や田んぼ、植木鉢などでは、雑草などの草類が自然発生的に生い茂るため、これらの雑草を定期的に除去することが古くから一般的に行われている。このような草類の除去にあたっては、昔ながらの手作業による草むしりのほか、鎌や鍬を使うことも多く、また、最近では雑草を挟み込んで取る器具(挟んで引っ張る器具)が使われるようになってきている。
【0003】
しかしながら、これらの方法による草取りでは、いずれも次に挙げるような問題が生じていた。
【0004】
「鎌」を使った草取りでは、草の根を切断することになる。そのため、土中に残った根のそれぞれの切断部から再び核が発生し、再生したそれぞれの核を成長の始点としてまた葉が生えてくることになる。したがって、鎌を使った草取りでは、雑草を駆除するどころか、逆に、繁殖能力を活性化して雑草を増やす結果になる。
【0005】
「鍬」を使った草取りでは、土を掘り起こして雑草を土中に埋め込むことを基本とするが、この土の掘り起しには大変手間がかかり、体力を激しく消耗する。したがって、「鍬」を使った草取りは作業性の点で問題があった。また、上記「鎌」を使った草取りと同様に、草の根を土中に残すことになるため、雑草を増やす結果になるといった問題があった。
【0006】
また、いわゆる手作業による草むしりや、雑草を挟んで取る器具を使った草むしりでは、次のような問題があった。
【0007】
雑草などの植物は、草食動物に葉を食べられても生き残れるように、葉を引っ張ると簡単に切れるように進化している。すなわち、手作業による草むしりで、雑草の「葉」を引っ張っても、葉の部分で簡単に切れてしまい、根を含む雑草全体を根こそぎにすることはできないといった問題がある。
【0008】
また、雑草などの植物は、草食動物が噛んで引っ張ると、その強い刺激を受けて根の途中で容易に切れるように進化している。つまり、草食動物が雑草を噛んだ場合には、少なくとも雑草の根の一部が土中に残るように(その後繁殖できるように)、植物は進化している。したがって、雑草を挟んで取る器具を利用して草むしりをすると、雑草を強く引っ張ったときの刺激によって根に傷が付き、根が容易に切れてしまう。そして、数日経過すると、土中に残った根のそれぞれから再び核が発生し、再生したそれぞれの核を成長の始点として再び葉が生えてくることになる。したがって、そのような器具を使った草取りでは、雑草を増やす結果になるといった問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した従来技術の問題点に鑑み、本発明の目的は、駆除対象である雑草などの植物を、簡単かつ確実に根こそぎにできる草取り用具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的は、
種子であった部分からなる核を始点として発芽し成長した草を取るための草取り道具であって、土中に突き刺すことが可能な突き刺し部を有しており、
前記突き刺し部が、
突き刺し部を土中に突き刺した状態で草の根を囲むことが可能な包囲部と、
突き刺し部を土中から引き抜く過程で草の核(草の根に繋がった部分)を引っ掛けることが可能な引っ掛け部と、
を有する草取り道具によって達成される。
【0011】
前記突き刺し部は開閉自在に構成されており、
開状態で土中に突き刺すことで、前記包囲部の内側の隙間に草の根を取り込むことが可能で、閉状態(且つ草の根を取り込んだ状態)で土中から引き抜くことで、前記引っ掛け部を、草の核の方へ導くことが可能である。
【0012】
また、前記突き刺し部の引っ掛け部は、前記包囲部で囲まれた空間に通ずる隙間(例えば細長い隙間)で構成されている。
【発明の効果】
【0013】
雑草などの植物は、図1右端に示すように、種が膨らんで初めは根が出てくる。その根は種の真下に向かって真っ直ぐに伸び、やがて安定すると、葉を種の上部へ地上へと伸ばす。そして、その成長の中心である核(種子であった部分)が膨らんで葉が多く出てくる。つまり、根も葉も「核」が始まりであり、そして、その核は他の部分(根など)よりも固くて大きいといった特徴を備えている。本願発明者はこの点に着目し、本発明を創作するに至った。そして、本発明の草取り用具によって達成される効果は、次のとおりである。
【0014】
草取りを行うにあたって、従来のように、安易に葉を掴んで(又は挟んで)引っ張ればそこで切れてしまい、また同様に、根を掴んで(又は挟んで)引っ張ればそこで切れてしまうことになる。これでは、雑草を駆除するどころか、逆に、雑草の繁殖能力を活性化することになって、雑草を増やす結果となる。
