(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5665468
(24)【登録日】2014年12月19日
(45)【発行日】2015年2月4日
(54)【発明の名称】吸殻の消火装置
(51)【国際特許分類】
A24F 19/14 20060101AFI20150115BHJP
A63F 7/02 20060101ALI20150115BHJP
【FI】
A24F19/14 A
A63F7/02 355C
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2010-226245(P2010-226245)
(22)【出願日】2010年10月6日
(65)【公開番号】特開2012-75425(P2012-75425A)
(43)【公開日】2012年4月19日
【審査請求日】2013年10月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】302036910
【氏名又は名称】株式会社細山田商事
(74)【代理人】
【識別番号】100083770
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 國男
(74)【代理人】
【識別番号】100148943
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 貴志
(72)【発明者】
【氏名】細山田 良昭
【審査官】
宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−187624(JP,A)
【文献】
特開2009−273402(JP,A)
【文献】
特開2010−22329(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24F 19/14
A63F 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸殻受け用のホッパ(2)の下の消火室(3)に一対の消火ローラ(4)を接触状態として配置し、これらの消火ローラ(4)を駆動モータ(5)により接触位置で下向き方向に回転させ、一対の消火ローラ(4)の間でホッパ(2)から落下する吸殻(6)を挟み込んで、吸殻(6)を消火し、消火済みの吸殻(6)を一対の消火ローラ(4)の下方の回収ボックス(7)に収納する吸殻の消火装置(1)において、消火ローラ(4)を含水可能な弾性材料(8)により構成すると共に、消火室(3)に加湿器(9)の吐き出し口(10)を開口させ、消火ローラ(4)の下に雫センサ(13)を配置し、この雫センサ(13)からの雫検出信号により応動する制御器(12)によって加湿器(9)の動作を制御して、消火ローラ(4)の含水可能な弾性材料(8)に適切な水分量を供給する、ことを特徴とする吸殻の消火装置(1)。
【請求項2】
消火室(3)内で消火ローラ(4)の上に加湿器(9)の吐き出し口(10)に対向する案内板(15)を傾斜させて設ける、ことを特徴とする請求項1記載の吸殻の消火装置(1)。
【請求項3】
ホッパ(2)、消火室(3)および回収ボックス(7)を連通状態とし、ホッパ(2)、消火室(3)および回収ボックス(7)の内部を高い湿度に維持する、ことを特徴とする請求項1または請求項2記載の吸殻の消火装置(1)。
【請求項4】
消火室(3)に配置した湿度センサ(11)の信号を入力とする制御器(12)により加湿器(9)の動作を制御する、ことを特徴とする請求項1、請求項2または請求項3記載の吸殻の消火装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊戯施設や喫煙室などに付設される吸殻の消火装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、一対の消火ローラの間で吸殻を所定の力で挟むと同時に、消火ローラのスポンジ部分に含浸してある水を吸殻にしみ込ませることによって、吸殻を強制的に消火する技術を開示している。その技術において、水は、ポンプによって一対の消火ローラのスポンジ部分に供給される。
【0003】
上記の技術によると、少ない水量の最適な供給制御が難しいため、吸殻は、必要以上に濡れてしまう。この結果、吸殻の回収に際して、吸殻の廃棄とともに多量の汚水の処理が必要となり、取扱も繁雑となっている。また、ポンプや配管が不可欠なため、装置が複雑になるという、欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4279344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の課題は、従来の技術の欠点、すなわち一対の消火ローラに対する水分付与を適切化し、汚水の発生を少なくすするとともに、消火装置を簡略化することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題のもとに、本発明は、水を気化して一対の消火ローラに少しずつ供給することによって、一対の消火ローラに対する水分付与を適切化し、汚水の発生を少なくすると共に、ポンプや配管などを省略できるようにしている。
