(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
原子力施設で発生する放射性廃棄物など、高・中レベルの放射性廃棄物を処理する設備では、ローラコンベアが遮蔽・気密構造を有する管理区域内に設置される場合がある。
たとえば、放射性廃棄物処理に用いる焼却炉や溶融炉は、放射能の漏洩を防止するため管理区域として密封された、セルと呼ばれる小部屋に設置されることがあるが、このような管理区域の外で準備された放射性廃棄物を収容した缶をセル内の焼却炉や溶融炉に供給するために、ローラコンベアが使用される。
ローラコンベアは、搬送路に沿って並んだローラをモータで回転駆動して、ローラ列上に搭載された物体を搬送路に沿って目的位置まで運搬する。焼却炉や溶融炉に付設されたローラコンベアは、管理区域境界の隔壁に設けられた二重閉鎖構造の取り込み口から缶入りの放射性廃棄物を取り込んで焼却炉や溶融炉の材料供給口の前まで搬送する。
【0003】
管理区域内に設備されたローラコンベアについて駆動部その他の部品に異常が発生して保守・補修を行うときには、人はセル内に容易に立ち入れないため、基本的にマニピュレータを使った遠隔操作により処理する必要がある。焼却炉や溶融炉の周辺に使用されるマニピュレータは、多くの場合、天井走行クレーンから垂下する伸縮自在のテレスコピックシリンダーの先にロボットアームを装備しそのロボットアームの先にハンドを取り付けた構成になっていて、遠隔操縦によって対象物に上方からアクセスできるようになっている。
管理区域内に設置するローラコンベアについては、従来、たとえば下に挙げるような保守方法が考えられてきた。
【0004】
(1)通常のチェーン駆動ローラコンベアを使用して、保守作業が必要になったときには、遠隔操作でコンベア本体ごと切り離して管理区域外に搬出し、保守エリアに搬送して作業をする。
この方法は、保守が不要なコンベア本体躯体部分も一緒に遠隔操作で出し入れする必要があるため、管理区域内の配置上に制約が大きく、遠隔操作が煩雑になり、また搬出入口を大きくする必要がある、などの問題がある。
【0005】
(2)通常のチェーン駆動ローラコンベアを使用し、駆動モータなど故障頻度が高いと評価される部品については二重化して異常時には切り換えて使用できるように、予備機を予め管理区域内のローラコンベアに設置しておく。
このような装置の故障対策には、駆動モータなど主要な機器が複数セット必要になり、またクラッチ機構など切り替え用の装置が必要となるので、ローラコンベア機構が複雑化し大型化してコストアップとなり、管理区域内の配置に制約が生じる。また、故障した部品はいずれ管理区域外に搬出して修理する必要がある。
【0006】
(3)通常のチェーン駆動ローラコンベアを使用し、故障頻度が高いと評価される駆動モータを人がアクセスできる管理区域外に設置し、延長軸などを使って管理区域内の駆動軸と接続する構成とする。
このような装置を用いる場合は、延長軸が遮蔽・気密構造を有する隔壁を貫通するため、特殊な貫通構造を要してコストアップになる。また、管理区域内の配置に制約が生じる上、管理区域内で発生した故障部品はいずれ管理区域外に引き出して補修作業を行う必要がある。
【0007】
(4)駆動モータを内蔵したいわゆるモータローラを並べることにより構成したローラコンベアを使用して、モータローラが故障したときには故障したモータローラのみを遠隔操作で切り離して搬出し修理する。
この方法では、個々のローラにモータが内蔵されているため、機器費と工事費が上昇する上、駆動部品の数が多くなるため却って全体の信頼性が低下する問題を有する。また、ローラ端部の支持構造やローラ端部におけるケーブル処理を考慮すると、遠隔操作は非常に複雑になり、特殊な治具を使った難しい作業となる。
【0008】
このように、従来方法では、ローラコンベア機構全体を搬出入するものであったり、予備部品や複雑な切り替え用部品を備えたり、隔壁を貫通する機構を要したり、ローラの個別駆動など機器費や工事費を過大に要したりするものであり、また複雑な遠隔操作を必要としていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
