(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1及び第2の吸着部材が確実に前記吸着状態となるように、かつ、前記第1及び第2の吸着部材が前記吸着状態から確実に解放されるように、前記押さえ保持機構に補助的な磁界を発生させる斥力と引力との少なくとも一方を発生させる機構を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェットプリンタ。
前記第1及び第2の吸着部材が確実に前記吸着状態となるように、かつ、前記第1及び第2の吸着部材が前記吸着状態から確実に解放されるように、前記押さえ保持機構を加振する駆動部を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェットプリンタ。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明のインクジェットプリンタ1を概略的に示す図である。
図1(a)は、インクジェットプリンタ1の画像記録時の状態を示しており、
図1(b)は、インクジェットプリンタ1の非画像記録時(退避時)の状態を示している。以下の説明では、記録媒体2の搬送方向をX方向、X方向と直交する方向をY方向又は幅方向、X方向及びY方向に直交する方向をZ方向又は上下方向と称する。
【0016】
インクジェットプリンタ1は、大別すると、媒体供給部11と、画像記録部12と、搬送部13と、昇降機構(移動機構)14と、媒体収納部15と、インクジェットプリンタ全体を制御する制御部16と、により構成されている。なお、図面には、本発明の要旨に関わる構成部のみを示しているが、インクジェットプリンタ1は、図示しないインク供給機構、クリーニング機構等の通常のインクジェットプリンタが備える構成部を有しているものとする。
【0017】
まず、媒体供給部11について説明する。
媒体供給部11は、記録媒体2の搬送方向の最上流側に位置している。この媒体供給部11は、供給台21と、供給ローラ22と、レジストローラ対23と、を有している。
【0018】
供給台21は、記録用紙、フィルム等の複数枚の記録媒体2を収納している。なお、
図1(a)並びに
図1(b)には、1つの供給台21を示しているが、種々の(複数の種類の、もしくは複数の厚みの)記録媒体に対応できるように複数の供給台21を設けてもよい。
【0019】
供給ローラ22は、ピックアップローラとも称されるもので、供給台21の上方に、供給台21に隣接して配置されている。この供給ローラ22は、供給台21内に収納されている記録媒体2と接触して、接触した記録媒体2を1枚ずつ取り出す。取り出された記録媒体2は、レジストローラ対23へと送られる。
【0020】
レジストローラ対23は、記録媒体2の搬送方向(X方向)に対する傾き(斜行)を補正(矯正)するためのローラ対である。このレジストローラ対23は、上下一対のレジストローラ23a、23bにより構成されており、レジストローラ23a、23bの支持軸は、互いに略平行となっている。上方のレジストローラ23aは、不図示のばねによって下方のレジストローラ23bに向けて付勢され、レジストローラ23bと当接している。また、下方のレジストローラ23bの上面は、記録媒体2の搬送経路延長線上と略同一面となるように配置されている。
【0021】
レジストローラ対23は、供給ローラ22によって供給された記録媒体2の先端をレジストローラ対23のニップ部に当接させ、記録媒体2の搬送方向に対する傾き(斜行)を補正(矯正)してから、後述する画像記録部12における画像記録タイミングに合わせて記録媒体2を搬送部13へと搬送する。
【0022】
次に、搬送部13について説明する。
搬送部13は、媒体供給部11よりも搬送方向下流側に、画像記録部12と対向して配置されている。この搬送部13は、搬送ベルト41と、プラテン42と、吸引ファン43と、駆動ローラ44と、従動ローラ45と、テンションローラ46(46a、46b)と、搬送フレーム47と、を有している。
【0023】
搬送ベルト41は、無端で帯状に形成され、かつ、その表面に複数の孔が設けられている。この搬送ベルト41は、駆動ローラ44、従動ローラ45及びテンションローラ46によってテンションが掛けられた状態で保持されている。駆動ローラ44、従動ローラ45及びテンションローラ46は、搬送フレーム47に回転可能に保持されている。なお、駆動ローラ44には、不図示のモータが接続されており、該モータが駆動されることによって、搬送ベルト41が所定方向に回転する。
【0024】
