(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
プローブヘッドに取り付けられた表面検出器を使用して表面状態を測定するための方法であって、該プローブヘッドが一つ以上の軸線の回りで前記表面検出器の回転動作をもたらすための駆動装置を含み、
(a)公称経路に沿って前記表面状態に対して前記プローブヘッドを移動させるステップと、
(b)前記表面状態の少なくとも一部分を、数学的にパラメータであらわすことのできる曲線状輪郭に近似させるステップと、
(c)前記表面状態の法線曲面の少なくとも近似値を決定するステップと、
(d)前記表面検出器で前記表面状態を検出するステップと、
(e)実質的に前記法線曲面の方向に前記表面状態に対する前記表面検出器の距離または力を調整するステップと、を適切な順序で含み、
前記ステップ(b)における前記曲線状輪郭は、パラメータ化された放物線からなり、前記法線曲面は、ステップ(c)において該パラメータ化された放物線から決定される方法。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1は、座標測定機(CMM)に取り付けられる電動式走査ヘッドを示す。測定される工作物10が、CMM14のテーブル12上に取り付けられており、電動式走査ヘッド16が、CMM14のスピンドル18に取り付けられている。そのスピンドルは、モータによって既知の方法で、そのテーブルに対してX、Y、Z方向に駆動可能である。
【0022】
図2に示されるように、電動式走査ヘッド16は、ハウジング20に対して軸線A1の回りをモータM1によって回転可能な軸22の形をとる可動部分を支持する基部、即ち、ハウジング20によって形成される固定部分を含む。軸22は、軸線A1に対して垂直な軸線A2の回りをハウジング24に対してモータM2によって回転可能な軸26を支持するさらに先のハウジング24に固定されている。
【0023】
工作物接触端30を有するスタイラス29を備えたプローブ28が、電動式走査ヘッドに取り付けられている。その構成は、ヘッドのモータM1、M2が工作物接触端を軸線A1、A2の回りで傾斜して位置決めすることができ、スタイラスチップが走査される表面と所定の位置関係になるように、CMMのモータが電動式走査ヘッドをCMMの3次元座標フレームワーク内のどこにでも線形的に位置決めすることができるようになっている。
【0024】
走査ヘッドの直線偏位を測定するために複数の直線位置トランスデューサが、CMMに設けられており、軸線A1およびA2回りでのスタイラスの角度偏位をそれぞれ測定するために角度位置トランスデューサT1およびT2が、走査ヘッドに設けられている。プローブは、可撓性のスタイラス29を有し、プローブ内の複数のトランスデューサはスタイラスの撓み量(振れ量)を測定する。
【0025】
図1に示されるCMMの垂直アームでは、走査ヘッド16のA1軸線は、CMMのZ軸線(スピンドル18に沿った)に対して公称上、平行である。走査ヘッドは、プローブをこの軸線の回りで連続的に回転させ得る。走査ヘッドのA2軸線は、A1軸線に対して直角である。
【0026】
CMMは、システムが、必要な検査工程のために工作物の必要とされる寸法および形をすべて取得するのに十分な複数の点で、工作物の表面を測定するためのプログラムを含むコンピュータのような制御装置17を備えている。このまたは様々な制御装置が、後で述べる複数のステップおよび計算を制御するように使用されてもよい。
【0027】
電動式走査ヘッドを部品の回りで公称経路に沿って動かし、スキャンパラメータを調整するようにプローブからのフィードバックを使用することによって、部品は、走査され得る。
【0028】
未知の部品の走査は、公称経路から離れた表面の形状における変化率としてみなすことができる機械的帯域幅を必要とする。これは、プローブレンジ内にある公称経路から離れた偏り、および、プローブレンジより大きい偏りという2つの部分に分けることができる。これらは両方とも、プローブが表面上を通過する速度、すなわち、走査速度に依存している。
【0029】
