(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5665370
(24)【登録日】2014年12月19日
(45)【発行日】2015年2月4日
(54)【発明の名称】密着型イメージセンサ
(51)【国際特許分類】
H04N 1/028 20060101AFI20150115BHJP
H04N 1/19 20060101ALI20150115BHJP
G03B 27/54 20060101ALI20150115BHJP
【FI】
H04N1/028 Z
H04N1/04 102
G03B27/54 Z
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2010-123104(P2010-123104)
(22)【出願日】2010年5月28日
(65)【公開番号】特開2011-250297(P2011-250297A)
(43)【公開日】2011年12月8日
【審査請求日】2013年4月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(72)【発明者】
【氏名】池田 正弘
【審査官】
橋爪 正樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭60−218616(JP,A)
【文献】
特開平05−252345(JP,A)
【文献】
特開2008−270885(JP,A)
【文献】
特開平10−084454(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/024− 1/207
G03B27/52 −27/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体の画像を読み取る密着型イメージセンサにおいて、
前記密着型イメージセンサの主走査線上に配置される前記媒体の被読取部で反射された光を受光する受光素子と、前記被読取部の画像を前記受光素子に結像させる結像光学系と、前記被読取部に光を照射するための発光体と、前記結像光学系の側方に配置され前記発光体から射出された光の一部を前記被読取部に向かって反射する反射面と、前記結像光学系を保持する光学系保持部材とを備え、
前記発光体から前記被読取部までの光路長は、前記受光素子から前記被読取部までの光路長よりも長くなっており、
前記密着型イメージセンサの被写界深度と前記密着型イメージセンサの主走査方向とによって規定される平面であって前記受光素子の光軸が通過する平面を仮想平面とし、前記主走査方向から見たときに前記主走査方向と前記密着型イメージセンサの副走査方向とに直交する方向における前記仮想平面の一端と他端とを結んだ線と、前記主走査方向と前記副走査方向とに直交する方向における前記仮想平面の一端と前記発光体の発光点とを結んだ線と、前記主走査方向と前記副走査方向とに直交する方向における前記仮想平面の他端と前記発光体の発光点とを結んだ線とによって規定される領域を仮想領域とし、前記副走査方向において前記受光素子に対して前記発光体が配置される側を第1方向側とすると、
前記主走査方向から見たときに、前記仮想領域よりも前記第1方向側には、前記発光体から射出された光を前記被読取部に向かって反射する反射体が配置されておらず、
前記反射面は、前記光学系保持部材の側面に固定または形成され、
前記結像光学系および前記光学系保持部材は、前記発光体から前記仮想平面に直接照射される光および前記反射面で反射されて前記仮想平面に照射される光を遮らない位置に配置されていることを特徴とする密着型イメージセンサ。
【請求項2】
前記反射面の角度、位置および/または拡散度は、前記被写界深度内の、前記発光体から直接照射される直接光の光量が減少する範囲で、前記反射面で反射されて照射される反射光の光量が増えるように設定されていることを特徴とする請求項1記載の密着型イメージセンサ。
【請求項3】
前記反射面の角度、位置および/または拡散度は、前記直接光と前記反射光との合成光の光量が前記被写界深度内で均一になるように設定されていることを特徴とする請求項2記載の密着型イメージセンサ。
【請求項4】
前記反射面は、前記発光体からの光を正反射する鏡面状に形成されていることを特徴とする請求項2または3記載の密着型イメージセンサ。
【請求項5】
前記発光体および前記反射面は、前記副走査方向における前記結像光学系の両側に配置されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の密着型イメージセンサ。
【請求項6】
前記受光素子が実装される基板を備え、