マニピュレータの遠隔操作により解体・組み立てが可能な遠隔保守対応型ローラコンベアを提供することであり、特に、人が簡単に立ち入れない放射線管理区域内に設置したときに天井からアクセスするマニピュレータを使って主要部の解体・組み立てができる遠隔保守対応型ローラコンベアを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、本発明の遠隔保守対応型ローラコンベアは、本体フレームと、物品搬送方向に並列する複数のキャリアローラと、個々のキャリアローラを回転させる中間伝動歯車と、中間伝動歯車を回転させる回転駆動歯車と回転駆動歯車に回転を与える駆動モータをモータベース上に配列したモータユニットと、を備えたもので、キャリアローラと中間伝動歯車は本体フレームに上方から載置することにより支持され、キャリアローラと中間伝動歯車および中間伝動歯車と回転駆動歯車は歯車を介して上下方向に離合可能に連動連結されることを特徴とする。
【0015】
なお、本発明の遠隔保守対応型ローラコンベアでは、本体フレームが、キャリアローラの軸受けを同じ高さで支持する上向きの軸受け溝をキャリアローラの数だけ上縁部に形成した1対の側板と、上向きに開口して駆動シャフトの軸受けを支持する軸受け台を固定した横継ぎと、床板とを有することが好ましい。
また、駆動シャフトは、キャリアローラの歯車に下側から係合してキャリアローラを回転させるキャリアローラの数と同じ数の歯車と、駆動シャフトを回転させる回転駆動歯車と噛み合う平歯車と、駆動シャフトを回転自在に支持する少なくとも2個の軸受けとを備えたもので、軸受けを本体フレームの軸受け台に支持できることが好ましい。(注:0016から移動したもの)
【0016】
さらに、キャリアローラは、物品を載せるローラと、ローラの1端側に設けて駆動シャフトの歯車と係合してキャリアローラを回転させる歯車と、両端に設けた軸棒と、を同じ中心軸上に有することが好ましい。
駆動シャフトの軸とキャリアロータの軸は交差したり互いに食い違ったりするので、両軸間で回転を伝達する歯車には、たとえば、かさ歯車、スパイラルギア、ウォームギアなど、適宜の交差軸歯車や食い違い軸歯車が用いられる。
特に、マニピュレータを使った解体・組み立てをより簡単に行うためには、キャリアロータを上下方向に離合させ易く構成できるスパイラルギアを用いることが好ましい。
また、モータユニットは、本体フレームの床板上に据え駆動シャフトの方向に移動させて所定の位置に固定することにより回転駆動歯車を駆動シャフトの平歯車に係合させることができる構成を有することが好ましい。
【0017】
本発明の別の態様に係る遠隔保守対応型ローラコンベアは、初めにモータユニットを本体フレームの床板上に配置して所定位置に固定し、次に駆動シャフトを横継ぎの間に懸架して平歯車をモータユニットの回転駆動歯車と係合させ、その後にキャリアローラを本体フレームの側板の間に懸架してスパイラルギアを駆動シャフトのスパイラルギアと係合させることにより構成される。したがって、遠隔操作によるマニピュレータを使って容易に組み立てることができる。
【0018】
また、キャリアローラは、端部の軸棒が本体フレームの側板に設けた上向きの軸受け溝に嵌合しているだけなので、上側からアクセスするマニピュレータを使って個々独立に取り外し取り付けをすることができるため、故障を起こしたキャリアローラのみを本体フレームから取り外して補修し、あるいは新しいキャリアローラと取り替えて、元の位置に戻すことにより容易に保守を行うことができる。
【0019】
なお、駆動シャフトに異常が発生した場合には、上側からアクセスするマニピュレータを使って、駆動シャフトに係合しているキャリアローラを全て取り外すと、簡単に駆動シャフトを上方に持ち上げることができ、補修室に運搬して補修した後に元の位置に戻すことができる。
