(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5665730
(24)【登録日】2014年12月19日
(45)【発行日】2015年2月4日
(54)【発明の名称】電解コンデンサとその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01G 9/04 20060101AFI20150115BHJP
H01G 9/08 20060101ALI20150115BHJP
H01G 9/00 20060101ALI20150115BHJP
【FI】
H01G9/04 340
H01G9/08 F
H01G9/24 B
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-500756(P2011-500756)
(86)(22)【出願日】2008年3月20日
(65)【公表番号】特表2011-515849(P2011-515849A)
(43)【公表日】2011年5月19日
(86)【国際出願番号】US2008057706
(87)【国際公開番号】WO2009117002
(87)【国際公開日】20090924
【審査請求日】2011年2月8日
(31)【優先権主張番号】12/052,251
(32)【優先日】2008年3月20日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】510246002
【氏名又は名称】ヴィシェイ スプラーグ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(72)【発明者】
【氏名】ブレイソープト スティーブ
(72)【発明者】
【氏名】コーエン ニッシム
(72)【発明者】
【氏名】アイデルマン アレックス
(72)【発明者】
【氏名】カトラロ ルーベン
【審査官】
柴垣 俊男
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−243203(JP,A)
【文献】
特開平05−144680(JP,A)
【文献】
特開昭60−086814(JP,A)
【文献】
特開平04−127411(JP,A)
【文献】
国際公開第2007/064372(WO,A1)
【文献】
特開平03−175609(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 9/04
H01G 9/00
H01G 9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属ケースと、
前記金属ケース内に配置された多孔質ペレットアノードと、
前記金属ケース内に配置された電解質と、
前記金属ケース内に配置されたカソード素子と、
前記多孔質ペレットアノードに接続された第1のリード電極と、
前記カソード素子に電気的に接続された第2のリード電極
を有し、
前記カソード素子は、前記アノードの周囲に配置されており、電気泳動電着法によって堆積させた、254μm未満の厚みを持つ単一の金属の均一な層から形成され、
前記電気泳動電着法によって堆積させた単一の金属はタンタルであり、前記均一な層は0.01[S/cm]を超える電気伝導率を有する
ことを特徴とする電解コンデンサ。
【請求項2】
電解コンデンサの製造方法において、
金属ケースを供給する工程と、
前記金属ケース上にカソード素子を形成する工程と、
前記金属ケース内に多孔質ペレットアノードと電解質を配置し、この電解質によって前記アノードと前記カソード素子を分離する工程
を有し、
前記カソード素子は、電気泳動電着法により前記金属ケース上にタンタルの単一で均一な層を堆積することにより形成され、前記タンタルの単一で均一な層は、0.01[S/cm]を超える電気伝導率を有し、前記タンタルの単一で均一の層の厚みは254μm未満である
ことを特徴とする電解コンデンサの製造方法。
【請求項3】
対向する第1と第2の面を有するサブストレートと、
前記サブストレートの第1の面に配置された第1のカソード素子と、
前記カソード素子に近接して配置されたアノードと、
前記アノードと前記カソード素子の間に配置された電解質とを有し、
前記カソード素子は、電気泳動電着法によって堆積させた254μm未満の厚みを持つ単一の金属の均一な層から形成され、前記電気泳動電着法によって堆積させた金属はタンタルであり、前記均一な層は0.01[S/cm]を超える電気伝導率を有する
ことを特徴とする電解コンデンサ。
【請求項4】
前記第2の面に配置された第2のカソード素子であって、電気泳動電着法によって堆積させた単一の金属パウダーの均一な層から形成された第2のカソード素子