前記発光体は、光源であり、前記基板に実装されていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の密着型イメージセンサ。
【請求項7】
前記主走査方向に配列される複数の前記光源が前記基板に実装されていることを特徴とする請求項6記載の密着型イメージセンサ。
【請求項8】
前記主走査方向から見たときに、前記仮想領域よりも前記第1方向側には、前記発光体から射出された光を反射しない非反射部材が配置されていることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の密着型イメージセンサ。
【請求項9】
前記結像光学系は、前記主走査方向に複数のロッドレンズが配列されたロッドレンズアレイであることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の密着型イメージセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体の画像を読み取る密着型イメージセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紙等の媒体の画像を読み取るイメージセンサとして、媒体上の画像と等倍の像を受光素子に結像させる密着型イメージセンサが知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の密着型イメージセンサでは、媒体で反射された光を受光する受光素子が筺体の下端側に取り付けられ、媒体に光を照射するLEDアレイが筺体の上端側に取り付けられている。また、筺体の上端側には、媒体で反射された光を受光素子に結像するためのシリンドリカルレンズが配置されており、このシリンドリカルレンズを覆うように開口角規制部材が筺体の上端側に固定されている。開口角規制部材の側面には、LEDアレイからの光を媒体に向かって反射する鏡面部が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−111544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
密着型イメージセンサによって画像が読み取られる媒体の中には、たとえば、通帳のように、糸で綴られた部分が折り曲げられることで形成されたヒンジ部(折曲部)をその中央部分に有する冊子状の媒体もある。この冊子状媒体のヒンジ部の近傍の画像を密着型イメージセンサで読み取る場合、ヒンジ部の近傍にはLED等の光源からの光が照射されるが、ヒンジ部は折れ曲がっているため、ヒンジ部の近傍には影が生じやすい。また、ヒンジ部の折れ曲がり具合等の影響で、媒体が載置されるカバーガラス等の表面からヒンジ部までの距離が変動しやすいため、ヒンジ部の近傍に照射される光量が変動しやすい。したがって、密着型イメージセンサで冊子状媒体のヒンジ部の近傍の画像を読み取る場合には、画像の読取精度が低下しやすくなる。
【0005】
そこで、本発明の課題は、冊子状媒体のヒンジ部の近傍の画像を読み取る場合であっても、画像の読取精度の低下を抑制することが可能な密着型イメージセンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明の密着型イメージセンサは、媒体の画像を読み取る密着型イメージセンサにおいて、密着型イメージセンサの主走査線上に配置される媒体の被読取部で反射された光を受光する受光素子と、被読取部の画像を受光素子に結像させる結像光学系と、被読取部に光を照射するための発光体と、結像光学系の側方に配置され発光体から射出された光の一部を被読取部に向かって反射する反射面と、結像光学系を保持する光学系保持部材とを備え、発光体から被読取部までの光路長は、受光素子から被読取部までの光路長よりも長くなっており、密着型イメージセンサの被写界深度と密着型イメージセンサの主走査方向とによって規定される平面であって受光素子の光軸が通過する平面を仮想平面とし、主走査方向から見たときに
主走査方向と密着型イメージセンサの副走査方向とに直交する方向における仮想平面の一端と他端とを結んだ線と、主走査方向と副走査方向とに直交する方向における仮想平面の一端と発光体の発光点とを結んだ線と、主走査方向と副走査方向とに直交する方向における仮想平面の他端と発光体の発光点とを結んだ線とによって規定される領域を仮想領域とし
、副走査方向において受光素子に対して発光体が配置される側を第1方向側とすると、主走査方向から見たときに、仮想領域よりも第1方向側には、発光体から射出された光を被読取部に向かって反射する反射体が配置されておらず、反射面は、光学系保持部材の側面に固定または形成され、結像光学系および光学系保持部材は、発光体から仮想平面に直接照射される光および反射面で反射されて仮想平面に照射される光を遮らない位置に配置されていることを特徴とする。
