(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5665625
(24)【登録日】2014年12月19日
(45)【発行日】2015年2月4日
(54)【発明の名称】無線タグを利用したサービス情報提供システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/10 20120101AFI20150115BHJP
G06Q 30/02 20120101ALI20150115BHJP
【FI】
G06Q50/10
G06Q30/02 150
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-75705(P2011-75705)
(22)【出願日】2011年3月30日
(65)【公開番号】特開2012-208880(P2012-208880A)
(43)【公開日】2012年10月25日
【審査請求日】2013年9月13日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度、総務省、「ユビキタス・プラットフォーム技術の研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084870
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 香樹
(74)【代理人】
【識別番号】100119688
【弁理士】
【氏名又は名称】田邉 壽二
(74)【代理人】
【識別番号】100092772
【弁理士】
【氏名又は名称】阪本 清孝
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 俊樹
【審査官】
貝塚 涼
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−092785(JP,A)
【文献】
特開2003−186899(JP,A)
【文献】
本村陽一,ベイジアンネットワークと確率的情報処理の新展開,人工知能学会誌,日本,社団法人人工知能学会,2007年 5月 1日,第22巻,第3号,第320−327頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 − 50/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯端末から送信されたタグIDを受信したサービス情報提供サーバが、当該タグIDに応じたサービスリストを前記携帯端末へ応答するサービス情報提供システムにおいて、
前記サービス情報提供サーバが、
携帯端末からユーザIDおよびタグIDを受信する手段と、
各ユーザの選択心理に基づくサービス選択ルールを各ユーザIDと対応付けて管理する手段と、
前記タグIDと対応付けられたサービス群から、前記ユーザIDと対応付けられたサービス選択ルールに適合するユーザ所望のサービスを、当該サービスの提供実績に基づき選択してサービスリストを生成する手段と、
前記サービスリストを前記携帯端末へ応答する手段とを具備し、
前記サービス選択ルールは、提供実績の低いサービスほど高い確率で選択されるルールを含むことを特徴とする無線タグを利用したサービス情報提供システム。
【請求項2】
前記サービス選択ルールには、比較対象ユーザが規定され、当該比較対象ユーザへの提供実績が低いサービスほど高い確率で選択されるルールを含むことを特徴とする請求項1に記載の無線タグを利用したサービス情報提供システム。
【請求項3】
前記サービス選択ルールは、前記比較対象ユーザの認知度が低いサービスほど高い確率で選択されるルールを含むことを特徴とする請求項2に記載の無線タグを利用したサービス情報提供システム。
【請求項4】
前記サービス選択ルールがサービスのジャンルごとに規定されたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の無線タグを利用したサービス情報提供システム。
【請求項5】
前記サービス情報提供サーバが、ユーザ属性をユーザIDと対応付けて管理する手段をさらに具備し、
前記サービスリストを生成する手段は、
前記ユーザIDと対応付けられた属性情報を、観測された値としてベイジアンネットワークモデルに入力することで、各サービスが選択される確率を算出する手段と、
前記各サービスが選択される確率を、前記サービス選択ルールに基づいて補正する手段と、
