(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5665334
(24)【登録日】2014年12月19日
(45)【発行日】2015年2月4日
(54)【発明の名称】刷版を供給する方法および装置
(51)【国際特許分類】
B41F 27/12 20060101AFI20150115BHJP
【FI】
B41F27/12 B
【請求項の数】8
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2010-57442(P2010-57442)
(22)【出願日】2010年3月15日
(65)【公開番号】特開2010-214952(P2010-214952A)
(43)【公開日】2010年9月30日
【審査請求日】2012年11月2日
(31)【優先権主張番号】10 2009 013 172.8
(32)【優先日】2009年3月13日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390009232
【氏名又は名称】ハイデルベルガー ドルツクマシーネン アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】Heidelberger Druckmaschinen AG
(74)【代理人】
【識別番号】100061815
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 敏雄
(74)【代理人】
【識別番号】100112793
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳大
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン バルライヒ
(72)【発明者】
【氏名】カルステン ケルム
(72)【発明者】
【氏名】トーマス クリューガー
(72)【発明者】
【氏名】ディルク シェーンマン
(72)【発明者】
【氏名】ギュンター シュテファン
【審査官】
鈴木 友子
(56)【参考文献】
【文献】
特表2005−537957(JP,A)
【文献】
独国特許出願公開第10001319(DE,A1)
【文献】
特開平11−227312(JP,A)
【文献】
特開2000−255031(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0028966(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0282920(US,A1)
【文献】
特表2007−503333(JP,A)
【文献】
独国特許出願公開第19511075(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F 27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
刷版の前縁を版胴の刷版クランプ装置に供給して、印刷機の版胴に刷版を供給する方法において、
刷版前縁のクランプ装置を閉じるまえに、前縁部分で刷版(30)に、版胴軸(39)に関して凸状に延びる湾曲を形成し、刷版(30)の、前縁部分から間隔を置いた後方部分で、刷版(30)に、版胴軸(39)に関して凹状に延びる湾曲を形成することを特徴とする、刷版を供給する方法。
【請求項2】
旋回可能に配置されたガイド装置を用いて印刷機の版胴に刷版を供給する装置において、
ガイド装置(29,34)が、版胴軸(39)に関して凸状に成形された第1のガイド部分(K)を備えており、ガイド装置(29,33)が、凸状に成形された第1のガイド部分(K)から間隔を置いた、版胴軸(39)に関して凹状に成形された第2のガイド部分(L)を備えていることを特徴とする、刷版を供給する装置。
【請求項3】
凸状に成形された第1のガイド部分(K)が、ガイドローラ(32,32.1)を備えている、請求項2記載の装置。
【請求項4】
凹状に形成されたガイド部分(L)が、ガイドローラ(31,31.1,31.2)を備えている、請求項2記載の装置。
【請求項5】
ガイドローラ(31,31.1,31.2;32,32.1)が、それぞれ刷版供給方向に対して横向きに相並んで相互間隔を有して配置されている、請求項3または4記載の装置。
【請求項6】
少なくとも1つのガイドローラ(31;32)が、ガイド部分(K;L)に関して高さ調節可能に配置されている、請求項5記載の装置。
【請求項7】
旋回可能に配置されたガイド装置を用いて印刷機の版胴に刷版を供給する装置において、
ガイド装置(29,34)が、版胴軸(39)に関して凸状に成形された第1のガイド部分(K)を備えており、凸状に成形された第1のガイド部分(K)は、刷版供給方向に対して横向きに相並んで相互間隔を有して配置された複数のガイドローラ(32,32.1)を備えており、各ガイドローラ(32,32.1)と刷版との各接触部分が凸状に成形された第1のガイド部分(K)を規定していることを特徴とする、刷版を供給する装置。
【請求項8】
旋回可能に配置されたガイド装置を用いて印刷機の版胴に刷版を供給する装置において、
ガイド装置(29,33)が、版胴軸(39)に関して凹状に成形された第2のガイド部分(L)を備えており、凹状に成形された第2のガイド部分(L)は、刷版供給方向に対して横向きに相並んで相互間隔を有して配置された複数のガイドローラ(31,31.1,31.2)を備えており、各ガイドローラ(31,31.1,31.2)と刷版との各接触部分が凹状に成形された第2のガイド部分(L)を規定していることを特徴とする、刷版を供給する装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷機の胴、特に版胴に刷版を供給する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
