【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明による固体撮像素子用の撮像レンズは、固体撮像素子用の撮像レンズであって、物体側から像面側に向かって順に、開口絞りと、物体側と像面側に凸面を向けた両凸形状の第1レンズと、光軸近傍で物体側に凸面を向けた負の屈折力を有する第2レンズと、光軸近傍で物体側と像面側に凸面を向けた両凸形状の第3レンズと、光軸近傍で物体側に凹面を向けた正の屈折力を有する第4レンズと、光軸近傍で物体側に凸面を向けた負の屈折力を有する第5レンズ
を配置し、第1レンズの焦点距離をf1、前記第3レンズの焦点距離をf3
、第4レンズの焦点距離をf4、レンズ系全体の焦点距離をfとしたときに、以下の条件式
(1)、(6)’
および(7)を満足することを特徴とする
。
0.50<f1/f<0.76 (1)
2.93≦f3/f1<8.50 (6)’
0.65<f4/f1<1.40 (7)
【0012】
上記の構成において、第1レンズ及び第2レンズは必要なパワーの発生と色収差の補正を大局的に実施し、第3〜第5レンズは、主としてコマ収差、非点収差及び像面湾曲の補正を実施している。第2レンズの形状を光軸近傍で物体側に凸面を向けたメニスカス形状にすることによって、球面収差を良好に補正している。また、第3レンズを光軸近傍で物体側と像面側に凸面を向けた弱いパワーの両凸形状として全系のパワーに対する影響を抑えながら、軸外の収差(特にコマ収差および像面湾曲)を良好に補正している。また、開口絞りを第1レンズの物体側に配置することにより、CRA(Chief Ray Angle)の制御を容易にしている。即ち、テレセントリック性が要求される撮像素子に対して光線入射角度の制御を容易にするとともに、光量が低下する周辺部分の光量確保を実現している。また、それぞれのレンズ形状、及びそれぞれのレンズの屈折力を最適にバランスさせることによって、小型で高性能な撮像レンズを実現している。
【0013】
条件式(1)は第1レンズの焦点距離をレンズ全系の焦点距離に対して規定するものである。第1レンズの焦点距離を条件式(1)の範囲内に規定することによって、光学全長の短縮を図りながら、球面収差やコマ収差を良好に補正することが出来る。
【0014】
条件式(1)の上限値「0.76」を超えると、第1レンズのパワーが弱くなり過ぎ、光学全長が長くなるため小型化が困難になる。一方、下限値「0.50」を下回ると、第1レンズのパワーが強くなり過ぎ、小型化には有利になるが、球面収差やコマ収差の補正が困難になる。
また、条件式(6)’、(7)は第1レンズに対する第3レンズと第4レンズのパワーを規定するものである。本発明の撮像レンズは第3レンズの正のパワーを第1レンズの正のパワーに比較して弱く設定することで第3レンズに像面湾曲の補正効果を持たせている。そして同時に、第4レンズの正のパワーを第1レンズの正のパワーに比較してほぼ同程度に設定することによって、光学全長を抑えながら、第1レンズと第4レンズの製造公差に対する感度上昇を抑えている。
条件式(6)’の上限値「8.50」、及び条件式(7)の上限値「1.40」を超えると、撮像レンズ全系に占める正のパワーが弱くなり過ぎ、像面湾曲補正や球面収差補正には有利になるものの、小型化が困難になる。一方、条件式(6)’の下限値「2.93」、及び条件式(7)の下限値「0.65」を下回ると、小型化には有利になるが、像面湾曲や非点収差の補正が困難になるため好ましくない。このように、3枚の正レンズのパワー配分を、条件式(6)’、(7)の範囲にすることによって、小型化と収差補正、さらには製造公差に対する感度上昇を抑制する効果を得ることができる。
【0015】
また、上記構成の撮像レンズにおいて、第3レンズは両面が非球面で形成され、物体側の面の曲率半径をr5、像側の面の曲率半径をr6としたときに、以下の条件式(2)を満足することが望ましい。
−0.80<(r5+r6)/(r5−r6)<0.55 (2)
【0016】
上記条件式(2)は、第3レンズの物体側、及び像側の面の曲率半径の関係を規定するものである。物体側の面の曲率半径に比較して、像側の面の曲率半径を大きく、又は反対に像側の面の曲率半径に比較して物体側の面の曲率半径を大きくすることで第3レンズに弱い正のパワーを持たせ、小型化を図りながら、収差を良好に補正することができる。また、第3レンズは両面を非球面で形成し、光軸近傍よりも外側はサグ量の変化が少ない非球面にすることが望ましい。そうすることによって、第3レンズの光軸方向に占める体積が減少し、小型化が可能になる。
【0017】
条件式(2)の上限値「0.55」を超えたり、下限値「−0.80」を下回ると、周辺部におけるコマ収差や像面湾曲の補正が困難になるとともに、非点隔差が増大するため、好ましくない。さらに、条件式(2)の範囲を外れると、第3レンズの製造誤差に対する感度が上昇するため好ましくない。
【0018】
また、上記構成の撮像レンズにおいて、第5レンズの物体側の面の曲率半径をr9、像側の面の曲率半径をr10としたときに、以下の条件式(3)を満足することが望ましい。