システムの基本帯域幅の条件は、プローブの機械的帯域幅が、プローブレンジ内である対象となっている表面変化における帯域幅より大きくなければならないこと、および、機械の動作サーボシステムの帯域幅が、プローブレンジより大きい対象の表面変化の帯域幅より大きくなければならないことである。公称部品の軌跡を追跡するために必要な帯域幅とプローブの総撓み誤差を制御するために必要な帯域幅との合計は、機械の動作サーボシステムの帯域幅より小さくなければならない。
【0030】
走査は、代表的には、プローブ先端を走査に沿って動かす「駆動ベクトル」と、プローブをレンジ内に維持するために使用される「振れ制御ベクトル」との、2つのベクトルの合成から構成される。プローブをレンジ内に維持するためにプローブの振れは、増加または減少され、振れを制御するために動く方向を知ることが必要である。さらに、システムは、必要な動作に影響を与えるために利用可能ないくつかのサーボ帯域幅を備えていなければならない。
【0031】
走査ヘッドの帯域幅より大きい帯域幅を有する表面変化については、プローブの振れは、表面変化に対して反応する。走査ヘッドは反応することができるが、走査ヘッドが取り付けられた機械は反応することができない帯域幅を有する表面変化については、走査ヘッドおよびプローブの両方が、反応する。機械の性能限度の範囲内である帯域幅を有する表面変化については、その機械は、表面変化に対して反応するように使用可能とされる。しかし、機械の慣性による振れを避けるために表面変化に対して反応するように走査ヘッドが取り付けられた機械ではなく走査ヘッドを使用することが有利である。表面変化が走査ヘッドの範囲より大きい場合、機械の移動が、使用可能とされる。また、これらの手段により、所定の必要精度を目的として最良の速度が達成されるように、各軸線の既知の慣性による撓み特性に基づいてシステムの様々な部品の加速を制限することも可能である。
【0032】
一例では、スタイラスの振れを測定する撓み可能なスタイラスを備えたプローブが説明されているが、本発明は、他のタイプのプローブにも適している。いくつかの接触プローブは、振れではなくスタイラスにおける力を測定する。これらは、力の範囲を有し、プローブからのフィードバックが、スタイラスにおける力を、「振れ制御ベクトル」と類似した「力制御ベクトル」に沿って範囲内に維持するようにプローブを動かすように使用される。キャパシタンス、インダクタンス、および光学プローブなどの非接触プローブは、表面からの距離を測定し、オフセットレンジを有する。プローブからのフィードバックは、「振れ制御ベクトル」と類似した「オフセット制御ベクトル」に沿ってプローブのオフセットを調整するように使用される。
【0033】
振れ制御ベクトルを得る多数の方法があり、そのいくつかを以下に概説する。振れを制御するのに最も効率的な方向は、走査される表面に対して法線に沿った方向である。
【0034】
3Dプローブは、測定される表面に対して法線方向に振れをもたらすことを見込まなければならない。代表的な3Dプローブは、等しい剛性を備えている複数のスプリングを備える3軸スプリングシステム上に支持された球状のスタイラスチップを有している。したがって、プローブの振れは、表面に対して法線方向となるだろう。しかし、プローブの振れの方向に影響を及ぼすいくつかの要因がある。
【0035】
摩擦が、球体と表面との間には生じる。振れベクトルは、摩擦ベクトルと反力との合計であるので、振れベクトルは、もはやその表面に対して垂直の関係とはならない。さらに、そのスタイラスチップが表面の上を移動するとき、くっつき、滑ることがあるので、表面と球体との間の摩擦は、一定または線形ではない。したがって、振れベクトルは、法線曲面に対して必ずしも一定の角度ではない。
【0036】
さらに、プローブが、その全方向において等しいばね剛性を有しない場合、摩擦がなくてもプローブが法線曲面に沿って撓わない場合がある。
【0037】
摩擦の問題は、一般に、小さな誤差に過ぎないので無視することができる。この誤差が大きい場合、振れベクトルは、摩擦角度(反力ベクトルが摩擦ベクトルにより回転される角度)だけ回転され、法線曲面のより良い推定値をもたらすことができる。