さらに、モータユニットに異常が発生した場合には、上側からアクセスするマニピュレータを使って、モータユニットの上に位置するキャリアローラだけを取り外して作業に必要な開口を作り、その開口からマニピュレータを差し入れてベース固定ピンを外し、モータベースを移動させれば、簡単に上方に取り上げることができる。取り外したモータユニットは、適宜の場所に搬送し補修し、あるいは良品と交換してから元の位置に戻して再び固定して復旧することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の遠隔保守対応型ローラコンベアは、マニピュレータの遠隔操作により解体・組み立てが可能で、故障を有する構成要素について容易に保守を実施することができる。特に、放射線管理区域内にローラコンベアを設置したときに、天井から下方に向かってアクセスするため動作に制約があるマニピュレータを使って、簡単にローラコンベアの主要部の解体・組み立てができるので、遠隔保守作業を容易にかつ能率的に実施することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、図番の異なる図面においても、同一の構成要素には同一の参照番号を付して、理解の容易化を図った。
本実施例は、最も代表的な例として、放射性固体廃棄物を減容して処分の負荷を軽減させるために設けられた焼却設備や溶融設備に付帯して設置される遠隔保守対応型ローラコンベアを対象とする。焼却設備や溶融設備は、放射線遮蔽壁に囲まれたセルと呼ばれる放射線管理区域内に設置されることがある。放射線遮蔽壁は、発生し得る放射線を確実に遮蔽して放射線管理区域外の放射線量率を規定値以下に抑制できるような、たとえば、厚さ1.4m高さ8m程度のコンクリート隔壁である。
【0023】
焼却設備や溶融設備は、放射線管理区域として形成された前処理用のセルと焼却設備や溶融設備を配するセルに、それぞれの機能を分散して配置されている。
ローラコンベアは、前処理用のセルを通って焼却設備や溶融設備を配するセルに至るように敷設されていて、前処理用のセルから放射性廃棄物が入った容器を載せて、焼却や溶融処理をする廃棄物を焼却炉や溶融炉の前の投入装置まで搬送する。
【0024】
図1は本実施形態の1実施例に係る遠隔保守対応型ローラコンベアの主要部を示す一部切り欠き斜視図である。また、
図2はローラコンベアの組み立て状態を示すためコンベアの搬送方向に垂直な断面から見たローラコンベアの側面図、
図3はその平面図、
図4はその側面図である。
【0025】
図1は、上面を埋めるように配置されるキャリアローラ10の大部分を省略し、本体フレーム40の側板41の一部を切り欠いて、床板50に据え付けられたモータユニット30の状態が見えるように表示したものである。
図1から
図4に示したとおり、本実施例のローラコンベア100は、キャリアローラ10と、駆動シャフト20と、モータユニット30と、本体フレーム40を主要な構成要素として形成されている。
キャリアローラ10と駆動シャフト20は本体フレーム40に上方から載置することにより支持され、キャリアローラ10と駆動シャフト20および駆動シャフト20とモータユニット30の回転駆動歯車は、それぞれ歯車を介して上下方向に離合可能に連動連結されている。駆動シャフト20は、モータ31の回転駆動力をキャリアローラ10に伝達する中間伝動歯車となるスパイラルギア22をキャリアローラ10の数だけ備えて、キャリアローラ10を個々に回転させる。
【0026】
図5は、モータユニット30の1例を示す平面図である。
モータユニット30は、サイクロ減速機を一体に組み込んだ駆動モータ31と、モータ軸にはめられた平歯車32と平歯車でできた中間ピニオン33の2枚の歯車で構成される回転駆動歯車とが組み合わされて、モータベース39の上に固定されたものである。中間ピニオン33を軸持する支持板34は、モータベース39に固定されている。
なお、回転駆動歯車は、駆動モータ31の回転駆動力を駆動シャフト20に伝達するもので、図示した構成の他に、たとえばモータ軸にはめた1枚の歯車だけの構成や、3枚以上の歯車を組み合わせて構成した歯車ユニットなど、適宜な形態を選択することができる。
【0027】
モータベース39は、