8.5<r9/r10<85.0 (3)
【0019】
条件式(3)は第5レンズの物体側、及び像側の面の曲率半径の関係を規定するものであり、球面収差補正を図りながら、光学全長短縮を行うための条件である。条件式(3)の上限値「85.0」を超えると、第5レンズの負のパワーが強くなり過ぎ、小型化に不利になる。一方、下限値「8.5」を下回ると、第5レンズの負のパワーが弱くなり過ぎ、球面収差の補正が困難になる。
【0020】
また、上記構成の撮像レンズにおいて、第1レンズと第2レンズとの合成焦点距離をf12、レンズ系全体の焦点距離をfとしたときに以下の条件式(4)を満足することが望ましい。
1.20<f12/f<1.95 (4)
【0021】
条件式(4)は撮像レンズの光学全長を短く維持しながら、像面湾曲補正や球面収差補正を良好に保つための条件である。条件式(4)の上限値「1.95」と超えると、第1レンズと第2レンズとの合成のパワーが弱くなるため光学全長が長くなり過ぎ、小型化が困難になる。一方、下限値「1.20」を下回ると、第1レンズと第2レンズとの合成のパワーが強くなり過ぎ、小型化には有利になるが、像面湾曲や球面収差を良好に保つことが困難になる。
【0022】
また、上記構成の撮像レンズにおいて、第3レンズと第4レンズと第5レンズとの合成焦点距離をf345、レンズ系全体の焦点距離をfとしたときに以下の条件式(5)を満足することが望ましい。
1.50<f345/f<9.00 (5)
【0023】
上記条件式(5)は、レンズ全系の焦点距離に対して第3レンズ乃至第5レンズの合成焦点距離を規定するものであり、コマ収差補正、及び像面湾曲補正を良好に行う為の条件である。条件式(5)の上限値「9.00」を超えるとコマ収差が増大し、撮像面の周辺部に良好な像を結像させることが困難になる。一方、下限値「1.50」を下回ると像面湾曲が増大するため、この場合も撮像面の周辺部に良好な像を結像させることが困難になる。
【0027】
また、上記構成の撮像レンズにおいて、第2レンズの物体側の面の曲率半径をr3、像側の面の曲率半径をr4、焦点距離をf2、レンズ系全体の焦点距離をfとしたときに、以下の条件式(8)、(9)
を満足することが望ましい。
3.10<r3/r4<6.80 (8)
−1.40<f2/f<−0.70 (9)
【0028】
条件式(8)は第2レンズの物体側、及び像側の面の中心曲率半径の関係を規定するものであり、小型化と非点収差を良好に補正するための条件である。条件式(8)の上限値「6.80」を超えると、第2レンズの像側の面の曲率半径が物体側の面の曲率半径に対して相対的に小さくなり、きつい曲率となるため、第3レンズとの間隔が長くなり小型化が困難になる。一方下限値「3.10」を下回ると第2レンズの物体側の面のパワーが像側の面のパワーに対して相対的に強くなり過ぎ、非点収差の補正が困難になるため好ましくない。また、条件式(9)はレンズ全系のパワーに対する第2レンズのパワーを規定し、色収差補正を良好に行う為の条件である。条件式(9)の上限値「−0.70」を超えると、第2レンズの負のパワーが強くなりすぎ、小型化に不利になる。一方、下限値「−1.40」を下回ると、第2レンズの負のパワーが弱くなりすぎて、軸上色収差の補正が不十分となる。
【0029】
また、上記構成の撮像レンズにおいて、開口絞りの直径をEPD、レンズ全系の焦点距離をfとしたときに、以下の条件式(10)を満足することが望ましい。
2.0≦f/EPD≦2.8 (10)
【0030】
上記条件式(10)は、撮像レンズの小型化を図りつつ、Fナンバーを小さくするための条件である。上限値の「2.8」を超えると、レンズ系全体の焦点距離に対して開口径が小さくなるため、小型化には有利になるが、撮像素子に対する明るさが不十分となる。一方、下限値「2.0」を下回ると、レンズ全系の焦点距離に対して開口径が大きくなるため、Fナンバーが小さくなり明るい撮像レンズを構成することができるものの、小型化が困難になる。
【0031】
また、上記構成の撮像レンズにおいては以下の条件式(10a)を満足することがさらに望ましい。
2.0≦f/EPD≦2.6 (10a)
【0032】
なお、上述した条件式を全て満足する必要はなく、それぞれ単独、または組み合わせによっても効果を得ることができる。
【0033】
また、全てのレンズはプラスチック材料で構成することが望ましい。全てのレンズをプラスチック材料で構成することによって、安定した非球面形状を形成したレンズの大量生産が可能となり、低コスト化が望める。また、本発明では、主な色収差補正を第2レンズで実施しており、第2レンズには例えば、ポリカーボネートのようなアッべ数の小さな高分散の材料を採用し、その他の第1レンズ、第3レンズ、第4レンズ、第5レンズは例えば、すべて同一のシク
ロオレフィンポリマー系のプラスチック材料を採用している。撮像レンズを構成するプラスチックレンズに、出来る限り同一のプラスチック材料を採用することで、製造工程が容易になる。