刷版を交換する際、特に新古の刷版を印刷機の版胴に供給する際に、版胴の周に沿った刷版の装着は、印刷品質に関して重要である。
【0003】
版胴表面に刷版を緊締する過程から生じる変形、不均等な張力分布および起伏が生じ得るという問題が生じ、これらは供給プロセスおよびクランププロセスから完全に回避することはできない。したがって得られる見当の程度、特に刷版緊締過程の再現性および多色の重ね刷り印刷の品質が低下する恐れがある。
【0004】
欧州特許出願公開第0570702号明細書によって、刷版の保持装置を備えた印刷機の版胴に刷版を供給する装置が公知であり、保持装置は、旋回可能に印刷部に配置されている。版胴は、印刷部に支承されていて、かつ刷版前縁および刷版後縁を収容するためのクランプレールを備えている。
【0005】
刷版保持装置の下部の旋回運動によって、刷版は、刷版の版幅に対して横向きに延びる湾曲を付与され、湾曲の凹状側は版胴に向けられている。この場合刷版前縁は、版胴の回転軸線に対して平行に方向付けされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0570702号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって本発明の課題は、応力を掛けずに刷版を版胴に取り付けられるように、版胴に刷版を供給する方法および装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題を解決するための本発明の方法によれば、刷版の前縁を版胴の刷版クランプ装置に供給して、印刷機の版胴に刷版を供給する方法において、刷版前縁のクランプ装置を閉じるまえに、前縁部分で刷版に、版胴軸に関して凸状に延びる湾曲を形成する。
【0009】
有利には、刷版の、前縁部分から間隔を置いた後方部分で、刷版に、版胴軸に関して凹状に延びる湾曲を形成する。
【0010】
この課題を解決するための本発明の装置によれば、旋回可能に配置されたガイド装置を用いて印刷機の版胴に刷版を供給する装置において、ガイド装置が、版胴に関して凸状に成形された第1のガイド部分を備えている。
【0011】
有利には、ガイド装置が、凸状に成形された第1のガイド部分ら間隔を置いた、胴軸に関して凹状に成形された第2のガイド部分を備えている。
【0012】
有利には、凸状に成形された第1のガイド部分が、ガイドローラを備えている。
【0013】
有利には、凹状に形成されたガイド部分が、ガイドローラを備えている。
【0014】
有利には、ガイドローラが、刷版供給
方向に対して横向きに相並んで相互間隔を有して配置されている。
【0015】
有利には、少なくとも1つのガイドローラが、ガイド部分に関して高さ調節可能に配置されている。
【発明の効果】
【0016】
特に有利には、刷版前縁は、刷版の供給方向に対して横向きに延びる凸状の湾曲を有して版胴に供給され、ここでは刷版の側縁は版胴の傍に位置しており、これに対して刷版の中央は、依然として版胴から幾分か間隔を置いている。このような構成によって、刷版は、クランプ装置を閉じる際に刷版前縁で、同様に版胴に刷版を引き続き取り付ける際に負荷軽減される。
【0017】
前縁から間隔を置いた部分で刷版に前縁の凸状の湾曲とは逆の凹状の湾曲を付与する手段が特に有利であり、つまり刷版は、この部分でシート搬送方向に対して横向きに凹状に曲げられた湾曲を有しており、したがってシート前縁における凸状の湾曲とは逆向きである。
【0018】
有利な配置構造では、供給
装置は、刷版供給
方向に対して横向きに相並んで相互間隔を有するガイドエレメント、つまり回転可能に支承されたガイドローラを備えており、ガイドローラは、供給平面に関して様々な高さ位置に配置されているので、刷版に、所望の凹状もしくは凸状の湾曲を付与することができる。
【0019】
湾曲の程度は、ガイド平面に関するガイドローラの高さ調節によって調節することができる。
【0020】
本発明の実施の形態を図示して、以下に詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図3】凸状に成形された供給平面を示す概略断面図である。
【
図4】高さ調節可能に配置されたガイドローラと共に凸状に成形された供給平面を示す概略横断面図である。
【
図5】異なる直径を有するガイドローラと共に凹状に成形された供給平面を示す概略断面図である。
【
図6】凹状に成形された供給平面を示す断面図である。
【
図8】一体的に形成された刷版交換装置の別の実施例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
シート7を処理する機械、たとえば印刷機1は、フィーダ2と少なくとも1つの印刷部3,4とデリバリ6とを備えている。シート7は、シートスタック(パイル)8から取り出されて、個別化されるかまたは刺身状にずれ重なった状態でフィーダボード9を介して印刷部3,4に供給される。印刷部3,4は、公知の構成で、それぞれ版胴11を備えている。版胴11は、それぞれフレキシブルな刷版を固定するための装置13,14を備えている。さらに各版胴11に、半自動または全自動式の刷版交換のための装置16,17が対応して配置されている。
【0023】