また、搬送ベルト41の下方には、プラテン42及び吸引ファン43が設けられている。これらプラテン42及び吸引ファン43も、搬送フレーム47によって保持されている。つまり、搬送フレーム47は、プラテン部としての搬送ベルト41、プラテン42を保持するプラテン保持部としての役割を果している。プラテン42は、少なくとも画像記録部12と対向する領域が平面となるように加工されており、複数の孔が形成されている。吸引ファン43は、プラテン42の下方に配置され、搬送フレーム47によって保持されている。この吸引ファン43は、搬送ベルト41及びプラテン42の複数の孔を通してエアを吸引する。これにより、レジストローラ対23から搬送された記録媒体2は、搬送ベルト41上に吸着され、所定の搬送速度で搬送方向下流側(媒体収納部15)へと搬送される。
【0025】
なお、搬送部13は、後述の昇降機構14により、
図1(a)に示す記録位置と、
図1(b)に示す退避位置とに移動する。
【0026】
次に、媒体収納部15について説明する。
媒体収納部15は、記録媒体2の搬送方向の最下流側に位置している。この媒体収納部15は、排出ローラ対61と、ストッカ62とを有している。排出ローラ対61は、画像記録部12により画像記録がなされた記録媒体2を搬送部13から排出する。ストッカ62は、画像記録済みの記録媒体2を収納する。
【0027】
次に、画像記録部12について説明する。
図2(a)は、画像記録部12を上方から見た図であり、
図2(b)は、画像記録部12を下方から見た図である。
【0028】
画像記録部12は、例えば、シアン(C)、ブラック(K)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の4色のインクをそれぞれ吐出するヘッド部31(31C、31K、31M、31Y)と、ヘッド部31を保持するヘッド保持部材32と、間隔調整部材33(33a、33b、33c、33d)と、を有している。
【0029】
ヘッド保持部材32には、
図2(a)並びに
図2(b)に示されるように、複数の開口34が設けられている。これら開口34には、ヘッド部31を構成している複数のインクヘッド35がそれぞれ位置決めされ、固定されている。これにより、これらインクヘッド35は、記録媒体2の幅方向において画像記録が行われる記録領域と同等、又はそれ以上となるラインヘッドを構成している。
【0030】
インクヘッド35のノズル面35aには、記録媒体2の幅方向に列をなして複数のノズルが形成されており、これらノズルからインクを吐出することにより、記録媒体2に画像が記録される。なお、本実施形態では、6個のインクヘッド35が、記録媒体2の幅方向に沿ってこの幅以上の長さとなるように、交互に2列に(千鳥状に)配置されることにより、ラインヘッドを構成している。このとき、インクヘッド35の端部分(ノズル列の端)は、搬送方向から見て互いに重なるように配置される。この重なりは、記録媒体2に画像を記録した際に、筋状の未記録領域(白スジ)を防止するためである。
もちろん、インクヘッド35の数はこれに限定されるものではなく、1個の長尺なインクヘッドによってヘッド部31を構成してもよい。また、インクヘッドを3列以上に配置した構成であってもよい。
【0031】
間隔調整部材33(33a、33b、33c、33d)は、
図2(b)に示すように、搬送部13のプラテン42と対向しているヘッド保持部材32の対向面32aの四隅に設けられている。具体的には、対向面32aにおける搬送方向上流側(ヘッド部31Cよりも搬送方向上流側)に間隔調整部材33a及び33cが設けられ、搬送方向下流側(ヘッド部31Yよりも搬送方向下流側)に間隔調整部材33b及び33dが設けられている。
【0032】
間隔調整部材33は、本実施形態では、搬送部13に向けて突出するように形成されたピンの形態であり、搬送部13のプラテン42と当接している。これによって、画像記録部12と搬送部13との間隔を所定の値に設定している。換言すれば、間隔調整部材33は、画像記録時のヘッド部31(インクヘッド35)のノズル面35aと搬送部13のプラテン42との間隔(ヘッドギャップ)が所定の記録時ヘッドギャップの値となるように規制する。
また、間隔調整部材33は、制御部16によって、ノズル面35aから下方に突出する量を変更されることができる。つまり、間隔調整部材33は、記録媒体2の厚みに応じて複数のヘッドギャップを設定することができる。
【0033】
さらに、ヘッド保持部材32の対向面32a側には、
図1並びに
図2(b)に示されるように、搬送される記録媒体2の浮きを抑制するための媒体押さえ部としての媒体押さえローラ101が設けられている。媒体押さえローラ101は、本実施形態では、幅方向に延びた棒状の部材であり、その両端が後述する軸受け202によって回転可能に支持されている。
【0034】
媒体押さえローラ101は、
図1並びに
図2(b)に示す一態様では、各ヘッド部31(31C、31K、31M、31Y)の搬送方向上流側に配置されている。すなわち、4つの媒体押さえローラ101が設けられている。しかし、媒体押さえローラ101の配置は、これに限らず、例えば、
