【文献】
榊 吉孝 Yoshitaka SAKAKI,火力発電所電気システム Electrical Systems in Thermal Power Plants,東芝レビュー 第54巻 第5号 TOSHIBA REVIEW,株式会社東芝 Toshiba Corporation,1999年 5月 1日,第54巻,第51-54頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記発電プラント(H)をその外部から前記電話網(D)を介して監視する遠隔監視部(3)、及び/又は、前記発電プラント(H)をその外部から前記電話網(D)を介して制御する遠隔制御部(4)を、前記発電プラント(H)の内部から外部に亘って有し、
前記遠隔監視部(3)及び/又は前記遠隔制御部(4)は、前記番号通信部(2)と共通のプラットフォームを用いていることを特徴とする請求項1に記載の通信システム。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
<発電プラントHの全体構成>
図1〜15には、本発明に係る通信システム1や、配電盤10、通信機器100、そして、これらの通信システム1等を設けた発電プラントHが示されている。
【0020】
尚、本発明における「発電プラントH」とは、発電を行うプラント機器であれば、何れの構成でも構わないが、例えば、太陽電池にて発電する太陽光発電プラントや、風力、波力、水力、火力等によって回転される発電部(発電機、モータ)Tによって発電するプラントなど、電力を発生し得るプラント機器であれば、何れであっても良い。
そこで、まず、本発明の通信システム1等が設けられた発電プラントHの例として、太陽光発電プラントHについて、詳解する。
【0021】
図2は、本発明に係る通信システム1が設けられた太陽光発電プラントHを示す。
太陽光発電プラントH(発電所)は、複数個の太陽電池T(発電部T)が直列に接続された複数の太陽電池ストリングS(ストリングS)と、複数本のストリングSと導通する複数の接続箱Zと、これら複数の接続箱Z全てと導通する配電盤10と、この配電盤10と電柱等を末端とする配電網Gを導通する配電ケーブルKを有している(
図2(a)参照)。
【0022】
<配電盤10>
図2に示されたように、太陽光発電プラントHにおける配電盤10は、太陽電池T(発電部T)からの直流電流を交流電流に変換できるのであれば、何れの構成でも良いとも言えるが、例えば、盤筐体11と、この盤筐体11外にある太陽電池Tからの直流電流を低交流電流に変える変換部(パワーコンディショナ(パワコン、PCS))12と、このパワコン12からの低交流電流をより高圧な高交流電流に変える変圧器(トランス)13と、この変圧器13からの高交流電流を盤筐体11外にある配電網G等へ送電する送電部(送電盤)14などを有している。
配電盤10は、太陽電池Tからの直流電流を集める集電部21を有していても良い。
又、配電盤10は、パワコン12が変換する電力量(発電量)などを測定する計器22や、日射強度を測定する日射計23、気温を測定する温度センサ24、そして、上述したパワコン12や、計器22、日射計23、温度センサ24等に電流を供給する補機25を有していても良い。
【0023】
このような配電盤10の盤筐体11内に、後述する番号通信部2等や、設定ロック部6、6’などが設けられており、その位置は、盤筐体11内であれば何れでも構わないが、番号通信部2は、少なくともパワコン12等を特定したり、パワコン12や送電盤14等から、太陽光発電プラントHの監視内容(発電量や、日射強度、気温、太陽光発電プラントHの状態など)を読み取れるように、パワコン12、送電盤14、計器22、日射計23、温度センサ24等に対して、データ通信(受信・送信)可能に接続されている。
尚、番号通信部2は、発電プラントHを特定したり、その監視内容を読み取れるのであれば、発電プラントHが太陽光発電プラント以外であって、発電プラントHにおける発電機が交流モータである場合など、必ずしもパワコン(変換部)12に接続されていなくとも良い。
【0024】
更には、1つの発電プラント(発電所)Hにおいて、複数台のパワコン12(配電盤10)に対して、番号通信部2が1つ設けられることとして、例えば、80000kWという大発電量の太陽光発電プラントHとしても良い。
パワコン12を複数台設けたとしても、各パワコン12を纏めて、1つの番号通信部2を有することとしても良い。
【0025】
<太陽電池T、太陽電池ストリングS>
図2に示された如く、太陽電池ストリングSは、複数個の太陽電池Tを備えている。
太陽電池Tは、設置する土地の広さ・形状に応じて配列すれば良いが、例えば、6段×14列の合計84個の太陽電池Tを1つの接続箱Zに導通し、これを30セット設置すれば、2520枚を、例えば、南北約85m×東西約70mで設置しても良い(
図2(b)参照)。
尚、太陽電池Tは、南へ行くほど低くなるように傾け、その角度は、十分な発電量を得られるのであれば、何度でも良いが、例えば、5度等である。
【0026】
個々の太陽電池Tは、光が照射されることによって、正極(+極)と負極(−極)の間に直流電力を発生し、発生する電力の平均は、約100〜300W(例えば、250W)である。
太陽電池Tの形状は、特に限定はないが、例えば、パネル状であっても良い。
これらのうち、ある太陽電池Tの+極に別の太陽電池T’の−極を接続し、別の太陽電池T’の+極にまた別の太陽電池T”の−極を接続し、以下、これを繰り返して、複数個(例えば、5〜20枚)の太陽電池Tを直列に接続して、1本の太陽電池ストリングSとなる。
【0027】
このように、複数個の太陽電池Tが直列に繋がった太陽電池ストリングS全体としての+極(電力出力端)と、−極(グランド端)の間の電圧は、各太陽電池Tで発生された直流電圧の和であって、天候、時刻や、各太陽電池Tの劣化、故障、設置位置のズレなどで変動するが、約200〜1000Vとなる。
又、太陽電池ストリングSの電力出力端から出力される電力は、各太陽電池Tの電力の和であって、約500〜6000W(例えば、出力電力が250Wの太陽電池Tを14枚接続した場合、3500W=3.5kW)となる。
【0028】
ここで、太陽電池Tを直列に接続するということは、それらの太陽電池Tのうち1つでも不具合のある太陽電池Tが発生すると、その太陽電池Tにおいて電流が遮断されてしまい、他の太陽電池Tにより発電された電力を出力することが困難となる。
そのため、直列に接続された太陽電池Tごとに、バイパスダイオード(図示省略)を設けることで、不具合の発生した太陽電池Tを、電流が、バイパス(迂回)するように構成される。
尚、このバイパスダイオードは、太陽電池Tに対して、その−極から+極へ電流が流れる向きに並列に接続され、詳しくは、バイパスダイオードのカソード(陰極)が、太陽電池Tの+極に接続され、バイパスダイオードのアノード(陽極)が、太陽電池Tの−極に接続される。
【0029】
<接続箱Z>
図2や
図5、6に示したように、上述した複数本(例えば、5〜15本)の太陽電池ストリングSが、1個の接続箱Zへ並列に接続されている。
従って、それぞれの太陽電池ストリングSの電力出力端(+極)とグランド端(−極)の間の電圧は、同一となり、上述したように、約0.5〜6kWである。
【0030】
但し、1個の接続箱Zに対して、複数本の太陽電池ストリングSの電流が流れ込むため、接続箱Zに集まる電力は、約2.5〜90kW(例えば、接続箱Zに、出力電力が3.5kWの太陽電池ストリングSを、6本接続していれば21kW、12本接続していれば42kW)である。
尚、太陽光発電プラントHの総電力(総発電量)が、それほど大きくなければ(例えば、50kW以下などであれば)、接続箱Zを介さず、各太陽電池ストリングSを、直接接続させていても良く、又、太陽電池ストリングSの本数も、何れの値であっても良いが、例えば、15〜18本や20本であっても構わない。
【0031】
ここで、1個の接続箱Zに接続された太陽電池ストリングSを、「ストリング単位で」異常を検知したい場合、たとえ、太陽電池Tの劣化、故障、設置位置のズレなどの異常が内在する太陽電池ストリングSであっても、その電力出力端(+極)の電位は、他の正常な太陽電池ストリングSの+極の電位と同じとなると言える。
従って、電圧を測定したのでは、太陽電池ストリングSごとの異常は判断し難い。
【0032】
よって、1個の接続箱Zに接続された各太陽電池ストリングSに流れる「電流」を測定すれば、太陽電池ストリングSを、容易に「ストリング単位で」異常検知できる。
尚、電圧を測定する場合でも、太陽電池ストリングS内の各太陽電池Tごとに電圧を測定するのであれば、それらを合計した各太陽電池ストリングSごとの電圧で、異常検知は可能となる。
【0033】
又、それぞれの太陽電池ストリングSの+極は、逆流防止用ダイオードを介して、接続箱Zに接続されている。
これは、接続箱Zに接続された太陽電池ストリングS間で、電位差が生じた場合、他よりも電位が低い太陽電池ストリングSに、電流が逆流するのを防止するためである。
尚、逆流防止用ダイオードは、アノード(陽極)が、太陽電池ストリングSの+極に接続され、カソード(陰極)が、接続箱Z側に接続されている。
【0034】
この逆流防止用ダイオードは、耐高電圧のために、直列に接続された2つのダイオードから構成されていても良い。
更に、太陽電池ストリングSの+極は、図示しない可変抵抗(バリスタ)を介して太陽電池ストリングSの−極へ接続されたり、バリスタを介して地面に接地されていても良い。
一方、それぞれの太陽電池ストリングSの−極が、バリスタを介して接地されていても良い。
これらのバリスタや接地が、接続箱Zや配電盤10に接続される手前で設けられていた場合には、落雷によるサージ電圧が、以下に述べる通信システム1や通信機器100、後述する検知機50等に与える影響を低減させることが出来る。
【0035】
<第1実施形態の通信システム1>
図1〜3は、本発明の第1実施形態に係る通信システム1を示している。
この通信システム1は、太陽光発電プラントHとその外部とを通信させるシステムであって、太陽光発電プラントHを外部と電話網Dを介して通信させる上述の番号通信部2を有している。
【0036】
通信システム1は、太陽光発電プラントHを外部から電話網Dを介して監視する遠隔監視部3や、太陽光発電プラントHを外部から電話網Dを介して制御する遠隔制御部4、番号通信部2による太陽光発電プラントHそれぞれからの通信内容を電話網Dを介して一括して取り纏める中央処理部5、番号通信部2の設定変更を防止する設定ロック部6を有していても良い。
又、通信システム1は、1つのこのシステムで、複数の番号通信部2(つまり、複数の太陽光発電プラントH)を取り纏めても良い。
更に、通信システム1は、太陽光発電プラントHの配電盤10内に設けられ且つ電話網Dに接続可能な情報収集サーバ(プラントサーバ)7や、太陽光発電プラントHのデータを置くためのアプリケーションサーバ(クラウドサーバ)8、電話網Dに接続可能なユーザ端末(
図1、3参照)9の他、配電盤10内のパワコン12と接続するためのLAN(Ethernet(登録商標))ケーブル(同軸ケーブルや、光ファイバー、ツイステッド・ペア・ケーブル等)26、ハブ(HUB)27を介して接続してローカルエリアネットワーク(プラントLAN)28を有していても良い。
【0037】
<番号通信部2(通信機器100)>
図1、2に示されたように、番号通信部2は、太陽光発電プラントHを電話網Dにおける電話番号Nで電話機端末H’として特定し且つこの特定された電話機端末H’でもある太陽光発電プラントHをその外部と電話網Dを介して通信させるものである。