図1に示したように、図示しない案内機構を床板50に設けられたガイドレール37と係合させることにより、モータユニット30の積み下ろし位置と駆動シャフト20との係合位置の間を往復させることができるようになっている。また、駆動モータ31の電源ケーブルおよび信号ケーブルはプラグ35に結合されていて、このプラグ35を床板50に設けられたソケットに差し込めば、操作室の操作用機器と直ちに電気的に接続できるようになっている。プラグ35とソケットは上下方向に引き差しすることにより簡単に離合させることができる。
なお、回転駆動歯車が駆動シャフト20の歯車と正しく係合する位置に来たときに、モータベース39の孔にベース固定ピン36を挿入することにより、モータベース39を床板50に固定して、係合位置を維持することができる。
【0028】
図6は、駆動シャフト20の1例を示す平面図である。
駆動シャフト20は、駆動シャフト20を回転させる回転駆動歯車の中間ピニオン33とかみ合う1枚の平歯車21と、キャリアローラ10のスパイラルギア11に下側から係合してキャリアローラ10を回転させるスパイラルギア22をキャリアローラ11の数と同じだけ備えている。さらに、駆動シャフト20を回転自在に支持する少なくとも2個の軸受け23を備えている。
【0029】
軸受け23は、
図1に示すように、本体フレーム40に備えた軸受け台46に支持させることができる。なお、軸受け台46は、本体フレーム40の横継ぎ43の上に設けることができる。
軸受け台46は、軸受け23を受け入れやすくするため、上方に広がった形状を持たせて、マニピュレータが正確に位置決めしなくても簡単に正しい位置に組み込みできるようにすることが好ましい。
また、軸受け23は、駆動シャフト20の端部に設ける代わりに、シャフトの中間位置に形成することもできる。なお、長い駆動シャフト20においては、軸受け23の数を増やして駆動シャフト20に撓みが発生しないようにすることが好ましい。
【0030】
図7は、キャリアローラ1の1例を示す平面図である。
キャリアローラ10は、被搬送物200を載せるローラ部分と、駆動シャフト20のスパイラルギア22と係合してキャリアローラ10を回転させる1端に設けたスパイラルギア11と、両端に設けた軸棒12,13とを、同じ中心軸上に形成したものである。
スパイラルギア11,22は、駆動シャフト20の回転を垂直方向の回転に変換してキャリアローラ10の列を同じ方向に同じ速度で駆動する作用を有する。
【0031】
図3や
図4に示すように、キャリアローラ10は、ローラコンベア100の上面に、物品の搬送方向に並列に並べられる。このため、本体フレーム40の側板41,42には、上端縁にU字型の軸受け溝44,45が形成されている。軸受け溝44,45は、上方に解放されたU字溝で、キャリアローラ10の端部の軸棒12,13を落とし込むと、キャリアローラ10を回転自在に水平に支持することができる。
【0032】
並列に並んだキャリアローラ10は、スパイラルギア11,22により同じ方向に同じ速度で回転して、キャリア面に載せられた被搬送物200を目的地に送る。なお、スパイラルギア11,22に代えて、かさ歯車など駆動軸の回転を直交方向に伝達する別の歯車を使用することもできる。
また、駆動されて回転するキャリアローラ10の間に自由に回転する同径のフリーローラを適宜配置することもできる。
なお、被搬送物22が重いときには、キャリアローラ10の軸棒12,13に適宜な軸受け機構をセットしたものを採用して、回転負荷を軽減させることもできる。
【0033】
図2を参照して、遠隔保守対応型ローラコンベアの付帯的な部品の取付状況を説明する。
本体フレーム40の側板41の外側には、マニピュレータでキャリアローラ10の軸棒12を軸受け溝44に落とし込むときに多少の位置ぶれがあっても定位置に案内する機能を備えた軸案内ガイド47が設けられている。これにより、マニピュレータの操作が簡単になり作業性が向上する。軸案内ガイド47は、軸受け溝44の場所毎にそれぞれ設置しても良いが、側板41の一端から他端まで1枚の衝立のようにして形成してもよい。
【0034】
また、駆動シャフト20が設置される側の側板42の外側には、ギアカバーを兼ねたローラ抑え48が設けられている。ローラ抑え48は、側板42の外壁に固定されたローラ抑え用台49に回動可能に軸支され、マニピュレータがキャリアローラ10や駆動シャフト20にアクセスするときは外側に開き、キャリアローラ10が定位置にセットされた後は、内側に倒すことにより、軸受け溝45に嵌ったキャリアローラ10の軸棒13の先端を上から押えてキャリアローラ10が外れないようにすると共に、覆板の部分でスパイラルギア11を覆って保護することができる。