図3に示す他の態様のように、ラインヘッドを構成している各インクヘッド35の幅方向の列の上流側に媒体押さえローラ101を配置した構成(8つの媒体押さえローラ101を設けた構成)であってもよい。
【0035】
図4は、媒体押さえローラ101の横断面図である。
媒体押さえローラ101は、両端側のベルト当接部分101aと、中間部の媒体押さえ部分101bと、後述する軸受け202に回転可能に保持される被保持部分101cと、により構成されている。
【0036】
この媒体押さえローラ101は、媒体押さえ部分101b間の幅方向の間隔Bが、搬送ベルト41によって搬送される記録媒体2の幅以上の間隔となるように設定されている。また、両端側に設けられたベルト当接部分101aの幅方向外側の距離Cが、搬送ベルト41の幅以下となるように設定されている。また、ベルト当接部分101aの外周面と媒体押さえ部分101bの外周面との間には、Z方向の隙間Aが形成されている。つまり、ベルト当接部分101aの半径は、媒体押さえ部分101bの半径よりも隙間Aだけ大きい。本実施形態では、例えば、隙間Aは0.5mm程度に設定され、また、間隔Bは、A3サイズの記録媒体を通過可能とするために297mm以上に設定されている。
【0037】
媒体押さえローラ101は、記録媒体搬送時には、ベルト当接部分101aが搬送ベルト41と当接するため、搬送ベルト41の回転に従動して回転する。このとき、ベルト当接部分101aと媒体押さえ部分101bとの間に隙間Aが形成されていることにより、幅方向の間隔B内では、媒体押さえ部分101bは、搬送ベルト41と非接触となる。従って、記録媒体2が搬送ベルト41に正常に吸着されていれば、記録媒体2を媒体押さえローラ101の媒体押さえ部分101bの表面に非接触で通過させることができる。
【0038】
また、媒体押さえローラ101が搬送ベルト41の回転に従動して回転するため、記録媒体2が媒体押さえローラ101と接触したとしても、記録媒体2の搬送負荷になりにくい。なお、媒体押さえ部分101bの記録媒体2に対する摩擦抵抗を意図的に大きくしてもよい。これによって、記録媒体2が媒体押さえローラ101と接触したとしても、記録媒体2を積極的に搬送することができる。
【0039】
なお、媒体押さえローラ101は、
図4に示すような段付形状に限られず、例えば、ストレートな媒体押さえローラを使用することも可能である。また、媒体押さえローラ101に代わって、プラテン42に対向して配置された板状の押さえ部材を有してもよい。
【0040】
次に、画像記録部12と搬送部13との間で媒体押さえローラ101を保持している押さえ保持機構200の構成について説明する。
図5は、押さえ保持機構200の分解側面図である。押さえ保持機構200は、軸受け支持フレーム201と、軸受け202と、搬送部吸着部材203と、付勢ばね204と、引き剥がし突起205と、軸受け吸着部材206と、を有している。
【0041】
支持フレーム部としての軸受け支持フレーム201は、画像記録部12に固定され、画像記録部12から下方(搬送部13側)に延びている。付勢部としての付勢ばね204は、軸受け支持フレーム201内に位置しており、一端側が画像記録部12側に固定され、他端側が媒体押さえ保持部としての軸受け202の上面に設けられた突き当て部材としての引き剥がし突起205に取着されている。軸受け202は、軸受け支持フレーム201及び付勢ばね204により、上下方向にスライド可能に、常に上方向に付勢されている。
【0042】
軸受け202は、媒体押さえローラ101を保持している。また、軸受け202の引き剥がし突起205が設けられた上面と対向している下面には、搬送部吸着部材203が取着されている。
【0043】
軸受け吸着部材206は、搬送部吸着部材203に対向している搬送部13のプラテン42側に設けられている。搬送部吸着部材203と軸受け吸着部材206とは、例えば、一方が永久磁石で他方が磁性体金属であってもよいし、両方が永久磁石であってもよい。さらには、電磁石であってもよい。
【0044】
軸受け吸着部材206は、昇降機構14により搬送部13が上昇されて搬送部吸着部材203に接近すると、付勢ばね204による軸受け202に対する画像記録部12側への付勢力よりも搬送部吸着部材203による軸受け202に対する搬送部13(プラテン42)側への磁気吸着力が大きくなるように設定されている。このように、付勢力よりも磁気吸着力が大きくなると、軸受け吸着部材206は、搬送部吸着部材203と密着して、プラテン42側で保持されている状態になる。
【0045】
次に、昇降機構14について説明する。
昇降機構14は、搬送部13(搬送ベルト41及びプラテン42を含むプラテン部)を記録位置(
図1(a))と退避位置(
図1(b))とに移動させる移動機構である。昇降機構14は、