番号通信部2は、太陽光発電プラントHを特定する際の電話機端末H’としては、電話番号で特定できるのであれば、何れの構成を持つ電話機端末H’でも良いが、この第1実施形態においては、電話機端末H’を携帯電話(携帯電話機端末)H’として、太陽光発電プラントHを特定するものとして、以下に述べる。
尚、太陽光発電プラントHを携帯電話H’として特定する場合、この携帯電話H’(太陽光発電プラントH)は、電話網Dと無線で接続される。
【0038】
太陽光発電プラントHを携帯電話H’として特定する場合、番号通信部2は、SIM(シム)カード2bを内蔵している。
ここで、本発明における「SIMカード2b」とは、JIS−X−6901:2003にて規定された「携帯電話(移動通信端末)の加入者番号などを登録するICモジュール」を言う。
【0039】
このSIMカード2bには、当該加入者が使用する携帯電話番号Nも登録されており、SIMカード2bを番号通信部2に内蔵させることにより、太陽光発電プラントHが、電話網Dにおける携帯電話番号(電話番号)Nで特定される。
つまり、太陽光発電プラントHは、SIMカード2bで特定される携帯電話番号Nを持つ携帯電話H’として、最寄りの基地局D’から電話網Dを介して、太陽光発電プラントH外部と通信する。
【0040】
尚、SIMカード2bにおける「SIM」とは、「Subscriber Identity Module」の略である。
このようなSIMカード2bが内蔵された番号通信部2は、特定の通信事業者(キャリア)のSIMカードしか使えないように制限されたSIMロックであっても、このSIMロックのないSIMフリー(SIMロックフリー)であっても、何れでも良い。
又、携帯電話H’として特定される太陽光発電プラントHとその外部との通信方式は、何れのものでも構わないが、第1世代(1G、FDMA)、第2世代(2G、TDMA(GSM(登録商標)、CDMAone、PDC等))、第3世代(3G、CDMA(W−cdma、CDMA2000等))、LTE(3.5G、3.9G)、WiMAX、第4世代(4G、LTE−Advanced、WiMAX2)などであっても構わない。
【0041】
番号通信部2が、通信機器100を構成しているとも言え、通信機器100の機器筐体101内部にSIMカード2bが内蔵されている。
従って、SIMカード2bは、機器筐体101で覆われており、SIMカード2bの抜き差しなどは、機器筐体101を開いたり、外す等をしなければ、行うことが出来ない構成にしても良い。
【0042】
このように、通信システム1がSIMカード2bを内蔵した番号通信部2を有することで、Wi−Fi(登録商標の少なくとも一部)通信などのように、太陽光発電プラントHやその近辺に、無線LAN用の終端機器(ルータやモデム、ONUなど)を設けることなく、太陽光発電プラントHを使用圏内に運搬し設置するだけで、使用者Uに、設置の人員・時間・コストをかけることなく、太陽光発電プラントHとその外部で通信できる。
又、番号通信部2が配電盤10内部に設けられていれば、その配電盤10を使用圏内に設置するだけで、設置負担の低減を図りつつ、配電盤10の盤筐体11外部と通信できることから、この配電盤10は、1台で通信に必要なオールインワン配電盤(又は、太陽光発電プラントHを見る器械であるSOLAR SCOPE)とも言える。
尚、番号通信部2のアンテナ(ANT)2aは、電話網Dの基地局D’まで電波が届くのであれば、太陽光発電システムHの何れに設けていても構わないが、例えば、配電盤10の盤筐体11外部に取り付けていても良い。
【0043】
番号通信部2の機器筐体101内部には、SIMカード2bの他、上述したプラントサーバ7が内蔵されていても良く、これら以外に、ルータ(ルータ機能)や、FTPクライアントや、上述した計器22との通信を行うケーブル(計器ケーブル)29(例えば、RS485ケーブルなど)とLANケーブル26との変換機能等を備えていても良い。
番号通信部2は、パワコン12との通信機能や、ユーザ端末9との通信機能、クラウドサーバ9との通信機能、計器22との通信機能を有していても良く、又、LANケーブル26等とのコネクタ(例えば、RJ-45 など)や、計器ケーブル29等と接続するための端子台が設けられていても良い。
又、番号通信部2は、計器22との通信には通信プロトコルとしてmodbusを使ったり、所定通信方法(例えば、Wi−Fi(登録商標の少なくとも一部)通信など)による外部機器からの設定する機能(Web機能)を有していても構わない。更には、温度センサ24と接続するためのI/F(インターフェース)を設けていても良く、その際、温度センサ24と番号通信部2とは、特定小電力無線(例えば、920MHzなど)にて接続(通信)させても良い。
【0044】
<プラントサーバ7>
図1、2に示された如く、プラントサーバ2は、太陽光発電プラントHを監視・制御する情報収集サーバであって、詳しくは、電話網Dを介して太陽光発電プラントHの監視内容をユーザ端末9へ報告する監視を行う機能(サービス)を提供するコンピュータ(又は、ソフトウェア)、及び/又は、電話網Dを介してユーザ端末9からの制御内容に基づく太陽光発電プラントHの制御を行う機能(サービス)を有している。
【0045】
これらの機能を実現するのであれば、プラントサーバ7は、太陽光発電プラントHに設けられているのであれば、何れの位置に設けられていても良いが、配電盤10の盤筐体11内部(上述した番号通信部2内部など)に設けても構わない。
尚、本発明における「サーバ」とは、JIS−X−0009:1997で規定された「データ網を介して、ワークステーション、その他の機能装置に共有サービスを提供する機能装置」を言う。
又、上述したFTPクライアントをはじめとする本発明における「クライアント」とは、JIS−X−0009:1997で規定された「サーバから共有サービスを受けることのできる機能装置」を言い、「FTPクライアント」とは、FTP(File Transfer Protocol)を使用してファイルの送受信を行うクライアントを言う。
【0046】
尚、配電盤10内のプラントLAN28に対しては、ハブ27に別のLANケーブル26を介してコンピュータ等を接続することで、太陽光発電プラントHの現地においても、プラントサーバ7や番号通信部2の設定を行う場合もある。
このとき、コンピュータの電源は、配電盤10中の補機25から、電源タップ等を介して引いても良い。
但し、ハブ27を介したコンピュータ等によっても、太陽光発電プラントHを携帯電話番号Nで特定する番号通信部2(SIMカード2b)における設定を変更することは出来なくする(設定変更をロックする)こととしても良い。
【0047】
<アプリケーションサーバ(クラウドサーバ)8>
図1に示されたように、クラウドサーバ8は、電話網Dを介して直接プラントサーバ7やユーザ端末9と接続可能な、又は、電話網Dからインターネット、LAN、MAN、WANなどのネットワークWを経由してプラントサーバ7やユーザ端末9と接続可能なサーバである。
クラウドサーバ8は、太陽光発電プラントHの監視内容(発電監視データ、発電監視ファイル)や、制御内容(発電制御データ、発電制御ファイル)を置くことが出来るサーバであって、プラントサーバ7、ユーザ端末9の両方から接続可能とすることも出来る。
クラウドサーバ8は、1台のコンピュータから構成される場合だけでなく、上述のプラントLAN28のように、複数のコンピュータから成るLAN(クラウドLAN)を構成しても良い。
【0048】
尚、クラウドサーバ8は、電話網DやLANなどの集合体であるネットワークWの一部であるとも考えられ、電話網D等のネットワークWが、複数のコンピュータを統合的に連携し、あたかも1つのコンピューティングリソース(ネットワーク、サーバ、ストレージ、アプリケーション、サービス)であるように扱われる(仮想化される)。
従って、発電監視データや発電制御データは、クラウドサーバ8上に置かれていると同時に、ネットワークW(電話網D)上に置かれているとも言える。
【0049】
又、クラウドサーバ8が仮想化されていることから、本発明の通信システム1は、「グリッドシステム」であると言える。
尚、本発明における「グリッドシステム」とは、JIS−X−7301:2010で規定された「コンピュータ、ストレージ及びネットワークといった資源の物理的位置やハードウェアを意識することなく、必要な資源を必要な時に必要なだけ利用可能なシステムであり、異機種及び/又は地理的に分散した、複数のコンピュータ資源を仮想化技術を用いて統合したシステム」システムを言う。
【0050】
尚、クラウドサーバ8とユーザ端末9間や、クラウドサーバ8とプラントサーバ7間は、このクラウドサーバ8によって発電監視データや発電制御データを置くネットワークW(電話網D)上の場所を確保するサービスを提供するプロバイダ(インターネット接続サービスのプロバイダ)と、プロバイダ契約を結ぶこととなる。
これらの機能を実現するのであれば、クラウドサーバ8は、いずれの構成でも良い。
【0051】
又、クラウドサーバ8は、FTPサーバを有すると共に、ファイアウォールを介して、ネットワークW(電話網D)と接続されていても良い。
尚、上述のファイアウォールと共に、クラウドサーバ8には、ウイルス対策ソフト(コンピュータウイルスを検出・除去・無力化するアプリケーションソフト)を有していても良く、又、ファイアウォールかウイルス対策ソフトの何れかを有していることとしても良い。
【0052】
<ユーザ端末9>
図1、3に示すように、ユーザ端末9は、太陽光発電プラントHの監視内容を表示すると共に、使用者U(管理者)が入力した太陽光発電プラントHへの制御内容を伝達する端末機である。
ユーザ端末9は、電話網Dを介して直接クラウドサーバ8と接続可能な、又は、電話網Dからインターネット、LAN、MAN、WANなどのネットワークWを経由してクラウドサーバ8と接続可能な端末機である。
又、ユーザ端末9は、電話網Dを介して直接、又は、電話網Dを含むネットワークWを介して直接、番号通信部2(携帯電話H’である太陽光発電プラントH)やプラントサーバ7に接続可能な構成であっても構わない。
【0053】
これらを実現するのであれば、ユーザ端末9は、使用者Uが、遠く離れた太陽光発電プラントHの監視内容を閲覧できる表示手段と、太陽光発電プラントHへの制御内容を入力できる入力手段があれば、いずれの構成でも良いが、例えば、デスクトップ型PCの他、ノートPCや、携帯電話、スマートフォン、タブレット型端末、PDA(携帯情報端末)等でも構わない。
ユーザ端末9は、上述のように、1台のデスクトップ型PCから構成される場合だけでなく、上述のプラントLAN28やクラウドLANのように、複数のデスクトップ型PCや、ノートPCや、携帯電話、スマートフォン、タブレット型端末、PDA等から成るLAN(ユーザLAN)を構成しても良い。
又、ユーザ端末9は、電話網Dや電話網Dを含むネットワークW(クラウドサーバ8)上の所定のURL(Webページ)を参照(閲覧)するブラウザを有していたり、FTPクライアントを有していても良い。
【0054】
図3は、ユーザ端末9で閲覧できる監視画面(監視一覧画面)を示しており、太陽光発電プラント(発電所)H、及び、各パワコン(パワコン1号、パワコン2号、パワコン3号)の名称や、発電・売電・買電等の種類、閲覧している現在の電力、閲覧している日の電力量、閲覧している月の電力量、配電盤10内の補機25における閲覧している現在の電力(補機電力)、太陽光発電プラントHがある現地の日射強度、気温などの他、更に、太陽光発電プラントH、及び、各パワコンが正常か異常かの状態、運転中か停止中か、異常の度合い(重、系、警、軽)、故障の度合い(重、軽)、通信の状態(異常か否か)、現在の年月日・時刻等が表示されている。
