(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1ハウジングおよび前記第2ハウジングのうちの一方が、相手ハウジングと嵌合する方向に突出し該相手ハウジングと嵌合した際に該相手ハウジングに係合して該相手ハウジングの抜けを防止する抜止め鉤部を有し、
前記接触傾動部が、前記抜止め鉤部の、相手ハウジングと嵌合する方向に突出した先端に設けられていることを特徴とする請求項1記載のコネクタ組立体。
前記抜止め鉤部が、前記相手ハウジングと嵌合する方向に突出した先端に、互いに嵌合する途中において相手ハウジングに接触して該相手ハウジングを前記配列方向に傾かせる頂点を有する第1斜面に形成された前記接触傾動部を有し、前記抜止め鉤部がさらに、前記頂点に接触して傾いた相手ハウジングが摺動する第2斜面を有し、前記抜止め鉤部が、該相手ハウジングが該第2斜面を押すことで弾性的に撓み、該相手ハウジングと嵌合したときに該撓みが解除されて該相手ハウジングに係合するものであることを特徴とする請求項2記載のコネクタ組立体。
前記第1コンタクトおよび前記第2コンタクトのうちの一方は前記第1ハウジングと前記第2ハウジングとが互いに嵌合する方向に延びた棒形状を有する棒状コンタクトであり、他方は、該棒状コンタクトを前記配列方向に対し直角な方向から挟む二股形状を有する二股コンタクトであることを特徴とする請求項1から3のうちいずれか1項記載のコネクタ組立体。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に示す低挿入力コネクタは、付加部材であるスライダを要し、部品点数が増大している。また、特許文献1に示す低挿入力コネクタは、スライダを設けるための空間や、スライダが移動時に占有する空間等、嵌合に要する空間が増大する。
【0008】
また、低挿入力とするため、棒状に延びた複数のコンタクトの先端の高さを不揃いとすることも考えられるが、この場合、コンタクトの先端の高さを不揃いとするための冗長なスペースが必要となる。
【0009】
本発明は上記問題点を解決し、部品数やスペースを増大することなく、嵌合に必要な力が低減されたコネクタ組立体を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成する本発明のコネクタ組立体は、
第1ハウジングと、所定の配列方向に並びこの第1ハウジングに保持された複数の第1コンタクトとを有する第1コネクタ、および
上記第1ハウジングに嵌合する第2ハウジングと、所定の配列方向に並んでこの第2ハウジングに保持され、この第1ハウジングとこの第2ハウジングとが嵌合することにより上記複数の第1コンタクトにそれぞれ接触する複数の第2コンタクトとを有する第2コネクタを備えたコネクタ組立体であって、
上記第1ハウジングおよび上記第2ハウジングのうちの少なくとも一方が、互いに嵌合する途中において相手ハウジングに接触してこの相手ハウジングを相対的に上記配列方向に傾かせる接触傾動部を有することを特徴とする。
【0011】
本発明のコネクタ組立体によれば、第1ハウジングとこの第2ハウジングとが嵌合する途中において、一方の接触傾動部が相手ハウジングに接触し、この相手ハウジングがコンタクトが配列された配列方向に傾く。第1ハウジングと第2ハウジングとが相対的に傾いた姿勢で嵌合することにより、複数の第1コンタクトと複数の第2コンタクトとが、すべて同時ではなく、第1ハウジングと第2ハウジングとが移動するのに伴い、一組ずつ順次接触していく。このため、第1コネクタと第2コネクタとの嵌合時に必要な力のピークが分散する。したがって、特別な部材やスペースを確保することなしに、第1ハウジングとこの第2ハウジングとの嵌合に必要とされる力が低減される。
【0012】