【0007】
具体的に記載すると、本発明は、吸殻受け用のホッパの下の消火室に一対の消火ローラを接触状態として配置し、これらの消火ローラを駆動モータにより接触位置で下向き方向に回転させ、一対の消火ローラの間でホッパから落下する吸殻を挟み込んで、吸殻を消火し、消火済みの吸殻を一対の消火ローラの下方の回収ボックスに収納する吸殻の消火装置において、消火ローラを含水可能な弾性材料により構成すると共に、消火室に加湿器の吐き出し口を開口させ、消火ローラの下に雫センサを配置し、この雫センサからの雫検出信号により応動する制御器によって加湿器の動作を制御して、消火ローラの含水可能な弾性材料に適切な水分量を供給するようにしている(請求項1)。
【0008】
本発明は、前記吸殻の消火装置において、消火室内で消火ローラの上に加湿器の吐き出し口に対向する案内板を傾斜させて設けている(請求項2)。
【0009】
また、本発明は、前記吸殻の消火装置において、ホッパ、消火室および回収ボックスを連通状態として、ホッパ、消火室および回収ボックスの内部を高い湿度に維持できるようにしている(請求項3)。
【0010】
さらに、本発明は、前記吸殻の消火装置において、消火室に配置した湿度センサの信号を入力とする制御器により加湿器の動作を制御している(請求項4)。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る吸殻の消火装置によると、消火用の水が加湿器によって気体として任意の高さの消火室に供給できるから、揚水ポンプや配管などが不要となって、装置が簡単にでき、また消火室の内部の消火ローラの含水可能な弾性材料に対して消火用の水が一旦気体として少しずつ付与されるから、消火ローラの水分量が直接給水方式のものに比較して急変せず、消火動作が持続的に一定となり、さらに消火ローラの下の雫センサからの雫検出信号を入力したとき、制御器によって加湿器の動作を制御させるから、消火ローラに対する過度な水分供給、必要以上の多量な汚水の発生が未然に防止できる(請求項1)。
【0012】
本発明に係る吸殻の消火装置において、消火室内に案内板が傾斜状態で設けられていると、霧が消火ローラに能率よく吹きつけられ、また案内板に付着した結露水も消火ローラに対し水滴として確実に供給できる(請求項2)。
【0013】
また、本発明に係る吸殻の消火装置において、ホッパ、消火室および回収ボックスの内部が高い湿度に維持されていると、ホッパ、消火室の内部を通過する吸殻や、回収ボックスに収容される吸殻に適度な湿りが付与されるため、吸殻の温度上昇や発火が抑えられる(請求項3)。
【0014】
さらに、本発明に係る吸殻の消火装置において、消火室に配置した湿度センサの信号により加湿器の動作を制御すると、消火ローラに対する過度な水分供給、これにともなう多量の汚水の発生が未然に防止できる(請求項4)。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る吸殻の消火装置の垂直断面図である。
【
図2】本発明に係る吸殻の消火装置の制御装置のブロック線図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明に係る吸殻の消火装置1の一実施形態を示している。吸殻の消火装置1は、遊戯施設、例えばパチンコ機などの設置列の一端に設置され、吸殻受け用のホッパ2の下の消火室3に一対の消火ローラ4を接触状態として配置し、これらの消火ローラ4の一方または両方を駆動モータ5により接触位置で下向き方向に回転させ、一対の消火ローラ4の間でホッパ2から落下する吸殻6を挟み込んで、吸殻6を消火し、消火済みの吸殻6を一対の消火ローラ4の下方の回収ボックス7に収納する。
【0017】
そして、吸殻の消火装置1は、特徴的な構成として、消火ローラ4をスポンジなどの含水可能な弾性材料8により構成されると共に、消火室3に加湿器9の吐き出し口10を開口させ、一方または双方の消火ローラ4の下に雫センサ13を配置し、この雫センサ13からの雫検出信号により応動する制御器12によって加湿器9の動作を制御して、消火ローラ4の含水可能な弾性材料8に適切な水分量を供給するようにしている。
【0018】
ここでの加湿器9は、各種の方式(超音波式・遠心噴霧式・電熱式フイルタ・蒸発式)のもので構成できるが、好ましくは超音波式とする。超音波式の加湿器9では、単位時間当たりの気化容量が多く、電熱式のものと異なり、低い温度での霧化が可能であり、これによって吸殻6に対する消火機能が高められるから有利である。
【0019】