前記補正後の確率が所定の閾値を超えるサービスのリストを生成することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の無線タグを利用したサービス情報提供システム。
【請求項6】
前記サービス情報提供サーバが、ユーザ個人履歴をユーザIDと対応付けて管理する手段をさらに具備し、
前記各サービスが選択される確率を算出する手段は、前記ユーザIDと対応付けられた属性情報およびユーザ個人履歴を、観測された値としてベイジアンネットワークモデルに入力することを特徴とする請求項5に記載の無線タグを利用したサービス情報提供システム。
【請求項7】
前記受信手段が、携帯端末からユーザID、タグIDおよび端末ユーザに関連する状況情報を受信し、
前記各サービスの確率分布を算出する手段は、前記端末ユーザに関連する状況情報ならびに前記ユーザIDと対応付けられた属性情報およびユーザ個人履歴を、観測された値としてベイジアンネットワークモデルに入力し、
前記状況情報が、環境に関する状況情報、端末に関する状況情報、および生体に関する状況情報の少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項6に記載の無線タグを利用したサービス情報提供システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯端末からタグIDの記述されたサービスリスト要求を受信すると、このタグIDと予め紐付けられた多数のサービスの中から、端末ユーザへの適合度が高いサービスを選別し、そのリストを生成して提供するサービス情報提供システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ICタグは、データを記憶できる半導体メモリを内蔵し、誘導電磁界や電波により給電されてデータを非接触で読み書きできる情報媒体である。無線式のRFタグは、電力の供給方式によりパッシブ式(パッシブRFタグ)およびアクティブ式(アクティブRFタグ)に大別され、さらに両者の中間であるセミパッシブ式(セミパッシブRFタグ)も普及している。
【0003】
パッシブRFタグは、アンテナやリーダ/ライタから供給される電力で動作するICタグであり、その交信距離は数mmから数mに制限される。したがって、データを読み書きするためにはリーダ/ライタをパッシブRFタグに翳す動作が必要である。ただし、電源を内蔵するアクティブタグに較べて安価であり、電池切れの心配もない。
【0004】
アクティブRFタグは、内蔵電池で動作するICタグであり、自らの電源で電波を送受信するため、その交信距離は数十mにも達するが、電池の寿命が尽きると交信できなくなり、また上記のパッシブRFタグよりも一般的に高価である。
【0005】
特許文献1には、サービス提供サーバとは別に、「利用者プロファイル管理サーバ」および「タグリーダ関連情報管理サーバ」を設け、携帯端末のタグリーダにより無線タグから取り込まれたタグIDおよびリーダIDに基づいて、「利用者プロファイル管理サーバ」および「タグリーダ関連情報管理サーバ」から利用者プロファイルおよびタグリーダ関連情報が検索され、これらの情報に基づいて、携帯端末に提供するサービスを決定する技術が開示されている。
【0006】
特許文献2には、観光地の観光ポイントや展示物の説明ポイント等において、ユーザへの適合度が高いガイド情報を選択的に提供するシステムが開示されている。この特許文献2では、ユーザ(ユーザ端末)がガイド対象物の近傍に接近すると、これが自動的に検知されてユーザ情報が検索され、現在時刻や気候といった環境情報に基づいて、ユーザへの適合度が高いガイド情報がユーザに提供される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−92785号公報
【特許文献2】特開2010−152588号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】「グラッサー博士の選択理論」ウィリアム グラッサー著、柿谷正期翻訳、アチーブメント出版
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の特許文献1、2によれば、ユーザの嗜好に合致あるいは適応度の高いサービスを選択することが可能になるものの、ユーザが所望するサービスは、ユーザの嗜好や当該ユーザの履歴情報のみならず、他者、例えば友人や知人、あるいは第三者の影響を受けることが多い。特に、趣味や嗜好が多様化した現在では、例えば一部のブランドのように、他者と同じサービスや物が強く嗜好されることがある一方、他者と異なることが、サービスや物の本質以上に重要視される場合も多い。
