(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5665462
(24)【登録日】2014年12月19日
(45)【発行日】2015年2月4日
(54)【発明の名称】情報処理装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
G06F 1/16 20060101AFI20150115BHJP
G06F 1/18 20060101ALI20150115BHJP
【FI】
G06F1/00 312E
G06F1/00 312J
G06F1/00 320C
【請求項の数】8
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2010-222692(P2010-222692)
(22)【出願日】2010年9月30日
(65)【公開番号】特開2012-79025(P2012-79025A)
(43)【公開日】2012年4月19日
【審査請求日】2013年9月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】311012169
【氏名又は名称】NECパーソナルコンピュータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084250
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】竹田 兼人
(72)【発明者】
【氏名】神尾 俊聡
【審査官】
野村 和史
(56)【参考文献】
【文献】
特開平05−259656(JP,A)
【文献】
特開平06−268724(JP,A)
【文献】
特開2003−018273(JP,A)
【文献】
特開平05−304373(JP,A)
【文献】
実開昭59−151339(JP,U)
【文献】
特開平05−165784(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 1/16
G06F 1/18
G06F 15/02
H04M 1/02
H05K 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスプレイを収容する第1筐体と、キーボードを収容する第2筐体と、前記第1筐体及び前記第2筐体とを回転可能に結合するヒンジ部と、を含んで構成され、
少なくとも前記ヒンジ部に軟質樹脂を用いて、前記第1筐体、前記第2筐体及び前記ヒンジ部が一体成形され、
前記第1筐体に収容されるデバイスと前記第2筐体に収容されるデバイスとを接続するケーブルが前記ヒンジ部の内部に配置されていることを特徴とする情報処理装置であって、
前記ヒンジ部の表側から前記ケーブルに至る複数の第1の凹部と、
前記ヒンジ部の裏側から前記ケーブルに至る複数の第2の凹部と、を有し、
前記第2の凹部は、前記第1の凹部と対向しないようにずれを持たせて配置されていることを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記第1筐体及び前記第2筐体が折り畳まれた閉状態を固定する固定手段を有し、
前記固定手段による前記閉状態の固定を解除したとき、前記ヒンジ部の復元力で、前記第1筐体及び前記第2筐体が開かれた開状態となることを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記第1筐体及び前記第2筐体が開かれた開状態となったときの前記第1筐体と前記第2筐体のなす角度を固定する第1支持部材を、前記第1筐体及び前記第2筐体が折り畳まれた閉状態における前記ヒンジ部の内側の面に設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記第1筐体及び前記第2筐体が開かれた開状態となったときの装置設置状態を固定する第2支持部材を、前記第1筐体及び前記第2筐体が折り畳まれた閉状態における前記ヒンジ部の外側の面に設けたことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記ケーブルの外側に第1樹脂フィルムが接着され、前記第1樹脂フィルムが接着された前記ケーブルの外側を覆う金属繊維シートの内側に第2樹脂フィルムが接着され、該ケーブルの外側が該金属繊維シートに覆われた状態で前記軟質樹脂により一体成型されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記ケーブルは、前記ヒンジ部と同じ軟質樹脂によって外部を覆われていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記第1筐体及び前記第2筐体に硬質樹脂を用い、前記ヒンジ部に軟質樹脂を用いて、前記第1筐体、前記第2筐体及び前記ヒンジ部が一体成形されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項8】