更に、監視画面には、管理者Uがパスワード(PW)を入力するためのパスワード欄31や、遠隔地から太陽光発電プラントHの運転を開始したり、太陽光発電プラントHを停止させたりする遠隔制御をするためのボタン(「運転ボタン32」、「停止ボタン33」)も設けられている。
【0055】
尚、パスワード欄の近くに別途欄を設けたり、若しくは、この監視画面にアクセスする際には、管理者UのIDを入力する欄を設けるなど、IDを入力させても構わない。
又、太陽光発電プラントHの監視内容は、監視画面をブラウザによって閲覧する以外に、メール等によって、ユーザ端末9に送信されても構わない。
【0056】
<遠隔監視部3>
図1〜3に示した如く、遠隔監視部3は、太陽光発電プラントHをその外部から電話網Dを介して監視するものである。
遠隔監視部3は、太陽光発電プラントH外部から電話網Dを介して太陽光発電プラントHを監視できるのであれば、何れの構成でも良いが、例えば、上述したプラントサーバ7、クラウドサーバ8、ユーザ端末9や、計器22で構成されていても良い。この他、遠隔監視部3は、ユーザ端末9から電話網Dを介して直接、番号通信部2(携帯電話H’である太陽光発電プラントH)と通信をしたり、ユーザ端末9から電話網Dを介してプラントサーバ7と通信をすることで電話網Dを介した太陽光発電プラントHの監視をしても構わない。
【0057】
尚、計器22は、パワコン12が変換する電力量や、変圧器13によって昇圧されて送電部14によって送電される電力量等を測定するものであって、これらの電力量が測定できれば、何れの構成でも良いが、例えば、電子式指示計器(三菱電機株式会社製 電子式マルチ指示計器(MEシリーズ)など、別名MEメータ)であっても良い。
この計器22が測定する物理量としては、上述したパワコン12が変換する電力量や、送電部14によって送電される電力量のほか、パワコン12や送電部14などの電流(交流電流)、電圧(交流電圧)、電力、無効電力、力率、周波数、無効電力量等が含まれていても良い。
【0058】
又、計器22は、電力量等の物理量の最大値・最小値の記憶機能や、上限/下限監視機能を有していても良い。
計器22は、測定した電力量等を、番号通信部2へ通信(伝送)することが可能であり、その伝送は、計器ケーブル29を介して、電力量のパルス出力のほか、電流、電圧、電力、無効電力、力率、周波数のアナログ出力によって行われても良く、その他の伝送方式(B/NET など)であっても構わない。
【0059】
<遠隔制御部4>
図1〜3に示したように、遠隔制御部4は、太陽光発電プラントHをその外部から電話網Dを介して制御するものである。
遠隔制御部4は、太陽光発電プラントH外部から電話網Dを介して太陽光発電プラントHを制御できるのであれば、何れの構成でも良いが、例えば、遠隔監視部3のように、上述したプラントサーバ7、クラウドサーバ8、ユーザ端末9で構成されていても良い。この他、遠隔制御部4も、遠隔監視部3と同様に、ユーザ端末9から電話網Dを介した直接の番号通信部2(携帯電話H’である太陽光発電プラントH)との通信や、ユーザ端末9から電話網Dを介したプラントサーバ7との通信によって、外部からの電話網Dを介した太陽光発電プラントHの制御をしても構わない。
【0060】
この遠隔制御部4や、上述した遠隔監視部3は、番号通信部2と共通のプラットフォームを用いても良い。
この場合、番号通信部2、遠隔監視部3、遠隔制御部4などの異なる機器(ハードウェア)を跨いで、発電プラントHの監視や制御のデータをやり取りする際にも、使用者Uは、ハードウェアの違いを意識せずに、発電プラントHとその外部との通信が可能となる。
【0061】
尚、本発明における「プラットフォーム」とは、JIS−X−7301:2010にて規定される「グリッドシステム」における第3層を言う。
詳しく述べれば、まず、JIS−X−7301:2010にて規定される「グリッドシステム」とは、「コンピュータ、ストレージ及びネットワークといった資源の物理的位置やハードウェアを意識することなく、必要な資源を必要な時に必要なだけ利用可能なシステムであり、異機種及び/又は地理的に分散した、複数のコンピュータ資源を仮想化技術を用いて統合したシステム」を言う。
これをふまえ、本発明における「プラットフォーム」は、上述した「グリッドシステム」における第3層であり、データベース及びグリッドシステム用ミドルウェアからなり、複数の資源における動作を実現するためのソフトウェアからなる。
又、「グリッドシステム」における第3層を、プラットフォーム層とも言う。
【0062】
<中央処理部5>
図1に示すように、中央処理部5は、複数ある太陽光発電プラントHそれぞれを携帯電話端末H’として特定する各番号通信部2からの通信内容を、電話網D(電話網Dを含むネットワークW)を介して一括して取り纏めるものである。
中央処理部5は、複数の番号通信部2からの通信内容を電話網D等を介して一括して取り纏めることができるのであれば、何れの構成でも良いが、例えば、上述したクラウドサーバ8で構成されていても良い。その他、中央処理部5は、複数の番号通信部2のうちの1つが、他の番号通信部2からの通信内容を、電話網D(電話網Dを含むネットワークW)を介して一括して取り纏める構成としても良い。
【0063】
この中央処理部5によって、発電プラントHの通信内容(監視内容や制御内容など)を一括管理でき、異なる発電プラントHの通信内容(例えば、同地域にある発電プラントH同士の通信内容)比較することで、各発電プラントHからの通信内容の正確性がわかるなど、複数の発電プラントHの比較評価を実現する。
尚、番号通信部2からの通信内容とは、太陽光発電プラントHの監視内容(発電監視データ、発電監視ファイル)や、制御内容(発電制御データ、発電制御ファイル)を言う。
【0064】
<設定ロック部6>
図1に示されたように、設定ロック部6は、番号通信部2の設定変更を防止するものである。
設定ロック部6は、番号通信部2の設定変更を防止できるのであれば、何れの構成でも良いが、例えば、番号通信部2(つまり、通信機器100)における上述した機器筐体101に入出力装置が設けられておらず、番号通信部2の設定変更や操作を行えない場合には、ケーシングである機器筐体101自体が、番号通信部2の設定変更を防止する設定ロック部6を構成する。
【0065】
その他、設定ロック部6は、番号通信部2の機器筐体101に入出力装置(例えば、Dipスイッチ、複数のLED(例えば、動作確認用)、スイッチ(例えば、タクタイルスイッチ(タクトスイッチ(登録商標))、ロータリーDipスイッチ、A接点リレー(RELAY)等)が設けられている場合であっても、別途、カバー体を設けて番号通信部2の設定変更を防止しても良く、この場合は、このカバー体が設定ロック部6となる。
又、配電盤10内のハブ27に別のLANケーブル26を介してコンピュータ等を接続できる場合や、上述のWeb機能を有している場合であっても、設定ロック用ソフトウェア(使用者(管理者)Uとは異なる設置者(設置業者)用のPW入力ソフトウェア等)により、番号通信部2の設定変更が出来ないようにしても良く、この場合には、この設定ロック用ソフトウェアが設定ロック部6となる。
このような設定ロック部6を有することで、番号通信部2の操作ミスの虞や、操作負担を使用者Uにかけることもなく、発電プラントHを携帯電話H’として特定して、配電盤10を使用圏内やモジュラージャック近辺に運搬し設置するだけで、使用者Uには、配電盤10の設置負担や番号通信部2の操作負担、及び、配電盤10設置の人員・時間・コストをかけることなく、配電盤10の通信内容を盤筐体11外部へ通信できる。
【0066】
<第2実施形態の通信システム1>
図4〜7は、本発明の第2実施形態に係る通信システム1を示している。
この第2実施形態において第1実施形態と最も異なるのは、検知機50を有している点である。
尚、
図5では、配電盤10の内部における検知器50(親機61)と番号通信部2、パワコン12を示しており、それ以外は図示省略している。
又、
図6では、配電盤10の内部における番号通信部2とパワコン12、変圧器13、送電部14、集電部21を示しており、それ以外は図示省略している。
【0067】
<検知機50>
図4に示されたように、検知機50は、番号通信部2を介して、ハブ27に接続されている(この番号通信部2とハブ27の間はLANケーブル26で接続され、当該番号通信部2と検知機50との間は、他のケーブル(RS−485等)で接続されていても良い)。
つまり、第2実施形態は、番号通信部2を、各太陽光発電プラントHに2つずつ備えている点も、第1実施形態と異なっており、これら2つの番号通信部2が、それぞれ何れの機能を果たしても良いが、例えば、検知機50とハブ27の間の番号通信部2は、FTPクライアントの機能を果たし、アンテナ2aに近い番号通信部2は、ルータ機能を果たすものとしても構わない。
尚、検知機50とハブ27の間の番号通信部2は、遠隔監視部3であるとも言える。
その他の通信システム1の構成、作用効果や使用態様は、第1実施形態と同様である。
【0068】
<子機51>
図4、5に示すように、検知機50は、子機(分散判断手段)51と親機(中央判断手段)61を有しており、まずは、子機51は、それぞれの接続箱Z内に設けられて、その接続箱Zに接続された複数本の太陽電池ストリングSに流れる電流値から接続箱Zごとで、太陽電池ストリングSの異常を判断するものである。
子機51は、複数本の太陽電池ストリングSの電流値を測定してデータ信号を出力する測定処理部(ホール素子型変流器53)と、太陽電池ストリングSの異常の有無を検知してエラー信号を出力する信号処理部(中央処理装置、つまり、CPU)と、この信号処理部をはじめ、測定処理部、無線部(分散無線部)52、この分散無線部52等を駆動させる電力を供給する電源供給部、データ収集装置等を備えていても良い。
【0069】
又、子機51は、中央処理装置(CPU)と、この中央処理装置が取り付けられた基板(制御基板)と、この基板が内蔵された筐体も有していても良い(図示省略)。
この筐体は、略直方体状の箱体であって、内部に制御基板等の機器や、表側にインターフェース面を形成できるのであれば何れの構成であっても構わないが、例えば、アルミなど金属製の薄板材を折り曲げて形成したり、一般にハウジング等に用いられるポリスチレン(PS)、ポリプロピレン(PP)、ポリカーボネート(PC)、ABS樹脂等の合成樹脂で成形したものであっても良い。
制御基板は、中央処理装置や、後述する不揮発性メモリその他の機器を取り付け(実装)出来るのであれば、何れの素材でも良く、例えば、ガラスエポキシ基板や、ベークライト基板、ガラスコンポジット基板等によって構成されていても良い。
中央処理装置は、測定処理部から入力されるデータ信号に基づいて、監視を担当する複数本の太陽電池ストリングSの中に異常が有るか否かを判断し(異常の検知)、異常が検知された場合には、エラー信号を出力する処理を行うものであっても良い。
【0070】
尚、子機51における中央処理装置、制御基板及び筐体は、配電盤10内の親機61でも使用可能な中央処理装置、基板及び筐体が共用され、プラットフォームの共通化が図られている。
尚、例えば、これら中央処理装置、制御基板及び筐体以外に、以下のものを備えたり、共用化していても良い。