【0035】
図2と
図3に表示されているとおり、ローラコンベア100において、並列に並んだキャリアローラ10で形成される搬送面には、搬送する被搬送物200を選別したり、向きを合わせたり、被搬送物200を定位置に案内したりするガイド53,57を設けてもよい。ガイド53,57はキャリアローラ10の上に覆い被さるように配置されるので、マニピュレータによる保守作業をするときには、ローラコンベア100の側板41,42より外側まで待避できる構造にする必要がある。
【0036】
図では、側板41,42に固定されたガイド用台54,58の上にガイド用支柱51,55を立てて、その先端にガイド用アーム52,56を回動可能に軸支して、ガイド用アーム52,56の先端にガイド53,57を固定することにより、必要に応じてガイド53,57を待避させることができるようにしてある。なお、ガイドの待避機構は、図示したものに限らず、周知の適宜な技術を選択して利用することができる。
【0037】
図8は、本実施例の遠隔保守対応型ローラコンベアにおいて、本体フレーム40にモータユニット30と駆動シャフト20を組み込んだ状態を示す平面図である。なお、
図9は、天井から下に向かってアクセスするマニピュレータの例を示す側面図である。
また、
図10から
図14は、マニピュレータで保守作業を行うときの手順を説明する流れ図である。
【0038】
保守作業において、ローラコンベアを組み立てるときは、
図10に示す手順を踏めばよい。
図8を参照しながら説明すると、初めに、駆動モータ31と回転駆動歯車32,33を搭載したモータユニット30を本体フレーム40の床板に設置されたガイドレール37の上に載置する(S11)。上方からアクセスするマニピュレータを使用してモータユニット30を正しい位置に据えるために、モータユニット30には図示しない吊り金具など適当な把持具が設けられていて、マニピュレータで吊り下げている間、モータユニット30が正しい姿勢を保てるようになっている。
【0039】
放射性固体廃棄物の焼却設備や溶融設備において利用されるマニピュレータは、たとえば、
図9に示すような、施設内を広く移動可能な走行車に組み込まれたロボットハンドである。
図9に示したマニピュレータは、施設内の両隅に敷設されたレールに跨りレールに沿って移動する走行ビーム75の上面に敷設されたレール76の上を走行する走行車71に設備されている。また、図示しないが、走行車71は走行ビーム75に垂直な方向にも移動が可能となっており、走行車71は走行ビーム75の移動領域内であれば任意の位置に移動することができる。
【0040】
走行車71の下に垂直方向に伸縮自在のテレスコピックシリンダー72が設けられていて、テレスコピックシリンダー72の先端にロボットアーム73が固定されている。ロボットアーム73の先端にロボットハンド74が設置されて、遠隔操作可能なマニピュレータになっている。このマニピュレータは、施設内の任意の場所に移動して、下向きにテレスコピックシリンダー72を伸縮し、被処理物の近傍に位置させて、ロボットアーム73により適宜の位置で適宜の姿勢をとらせて、ロボットハンド74を操作することができる。
【0041】
モータユニット30を床板50のガイドレール37の上に載置した後に、駆動シャフト20を本体フレーム40に載置する(S12)。
図8では、駆動シャフト20のベアリングがシャフトの端部でなく中間に設けられているが、スパイラルギア22の間隔内に収まる限り問題にならない。駆動シャフト20はマニピュレータで把持して降下させ、ピローユニット24が本体フレーム40の横継ぎ43に設けられたシャフト位置決めガイド25に嵌るようにする。シャフト位置決めガイド25は上に開口しているので、駆動シャフト20を載置するためのマニピュレータの操作に困難はない。
【0042】