【0038】
くっつき、滑る問題は、プローブの撓みデータをフィルタリングすることによって解決することができる。これは、機械的ダンパ、電子フィルタ、またはソフトウェアのデジタルフィルタを使用することによって達成できる。これらのすべては、システムの帯域幅を制限し、多かれ少なかれ遅延を生じさせる。
【0039】
不均衡のばねの剛性は、数学的に補償することができるが、その結果振れベクトルが、最も高い剛性の軸線方向でノイズの影響をより受けやすくなる傾向がある。
【0040】
これらの問題は、この方法を使用して首尾よく走査可能とされる表面の帯域幅を非常に制限するが、走査を実施する表面に関して既知であることがほとんど必要ないという利点がある。
【0041】
履歴データは、直前の測定点から表面の形を予測するように使用可能とされる。一組の測定データは、それらのデータの地点を含む領域の表面の形を計算するように使用され、また、その形を予測し、次の目標地点の表面がある所を予測するように使用される。
図18は、未知の表面160を示し、A、B、C、Dは測定地点である。A、BおよびCが測定されると、測定地点Aと測定地点Bとを接続する接線ABが、決定可能とされる。同様に、接線BCが、決定可能とされる。接線ABと接線BCとの間の角度θも、決定可能とされる。未知の部分の形が続くとみなされる場合、未知の点Dへの接線CDは、直前のデータから予測可能とされ、すなわち、BCrotθとなるだろう。地点Dにおける法線曲面は、接線CDを90度回転することによって予測することができる。したがって、プローブの振れをこの方向に沿って調整され得る。
【0042】
他の方法が、数学的曲線を履歴データに当てはめるように前方に外挿するために使用されてもよい。しかし、この方法は、時間がかかり、したがって、実際的ではない。
【0043】
定義された形状の走査において、表面形態は、既知であり、例えば、円筒形または平面であってもよい。走査中に取得された測定データは、部品が走査されるとき形状モデルを改良するように使用可能とされる。これは、予想の小さい帯域幅の誤差を減らす効果がある。これにより、プローブの振れ範囲内での走査が可能になる。したがって、機械の位置決めサーボ帯域幅が、公称走査軌跡を追跡するように使用可能とされ、プローブの振れの全誤差を制御するために必要なものはないだろう。これにより、非常に高速度の走査を達成することが可能である。
【0044】
定義された形状の走査では、表面に対する法線は既知であり、そのため、プローブは、振れを調整するようにこの方向に簡単にサーボ制御され得る。例えば、平面では法線は、一定であり、円筒形では法線曲面は、常に円筒形の軸線を通過しなければならない。
【0045】
表面に関する情報が、履歴、定義された形状または定義された法線の走査に関して最初に不十分である場合、ハイブリッド法が、使用可能とされる。この場合、振れベクトルから推測演算された振れ制御ベクトルにより、走査は、開始し得る。表面に関する十分な情報が得られるならば、履歴点、定義された形状または定義された法線によって振れ制御ベクトルが、設定可能とされる。急激な不連続をなくすために、3次元振れベクトルの影響が小さくなり、替えられた方法の影響が時間とともに増加するので、これは、一つの方法から別の方法へと急激な変化または緩やかな変化となる場合がある。
【0046】
表面の法線曲面を定義する1つの方法を、より詳細に説明する。この方法では、その表面は、パラメータ化された曲線に近似値化されている。次いで、パラメータ化された曲線の法線が、決定され、振れ制御ベクトルの方向として使用可能とされる。
【0047】
図3に示されるように、測定される表面40は、放物線(または、後述する他の表面状態)に近似値化される。その表面は、その幅wおよび高さhによって定義される有限範囲の放物線に近似値化される。
図3の放物線は、幅は一定であり、高さはゼロである。
【0048】
パラメータであらわされた放物線の輪郭が作成されたならば、幅および高さ双方に関し、プローブにおける走査の中心線からの偏倚が、走査に沿った所定の距離lでスイープの振幅aから決定可能とされる。