シートスタック8は、昇降制御可能な紙積台10に載設されている。シート7の取出は、シートスタック8の上面から、いわゆるサッカヘッド18によって行われ、サッカヘッド18は、とりわけシート7を個別化してずれ重なりシート流れを形成するための幾つかの持ち上げサッカ19および送りサッカ21を備えている。さらに上位のシート層をほぐすための吹込装置22およびスタック後ガイドのための接触エレメント23が設けられている。シートスタック8、特にシートスタック8の上位のシート7を揃える、つまり位置調整するために、側方および後方の幾つかのストッパ24が設けられている。
【0024】
刷版交換装置16は、
図2に示した形態では、印刷部3の上流側に配置されていて、かつ印刷機1の機械枠体26または保護部材(図示していない)に定位置に配置されたガイドエレメント27,28を備えた上部25を備えており、ガイドエレメント27,28は、有利にはガイドローラとして形成されている。ガイドエレメント27,28は、刷版30の後方部分を、前位置決めの間、版胴11の外側で支持する。刷版交換装置16の下部29は、待機位置から版胴11に向かう刷版供給位置に旋回可能に支承されている。下部29は、刷版の少なくとも2つのガイドエレメント31,32を備えており、ガイドエレメント31は、支持体33に配置されており、支持体33は、支持体34と枢支式に結合されており、支持体34は、ガイドエレメント32を支持している。
【0025】
ガイドエレメント27,28;31,32は、それぞれたとえば刷版供給方向に対して横向きに相並んで相互間隔を有して配置された、回動可能に支承された幾つかのガイドローラから成っている。
【0026】
刷版交換装置16の上部25のガイドローラ27,28は、刷版30、とりわけ刷版30の後方部分の真っ直ぐな供給平面を規定する。この場合ガイドローラ27,28は、たとえば同じ直径Dを有していて、かつ回転軸36;37上に配置されている。
【0027】
ガイドローラ32は、版胴11に向いた側の支持体34に配置されており、ガイドローラ32は、刷版前縁のガイド装置に関して、つまりガイド装置からみて凹状に湾曲したガイド領域Kを規定しており、この場合ガイドローラ32は、
図3によれば凹状に湾曲した回転軸38上に配置されている。このような構成によって、刷版前縁は、版胴11の回転軸39に関して凸状の撓みを有する。
【0028】
図4に示した形態では、ガイドローラ32は、同じ直径Dを有しているが、異なる回転軸35,40上に配置されている。この場合中央部分に配置されたガイドローラ32は、回転軸35上に配置されており、回転軸35は、版胴11に対して、回転軸40よりも大きな距離を有しており、回転軸40上に、側方部分にガイドローラ32.1が配置されている。
【0029】
支持体33に配置されたガイドローラ31は、刷版30の、ガイドローラ31と接触する部分のガイド装置に関して、凸状に湾曲したガイド部分Lを規定する。
【0030】
このような構成によって、刷版は、シリンダ軸39に関して凹状に成形される。
図5によれば、ガイドローラ31は、共通の回転軸41上に配置されているが、異なる直径を有している。したがって中央に配置されたガイドローラ31.2の直径D1は、縁部分配置されたガイドローラ31の直径Dよりも大きい。
【0031】
図6に示した形態では、ガイドローラ31は、同じ直径Dを有しているが、異なる回転軸42,43上に配置されている。ここでは中央に配置されたガイドローラ31の軸42は、側方に配置されたガイドローラ31.1の軸43の高さ位置の上方の高さ位置に存在する。
【0032】
図7に示した形態では、版胴の胴軸39に関して凹状の刷版30の成形を実現するために、ガイドローラ31は、印刷機1の機械枠体26に定位置に配置されている。版胴軸39に関して刷版を凸状に成形するために設けられたガイドローラ32は、一体的で旋回可能に支承された支持体46の、版胴11に向いた側の端部に配置されている。
【0033】
図8に示した形態では、刷版交換装置16は、一体的で機械枠体26に旋回可能に配置された支持体47を備えている。支持体47の、版胴11から離間する側の端部に、ガイド装置に関して凸状の湾曲および版胴軸39に関して刷版の凹状の湾曲を形成するためのガイドローラ31が配置されている。
【0034】
胴軸39に関して凸状の刷版の湾曲を形成するためのガイドローラ32は、支持体47の、版胴11に向いた側の端部に配置されている。
【0035】
全てまたは個々のガイドローラ31,31.1,32および/または32.1に、ガイド部分K,Lに関する高さ位置を調節するための調節装置48を対応して配置することができ、これによって湾曲の程度を調節することができる。
【符号の説明】
【0036】
1 印刷機、 2 フィーダ、 3 印刷部、 4 印刷部、 6 デリバリ、 7 シート、 8 パイル、 9 フィーダボード、 10 紙積台、 11 版胴、 13 刷版固定装置(前縁)、 14 刷版固定装置(後縁)、 16 刷版交換装置、 18 サッカヘッド、 19 持上サッカ、 21 送りサッカ、 22 吹込装置、 23 接触エレメント、 24 ストッパ、 25 上部(16)、 26 機械枠体、 27 ガイドエレメント、 28 ガイドエレメント、 29 下部(16)、 30 刷版、 31 ガイドエレメント(凸状)、 31.1 ガイドエレメント(凸状)、 32 ガイドエレメント(凹状)、 32.1 ガイドエレメント(凹状)、 33 支持体(31)、 34 支持体(32)、 35 回転軸(32)、 36 回転軸(27)、 37 回転軸(28)、 38 回転軸(32)、 39 回転軸(11)、 40 回転軸(32.1)、 41 回転軸(31)、 42 回転軸(32)、 43 回転軸(31.1)、 46 支持体(32)、 47 支持体(31,32)、 48調節装置、 K ガイド部分(凸状)、 L ガイド部分(凹状)供給平面、 D 直径(31,32)、 D1 直径(31.2)