【0007】
本発明の密着型イメージセンサでは、媒体の被読取部に光を照射するための発光体から被読取部までの光路長は、受光素子から被読取部までの光路長よりも長くなっている。そのため、発光体から被読取部までの距離を比較的長くすることが可能になり、被読取部に直接照射される光を平行光に近づけることが可能になる。また、本発明では、結像光学系の側方に発光体から射出された光の一部を被読取部に向かって反射する反射面が配置されているため、反射面から被読取部までの距離を比較的長くすることができ、反射面で反射されて被読取部に照射される光を平行光に近づけることが可能になる。したがって、カバーガラスの表面等の媒体が載置される面(媒体載置面)から被読取部までの距離が変動しても被読取部に照射される光量は変動しにくくなる。また、本発明では、結像光学系の側方に反射面が配置されているため、発光体から被読取部に直接照射される光と、反射面を介して被読取部に照射される光とによって、媒体載置面から被読取部までの距離に応じた光量の変動を抑制することが可能になる。
【0008】
また、本発明では、主走査方向から見たときに
主走査方向と密着型イメージセンサの副走査方向とに直交する方向における仮想平面の一端と他端とを結んだ線と、主走査方向と副走査方向とに直交する方向における仮想平面の一端と発光体の発光点とを結んだ線と、主走査方向と副走査方向とに直交する方向における仮想平面の他端と発光体の発光点とを結んだ線とによって規定される領域を仮想領域とし
、副走査方向において受光素子に対して発光体が配置される側を第1方向側とすると、主走査方向から見たときに、仮想領域よりも第1方向側には、発光体から射出された光を被読取部に向かって反射する反射体が配置されていない。そのため、被読取部に斜め方向から照射される光の成分を低減することができ、その結果、主走査方向と副走査方向とに直交する垂直方向から被読取部に照射される光の成分を相対的に増やすことが可能になる。したがって、被読取部が冊子状媒体のヒンジ部の近傍であっても、被読取部に影が生じるのを抑制することが可能になる。
【0009】
このように本発明では、媒体載置面から被読取部までの距離に応じた光量の変動を抑制することが可能になり、かつ、被読取部が冊子状媒体のヒンジ部の近傍であっても、被読取部に影が生じるのを抑制することが可能になる。したがって、本発明では、冊子状媒体のヒンジ部の近傍の画像を読み取る場合であっても、画像の読取精度の低下を抑制することが可能になる。
【0010】
また、本発明では、垂直方向から被読取部に照射される光の成分を相対的に増やすことが可能になるため、被読取部が冊子状媒体のページの折れ曲がった部分であっても、被読取部に影が生じるのを抑制することが可能になる。したがって、本発明では、冊子状媒体のページの折れ曲がった部分の画像を読み取る場合であっても、画像の読取精度の低下を抑制することが可能になる。
また、本発明では、光学系保持部材の側面に反射面が固定または形成されているため、光学系保持部材を利用して、比較的容易に反射面を配置することが可能になる。また、本発明では、結像光学系および光学系保持部材が、発光体から仮想平面に直接照射される光を遮らない位置に配置されているため、光量が急激に低下する不連続点が被写界深度内に生じにくくなる。したがって、被写界深度内において、媒体載置面から被読取部までの距離に応じた光量の変動を効果的に抑制することが可能になる。
【0011】
本発明において、反射面の角度、位置および/または拡散度は、被写界深度内の、発光体から直接照射される直接光の光量が減少する範囲で、反射面で反射されて照射される反射光の光量が増えるように設定されていることが好ましい。このように構成すると、被写界深度内において、媒体載置面から被読取部までの距離に応じた光量の変動を効果的に抑制することが可能になる。また、この場合には、反射面の角度、位置および/または拡散度は、直接光と反射光との合成光の光量が被写界深度内
で均一になるように設定されていることがより好ましい。このように構成すると、被写界深度内において、媒体載置面から被読取部までの距離に応じた光量の変動を防止することが可能になる。
【0012】
本発明において、反射面は、発光体からの光を正反射する鏡面状に形成されていることが好ましい。このように構成すると、発光体から射出された光の反射面での乱反射を防止することができるため、被写界深度内での反射光の光量分布を制御しやすくなる。したがって、被写界深度内の、直接光の光量が減少する範囲で、反射光の光量を適切に増やすことが可能になる。