図2(a)に示されるように、駆動源としてのモータ51と、4本のワイヤ52(52a、52b、52c、52d)と、ワイヤ52を巻き取る巻き取り部53と、モータ51の駆動力を巻き取り部53に伝達する巻き取り軸54と、を有している。
【0046】
モータ51は、ヘッド保持部材32に取り付けられており、図示されないギヤ等を介して、搬送方向に延在する巻き取り軸54を回転させる。この巻き取り軸54には、各ワイヤ52a、52b、52c、52dを巻き上げるための、4個の巻き取り部53が取り付けられている。この巻き取り部53は、プーリ55とトルクリミッタ56とにより構成されている。そして、プーリ55には、各ワイヤ52a、52b、52c、52dの一端が固定されている。また、各ワイヤ52a、52b、52c、52dの他端側は、前述した搬送部13に固定されている。このように、ワイヤ52(52a、52b、52c、52d)は、画像記録部12に対して搬送部13を吊り下げた状態としている。
【0047】
そして、昇降機構14は、モータ51によって巻き取り軸54が所定方向に回転すると、巻き取り部53(プーリ55及びトルクリミッタ56)も巻き取り軸54の回転に従って回転し、各ワイヤ52a、52b、52c、52dは、プーリ55に同時に巻き取られる。このとき、トルクリミッタ56によって、ワイヤ52(52a、52b、52c、52d)に過度な張力が働かないようになっている。これにより、巻き取り部53でワイヤ52を巻き取る際に、ワイヤ52に過度な力が加わって切れたり伸びたりすることを防止している。
【0048】
また、画像記録部12に対して搬送部13が間隔調整部材33を介し突き当て状態となったときには、トルクリミッタ56のばね力によって、搬送部13が保持される。上述の付勢ばね204による力量は、トルクリミッタ56のばね力をアシストするように作用するため、このような構成を採ることで突き当て状態を保持しやすくなる。
【0049】
なお、本実施形態では、昇降機構14が搬送部13を移動(昇降)させることにより、ヘッド部31(画像記録部12)とプラテン部(搬送部13)との間隔を変更させているが、間隔を変更させる方法は、これに限らず、画像記録部12を移動させる昇降機構を設けてもよいし、あるいは、画像記録部12と搬送部13との両方を移動させる昇降機構を設けてもよい。つまり、昇降機構14は、画像記録部12と搬送部13との少なくとも一方を移動させて、ヘッド部31とプラテン部との間隔を変更させる構成であればよい。
【0050】
また、本実施形態では、ヘッド部31(画像記録部12)とプラテン部(搬送部13)との間隔を変更させる機構を、ワイヤ52を巻き取る機構としているが、間隔を変更させる機構は、これに限らず、稼動可能なアーム等を用いた機構であってもよく、ヘッド部31とプラテン部との間隔を変更させる機構であればよい。
【0051】
次に、本実施形態のインクジェットプリンタ1の記録動作について説明する。
まず、インクジェットプリンタ1の図示されない操作パネルから画像記録の指示が入力操作される、又は信号線で接続された図示されないホスト機器から画像記録の指示信号が入力される。この指示を受けて、搬送部13は、昇降機構14によって
図1(b)に示す退避位置から上昇し、
図1(a)に示す記録位置に移動する。記録位置では、昇降機構14によって搬送部13を上昇させた際に、前述した間隔調整部材33がプラテン42と当接することによって、画像記録部12と搬送部13との間隔が所定の間隔となり、ノズル面35aとプラテン42との間隔が、記録媒体2の厚みに応じた記録時ヘッドギャップになる。
【0052】
その後、レジストローラ対23、駆動ローラ44、排出ローラ対61が駆動された状態で、供給ローラ22が駆動される。これにより、供給台21から供給ローラ22により最上部の1枚の記録媒体2が取り出される。そして、取り出された記録媒体2が、レジストローラ対23のレジストローラ23a、23bの対向部で形成された把持部に受け渡される。
【0053】
このとき、レジストローラ対23は、図示されないレジストクラッチによって回転が一時制止される。この一時制止により、レジストローラ対23に搬送されてきた記録媒体2の先端部分が前記把持部に突き当たり、いったん進行が制止されて湾曲し、被搬送姿勢が矯正される。すなわち、記録媒体2に斜行があれば、その斜行が修正される。その後、所定時間経過すると、レジストクラッチによる回転制止が解除され、レジストローラ対23を回転させることにより、記録媒体2が所定の速度で搬送部13の搬送ベルト41上へと送り出される。
【0054】
搬送ベルト41上に送り出された記録媒体2は、搬送ベルト41及びプラテン42に形成された複数の孔を介して、吸引ファン43により与えられた吸引力により、搬送ベルト41及びプラテン42に吸着された状態で、所定の搬送速度でX方向へと搬送される。