を有することを特徴とする請求項3に記載の電解コンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿式電解コンデンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
カソードとしてカーボンを使用する湿式電解コンデンサにおいては、非常に限られた逆方向電圧や低容量などの制限がある。電気化学カソードを使用する湿式電解コンデンサは、逆方向電圧容量を持たない。タンタルコンデンサの場合には、その電気的・物理的特性により、このような制限に対応可能である。タンタルの使用によって、単位体積当たりの容量は他の物質より大きくなる。湿式タンタルコンデンサにおいては、現在、カソード用のライナー、シリンダー、またはスリーブが使用されている。しかし、薄いタンタルシリンダーの作製、取り扱いは、作業が難しく、費用がかかる。
【0003】
そのため、アノード用として有用なスペースへの侵入をできる限り抑制して製品段階での容量をより大きくすると共に、大容量および高い逆方向電圧特性などの、従来技術の全ての利点を備えた湿式電解コンデンサとその製造方法が要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明の第1の目的、特徴、あるいは効果は、従来技術の状況を改善することである。
【0005】
本発明の具体的な目的、特徴、あるいは効果は、アノード用として有用なスペースへの侵入をできる限り抑制して製品段階での容量をより大きくすると共に、大容量および高い逆方向電圧特性を備えた湿式電解コンデンサとその製造方法を提供することである。
【0006】
本発明の他の目的、特徴、あるいは効果は、タンタルあるいは他のカソード材料の使用量を低減可能な、効率的な電解コンデンサの製造方法を提供することである。
【0007】
本発明の他の目的、特徴、あるいは効果は、カソード材料の取り扱いを容易にした電解コンデンサの製造方法を提供することである。
【0008】
本発明のこれらの、あるいは他の目的、特徴、あるいは効果は、本明細書の以下の記載から明らかである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一つの態様によれば、電解コンデンサが提供される。この電解コンデンサは、金属ケース、金属ケース内に配置された多孔質ペレットアノード、および金属ケース内に配置された電解質を有する。電解コンデンサはさらに、金属ケース内におけるアノードの周囲に配置されたカソード素子を有しており、このカソード素子は、電気泳動電着法によって堆積させた、一定の厚みを持つ耐火金属または耐火金属酸化物のパウダーから形成されている。この電解コンデンサはまた、多孔質ペレットアノードに接続された第1のリード電極と、カソード素子に接続された第2のリード電極を有する。
【0010】
本発明の他の態様によれば、電解コンデンサの製造方法が提供される。この方法は、金属ケースを供給する工程と、電気泳動電着法により金属ケース上に耐火金属酸化物を堆積させてカソード素子を形成する工程と、ケース内に多孔質ペレットアノードと電解質を配置し、この電解質によってアノードと前記カソード素子を分離する工程を有する。
【0011】
本発明の他の態様によれば、電解コンデンサが提供される。この電解コンデンサは、金属ケース、金属ケース内に配置された多孔質ペレットアノード、金属ケース内に配置された電解質、および20ミル(508μm)未満の厚みを持つコーティング層として形成されたカソード素子を有する。この電解コンデンサはまた、多孔質ペレットアノードに接続された第1のリード電極と、カソード素子に接続された第2のリード電極を有する。
【0012】
本発明の他の態様によれば、電解コンデンサが提供される。この電解コンデンサは、対向する第1と第2の面を有するサブストレート、サブストレートの第1の面に配置されたカソード素子を有しており、このカソード素子は、電気泳動電着法によって堆積させた一定の厚みを持つ耐火金属または耐火金属酸化物のパウダーから形成されている。カソード素子上にはアノードが配置され、このアノードとカソード素子の間には、電解質が配置されている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明のコンデンサの1つの実施形態を示す図である。
【
図2】カソードを一方の面に設けた状態を示す断面図である。
【
図3】カソードを両面に設けた状態を示す断面図である。
【
図4】コンデンサの1つの実施形態を示す部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、カソードとしてタンタルコーティング層(または他の種類の耐火金属あるいは耐火金属酸化物のコーティング層)を使用する電解コンデンサを提供する。