例示すれば、制御基板に実装された不揮発性メモリ(例えば、EEPROM(登録商標))、通信ケーブル(例えば、RS485ケーブル)のドライバ、通信ケーブルのポート(例えば、RS485のシリアルポート)、リアルタイムクロック(RTC)、複数のロータリーDipスイッチ(例えば、グルーピング用、感度調整用、モード選択用)、温度センサ、複数のLED(例えば、動作確認用)、スイッチ(例えば、タクタイルスイッチ(タクトスイッチ(登録商標))等の機器を、子機51は有していても良く、これらの機器が、親機61と、同じ型のものを共用していても構わない。
更には、接続箱Z及び配電盤10の双方における無線部(分散無線部52、中央無線部62)や、ロータリーDipスイッチやLEDが取り付けられている(実装される)インターフェース基板も、子機51と親機61との間で、共用されていても構わない。
【0071】
このように、親機・子機間で、共通のプラットフォームを持つ場合には、生産効率の向上、生産コストの低減を図ることが出来る。
又、子機のオプションとして、子機51に、記憶媒体(例えば、microSD(このロゴは登録商標)カード)モジュールが設けられていても良い。
この場合には、測定処理部が測定した実際の生データ(データ信号)を、時刻情報や温度情報と共に、記憶媒体に記録でき、のちの評価の材料となる。
尚、リアルタイムクロックには、以下に述べる測定処理部とは直接つながっていない別系統の電源(ボタン型電池等)から供給されており、リアルタイムクロックの電源側は、電解コンデンサを介して地面に接地されていても良い。
【0072】
<子機51の測定処理部(ホール素子型変流器53)>
図5に示されたように、測定処理部は、複数本(5〜20本、例えば、12本)の太陽電池ストリングSの電流値を測定し、それぞれの電流値に相当するデータ信号(監視内容)を出力するものである。
測定処理部は、それぞれの太陽電池ストリングSに取り付けられたホール素子型変流器53を備えている。又、測定処理部は、各ホール素子型変流器53に、安定した電源を所定の電圧で供給するレギュレータ(例えば、低損失三端子レギュレータ(LDO))や、このレギュレータに電力を供給する駆動電源を備えていても良い。
【0073】
ホール素子型変流器53は、太陽電池ストリングSに流れる電流を非接触で検出でき、検出される太陽電池ストリングS側の電力損失を抑えた電流センサであって、太陽電池ストリングSの電流値に比例する電圧が出力される。尚、変流器53は、この出力端子のほか、電源の入力端子、グランド端子の3つの端子を持つ。
この変流器53は、全体として環形状に形成されており、詳しくは、環(リング)状に成形したコア(鉄心)と、この鉄心に設けられた隙間(ギャップ)に挿入されたホール素子を有している。
変流器53は、リング状鉄心の孔中央に、太陽電池ストリングSのケーブルを貫通させて、太陽電池ストリングSに電流が流れてケーブル周りに発生する磁束に対応した電圧を、ホール素子から出力することにより、太陽電池ストリングSに流れる電流を検出することが出来る。
【0074】
又、変流器53のリング状鉄心は、その環を開閉可能に構成されており、太陽電池ストリングSへの取付け(後付け)の手間は、太陽電池ストリングSのケーブルに対する相対位置・向き等が固定された変流器を、ストリング3を一旦切断して、切断したその間に設置する等の手間よりも格段に低く、変流器53の取付け、特に、後付けの効率向上や、コスト低減に寄与するとも考えられる。
尚、変流器53は、開閉自在な環形状に形成され、且つ、太陽電池ストリングSの電流を検出できるのであれば、太陽電池ストリングSに流れる電流によって発生した磁束をホール素子で直接検出するオープンループタイプや、太陽電池ストリングSの電流によって発生した磁束が常にゼロ(0)となるように二次巻線に流れる帰還電流を負荷抵抗で電圧に変換したクローズドループタイプ、各タイプの出力電圧を増幅器で増幅したものなど何れであっても構わない。
【0075】
又、変流器53には、温度特性や、入力される電圧による電流検出特性、オフセット(太陽電池ストリングSに電流が流れていない時に出力される不平衡電圧(0点電圧))などがあるが、これらの特性に基づく出力電圧の補正(A/D変換も含む)は、信号処理部(中央処理装置(CPU))にて一括して行う場合もあり、この場合、それぞれの変流器53は、生データ(データ信号)を出力するだけで良い。
従って、この場合には、1個1個の変流器53に、A/D変換機や補正処理をする素子等をつける必要がなくなり、各変流器53のコストを削減できると同時に、変流器53の数(測定できる太陽電池ストリングSの数)を容易に増やすことが可能となる。
【0076】
各変流器53の駆動電源は、直流電圧(例えば、5V)であって、一般の商用電源を別途降圧して用いたり、接続箱Zの太陽電池ストリングSの出力電力端から降圧して駆動電源としたり、乾電池・ボタン電池・蓄電池等を用いたり、太陽電池ストリングSの電力出力端側の逆流防止用ダイオード両端より取り出された電圧を昇圧したものを駆動電源としたものでも良い。
この駆動電源の出力は、レギュレータ(安定化電源)の入力端子(IN)に入力されて安定化及び降圧(例えば、3.3V)された後、この安定化等された電圧が出力端子(OUT)から、変流器の入力端子(V
in)へ入力されても良い。
このレギュレータは、信号処理部からの操作信号を操作端子(EN)に受けて、測定の必要に応じて、変流器53をON/OFFさせる。
尚、ホール素子型変流器53においても、その入力端子(V
in)、グランド端子(GND)、出力端子(V
out )は、可変抵抗(バリスタ)を介して、子機51の筐体に接地されていても良い。
更に、変流器53の入力端子とグランド端子の間も、バリスタを介して接続されていたり、変流器53のグラント端子が地面に接地されていても良い。
これらのバリスタや接地により、落雷の影響を抑えることが出来る。
【0077】
変流器53の出力は、ノイズ除去のために、ローパスフィルタ(例えば、抵抗とコンデンサで構成されているもの)を介して、中央処理装置へデータ信号を送っても良い。
尚、測定処理部は、ホール素子型変流器53でなくとも、逆流防止用ダイオードの両端の電圧を(温度特性も考慮しながら)測定して、その電位差から太陽電池ストリングSに流れる電流値を計算する構成としても良い。
【0078】
<子機51の信号処理部(中央処理装置)>
信号処理部は、中央処理装置によって、測定処理部からのデータ信号に基づき異常の有無を検知し且つ異常検知時にエラー信号(監視内容)を出力するものである。
又、子機51の信号処理部は、親機61に対して、子機51が正常に動作していることを知らせるため、定期的に(例えば、1日1回)、親機61へ、(分散無線部52・中央無線部62を介して)正常に動作している旨の正常信号も送信している。
この信号処理部は、データ信号から変流器53の各特性に基づいて、それぞれの太陽電池ストリングSに流れる電流値(絶対値)を算出するなど、データ信号に基づき異常の有無を検知できるのであれば、何れのアルゴリズムでも構わないが、例えば、以下に示す異常検知アルゴリズム(プログラム)を中央処理装置(CPU)で実行しても良い。
【0079】
<異常検知アルゴリズム>
異常検知アルゴリズムとしては、各太陽電池ストリングSの具体的な電流値までも求めなくとも(絶対値を算出する処理の負荷・時間をかけなくとも)、変流器53からの出力電圧(データ信号)だけで、当該接続箱Zに接続された複数本の太陽電池ストリングSにおける異常の有無を検知できるのであれば、何れのアルゴリズムでも良いが、以下に例を示す。
【0080】
ここで、異常検知アルゴリズムの判断材料となるホール素子型変流器53の生の出力電圧を、任意に選んだ3本の太陽電池ストリングSで例示する。
尚、3本の太陽電池ストリング(ストリング1〜3)に取り付けたホール素子型変流器53からの出力電圧(E1〜E3)は、それぞれの変流器53が、太陽電池ストリングSに電流が流れていない時に出力される0点電圧が異なるため、各出力電圧が縦軸方向にズレることとなる。
【0081】
異常検知アルゴリズムは、まず、処理を開始して(第0ステップ)、複数本の太陽電池ストリングSの変流器53の出力電圧を一定期間(例えば、1週間)測定する学習期間(学習ステップ)と、この学習期間中に算出したパラメータを基に異常の有無を判断、つまり異常検知を行う運用期間(検知ステップ)と、異常を検知した場合にエラー信号を出力する出力ステップを有する。
【0082】
(1)学習期間(学習ステップ(第1ステップ))
まず、太陽電池ストリングが3本の場合を例に、以下の第1、第2ステップを説明する。
3本の太陽電池ストリングS(ストリング1〜3)に取り付けられた変流器53の出力電圧の電圧値E1、E2、E3を測定する。尚、この測定では、各出力電圧の安定度や平均化を加味する。
これらストリング1〜3の出力電圧値E1〜E3を一定期間算出して、E1〜E3の差分の平均値や、それぞれの最小値、最大値などを求める。
【0083】
(2)運用期間(検知ステップ(第2ステップ))
それぞれの差分の平均値や、最小値、最大値などを得た後、実際に異常検知を行う。
この異常検知中(運用期間中)におけるストリング1〜3に取り付けられた変流器53の出力電圧を実際に測った実測値e1、e2、e3を測定する。尚、この測定でも、各出力電圧の安定度や平均化を加味する。
これら運用期間中の実測値e1〜e3における各差分の平均値や、若しくは、実測値e1〜e3から求めたそれぞれの期待値等を算出する。
学習ステップで得た各差分の平均値や学習ステップで得た値に基づく期待値と、運用期間の実測値e1〜e3の各差分や、実測値e1〜e3そのものを比較し、ある判定値以上に開きがあった場合には、そのストリング(太陽電池ストリングS)の解析データや日時を、上述した不揮発性メモリ等に記録する。
判定値以上の開きが、所定の時間(天候が変化し得る時間、例えば、1〜2時間)連続して複数回発生した場合等には、何れかの太陽電池ストリングSに異常があると判断する。
【0084】
このように、何れかのストリングに異常があると判断された場合には、次の出力ステップ(第3ステップ)に処理が移る。
一方、いずれの実測値e1〜e3等も、判定値を越えることがなく、異常がない場合には、検知ステップを繰り返す。
ちなみに、この例では、3本の太陽電池ストリングSから、2本ずつ選んで、それらの差分をとったため、
3C
2 =3で、判定する式は3本となったが、これが、例えば、12本の太陽電池ストリングSから、2本ずつ選んで差分をとる(相関関係を調べる)ならば、
12C
2 =66で、判定の式は66本となる。
よって、接続箱Zごとに、異常の有無を判断するのであれば、式の本数も、十分処理できる範囲である(例えば、1個の接続箱に20本の太陽電池ストリングSが接続されていた場合でも、
20C
2 =190本)。
内、通信システム1が大規模化し、太陽電池ストリングSの本数が莫大な数になった(例えば、システム1全体の発電量が80000kWの場合、ストリング1本当たりの発電量を3.5kWとすれば、30720本のストリングが必要となる)場合には、この実施例1のアルゴリズムはもちろん、以下に述べる期待値を算出するアルゴリズム等では、処理できない。
つまり、接続箱Zごとに判断することで、通信システム1が大規模になっても、同じアルゴリズムに、幾らでも、ストリングの数を増やすことが可能となる。
【0085】
(3)出力ステップ(第3ステップ)
上記第2ステップで、異常があると判断(異常を検知)した場合には、信号処理部(中央処理装置)は、分散無線部52に、エラー信号を出力する。
これと同時に、子機51の筐体表側(前面)に設けられたLEDを点灯させる等をして、異常があったことを示しても良い。
【0086】
又、このエラー信号の出力は、上述の通信ケーブル(例えば、RS485ケーブル)を介して、配電盤10内の親機61へ、通信ケーブル(有線)で直接出力しても良い。