【0055】
媒体押さえローラ101は、搬送ベルト41の上面から浮き上がった記録媒体2を少なくとも部分的に搬送ベルト41に押さえ付けることによって、搬送ベルト41に記録媒体2を確実に吸着させると共に、記録媒体2が各ヘッド部31に接触するのを回避する。
【0056】
そして、搬送ベルト41によって搬送されてくる記録媒体2が、各ヘッド部31C、31K、31M、31Yの下方を通過する。その通過の際に、制御部16により制御されたタイミングで、適宜、各ヘッド部31C、31K、31M、31Yのノズルからインクが吐出され、記録媒体2に画像が記録される。このようにして、各色の画像が重ねてカラー記録された記録媒体2は、排出ローラ対61によってプリンタ1の外に排出され、ストッカ62内に収容される。
以上の動作により、記録媒体2への一連の画像記録動作が終了する。
【0057】
次に、本実施形態における押さえ保持機構200の動作について説明する。
図6(a)は、待機時(非画像記録時)の押さえ保持機構200を示す側面図である。この状態では、搬送部13(
図6(a)〜(c)には、プラテン42のみが示されている)は、昇降機構14により画像記録部12から下方に退避した退避位置にある。そして、押さえ保持機構200の軸受け202に支持されている媒体押さえローラ101は、軸受け202が付勢ばね204により画像記録部12側(上方)に付勢されることにより、画像記録部12のノズル面35aよりも上方に、つまりヘッド部側に退避した状態となっている。つまり、媒体押さえローラ101は、ノズル面35aから下方に突出していない状態にある。
【0058】
ここで、ノズル面35aとプラテン42との間隔をヘッドギャップHGとし、媒体押さえローラ101の下面とプラテン42との間隔を押さえギャップOGとすると、
図6(a)に示す退避状態(待機状態)では、HG<OGである。このように、退避状態では、媒体押さえ部である媒体押さえローラ101がヘッド部31のノズル面35aよりも上方に退避しているので、クリーニングのために不図示のクリーニング機構をノズル面35aとプラテン42との間に移動させる際に、クリーニング機構と媒体押さえ部との干渉を回避し、クリーニング動作をスムーズに進めることができる。
【0059】
図6(b)は、画像記録を開始する前に昇降機構14により搬送部13を上昇させたとき(画像記録開始時)の押さえ保持機構200を示す側面図である。搬送部13が昇降機構14により上昇されて画像記録部12のノズル面35aに接近すると、搬送部吸着部材203は、上昇してくる軸受け吸着部材206からの磁気吸着力により、搬送部13に引きつけられる。これにより、搬送部吸着部材203が取り付けられた軸受け202及び軸受け202に保持された媒体押さえローラ101も一体的に下方に引きつけられる。そして、
図7(a)に示すように、搬送部吸着部材203と軸受け吸着部材206とが、互いに磁気的に吸着され、接触して吸着状態となる。これにより、ヘッドギャップHGと押さえギャップOGとの関係は、HG>OGとなる。また、当然ながら、このときのヘッドギャップは、退避時のヘッドギャップよりも小さい。
【0060】
かくして画像記録開始時に設定される記録時ヘッドギャップは、上述したように、間隔調整部材33の突出量を変更させることにより、搬送部13により搬送される記録媒体2の厚みに応じて変更されることができる。
図7(a)は、
図6(b)に示す状態の後、通常の厚みの記録媒体2の場合の記録時ヘッドギャップ(普通ヘッドギャップ)を設定した状態を示しており、
図7(b)は、比較的厚い記録媒体2の場合の記録時ヘッドギャップ(広いヘッドギャップ)を設定した状態を示している。
【0061】
いずれの場合も、画像記録時のヘッドギャップHGである記録時ヘッドギャップと、画像記録時の押さえギャップOGである記録時押さえギャップとの関係は、HG>OGであり、媒体押さえローラ101がヘッド部31のノズル面35aから下方に、つまりプラテン部側に突出した状態となっている。また、記録時押さえギャップは、記録媒体2の浮きを抑えるために記録媒体2の厚み以上となっている。このような状態により、画像記録時において、媒体押さえローラ101は、搬送される記録媒体2のプラテン42からの浮きを防ぐとともに、記録媒体2がノズル面35aに接触しないように規制することができる。
【0062】
ここで、
図7(b)に示すような広い記録時ヘッドギャップを設定する場合、
図6(b)を参照して説明した搬送部吸着部材203と軸受け吸着部材206との間の磁気吸着力が不足し、これら吸着部材203、206の吸着状態が作り出せない可能性がある。そこで、広いヘッドギャップを設定する場合には、前動作として
図7(a)に示す普通ヘッドギャップを設定するために吸着状態にしてから、昇降機構14により搬送部13を下方に移動させて、間隔調整部材33の突出量を変更させることにより、広いヘッドギャップを作り出してもよい。