ここで、上記本発明のコネクタ組立体において、上記第1ハウジングおよび上記第2ハウジングのうちの一方が、相手ハウジングと嵌合する方向に突出しこの相手ハウジングと嵌合する際にこの相手ハウジングに係合してこの相手ハウジングの抜けを防止する抜止め鉤部を有し、
上記接触傾動部が、上記抜止め鉤部の、相手ハウジングと嵌合する方向に突出した先端に設けられていることが好ましい。
【0013】
抜止め鉤部の先端に接触傾動部が設けられることで、接触傾動部の機能を、専用の別部材を作成・取付けすることなく容易に備えることが可能となる。
【0014】
また、上記本発明のコネクタ組立体において、上記抜止め鉤部が、上記相手ハウジングと嵌合する方向に突出した先端に、互いに嵌合する途中において相手ハウジングに接触してこの相手ハウジングを上記配列方向に傾かせる頂点を有する第1斜面に形成された上記接触傾動部を有し、上記抜止め鉤部がさらに、上記頂点に接触して傾いた相手ハウジングが摺動する第2斜面を有し、上記抜止め鉤部が、この相手ハウジングがこの第2斜面を押すことで弾性的に撓み、この相手ハウジングと嵌合するときにこの撓みが解除されてこの相手ハウジングに係合するものであることが好ましい。
【0015】
第1ハウジングとこの第2ハウジングとが嵌合する途中において、接触傾動部に接触して傾いた後、この接触傾動部を有する抜止め鉤部が、弾性的に撓むことによって、第1ハウジングと第2ハウジングとの、嵌合のための移動が、接触傾動部に妨げられることなく進む。
【0016】
また、上記本発明のコネクタ組立体において、上記第1コンタクトおよび上記第2コンタクトのうちの一方は上記第1ハウジングと上記第2ハウジングとが互いに嵌合する方向に延びた棒形状を有する棒状コンタクトであり、他方は、この棒状コンタクトを上記配列方向に対し直角な方向から挟む二股形状を有する二股コンタクトであることが好ましい。
【0017】
第1ハウジングとこの第2ハウジングとは嵌合する途中において相対的に傾くため、第1ハウジングに保持された第1コンタクトと、第2ハウジングに保持された第1コンタクトとは傾いた姿勢で接触する。この傾きは、二股コンタクトが棒状コンタクトを挟む方向とは直角となる。このため、棒状コンタクトによる二股コンタクトの抉りによる変形や破損が抑えられ、一方の棒状コンタクトが他方の二股コンタクトによって挟まれ確実に接触する。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明によれば、部品数やスペースを増大することなく、嵌合に必要な力が低減されたコネクタ組立体が実現する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0021】
図1は、本発明のコネクタ組立体の第1実施形態の外観を示す斜視図である。
【0022】
図1に示すコネクタ組立体Aは、互いに嵌合する第1コネクタ1および第2コネクタ2を備えている。第1コネクタ1は、ヘッダ型コネクタであり、図示しないプリント配線基板にはんだ接続されて使用される。第2コネクタ2は、電線Cに接続されており、第1コネクタ1に挿入されて嵌合するレセプタクル型コネクタである。コネクタ組立体Aは、図示しないプリント配線基板の導体と、電線Cとを電気的に接続するためのものである。以降、ヘッダ型コネクタである第1コネクタ1を単にヘッダ1と称し、レセプタクル型コネクタである第2コネクタ2を単にレセプタクル2と称する。
【0023】
[ヘッダ(第1コネクタ)]
図2は、
図1に示すヘッダの一部を切断して示す斜視図である。
図1および
図2の双方を参照しながらヘッダ1について説明する。
【0024】
ヘッダ1は、ハウジング11と、複数のコンタクト12と、抜止め鉤部13と、第1接触傾動部14とを備えている。
【0025】
ヘッダ1のハウジング11は、レセプタクル2のハウジング21が挿入される挿入凹部11aを有する。ここで、ヘッダ1およびレセプタクル2が互いに嵌合する方向、つまりレセプタクル2がヘッダ1に挿入される方向を挿入方向Zと称する。