【0049】
放物線の関数は、プローブの振れを制御するように(すなわち、超えたまたはより少ない振れを訂正するために)、その表面を画定し、軸線A1およびA2を近づけたり、または離隔させたりするためのものである。プローブは、必ずしも放物線輪郭を追跡する必要はないので、この輪郭は、おおよそ放物線にすぎない表面を走査するように使用され得る。
【0050】
図4に示されるように、放物線44は、その一部分の始点および終点において、様々な高さパラメータh0、h1および幅パラメータw0、w1を有することが可能である。これらは、2つの端部相互間で滑らかに合成される。したがって、長手方向に沿って不均一な表面について、パラメータ法が、使用され得る。
【0051】
放物線の輪郭は、
図5を参照しながらより詳細に説明されるだろう。放物線の輪郭は、同じ方法でパラメータで表された、様々な高さおよび幅を有する放物線では、同じパラメータ値の地点を結んだ線はその合成を通して直線状になるという点で、有用な数学的特性を有する。これにより、必要な計算が簡略化される。
【0052】
図5は、走査の高さ寸法jに対する走査の幅寸法iを表すグラフである。高さおよび幅が異なる2つの放物線44、48が、示されている。点線は、同じパラメータ値の点を結んだものである。
【0053】
段落に使用されたパラメータ表示は、次の通りである。
i:スイープの中心を0とする走査の幅寸法
j:スイープの中心を0とする走査の高さ寸法
k:走査の開始を0とする走査の長さ寸法と、走査の座標システムを定義する。
W
0:走査開始時の放物線の幅
W
1:走査終了時の放物線の幅
H
0:走査開始時の放物線の高さ
H
1:走査終了時の放物線の高さ
L:走査の長さ
w(k):走査に沿った長さkにおける放物線の幅
h(k):走査に沿った長さkにおける放物線の高さ
t:放物線上の地点を定義するパラメータ
A(k):放物線の形状を定義するパラメータ
T(k):放物線の範囲を定義するパラメータと、変数を定義する。
従って、走査の法線を定義する表面の形状は、次のように定義される。
0≦k≦L……………………………1
【0054】
【数1】
【0055】
−T(k)≦t≦T(k)
i(t,k)=2・A(k)・t……………………2
j(t,k)=−A(k)・t
2…………………… 3
式2、3および1は、表面のi、jおよびk座標を定義し、振れは、それに対して法線を移動することによって制御される。
【0056】
プローブ先端の公称走査経路は、この表面に波形を重ね合わせることによって計算され得る。波形の位相は、走査の長さに沿って移動した距離に比例し、パラメータtは、±Tの範囲内で位相の正弦に比例する。これは、数学的に次のように表すことができる。
Ω:スイープの周波数の測定値
θ(k):走査に沿った長さkにおけるスイープの位相
したがって、
θ(k)=k・Ω
t(k)=T(k)・sinθ
これらの式は次の基準を満たしている。
−T(k)≦t≦T(k)
ここでtは、kのみの関数なので、iおよびjは、単に、kに関して定義することができる。したがって、公称の先端動作を定義する式は、次の通りである。
0≦k≦L……………………1
i(k)=2・A(k)・T(k)・sin(k・Ω)…………………… 4
j(k)=−A(k)・(T(k)・sin(k・Ω))
2……………………5
変数は、1つだけなので、これは、表面ではなく線(公称の先端軌跡)を定義する。
この式の系は、始点の条件から潜在的に様々な端末条件まで合成される幅および高さを有する放物線に重ね合わされた正弦曲線を表す。
【0057】
この外形を正確に追跡するには、CMMが追跡する軌跡に沿って多くの往復動作を行う必要がある。CMMの軌跡の往復動作をなくすために、正弦曲線は、ヘッドの回転中心に向かってサメの歯状に曲げられる。これは、パラメータkを修正することによって達成される。
【0058】
放物線のパラメータは、例えば、CADモデルから、または、一組の初期の測定値を設定することによって、様々な方法で定義されてもよい。
【0059】