ディスプレイを収容する第1筐体と、キーボードを収容する第2筐体と、前記第1筐体及び前記第2筐体とを回転可能に結合するヒンジ部と、含んで構成される情報処理装置の製造方法であって、
流し込まれる樹脂の接する面に形成された複数の第1の突起部を有する第1金型と、前記第1金型との接合後に前記第1の突起部とずれを持たせた位置に形成された複数の第2の突起部及びそれぞれの該突起部の間に形成された樹脂流し込み口を有する第2金型と、を用い、
前記第1筐体に収容されるデバイスと前記第2筐体に収容されるデバイスとを接続するケーブルを、前記第1金型に形成された突起部及び前記第2金型に形成された突起部と当接するように挟み込んで前記第1金型及び前記第2金型を接合し、前記樹脂流し込み口から樹脂を流し込み、
少なくとも前記ヒンジ部に軟質樹脂を用いて、前記第1筐体、前記第2筐体及び前記ヒンジ部を一体成形することを特徴とする情報処理装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置及びその製造方法に関し、特に、例えば価格競争力を持たせたノートPCにおいて本体部及びディスプレイ部をつなぐヒンジ構造に好ましく適用される技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、一般的なノートPCは、本体部(本体基板、キーボード、タッチパッド等を搭載する部分)とディスプレイ部(液晶ディスプレイ等を搭載する部分)とが分離しており、それぞれを別の筐体に収容している。そして、両筐体を結合するために金属製のヒンジが採用されている。しかし、金属製ヒンジを用いた場合、不良やフィールドでの故障が発生する可能性があり、また製造コストも高いものとなる。
【0003】
また、ユーザにとってのユーザビリティを高めるために、折り畳み型の携帯電話機でも採用されているような筐体の自力オープン機能をノートPCに持たせることが考えられるが、金属製ヒンジを用いた自力オープンは、バネやモータでの駆動が必要となり、上記のように製造コスト、故障発生の可能性等の点で実現は困難である。
【0004】
例えば特許文献1には、組立性の向上及び製造コストの低減を図ることが可能な液晶表示装置が開示されている。当該液晶表示装置では、液晶セルとこれを保持する保持フレームを有し、保持フレームのケース部が肉薄のヒンジ部を介してベース部に連結されており、ケース部、ベース部、ヒンジ部が合成樹脂により一体成形されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−48599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1で開示された発明は、液晶表示装置の液晶セルを保持する保持フレームのヒンジ構造に関するものである。当該保持フレームは、組立後はケース部及びベース部で液晶セルを挟持し、その状態で液晶表示装置の一部(フレーム)をなすものである。すなわち、ケース部とベース部にそれぞれ異なるデバイスを収納して、使用の際にケース部を開閉するというような利用形態は想定されていない。このため、特許文献1による技術をそのままノートPCに適用しても、上述したような問題の解決にはならない。
【0007】
そこで、本発明は、ノートPCにおいて、機械部品をなくして故障の発生機会を低減し、部品点数を減らして製造コストを削減するとともに、筐体の自力オープン機能を持たせることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面である情報処理装置は、ディスプレイを収容する第1筐体と、キーボードを収容する第2筐体と、第1筐体及び第2筐体とを回転可能に結合するヒンジ部と、を含んで構成され、少なくともヒンジ部に軟質樹脂を用いて、第1筐体、第2筐体及びヒンジ部が一体成形され、第1筐体に収容されるデバイスと第2筐体に収容されるデバイスとを接続するケーブルがヒンジ部の内部に配置されている
ことを特徴とする情報処理装置であって、ヒンジ部の表側からケーブルに至る複数の第1の凹部と、ヒンジ部の裏側からケーブルに至る複数の第2の凹部と、を有し、第2の凹部は、第1の凹部と対向しないようにずれを持たせて配置されているものである。
【0009】