【0063】
なお、画像記録時には、付勢ばね204による上方向の力量で昇降機構14により搬送部13を当て付け状態にするための力量のアシストも可能であり、これは、記録状態を保持するために非常に有利である。
【0064】
図6(c)は、画像記録状態から退避状態へと移行するときの押さえ保持機構200を示す側面図である。搬送部13が昇降機構14により下方に退避されたとき、搬送部吸着部材203と軸受け吸着部材206とが吸着状態のまま、搬送部吸着部材203が取り付けられた軸受け202及び軸受け202に保持された媒体押さえローラ101も一体的に下方に引きつけられる。その後、引き剥がし突起205が軸受け支持フレーム201に当接して、吸着部材203、206が引き剥がされ、付勢ばね204による上方への付勢力が、この付勢力と逆方向に働いている吸着部材203、206間の磁気吸着力よりも大きくなると、吸着部材203、206間の吸着状態が解除される。そして、軸受け202は、再度、付勢ばね204によって上方に付勢されている状態になる。かくして、押さえ保持機構200は、
図6(c)に示す状態から
図6(a)に示す状態へと移行することができる。
【0065】
本発明によれば、媒体押さえ部を保持している押さえ保持機構が、搬送部又は画像記録部の昇降動作に伴って移動する際、スライド可能な付勢機構及び磁気吸着部材の作用により、ヘッド部のノズル面に対する媒体押さえ部の位置を可変とすることができる。従って、少なくとも画像記録動作時には、媒体押さえ部がインクヘッドのノズル面よりも下方に突出し、記録媒体がインクヘッドに接触するのを防ぎ、また、少なくともクリーニング動作時には、媒体押さえ部がインクヘッドのノズル面よりも下方に突出せずに退避して、クリーニング動作の妨げにならない状態とすることができる。
【0066】
(変形例1、2)
変形例1、2では、搬送部13が昇降機構14により記録位置となったときに、押さえ保持機構200の搬送部吸着部材(磁石)203と軸受け吸着部材(磁石)206とが確実に吸着し合うように、補助的な磁界を発生させて吸着をアシストする斥力/引力発生機構を設ける。
【0067】
具体的には、
図8(a)乃至(c)に示される変形例1では、搬送部13が昇降機構14により上昇されて記録位置となったときに、押さえ保持機構200のスライド可能な付勢機構が下方に移動するように、斥力が発生する斥力発生機構300が設けられている。また、
図9(a)乃至(c)に示される変形例2では、引力が発生する引力発生機構310が設けられている。
【0068】
変形例1の斥力発生機構300は、
図8(a)乃至(c)に示すように、突起部材301と、磁気回路である斥力発生部302と、磁石303と、を有している。突起部材301の一端側は、搬送部13のプラテン42に取り付けられ、他端側は画像記録部12に配置された斥力発生部302の近傍まで上方に延びている。斥力発生部302は、突起部材301と対向して、画像記録部12に設けられている。そして、磁石303は、斥力発生部302と対向して、軸受け202の上面に設けられている。
【0069】
変形例2の引力発生機構310は、
図9(a)乃至(c)に示すように、変形例1と同様に、突起部材311と、磁気回路である引力発生部312と、磁石313と、を有している。しかし、変形例1とは異なり、突起部材311が画像記録部12に、引力発生部312が搬送部13に設けられている。また、軸受け吸着部材206は、一端側がプラテン42に取り付けられたばね314の他端側に、搬送部吸着部材203に対向して配置されている。そして、磁石313は、引力発生部312と対向して、軸受け吸着部材206の下面に設けられている。
【0070】
変形例1では、搬送部13が昇降機構14により上昇されて、
図8(b)に示すように、突起部材301が斥力発生部302と当接すると、斥力発生部302が、軸受け202に設けられた磁石303を下方に反発させる磁界を発生させる、もしくは強化する。このため、搬送部13が上昇されて記録位置となったとき、搬送部吸着部材203が取り付けられた軸受け202及び軸受け202に保持された媒体押さえローラ101も一体的に下方に移動し、搬送部吸着部材203と軸受け吸着部材206との距離は狭くなる。そして、これら吸着部材203、206間の磁気吸着力が増加して、確実に吸着状態にすることができる。
【0071】
また、変形例2では、搬送部13に配置された軸受け吸着部材206がばね314により常に上方に付勢された状態で、搬送部13が昇降機構14により上昇されて、搬送部吸着部材203と軸受け吸着部材206とが吸着状態となる。そして、