【0015】
本発明において、発光体および反射面は、副走査方向における結像光学系の両側に配置されていることが好ましい。このように構成すると、副走査方向における両側から被読取部に光を照射することができるため、被読取部に影が生じるのを効果的に抑制することが可能になる。
【0016】
本発明において、密着型イメージセンサは、受光素子が実装される基板を備え、発光体は、光源であり、この基板に実装されていることが好ましい。このように構成すると、光源用の基板が別途設けられている場合と比較して、密着型イメージセンサの構成を簡素化することができる。したがって、密着型イメージセンサを小型化することが可能になる。
【0017】
本発明において、主走査方向に配列される複数の光源が基板に実装されていることが好ましい。このように構成すると、複数の光源から被読取部に光を照射することができるため、被読取部に影が生じるのを効果的に抑制することが可能になる。
【0018】
本発明において、たとえば、
主走査方向から見たときに、仮想領域よりも第1方向側には、発光体から射出された光を反射しない非反射部材が配置されている。この場合には、被読取部に斜め方向から照射される光の成分を非反射部材によって低減することが可能になる。
【0019】
本発明において、結像光学系は、たとえば、主走査方向に複数のロッドレンズが配列されたロッドレンズアレイである。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本発明の密着型イメージセンサでは、冊子状媒体のヒンジ部の画像を読み取る場合であっても、画像の読取精度の低下を抑制することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施の形態にかかる密着型イメージセンサの概略構成を側面から説明するための図である。
【
図2】
図1に示す密着型イメージセンサからカバーガラスおよびガラス支持部材を取り外した状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0023】
(密着型イメージセンサの構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかる密着型イメージセンサ1の概略構成を側面から説明するための図である。
図2は、
図1に示す密着型イメージセンサ1からカバーガラス7およびガラス支持部材8を取り外した状態を示す平面図である。
【0024】
密着型イメージセンサ1(以下、イメージセンサ1とする。)は、媒体2に印刷等された文字や記号、
図形(以下、画像とする。)を読み取るためのものであり、媒体2の搬送機構等を有する画像読取装置に搭載されて使用される。本形態のイメージセンサ1は、ヒンジ部2aを有する通帳等の冊子状の媒体2の画像の読取りに適している。
【0025】
このイメージセンサ1は、
図1、
図2に示すように、イメージセンサ1の主走査線上に配置される媒体2の被読取部2bで反射された光を受光する受光素子3と、被読取部2bの画像を受光素子3に結像させる結像光学系としてのロッドレンズアレイ4と、被読取部2bに光を照射するための発光体としての複数の光源5と、ロッドレンズアレイ4を保持する光学系保持部材としてのレンズ保持部材6と、媒体2が載置されるカバーガラス7と、カバーガラス7を支持する2個のガラス支持部材8とを備えている。カバーガラス7を除くこれらの構成は、図示を省略する筺体の内部に配置されている。
【0026】
なお、
図1、
図2に示すX方向は、イメージセンサ1の主走査方向であり、Y方向は、イメージセンサ1の副走査方向である。また、X方向とY方向とに直交するZ方向は、受光素子3およびロッドレンズアレイ4の光軸方向と略一致する。また、以下の説明では、Z方向のうちのZ1方向側を「上」側、Z2方向側を「下」側とする。
【0027】
受光素子3は、たとえば、CCD(Charge Coupled Device)あるいはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の撮像素子である。この受光素子3は、イメージセンサ1の下面側に配置される基板9に実装されている。具体的には、イメージセンサ1の副走査方向における基板9の略中心位置に受光素子3が実装されている。また、受光素子3は、被読取部2bの下方に配置されている。
【0028】
ロッドレンズアレイ4は、イメージセンサ1の主走査方向に配列される複数のロッドレンズ(図示省略)を備えている。ロッドレンズアレイ4は、レンズ保持部材6の上端側に固定されており、受光素子3の上方に配置されている。