また、本発明の情報処理装置は、上記の情報処理装置において、第1筐体及び第2筐体が折り畳まれた閉状態を固定する固定手段を有し、固定手段による閉状態の固定を解除したとき、ヒンジ部の復元力で、第1筐体及び第2筐体が開かれた開状態となるものであってもよい。
【0010】
また、本発明の情報処理装置は、上記の情報処理装置において、第1筐体及び第2筐体が開かれた開状態となったときの第1筐体と第2筐体のなす角度を固定する第1支持部材を、第1筐体及び第2筐体が折り畳まれた閉状態におけるヒンジ部の内側の面に設けたものであってもよい。
【0011】
また、本発明の情報処理装置は、上記の情報処理装置において、第1筐体及び第2筐体が開かれた開状態となったときの装置設置状態を固定する第2支持部材を、第1筐体及び第2筐体が折り畳まれた閉状態におけるヒンジ部の外側の面に設けたものであってもよい。
【0012】
また、本発明の情報処理装置は、
ケーブルの外側に第1樹脂フィルムが接着され、第1樹脂フィルムが接着されたケーブルの外側を覆う金属繊維シートの内側に第2樹脂フィルムが接着され、該ケーブルの外側が該金属繊維シートに覆われた状態で軟質樹脂により一体成型されているものであってもよい。
【0013】
また、本発明の情報処理装置は、
ケーブルが、ヒンジ部と同じ軟質樹脂によって外部を覆われているものであってもよい。
【0014】
また、本発明の情報処理装置は、上記の情報処理装置において、第1筐体及び第2筐体に硬質樹脂を用い、ヒンジ部に軟質樹脂を用いて、第1筐体、第2筐体及びヒンジ部が一体成形されているものであってもよい。
【0015】
本発明の一側面である情報処理装置の製造方法は、ディスプレイを収容する第1筐体と、キーボードを収容する第2筐体と、第1筐体及び第2筐体とを回転可能に結合するヒンジ部と、含んで構成される情報処理装置の製造方法であって、流し込まれる樹脂の接する面に形成された複数の
第1の突起部を有する第1金型と、第1金型との接合後に第1
の突起部
とずれを持たせた位置に形成された複数の
第2の突起部及びそれぞれの該突起部の間に形成された樹脂流し込み口を有する第2金型と、を用い、第1筐体に収容されるデバイスと第2筐体に収容されるデバイスとを接続するケーブルを、第1金型に形成された突起部及び第2金型に形成された突起部と当接するように挟み込んで第1金型及び第2金型を接合し、樹脂流し込み口から樹脂を流し込み、少なくともヒンジ部に軟質樹脂を用いて、第1筐体、第2筐体及びヒンジ部を一体成形するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ノートPCにおいて、機械部品をなくして故障の発生機会を低減し、部品点数を減らして製造コストを削減するとともに、筐体の自力オープン機能を持たせることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態に係るノートPC(開状態)の斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るノートPC(開状態)の側面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るノートPC(閉状態)の斜視図である。
【
図4】本発明の実施形態に係るノートPCの構成図である。
【
図5】本発明の実施形態に係るノートPCに用いられる一体成型ケーブルの断面図である。
【
図6】本発明の実施形態に係るノートPCに用いられる一体成型ケーブルの上面図である。
【
図7】本発明の実施形態に係るノートPCの筐体及びヒンジ部の一体成形方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
近年、LED(Light Emitting Diode)バックライト液晶の採用によって、液晶パネル部品が軽量化され、金属製ヒンジを使用しなくても、ディスプレイ部を十分に支持できる重量になってきた。また、折り曲げに強く(変形しない)、劣化しない(化学物質に対する耐性が強い)軟質樹脂が商品化されている。そして、インターネット需要の広がりで、ネットブックのような安価なパソコンが普及し、さらに安価なものが求められるようになってきている。これらの背景から、ノートPCにおいてPC本体ケース(上部筐体及び下部筐体)と軟質樹脂製のヒンジとを一体成形して、ヒンジの内部にケーブルを配置するという本発明が本願発明者により考案された。
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0020】
図1は本発明の実施形態に係るノートPCの斜視図、