スイープのキーパラメータは、始点および終点A1およびA2の角度位置とともに、スキャンセグメントの中心、各端における高さおよび幅、および法線である。
【0060】
CADモデルからプログラミングする場合、これらの値を見つける方法は、様々な方法で達成することができる。簡便な方法が、以下に説明される。
【0061】
平面部分が、その部品においてzという最初の値でとられる。
【0062】
結果として得られる平面曲線50は、
図6に示されるように、対象部分52に分割される。これらの領域は、プローブ長さの所定の分数、例えば、プローブ長さの3分の1より幅広くない。しかし、正弦曲線の曲がりが望ましくない場合、および、走査を完了するためにかかる時間が重要でない場合、より幅の狭い部分が使用されてもよい。
【0063】
その領域は、可能な限り近接した放物線に近似化するように、各部分が一方向のみにカーブするように選択される。その領域の訂正曲線を確実にするための境界値として変曲点を選択する必要がある場合もある。
【0064】
この例では、各部分が、上部から下部へと(逆もまた可能)順に走査される。
【0065】
図7に示されるように、領域52が、それぞれ、弦54によって連結されている。垂直な二等分線56が、弦54から平面曲線50へと延びている。各走査の高さは、垂直二等分線56の長さであり、その幅は、弦54の長さである。走査58の中心は、二等分線が平面曲線と交わる点である。走査の法線は、弦からカーブへと二等分線の方向に沿っている。
【0066】
放物線のパラメータは、可能な限り部品に近く近似するように、調整され得る。
図7では、右側の領域の中心60は、カーブ50の頂点62に十分近接しておらず、修正することができ、隣接する領域がそれに対応して調整される。
【0067】
放物線を修正するために、二等分線64が、平面曲線50と交差するように延びている。二等分線64および弦66は、延長した二等分線64が平面曲線50の頂点62を通過するまで、弦の中点の回りで回転される。二等分線64は、平面曲線50で終端するように調整され、弦66もまた平面曲線50で終端するように延長または調整される。訂正された鋭利な頂点は、
図8に示される。
【0068】
隣接する曲線の弦および二等分線は、調整され、各中心は適切に移動される。これにより、鋭利な頂点が、首尾よく確実に走査可能とされる。
【0069】
放物線は、領域を識別するためにジョイスティックを使用することによって、CMM上で手動にて画定され得る。部品の座標系は、走査平面上で設定される。制御ソフトウェアは、部品の座標系で「軸線固定」を使用することによって、検出先端の移動を平面曲線の平面に制限するように、使用され得る。ジョイスティックが、1つの平面内の各領域の境界において部品上の接触点を設定するために使用される。次いで、オペレータが部品から離れることができ、次に、CMMが各弦の二等分線上に移動することができ、任意で制御ソフトウェアを使用して、部品の座標系に第2の「軸線固定」を設定することによって二等分線に対する動作を制限する。このように、オペレータは、正確な接触点を中心点に関し設定するように誘導される。これらの3つの接触点から走査に必要なすべての形状が分かる。次いで、ジョイスティックを使用して、または数値を入力することによって、適切なA1およびA2軸線の向きが、設定可能とされる。
【0070】
オペレータが鋭利な頂点を設定する必要がある場合、CMMは、対象領域の各端における2つのジョイスティック点を連結した線に沿って未知の部品の走査を実施することができる。これにより、その領域の中心、ならびに新しい始点および終点に関し、正確な頂点が得られ、隣接する領域の形状が、再計算可能とされる。
【0071】
法線曲面を定義する放物線法を使用することによって、以下の問題を解決することが可能である。
【0072】
放物線の高さと幅との比率が小さい場合、走査の中心の画定は、それほど重要ではない。法線曲面は、不正確である可能性があるが、プローブを予定よりわずかに多く動かさなければならない場合であっても、プローブを法線曲面に沿って動かすことによってプローブの振れは、依然として予測通りに減少または増加されるだろう。
【0073】