【0010】
すなわち、個々のユーザ単位の観点では、「他の特定ユーザの行動に感化される」、「あの人とは違うことをしたい」といった、ユーザの行動心理(選択心理)の側面を考慮することも、ユーザが真に所望するサービスを選択する上で重要になると考えられる
【0011】
非特許文献1によれば、人は5つの基本的要求を持ち、この基本的な要求を満たすように行動を選択する傾向にある。5つの基本的な要求は、以下の通りである。
(1)生存の要求:必要なことを行う。安全、健康の2要素がある。
(2)所属の要求:家族、友人、会社に所属し、良好な人間関係を維持する。愛と所属の要素がある。
(3)力の要求:認められたい、勝ちたいという要求。貢献、達成、競争、承認の要素がある。
(4)自由の要求:自分のやりたいようにする要求。解放、変化、こだわりの要素がある。
(5)楽しみの要求:新たな知識を得たい要求。好奇心、独創性、学習などの要素がある。
【0012】
このうち、端末ユーザのサービス選択における選択心理は、(2)所属の要求、(4)自由の要求、(5)楽しみの要求、に基づくものと考えられる。
【0013】
上記(2)の「所属の要求」は、仲間と同じものを選択し、同じ体験をすることによって、共通の話題を得るなどの効果を得たいという心理である。具体的には、「●●さんと同じことをしたい、同じものを見たい」などの「なぞり」がサービス選択の一つのファクタになる。
【0014】
上記(4)の「自由の要求」は、変化やこだわりなど、他人とは違うことに価値を見いだす心理である。具体的には、「▲▲さんと違うことをしたい、違うものを見たい」という自由放任さがサービス選択の一つのファクタになる。
【0015】
上記(5)の「楽しみの要求」は、独創性や学習に価値を見いだす心理である。具体的には、「自分の仲間が知らないことを最初に経験して仲間に教えたい」という開拓の要素がサービス選択の一つのファクタになる。
【0016】
もちろん、すべての選択行動が、このような要素だけに起因するとは限らないが、こういった要素を加味することで、ユーザの所望するサービスを提示しやすくなると考えられる。
【0017】
本発明の目的は、上記した従来技術の課題を解決し、ユーザの選択心理が考慮された適応度の高いサービスリストを提示できる無線タグを利用したサービス情報提供システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記の目的を達成するために、本発明は、携帯端末から送信されたタグIDを受信したサービス情報提供サーバが、当該タグIDに応じたサービスリストを前記携帯端末へ応答するサービス情報提供システムにおいて、サービス情報提供サーバが、携帯端末からユーザIDおよびタグIDを受信する手段と、選択心理に基づくサービス選択ルールをユーザIDと対応付けて管理する手段と、前記タグIDと対応付けられたサービス群から、前記ユーザIDと対応付けられたサービス選択ルールに応じたサービスを選択してサービスリストを生成する手段と、前記サービスリストを前記携帯端末へ応答する手段とを具備した。そして、前記サービス選択ルールは、提供実績の低いサービスほど高い確率で選択されるルールを含むようにした。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、以下のような効果が達成される。
【0020】
(1)サービスリストの選択に選択心理を適用できるので、ユーザが真に利用したいサービスを、サービスリストへより確実に提示できるようになる。したがって、端末ユーザは、タグIDと予め紐付けられた多数のサービスのうち、より適合性の高い厳選されたサービスの中から所望のサービスを簡単に選択できるようになる。
【0021】
(2)知人、友人あるいは他人などとの比較で、「異なるサービス」や「知られていない(利用頻度の低い)サービス」といった、従来のレコメンドサービスでは選択されないマイナー傾向の(提供実績が低い、認知度が低い)サービスを簡単にレコメンドできるようになる。
【0022】