このように、接続箱Zごとに、当該接続箱Zに接続された太陽電池ストリングSにおける異常の有無を判断することで、生データ(データ信号)が一極集中することはなく、処理時間の遅延や処理能力のオーバーフローもないため、情報処理スピードの向上や、情報の選別などが分散して行える。
従って、通信システム1として、監視可能な太陽電池ストリングSの数が大幅に増える。
更に、出力する情報が、異常の有無を伝える非常に簡潔なエラー信号であることから、複雑なデータをやり取りするよりも、通信方式を問わず、情報伝達の安定性が向上する。
【0087】
尚、異常があった場合のデバック機能として、親機61から、無線又は通信ケーブルを介して、上述のリアルタイムクロック(RTC)の初期値を設定したり、不揮発性メモリ内の各種設定パラメータを変更しても良く、更に、記憶媒体(例えば、microSD(このロゴは登録商標)カード)内に記録している情報を、通信ケーブルを介して、親機61や、データ収集装置等の外部へ出力する機能を有していても良い。
【0088】
<子機51の電源供給部>
上述したような異常検知アルゴリズムを実行する信号処理部には、電源供給部によって、駆動する電力が供給されている。
この電源供給部は、変流器53の駆動電源と同様に、直流電圧(例えば、5V)であって、一般の商用電源を別途降圧したもの、接続箱Zの太陽電池ストリングSの出力電力端から降圧したもの、乾電池・ボタン電池・蓄電池等や、太陽電池ストリングSの電力出力端側の逆流防止用ダイオード両端より取り出された電圧をDC/DCコンバータ等で昇圧したものなどでも良い。
この電源供給部から、信号処理手段(中央処理装置(CPU))を駆動させるのに必要な電圧を、中央処理装置へ供給できる。
【0089】
尚、電源供給部と中央処理装置の間には、レギュレータ(例えば、LDO)を介しても良く、このレギュレータでは、入力端子(IN)には、電源供給部からの電力が入力され、安定化及び降圧(例えば、3.3V)された後、この安定化等された電圧が、出力端子(OUT)から出力され、結果的には、中央処理装置へ入力される電圧が所定の値に保たれる。
【0090】
<子機51の分散無線部52>
上述した信号処理部が、太陽電池ストリングSの異常検知時に出力されたエラー信号を通信するものとしては、一般的には、無線機や、通信ケーブル等の通信手段がある。
子機51と親機61との間の配線が不要となり、設置負担が軽減すると共に、既存の太陽光発電システムにも、太陽電池ストリングSの監視システムが後付けし易くなる点から、分散無線部52によりエラー信号を送信することが好ましい。
よって、分散無線部52について、以下に述べる。
【0091】
図5に示された如く、分散無線部52は、接続箱Zのそれぞれに設けられている。分散無線部52は、信号処理部からのエラー信号を無線で送信する無線機本体と、無線機本体からの出力を空間に放射させるアンテナ54と、無線機本体に安定した電源を所定の電圧で供給するレギュレータ(例えば、LDO)と、このレギュレータに電力を供給する駆動電源を備えていても良い。
無線機本体は、配電盤10内の親機61側の中央無線部62(親機)までエラー信号が届き、通信可能であれば、何れの仕様でも構わない。
又、子機51の無線機本体は、少なくとも、エラー信号を無線で送信する送信機能を有していれば良いが、デバック等のために、中央無線部62(親機)から分散無線部(子機)52への信号を受信する受信機能を有していても良い。
【0092】
無線機本体の駆動電源も、測定処理部(ホール素子型変流器53)や、信号処理部(中央処理装置)の電源供給部と同様に、直流電圧(例えば、5V)であって、一般の商用電源を別途降圧したもの、接続箱Zの太陽電池ストリングSの出力電力端から降圧したもの、乾電池・ボタン電池・蓄電池等や、太陽電池ストリングSの電力出力端側の逆流防止用ダイオード両端より取り出された電圧をDC/DCコンバータ等で昇圧したものなどでも良い。
尚、この駆動電源は、ホール素子型変流器53の駆動電源や、中央処理装置の電源供給部と共用化されていても(同じものが使われていても)構わない。
駆動電源の出力は、レギュレータの入力端子(IN)に入力されて安定化及び降圧(例えば、3.3V)された後、この安定化等された電圧が出力端子(OUT)から、無線機本体へ入力される。
又、分散無線部52におけるレギュレータも、信号処理部(中央処理装置)からの操作信号を操作端子(EN)に受けて、エラー信号の送信の必要に応じて、無線機本体をON/OFFさせる。
【0093】
<親機61の中央無線部62>
図5に示された中央無線部62は、複数個存在する接続箱Zそれぞれの分散無線部52から無線で送信された複数のエラー信号を受信し、受信した複数のエラー信号を親機61へ出力する。
又、中央無線部62(親機側)は、少なくとも、複数のエラー信号を無線で受信する受信機能を有していれば良いが、デバック等の際に、中央無線部62(親機側)から分散無線部52(子機側)へ信号を送信する送信機能を有していても良い。
【0094】
尚、中央無線部62の駆動電源は、一般の商用電源や配電盤10中のパワコン12における出力電圧などを別途降圧(例えば、5V)した出力が、レギュレータの入力端子(IN)に入力され、安定化及び降圧(例えば、3.3V)された後、この安定化等された電圧が出力端子(OUT)から、中央処理装置、中央無線部62へ入力される。
その他の中央無線部62の無線機本体やアンテナ63などの構成、作用効果、使用する周波数等の使用態様は、分散無線部52と同様である。
【0095】
<親機61>
図4、5に示したように、親機61は、配電盤10内に設けられていて、中央無線部62が受信した複数のエラー信号に基づき太陽電池ストリングSの異常を一括して判断するものである。
又、親機61は、当該配電盤10に接続された全ての接続箱Z内の子機51、又は、その全ての接続箱Zのうちで設定したグループの子機51から、定期的に(例えば、1日1回)送信が有るか、送信される信号は正常信号か等を判断し、当該配電盤10に接続された接続箱Z内の子機51が、正常に動作しているかを監視する。
何れかの子機51からエラー信号を受けた場合には、通信ケーブル(例えば、RS485ケーブル)及び接点入出力のインターフェース等を介して、データ収集装置や、使用者U等へ状態を知らせる。
尚、デバック機能や、異常検知時のLED点灯等は、子機51と同様である。
【0096】
親機61は、子機の監視等の処理を行う中央処理装置(CPU)と、この中央処理装置が取り付けられた基板(制御基板)と、この基板が内蔵された筐体も有していても良い(図示省略)。
子機51においても言及したように、親機61における中央処理装置、制御基板及び筐体は、逆に、子機51でも使用可能であって、中央処理装置、基板及び筐体でプラットフォームの共通化が図られていても構わない。
【0097】
更に、例えば、これら中央処理装置、制御基板及び筐体以外でも、以下のものを備えたり、共用化していても良い。
例示すれば、制御基板に実装された不揮発性メモリ(例えば、EEPROM(登録商標))、通信ケーブル(例えば、RS485ケーブル)のドライバ、通信ケーブルのポート(例えば、RS485のシリアルポート)、リアルタイムクロック(RTC)、複数のロータリーDipスイッチ、温度センサ、複数のLED(動作確認用)、スイッチ(例えば、タクタイルスイッチ(タクトスイッチ(登録商標))、無線機(分散無線部52、中央無線部62)、ロータリーDipスイッチやLEDが取り付けられている(実装される)インターフェース基板も、親機61は有していても良いが、これらの機器が、子機51と、同じ型のものを共用していても構わない。
このように、親機・子機間で、共通のプラットフォームを持つことで、通信システム1の生産効率の向上、製造コスト削減が図れると同時に、無線通信の親機61と子機51で共通プラットフォームを用いているため、親機も複数台に増やすことが容易であり、通信システム1全体として、監視できる太陽電池ストリングSの数が飛躍的に増大する。
【0098】
逆に、親機61と子機51の違いとして、例えば、親機61のオプションとして、電源や、A接点リレー(RELAY)を有している点、時刻補正のGPSモジュールが設けられていても良い。
親機61における中央処理装置の電源は、上述した中央無線部62の駆動電源と同様、一般の商用電源や配電盤10中のパワコン12における出力電圧などを別途降圧した出力を、レギュレータを介して、安定化等したものから得ている。
又、親機61は、一般の商用電源などを別途降圧した出力と、子機51における電源供給部を結ぶケーブルを有していても良く、このケーブルにより、親機の商用電源などを別途降圧した出力を、子機に用いても良い。
【0099】
A接点リレーは、通常は開いていて電気が流れず(OFF)、中央処理装置(CPU)からの信号により接点がつながり電気が流れる(ON)継電器である。
GPSモジュールは、GPS衛星からの信号で、地球上の現在位置の情報以外に、衛星に搭載された原子時計からの時刻のデータを読み取り、親機61の時刻補正を行うものである。
尚、時刻補正が必要な時のみ、中央処理装置からの操作信号で、GPSモジュールを起動されることで、低消費電力化を図っても良い。
その他の判断手段の構成や、リアルタイムクロックの別系統の電源など、作用効果及び使用態様は、子機51と同様である。
【0100】
図7は、上述した検知機50(子機51、親機61)を用いてユーザ端末9で閲覧できる監視画面(ストリングデータ画面)を示しており、太陽光発電プラント(発電所)Hの各太陽電池ストリングSにおける閲覧している日の所定時刻(午前8時や午前9時から1分間おき)での判定結果(ストリング異常の有無)、太陽光発電プラントHがある現地の気温、各ストリングSの測定値、バッテリの電圧、受信信号強度(RSSI)などや、現在の年月日・時刻等が表示されている。
更に、監視画面には、管理者Uがデータを表示したり、データをCSV形式でダウンロードするためのボタンや、ログアウトするためのボタンも設けられている。
【0101】
尚、第1実施形態における監視画面のように、パスワード欄の近くに別途欄を設けたり、若しくは、この監視画面にアクセスする際には、管理者のIDを入力する欄を設けるなど、IDを入力させても構わない。
又、太陽光発電プラントHの各ストリングS単位の監視内容は、監視画面をブラウザによって閲覧する以外に、メール等によって、ユーザ端末9に送信されても構わない。
【0102】
<検知機50の変形例(変形例1)>
図6には、検知機50の変形例(変形例1)が示されている。
この検知機50の変形例1は、それぞれが、所定の通信範囲を有し且つ互いに無線通信可能な通信部と、全ての検知機50を互いに無線通信可能に結んだネットワークを備えている。
【0103】
又、検知機50それぞれは、太陽電池ストリングSに流れる電流値などの値を測定する測定部と、この測定部や通信部を制御して異常ストリングの検知(特定)やネットワークの自己編成などをする制御部と、この制御部をはじめ、上述の通信部や、測定部それぞれに電力を供給する電源部と、この電源部をはじめ、通信部、測定部、制御部を内蔵する筐体50’と、太陽電池Tと接続するための接続部50”も備えている。
又、検知機50それぞれは、互いに同期をとる同期部や、筐体50’内の温度を測定する温度センサを備えていても良い。
検知機50それぞれは、各太陽電池ストリングSに設置されて、当該ストリングSに流れる電流値等を測定できるのであれば、何れに設置されていても良いが、例えば、当該ストリングSにおける何れかの太陽電池Tに設置される。