【0026】
ハウジング11には、レセプタクル2の挿入位置を案内する案内溝111、レセプタクル2の逆向き挿入を防ぐ逆挿入防止突起112、および、逆挿入防止溝113が設けられている。案内溝111は挿入方向Zに延びており、挿入凹部11a側に開口している。
【0027】
コンタクト12は、断面矩形の棒形状を有する金属製の棒状(post)コンタクトであり、ハウジング11に保持されている。なお、コンタクト12は、断面円形のポストコンタクト又は平坦なタブコンタクトであってもよい。本実施形態のヘッダ1およびレセプタクル2は、50極タイプのものであり、ヘッダ1には、50個のコンタクト12が備えられている。コンタクト12は、挿入凹部11aの底11b(
図2参照)に、2列に並んで配置されており、挿入凹部11aの底11bから挿入凹部11a内に挿入方向Zに突出している。50個のコンタクト12の挿入凹部11a内における先端は、挿入方向Zにおける高さがすべて揃っている。ここで、コンタクト12が各列で並んだ方向、すなわちハウジング11の長手方向を配列方向Xと称し、配列方向Xおよび挿入方向Zの双方と垂直な方向を厚み方向Yと称する。ハウジング11の外形は、配列方向Xに長く延びた直方体状である。なお、上記の配列方向X、厚み方向Y、および挿入方向Zは、ヘッダ1に挿入される姿勢におけるレセプタクル2についても同様に適用される。
【0028】
図2に示すように、コンタクト12は、2列に並び、コンタクト12の挿入凹部11aの底11bを貫いて配置されている。コンタクト12の、挿入凹部11aと反対側(
図2の下方)に突出した部分は、図示しない回路基板のスルーホールに挿入され、半田接続される。この突出した部分は、列に並んだコンタクト12の1つ置きに、厚み方向Yにずれるように折り曲げられている。このことによって、回路基板上の導体パターンの接近が回避される。
【0029】
抜止め鉤部13および第1接触傾動部14は、ハウジング11とともに樹脂材料で一体成型により形成された部分である。抜止め鉤部13は、挿入凹部11aを画定する側壁部分のうち厚み方向Yの一方に配置された、配列方向Xおよび挿入方向Zの双方に広がった矩形板状の部分である。抜止め鉤部13は、挿入凹部11aの底11b近傍の固定部13aを介してハウジング11と繋がっており、他の部分ではハウジング11から離れている。つまり、抜止め鉤部13は、挿入凹部11aの底11b近傍でハウジング11に固定され、挿入凹部11aの底11b近傍から挿入方向Zに突出した弾性片である。挿入凹部11aの底11bとは反対側の抜止め鉤部13の先端部分が、厚み方向Yに弾性変形する。なお、ハウジング11には、抜止め鉤部13を挟んで、挿入凹部11aの反対側の位置に、曲げ止め部114が設けられている。曲げ止め部114はハウジング11に固定されており、抜止め鉤部13との間に隙間をあけて配置されている。曲げ止め部114は、抜止め鉤部13が外力により破損する程度まで曲がるのを止めるアンチオーバーストレスとして作用する。
【0030】
抜止め鉤部13の、挿入凹部11aの底11bから延びた先端部分には、レセプタクル2のハウジング21に引掛かり、このハウジング21の、ヘッダ1からの抜けを止める鉤(係止部)131が形成されている。
【0031】
第1接触傾動部14は、抜止め鉤部13の先端に設けられており、板状の抜止め鉤部13の先端部分が、斜めに切られたような形状を有している。詳細には、第1接触傾動部14は、峰状の頂点143を挟んで、配列方向Xの両側に広がる第1斜面141,142を有している。すなわち、第1接触傾動部14を有する板状の抜止め鉤部13の先端の縁は、配列方向X中央に設けられた頂点143の部分が挿入方向Zにおいて最も高く、頂点143の配列方向X両側が頂点143から離れるに従って低くなった山形に形成されている。