そこで本発明では、土中に突き刺した突き刺し部により、雑草の根を掴んだり挟んだりしないように根全体を探るとともに包囲して押さえ込む。そして、雑草の根を包囲した状態で突き刺し部を引き抜き、その過程で、雑草の核を、引っ掛け部の隙間に引っ掛ける。草取り用具に引っ掛かった「核」は、他の部分よりも固くて頑丈、しかも径が大きいので、その部分を引っ掛けつつ引っ張り上げることで、それに繋がる雑草を根こそぎにすることができる。
したがって、このような特徴を具備する草取り用具を用いて草取りを行うことで、除去する雑草の根を傷つけたり切断する心配がなく、また、葉だけを切り取る心配もないので、駆除対象である雑草を確実に根こそぎにすることができる。
【0015】
また、種から出た二葉であっても、大きく成長した草であっても、共通することは、図1に示すように根は初め真っ直ぐに成長することである。本発明ではこの点に着目し、突き刺し部を開閉自在に構成している。突き刺し部を開いた状態で土中に突き刺すことで、特に注意深く探り当てなくても草の根全体を押さえることができる。つまり本発明では、草の根を捉える範囲が極めて広範囲に及ぶので、駆除する草が群生している場合でも、それらの核を確実に捉え、一度に纏めて引っ掛けるとともに引っ張り上げることで、多数の草を一度に纏めて根こそぎにすることができる。また、土中において根を介して相互に繋がった状態で群生している草であっても、本発明の草取り用具であれば、これらの根を纏めて包囲することができ、また、これらの根に繋がる多数の核を引っ掛けて、群生した草を纏めて根こそぎすることが可能である。
【0016】
また、本発明の草取り用具は、草の根の一点を掴むわけではないので、「一点を掴む」といった煩わしい作業に集中する必要がない。つまり、草の根が張っていそうな場所に適当に突き刺せば足りるので、草取り作業を省力で効率的に進めることができる。
【0017】
また、本発明の草取り用具の先端側(突き刺し部)の構造は、例えば、鶴の口ばしのように草の根の奥を探ることができ、また、エトピリカの口ばしのように数多くの根を捕捉できるように構成されている。このように突き刺し部を鳥類の口ばしの如く構成することで、一つの草だけでなく、大小かかわらず複数の草の根を切断することなく同時に捕捉できるので、広範囲に亘る草取りを短時間で効率的に進めることが可能になる。
【0018】
また、仮に失敗して葉が切れた植物があっても、本発明の草取り用具を用いて土の中に突き刺すことで、その草の核を引っ掛けて根こそぎにすることができる。
【0019】
なお、カタバミのような植物は、根が広範囲に及ぶので、地表から葉を引っ張っただけでは、葉の部分で容易に切れてしまう。つまり、安易に葉や根などの一部を引っ張っただけでは、その部分が容易に切れてしまい、根こそぎにすることができない。そして、切れて残ったものをそのまま放置していると、そこから数日で芽を出すので、通常の草取りでは、草を増やしてしまう結果となる。
これに対し本発明の草取り用具によれば、草を途中で切らずに根こそぎにできる。また、万が一、草の根が途中で切れてしまった場合でも、草取り用具を再度突き刺して別の根を探り、その根を伝って核を引っ張り上げることで、根こそぎにすることができる。したがって、本発明の草取り用具を用いた場合には、雑草を簡単に駆除することができ、雑草を増やす結果にはならない。なお、上述した事例ではカタバミを具体例として挙げたが、ゼニゴケなどの他の植物を駆除する場合でも同様である。
【0020】
また、すでに多数の草を取った場合でも、土中に、草の根が残っている場合があり、それを放置していると、そこから再び雑草が生えてくることになる。そこで、すでに多数の草を取った後であっても、本発明を利用することで、土中に残っている草を根こそぎにして簡単確実に駆除することが可能である。
【0021】
また、本発明の草取り用具は、その利用場所を特に限定せず、例えば、雑草が狭い間隔で生い茂った場所や、植木鉢などの狭小な場所、あるいは、大小の雑草が群生した場所などでの作業など、様々な場所での草取りに利用することが可能である。
【0022】
なお、本願の添付図面に示す草取り用具はあくまでも一例であって、本発明の構成はこれに限定されない。例えば、手元の把手と先端の突き刺し部との間に長い柄を具備するように草取り用具を長尺に構成することで、腰をかがめることなく利用できるようになる。その結果、例えば、田んぼでの草取りの際に、腰に負担をかけることなく、作業を楽に進めることができるといった格別の効果を達成できる。
【0023】