高さと幅との比率が大きく、中心が不正確に定義されている場合、プローブを法線に沿って予定の方向に動かし、振れを少なくすると、実際には、振れを増加させることがあり、逆もまた起こり得る。
【0074】
図17では、実線は公称の経路150および法線152を表し、点線は、必要な経路154および法線156を表す。放物線の高さと幅との比率が小さい場合、公称法線と必要法線との間の角度は、小さいということが理解できる。しかし、放物線の高さと幅との比率が大きい場合、公称法線と必要法線との間の角度は、大きい。
【0075】
中心線の位置を知るために必要とされる必要な精度を決定する方法は、次の通りである。
【0076】
公称法線を所定の法線の約20°以内(これは、様々なプローブおよび表面によって異なる)に維持することは重要である。これは、3に対して約1の勾配に対応する。所定の座標の放物線の勾配は、次のように表すことができる。
【0077】
【数2】
【0078】
高さおよび幅は、走査の長さに沿って異なる場合があるが、どちらかの端部にH/W
2対し最も大きい値を使用することが安全である。許容可能な中心誤差Eは、次のように計算することができる。
【0079】
【数3】
【0080】
4mm直径のプローブで測定される、代表的なブレードの末尾端に関し、幅が最小1mmおよび高さが最大4mm必要な場合があり、許容可能な誤差は、次のように概算される。
【0081】
【数4】
【0082】
許容誤差は、プローブ先端のサイズとともに増加する。エッジの中心は、3分の1ミリメートル以上の位置にある必要がある。これを実施する最も単純な方法は、未知の経路の多数の高さにおいて(ブレードがどのようにカーブしているかによって異なる)エッジの軸線に対して垂直に実行することである。次いで、それぞれ明らかになったバンプの中心に対し走査の中心線は、設定可能とされる。
【0083】
それぞれの未知の部品の走査の始点の設定を、ジョイスティックとインタラクティブに、または空隙距離を選択することによって実施し、CADモデルからベクトルを探す。
【0084】
例えば不均一な有理Bスプライン曲線(NURBS)表面など、他の数学的にパラメータ化されたカーブした輪郭を放物線の代わりに使用することもできる。
【0085】
より複雑な部品は、表面をセグメントに分割し、各セグメントの走査を互いにブレンド(合成)することによって、測定することができる。
【0086】
図9の破線で表されるように、3軸システム(すなわち、CMMに取り付けられたプローブ)をブレンドする従来の方法では、開始および終了するプローブ動作ベクトルの接線上にある円弧の追跡を伴う。しかし、軸動作の1つの定数を別の定数とブレンドする形状形成を使用するこの方法は、より多くの軸をブレンドするシステムでは適切ではない。本システムではCMMは3つの軸線を有し、電動式走査ヘッドは2つの軸線を有する。
【0087】
本発明では、
図9に示すように、表面上に通過点70を形成することによって部品をセグメントに分割し、各通過点は関連するブレンドラディウス72(丸み)を有する。機械は従来のセグメントで必要とされる速度および方向を有するブレンドラディウスを入力する。ブレンドラディウスが入力されると、速度および方向の段階的な変更が開始され、ブレンドラディウス(丸み)を出るときに正しい軌道および次の部分に適切な速度を有するようになる。
【0088】
ブレンドラディウスは、放物線または二次方程式を使用して、各軸での加速を滑らかにする。したがって、システムの動作が滑らかになる。
【0089】
直線状部分を合成する目的は、個々の軸線における1つの速度を可能な限り滑らかに別の速度にすることである。各軸線は個別に設定され、スタイラスチップ(または他の対象点)がブレンドラディウスに入るときの軸線の速度を、スタイラスチップ(または他の対象点)がブレンドラディウスから出るときに有する必要のある速度にするために必要な加速を、多項式を使用してモデル化する。この方法によって1つの移動ベクトルから別のベクトルへと複数の軸システム(例えば5軸システムなど)で達成されるべき移行を滑らかにすることができ、軸のタイプおよびその構成は無視することが可能である。N軸システムの一般的な例では、3次多項式が必要である。しかし、物理的な3軸半径を復元するために、重要でない項は縮小することが簡易である。さらに、「直線状」セグメント(すなわち、すべての軸の速度が一定であるセグメント)を互いにブレンドする場合、2次多項式を使用することができる。