次ぎに、モータユニット30をガイドレール37に沿って水平移動させて(S13)、中間ピニオン33が駆動シャフト20の平歯車21に係合するようにする。モータユニット30が定位置に来れば、モータベース39に設けられた孔と本体フレーム40の床板50に設けられた孔が連通するので、この孔にベース固定ピン36を差し込んで、モータユニット30がずれないようにする(S14)。
なお、駆動シャフト20を先にセットする代わりに、モータユニット30を定位置に固定した後で駆動シャフト20を上から載置して、駆動シャフト20の平歯車21と中間ピニオン33の平歯車を係合させるようにしてもよい。
図8は、本体フレーム40にモータユニット30と駆動シャフト20を組み込んだ状態を示している。
【0043】
さらに、キャリアローラ10を1本ずつ本体フレーム40に取り付ける(S15)。キャリアローラ10は、軸棒12,13を側板41,42の軸受け溝44,45に落とし込むことにより、取り付けることができるから、上方からアクセスするマニピュレータを遠隔操作することで簡単に組み込みを行うことができる。
なお、軸案内ガイド47を利用すると、軸棒12を軸受け溝44の近くに配置して離すだけで、簡単に軸棒12が軸受け溝44に嵌るので、キャリアローラ10を能率良く組み込むことができる。
【0044】
キャリアローラ10を取り付けたら、ローラ抑え48をセットして(S16)、キャリアローラ10の軸棒13が軸受け溝45から外れないようにする。
こうして、ローラコンベア100の主要部を組み立てた後に、被搬送体200を案内するガイド53,57をセットして、マニピュレータを使った組み立てを完了することができる。
このように、本実施例のローラコンベア100は、焼却設備や溶融設備に付帯して設置された位置にあったまま、上方からアクセスするマニピュレータを遠隔操作することで簡単に組み立てることができる。
【0045】
図11は、本実施例のローラコンベアの主要部を取り外す分解手順を説明する流れ図である。
ローラコンベア100を分解して、キャリアローラ10と駆動シャフト20とモータユニット30を取り外す手順は、キャリアローラ10の軸棒を抑えていたローラ抑え48を外側に回して抑えを外すところから始める(S21)。ローラ抑え48を外せば、キャリアローラ10は単に持ち上げるだけで本体フレーム40から取り外すことができる(S22)。なお、キャリアローラ10の両端部をそれぞれ引っ掛けるフックを備えた治具を使うと、より能率的にキャリアローラ10を取り外して持ち上げることができる。
上方からアクセスするマニピュレータを使って取り外したキャリアローラ10は、上階あるいは施設の別の場所に設置された保守室などに搬送して、必要な修繕を行う。
【0046】
複数設置されたキャリアローラ10の全てを取り外したら、
図8に示した状態になるので、次ぎに駆動シャフト20を取り上げる(S23)。駆動シャフト20は軸受け23を本体フレーム40の軸受け台46に落とし込んだだけなので、マニピュレータで掴んで垂直に持ち上げるだけで簡単に取り外すことができる。なお、
図8では、ピローユニット24がシャフト位置決めガイド25に嵌り込んだ形になっているが、軸受け23と軸受け台46の関係と同じことである。
【0047】
さらに、モータユニット30を取り外す。モータユニット30は、位置決めしてベース固定ピン36で固定してあるので、マニピュレータでベース固定ピン36を掴み、上に引き上げて解除し(S24)、マニピュレータでモータユニット30をガイドレール37に沿って水平移動させて本体フレーム40内の広い場所に引き出し(S25)、モータユニット30を吊り下げる把持具を使ってマニピュレータで吊り上げ(S26)、適宜の場所に搬送する。
こうして、上方からアクセスするマニピュレータを使用して、施設内に設置されたままで、ローラコンベア100のキャリアローラ10と駆動シャフト20とモータユニット30を取り外すことができる。
【0048】
図12は、本実施例のローラコンベアのキャリアローラを取り外す手順例を示す。
キャリアローラ10は、最上層に設置されているので、上に持ち上げるために障害となる被搬送体200用のガイド53,57を待避させて上のスペースを空け、さらにローラ抑え48を外側に待避させた後に(S31)、マニピュレータでキャリアローラ10を1本ずつ掴んで取り上げることにより(S32)、保全するキャリアローラ10のみを取り外して保守室などに搬送して修繕することができる。なお、フックを備えた治具を使って、より能率的にキャリアローラ10を取り外し搬出するようにしてもよい。