また、本発明を利用することで、草取りの作業において手を汚すことがないといった格別の効果が達成される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】雑草などの植物の構造とその成長の過程を概略的に示す図である。
図2】本発明の草取り用具の全体を例示する斜視図である。
図3図3(a)は、草取り用具の突き刺し部が開いた状態(開状態)を示す平面図であり、図3(b)は、草取り用具の突き刺し部が閉じた状態(閉状態)を示す平面図である。
図4図3(b)に示す草取り用具の突き刺し部を示す拡大図である。
図5】草取り用具の突き刺し部を構成するアームの断面形状を示す断面図である。なお、図5(a)は、図4のV−V線に沿った断面図である。
図6】本発明の草取り用具を用いて、駆除対象である雑草を根こそぎにしている様子を示す図である。
図7】本発明の草取り用具を用いて、複数本の雑草をまとめて根こそぎにしている様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の草取り用具は、図1に示すような植物7、すなわち、種子などからなる核71を始点として根を張り発芽し成長した雑草などの草類を取るための草取り道具である。
【0026】
図1に示すとおり、雑草など植物7は、その成長の過程で種が膨らんで初めに根73が出てくる。つまり成長の過程で、初めに根73が種の真下に向かって真っ直ぐに伸び、やがて安定すると、葉を種の上部へ地上へと伸ばすことになる。そして、その成長の中心である核71が膨らんで多くの葉75が出てくることになる。
【0027】
つまり、図1に示すように、雑草などの植物が備える根も葉も、すべて核71(もともと種子であった部分)が成長の始まりであり、そして、その核71は根などの他の部分よりも固くて大きいという特徴がある。
【0028】
本発明は、雑草などの植物の核(もともと種子であった部分)が他の部分よりも固くて大きいという点に着目して生み出されたアイデアである。
【0029】
なお、本発明は、駆除対象である雑草などの植物(根や葉)を掴んだり、挟んで引っ張ったりするものではなく、また、植物を切り取ったりするような器具ではないので、その点に留意されたい。
【0030】
(草取り用具の構成)
以下、図2図5に基づいて、上記のような雑草を根こそぎにするために用いる草取り用具の具体的構成について説明する。
図2は、草取り用具1の全体を示す斜視図である。
図3(a)は、草取り用具1の突き刺し部3が開いた状態(開状態)を示す平面図であり、図3(b)は、草取り用具1の突き刺し部3が閉じた状態(閉状態)を示す平面図である。
図4は、図3(b)の突き刺し部3を示す拡大図である。
図5のなかで図5(a)は、図4のV−V線に沿った断面図である。
【0031】
なお、添付図面に図示する草取り用具は、あくまでも一例であって、特許請求の範囲に記載の範囲内で、種々の形態や変形例を採用することが可能である。
【0032】
草取り用具1は、主として、
・草取り作業者が手で持つ部分である把手2と、
・ハサミやペンチなどの工具と同様の開閉動作が可能な突き刺し部3と、
を有している。
【0033】
本実施形態において、把手2には、作業者の指を通すことが可能な指通し21,22が形成してある。指通し21,22に作業者の指を通した状態で、軸23,24を離隔・近接させることで、突き刺し部3をハサミやペンチなどの工具と同様に開閉動作させることができる。
【0034】
突き刺し部3は、図2図4に示すように、
・突き刺し部3を土中に突き刺したときに、広範囲に亘って多数の草の根を囲むことが可能な包囲部4と、
・突き刺し部3を土中から引き抜く過程で、草の根に繋がった「核」を引っ掛けることが可能な引っ掛け部5を、有している。
なお、後者の引っ掛け分5は図4に示すように細長い隙間で構成され、この隙間に、一つの核を引っ掛けることができることは勿論のこと、多数の核を一度に纏めて引っ掛けることも可能である。
【0035】
包囲部4は、回動軸40を基点として回動する二本のアーム41,42で構成されている。アーム41,42は、草の根の左右両側から囲み込む役割を担っている。包囲部4を構成する二本のアーム41,42は、図4に示すように、少なくともその内側が湾曲するように形成されている。このように湾曲形成することで、突き刺し部4を土中に突き刺して閉じたときに、その内側空間(二本のアームの間の隙間43)に、雑草の根を傷つけることなく取り込むことが可能になる。また、アーム41,42の先端部は、丸みを帯びた形状を有している(つまり尖っていない)。突き刺し部3を閉じた状態では、アーム41,42の丸みを帯びた先端部が、相互に点接触する。このように、アーム41,42の先端部を丸く形成することで、草取り操作の際に、その先端部が草の根を傷つけることを防止できる。