図9(b)に示すように、変形例1と同様に、突起部材311が引力発生部312と当接すると、引力発生部312が、軸受け202と吸着状態のまま軸受け吸着部材206に設けられた磁石313を下方に吸引させる磁界を発生させる、もしくは強化する。このため、搬送部13が上昇されて記録位置となったとき、搬送部吸着部材203及び軸受け吸着部材206が一体的に下方に移動して、媒体押さえローラ101を所望の位置まで下降させることができる。
【0072】
図10(a)乃至(c)は、変形例1、2の斥力発生部302/引力発生部312のような磁気回路500の一形態を概念的に示す図である。
磁気回路500は、回転軸を中心に回転可能に設けられた磁石501と、磁石501に一体的に設けられ、突起部材301/311と当接するシャフト502と、シャフト502を突起部材301/311側に付勢する図示しない付勢手段と、磁石501を囲む一対の磁性金属503と、を有している。
【0073】
図10(a)に示すように、突起部材301/311がシャフト502と当接しない状態では、シャフト502は図示しない付勢手段により突起部材301/311側に付勢され、磁石501は磁石303/313に対して垂直方向に位置している状態となる。この状態では、磁石501の磁界が磁石303/313の磁界に与える影響は無く(少なく)、磁気回路500による磁石303/313に対する斥力/引力は無い(少ない)。
【0074】
この状態から、突起部材301/311がシャフト502に当接してシャフト502を押すと、磁石501が回転する。そして、磁石501は、
図10(b)に示すように、磁石303/313に対して平行に位置している状態となる。この状態では、磁石501の磁界は、磁性金属503を介して磁石303/313に対し磁力を発生させる。このとき、磁気回路500が斥力発生部302の場合には、
図10(b)に示すように、磁石303のN極と磁石501のN極、及び磁石303のS極と磁石501のS極がそれぞれ対向し、磁気回路500は、軸受け202に設けられた磁石303に対し斥力を発生させる。また、磁気回路500が引力発生部312の場合には、
図10(c)に示すように、磁石313のN極と磁石501のS極、及び磁石313のS極と磁石501のN極がそれぞれ対向し、磁気回路500は、軸受け吸着部材206に設けられた磁石313に対し引力を発生させる。
【0075】
図11(a)乃至(d)は、変形例1、2の斥力発生部302/引力発生部312のような磁気回路510の他の形態を概念的に示す図である。
磁気回路510は、回転軸を中心に回転可能に設けられた磁石511と、磁石511に一体的に設けられ、突起部材301/311と当接するシャフト512と、磁石511を
図11(a)乃至(d)の反時計回り(回転一方向側)に付勢する図示しない付勢手段と、を有している。また、変形例1、2の突起部材301/311の斥力発生部302/引力発生部312側の端部には、例えば、
図11(a)に示すように、シャフト512が貫通する上下方向に延びたスリット514が切ってある。
【0076】
図11(a)に示すように、突起部材301/311がシャフト512と当接しない状態では、図示しない付勢手段により磁石511は回転一方向側に付勢され、磁石511は磁石303/313と対向しない位置となる。この状態では、磁石511の磁界が磁石303/313の磁界に与える影響は無く(少なく)、磁気回路510による磁石303/313に対する斥力/引力は無い(少ない)。
【0077】
この状態から、突起部材301/311が移動すると、シャフト512がスリット514に嵌まり、
図11(b)に示すように、スリット514に沿ってシャフト512が移動することにより、磁石511が他方向に回転して、
図11(c)又は
図11(d)に示すように、磁石511が磁石303/313と対向した状態となる。このとき、磁気回路510が斥力発生部302の場合には、
図11(c)に示すように、磁石303と磁石511の同極が対向し、磁気回路510は、軸受け202に設けられた磁石303に対し斥力を発生させる。また、磁気回路510が引力発生部312の場合には、
図11(d)に示すように、磁石313と磁石511の異極が対向し、磁気回路510は、軸受け吸着部材206に設けられた磁石313に対し引力を発生させる。
【0078】
このように、変形例1、2では、斥力発生機構300から発生される斥力、もしくは引力発生機構310から発生される引力が、吸着部材203、206が確実に互いに吸着されるように、アシスト力として働くことができる。
【0079】
なお、これら機構300、310は、一例であり、これに限らず、磁気回路のオンオフを昇降動作に付随して行うものであれば、本発明の効果が得られる。
また、磁力回路に限らず、電磁石を制御した機構によっても、同様の効果が得られる。
【0080】
(変形例3)
変形例3では、ヘッド部31と対向している全ての部材がヘッド部31に対して逃げている構成である。
【0081】
図12(a)は、変形例3のヘッド部31とプラテン42との側面図、