【0032】
また、抜止め鉤部13の先端部分に設けられた第1斜面141,142のそれぞれの、挿入凹部11a側の縁の部分には、挿入凹部11aの底11bに向かって傾斜した第2斜面133,134が設けられている。第2斜面133,134は、三角形状であり、その1つの頂点が、第1斜面141,142の間の頂点143に接している。第2斜面133,134は、厚み方向Yに沿った幅が、頂点143に接した部分から配列方向Xに離れるに従い、広がっている。
【0033】
[レセプタクル(第2コネクタ)]
図3は、
図1に示すレセプタクルを180°回転させた状態で示す斜視図であり、
図4は、
図1に示すレセプタクルの一部を切断して示す斜視図である。
図1〜4を参照しながらレセプタクル2について説明する。
【0034】
図1〜4に示すレセプタクル2は、ハウジング21と、複数のコンタクト22と、第2接触傾動部24とを備えている。
【0035】
レセプタクル2のハウジング21は、ヘッダ1のハウジング11に設けられた挿入凹部11aに挿入される部材であり、配列方向Xに長い直方体状の外形を有している。レセプタクル2のハウジング21の、ヘッダ1への挿入時にヘッダ1に向く嵌合面21a(
図3参照)には、挿入時にヘッダ1のコンタクト12(
図2参照)が挿入される挿入孔21hが、配列方向Xに延びた列に並んで設けられている。挿入孔21hは2列に配置されている。
【0036】
ハウジング21の配列方向Xにおける両端の側面21c、21eには、レセプタクル2の挿入操作時にハウジング21を手指で挟んで掴むための挟持突起215が設けられている。また、この側面21e,21cには、レセプタクル2の逆向き挿入を防ぐ逆挿入防止溝212(
図1参照)、および逆挿入防止突起213(
図3参照)が設けられている。また、別の側面21b,21dには、ヘッダ1への挿入位置を案内する案内突起211が設けられている。
【0037】
図3に示す第2接触傾動部24は、ハウジング21とともに一体成型により形成された部分である。第2接触傾動部24は、ハウジング21の側面21b〜21eのうち、ヘッダ1への挿入時にヘッダ1の第1接触傾動部14に対応する側面、すなわち、配列方向Xおよび挿入方向Zの双方に沿って広がる側面21bから、厚み方向Yに突出して設けられている。第2接触傾動部24は、より詳細には、側面21bのうち、嵌合面21aの反対面である上面21fの縁近傍に設けられた、配列方向Xに長い突条である。ただし、第2接触傾動部24は、ヘッダ1への挿入時にヘッダ1に向く向きに膨らんだ山形に形成されている。より具体的には、側面21bから突出した第2接触傾動部24の、ヘッダ1への挿入時にヘッダ1に向く側壁には、峰状の頂点243を挟んで、配列方向Xの両側に広がる第1斜面241,242を有している。すなわち、第2接触傾動部24の、ヘッダ1への挿入時にヘッダ1に向く面は、配列方向Xの中央に設けられた頂点243の部分が、挿入方向Zの嵌合面21aに向かって最も高い。そして、頂点243の配列方向Xの両側は、頂点243の部分から離れるに従って低くなった山形に形成されている。第1斜面241,242のそれぞれの、厚み方向Y側の縁の部分には、挿入方向Zに傾斜した第2斜面243,244が設けられている。
【0038】
なお、第2接触傾動部24が設けられたハウジング21の側面21bとは反対側の側面21d(
図1参照)にも、
図3に示す第2接触傾動部24と同様の突条25が設けられている。この突条25は、本実施形態では第2接触傾動部としては機能しないが、ヘッダ1に2個の第1接触傾動部14を設けた場合には、第2接触傾動部として機能することができる。
【0039】
レセプタクル2のコンタクト22は、ハウジング21内の、挿入孔21hに対応する位置に保持されている。すなわち、コンタクト22は、2列に並んで配置されており、挿入孔21hから挿入方向Zに挿入されてくるヘッダ1のコンタクト12が接触する位置に配置されている。