【0036】
また、包囲部4を構成する二本のアーム41,42には、植物の根を傷つけたり切断することがないように、「刃」は形成されていない。つまり、図5(a)の断面図(図4のV−V線に沿った断面図)に示すように、アーム41,42は、互いに向かい合う縁部分が丸みを帯びたR状の断面形状を有するように形成されている。なお、図5(b)に示すように、アーム41,42を断面円形状に形成してもよい。図5(a)又は(b)に示すように、アーム41,42が向かい合う部分を、丸みを帯びた形状にすることで、突き刺し部3を土中で閉じる際にアーム41,42の間から土が速やかに逃げることになる。したがって、突き刺し部3の内側(隙間43)に根を取り込むときに、アーム41,42の間にある土によって、アーム41,42の閉じ込みが邪魔されることがない。また、アーム41,42の間に土が付着しないので、抜き差しする度にわざわざ手作業で土を払いのける必要がなく、突き刺し部3による草の抜き取りの作業を何度でも速やかに繰り返すことができる。つまり、抜き差しの繰り返しによる草取り作業を、何度でも滞りなく且つ速やかに進めることができる。
【0037】
なお、図5(c)に示すように、アーム41,42の形状を断面矩形状に形成した場合には、アーム41,42の間に土が挟まることになるため、その間にある土によって、アーム41,42の閉じ込みが邪魔されてしまう。また、草を抜き取るたびに、アーム41,42の間に付着した土をわざわざ手作業で払いのける必要が生じる。したがって、草の抜き取りを速やかに繰り返すことができないといった問題が生じる。
また、図5(d)に示すように、アーム41,42の縁部分を尖らせて刃を形成した場合には、突き刺し部3を閉じたときに、アーム41,42の間に挟まった根が傷つくことになる。したがって、前述したとおり、草の根を傷つけることによって、草の繁殖能力を活性化するといった問題が生じる。
しかしながら前述したとおり、本発明ではアーム41,42は、向かい合う縁部分が丸みを帯びたR状の断面形状を有するように形成されているので、上記のような問題が生じることはない。
【0038】
引っ掛け部5は、図4に示すように、包囲部4で囲まれた空間(二本のアーム41,42で挟まれた隙間43)と一続きの細い隙間で構成されている。この細長い隙間からなる引掛け部5は、閉じた状態のアーム41,42の先端側の内側に形成されている。
【0039】
上述した包囲部4と引っ掛け部5を具備する突き刺し部3は、鳥類のクチバシの如く、土中に突き刺すことが可能な形状を有している。草取りの際には、この突き刺し部3を土中に突き刺したり、土中から引き抜くようにして用いる。
なお、鳥類の場合、水の中でクチバシを閉じたときその間の水が側方に逃げるが、土の中でクチバシを閉じた場合、土がだんだんとクチバシの間に挟まって行くことになる(つまりクチバシの間から土が逃げない)。したがって、鳥類は、クチバシを土に差し込んだ場合、頭を左右に勢いよく繰り返し振って、クチバシの間に挟まった土を取り去ろうとする。しかしながら本発明では、図5(a)や(b)に示すように、アーム41,42の向かい合う部分を、湾曲凸状に形成しているので、鳥類のクチバシのように土が挟まることがなく、アーム41,42を閉じることでその間の土が自動的に側方に逃げるといった効果が達成される。
【0040】
突き刺し部3は開閉自在に構成されている。
この突き刺し部3を開状態(図3(a)に示す状態)で土中に突き刺すことで、その包囲部4の内側に草の根などを取り込むことが可能である。
この突き刺し部3を閉状態(図3(b)に示す状態)で土中から引き抜くことで、草の根を包囲した状態を維持することが可能である。また、このように突き刺し部3を引き抜くことで、紐状に連なる根を伝って包囲部4が核の方へ導かれ、細い隙間からなる引っ掛け部5に雑草の核(図1参照)を引っ掛けることが可能になる。
【0041】
(草取り方法)
次に、図6に基づいて、上記構成の草取り用具を用いた草取り方法について説明する。
図6は、草取り用具1を用いて、駆除対象である雑草を根こそぎにしている様子を示す図である。なお、駆除対象の雑草の拡大図は、図1に示すとおりである。
【0042】
はじめに、図6(a)に示すように、突き刺し部3を開状態に保った状態で、当該突き刺し部を、駆除対象の雑草7の根に向けて土中に突き刺す。その過程で、二本のアーム41,42の間の隙間に、雑草の根73が取り込まれる。なお、前述したとおり、二本のアーム41,42に刃は形成されていないので、この刺し込みの過程で、突き刺し部3が雑草の根73を傷つけたり切断する虞はない。