また、消火室3は、その内部の消火ローラ7の上に、加湿器9の吐き出し口10に対向する案内板15を消火ローラ7の上で低く傾斜状態で有している。なお、この案内板15は、ホッパ2の一部で兼用することもできる。図示の例において、吐き出し口10は、案内板15に向き合っているが、水平、下向きなどの適当な方向として一対または片方の消火ローラ7に向けて設けることもできる。
【0020】
図1の実施形態において、ホッパ2、消火室3および回収ボックス7の内部は、必要に応じて連通状態となっており、吐き出し口10などの接続位置に図示しないがラビリンスシールやゴムパッキンなどによって外気から遮断されており、これによってそれらの内部は、消火のために、高い湿度に維持できるようになっている。
【0021】
図2は、加湿器9を制御
する制御器12と、雫センサ13および必要に応じて設けられる湿度センサ11との接続状態を示している。制御器12は、消火室3に配置した湿度センサ11の信号により応動して、加湿器9のオンオフ動作または加湿動作の強弱を制御するほか、消火ローラ4の下に配置した雫センサ13からの出力を入力としており、雫検出信号を入力したとき、加湿器9の動作を強制的に停止するか、または弱運転に切り換える。
【0022】
なお、雫センサ13は、消火ローラ4の長さに対応する平面上で一対の電極を有している。一対の電極の間に水滴が付着し、それらの間が通電状態となると、雫センサ13は、雫検出信号を発生し、制御器12に送る。
【0023】
既述のように、吸殻の消火装置1は、遊戯施設、例えばパチンコ機などの設置列の一端に設置され、膳板16の下の吸殻搬送装置17の搬出口18の下方にホッパ2を位置させている。吸殻搬送装置17は、例えばケーシング20の内部で搬送用のスクリュウ19を内蔵しており、このスクリュウ19を搬送モータ21で回転させることによって膳板16の吸殻受け22から落下した吸殻6を搬出口18の方向に移動させ、搬出口18から下方のホッパ2に投入する。
【0024】
加湿器9は、消火動作に備えて、水タンク14の水23を気化し、吐き出し口10から消火室3の内部に霧として噴射し、消火ローラ4の含水可能な弾性材料8に適切な水分量を供給する。吐き出し口10から噴射された霧は、案内板15の傾きによって消火ローラ4に吹きつけられ、また案内板15に付着した結露水も消火ローラ4に対し水滴として供給される。
【0025】
制御器12は、消火室3の湿度センサ11の信号を入力として、測定した湿度と目標の湿度とを比較し、その差に応じて加湿器9のオンオフ動作または加湿動作の強弱を制御して、消火室3の湿度を目標の湿度に制御している。
【0026】
この状態で駆動モータ5は、一対の消火ローラ4の接触位置で下向き方向に回転させている。このため、吸殻搬送装置14の搬出口からホッパ2に落下した吸殻6は、高い湿度の雰囲気のもとで一対の消火ローラ4の間で挟み込まれて押しつぶされる。この押しつぶし時に、吸殻6は、消火ローラ4の含水可能な弾性材料8から水分の絞り込みによる適切な水分量を付与される。
【0027】
このようにして、吸殻6は、一対の消火ローラ4の間を通過するときに、押しつぶしと水分量の付与によって、完全に消火され、回収ボックス7の内部に落下する。回収ボックス7の内部も高い湿度に保たれているため、回収ボックス7の内の堆積状態の吸殻6は、互いに影響しあって発火点に到達することもなくなる。
【0028】
消火ローラ4の含水可能な弾性材料8が必要以上の水分を含むと、含水可能な弾性材料8は、絞り込み時に、含水可能な弾性材料8の分で水分を保持しきれず、水滴すなわち雫を落下させる。このときの雫の落下によって、消火の過程で汚染水が多く出ることが予測される。
【0029】
そこで、消火ローラ4の下の雫センサ13は、消火ローラ4から落下する雫を検出し、雫検出信号を制御器12に送る。このため、制御器12は、加湿器9を弱運転に切り換えるか、または加湿器9の運転動作を強制的に停止させる。加湿器9の強制的な停止時に、オペレータは、加湿器9の動作を調整し、適切な状態に設定してから、再度運転状態とする。
【0030】
なお、含水可能な弾性材料8は、両方の消火ローラ4にあるが、一方の消火ローラ4にのみあってもよい。また、一対の消火ローラ4の駆動は、
既述のように、両方について行ってもよく、また一方だけ
について行い、他方を従動的な
回転とすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、遊戯場のパチンコ機を対象として開発されたが、その他の遊戯場や、喫煙室などにも設置できる。
【符号の説明】
【0032】
1 吸殻の消火装置
2 ホッパ
3 消火室
4 消火ローラ
5 駆動モータ
6 吸殻
7 回収ボックス
8 含水可能な弾性材料
9 加湿器
10 吐き出し口
11 湿度センサ
12 制御器
13 雫センサ
14 水タンク
15 案内板
16 膳板
17 吸殻搬送装置
18 搬出口
19 スクリュウ
20 ケーシング
21 搬送モータ
22 吸殻受け
23 水