(3)サービスを要求する携帯端末からは、当該携帯端末で読み取られたタグIDのみならず、当該携帯端末で検知された端末ユーザの状況情報が通知される。そして、サービス情報提供サーバは、タグIDと予め紐付けられた多数のサービスの中から、前記端末ユーザの状況情報に適合するサービスを選択してサービスリストを生成するので、端末ユーザに提供されるサービスリストに当該端末ユーザの状況情報を反映させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るコンテンツサービス提供システムのブロック図である。
【
図4】サービス情報テーブルの一例を示した図である。
【
図5】サービス選択ルールの一例を示した図である。
【
図6】第1実施形態におけるベイジアンネットワークの構成を模式的に表現した図である。
【
図7】コンテンツサービスの提供手順を示したシーケンスフローである。
【
図8】コンテンツサービスの他の提供手順を示したシーケンスフローである。
【
図9】本発明の第2実施形態に係るコンテンツサービス提供システムのブロック図である。
【
図10】第2実施形態におけるベイジアンネットワークの構成を模式的に表現した図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係るコンテンツサービス提供システムの構成を示したブロック図であり、携帯端末1と、携帯端末1から送信されたサービスリスト要求に応答して適応度の高いサービス一覧をリスト形式で返信するサービス情報提供サーバ2と、携帯端末1から送信されたコンテンツ要求に応答してコンテンツサービスを提供するサービスコンテンツサーバ3とが、ネットワークにより相互に接続されている。
【0025】
前記携帯端末1において、無線タグリーダ部101は、アクティブ無線タグTaやパッシブ無線タグTpからタグID (a-ID,p-ID)を読み取る。状況センサ部102は、環境に関する状況情報を検知する環境センサ102a,端末に関する状況情報を検知する端末センサ102bおよび端末ユーザの生体(体調)に関する状況情報を検知する生体センサ102cを内蔵するか、またはこれらの各センサ102a,102b,102cが外付けされる入力インターフェース(図示省略)を備える。
【0026】
前記環境センサ102aは、気温、湿度、光度、磁気、CO2濃度、匂い、音あるいは周囲画像など、端末ユーザのサービス選択に影響を及ぼすような環境に関する状況情報を計測する。前記端末センサ102bは、携帯端末1の現在位置、動き、移動速度、バッテリの充電残量、メモリ残量、電子マネーの残金あるいは各種の設定内容(アドレスの登録状況、操作履歴、マナーモードであるか否かなど)など、端末ユーザのサービス選択に影響を及ぼすような端末に関する状況情報を計測または検知する。前記生体センサ102cは、端末ユーザの体温、脈拍、血圧あるいは脳波など、端末ユーザのサービス選択に影響を及ぼすような生体に関する状況情報を計測する。以下、これらの環境、端末、生体の各状況情報を、単に状況情報と表現する場合もある。
【0027】
通信部103は、前記無線タグリーダ部101により読み取られたタグID、端末ユーザに固有のユーザIDおよび前記各状況情報の計測、検知結果を、サービスリスト要求メッセージに記述してサービス情報提供サーバ2へ送信すると共に、サービスリストの記述されたサービスリスト応答メッセージを前記サービス情報提供サーバ2から受信する。
【0028】
表示部104は、前記サービスリスト応答メッセージからサービスリストを抽出して表示出力する。入力部105は、端末ユーザが前記サービスリストの中から所望のサービスを選択するユーザ操作を検知する。前記通信部103はさらに、前記選択されたサービスの記述されたサービス要求メッセージをサービスコンテンツサーバ3へ送信すると共に、サービスコンテンツの記述されたサービス応答メッセージを前記サービスコンテンツサーバ3から受信する。受信されたサービスコンテンツは、制御部106により再生されて前記表示部104に表示等される。
【0029】
サービス情報提供サーバ2において、通信部201は、前記携帯端末1から前記サービスリスト要求メッセージを受信すると共に、サービスリストの記述されたサービスリスト応答メッセージを返信する。状況情報管理部202は、前記サービスリスト要求メッセージに記述されて各携帯端末1から通知される、前記環境、端末および生体の各状況情報を、ユーザIDと紐付けて管理する。
【0030】
なお、通知された状況情報に端末1で撮影された画像が含まれる場合、当該撮影画像を、予めデータベースに記憶されている多数の街並み画像と比較し、合致する街並み画像を検索することで、当該画像の撮影位置や撮影向きを識別し、当該識別結果を数値列に変換して管理する。