【0043】
図6(a)に示すように、突き刺し部3を土中に突き刺して、二本のアーム41,42の間の隙間に、雑草の根全体を取り込んだら、突き刺し部3を閉じて根全体を隙間内に押さえ込む。突き刺し部3を閉じると、アーム41,42の丸まった先端が相互に点接触して閉じるとともに、図5(a)に示すようにその間から土が逃げ、除草対象の雑草の根全体が突き刺し部のアーム41,42によって包囲される。以後は、突き刺し部3を引き抜いても、そこから根が抜け出ることは無い。
【0044】
続いて、突き刺し部3を閉じた状態で、該突き刺し部を土中から引き抜く。その過程で、突き刺し部3は、紐を伝うような感じで、包囲する根73を伝って上方へ導かれる。そして、土中から引き抜く過程で突き刺し部は、包囲する根を辿り、やがて、根よりも固くて大きい核(もともと種子であった部分)が、図6(b)に示すように、突き刺し部3の先端側にある引っ掛け部5に引っ掛かる。
【0045】
この引っ掛け部5は図4に示すように、細い隙間で構成されている一方、雑草の核は引っ掛け部5の隙間よりも大きいため、核は引っ掛け部5の隙間を通り抜けることができない。したがって図6(c)に示すように、突き刺し部3をそのまま閉じた状態で引き抜くことで、核及びそれに繋がった部分が土中から引き抜かれる。なお、図4に記載したとおり、比較的大きい草の核は、引っ掛け部5の広い隙間部分に引っ掛かり、また、発芽したばかりの小さな草の核は、引っ掛け部5の先端寄りの狭い部分の方に引っ掛かるようになっている。
【0046】
植物の核は(図1参照)、他の部分よりも固くて大きく膨らんでいるといった特徴があるため、核の部分を突き刺し部3に引っ掛けた状態で引っ張り上げることで、根こそぎ状に雑草全体を引き抜くことができる。つまり、従来の草むしりのように、雑草の根を土中に残すことがないので、核の再生を防止することができる。
【0047】
以上述べたとおり、本発明では、土中に突き刺した突き刺し部により、雑草の根を掴まないように根全体を探るとともに包囲して押さえ込む。そして、雑草の根を包囲した状態で突き刺し部を引き抜き、その過程で、雑草の核を、引っ掛け部の隙間に引っ掛ける。草取り用具に引っ掛かった「核」は、他の部分よりも固くて頑丈なので、その部分を引っ張ることで、雑草を根こそぎにすることができる。したがって、このような特徴を具備する草取り用具を用いて草取りを行うことで、除去する雑草の根を傷つけたり切断する心配がなく、また、葉だけを切り取る心配もないので、駆除対象である雑草を確実に根こそぎにすることができる。
【0048】
なお、上述した実施形態では、代表例として、雑草1本を抜き取る際の手順について説明したが、本発明を利用した草取りでは、図7に示すように、多数の雑草の核を一度に纏めて引っ掛けて、これらを一気に纏めて引き抜くことも可能である。つまり本発明では、特に1本の雑草を抜き取ることに神経を集中させる必要がなく、雑草が群生していそうな場所に適当に突き刺せば、その場所にある雑草を一度に纏めて根こそぎにできる。
【符号の説明】
【0049】
1 草取り用具
2 把手
3 突き刺し部
4 包囲部
5 引っ掛け部
7 雑草(植物)
40 回動軸
41 アーム
42 アーム
43 隙間
21 指通し
22 指通し
23 軸
24 軸
71 核(元々種子であった部分)
73 根
75 葉
【要約】
【課題】雑草などの植物を根こそぎ的に駆除できる草取り用具を提供する。
【解決手段】草取り道具1は、種子などからなる核を始点として発芽し成長した草を取るための器具あって、土中に突き刺すことが可能な突き刺し部3を有している。突き刺し部3は、突き刺し部を土中に突き刺した状態で草の根を囲むことが可能な包囲部4と、突き刺し部を土中から引き抜く過程で草の核(元々種子であった部分)を引っ掛けることが可能な引っ掛け部5を有する。突き刺し部3は開閉自在に構成され、開状態で土中に突き刺すことで包囲部4の内側に草の根を取り込むことが可能であり、また、閉状態で土中から引き抜くことで引っ掛け部5を草の核の方へ導くことが可能である。引っ掛け部5は、包囲部4で囲まれた空間と一続きの細長い隙間で構成されている。このような器具を用いることで、除去する雑草の根を傷つけたり切断する心配がなく、雑草を根こそぎにできる。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7