図12(b)は、ヘッド部31とプラテン42との上面図である。本変形例では、プラテン42を始めとして、搬送部13のうちヘッド部31と対向している全ての部材が、ヘッド部31と近接した際にヘッド部31に対して干渉しないように、これら部材に開口が形成されている。これにより、搬送部13が昇降機構14により上昇されたとき、搬送部13が通常よりも上方に移動する。つまり、搬送部13のプラテン42を始めとする前記部材が記録位置よりも上方に移動可能である。
【0082】
従って、本変形例では、搬送部13を記録位置に移動させる動作の前に、
図13(a)並びに(b)に示すようなローラピックアップ動作を行うことができる。
なお、本変形例は、ベルト搬送タイプの搬送部を有するインクジェットプリンタであっても、全面に無端ベルトがわたっているタイプの搬送部には適用することができず、ローラ搬送タイプの搬送部にのみ適用可能である。
【0083】
(変形例4)
変形例4では、モータの振動数を媒体押さえローラの固有振動数とチューニングする。
本変形例では、
図14に示すように、媒体押さえローラ101をインクヘッド35のノズル面35aよりも上方に確実に退避させるために、外力を加えない状態では、搬送部吸着部材(磁石)203と軸受け吸着部材(磁石)206とは互いに吸着できないくらい離れているとする。
【0084】
本変形例では、媒体押さえローラ101及びこれを保持している押さえ保持機構200の質量及び付勢ばね204の剛性から求められる固有振動数を加振することで、質量系(媒体押さえローラ101、軸受け202及び搬送部吸着部材203)を共振状態にする。この加振は、例えば、搬送部13のモータ51(又は駆動系のモータ320)を駆動させることによりなされる。一般的に、インクジェットプリンタ1には、複数の駆動系が設けられているが、プリンタ1内のどの駆動系を利用しても同様の効果が得られる。あるいは、加振用の駆動系を新たに設けてもよい。
【0085】
記録時には、予め計算した回転数で搬送部13のモータ51(又は駆動系のモータ320)を駆動させて、インクジェットプリンタ1を特定の振動数で加振する。固有振動数で加振された質量系(媒体押さえローラ101、軸受け202及び搬送部吸着部材203)は共振する。共振状態になると振幅は大きくなるため、吸着部材203、206間の距離が近くなった状態が発生する。吸着力は、吸着部材203、206間の距離が近ければ近いほど増加し、接触したときに最も大きくなる。従って、加振し続ければ、吸着部材203、206間の距離は徐々に近くなっていき、互いに吸着する。このときの距離及び吸着力を考慮して、退避距離及び磁力を設定すればよい。
【0086】
この場合、搬送部吸着部材203と軸受け吸着部材206との吸着完了を検知する検知機構があればさらによい。検知機構は、簡便的には、例えば、吸着部材203、206の接点に端子を接続して、接触したときに通電するような機構を採用することができる。
また、このとき、剛性や質量のばらつきを考慮して、駆動系の回転数の帯域を吸着状態になるまで推移させると、ばらつきを吸収することができる。
【0087】
本発明の実施形態、並びに変形例1乃至4のいずれにおいても、例えば、
図15(a)並びに(b)に示すように、押さえ保持機構200は、媒体押さえローラ101が上下動可能なように、媒体押さえローラ101の上方及び下方をばねで支持し、媒体押さえローラ101が上下方向に自由度を有するようにしてもよい。媒体押さえローラ101が上下方向に自由度を有し、かつ一定の押圧力で付勢されている状態であれば、媒体押さえローラ101の回転状態が継続し、搬送ベルト41の搬送性能よりよくすることができる。従って、本発明の実施形態及び各変形例にこのような構成を追加すれば、搬送性能の向上を期待することができる。
【0088】
また、例えば、
図16に示すように、搬送部吸着部材203と軸受け吸着部材206との接触面の形状をテーパ形状にすれば、これら吸着部材203、206が互いに吸着したときの吸着位置精度が向上し、これによって、搬送方向に対する媒体押さえローラ101の直交度が高精度に維持されることができる。
【0089】
以上、本発明の実施形態及び変形例について説明したが、本発明は、これらに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
さらに、前述した実施形態及び変形例には種々な段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件の適当な組合せにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題で述べた課題を解決することができ、発明の効果の欄で述べられている効果が得られる場合には、その構成要件が削除された構成も発明として抽出され得る。