【0040】
図5は、
図1に示すレセプタクルの一部を切断し、拡大して示す拡大斜視図である。また、
図6は、レセプタクルのコンタクトを示す斜視図である。
【0041】
図5および
図6に示すコンタクト22は、導電性金属板を打抜き加工および曲げ加工することにより形成された部材である。コンタクト22は、ハウジング21に固定される固定部221、ヘッダ1(
図1参照)のコンタクト12が接触する接触部222、および電線を保持する電線接続部223を有する。電線接続部223の先端には圧接スロット223aが設けられており、電線Cを圧接スロット223a内に押し込む(圧接する)ことによって、電線Cの被覆(図示しない)が切れ、電線接続部223が心線と接触する。なお、コンタクト22の電線接続部の構造としては、電線Cの心線と半田接続される構造や、加締め接続される構造のものも採用可能である。
【0042】
接触部222は、固定部221から二股状に延びた形状を有している。
【0043】
[ヘッダおよびレセプタクルの嵌合動作]
続いて、ヘッダ1およびレセプタクル2の嵌合動作について説明する。
【0045】
図7〜
図12および
図13〜
図17には、ヘッダ1およびレセプタクル2の嵌合の各過程が順に示されている。
【0046】
[第1の過程]
図7および
図13には、嵌合における第1の過程が示されている。
【0047】
本実施形態のヘッダ1とレセプタクル2とを嵌合させる状況では、ヘッダ1が図示しない回路基板に半田接続されており、一方のレセプタクル2には電線Cが接続されている。このような状態で、ヘッダ1とレセプタクル2とを嵌合させる場合、作業者は、レセプタクル2の、配列方向X両端に設けられた挟持突起215を手指で挟んで掴む(挟持する)。作業者は、挟持したレセプタクル2の嵌合面21a(
図3参照)を、ヘッダ1に向けて挿入方向Zに移動させ、ヘッダ1に挿入する。
【0048】
図8には、
図7に示すレセプタクルが、ヘッダに向かって移動した状態を示す図である。
【0049】
レセプタクル2がヘッダ1に向かって進むと、レセプタクル2のハウジング21は、ヘッダ1の挿入凹部11a(
図1参照)に挿入される。このとき、レセプタクル2のハウジング21に設けられた案内突起211が、ヘッダ1のハウジング11に設けられた案内溝111に入り込む。案内突起211が案内溝111に入り込むことによって、ヘッダ1のハウジング11に対するレセプタクル2のハウジング21の位置決めが行われるとともに、レセプタクル2の挿入が案内される。
【0050】
また、レセプタクル2がヘッダ1に挿入されるとき、レセプタクル2の逆挿入防止突起213がヘッダ1の逆挿入防止溝113に入り込むとともに、
図1に示すヘッダ1の逆挿入防止突起112がレセプタクル2の逆挿入防止溝212に入り込む。このことによって、レセプタクル2のヘッダ1への挿入が継続される。仮に、レセプタクル2の姿勢が逆であると、レセプタクル2の逆挿入防止突起213がヘッダ1の逆挿入防止突起112と干渉して挿入が妨げられる。したがって、レセプタクル2の誤挿入が防止される。
【0051】
[第2の過程]
図9および
図14には、嵌合における第2の過程が示されている。
【0052】
レセプタクル2がヘッダ1に向かって挿入される途中であって、レセプタクル2のコンタクト22がヘッダ1のコンタクト12と接触する前の位置で、レセプタクル2の第2接触傾動部24が、ヘッダ1の第1接触傾動部14に接触する。より詳細には、レセプタクル2の第2接触傾動部24は、ヘッダ1の側に向かって膨らんだ山形に形成されており、ヘッダ1の第1接触傾動部14は、レセプタクル2の側に向かって膨らんだ山形に形成されている。この第2接触傾動部24における山形の頂点243が、第1接触傾動部14における山形の頂点143に当たる。
【0053】