【0015】
図1は、本発明のコンデンサの1つの実施形態を示している。
図1において、コンデンサ10は、サブストレート12を有しており、このサブストレート12は、一例として、ほぼ円筒形状のプリフォームドケースから構成されているが、これに限定されない。第1のリード30が、プリフォームドケース12の一端から伸びるように設けられ、第2のリード32が、プリフォームドケース12の他端から伸びるように設けられている。
図1は、単なるパッケージの一例に過ぎず、本発明の適用範囲はより広範であり、この特定のパッケージに限定されるものではない。
【0016】
コンデンサ10は、電気泳動電着法によって堆積させたカソードを有する。このカソードの厚みは、例えば、3ミル(0.003インチ、76.2μm)から20ミル(0.02インチ、508μm)の間で適宜変更可能であるが、さらに、この範囲よりも大幅に厚くして、例えば、数百ミル程度の厚みとしてもよい。カソードの厚みは、所望のカソード容量に応じて決定される。電気泳動電着法によってカソードを堆積させる際に達成可能な厚みは、他の周知の方法によって要求される厚みより薄い。堆積させる材料は、好ましくは、0.01[S/cm](ジーメンス毎センチ)を超える電気伝導率を有する。堆積させる材料は、金属または金属酸化物であるが、好ましくは、耐火金属または耐火金属酸化物である。コンデンサの所定の領域には、電解質が導入される。また、ケース12内には、アノードが挿入される。このように構成されたアクティブエリアは、既存の材料および方法を用いて外部環境からシールされる。
【0017】
図2は、本発明の1つの実施形態として、タンタルカソードを用いたコンデンサを示す断面図である。タンタルカソード14を設けたサブストレート12が示されている。タンタルは1つの好ましい材料ではあるが、他の金属や金属酸化物も使用可能であり、特に、耐火金属や耐火金属酸化物が使用可能である。カソードの厚みは、3ミル(0.003インチ、76.2μm)から数百ミルまでの間で適宜変更可能である。カソードの厚みは、所望のカソード容量に完全に依存しており、カソード容量に応じて決定される。領域16には、電解質が導入されている。また、ケース内には、アノード18が挿入されている。
【0018】
図3は、サブストレート12の両側にタンタルカソード14を設けた状態を示す断面図である。両側の領域16には電解質が設けられ、この断面部分のさらに両側にはアノード18が設けられている。
【0019】
図4は、コンデンサの1つの実施形態を示す部分斜視図である。
【0020】
本発明はまた、電解コンデンサの製造方法を提供する。電解コンデンサの製造方法は、金属ケースを供給する工程と、電気泳動電着法により金属ケース上に耐火金属酸化物を堆積させてカソード素子を形成する工程と、ケース内に多孔質ペレットアノードと電解質を配置し、この電解質によってアノードと前記カソード素子を分離する工程を有する。
【0021】
電気泳動電着法を採用することで、均一なコーティング層を設けてカソード素子を形成することができる。電気泳動電着法としては、複数の電気泳動電着法(EPD)を適宜使用可能である。前述したように、異なる種類の材料が使用可能であり、特に、耐火金属または耐火金属酸化物が使用可能である。コンデンサの所望の特性に応じて異なる材料を使用可能であるが、タンタルの使用は特に有効である。
【0022】
本発明によれば、従来技術のコンデンサに比べて有望ないくつかの利点が得られる。例えば、カソード材料としてタンタルを使用した場合には、カソードに必要な厚みを低減できる分だけ、タンタルの使用量を低減できる。タンタルは比較的高価であるため、使用量の低減は、製造上の観点から有利である。このように、タンタルなどのカソード材料を電気泳動電着法で堆積することにより、コスト削減実現を図ることができる。また、取り扱いが難しい種類のカソードであっても、カソードを電気泳動電着法によって形成することで取り扱いを容易にすることができる。また、カソードを電気泳動電着法によって形成することにより、他の方法に比べてカソードの厚みを低減することができる。このことによってまた、アノード用のスペースを拡大することができる。
【0023】
以上のように、前記実施形態においては、電気泳動電着法によるタンタルカソードコンデンサについて説明した。本発明は、これに限らず、他の各種の変形例、すなわち、カソードとして堆積させる耐火金属または耐火金属酸化物、コンデンサ容量、使用する電解質、および他の属性に関する各種の変形例を包含する。
【符号の説明】
【0024】
10…コンデンサ
12…サブストレート
14…カソード
16…電解質領域
18…アノード
30…第1のリード
32…第2のリード