【0031】
属性情報テーブル203では、
図2に一例を示したように、各端末ユーザの年齢、性別、出身地および家族構成などのユーザ属性が、ユーザIDと紐付けられて管理されている。履歴情報テーブル204では、
図3に一例を示したように、各ユーザが利用したサービスに固有のサービスID、サービスの最終利用時刻およびサービスの利用回数などの履歴情報が、ユーザIDと紐付けられて管理されている。サービス情報テーブル205には、
図4に一例を示したように、ユーザに提要可能な各種サービスのサービス名、各サービスと紐付けられたタグID、サービス提供元のURL、サービスのジャンル、年齢制限、サービス開始日などのサービス情報が、サービスIDと紐付けられて管理されている。
【0032】
属性情報管理部206は、前記ユーザ情報テーブル203を管理、更新する。履歴情報管理部207は、前記履歴情報テーブル204を管理、更新する。サービス情報管理部208は、前記サービス情報テーブル205を管理、更新する。
【0033】
個人別サービス選択ルール210では、ユーザごとに選択心理学における行動選択の指標がルール形式で管理されている。
図5は、個人別サービス選択ルールの一例を示した図であり、多数の選択ルールが、レコメンド対象ユーザの識別子(ユーザID)、比較対象ユーザの識別子(比較対象ユーザID)、選択基準およびサービスジャンルと紐付けられて管理されている。
【0034】
「選択基準」は、サービス選択においてユーザが価値を見いだす要因であり、「Different」では「比較対象ユーザ」と違う(提供実績が低い)ことに価値が見いだされ、「Same」では「比較対象ユーザ」と同じことに価値が見いだされ、「neophilia(新しがり)」では「比較対象ユーザ」が知らないこと(認知度が低い、提供実績が低い)に価値が見いだされる。また、「サービスジャンル」は、前記「選択基準」が適用されるジャンルを絞り込む指標であり、前記タグIDに予め登録されている。
【0035】
したがって、ユーザ1にルール1が適用されると、全てのジャンルにおいてユーザ2が過去に選択していないサービスが優先される。同様に、ルール2が適用されると、スポーツの分野においてユーザ3が過去に選択しているサービスが優先され、ルール3が適用されると、飲食の分野において全てのユーザに認知されていない(あるいは、選択頻度が極めて低い)サービスが優先され、ルール4が適用されると、映画の分野において全てのユーザが過去に選択していないサービスが優先されるようになる。
【0036】
サービス選択部209は、前記状況情報、属性情報、履歴情報、サービス情報および個人別サービス選択ルールを、予め用意したベイジアンネットワーク(BN)に入力することより、前記端末ユーザへの適応度が高い複数のサービスをスコアとともに割り出す。
【0037】
ここで、ベイジアンネットワークとは、確率変数をノードで表し、因果関係や相関関係のような依存関係を示す変数の間にリンクを張ったグラフ構造による確率モデルであって、このリンクが因果関係の方向に有向性を有し、そのリンクを辿ったパスが循環しない非循環有向グラフで表されるモデルである。このようなベイジアンネットワークは、一部の変数を観測した時にその他の任意の変数についての確率分布を求めることができるので、不確実性を含む事象の予測や合理的な意思決定に利用できる。
【0038】
本実施形態では、
図6に一例を示したように、前記要求メッセージに記述されている状況情報(環境、端末、生体)、前記要求メッセージに記述されているユーザIDと前記情報テーブル203、204において紐付けられている「属性情報」および「履歴情報」、ならびに前記要求メッセージに記述されている無線タグID(a-ID,p-ID)と前記情報テーブル205において紐付けられている「サービス情報」が、観測された値(証拠変数)とされる。そして、属性情報、履歴情報、サービス情報および状況情報から、ユーザの好みのジャンルや趣味などの嗜好情報が確率的に推定される。また、状況情報からユーザが仕事中であるか否か、歩行中であるか否か、現在位置等のユーザ状態情報が確率的に推定され、端末ユーザにとって適合度の高いサービスが推論の対象となるようにベイジアンネットワークのモデルが構成され、ノード間の依存関係に従って各サービスの確率分布が算出される。
【0039】