【0029】
光源5は、たとえば、LED(Light Emitting Diode)であり、上方向に向かって放射状の光を射出する。この光源5は、基板9に実装されている。具体的には、
図2に示すように、主走査方向において、複数の光源5が所定の間隔で基板9に実装されている。また、光源5は、
図1、
図2に示すように、副走査方向における受光素子3の両側で基板9に実装されている。すなわち、光源5は、副走査方向において、ロッドレンズアレイ4およびレンズ保持部材6の両側に配置されている。そのため、光源5から被読取部2bまでの光路長は、受光素子3から被読取部2bまでの光路長よりも長くなっている。
【0030】
レンズ保持部材6は、主走査方向に細長い四角柱状に形成されている。具体的には、レンズ保持部材6は、主走査方向から見たときの形状が等脚台形となる四角柱状に形成されており、レンズ保持部材6の副走査方向の両側面は、下側に向かうにしたがって副走査方向の外側へ広がるように傾斜する傾斜面6aとなっている。
【0031】
2個の傾斜面6aのそれぞれには、光源5から射出された光の一部を被読取部2bに向かって反射する反射面11aが形成されている。すなわち、副走査方向におけるロッドレンズアレイ4の両側には、反射面11aが形成されている。本形態では、傾斜面6aに反射シート11が貼り付けられており、反射シート11の表面が反射面11aとなっている。反射シート11は、主走査方向に細長い長方形状に形成されており、
図2に示すように、主走査方向における傾斜面6aのほぼ全域に反射面11aが形成されている。本形態の反射面11aは、光源5からの光を正反射する(すなわち、拡散度の小さな)鏡面状に形成されている。
【0032】
ガラス支持部材8は、光を反射しない材料で形成されている。たとえば、ガラス支持部材8は、黒色等の樹脂材料で形成されている。また、ガラス支持部材8は、主走査方向に細長いブロック状に形成されており、副走査方向における光源5の外側に配置される側面部8aと、光源5の上方に配置される上面部8bとを備えている。上面部8bは、側面部8aの上端から副走査方向の内側へ突出するように形成されている。本形態のガラス支持部材8は、光源5から射出された光を反射しない非反射部材である。
【0033】
2個のガラス支持部材8は、副走査方向における上面部8bの内側端同士の間に所定の隙間が形成されるように、イメージセンサ1の筺体に固定されている。上面部8bの上面には、カバーガラス7が固定されている。カバーガラス7の上面は、媒体2が載置される媒体載置面7aとなっている。また、上面部8bの下面は、下方向へ向かうにしたがって副走査方向の外側へ広がるように傾斜している。
【0034】
本形態では、
図1に示すように、イメージセンサ1の被写界深度Dと主走査方向とによって規定される平面を仮想平面Pとすると、ロッドレンズアレイ4およびレンズ保持部材6は、光源5から仮想平面Pに直接照射される光Lを遮らない位置に配置されている。
【0035】
また、本形態では、仮想平面Pと光源5とによって規定される空間(より具体的には、仮想平面Pと光源5の発光点とによって規定される空間)を仮想空間Sとすると、副走査方向における仮想空間Sの外側にガラス支持部材8が配置されている。
すなわち、図1に示すように、主走査方向から見たときに主走査方向と副走査方向とに直交する方向(すなわち、上下方向)における仮想平面Pの一端である仮想平面Pの上端と仮想平面Pの他端である仮想平面Pの下端とを結んだ線と、仮想平面Pの上端と光源5の発光点とを結んだ線と、仮想平面Pの下端と光源5の発光点とを結んだ線とによって規定される領域を仮想領域とすると、主走査方向から見たときに、副走査方向における仮想領域の外側にガラス支持部材8が配置されている。上述のように、ガラス支持部材8は、反射しない材料で形成されており、光源5から射出された光を反射しない。すなわち、本形態では、副走査方向における仮想空間Sの外側には、光源5から射出された光を被読取部2bに向かって反射する反射体が配置されていない。
すなわち、副走査方向において受光素子3に対して光源5が配置される側を第1方向側とすると、主走査方向から見たときに、仮想領域よりも第1方向側(すなわち、副走査方向における外側)には、光源5から射出された光を被読取部2bに向かって反射する反射体が配置されていない。
【0036】
ここで、光源5から被読取部2bに直接照射される直接光の光量は、媒体載置面7aから遠ざかるにしたがって減少する。たとえば、被写界深度D内において、媒体載置面7aからの距離と直接光の光量との関係は、
図1のグラフ内の曲線C1のようになる。