【0104】
このとき、太陽電池Tがパネル状であれば、検知機50は、そのパネルの裏面に取り付けられる。
更に、検知機50(複数個の検知機50)は、ある1つの検知機50の通信範囲内に他の検知機50が少なくとも1つ存在するように配置されている。
【0105】
このような配置関係となることで、複数個の検知機50は、それぞれが、互いの通信範囲内で、必ず1つの他の検知機50と無線通信可能な状態になる。
又、この配置関係であるからこそ、各検知機50の通信範囲よりも広い範囲に太陽電池ストリングSが設けられていても、検知機50の変形例1は、全ての検知機50が洩れなく互いに無線通信可能なネットワークを自己編成できる。
【0106】
その結果、個々の検知機50は、通信範囲(通信部の通信出力)が小さくとも異常検知が可能となって、各検知機50の小型化を図れると共に、太陽電池ストリングSの設置範囲の大小や、太陽光発電プラントHの規模に関わらず、設置する検知機50の数を変更するだけで対応できる。
そして、ネットワークを自己編成させることにより、検知機50を、既設の太陽光発電プラントHに後付けで設置した場合であっても、設置現場にて、各検知機50間で無線通信可能に設定する必要がなく、設置負担が軽減される。
【0107】
尚、ネットワークを自己編成する複数個の検知機50は、全てが同一の機能であっても構わないが、例えば、各検知機50が測定した電流値等を取り纏める等の機能・構成も有し且つ1個のみの親検知機(以下、親機)61と、取り纏める等をせずに必要最低限の機能・構成のみを有し且つ2個以上の子検知機(以下、子機)51を含んでも良い。
そこで、1個の親機61と、2個以上の子機51を含むとして、て、以下を述べる。
【0108】
<検知機50の変形例1における通信部>
図6に示した如く、検知機50の通信部は、親機61、子機51を含めた他の検知機50の通信部と、所定の距離間で無線通信を行うもの(通信モジュール)であり、この機能・構成は、上述した親機61、子機51に共通する。
又、通信部は、後述する電波強度を測る機能・構成(図示省略)も有しており、このような基本となる機能・構成(設計・構造)は、親機61、子機51で共通している。
【0109】
親機61、子機51共に、通信部の通信可能な距離(通信距離)は、何れの値であっても良いが、近距離(例えば、屋外で数10m、屋内で数mなど)や、中距離(例えば、屋外で数10m〜1km、屋内で数m〜10数mなど)、長距離(例えば、屋外で1km以上、屋内で10数m以上など)であっても構わない。
換言すれば、通信部の通信範囲は、半径が通信距離の円(球)となる。
【0110】
又、通信部は、他の検知機50の通信部との間(言わば、使用者Uから見れば、下位の間)で無線通信するために、電波を送受信する下位アンテナを備えており、通信部の通信範囲の中心は、この下位アンテナであると言える。
この下位アンテナは、相互に無線通信可能であれば、何れに設けられていても良いが、例えば、筐体50’に内蔵されていても良い。
【0111】
それぞれの通信部間で通信(送受信)されるデータは、各太陽電池ストリングSに流れる電流値等の値だけでなく、ネットワークを自己編成する際に用いるそれぞれの検知機50(親機61や各子機51)を特定するための情報(ID等)や、それぞれの検知機50間で通信するための電界強度(コスト)等も含まれる。
通信部は、検知機50間でデータの送受信が出来、無線通信可能であれば、何れの仕様でも構わない。
【0112】
又、子機51の通信部は、上記データの送受信が出来る機能を有していれば良いが、デバック等のために、親機61から子機51への信号を受信する機能を有していても良い。
尚、親機61の通信部だけは、配電盤10内にある番号通信部2と通信する機能・構成も備えている。
親機61は、それぞれの子機51からの各太陽電池ストリングSの電流値等に基づいて、何れかの太陽電池ストリングSに異常が有れば、異常が有る旨(アラーム)を、番号通信部2に知らせる。
【0113】
又、親機61の通信部は、上位(番号通信部2)に知らせるために、電波を送信する上位アンテナ64を備えている。又、この上位アンテナ64からの電波を受信する受信アンテナ2cを、番号通信部2に設けていても良い。
この上位アンテナ64も、外部へ相互に無線通信可能であれば、何れに設けられていても良いが、例えば、筐体50’に内蔵されていても良い。
【0114】
この親機61と、番号通信部2との通信は、何れの仕様であっても構わないが、例えば、3G通信であっても良く、又、Wi−Fi(登録商標の少なくとも一部)や、Bluetooth(登録商標)、ZIGBEE(登録商標)などの無線通信手法を用いても良く、4G通信なども含まれる。
これらを用いて、番号通信部2へ、太陽電池ストリングSの異常等を、メールなどで知らせても良い。
【0115】
<検知機50の変形例1におけるネットワーク>
図6に示すように、複数個の検知機50は、親機61、子機51の区別なく、全ての検知機50が互いに無線通信可能で自己編成されたネットワークを備えている。
このネットワークは、互いに無線通信可能であれば、何れの構成であっても良いが、例えば、全ての検知機50が順に無線通信可能に一繋がりとなったネットワークであっても構わない。
そこで、以下は、この一繋がりのネットワークについて、詳解する。
【0116】
一繋がりのネットワークは、1個の親機61対2個以上の子機51とはならず、取り纏めをする親機61を、当該ネットワークの一端とし、通信範囲内に存在する(近隣にある)子機51を順に介して、全ての子機51を一筆書きのように結んでいく。
つまり、親機61に直接通信する子機51は、1つだけとなり、その直接通信する子機51以外の子機51は、他の子機51を介して、親機61と通信することとなる。
従って、一繋がりのネットワークは、各子機51における太陽電池ストリングSの電流値等のデータを、他の子機51が、バケツリレー方式で親機61まで中継する。
【0117】
この中継に着目すれば、検知機50は、一繋がりのネットワークで、マルチホップ通信をしているとも言える。
尚、この「マルチホップ通信」とは、「無線機間の一対一の直接通信に対して、第三の無線機によって通信が1回以上中継される通信形態を指す。通信の伝達距離は、中継数に比例して増大する。逆に、直接通信の場合と同等の通信距離を、より低い送信電力で実現することも可能である。また、無線電波に対する障害物を回り込むような中継経路の設定によって、電波の不感地帯を解消することもできる(独立行政法人情報通信研究機構(NICT))」とも規定されている。
【0118】
<検知機50の変形例1における自己編成アルゴリズム>
上述した一繋がりのネットワークを、自己編成するアルゴリズムについて、まずは概要を述べる。尚、この自己編成アルゴリズムの処理(実行処理)は、親機61や各子機51における自らの制御部等にて行われる。
自己編成アルゴリズムを実行するには、最初に、親機61やそれぞれの子機51が、自らが接続できる(つまり、自らの通信範囲内に存在して無線通信できる)他の検知機50(子機51)を把握しておく。
尚、前提として、親機61、各子機51には、重複しない固有の番号(製造番号などの特定できる番号)が設定されている。
次に、接続できる子機51の情報等を総合的に判断して、親機61から各子機51を一筆書きのように洩れなく接続する(結ぶ)経路を見つけ出す。
【0119】
そして、洩れなく接続する経路の中で最適な経路を選択するが、そのためには、複数の洩れなく接続する経路のうち、接続(無線通信)の信頼性が最も高い経路を選択する。
この信頼性が最も高い経路を選択するには、親機61、各子機51間で無線通信をするのに必要な電波の強さ(電界強度)を、コスト付けとして用いる。
【0120】
ここで、電界強度とは、親機61、子機51間で、信頼性の高い通信をするために必要な最低限の値であり、この値が小さいほど、必要になる電波の強さ(消費電力)も少なくて済むため、信頼性が最も高い経路を見つける際のコスト付けとして用いることが出来る。
コストが小さいとは、伝播損失が小さいとも言える。従って、この伝播損失は、通信距離の二乗に比例して小さくなるため、ある検知機50の通信範囲内に複数の他の検知機50が存在している場合であれば、通常であれば、通信距離が小さいほど、伝播損失(つまりは、コスト)が小さくなり、検知機50の配置の際に、1つの目安となる。
但し、障害物などの通信距離以外の要因もあることから、実際に電波強度を測ってみなくては、コストは決まらない。
【0121】
これらの電界強度(コスト)に基づいて、実際に、各検知機50(親機61、子機51)間のコストの合計(トータルコスト)が最も小さい経路を選択することとなる。
又、トータルコストが最も小さい経路であっても、その経路の途中のある検知機50間におけるコストが、所定の数値以上である場合には、通信品質が安定しない可能性もあるため、そのような経路は採用しないなどの対応が必要となる。
尚、このネットワークの自己編成アルゴリズムでは、ダイクストラ法や、ワーシャル−フロイド法などを利用しても良い。
【0122】
<検知機50の変形例1における同期部>
検知機50の同期部は、親機61、子機51を含めた他の検知機50間で、互いに同期をとるもの(同期モジュール)であり、その具体的な構成は、特に限定されないが、GPS衛星からの電波を受信して検知機50の時刻を校正するもの(GPSモジュール)としても良い。
同期部がGPSモジュールである場合、この同期部(GPSモジュール)を、親機61だけが備えていても良い。
【0123】
この場合、同期部によって校正された親機61の時刻情報を、一定期間(例えば、1日)ごとに、上述した一繋がりのネットワークを介して各子機51へ送り、この時刻情報に基づいて、各子機51の時刻を校正する。
尚、一繋がりのネットワークにて時刻情報を順に送信していく(バケツリレー方式の)場合には、親機61に近い子機51と、親機61から遠い子機51とでは、時間的なズレが生じる可能性もあるが、後述する測定部が測定する所定時間の電流値を積算した際には、多少の時間のズレは無視できる。又、同期部を親機61だけが備えることで、子機51における構造の簡素化や、コストの低減が図れる。
【0124】
又、同期部は、GPS衛星からの電波を受信するための同期アンテナを備えていても良い。
この同期アンテナも、GPS衛星からの電波を受信可能であれば、何れに設けられていても良いが、例えば、筐体50’に内蔵されていても良い。
【0125】
更に、同期部がGPSモジュールである場合、この同期部を、親機61と全ての子機51が備えていても良く、親機61と全ての子機51は、ms(1/1000秒)オーダで同期が可能となり、更に同期の精度を高められる。
又、同期部としては、GPSモジュール以外にも、独立行政法人情報通信研究機構(NICT)の長波局から送信される標準電波(電波時計)や、NICTが提供するNTPサーバなどであっても良い。
【0126】
<検知機50の変形例1における測定部>
検知機50の測定部は、当該検知機50が設置された太陽電池ストリングSに流れる電流値等を測定するもの(測定モジュール)であり、この機能・構成も、上述した親機61、子機51に共通する。
測定部は、太陽電池ストリングSの電流値等が測定できるのであれば何れの構成でも構わないが、例えば、シャント抵抗を用いたものであっても良い。
【0127】
シャント抵抗を用いた測定部の場合には、太陽電池ストリングSにおける隣接して直列に接続された2つの太陽電池T間で、これらに対して、直列に接続することとなる。
尚、シャント抵抗の抵抗値は、十分に小さく(例えば、数Ω以下)、シャント抵抗を太陽電池ストリングSに直列に接続しているものの、太陽光発電プラントHとしての動作に影響は、ほぼない。