前記サービス選択部209はさらに、無線タグIDに紐付けられた各サービスの確率分布が前記BNにより得られると、以下の2段階のステップで、端末ユーザに適合する複数のサービスの名称およびその内容を、確率値と共にサービスリストに掲載して前記ユーザ端末1へ応答する。
【0040】
手順1:BNにより得られた各サービスを選択するという事象の事後確率を、前記個人別サービス選択ルール210に基づいて修正する。例えば、レコメンド対象がユーザ1であり、前記タグIDに登録されていたサービスジャンルが不特定であれば、
図5のルール1が参照される。
【0041】
このルール1では、比較対象ユーザとして「ユーザ2」、選択基準として「Different」が規定されているので、ユーザ2へのレコメンド実績が参照され、ユーザ2への提供実績が低いサービスほど選択される確率が高くなるように、前記BNにより得られた事後確率が補正される。この補正により、提供実績の低いサービスほどサービスリストに掲載される確率が高くなる。
【0042】
また、レコメンド対象がユーザ1であり、サービスジャンルが「スポーツ」であれば、
図5のルール2が参照される。このルール2では、比較対象ユーザとして「ユーザ3」、選択基準として「Same」が規定されているので、ユーザ3へのレコメンド実績が参照され、ユーザ3への提供実績が多いサービスほど選択される確率が高くなるように、前記BNにより得られた事後確率が補正される。この補正により、提供実績の高いサービスほどサービスリストに掲載される確率が高くなる。
【0043】
さらに、レコメンド対象がユーザ1であり、サービスジャンルが「飲食」であれば、
図5のルール3が参照される。このルール2では、比較対象ユーザとして「ALL」、選択基準として「Neophilia」が規定されているので、提供実績の全て、または性別や年齢等のユーザ属性がレコメンド対象のユーザ1と近いユーザへの提供実績のみが参照され、提供実績が低いサービスほど選択される確率が高くなるように、前記BNにより得られた事後確率が補正される。この補正により、認知度の低いサービスほどサービスリストに掲載される確率が高くなる。
【0044】
なお、前記選択基準の「Different」と「Neophilia」とは、いずれも提供実績が低いサービスほど選択される確率が高くなるという上位の概念では一致するものの、サービスの開始時期が更に考慮されるか否かの点で異なる。すなわち、「Different」では、提供実績が低いサービスほど、その開始時期にかかわらず選択される確率が高くなるのに対して、「Neophilia」では、さらにサービスの開始時期が考慮される。
【0045】
例えば、サービスAの開始時期がサービスBの開始時期よりも遅く、サービスAがサービスBよりも新しいとき、「Neophilia」では、両者の提供実績が同様に低ければ、新しいサービスAの選択される確率が古いサービスBの選択される確率よりも高くなる。さらに、提供実績はサービスAがサービスBよりも多少高くても、サービスAの開始時期がサービスBの開始時期よりも十分に遅ければ、サービスAの選択される確率がサービスBの選択される確率よりも高くなる逆転も生じうる。
【0046】
手順2:確率値が所定の閾値を越える複数のサービスの名称およびその内容を、確率値と共にサービスリストに掲載して前記端末1へ応答する。
【0047】
ベイシアンネットワーク学習部211は、前記サービスリストへの各サービスの掲載実績や各ユーザにおける各サービスの利用実績に基づいて、前記ベイシアンネットワークの各ノードにおける事後確率を更新する。
【0048】
図7は、本実施形態におけるコンテンツサービスの提供手順を示したシーケンスフローである。
【0049】
端末1では、前記環境、端末および生体の各状況情報が前記状況センサ部102により周期的に検知されており、時刻t1において、無線タグのタグIDが読み取られると、時刻t2では、前記タグID、ユーザIDおよび前記状況情報の記述されたサービスリスト要求メッセージがサービス情報提供サーバ2へ送信される。
【0050】
サービス情報提供サーバ2では、前記サービスリスト要求メッセージに記述されている各状況情報が前記状況情報管理部202に記録され、時刻t3において、前記各状況情報、ユーザIDと前記情報テーブル203、204において紐付けられている「属性情報」および「履歴情報」、ならびに無線タグIDと前記情報テーブル205において紐付けられている「サービス情報」が、前記サービス選択部209によりBNに適用され、さらに前記BNの出力に前記個人別サービス選択ルール210が適用されてサービスリストが生成される。