【0090】
対象点は、例えば可撓性または剛性のスタイラスを有する、測定プローブのスタイラスチップとすることができる。あるいは、プローブの測定装置の対象点が、プローブごとに位置および向きが固定されている一定長さのベクトルによってオフセットされている場合、非接触プローブを使用することもできる。これはプローブを測定範囲内に維持するために必要である。一定長さのベクトルはプローブごとに位置および向きが固定されている。これにより光学プローブの対物レンズと表面との間が隔離され、この隔離によってプローブは範囲内でプローブの光学軸と位置合わせされるように維持される。
【0091】
図9に示すように、点線74で示す多項式のブレンドは通過点に近接する。しかし、多項式のブレンドを計算する方法によって、各ブレンドの始点および終点で各軸が受ける変化(時間に対する加速の導関数)が低減される。機械が耐えることのできる変化には限界があり、この変化は加速に対して比例的であることから、多項式がブレンドされた移動には、機械が耐えられる変化の範囲内でありながら高加速が可能であるという利点がある。
【0092】
この数学的ブレンド法の別の利点は、移動の成分を仮定軸として扱うことができることである。例えば、スイープスキャンの場合、放物線、幅、高さおよび位相を仮定軸として扱うことができる。これにより、1つの動作から次の動作へと、幅、高さおよび位相を滑らかにブレンドすることができる。同じ原理が機械の動作の他のすべての時変パラメータにもあてはまる。
【0093】
図10〜13は、単一面での様々な形状の(したがって、法線が一定である)走査を示す。
【0094】
図10は(4つの角部に)4つの通過点82、84、86、88を有し、(4辺を形成する)幅および高さがゼロである4つの放物線セグメントを定義する、正方形80の単純な走査を示す。プローブ28は、CMMにとって必要な移動を最小限にするように、公称ではCMMの移動方向の法線上に位置合わせされている。A1軸線が各辺に沿って90°回転すると、プローブ先端30が正方形を追跡し、プローブが各角部で正方形の内角を二等分するようになる。
【0095】
図11はスイープスキャンされる正方形90を示す。この場合、プローブ28は公称ではCMMの移動方向に整列される。4つの通過点92、94、96、98は正方形の角部にある。
【0096】
より多くの通過点が導入され、ブレンドラディウスが十分に大きい場合、クイルは連続的にカーブする経路を追跡する。これにより、
図12に示す環状走査100など円形の部品を走査することも可能である。
【0097】
移動のセグメントを互いにブレンドする方法によって、より複雑な形状であっても測定することができる。
図13は45°オフセットされた正方形の穴112を有する正方形のプレート110を示す。
図13に示すように、CMMがカーブした経路を移動するように、8つの通過点114〜128が大きなブレンドラディウスとともに使用される。走査の幅は最大値と最小値の間を交互に動き、結果として生じるパターンは領域を非常に効率的にカバーしている。
【0098】
走査の幅および通過点の数を変化させることによって、オフセット形状の全体を効率的に測定することができる。
【0099】
上述のブレンドされた走査はすべて単一の平面上で行われ、走査の平面から出る唯一の動作は放物線の特定の高さによるものである。法線曲面が異なる平面にある場合、移動セグメントの連続を指定することも可能である。
【0100】
図14は大きな円筒形またはボス130を測定する方法を示す。電動式走査ヘッドは大きな半径のボスの中心を通り、プローブ28は上下にスイープしながら円筒形の外周部の接線に近接する。プローブは接線から離れるようオフセットして傾けられ、シャンクから外れる問題が起きないようにする。大きい円形の軌道は、大きいブレンドラディウスとともに合成された多数の通過点を使用することによって近似化することができる。スイープが円筒形の回りを移動するようにするために、各セグメントの法線は、円筒形の軸とスイープの公称中心を結んだ線に並行に設定されている。