【0049】
図13は、本実施例のローラコンベアの駆動シャフトを取り外す手順例を示す。
駆動シャフト20は、キャリアローラ10の下にセットされているので、事前にキャリアローラ10を取り外しておく必要がある。そこで、被搬送体200用のガイド53,57とローラ抑え48を外側に待避させて(S41)、マニピュレータで全てのキャリアローラ10を1本ずつ取り外して搬出した後に(S42)、マニピュレータで駆動シャフト20を掴んで垂直に持ち上げることにより本体フレーム40から取り外すことができる(S43)。
取り外した駆動シャフト20は、マニピュレータで適宜の場所に搬送することができる。
【0050】
図14は、本実施例のローラコンベアのモータユニットを取り外す手順を説明する流れ図である。
モータユニット30は、ローラコンベア100の長さと比較すると小さいので、マニピュレータがモータユニット30にアクセスするための開口を確保するためには、一部のキャリアローラ10を取り外せばよい。
そこで、モータユニット30のみを必要とする場合の取り外し手順としては、まず被搬送体200用のガイド53,57とローラ抑え48を外側に待避させて(S51)、モータユニット30の上を覆っているキャリアローラ10だけを1本ずつ取り外して搬出して必要な開口を形成させた後に(S52)、モータユニット30を取り外す。
【0051】
モータユニット30を取り外すには、マニピュレータでベース固定ピン36を掴み、上に引き上げて解除し(S53)、マニピュレータでモータユニット30をガイドレール37に沿って水平移動させて本体フレーム40内の広い場所に引き出し(S54)、モータユニット30を吊り下げる把持具を使ってキャリアローラ10を外して作った開口を通してマニピュレータで吊り上げ(S55)、適宜の場所に搬送する。
こうして、上方からアクセスするマニピュレータを使用して、本体フレーム40からモータユニット30を取り外して必要な場所に搬送することができる。
【0052】
図15は本発明の別の実施例に係る遠隔保守対応型ローラコンベアの概略を示す側面図、
図16はその歯車の噛み合わせ状態を示す正面図である。
本実施例におけるローラコンベアは、キャリアローラの下に中間ピニオンを配しその下に駆動モータユニットを配置した先の実施例とは反対に、被搬送体67を載せて搬送するキャリアローラ60の端部に形成された平歯車61の上に中間平歯車62を配置し、中間平歯車62の上に駆動用モータユニット65に駆動される駆動ギア63を配置したものである。なお、駆動ギア63は1枚または2枚の中間平歯車62と噛み合うようにすることができる。
【0053】
モータユニット65は、駆動シャフト64を介して駆動ギア63を駆動する。駆動ギア63は、中間平歯車62に噛み合って中間平歯車62を回転駆動する。
中間平歯車62はそれぞれ2枚のキャリアローラ60の平歯車61と噛み合って駆動する。平歯車61は2枚の中間平歯車62に挟まれるように噛み合っていて、駆動されて回転する自らの回転を駆動した中間平歯車62と異なる側の中間平歯車62に伝達する。
キャリアローラ60の平歯車61により回転させられる中間平歯車62はその反対側に噛み込んでいるキャリアローラ60の平歯車61を回転駆動する。
このようにして、駆動ギア63が並列に配置された全てのキャリアローラ60を同じ方向に同じ速度で回転させて、搭載した被搬送体67を所望の方向に搬送する。
【0054】
本実施例のローラコンベアは、下からキャリアローラ60、中間平歯車62、モータユニット65の順に重ねられており、分解するときは、駆動ギア63と駆動シャフト64を含めたモータユニット65、中間平歯車62、キャリアローラ60の順に本体フレーム66から取り外すことができる。これらの部品は、それぞれ上方に持ち上げて吊り出すことができるので、遠隔操作により容易に解体・組み立てをすることができ、管理区域内においても容易に保守作業を行うことができる。