レセプタクル2は、配列方向X両側の挟持突起215の部分が手指で挟まれることで挟持されている。このため、
図9および
図14に示す状態から、レセプタクル2に対しヘッダ1に向かう力がさらにかけられると、レセプタクル2は、互いに当たった第2接触傾動部24および第1接触傾動部14の抵抗によって、ヘッダ1に対し配列方向Xに傾く。より具体的には、レセプタクル2は、互いに当たった第2接触傾動部24の頂点243および第1接触傾動部14の頂点143を支点として、配列方向Xにおける一方の端が、他方の端よりもヘッダ1により深く挿入される姿勢に傾く。なお、
図8で説明したように、レセプタクル2の挿入を案内するため、レセプタクル2の案内突起211が、ヘッダ1の案内溝111に入り込んでいるが、案内突起211と案内溝111とは、レセプタクル2の傾きを許容する程度の寸法に形成されている。
【0054】
[第3の過程]
図10および
図15には、嵌合における第3の過程が示されている。
図10および
図15には、レセプタクル2が、ヘッダ1に対し配列方向Xに傾いた状態が示されている。
図10および
図15では、右側部分が左側部分より深く挿入された例が示されている。
【0055】
レセプタクル2が、ヘッダ1に対し配列方向Xに傾き、右側部分が左側部分より深くヘッダ1に挿入されると、レセプタクル2が有する複数のコンタクト22とヘッダ1が有する複数のコンタクト12のうちの一部が接触する。より詳細には、ヘッダ1のコンタクト12は、配列方向Xにおいてレセプタクル2が、より深く挿入された右側の端に配置されたコンタクト12から順に、レセプタクル2の挿入孔21h(
図3参照)に挿入され、レセプタクル2のコンタクト22と接触する。つまり、レセプタクル2のコンタクト22とヘッダ1のコンタクト12のうち、配列方向Xにおいてレセプタクル2が、ヘッダ1により深く挿入された右側の端に配置されたコンタクト12,22同士から、接触を開始する。そして、レセプタクル2が、ヘッダ1に向かって挿入方向Zに移動するのに伴い、複数組をなすコンタクト12,22は、右側の端に配置されたもの同士から反対の端に配置されたもの同士まで順次接触していく。各コンタクト12,22同士の接触は、具体的には、レセプタクル2のコンタクト22(
図5参照)が有する二股状の接触部222の間に、ヘッダ1が有する棒状のコンタクト12(
図2参照)が挿入されることで生ずる。接触部222は、弾性変形し、その反力で接触を確実とするようにコンタクト12を挟む。
【0056】
ヘッダ1およびレセプタクル2には、50組のコンタクト12,22が設けられている。仮に、これらコンタクト12,22同士の接続が同時に生ずると、レセプタクル2には、1組のコンタクト12,22同士の接続に要する力の50倍の挿入力が加えられる必要がある。これに対し、本実施形態では、レセプタクル2が、互いに当たった第2接触傾動部24および第1接触傾動部14の抵抗によって、ヘッダ1に対し配列方向Xに傾く。このため、50組のコンタクト12,22が、レセプタクル2の移動に伴い一組ずつ順次接触する。したがって、レセプタクル2の挿入に必要な挿入力のピークが分散するため、挿入に必要とされる力が低減される。
【0057】
レセプタクル2が、ヘッダ1に対しさらに傾くと、第2接触傾動部24の頂点243が、第1接触傾動部14の頂点143からずれて、頂点143に隣接した第1斜面141又は142に乗る。また、第1接触傾動部14の頂点143は、第2接触傾動部24の頂点243に隣接した第1斜面242に乗る。また、複数のコンタクト12,22同士が接触を開始すると、レセプタクル2の挿入孔21h(
図3参照)を貫通するヘッダ1のコンタクト12によって、ヘッダ1とレセプタクル2との配列方向Xにおける位置が合わせられようとする。このことも、第2接触傾動部24の頂点243が、第1接触傾動部14の頂点143からずれる原因となる。なお、ここでは、第2接触傾動部24の頂点243および第1接触傾動部14の頂点143の双方が相手コネクタに接した場合を説明するが、レセプタクル2の傾きによっては、いずれか一方が接する場合もある。