【0128】
又、測定部は、このシャント抵抗の両端の電圧を測定する電圧測定器(図示省略)を、並列に接続する。
更に、測定部は、この電圧測定器からの出力を、A/D変換するA/D変換器(図示省略)を有していても良い。
このA/D変換器で変換したシャント抵抗の両端電圧の値(デジタル値)を、後述する制御部にて、当該シャント抵抗の抵抗値で割ることで、太陽電池ストリングSに流れる電流値が求めることが出来る。
尚、検知機50が温度センサを備えている場合は、シャント抵抗の抵抗値を、温度係数を掛けるなど、筐体50’内の温度によって変化させても良い。
【0129】
<検知機50の変形例1における制御部>
検知機50の制御部は、上述した測定部や通信部を制御して異常ストリングの検知(特定)やネットワークの自己編成、同期部から得た情報で時刻の校正などをするもの(制御モジュール)である。
制御部において、通信部を制御してネットワークを自己編成したり、測定部を制御して各太陽電池ストリングSの電流値等を測定する機能・構成は、親機61、子機51に共通する。
【0130】
この親機61、子機51の制御部に共通する測定部の制御について、以下に述べる。尚、親機61と各子機51は、上述の同期部により互いに同期がとれているとする。
親機61と各子機51の制御部は、予め決められた開始時刻(例えば、午前9時)、計測間隔(例えば、1時間ごと)、計測回数(例えば、9回)、計測時間(例えば、10秒)に従い、測定部からの出力値に基づいて、各太陽電池ストリングSに流れる電流値を求める。
上述したように、測定部としてシャント抵抗を用いる場合なら、このシャント抵抗の両端電圧をA/D変換した電圧値が制御部に入力され、この測定部からの電圧値に、当該シャント抵抗の抵抗値で割ることで、太陽電池ストリングSに流れる電流値を求めることが出来る。
【0131】
又、上述の開始時刻、計測間隔、計測回数、計測時間の具体例によれば、制御部は、測定部に対して、まず、午前9時の正時に10秒間の測定を開始させる。
次は、制御部は、測定部に、午前10時の正時に同じく10秒間の測定をさせ、この測定を指定回数の9回繰り返すと、午後5時(17時)の正時の10秒間の測定で完了する。
【0132】
尚、制御部・測定部によって測定される値は、電流値だけでなく、測定した電流値に基づく値(例えば、各正時からの10秒間の電流値の平均値や積算値)でも良く、又、日の出から日の入までの積算電力量(日の出から日の入までの間に測定された変動する電流値と、シャント抵抗両端の電圧値等を掛けた電力を、時間積分した積分値)であっても良い。
これら測定された値(電流値、電流値に基づく平均値、積算値、積算電力量等)は、各子機51から、ネットワークを介して、親機61へ送信される。
又、上述した日の出から日の入までの積算電力量は、売電時の電力量とは異なる場合もあるが、所定の精度で求められるため、1つの目安となる。
【0133】
このように各子機51から送信された電流値等と、親機61自身の測定した電流値等も含めて比較することで、全ての太陽電池ストリングSにおける異常ストリングの検知が可能となる。
以下に、この異常を検知するアルゴリズム(異常検知アルゴリズム)は、異常ストリングや異常の有無が検知できるのであれば良く、例えば、上述した異常検知アルゴリズムを用いていても構わない。
【0134】
このような異常検知アルゴリズムは、子機51からの電流値等を取り纏める親機61の制御部で実行される場合を述べたが、太陽電池ストリングSの異常検知ができるのであれば、親機61以外で実行しても良く、例えば、親機61が取り纏めた各太陽電池ストリングSの電流値等を、所定の子機51、又は、番号通信部2に送信して実行させる等であっても構わない。
又、異常検知アルゴリズムの実行以外で、親機61の制御部だけの機能・構成としては、通信部を制御して番号通信部2への通信もある。
【0135】
<検知機50の変形例1における電源部>
検知機50の電源部は、上述してきた通信部や同期部、測定部、制御部のそれぞれに電力を供給するもの(電源モジュール)であり、当該検知機50が設置された太陽電池ストリングSの複数個の太陽電池Tのうち、少なくとも1つ(
図6では、1つ)の太陽電池Tから電力を得ている機能・構成は、親機61、子機51に共通する。
電力を得る太陽電池Tが1つの場合を例にすれば、電源部は、太陽電池ストリングS中の1つの太陽電池Tにおける正極(+極)を、電力を供給する電源部の正極(+極)とし、当該太陽電池Tにおける負極(−極)を、電力を供給する電源部の負極(−極)としている。
この電源部としての太陽電池Tは、発電電圧を測定することが可能となり、本来の性能や、設置当初(新品)の発電電圧と比較することで、当該太陽電池Tが異常か否かを検知できる。
【0136】
尚、親機61だけの機能・構成としては、親機61の電源部は、上述の太陽電池Tからの電力供給に加えて、予備電源を有していても良い。
この予備電源は、例えば、一般の商用電源を別途降圧したものや、乾電池・ボタン電池・蓄電池等である。
【0137】
これにより、親機61だけは、太陽光発電プラントHが未発電の時でも、通信部の上位アンテナ64を介して(3G通信等にて)、番号通信部2と通信が可能となる。
この未発電時の外部との通信は、例えば、ユーザ端末9で、親機61が、その時点での積算電力量や、今の状態(異常の有無)等を、使用者Uなどへ知らせるよう要求を出したり、親機61の設定を変更する等が可能となる。
【0138】
<検知機50の変形例1における筐体50’>
検知機50の筐体50’は、上述した通信部、測定部、制御部、電源部を内蔵できるのであれば、何れの構成であっても良いが、例えば、略直方体状であっても構わない。従って、検知機50の固定では、略直方体状等の筐体50’を取り付けるだけで済む。
又、検知機50が屋外などでも使用できるように、筐体50’が防水性を備えていても良い。
【0139】
上述したように、筐体50’は、その内部にアンテナ(下位アンテナ、上位アンテナ64、同期アンテナ)を内蔵していても良い。
このように、内蔵式のアンテナにすることで、外部にアンテナを設置した場合よりも、外部アンテナを別途設置しなくて済む分だけ、検知機50の設置(後付け)負担が軽減されると共に、コスト削減も図れる。
【0140】
<検知機50の変形例1における接続部50”>
検知機50の接続部50”は、太陽電池ストリングSの途中で、太陽電池Tの正極(+極)及び負極(−極)に接続できるのであれば、何れの構成であっても良いが、例示すれば、筐体50’から延びるコネクタ付きコードなどである。
このコード先端のコネクタは、太陽電池Tの各極と接続できる仕様・規格となっているが、例えば、MC4(登録商標の一部)コネクタであっても構わない。
【0141】
このように、MC4コネクタ等の接続部50”を有することで、検知機50は、太陽電池ストリングS(太陽電池T)と簡単に導通できる。
尚、接続部50”が、コネクタを有する場合には、MC4(登録商標の一部)コネクタ以外に、MC3コネクタや、SOLARLOOK(登録商標)であっても良い。
又、ここまで述べてきた検知機50や、この検知機50を設けた太陽光発電プラントHの何れもを含めて、これらは、ストリング監視システムと言える。
【0142】
<検知機50のその他の変形例(変形例2)>
上述した変形例1以外の検知機50の例(検知機50の変形例2)を以下に述べる。
検知機50の変形例2は、異常検知アルゴリズムにおいて、全ての太陽電池ストリングSに流れる電流値等を比較するのではなく、(全てのストリングSの本数より少ないか、全ての本数以下である)親機61及び各子機51それぞれの通信範囲に存在する太陽電池ストリングSのみに流れる電流値等を比較する。
【0143】
つまり、この変形例2の異常検知アルゴリズムを実行することで、各検知機50の処理や役割が、親機61、子機51の区別なく略同じになるため、取り纏める親機61に処理の負荷が集中することはない。
つまり、処理の負荷が分散することから、この変形例2の異常検知アルゴリズムは、「分散アルゴリズム」とも言える。
以下、変形例2の分散アルゴリズムの詳細を述べる。
【0144】
変形例2の分散アルゴリズムも、変形例1の異常検知アルゴリズムのように、基本的には、処理を開始するステップ(第0ステップ)と、太陽電池ストリングSに流れる電流値等を一定期間、測定するステップ(学習ステップ(第1ステップ))と、この学習期間中に算出したパラメータを基に異常ストリングを判断するステップ(検知ステップ(第2ステップ))と、検知した結果を出力するステップ(出力ステップ(第3ステップ))は有している。
しかし、分散アルゴリズムでは、変形例1の異常検知アルゴリズムと異なり、学習ステップは、「一繋がりのネットワークは介さずに」且つ「親機61及び各子機51自らの通信範囲内の太陽電池ストリングSだけ」に流れる電流値等を測定するステップである。
【0145】
検知ステップも、同様で、「一繋がりのネットワークは介さずに」且つ「親機61及び各子機51自らの通信範囲内の太陽電池ストリングSだけ」に流れる電流値等の実測値等を測定するステップである。
尚、出力ステップは、親機61を除く全ての子機51が、異常ストリングではなく「異常候補ストリング」を、親機61へ出力するステップである。
【0146】
更に、分散アルゴリズムは、もう1つの第4ステップを有する点も、変形例1の異常検知アルゴリズムと異なる点である。
そのステップは、一定時間ごとに、各子機51からの異常候補ストリングから本当の異常ストリングを特定するステップ(特定ステップ(第4ステップ))である。
この特定ステップについて、以下、詳解する。
【0147】
(4)特定ステップ
上述の出力ステップで、一定時間(例えば、1日1回や、午前9時から午後5時までの各正時など)ごとに、全ての子機51から親機61へ、各子機51が検知した異常候補ストリング(子機番号)を、一繋がりのネットワークを介して送信する。
ここで、親機61に取り纏められたそれぞれの異常候補ストリングの子機番号のうち、食い違うものがなければ、全ての異常候補ストリングを、本当の異常ストリングと特定できる。
【0148】
又、取り纏められた全ての異常候補ストリングの子機番号で、食い違うものが少なければ(例えば、数個であれば)、食い違っているもののみを除き、それ以外の異常候補ストリングを、本当の異常ストリングと特定しても良い。
更に、全ての異常候補ストリングの子機番号で、食い違うものが多ければ、所定数以上(例えば、2以上)の子機51が共通して異常候補ストリングと検知したもののみを、本当の異常ストリングと特定しても構わない。
【0149】
何れの特定の仕方であっても、異常ストリングを特定し、この特定した異常ストリングに設置された検知機50(親機61や各子機51)の子機番号を、親機61の通信部の上位アンテナ64を介して、番号通信部2に出力した後に、処理は、検知ステップに戻る。
又、一定時間ごとに、全ての子機51から親機61へ送信されるタイミングは訪れるが、もし異常候補ストリングが1つもない場合でも、処理は、検知ステップに戻る。
【0150】
上述したように、変形例2の分散アルゴリズムでは、親機61が取り纏めるのは、各子機51から送信される異常候補ストリングの子機番号だけであり、親機61は、自らが担当する通信範囲内の太陽電池ストリングSの電流値等を比較すれば済み、全ての太陽電池ストリングSの電流値等を比較して、異常の有無や異常ストリングを検出するよりも、親機61の制御部にかかる負荷が低減される。