【0051】
時刻t4では、前記サービスリストの記述されたサービスリスト応答メッセージが前記端末1へ返信され、その表示部104に一覧表示される。時刻t5において、端末ユーザがサービスリストの中から所望のサービスを選択すると、時刻t6では、前記選択されたサービスに固有のサービスIDの記述されたサービス要求メッセージがサービスコンテンツサーバ3へ送信される。時刻t7では、前記要求されたサービスに対応したコンテンツがサービスコンテンツサーバ3から端末1へ提供される。
【0052】
図8は、本実施形態におけるコンテンツサービスの他の提供手順を示したシーケンスフローである。
【0053】
時刻t1において、無線タグのタグIDが端末1により読み取られると、時刻t2では、前記タグIDおよびユーザIDの記述されたサービスリスト要求メッセージがサービス情報提供サーバ2へ送信される。サービス情報提供サーバ2は、前記サービスリスト要求に応答して、時刻t3で前記端末1へ状況情報を問い合わせる。端末1では、前記問い合わせに応答して、時刻t4で前記環境、端末および生体の各状況情報が前記状況センサ部102により検知される。時刻t5では、前記状況情報がサービス情報提供サーバ2へ通知される。
【0054】
サービス情報提供サーバ2では、前記通知された各状況情報が前記状況情報管理部202に記録され、時刻t6において、前記各状況情報、ユーザIDと紐付けられている「属性情報」および「履歴情報」、ならびに無線タグIDと紐付けられている「サービス情報」が、前記サービス選択部209によりBNに適用され、さらに前記BNの出力に前記個人別サービス選択ルール201が適用されてサービスリストが生成される。
【0055】
時刻t7では、前記サービスリストの記述されたサービスリスト応答メッセージが前記端末1へ返信され、その表示部104に一覧表示される。時刻t8において、端末ユーザがサービスリストの中から所望のサービスを選択すると、時刻t9では、前記選択されたサービスに固有のサービスIDの記述されたサービス要求メッセージがサービスコンテンツサーバ3へ送信される。時刻t10では、前記要求されたサービスに対応したコンテンツがサービスコンテンツサーバ3から端末1へ提供される。
【0056】
なお、上記の第1実施形態では、個人別サービス選択ルール210がBNの外部に設けられ、BNにより得られた各サービスを選択するという事象の事後確率が、前記個人別サービス選択ルールにより補正されるものとして説明した。しかしながら、前記個人別サービス選択ルール210はBN内に設けるようにしても良い。
【0057】
図9は、本発明の第2実施形態に係るコンテンツサービス提供システムの構成を示したブロック図であり、前記と同一の符号は、同一または同等部分を表しているので、その説明は省略する。
【0058】
前記第1実施形態の
図1と比較すると、サービス情報提供サーバ2の処理部に個人別サービス選択ルールが設けられていない点に特徴がある。また、
図10は本実施形態におけるBNの一例を示した図であり、前記第1実施形態の
図6に示されたBNと比較すれば、証拠変数として前記「個人別サービス選択ルール」を表現するノードが組み込まれている。
【0059】
本実施形態では、前記と同様に、属性情報、履歴情報、サービス情報および状況情報から、ユーザの好みのジャンルや趣味などの嗜好情報が確率的に推定され、状況情報からユーザ状態情報が確率的に推定される。また、ユーザの属性情報、サービス情報、履歴情報および嗜好情報から、ユーザのサービス選択に関するルールも確率的に推定される。そして、これらの情報から端末ユーザにとって適合度の高いサービスが推論の対象となるようにベイジアンネットワークのモデルが構成され、ノード間の依存関係に従って各サービスの確率分布が算出される。
【符号の説明】
【0060】
1…携帯端末,2…サービス情報提供サーバ,3…サービスコンテンツサーバ,101…無線タグリーダ部,102…状況センサ部,102a…環境センサ,102b…端末センサ,102c…生体センサ,103…通信部,104…表示部,105…入力部,106…制御部,201…通信部,202…状況情報管理部,203…属性情報テーブル,204…履歴情報テーブル,205…サービス情報テーブル,206…属性情報管理部,207…履歴情報管理部,208…サービス情報管理部,209…サービス選択部,210…個人別サービス選択ルール,211…ベイシアンネットワーク学習部