【0058】
さらに、レセプタクル2の傾きが進むと、第2接触傾動部24の頂点243が、第1接触傾動部14の第1斜面141から、さらに、挿入方向Zに傾いた第2斜面133(
図1参照)の上に載る。また、第1接触傾動部14の頂点143は、第2接触傾動部24の第1斜面241から、さらに、挿入方向Zに傾いた第2斜面243の上に載る。第1接触傾動部14は、板状に突出した抜止め鉤部13の先端部分に設けられている。第2接触傾動部24の頂点243が、第2斜面133(
図1参照)に対し挿入方向Zの力を加えると、抜止め鉤部13は、弾性変形して厚み方向Yに撓む。抜止め鉤部13は、第1接触傾動部14の頂点143が第2接触傾動部24の第2斜面243に対し挿入方向Zの力を加えることでも厚み方向Yに撓む。
【0059】
抜止め鉤部13が厚み方向Yに撓むと、第1接触傾動部14と第2接触傾動部24とが互いに当たった状態が解除され、レセプタクル2が傾いたままで、ヘッダ1に向かって移動する。この移動に伴って、レセプタクル2のコンタクト22とヘッダ1のコンタクト12とが順次接触する。
【0060】
[第4の過程]
図11および
図16には、嵌合における第4の過程が示されている。
【0061】
図11および
図16に示す状態では、抜止め鉤部13が厚み方向Yに撓むことによって、第1接触傾動部14と第2接触傾動部24との当接状態(
図10参照)が解除されている。レセプタクル2は、傾いたままでヘッダ1に挿入されている。
図16に示すように、50組のコンタクト12,22のうち、図の右の端に配置されたコンタクト12,22の組は、完全に接触した状態であり、図の左の端に配置されたコンタクト12,22の組は接触しようとしている状態である。
【0062】
[第5の過程]
図12および
図17には、嵌合における第5の過程が示されている。
【0063】
レセプタクル2がヘッダ1に向かってさらに進むと、レセプタクル2の嵌合面21aが、ヘッダ1の挿入凹部11a(
図1参照)の底11bに当たるので、レセプタクル2の傾きが元に戻る。この結果、レセプタクル2がヘッダ1に完全に挿入される。また、レセプタクル2がヘッダ1に完全に挿入されると、抜止め鉤部13は、弾性力によって矢印D方向に撓みが戻り、ヘッダ1の抜止め鉤部13に設けられた鉤131が、レセプタクル2のハウジング21の上面21fの縁に掛かる。したがって、レセプタクル2がヘッダ1に完全に挿入された後は、レセプタクル2または電線Cに外力が加わっても、ヘッダ1からレセプタクル2が抜けない。なお、作業者がヘッダ1からレセプタクル2を取り外す場合には、抜止め鉤部13を外側に押し退ける。これによって、鉤131が、レセプタクル2のハウジング21から外れる。
【0064】
図18は、
図12および
図17に示す状態における、ヘッダおよびレセプタクルの一部を切断して示す斜視図である。
【0065】
レセプタクル2がヘッダ1に完全に挿入された状態では、すべてのコンタクト12,22の組は、
図18に示すように完全に接触した状態となる。
【0066】
接触部222は、ヘッダ1の棒状のコンタクト12を、配列方向Xと直角な厚み方向Yから挟んでいる。レセプタクル2のコンタクト22は、レセプタクル2がヘッダ1に挿入される途中で傾くのに伴って、ヘッダ1に対し挿入方向Z以外の方向にずれる。しかし、レセプタクル2が配列方向Xに傾くため、接触部222は、ヘッダ1のコンタクト12を挟む厚み方向Yに垂直な配列方向Xにずれる。このため、棒状のコンタクト12による二股状の接触部222の抉りによる変形や破損が抑えられる。