図2は該ノートPCの側面図で、いずれもディスプレイ部を開いた開状態を示したものである。本実施形態のノートPC1は、液晶ディスプレイ3等を収容した上部筐体2とキーボード5やタッチパッド6等を収容した下部筐体4が分離した一般的なノートPCで、上部筐体2と下部筐体4とがヒンジ部7を介して樹脂により一体成形され結合されている。
【0021】
上部筐体2及び下部筐体4は硬質樹脂からなり、ヒンジ部7は折り曲げに強く(変形しない)、劣化しない(化学物質に対する耐性が強い)軟質樹脂からなる。なお、硬質樹脂と軟質樹脂は、ノートPC全体のデザイン性を考慮して、異なる色で構成してもよいし、同じ色でも構成してもよい。
【0022】
上部筐体2における液晶ディスプレイ3の実装面の上方端部(ヒンジ部7と逆の端部)にオープンロック10aが設けられ、下部筐体4におけるキーボード5の実装面の下方端部(ヒンジ部7と逆の端部でタッチパッド6の下方の端部)にオープンロック10bが設けられている。オープンロック10a及び10bは、上部筐体2及び下部筐体4の閉状態を維持し固定する手段である。例えば、オープンロック10aは一方向に引っかかり部分が形成された突起であり、オープンロック10bは挿入された突起の引っかかり部分をスライドにより解除可能な穴で構成してもよい。オープンロック10a側をスライドさせて引っかかりを解除させるような構成でもよい。
【0023】
オープンロック10a及び10bによる閉状態の固定を解除すると、ヒンジ部7の復元力により上部筐体2は自力で開き、
図1に示すような開状態となる。上部筐体2、下部筐体4、ヒンジ部7は、上部筐体2及び下部筐体4が所定の角度をなす開状態で一体成形されているため、閉状態では筐体(特に下部筐体4より重量の軽い上部筐体2)を開く方向にヒンジ部7の復元力が働き、開いた後には開状態で安定する。
【0024】
上部筐体2及び下部筐体4の閉状態を維持し固定する手段としては、上記のようなロック構造を筐体に設けることのほか、筐体の折り畳み時に面ファスナやスナップボタン付きベルトが挙げられる。
図3に示すように、ベルクロやスナップボタン付きベルトを折り畳んだ状態の両筐体に巻き付けて閉状態を固定してもよい。
【0025】
ヒンジ部7は、上部筐体2及び下部筐体4の開状態において、液晶ディスプレイ3やキーボード5と対向する側の面に前面支持リブ8が設けられている。前面支持リブ8は、ヒンジ部7の復元力で上部筐体2が開いた後、上部筐体2の自重で液晶ディスプレイ3の支持角度が大きくならないように、液晶ディスプレイ3の重量に応じて設置される(
図1)。なお、この前面支持リブ8は、いわばヒンジ部7の一部であり、軟質樹脂で一体成形される。
【0026】
また、ヒンジ部7は、上部筐体2及び下部筐体4の開状態において前面支持リブ8の配置面と反対の面に背面支持リブ9が設けられている。背面支持リブ9は、ヒンジ部7の復元力で上部筐体2が開く際の反動で、上部筐体2の開く方向にノートPC1が倒れないように、下部筐体4の設置面の延長として配置される(
図2)。なお、この背面支持リブ9も、前面支持リブ8と同様に、いわばヒンジ部7の一部であり、軟質樹脂で一体成形される。
【0027】
ヒンジ部7は、上部筐体2及び下部筐体4の折り畳み時に、ヒンジ厚みがPC本体厚みと同等になるように、ヒンジ形状が決定される。ヒンジ厚みがPC本体厚みより厚くなれば、閉状態での設置状態が安定せず、またデザイン上も質が低下するためである。
【0028】
図4は、本発明の実施形態に係るノートPCの構成図である。本実施形態では、ノートPC1は、液晶ディスプレイ(液晶モジュール)3、アンテナ一体型無線モジュール11、本体基板12を上部筐体2に収容し、キーボード5、タッチパッド6(不図示)、USBハブ13、USBポート14、充電回路15、バッテリ17を下部筐体4に収容している。そして、上部筐体2に収容された本体基板12と下部筐体4に収容された各種デバイスとをケーブル17により電気的に接続している。ケーブル17は、バッテリ16から電源を本体基板12に供給し、USBハブ13と本体基板12との間で信号を伝送する。
【0029】
図5は本発明の実施形態に係るノートPCに用いられる一体成型ケーブルの断面図、
図6は該ケーブルの上面図で、いずれも該ケーブルの内部構造を示したものである。本実施形態のPC1に用いられる一体成型ケーブル30は、電源供給及び信号伝送を行うためのフラットケーブル17、セロファンフィルム18及び19、金属繊維シート20、軟質樹脂製チューブ21で構成されている。
【0030】