すなわち、取り纏める親機61が、余計に行うことは、具体的な電流値等の値の処理ではなく、異常候補ストリングの特定(選定)だけであるため、特に処理負担の増加とはならず、各検知機50に過度な機能を付加する必要はなく、構造の簡素化が図れる。
その他の検知機50の構成、作用効果及び使用態様は、変形例1と同様である。
【0151】
<第3実施形態の通信システム1>
図8は、本発明の第3実施形態に係る通信システム1を示している。
この第3実施形態において第1、2実施形態と最も異なるのは、LANケーブル26やハブ27を介して、受発電収集サーバ71が、プラントLAN28に接続されている点である。
【0152】
この受発電収集サーバ71は、太陽光発電プラントHを監視・制御する情報収集サーバであって、詳しくは、電話網Dを介して太陽光発電プラントHの監視内容をユーザ端末9へ報告する監視を行う機能(サービス)を提供するコンピュータ(又は、ソフトウェア)、及び/又は、電話網Dを介してユーザ端末9からの制御内容に基づく太陽光発電プラントHの制御を行う機能(サービス)を有している。
受発電収集サーバ71は、日射強度を測定する機能や、パワコン12が変換する電力量や、変圧器13によって昇圧されて送電部14によって送電される電力量等を測定する機能(例えば、MEメータの機能)、接点(A接点リレー(RELAY)等))が設けられていても良い。
【0153】
従って、受発電収集サーバ71は、番号通信部2とは、別個に設けられたプラントサーバ7であると言える。
尚、第3実施形態において、番号通信部2は、ルータ機能を果たしても良く、又、別途、計器22を有していなくとも構わない。
その他の通信システム1の構成、作用効果や使用態様は、第1、2実施形態と同様である。
【0154】
<第4実施形態の通信システム1>
図9は、本発明の第4実施形態に係る通信システム1を示している。
この第4実施形態は、第2実施形態で述べた検知機50と、第3実施形態で述べた受発電収集サーバ71の両方を有している。
詳解すれば、第3実施形態における番号通信部2と受発電収集サーバ71との間に、別のハブ27を設け、このハブ27に、第2実施形態のように、別の番号通信部2を介して検知機50を接続している。
その他の通信システム1の構成、作用効果や使用態様は、第1〜3実施形態と同様である。
【0155】
<第5実施形態の通信システム1>
図10は、本発明の第5実施形態に係る通信システム1を示している。
この第5実施形態は、第2実施形態において、番号通信部2を1台のみとし、計器22やハブ27、受発電収集サーバ71等を有していない。
尚、
図10では、配電盤10の内部のパワコン12は図示省略をしている。
又、第5実施形態における番号通信部2は、必ずしもパワコン12に接続する(プラントLAN28を形成する)必要はなく、この場合は、番号通信部2は、遠隔制御部4の役割は果たさないと言える。
その他の通信システム1の構成、作用効果や使用態様は、第1〜4実施形態と同様である。
【0156】
<
その他の形態
1の通信システム1>
図11は、
その他の形態
1の通信システム1を示している。
この
その他の形態
1において第1実施形態と最も異なるのは、太陽光発電プラントHを特定する際の電話機端末H’が、電話網Dと有線Mで接続される点である。
以下は、太陽光発電プラントHを固定電話H’として特定する場合について述べる。
【0157】
<番号通信部2>
図11に示されたように、番号通信部2は、太陽光発電プラントHを電話網Dにおける電話番号Nで固定電話(固定電話端末機)H’として特定し且つこの特定された固定電話H’でもある太陽光発電プラントHをその外部と電話網Dを介して通信させるものである。
ここで、番号通信部2と電話網Dを接続する有線Mについて詳解する。
【0158】
有線Mは、固定電話(加入電話)H’の使用者(加入者(契約者))Uごとに、加入した際に電気通信事業者が敷設する加入者線(加入者回線)である。
有線(加入者線)Mは、使用者U(使用者Uの敷地にある責任分界点)から電気通信事業者の電話網D(電話網Dの設備(電話交換機))までを繋ぐ回線(両端にモジュラージャックを備え、電話機から保安器までモジュラーケーブルや、保安器から端子函までの引き落としケーブル、端子函を経て電柱に架設されている架空ケーブル、架空ケーブルを地中に集めて電話交換機までを繋ぐ饋線(き線)など)を言う。
【0159】
この加入者線Mを敷設することで、加入者(使用者U)と一対一に対応する固定電話番号Nが取得される。
加入者線Mは、使用者Uから電気通信事業者の設備までを繋ぐのであれば、何れの構成であっても良いが、例えば、メタル回線(メタルケーブル、メタリックケーブル)であっても良く、そのメタル回線は、0.35mm〜0.90mm(0.35mm以上0.90mm以下)程度の銅線を使った通信ケーブルであっても構わない。
【0160】
メタル回線は、アナログ回線(データや音声をアナログ信号で送受信する回線)と、デジタル回線(データや音声をデジタル信号で送受信する回線)の何れでも良く、このメタル回線における通信方式も何れでも構わないが、例えば、アナログ回線において通常の通話と同じ領域を利用するダイヤルアップ接続や、デジタル回線のISDN(Integrated Services Digital Network 、INSネット(登録商標)等)、アナログ回線において通常の通話などでは利用しない領域(高周波帯域)を利用するADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)、ASDL以外のDSL(CDSL (Consumer DSL) 、VDSL (Very high-bit-rate DSL) 、ReachDSL、HDSL (High-bit-rate DSL)、SDSL (Symmetric DSL)などの所謂xDSL等であっても良い。
又、加入者線(有線)Mは、光ファイバー回線(FTTH(Fiber To The Home )、FTTB(Fiber To The Building )など)であっても良く、この光ファイバー回線を加入者線Mとして敷設することで、加入者(使用者U)と一対一に対応する固定電話番号Nを取得するようにしていても構わない。
この他、加入者線(有線)Mは、CATVケーブル(CATV回線)や、電力線などであっても良い。
【0161】
<設定ロック部6>
図11に示されたように、
その他の形態
1は、設定ロック部6を有していても良く、こ
の形態においても、設定ロック部6とは、番号通信部2の設定変更を防止するものである。
設定ロック部6は、番号通信部2の設定変更を防止できるのであれば、何れの構成でも良いが、例えば、番号通信部2(つまり、通信機器100)におけるケーシングである機器筐体101自体や、番号通信部2の機器筐体101に入出力装置が設けられている場合において番号通信部2の設定変更を防止するカバー体、配電盤10内のハブ27にコンピュータ等を接続できる場合やWeb機能を有している場合において番号通信部2の設定ロック用ソフトウェア等で、設定ロック部6を構成していても良い。
【0162】
尚、
その他の形態
1は、ある配電盤10(パワコン12)におけるハブ27が、LANケーブル26を介して、別の配電盤10(パワコン12)におけるハブ27に接続されている。
従って、
その他の形態
1におけるプラントLAN28は、2つのパワコン12を有しており、3つ以上のパワコン12が、1つのプラントLAN28内に設けられていても良い。
その他の通信システム1の構成、作用効果や使用態様は、第1実施形態と同様である。
【0163】
<
その他の形態
1の変形例>
尚、
その他の形態
1の通信システム1は、番号通信部2の代わりに、光ファイバー回線を加入者線Mとして用いた場合で且つ固定電話番号Nを持たずに外部と通信する通信部2’であっても良い。
この変形例における通信部2’は、ルータ34と光回線終端装置(プラントONU)35(又は、プラントモデム35’)を介して、電話網D、又は、電話網Dを含むネットワークWと接続していても良い。
尚、通信部2’は、光ファイバー回線ではなく、アナログ回線(メタル回線)のADSLで通信する場合で且つ固定電話番号Nを持たずに外部と通信する構成であっても良い。
【0164】
その他の形態
1の変形例では、この通信部2’の設定変更を防止する設定ロック部6’を有していても良い。
この変形例におけるその他の構成、作用効果や使用態様は、上述した
その他の形態
1と同様である。
【0165】
<
その他の形態
2〜5の通信システム1>
図12〜15は、
その他の形態
2〜5の通信システム1を示している。
その他の形態
2が第2実施形態と異なるのは、太陽光発電プラントHが、有線Mにて電話網Dと有線Mで接続される点である。
又、
その他の形態
2は、1つのプラントLAN28内に複数のパワコン12を有していても良い。
その他の通信システム1の構成、作用効果や使用態様は、第
2実施形態
、その他の形態1と同様である。
【0166】
以下、同様に、
その他の形態
3〜5が第3〜5実施形態とそれぞれ異なるのも、太陽光発電プラントHが、有線Mにて電話網Dと有線Mで接続される点である。
又、
その他の形態
3〜5も、1つのプラントLAN28内に複数のパワコン12を有していても良い。
その他の通信システム1の構成、作用効果や使用態様は、第1〜
5実施形態
、その他の形態1と同様である。
【0167】
<その他>
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではない。通信システム1等の各構成又は全体の構造、形状、寸法などは、本発明の趣旨に沿って適宜変更することが出来る。
通信システム1は、太陽光発電プラントHの制御及び監視を行っていたが、制御と監視の何れか一方だけを行うこととしても良く、又、ネットワークW(電話網D)上の発電制御データを、確認した後に削除しない場合や、発電制御データの確認、及び/又は、発電監視データをネットワークW上に置くことを、所定時間ごとに行わない場合があっても構わない。
【0168】
検知機50を、パワコン12に設置しても良く、この場合、パワコン12の正確な出力(電力量)や、パワコン12の出力も異常検知アルゴリズムに組み込んでいる場合には、パワコン12の異常が検知された際に、番号通信部2に知らせるものとしても良い。
検知機50の変形例1、2におけるネットワークは、一繋がりであったが、全ての検知機50が互いに無線通信可能となるのであれば、何れの型であっても良く、例えば、ツリー型や、メッシュ型、スター型、リング型であっても構わない。
尚、ツリー型のネットワークを自己編成する場合、検知機50は、親機61、子機51の他に、所定数の子機51を取り纏める中継検知機(中継機)を含んでいても良い。
【0169】
このような一繋がりでないネットワークであれば、一筆書きが出来ないように、各検知機50が配置されていてもネットワークを自己編成できる。
ネットワークは、一繋がりの一端や途中にある検知機50からツリー型のように分岐していたり、これと同様に、メッシュ型、スター型、リング型の何れかの検知機50から分岐していても良く、一繋がりのものや、ツリー型や、メッシュ型、スター型、リング型の少なくとも2つが組み合わさっていても良い。
【課題】発電プラントを電話網における電話番号で電話機端末として特定し且つ電話網を介して通信させる番号通信部を有して、通常の電話機端末と同様の設置負担で、発電プラント外部との通信を可能とする。
【解決手段】発電プラントHとその外部とを通信させる通信システムである。発電プラントHを電話網Dにおける電話番号Nで電話機端末H’として特定し且つ特定された電話機端末H’でもある発電プラントHをその外部と電話網Dを介して通信させる番号通信部2を有している。