【0037】
本形態では、反射面11aの角度、位置および拡散度は、被写界深度D内の、直接光の光量が減少する範囲で、反射面11aで反射されて被読取部2bに照射される反射光の光量が増えるように設定されている。すなわち、反射光の光量が媒体載置面7aから遠ざかるにしたがって増加するように、反射面11aの角度、位置および拡散度が設定されている。具体的には、反射面11aの角度、位置および拡散度は、直接光と反射光との合成光の光量が被写界深度D内で略均一になるように設定されている。そのため、たとえば、被写界深度D内において、媒体載置面7aからの距離と反射光の光量との関係は、
図1のグラフ内の曲線C2のようになり、媒体載置面7aからの距離と合成光の光量との関係は、
図1のグラフ内の直線C3のようになる。
【0038】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、光源5から被読取部2bまでの光路長は、受光素子3から被読取部2bまでの光路長よりも長くなっている。そのため、光源5から被読取部2bまでの距離を比較的長くすることができ、光源5から被読取部2bに直接照射される直接光を平行光に近づけることが可能になる。また、本形態では、レンズ保持部材6の傾斜面6aに反射面11aが形成されているため、反射面11aから被読取部2bまでの距離を比較的長くすることができ、反射面11aで反射されて被読取部2bに照射される反射光を平行光に近づけることが可能になる。したがって、本形態では、ヒンジ部2a等の折れ曲がり具合等の影響で、媒体載置面7aから被読取部2bまでの距離が変動しても被読取部2bに照射される光量は変動しにくくなる。
【0039】
また、本形態では、ロッドレンズアレイ4およびレンズ保持部材6は、光源5から仮想平面Pに直接照射される光Lを遮らない位置に配置されているため、光量が急激に低下する不連続点が被写界深度D内に生じにくい。また、本形態では、レンズ保持部材6の傾斜面6aに反射面11aが形成されているため、光源5から被読取部2bに直接照射される直接光と、反射面11aを介して被読取部2bに照射される反射光との合成光によって、媒体載置面7aから被読取部2bまでの距離に応じた光量の変動を抑制することが可能になる。特に本形態では、反射面11aの角度、位置および拡散度は、被写界深度D内の、直接光の光量が減少する範囲で、反射光の光量が増えるように設定されており、合成光の光量が被写界深度D内で略均一になっている。したがって、本形態では、被写界深度D内において、媒体載置面7aから被読取部2bまでの距離に応じた光量の変動を防止することが可能になる。
【0040】
また、本形態では、副走査方向における仮想空間Sの外側にガラス支持部材8が配置されており、副走査方向における仮想空間Sの外側には、光源5から射出された光を被読取部2bに向かって反射する反射体が配置されていない。そのため、本形態では、被読取部2bに斜め方向から照射される光の成分を低減することができ、その結果、下側から被読取部2bに照射される光の成分を相対的に増やすことができる。したがって、本形態では、被読取部2bが冊子状の媒体2のヒンジ部2aの近傍であっても、被読取部2bに影が生じるのを抑制することが可能になる。また、本形態では、被読取部2bが冊子状の媒体2のページの折れ曲がった部分であっても、被読取部2bに影が生じるのを抑制することが可能になる。
【0041】
特に本形態では、光源5および反射面11aは、副走査方向における被読取部2bの両側に配置されており、かつ、複数の光源5が主走査方向に配列されている。そのため、副走査方向における両側から、かつ、複数の光源5から被読取部2bに光を照射することができる。したがって、被読取部2bに影が生じるのを効果的に抑制することが可能になる。
【0042】
このように本形態では、媒体載置面7aから被読取部2bまでの距離に応じた光量の変動を抑制することができ、かつ、被読取部2bが冊子状の媒体2のヒンジ部2aの近傍であっても、被読取部2bに影が生じるのを抑制することが可能になる。したがって、本形態では、冊子状の媒体2のヒンジ部2aの近傍の画像を読み取る場合であっても、画像の読取精度の低下を抑制することが可能になる。また、本形態では、被読取部2bが冊子状の媒体2のページの折れ曲がった部分であっても、被読取部2bに影が生じるのを抑制することが可能になるため、冊子状の媒体2のページの折れ曲がった部分の画像を読み取る場合であっても、画像の読取精度の低下を抑制することが可能になる。
【0043】