セロファンフィルム18は、フラットケーブル17の外側に巻き付けるように接着されている。セロファンフィルム19は、金属繊維シート20の内側に巻き付けるように接着されている。セロファン19が接着された金属繊維シート20は、セロファンフィルム18が接着されたフラットケーブル17を覆うように配置される。そして、金属繊維シート20で外部を覆われた状態のフラットケーブル17は軟質樹脂製チューブ21で成型されている。軟質樹脂製チューブ21は、ヒンジ部7と同じ軟質樹脂が用いられている。
【0031】
図6に示すように、一体成型ケーブル30は、外側にセロファンフィルム18が接着されたフラットケーブル17((A))、内側にセロファンフィルム19が接着された金属繊維シート20((B))、軟質樹脂製チューブ21((C))に大別される。このような構造となっていることから、(A)/(B)間が二重のセロファンフィルム(セロファンフィルム18及び19)でスライドし、フラットケーブル17の伸縮を吸収してその破損を防止することが可能となっている。
【0032】
図7は、本発明の実施形態に係るノートPCの筐体及びヒンジ部の一体成形方法の一例を説明するための図である。
図7に示すように、金型51及び52を組み合わせて上部筐体2及び下部筐体4を成型するための空間を形成し、金型52及び53を組み合わせてヒンジ部7を成型するための空間を形成する。金型52及び53を組み合わせる際に両金型の間に一体成型ケーブル30を配置する。
【0033】
金型51は、凹型で中央(ヒンジ部7が形成される位置)に凸部を有する形状で、この凸部上に円柱形状の突起である支柱511が形成されている。また、金型53は、凹型(凹部が金型51の凸部に対向)で中央(支柱511の配置位置と対応する位置)に円柱形状の突起である支柱531が形成されている。そして、支柱511及び531は、
図7に示すように、各支柱が並んでいる方向に対してずれを持たせて(支柱511及び531のそれぞれが対向しないように)交互に配置され、金型52及び53の接合部分により両端が挟持された一体成形ケーブル30が撓まないように該ケーブルを上下から挟み込んで支持している。
【0034】
また、金型53には、各支柱531の設置位置の間でかつ支柱511と対向する位置に樹脂の流し込み口(不図示)が設けられている。当該流し込み口から金型51側に向けて流し込まれた樹脂の勢いが、該流し込み口と対向する支柱511で受け止められることで、一体成型ケーブル30の外型(樹脂の流出方向)への張りを防止することができる。また、樹脂の流し込み口を金型53に設けてヒンジ内側から樹脂を流し込むことで、ケーブルの両端(金型52及び53の接合部分で挟持された部分)と中央(支柱511及び531で挟み込まれ支持された部分)の間の部分の生じる撓みを防ぐことができる。
【0035】
このように構成した金型を組み合わせ、一体成型ケーブル30を成型前に金型により挟持して配置し、上記流し込み口から、はじめに硬質樹脂を流し込んで上部筐体2及び下部筐体4を成型し、次いで軟質樹脂を流し込んでヒンジ部7を成型し、上部筐体2及び下部筐体4とヒンジ部7とを一体成型する。
【0036】
流しこんだ樹脂が固まった後に金型を外すと、一体成型された筐体及びヒンジ部が完成することになる。金型を外した後には、支柱531を抜いた部分の穴がヒンジ部7の表面に形成され、一体成型ケーブル30がこの穴を通して露出することになるが、先にも述べたとおり、ヒンジ部7の成型で用いた軟質樹脂と一体成型ケーブル30で用いた軟質樹脂は同一のものであるため目立たず、デザイン上の問題は生じない。
【0037】
図7では、上部筐体2と下部筐体4とのなす角度が180°となっている状態での一体成型示されているが、これはあくまで一例であり、所望の角度で一体成型を行うことが可能である。すなわち、ヒンジ部や筐体の形状や筐体のなす角度に応じて金型を製作すればよく、また樹脂の色についてもデザインを考慮して一体成型を行うことができる。
【0038】
なお、上述する実施形態は、本発明の好適な実施形態であり、上記実施形態のみに本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更を施した形態での実施が可能である。
【符号の説明】
【0039】
1 ノートPC
2 上部筐体
3 液晶ディスプレイ
4 下部筐体
5 キーボード
6 タッチパッド
7 ヒンジ部
8 前面支持リブ
9 背面支持リブ
10a,10b オープンロック
11 アンテナ一体型無線モジュール
12 本体基板
13 USBハブ
14 USBポート
15 充電回路
16 バッテリ
17 フラットケーブル
18,19 セロファンフィルム
20 金属繊維シート
21 軟質樹脂製チューブ
30 一体成型ケーブル
51,52,53 金型
511,531 支柱