【0101】
ボスを走査する代替的な方法では、正方形の輪郭を機械の経路として使用することができる。停止時間を減らすために、好ましくは正方形の輪郭の角部がブレンドされる。これには、機械が一定速度で加速ゼロであることから直線状の経路に沿って非常に速く移動することができるという利点がある(速度が傾斜的に上昇または下降する場合の正方形形状の角部を除く)。正方形の輪郭がボスより大きい半径を有する場合、角部でのデータの重複があり、加速が一定でない場合の誤差が低減される。さらに加速度はデータ点の接線上にあり、測量学に反する影響を及ぼすことはない。この方法には、
図14に示す方法より速くボスを走査できるという利点がある。
【0102】
図19は、一連の通過点172を使用して生成された、エーロフォイル170の走査輪郭171を示す。プローブは、プローブと部品の衝突を避けるために、表面の接線に近接するように傾けられている。プローブヘッド174の軌跡はそれに従って決定される。いくつかのそのような走査を、エーロフォイルの長さに沿って実行することができる。
【0103】
図20は、同様に一連の通過点180を使用して生成された、ブリスク176の一部の走査輪郭178を示す。この例では、ブリスクのブレードの表面に対して小さい角度でプローブが長手方向に傾けられ、プローブヘッド182の軌跡が生成されている。上記と同様に、いくつかのそのような走査を、ブリスクの長さに沿って実行することができる。
【0104】
このブレンド方法は表面の測定に限定されるものではなく、自由空間での移動や、多軸の装置の複雑な移動にも適している。
【0105】
上述したように、放物線は、
図15に示すエーロフォイル140など、いくつかの複雑な部品で重要となる高さパラメータを含む。エーロフォイルで測定される重要な成分は先頭および末尾端である。この方法によれば、先頭および末尾端の両方、ならびにエーロフォイルの面も測定することができる。
【0106】
エーロフォイルは、
図6〜8を参照して上記の方法を使用して、異なる領域142、144等に分割される。次いで、各領域が走査される。領域が最上部から最下部まで均一の断面を有する場合、走査は簡易であり、各領域は最上部から最下部へと(逆も可能)、簡単に走査することができる。しかし、領域が最上部および最下部で異なる曲線を有する場合、またはエーロフォイルが傾斜した向きにある場合、走査輪郭は領域の高さに沿って変化する。この場合、領域の最上部、最下部、および場合によっては中間でも、放物線を定義する必要がある。次いで、放物線のパラメータがブレンドされて、領域に沿って単一の走査が可能になる。この場合、中心線(すなわち、走査ヘッドの経路)と法線がブレンドされる。
【0107】
例えば、ブレードディスク(ブリスク)の一部として形成されたエーロフォイルなどの複雑な部品では、アクセスが困難な場合がある。ヘッドの回転中心はスイープの中心上にある必要はなく、スイープスキャンを使用してエーロフォイルの重要な特徴を走査することが可能である。2つの経路が形成され、1つは外側先頭端が走査される中心部をヘッドが通り、1つは内側先頭端が走査されるブリスクの周縁部をヘッドが通る。これにより、プローブが中心部または周縁部でシャンクから外れないようにする。
【0108】
放物線法はまた、複合カーブに使用することもできる。
図16は2次元でカーブするバルブシート146を示す。
【0109】
CMMは、大きいブレンドラディウスとともに通過点を有することによって生成された、カーブした経路を追跡する。走査中にベクトルが法線曲面に沿って作成される場合、バルブシートの中心にバルブシートと同じ半径の基部を有する円錐形がくるように、ヘッドがバルブシートの軌道を通りながら法線曲面が回転する。放物線の高さパラメータを使用して、公称ではカーブしたバルブシートの2つの円錐面を通る経路をプローブに追跡させる。