本形態では、反射面11aは、光源5からの光を正反射する鏡面状に形成されている。そのため、光源5から射出された光の反射面11aでの乱反射を防止することができる。したがって、被写界深度D内での反射光の光量分布を制御しやすくなり、被写界深度D内の、直接光の光量が減少する範囲で、反射光の光量を適切に増やすことができる。
【0044】
本形態では、光源5は、受光素子3が実装される基板9に実装されている。そのため、光源5用の基板が別途設けられている場合と比較して、イメージセンサ1の構成を簡素化することができ、イメージセンサ1を小型化することが可能になる。
【0045】
本形態では、傾斜面6aに貼り付けられた反射シート11の表面が反射面11aとなっている。そのため、本形態では、レンズ保持部材6を利用して、ロッドレンズアレイ4の側方に比較的容易に反射面11aを配置することができる。
【0046】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0047】
上述した形態では、光源5は、受光素子3が実装される基板9に実装されている。この他にもたとえば、基板9とは別に設けられた基板に光源5が実装されても良い。この場合には、光源5から被読取部2bまでの光路長が、受光素子3から被読取部2bまでの光路長よりも長くなるように、光源5が実装される基板が配置される。たとえば、光源5が実装される基板は、基板9よりも下側に配置される。
【0048】
上述した形態では、光源5はLEDであるが、光源5はLED以外の光源であっても良い。また、上述した形態では、被読取部2bに光を照射するための発光体は光源5であるが、被読取部2bに光を照射するための発光体は、上方向に向かって放射状の光を射出するアパーチャ(開口部)を有する導光体であっても良い。すなわち、本明細書における発光体は、放射状に光を射出する発光部分を有するものであれば良い。この場合には、この導光体のアパーチャと仮想平面Pとによって仮想空間Sが規定される。また、この場合には、この導光体のアパーチャから被読取部2bまでの光路長が、受光素子3から被読取部2bまでの光路長よりも長くなる。
【0049】
上述した形態では、反射面11aは、拡散度の小さな鏡面状に形成されているが、反射面11aは、その拡散度が大きくなるように形成されても良い。たとえば、反射面11aは、白色の平面であっても良い。また、上述した形態では、傾斜面6aに貼り付けられた反射シート11の表面が反射面11aとなっているが、傾斜面6a自体が反射面11aとなるように、レンズ保持部材6が形成されても良い。たとえば、レンズ保持部材6が白色の樹脂材料で形成され、白色の傾斜面6a自体が反射面11aとなっても良い。また、反射シート11が張り付けられる反射シート貼付部材がレンズ保持部材6と別体で形成され、この反射シート貼付部材がレンズ保持部材6の側方に配置されても良い。
【0050】
上述した形態では、ガラス支持部材8は、黒色の樹脂材料等の光を反射しない材料で形成されている。この他にもたとえば、ガラス支持部材8は、光を反射する材料で形成されても良い。この場合には、副走査方向における側面部8aの内側面および上面部8bの下面には、光を反射しないシートが貼り付けられるか、あるいは、光を反射しないコーティングが施される。
【0051】
上述した形態では、副走査方向における仮想空間Sの外側にガラス支持部材8が配置されている。この他にもたとえば、副走査方向における仮想空間Sの外側にガラス支持部材8が配置されなくても良い。この場合であっても、被読取部2bに斜め方向から照射される光の成分を低減することができ、その結果、下側から被読取部2bに照射される光の成分を相対的に増やすことができる。
【0052】
上述した形態では、副走査方向における被読取部2bの両側に、光源5および反射面11aが配置されているが、副走査方向における被読取部2bの一方側に、光源5および反射面11aが配置されても良い。また、上述した形態では、被読取部2bの画像を受光素子3に結像させる結像光学系は、ロッドレンズアレイ4であるが、被読取部2bの画像を受光素子3に結像させる結像光学系は、シリンドリカルレンズ等の他の光学素子でも良い。また、上述した形態では、直接光と反射光との合成光の光量が被写界深度D内で略均一になっているが、被写界深度D内の、直接光の光量が減少する範囲で、反射光の光量が増えるのであれば、合成光の光量は被写界深度D内で略均一にならなくても良い。
【符号の説明】
【0053】
1 イメージセンサ(密着型イメージセンサ)
2 媒体
2b 被読取部
3 受光素子
4 ロッドレンズアレイ(結像光学系)
5 光源(発光体)
6 レンズ保持部材(光学系保持部材)
8 ガラス支持部材(非反射部材)
9 基板
11a 反射面
D 被写界深度
X 主走査方向
Y 副走査方向
P 仮想平面
S 仮想空間