【0067】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。以下の第2実施形態の説明にあたっては、これまで説明してきた実施形態における各要素と同一の要素には同一の符号を付けて示し、前述の実施形態との相違点について説明する。
【0068】
図19は、本発明のコネクタ組立体の第2実施形態を示す透視図である。
【0069】
図19に示すコネクタ組立体A2は、互いに嵌合する第1コネクタであるヘッダ2001および第2コネクタであるレセプタクル2002を備えている。
【0070】
第1実施形態に係るヘッダ1(
図1参照)では、第1接触傾動部14の頂点143が配列方向Xにおける、ヘッダ1の中央に配置されていたが、本実施形態に係るヘッダ2001は、第1接触傾動部2014の頂点2143が、中央から離れた位置に設けられている。また、第1実施形態に係るレセプタクル2(
図3参照)では、第2接触傾動部24の頂点243が配列方向Xにおける、レセプタクル2の中央に配置されていた。これに対し、本実施形態に係るレセプタクル2002は、第2接触傾動部2024の頂点2243が、中央から離れた位置に設けられている。第1接触傾動部2014の頂点2143と第2接触傾動部2024の頂点2243とは、互いに対応する位置に設けられている。第2実施形態におけるこの他の構成は、第1実施形態と同じである。
【0071】
図20および
図21は、
図19に示すヘッダおよびレセプタクルの嵌合の過程を示す透視図である。
【0072】
レセプタクル2002が挿入方向Zに移動してヘッダ2001に挿入されると、ヘッダ2001に設けられた第1接触傾動部2014の頂点2143と、レセプタクル2002に設けられた第2接触傾動部2024の頂点2243とが当たる。レセプタクル2002に対し、ヘッダ2001に向かう力がさらに掛けられると、レセプタクル2002が、第1接触傾動部2014の頂点2143および第2接触傾動部2024の頂点2243を支点として傾く。本実施形態では、第1接触傾動部2014の頂点2143および第2接触傾動部2024の頂点2243が、配列方向Xにおける中央から離れた位置に設けられているため、レセプタクル2002は、頂点2143,2243が設けられた側(右側)とは反対の側(左側)がヘッダ2001により深く挿入される姿勢に傾く。
【0073】
本発明においては、挿入時に抵抗を与えて一方のコネクタに対して他方のコネクタを傾斜させる接触傾動部が、コネクタ同士の嵌合時のほぼ占有面積内に配置される。このため、コネクタ組立体を大型化することなく、一方のコネクタを他方のコネクタに対して傾動させることができる。
【0074】
なお、上述した実施形態では、本発明にいう接触傾動部の例として、ともに頂点を有する第1接触傾動部14(2014)および第2接触傾動部24(2024)を示した。しかし、本発明は傾きの支点となる構造があればこれに限られるものではなく、例えば、第1コネクタおよび第2コネクタのうち、一方に頂点を有する接触傾動部が設けられ、この接触傾動部が接触する他方は、頂点がない、挿入方向に垂直な面が設けられたものであってもよい。
【0075】
また、上述した実施形態では、本発明にいう第1コネクタの例として回路基板に実装されるヘッダ型コネクタを示し、第2コネクタの例として、ヘッダ型コネクタに挿入されるレセプタクル型コネクタを示した。しかし、本発明はこれに限られるものではなく、例えば、第1コネクタは、電線に接続されるコネクタであってもよく、第2コネクタに挿入するコネクタであってもよい。また、第1コネクタおよび第2コネクタは、一方のハウジングが他方ハウジングの中に挿入されるものに限られるものではない。
【0076】
また、上述した実施形態では、本発明にいう複数のコンタクトの例として、2列に並んだ50個のコンタクトを示したが、本発明はこれに限られるものではなく、コンタクトの数は50以外でもよく、また列の数は2以外でもよい。